説明

インク組成物及び画像形成方法。

【課題】インクジェット法により画像を記録する際の吐出回復性に優れ、記録した画像の耐溶剤性及び定着性に優れたインク組成物を提供する。
【解決手段】(a)下記一般式(1)で表される基を有する繰り返し単位(a1)と、親水性基を有する繰り返し単位(a2)とを有する重合体、(b)ラジカル重合性化合物、(c)水、及び(d)色材を有することを特徴とするインク組成物を用いる。


(式(1)中、Ra及びRは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は結合位置を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高く、かつ廃材が出るなどの問題がある。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ必要とされる画像部のみにインクを吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安いという利点を有し、さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
インクジェット方式による画像の記録に用いられるインク組成物のなかでも、活性エネルギー線硬化型水性インクは、画像の印刷、記録媒体に印刷適性を付与するための前処理、印刷された画像の保護・装飾の後処理などに好適に使用でき、また、水を主成分とすることから安全性に優れ、低粘度化によって高密度インクジェット記録への適用が可能になるなど、多くの優れた特徴、可能性を有する技術である。
活性エネルギー線硬化型水性インクの基本構成材料の一例として、水、重合性物質、活性エネルギー線によってラジカルなどを発生して重合を開始させる重合開始剤及び色材(顔料あるいは染料)を挙げることができる。
重合性物質および重合開始剤が水溶性である例としては、例えば特許文献1に記載されているものが挙げられ、光照射により密着性などに優れた膜が得られるインクジェット記録用インク組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−119449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特定のマレイミド構造を有する活性エネルギー線重合性物質を含むインク組成物が記載されている特許文献1は、定着性や耐溶剤性には未だ改善の余地がある。また、インク組成物の吐出回復性についてもさらなる改良の余地がある。したがって、定着性、耐溶剤性及び吐出回復性が良好なインク組成物が切望されている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記の事情に照らし、記録した画像の溶剤に対する耐久性である耐溶剤性及び画像のべたつきにくさである定着性に優れたインク組成物を提供することである。また、本発明が解決しようとする第2の課題は、高分子化合物を添加したインクジェットインクに発生するノズル近傍での固化を防止し、吐出を一旦停止した後の再吐出性(以降、吐出回復性と称する)を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
項1. (a)下記一般式(1)で表される基を有する繰り返し単位(a1)と、親水性基を有する繰り返し単位(a2)とを有する重合体、
(b)ラジカル重合性化合物、
(c)水、及び
(d)色材
を有するインク組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、Ra及びRは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は結合位置を表す。)
【0010】
項2. 前記(b)ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリルアミド基を有する化合物である、項1に記載のインク組成物。
【0011】
項3. 前記インク組成物における前記(a)重合体の含有量が0.5質量%〜20質量%であり、かつ(b)ラジカル重合性化合物の含有量が1質量%〜20質量%である、項1又は項2に記載のインク組成物。
【0012】
項4. 前記(a1)が、下記一般式(1’)で表される繰り返し単位である、項1〜項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0013】
【化2】

【0014】
(式(1´)において、R及びRは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Ra及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成していてもよい。Rは水素原子又はメチル基を表す。Zは単結合、−COO−*、又は−CONR−*を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、*はXとの結合位置を表す。Xは2価の有機基を表す。)
【0015】
項5. 前記Xで表される2価の有機基が、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はアリーレン基を含んでいてもよい、炭素数2〜20のアルキレン基である、項4に記載のインク組成物。
【0016】
項6. 前記(a2)が下記一般式(2)で表される繰り返し単位である、項1〜項5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0017】
【化3】

【0018】
(一般式(2)において、Rcyは水素原子またはメチル基を表す。Zは−COO−*、−CONRdy−*または単結合を表し、Rdyは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rは単結合、アルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基を表す。Aは親水性基を表す。*はRに結合する位置を表す。)
【0019】
項7. 前記(a2)における親水性基が、窒素原子又は酸素原子を含む複素環化合物から水素原子を1個除いた残基、アミド基、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アルコール性水酸基及びポリアルキレンオキシ構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である、項1〜項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0020】
項8. 前記(a2)における親水性基が、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基及びそれらの塩、並びに4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である、項1〜項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0021】
項9. 前記インク組成物に対する前記(c)水の含有量が、10質量%〜97質量%である、項1〜項8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0022】
項10. 更に(e)水溶性有機溶剤を含む、項1〜項9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0023】
項11. 前記(e)水溶性有機溶剤が下記一般式(E1)で表される化合物である、項10に記載のインク組成物。
【0024】
【化4】

【0025】
(式(E1)中、Re1及びRe2は各々独立に、−CH−、−NRe4−又は−O−を表し、Re1及びRe2が同時に−CH−であることはなく、Re4は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。Re3は−C2m−、−C2m−2−又は−C2m−4−で表される炭化水素基を表し、mは2〜8の整数を表す。)
【0026】
項12. 前記(e)が2−ピロリドン又はγ−ブチロラクトンである、項11に記載のインク組成物。
【0027】
項13. インクジェット記録用であることを特徴とする項1〜項12のいずれか1項に記載のインク組成物。
【0028】
項14.項1〜項13のいずれか1項に記載のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と前記インク組成物中に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む画像形成方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、インクジェット法により画像を記録する際の吐出回復性に優れ、記録した画像の耐溶剤性及び定着性に優れたインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
≪インク組成物≫
本発明のインク組成物は、(a)下記一般式(1)で表される基を有する繰り返し単位(a1)と、親水性基を有する繰り返し単位(a2)とを有する重合体(以下、単に「(a)重合体」ともいう。)、(b)ラジカル重合性化合物、(c)水、及び(d)色材を含有することを特徴とする。
【0031】
【化5】

【0032】
式(1)中、Ra及びRは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は結合位置を表す。
【0033】
なお、本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。
【0034】
<(a)式(1)で表される基を有する繰り返し単位(a1)と、親水性基を有する繰り返し単位(a2)とを有する重合体>
【0035】
本発明に用いられる(a)重合体は、式(1)で表される基を有する繰り返し単位(a1)と、親水性基を有する繰り返し単位(a2)とを有する重合体であれば、制限なく使用できる。式(1)で表される基を有する化合物を使用することで、インク組成物の架橋反応を進めることができる。
(a)重合体における(a1)の含有量は5質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜90質量%であることがさらに好ましく、30質量%〜90質量%であることが特に好ましい。また、(a)重合体における(a2)の含有量は10質量%〜95質量%であることが好ましく、10質量%〜90質量%であることがさらに好ましく、10質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0036】
以下、(a)重合体における、上記式(1)で表される基を有する繰り返し単位(a1)、親水性基を有する繰り返し単位(a2)について詳細に説明をする。
【0037】
(式(1)で表される基を有する繰り返し単位(a1))
本発明の(a)重合体は、下記式(1)で表される基を有する繰り返し単位を必須の構成として有する。
【0038】
【化6】

【0039】
式(1)中、Ra及びRは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は結合位置を表す。
【0040】
式(1)において、R及びRは置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0041】
及びRは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、炭素数1〜2(メチル基、エチル基)であることが好ましく、炭素数1(メチル基)であることが特に好ましい。これらの基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を表す。あるいは、R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。
【0042】
本発明の(a)重合体は、水溶性、又は、水分散性であることが好ましく、水溶性であることがさらに好ましい。(a)重合体の1gを、25℃の水、30ml以下で溶解できることが好ましく、20ml以下の水で溶解できることがより好ましく、10ml以下の水で溶解できることが特に好ましい。
【0043】
本発明の(a)重合体における式(1)で表される基の具体例を下記に示す。本発明はこれらに限定されない。
【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
また、式(1)で表される基を有する繰り返し単位(a1)は下記式(1´)で表される構造であることが好ましい。
【0047】
【化9】

【0048】
(式(1´)において、R及びRは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成していてもよい。Rは水素原子又はメチル基を表す。Zは単結合、−COO−*又は−CONR−*を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、*はXに結合する位置を表す。Xは2価の有機基を表す。)
【0049】
式(1´)において、R及びRは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。式(1´)におけるR及びRは、既述の式(1)におけるR及びRとして例示したものと(好ましい例示も含めて)同様である。
【0050】
式(1´)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rはメチル基であることが好ましい。
【0051】
式(1´)において、Zは単結合、−COO−*、又は−CONR−*を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、*はXとの結合位置を表す。Zは−COO−*であることが好ましい。
また、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基を表す。Rは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、即ち、メチル基、又は、エチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。なお、Rは置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0052】
式(1´)において、Xは2価の有機基を表す。2価の有機基としては、アルキレン基であることが好ましい。前記アルキレン基は直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であってもよい。また、アルキレン基中には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、アリーレン基が存在していてもよい。Xがアルキレン基である場合の炭素数は2〜20であることが好ましく、炭素数2〜12であることがより好ましく、炭素数2〜8であることがさらに好ましい。
【0053】
式(1´)において、R及びRは各々独立に炭素数1〜2のアルキル基であり、Rはメチル基であり、Zは−COO−であり、Xは炭素数2〜12のアルキレン基であることが好ましい。
【0054】
前記(a)重合体における式(1´)の繰り返し単位の含有量は5質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜90質量%であることがさらに好ましく、30質量%〜90質量%であることが特に好ましい。
【0055】
(a)重合体が上記式(1´)で表される構造を含む場合、(a)重合体は下記一般式(1´−1)で表される単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。
【0056】
【化10】

【0057】
一般式(1´−1)におけるR、R、RZ及びXは、既述の式(1´)における定義と(好ましい例示も含めて)同様である。
【0058】
式(1´−1)で表される単量体の好ましい例としては以下の化合物(1−1−1)〜(1−1−11)を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
【化13】

【0062】
本発明における上記一般式(1´―1)で表される繰り返し単位を与えるモノマー(1−1−1)〜(1−1−11)は、例えば特開昭52−988号公報、特開平4−251258号公報等に記載の方法を参考に製造できる。
【0063】
(親水性基を有する繰り返し単位(a2))
本発明の(a)重合体は、親水性基を有する繰り返し単位(a2)を有する。
【0064】
前記(a2)繰り返し単位における親水性基とは、(a)重合体の親水性を高める機能を有する基であれば、ノニオン性親水性基でもよいし、アニオン性もしくはカチオン性のようなイオン性親水性基のいずれも使用することができ、限定的ではない。
【0065】
なお、繰り返し単位(a2)中の親水性基の個数は、限定的ではないが、1個でも複数でもよく、その数は、親水性基の種類、重合体(a)の分子量等に応じて、適宜選択される。
【0066】
本発明で用いられるノニオン性親水性基としては、限定的ではないが、例えば、窒素原子又は酸素原子を含む複素環化合物から水素原子を1個除いた残基、アミド基、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アルコール性水酸基及びポリアルキレンオキシ構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましく、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アルコール性水酸基、及びポリアルキレンオキシ構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることがさらに好ましく、アルコール性水酸基、及びポリアルキレンオキシ構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが特に好ましい。
【0067】
前記窒素原子又は酸素原子を含む複素環化合物としては、γ―ブチロラクトン等のラクトン類、2−ピロリドン、エチレンウレア等の環状ウレア類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類、12−クラウン−4等のクラウンエーテル類が挙げられる。
【0068】
前記アミド基としては、限定的ではないが、例えば、下記式(11)で表される基が好ましく挙げられる。
【0069】
【化14】

【0070】
(式(11)中、R1a及びR1bは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。R1a及びR1bは互いに結合して4〜6員環を形成していてもよい。*は結合位置を表す。)
【0071】
前記式(11)におけるR1a及びR1bは、各々独立に水素原子又はアルキル基を表す。前記R1a及びR1bにおけるアルキル基としては、直鎖または分岐のアルキル基を表し、−COO−結合、−O−結合、又は−NH−結合を含んでいても良い。前記アルキル基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜3が特に好ましい。R1a及びR1bは、互いに結合して4〜6員環を形成していてもよい。これらの基は置換基を有していても有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。前記R1a及びR1bで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0072】
式(11)において、R1a及びR1bが有していてもよい置換基としては、水酸基等が好ましい。
【0073】
前記アルキル置換カルバモイル基としては、カルバモイル基のNに結合する水素原子がアルキル基で置換されたモノアルキルカルバモイル基、又は、カルバモイル基のNに結合する2つの水素原子がアルキル基で置換されたジアルキルカルバモイル基が挙げられる。具体的には、下記式(12)で表される基が好ましく挙げられる。
【0074】
【化15】

【0075】
(式(12)中、R2a及びR2bは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。R2a及びR2bは互いに結合して4〜6員環を形成していてもよい。*は結合位置を表す。)
【0076】
前記式(12)におけるR2a及びR2bは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。前記R2a及びR2bにおけるアルキル基としては、直鎖または分岐のアルキル基を表し、−O−結合、−COO−結合、−C(=O)―結合を含んでいても良い。前記アルキル基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜3が特に好ましい。R2a及びR2bは互いに結合して4〜6員環を形成していてもよい。前記R2a及びR2bで表されるアルキル基の具体例としては、限定的ではないが、メチレン基、エチレン基等が挙げられる。これらの基は置換基を有していても有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0077】
式(12)において、R2a及びR2bが有していてもよい置換基としては、炭素数1〜2のアルコキシ基、水酸基等が好ましい。
【0078】
前記ポリアルキレンオキシ構造を有する基としては、限定的ではないが、例えば、下記式(13)で表される基が好ましく挙げられる。
【0079】
【化16】

【0080】
(式(13)中、R3aはアルキレン基を表し、R3bは水素原子又はアルキル基を表す。n3は、4〜50の整数を表す。複数存在するR3aは各々同一であっても異なっていてもよい。*は結合位置を表す。)
【0081】
前記式(13)におけるR3aはアルキレン基を表す。前記R3aで表されるアルキレン基としては、直鎖、分岐または環状のアルキレン基を表し、−O−結合又は−COO−結合を含んでいてもよい。前記アルキレン基は、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6が好ましく、炭素数1〜3が特に好ましい。式(13)の基において複数存在するR3aは、各々同一であっても異なっていても良く、同一であることが好ましい。これらの基は置換基を有していても有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。R3aで表されるアルキレン基の具体例としては、エチレン基等が挙げられる。
【0082】
前記式(13)におけるR3aが有していてもよい置換基としては、炭素数1〜2のアルコキシ基、水酸基等が好ましい。
【0083】
前記式(13)におけるR3bは水素原子又はアルキル基を表す。前記R3bで表されるアルキル基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜6がより好ましく、炭素数1〜3が特に好ましい。R3bで表されるアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基等が挙げられる。
【0084】
前記式(13)におけるn3は、4〜50の整数を表し、4〜40がより好ましく、5〜30が更に好ましい。
【0085】
本発明で用いられるイオン性親水性基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基及びそれらの塩、並びに4級アンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。塩としては、金属塩やオニウム塩等が挙げられる。
イオン性親水性基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基及びそれらの塩からなる群から選ばれる基であることがより好ましく、カルボキシル基、スルホ基及びこれらの塩からなる群から選ばれる基であることがさらに好ましく、カルボキシル基及びその塩であることが特に好ましい。
【0086】
カルボキシル基の金属塩としては、カルボキシル基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、−COOLi、−COONa、−COOK、等が挙げられ、−COONa、−COOK等であることが好ましい。
【0087】
カルボキシル基のオニウム塩としては、カルボキシル基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、カルボキシル基のテトラアルキルアンモニウム塩、カルボキシル基のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、カルボキシル基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
【0088】
スルホ基の金属塩としては、スルホ基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、−SOLi、−SONa、−SOK、等が挙げられ、−SONa、−SOKであることが好ましい。
【0089】
スルホ基のオニウム塩としては、スルホ基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、スルホ基のテトラアルキルアンモニウム塩、スルホ基のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、スルホ基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
【0090】
リン酸基の金属塩としては、リン酸基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、リン酸基のナトリウム塩やカリウム塩等が挙げられ、リン酸基のナトリウム塩であることが好ましい。
【0091】
リン酸基のオニウム塩としては、リン酸基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、リン酸基のテトラアルキルアンモニウム塩、リン酸基のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、リン酸基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
【0092】
ホスホン酸基の金属塩としては、ホスホン酸基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、ホスホン酸基のナトリウム塩やカリウム塩等が挙げられ、ホスホン酸基のナトリウム塩であることが好ましい。
【0093】
ホスホン酸基のオニウム塩としては、ホスホン酸基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、ホスホン酸基のテトラアルキルアンモニウム塩、ホスホン酸のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、ホスホン酸基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
【0094】
フェノール性水酸基の金属塩としては、フェノール性水酸基のアルカリ金属塩であることが好ましい。具体例としては、フェノール性水酸基のナトリウム塩やカリウム塩等が挙げられ、フェノール性水酸基のナトリウム塩であることが好ましい。
【0095】
フェノール性水酸基のオニウム塩としては、フェノール性水酸基のアンモニウム塩や、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩であることが好ましい。具体例としては、フェノール性水酸基のテトラアルキルアンモニウム塩、フェノール性水酸基のトリアルキルアリールアンモニウム塩等が挙げられ、フェノール性水酸基のテトラアルキルアンモニウム塩であることが好ましい。アンモニウム塩を形成するアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。
【0096】
(a)重合体における繰り返し単位(a2)は、下記一般式(2)で表される構造であることが好ましい。
【0097】
【化17】

【0098】
一般式(2)において、Rcyは水素原子またはメチル基を表す。Zは−COO−*、−CONRdy−*または単結合を表し、Rdyは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rは単結合、アルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基を表す。Aは親水性基を表す。なお、*はRに結合する位置を表す。
【0099】
一般式(2)において、Rcyは水素原子またはメチル基を表す。
【0100】
一般式(2)において、Zは−COO−*、−CONRdy−*または単結合を表し、−COO−*であることが好ましい。なお、*はRに結合する位置である。Rdyは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基を表す。Rdyは水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、即ち、メチル基、又は、エチル基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。なお、Rdyは置換基を有していても、置換基を有していなくてもよいが、置換基を有していないことが好ましい。
【0101】
前記Rdyが有していてもよい置換基としては、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I等)等が挙げられる。
【0102】
一般式(2)において、Rは単結合またはアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基を表し、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基又は炭素数7〜20のアラルキレン基であることが好ましい。これらの基は置換基を有していても、置換基を有していなくてもよい。また、これらの基の中には、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合が存在していてもよい。一般式(2)において、Rは単結合であることが好ましい。
【0103】
前記Rが有していてもよい置換基としては、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子(F,Cl,Br,I等)等が挙げられる。
【0104】
が炭素数1〜20のアルキレン基である場合、前記アルキレン基は直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であってもよい。Rがアルキレン基である場合の炭素数は2〜12であることがより好ましく、炭素数2〜8であることがさらに好ましい。Rのアルキレン基の具体例としては、−CH−、−C−、−C(CH−CH−、−CHC(CHCH−、−C12−、C(C)C−、C1836、1,4−trans−シクロヘキシレン基、−C−OCO−C−、−C−OCO−、−C−O−C10−、−CH−O−C(C11)−、−C−CONH−C−、−C−OCONH−C12−、−CH−OCONHC1020−、−CHC(OH)CH−等を挙げることができる。
【0105】
が炭素数6〜20のアリーレン基である場合、前記アリーレン基の炭素数は6〜18であることが好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であることが特に好ましい。Rのアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、−C−CO−C−、ナフチレン基等を挙げることができる。
【0106】
が炭素数7〜20のアラルキレン基である場合、前記アラルキレン基の炭素数は7〜18であることが好ましく、7〜14であることがさらに好ましく、7〜10であることが特に好ましい。アラルキレン基の具体例としては、−C−C−、−C−C−C−、−CH−C−C−C−、−C−OCO−C−等を挙げることができる。
【0107】
Aで表される親水性基としては、好ましい範囲も含めて、既述の親水性基と同様のものを挙げることができる。
【0108】
一般式(2)において、Rcyは水素原子であり、Zは−COO−であり、Rは単結合、炭素数2〜8のアルキレン基又は炭素数6〜10のアリーレン基であり、Aはカルボキシル基、又はスルホ基であることが好ましい。
【0109】
前記(a)重合体における式(2)の繰り返し単位の含有量は、(a)重合体に対し、10〜95質量%であることが好ましく、10〜90質量%が更に好ましく、10〜70質量%が特に好ましい。
【0110】
上記一般式(2)で表される構造は、下記式(2−1)で表される単量体を重合して得ることができる。
【0111】
【化18】

【0112】
式(2−1)において、Rcy、Z、R、Aは前記式(2)における定義と好ましい範囲も含めて同様である。
【0113】
式(2−1)で表される単量体の好ましい例としては以下の化合物(2−1−1)〜(2−1−27)を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0114】
【化19】

【0115】
【化20】

【0116】
【化21】

【0117】
本発明における上記式(2−1)で表される繰り返し単位を与える例示化合物(2−1−1)〜(2−1−27)は、市販の化合物若しくは、一般的に知られている公知慣用の方法により製造することができる。
【0118】
更に、式(2−1)で表される単量体は、例えば酢酸ビニル等のエステル基のような保護基で水酸基を保護した単量体を用いて重合反応を行い、高分子化合物を形成した後に、ケン化により保護基を脱離することにより、本発明の(a)重合体を合成してもよい。
【0119】
本発明の(a)重合体は、上述の化合物に加えて、さらに他の単量体成分を重合体として用いることができる。式(1´−1)で表される単量体および式(2−1)に代表される構造を有する単量体と共重合し得るその他の単量体としては、スチレン、p−メトキシスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、p−スルファモイルフェニル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。式(1´−1)で表される単量体と共重合し得る単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、上記以外の公知のモノマーを、必要に応じて使用することもできる。
【0120】
(a)重合体は、ビニル重合体の他、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリエチレンイミン類等の種々の高分子構造をとることができるが、インク組成物の吐出性や製造適性から(a)重合体は、ビニル重合体であることが好ましい。
【0121】
本発明の(a)重合体は、(a1)として前記一般式(1´)で表される繰り返し単位を有し、かつ(a2)として前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
(a)重合体が一般式(1´)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位を有する場合、一般式(1´)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位の共重合比(一般式(1´)で表される繰り返し単位:一般式(2)で表される繰り返し単位)は、質量換算で5:95〜90:10であることが好ましく、10:90〜90:10であることがさらに好ましく、30:70〜90:10であることが特に好ましい。なお、(a)重合体は、一般式(1´)で表される繰り返し単位及び一般式(2)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むこともできる。
【0122】
(a)重合体としては、限定的ではないが、例えば以下の例示化合物を挙げることができ、(A−1)〜(A−4)が好ましい。
【0123】
【化22】

【0124】
【化23】

【0125】
【化24】

【0126】
(a)重合体は、重量平均分子量2,000〜100,000であることが好ましく、重量平均分子量2,000〜80,000が更に好ましく、2,000〜50,000が特に好ましい。
【0127】
(a)重合体は式(1)で表される基を、(a)重合体一分子中に8個以上有することが好ましく、8個〜200個有していることがより好ましく、10個〜150個以上有していることがより好ましく、10〜120個有していることが特に好ましい。
式(1)で表される基の重合体中の個数は、(a)重合体の重量平均分子量と共重合比から求めることができる。例えば、二元系の共重合体であって、分子量Mの繰り返し単位と、分子量Mの繰り返し単位の共重合比が、X:Xであり、重合体の重量平均分子量がMである場合、(a)重合体中に含まれる基の個数は、{M*[X/(X+X)]}/M(個)と算出することができる。
【0128】
なお重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Sup
erHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。
【0129】
本発明における(a)重合体は、前記の式(1´―1)又は(2−1)で表される前駆体等を公知の重合方法により重合し、必要に応じて酸性基をアルカリ金属の水酸化物等により中和することにより得ることができ、例えば、特開昭52−988号公報、特開昭55−154970号公報、Langmuir 18巻14号5414〜5421頁(2002年)等に記載の重合方法に準じた方法で製造することができる。
【0130】
(a)重合体のインク組成物中における含有量としては、0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1.0〜15質量%がさらに好ましい。
【0131】
<(b)ラジカル重合性化合物>
本発明のインク組成物には(b)ラジカル重合性化合物を含有する。本発明のインク組成物は(a)重合体とともにラジカル重合性化合物を含有することで、インクの硬化性が良好な画像が形成でき、インクジェットインクとして用いた場合の吐出回復性等が良好なインク組成物を得ることができる。本発明のメカニズムは明らかではないが、発明者は以下のように推察する。
【0132】
本発明のインク組成物では、(b)ラジカル重合性化合物を用いることにより、一般式(1)の構造を有する重合体及び(b)ラジカル重合性化合物の少なくとも一方の重合が進行するため、(a)重合体の硬化と相まって良好な定着性等が得られていると推測される。また、本発明では、(b)ラジカル重合性化合物をインク中に含有することにより、インクジェット用として用いた場合のインクジェットノズル近傍での乾燥を遅くする効果を奏し、インクの吐出を一旦停止した後の吐出性、所謂吐出回復性を高めることができる。
【0133】
本発明のインク組成物に用いられるラジカル重合性化合物は、ラジカルによって重合反応が進行する化合物であれば何ら限定されない。
【0134】
ラジカル重合性化合物は、1種又は複数を混合して用いることができる。また、ラジカル重合性化合物は、単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。単官能化合物の割合が大きいと硬化物は柔軟になりやすく、多官能化合物の割合が大きいと硬化性に優れる傾向がある。従って、単官能化合物と多官能化合物の割合は用途に応じて任意に決定されるものである。
【0135】
ラジカル重合性化合物は、例えば、一般式(1)で表される基や重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生じる各種公知のラジカル重合性化合物を使用することができる。
ラジカル重合性化合物として、ラジカル重合性モノマーだけでなく、ラジカル重合性オリゴマーを添加することもできる。ラジカル重合性オリゴマーとは、オリゴマーの末端に少なくとも1つのラジカル重合性基を有する化合物であり、重量平均分子量が400〜10,000の範囲の化合物をいう。
【0136】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が好適に挙げられる。より具体的には、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物である。
【0137】
ラジカル重合性化合物の一例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステルおよびこれらの塩;エチレン性不飽和基を有する無水物;(メタ)アクリルアミド;スチレン誘導体;ビニルエーテル類、N−ビニル等が挙げられる。
【0138】
ラジカル重合性化合物は、特に、ラジカル重合性単官能モノマーとラジカル重合性多官能モノマーとが挙げられる。
【0139】
ラジカル重合性単官能モノマーとしては、前記(2−1−1)〜(2−1−27)に記載の重合性化合物の他、アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシメチルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、メトキシオリゴエチレンングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0140】
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[2−(メタクリロイロキシ)エチル]ホスフェート、メチレンビスアクリレート、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0141】
また、上記以外に、ラジカル重合性多官能モノマーとして以下の化合物も挙げられる。本発明はこれらに限定されない。
【0142】
【化25】

【0143】
【化26】

【0144】
【化27】

【0145】
【化28】

【0146】
【化29】

【0147】
【化30】

【0148】
【化31】



【0149】
【化32】

【0150】
【化33】

【0151】
【化34】

【0152】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、ポリエステルオリゴマー、ウレタンオリゴマー、変性ポリエーテルオリゴマー、アクリルオリゴマー、エポキシオリゴマーから選ばれる少なくとも1つ以上を使用することが好ましい。
【0153】
本発明のラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリルアミド基を有することが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリルアミド基を複数有することがさらに好ましい。
ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくとも1つを表し、(メタ)アクリルアミド基とは、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基の少なくとも1つを表す。
【0154】
本発明で好ましく用いられる(メタ)アクリロイルオキシ基を有するラジカル重合性化合物は、一般式(M−1)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0155】
【化35】

【0156】
一般式(M−1)中、Qはn価の連結基を表し、R1mは水素原子またはメチル基を表す。また、nは1以上の整数を表す。
【0157】
式(M−1)の化合物は不飽和単量体が、エステル結合により連結基Qに結合したものである。R1mは、水素原子、またはメチル基をあらわし、好ましくは水素原子である。連結基Qの価数nとしては、n=2以上が好ましく、n=2以上6以下がより好ましく、n=2以上4以下がさらに好ましい。
【0158】
また、連結基Qは(メタ)アクリロイルオキシ構造と連結可能な基であれば特に制限はない。具体的には以下の化合物群Xからn個の水素原子またはヒドロキシル基が除去された残基をあげることができる。
【0159】
−化合物群X−
エチレングリコール、エジレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル、1,5−ペンタンジオール、2−メチル,2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタンジオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、チオジグリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの縮合体、糖類などのポリオール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンジアミンなどのポリアミン類。
【0160】
さらに、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基等の炭素数4以下の置換又は無置換のアルキレン鎖、更にはピリジン環、イミダゾール環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などの飽和もしくは不飽和のヘテロ環を有する官能基などを例示することができる。
【0161】
連結基Qとしては、これらの中でも、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を含むポリオール類の残基であることが好ましく、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を3以上含むポリオール類の残基であることが特に好ましい。
【0162】
本発明で好ましく用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するラジカル重合性化合物は、一般式(M−2)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0163】
【化36】

【0164】
一般式(M−2)中、Qはn価の連結基を表し、R2mは水素原子またはメチル基を表す。また、nは1以上の整数を表す。
【0165】
式(M−2)の化合物は不飽和単量体が、アミド結合により連結基Qに結合したものである。R2mは、水素原子、またはメチル基をあらわし、好ましくは水素原子である。連結基Qの価数nとしては、n=2以上が好ましく、n=2以上6以下がより好ましく、n=2以上4以下がさらに好ましい。
【0166】
また、連結基Qは(メタ)アクリルアミド構造と連結可能な基であれば特に制限はない。具体的には上述の化合物群Xからn個の水素原子またはヒドロキシル基が除去された残基をあげることができる。
【0167】
連結基Qとしては、これらの中でも、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を含むポリオール類の残基であることが好ましく、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を3以上含むポリオール類の残基であることが特に好ましい。
【0168】
本発明のインク組成物に対する(b)ラジカル重合性化合物の割合は、硬化性の観点から、インク組成物の全質量に対し、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。
【0169】
また、(a)重合体と(b)ラジカル重合性化合物のインク組成物中の比は質量比で(a):(b)が20:80〜80:20が好ましく、30:70〜80:20がより好ましく、30:70〜70:30が特に好ましい。この範囲ではインク粘度と吐出回復性のバランスが取れる傾向にある。
【0170】
<(c)水>
本発明のインク組成物は、水を含有する。
水としては、不純物を含まないイオン交換水、蒸留水などを用いることが好ましい。
本発明のインク組成物における水の含有量は、10〜97質量%であることが好ましく、また、30〜90質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることがより好ましい。
【0171】
<(d)色材>
本発明のインク組成物は、(d)色材を含有する。
本発明に用いることができる色材としては、特に制限はなく、顔料、水溶性染料、分散染料等の公知の色材から任意に選択して使用することができる。この中でも、色材としては、顔料を含むことがより好ましい。
【0172】
(顔料)
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料などが挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として水、液状有機化合物や不溶性の樹脂等に分散させたもの、及び、樹脂や顔料誘導体等で顔料表面を処理したもの等)も挙げられる。なお、前記顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年、朝倉書店発行)、橋本勲著「有機顔料ハンドブック」(2006年、カラーオフィス発行)、W. Herbst, K. Hunger編「Industrial Organic Pigments」(1992年、Wiley−VHC発行)、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報、特開2009−235370号公報に記載のものが挙げられる。
【0173】
前記有機顔料及び無機顔料としては、例えば、黄色顔料、赤色顔料、マゼンタ顔料、青色顔料、シアン顔料、緑色顔料、橙色顔料、紫色顔料、褐色顔料、黒色顔料、白色顔料等が挙げられる。
前記黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、10、65、73、74、75、97、98、111、116、130、167、205等のモノアゾ顔料、61、62、100、168、169、183、191、206、209、212等のモノアゾレーキ顔料、12、13、14、16、17、55、63、77、81、83、106、124、126、127、152、155、170、172、174、176、214、219等のジスアゾ顔料、24、99、108、193、199等のアントラキノン顔料、60等のモノアゾピラゾロン顔料、93、95、128、166等の縮合アゾ顔料、109、110、139、173、185等のイソインドリン顔料、120、151、154、175、180、181、194等のベンズイミダゾロン顔料、117、129、150、153等のアゾメチン金属錯体顔料、138等のキノフタロン顔料、213等のキノキサリン顔料が好ましい。
【0174】
前記赤色又はマゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド 193等のモノアゾレーキ顔料、38等のジスアゾ顔料、2、5、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、22、23、31、32、112、114、146、147、150、170、184、187、188、210、213、238、245、253、256、258、266、268、269等のナフトールAS顔料、3、4、6等のβ−ナフトール顔料、49、53、68等のβ−ナフトールレーキ顔料、237、239、247等のナフトールASレーキ顔料、41等のピラゾロン顔料、48、52、57、58、63、64:1、200等のBONAレーキ顔料、81:1、169、172等のキサンテンレーキ顔料、88、181、279等のチオインジゴ顔料、123、149、178、179、190、224等のペリレン顔料、144、166、214、220、221、242、262等の縮合アゾ顔料、168、177、182、226、263等のアントラキノン顔料、83等のアントラキノンレーキ顔料、171、175、176、185、208等のベンズイミダゾロン顔料、122、202(C.I.ピグメントバイオレット 19との混合物を含む)、207、209等のキナクリドン顔料、254、255、264、270、272等のジケトピロロピロール顔料、257、271等のアゾメチン金属錯体顔料が好ましい。
【0175】
前記青色又はシアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー 25、26等のナフトールAS顔料、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、75、79等のフタロシアニン顔料、1、24:1、56、61、62等の染付けレーキ顔料、60等のアントラキノン系顔料、63等のインジゴ顔料、80等のジオキサジン顔料が好ましい。
前記緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン 1、4等の染付けレーキ顔料、7、36等のフタロシアニン顔料、8等のアゾメチン金属錯体顔料が好ましい。
前記橙色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ 1等のモノアゾ顔料、2、3、5等のβ−ナフトール顔料、4、24、38、74等のナフトールAS顔料、13、34等のピラゾロン顔料、36、60、62、64、72等のベンズイミダゾロン顔料、15、16等のジスアゾ顔料、17、46等のβ−ナフトールレーキ顔料、19等のナフタレンスルホン酸レーキ顔料、43等のペリノン顔料、48、49等のキナクリドン顔料、51等のアントラキノン系顔料、61等のイソインドリノン顔料、66等のイソインドリン系顔料、68等のアゾメチン金属錯体顔料、71、73、81等のジケトピロロピロール顔料が好ましい。
【0176】
前記褐色顔料としては、C.I.ピグメントブラウン 5等のBONAレーキ顔料、23、41、42等の縮合アゾ顔料、25、32等のベンズイミダゾロン顔料が好ましい。
前記紫色顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット 1、2、3、27等の染付けレーキ顔料、13、17、25、50等のナフトールAS顔料、5:1等のアントラキノンレーキ顔料、19等のキナクリドン顔料、23、37等のジオキサジン顔料、29等のペリレン顔料、32等のベンズイミダゾロン顔料、38等のチオインジゴ顔料が好ましい。
前記黒色顔料としては、C.I.ピグメントブラック 1等のインダジン顔料、7であるカーボンブラック、10であるグラファイト、11であるマグネタイト、20等のアントラキノン顔料、31、32等のペリレン顔料が好ましい。
前記白色顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 4である酸化亜鉛、6である酸化チタン、7である硫化亜鉛、12である酸化ジルコニウム(ジルコニウムホワイト)、18である炭酸カルシウム、19である酸化アルミニウム・酸化ケイ素(カオリンクレー)、21又は22である硫酸バリウム、23である水酸化アルミニウム(アルミナホワイト)、27である酸化ケイ素、28であるケイ酸カルシウムが好ましい。
白色顔料に使用される無機粒子は単体でもよいし、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物や有機金属化合物、有機化合物との複合粒子であってもよい。
中でも前記酸化チタンが、好適に使用される。なお、前記酸化チタンに加えて他の白色顔料(上述した白色顔料以外のものであってもよい。)を併用してもよい。
【0177】
顔料粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、更に好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、顔料、分散剤、媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。なお、本発明においては、粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)等の市販の粒径測定装置を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0178】
(水溶性染料)
本発明に用いることができる水溶性染料としては、例えば酸性染料や直接染料が挙げられる。酸性染料、直接染料は、可溶化基として、酸性基をもつ構造となっている。酸性基としては、スルホン酸基およびその塩、カルボン酸基およびその塩、リン酸基およびその塩が挙げられる。酸性基の数はひとつでも複数でもよく、組み合わせでもよい。水溶性染料が含有する発色団の化学構造としては、アゾ系、フタロシアニン系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、ピラゾロン系、ニトロ系、スチルベン系、キノリン系、メチン系、チアゾール系、キノンイミン系、インジゴイド系、ローダミン系、アントラキノン系、アンスラキノン系のものなどが挙げられる。
【0179】
(分散染料)
また、本発明においては、分散染料を用いることもできる。
【0180】
本発明に用いることができる色材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0181】
(d)色材のインク組成物中における含有量は、色材の物性(比重、着色力や色味等)、インク組成物を何色組み合わせて印画物を作製するかといった条件により適宜選択することができるが、インク組成物全体の質量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましい。
【0182】
(顔料分散剤)
色材として顔料を用いる場合には、顔料粒子を調製する際に、必要に応じて顔料分散剤を用いてもよく、用いることのできる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩を挙げることができる。
【0183】
また、本発明のインク組成物には、自己分散顔料を用いることもできる。本発明でいう自己分散顔料とは、顔料分散剤なしで分散が可能な顔料を指し、特に好ましくは、表面に極性基を有している顔料粒子である。
【0184】
本発明でいう表面に極性基を有する顔料粒子とは、顔料粒子表面に直接極性基で修飾させた顔料、あるいは有機顔料母核を有する有機物で直接に又はジョイントを介して極性基が結合しているもの(以下、顔料誘導体という)をいう。
極性基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、硼酸基、水酸基が挙げられるが、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基であり、更に好ましくは、スルホン酸基である。
【0185】
このような表面に極性基を有する顔料粒子を得るには、公知の方法を適宜用いることができる。
【0186】
顔料表面における極性基は、フリーでも塩の状態でも良いし、あるいはカウンター塩を有していても良い。カウンター塩としては、例えば、無機塩(リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケル、アンモニウム)、有機塩(トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ピリジニウム、トリエタノールアンモニウム等)が挙げられ、好ましくは1価の価数を有するカウンター塩である。
【0187】
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい。
【0188】
インク組成物中の分散剤の好ましい添加量は、インク組成物中における顔料の質量をP、インク組成物中における高分子分散剤の質量をDとした場合、その質量比(D/P)が、0.01≦D/P≦2.0であることが好ましく、0.03≦D/P≦1.5であることがより好ましく、0.05≦D/P≦0.6であることが更に好ましい。
【0189】
さらに、分散時には、分散剤に加えて、一般にシナジストと呼ばれる分散助剤(例えば、ルーブリゾール社より市販されているSOLSPERSEシリーズの5000、12000、22000、BASF・ジャパン社より市販されているEFKA6745等)や、各種界面活性剤、消泡剤を添加して、顔料の分散性、濡れ性を向上させることも好ましい。
【0190】
本発明において、顔料の分散を行う場合には、顔料と分散剤とを混合した後、極性有機溶媒に添加して分散する、又は、極性有機溶媒と分散剤とを混合した後、顔料を添加して分散することが好ましい。分散には、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ソルトミル、アトライター、ロールミル、アジテーター、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各分散装置を用いることができる。中でもビーズミル分散装置は、分散性に優れるので好ましい。
ビーズミル分散を行う際に使用するビーズは、好ましくは0.01〜3.0mm、より好ましくは0.05〜1.5mm、更に好ましくは0.1〜1.0mmの体積平均径を有するものを用いることにより、安定性に優れた顔料分散物を得ることができる。
【0191】
<その他の添加剤>
本発明のインク組成物には、必須成分である(a)重合体、(b)ラジカル重合性化合物、(c)水、(d)色材に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、公知の添加剤を併用することができる。以下、インク組成物に使用しうる添加剤について説明する。
【0192】
(水溶性有機溶剤)
本発明のインク組成物は、水を含有するが、目的に応じて、さらに、水溶性有機溶剤を併用することが好ましい。
ここで水溶性有機溶剤とは、25℃の水に対する溶解度が10質量%以上である有機溶剤をいう。
【0193】
本発明で用いることのできる水溶性有機溶剤としては、例えば、下記のものが挙げられる。
・アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、
・多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−メチルプロパンジオール等)、
・多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルトリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、のようなオリゴアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのようなオリゴアルキレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、
・アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、
・アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、
・複素環類(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、3−プロピル−2−オキサゾリジノン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等)、
・スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、
・スルホン類(例えば、スルホラン等)、
・その他(尿素、アセトニトリル、アセトン等)
【0194】
好ましい水溶性有機溶剤としては、複素環類、多価アルコールエーテル類等が挙げられ、これらを併用して使用することが好ましい。
【0195】
複素環類としては、下記一般式(E1)で表される化合物が好ましい。
【0196】
【化37】

【0197】
式(E1)中、Re1及びRe2は各々独立に、−CH−、−NRe4−又は−O−を表し、Re1及びRe2が同時に−CH−であることはなく、Re4は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。Re3は−C2m−、−C2m−2−又は−C2m−4−で表される炭化水素基を表し、mは2〜8の整数を表す。
【0198】
式(E1)中、Re4で表されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、アルコキシ基等の置換基を有していても、置換基を有していなくてもよい。
e4は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又は水素原子であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子であることがより好ましい。Re1及びRe2のうち、少なくとも1つは−O−であることが好ましく、両方とも−O−である、すなわち、式(E1)で表される有機溶剤がカーボネート基を有する化合物であることがより好ましい。
式(E1)中、Re3は−C2m−、−C2m−2−又は−C2m−4−で表される炭化水素基を表し、mは2〜8の整数を表す。Re3におけるmは、2〜6の整数であることが好ましく、2〜4の整数であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。Re3は−C2m−又は−C2m−2−であることが好ましく、−C2m−であることがより好ましい。Re3は直鎖であっても、分岐であってもよい。
また、Re3として具体的には、エチレン基、1−メチルエチレン基及びプロピレン基などが好ましく例示できる。中でもエチレン基又は1−メチルエチレン基が特に好ましい。
【0199】
式(E1)で表される有機溶剤の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、3−プロピル−2−オキサゾリジノン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0200】
複素環類としては、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等が好ましく、2−ピロリドンが特に好ましい。特に沸点の高い溶媒は好ましく用いることができ、常圧での沸点が120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
【0201】
多価アルコールエーテル類では、いわゆるグリコールエーテル類が好ましい。前記グリコールエーテル類は、以下の一般式(E2)で表される構造を分子内に有する化合物である。
【0202】
【化38】

【0203】
式(E2)中、kは2又は3の整数を表す。nは1〜4の整数を表す。*は結合位置を表す。
【0204】
前記グリコールエーテル類としては、具体的には、オリゴアルキレングリコールモノアルキルエーテル、オリゴアルキレングリコールジアルキルエーテル等が好ましく、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等がさらに好ましく、2−ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
【0205】
水溶性有機溶剤は、単独もしくは複数を併用しても良い。水溶性有機溶剤のインク組成物中の添加量としては、総量で0.1〜60質量%であり、好ましくは0.5〜40質量%である。
【0206】
(界面活性剤)
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加することができる。好ましく使用される界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0207】
また、本発明においては、高分子界面活性剤も用いることができ、以下の水溶性樹脂が、好ましい高分子界面活性剤として挙げられる。水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
【0208】
(ラテックス)
本発明のインク組成物には、ラテックスを添加することができる。本発明に用いうるラテックスとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、シリコン−アクリル共重合体およびアクリル変性フッ素樹脂等のラテックスが挙げられる。ラテックスは、乳化剤を用いてポリマー粒子を分散させたものであっても、また乳化剤を用いないで分散させた所謂ソープフリーラテックスであってもよい。乳化剤としては界面活性剤が多く用いられるが、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(例えば、可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるポリマー)を用いることも好ましい。
【0209】
(水性ポリマー)
本発明のインク組成物には、(a)重合体と異なる水性ポリマーを添加することができる。
水性ポリマーの好ましい例としては、天然高分子が挙げられ、その具体例としては、にかわ、ゼラチン、ガゼイン、若しくはアルブミンなどのたんぱく質類、アラビアゴム、若しくはトラガントゴムなどの天然ゴム類、サボニンなどのグルコシド類、アルギン酸及びアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、若しくはアルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはエチルヒドロキシルセルロースなどのセルロース誘導体が挙げられる。
【0210】
水性ポリマーの他の好ましい例としては、合成高分子が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、及び酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中で、ノニオン性の水性ポリマーが好ましく、特に好ましい例としては、ポリビニルピロリドン類が挙げられる。
【0211】
本発明に用いうる水性ポリマーの分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上20,000以下がより好ましい。
【0212】
水性ポリマーの添加量は、溶解された顔料に対して10質量%以上1,000質量%以下が好ましい。更には、50質量%以上200質量%以下がより好ましい。
【0213】
(重合開始剤)
本発明のインク組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で重合開始剤を含有しても良い。重合開始剤は水溶性であることが好ましく、水溶性の程度としては、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することが好ましく、1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することが特に好ましい。また、非水性の重合開始剤を分散した状態でも用いることができる。
本発明では、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類及びアシルフォスフィンオキシド類からなる群より選択される重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル]−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等の水溶性の重合開始剤や、[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド]の非水性の重合開始剤も用いることができる。
【0214】
(増感色素)
本発明においては、公知の増感色素を併用することができ、増感色素を併用することが好ましい。溶解性としては蒸留水に対して室温において、0.5質量%以上溶解するものが好ましく、1質量%以上溶解するものがより好ましく、3質量%以上溶解するものが特に好ましい。また、増感度色素としては、非水溶性の重合開始剤を分散した重合開始剤も用いることができる。
【0215】
併用しうる公知の増感色素の例としては、N−[2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアルミウムクロリド、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン誘導体及び3−アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン及び3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン及びエリスロシンや、こ
れらを水溶化した変性体及び分散体などが挙げられる。また、特開2010−24276号広報に記載の増感色素や、特開平6−107718号広報に記載の増感色素も、好適に使用できる。
【0216】
本発明に係るインク組成物には、上述した各構成要素に加えて、必要に応じて、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤、固体湿潤剤、シリカ微粒子等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤等を挙げることができる。
【0217】
<インク組成物の調製方法>
本発明に係るインク組成物の調製方法としては、特に制限はなく、各成分を、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミルなどの容器駆動媒体ミル、サンドミルなどの高速回転ミル、撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミル、ディスパーなどの簡単な分散機により撹拌、混合し、分散させることにより調製することができる。各成分の添加順序については任意である。添加時や添加後、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパー、ホモジナイザーなどの簡単な撹拌機にて均一に混合する。ラインミキサーなどの混合機を用いて混合してもよい。また、分散粒子をより微細化するために、ビーズミルや高圧噴射ミルなどの分散機を用いて混合してもよい。また、顔料や高分子分散剤の種類によっては、顔料分散前のプレミックス時に樹脂を添加するようにしてもよい。
【0218】
本発明のインク組成物は、25℃における表面張力が20〜40mN/mであることが好ましい。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用い、25℃の条件下で測定されるものである。また、粘度は、1〜40mPa・sが好ましく、3〜30mPa・sがより好ましい。インク組成物の粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYOCO.LTD製)を用い、25℃の条件下で測定されるものである。
【0219】
≪画像形成方法≫
本発明の画像形成方法は、前記インク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、前記インク組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程とを含むことを特徴とする。これらの工程を行うことで、記録媒体上に定着したインク組成物による画像が形成される。
【0220】
<インク付与工程>
以下、本発明の画像形成方法における、インク付与工程について説明する。本発明におけるインク付与工程は、前記インク組成物を記録媒体上に付与する工程であれば特に限定されない。
【0221】
本発明の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明の画像形成方法における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
【0222】
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、加熱手段を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0223】
本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが望ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0224】
上記のインクジェット記録装置を用いて、インク組成物の吐出はインク組成物を好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク組成物の粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
【0225】
吐出時のインク組成物の温度は一定であることが好ましくインク組成物の温度の制御幅は、より好ましくは設定温度の±5℃、更に好ましくは設定温度の±2℃、特に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
【0226】
本発明において、記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の記録媒体を使用することができる。記録媒体としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。中でも、本発明のインク組成物は密着性に優れるため、記録媒体として非吸収性記録媒体に対して好適に使用することができ、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等のプラスチック基材が好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂基材がより好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂シート又はフィルムがさらに好ましい。
【0227】
<照射工程>
以下、本発明の画像形成方法における、照射工程について説明する。本発明における照射工程は、前記記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する工程であれば特に限定されない。本発明のインク組成物に活性エネルギー線を照射することで、インク組成物中の化合物の架橋反応が進行し、画像を定着させ、印画物の耐溶剤性等を向上させることが可能となる。この照射工程により、(a)重合体の架橋反応が起こり、インク組成物中に下記一般式(5)の架橋構造が形成される。
【0228】
【化39】

【0229】
式(5)中、R、R、R及びRは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は結合位置を表す。
及びRは、好ましい範囲も含めて、式(1)に記載されたものと同様である。Rは好ましい範囲も含めて式(1)に記載されたRと同様である。Rは好ましい範囲も含めて式(1)に記載されたRと同様である。
【0230】
前記照射工程で用いることができる活性エネルギー線としては、紫外線(以下、UV光とも称する)、可視光腺、電子線等をあげることができ、UV光を使用することが好ましい。
【0231】
UV光のピーク波長は、必要に応じて用いられる増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜405nmであることが好ましく、250〜405nmであることがより好ましく、250〜390nmであることが更に好ましい。
【0232】
UV光の出力は、2,000mJ/cm以下であることが好ましく、より好ましくは、10mJ/cm〜2,000mJ/cmであり、更に好ましくは、20mJ/cm〜1,000mJ/cmであり、特に好ましくは、50mJ/cm〜800mJ/cmである。
更に、UV光は、露光面照度が、例えば、10mW/cm〜2,000mW/cm、好ましくは、20mW/cm〜1,000mW/cmで照射されることが適当である。
【0233】
UV光源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。また、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用であり、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、UV光源として期待されている。
【0234】
本発明のインク組成物は、このようなUV光に、例えば、0.01秒間〜120秒間、好ましくは、0.1秒間〜90秒間照射されることが適当である。
照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査する方式や、駆動を伴わない別光源によって行われ、駆動を伴わない別光源によって行われる方式が好ましい。活性エネルギー線の照射は、インク着弾、熱定着後、一定時間(例えば、0.01秒間〜60秒間、好ましくは、0.01秒間〜30秒間、より好ましくは、0.01秒間〜15秒間)をおいて行われることになる。
【0235】
<加熱乾燥工程>
記録媒体上に吐出されたインク組成物は、加熱手段により(c)水および必要に応じて併用される水溶性有機溶剤が蒸発されることにより定着されることが好ましい。吐出された本発明のインク組成物に熱を加え、定着する工程について説明する。
加熱手段としては、(c)水および必要に応じて併用される水溶性有機溶剤を乾燥させることができればよく、限定されないが、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、熱オーブン、ヒート版加熱などを使用することができる。
加熱温度は、インク組成物中に存在する(c)水および必要に応じて併用される水溶性有機溶剤が蒸発し、かつ(a)重合体および、必要に応じて添加されるポリマーバインダーの皮膜を形成することができれば特に制限はないが、40℃以上であればその効果が得られ、40℃〜150℃程度が好ましく、より好ましくは、40℃〜80℃程度である。 なお、乾燥/加熱時間は、インク組成物中に存在する(c)水および必要に応じて併用される水溶性有機溶剤が蒸発し、かつ樹脂剤の皮膜を形成することができれば特に制限はなく、用いるインク組成物の組成・印刷速度を加味して適宜設定することができる。
加熱により定着された前記溶剤型インク組成物は、必要に応じ、活性エネルギー線を照射して、さらに光定着することができる。UV光による定着をすることが好ましい。
【実施例】
【0236】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0237】
実施例、比較例で使用した顔料分散物、インク組成物の素材を以下に示す。
【0238】
<ポリマー分散剤D−1の合成>
攪拌機、冷却管を備えた500mlの三口フラスコにメチルエチルケトン44gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン25gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.43g、ベンジルメタクリレート30g、メタクリル酸5g、及びメチルメタクリレート15gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン1gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.21gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤D−1を43g得た。
得られた樹脂の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は42,000であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.4mgKOH/gであった。
【0239】
<樹脂被覆顔料の分散物の調製>
(樹脂被覆シアン顔料分散物(C))
ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブルーA220、大日精化(株)製)10部と、上記ポリマー分散剤D−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆シアン顔料分散物(C)を得た。
【0240】
(樹脂被覆マゼンタ顔料分散物(M))
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Chromophthal Jet Magenta DMQ(ピグメント・レッド122、BASF・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆マゼンタ顔料分散物(M)を得た。
【0241】
(樹脂被覆イエロー顔料分散物(Y))
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Irgalite Yellow GS(ピグメント・イエロー74、BASF・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆イエロー顔料分散物(Y)を得た。
【0242】
(樹脂被覆ブラック顔料分散物(K))
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、顔料分散体CAB−O−JETTM 200(カーボンブラック、CABOT社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆ブラック顔料分散物(K)を得た。
【0243】
<(a)重合体>
【0244】
(a)重合体は、特開昭52−988号公報を参考に合成を行った。(a)重合体の各構造を下記に示す。
【0245】
【化40】

【0246】
<(b)ラジカル重合性化合物>
表1における重合性化合物を以下に表す。
【0247】
【化41】

【0248】
A−400はNKエステルA−400 (ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、Mn 400、新中村化学社製)を表す。
【0249】
M-1は以下のように合成した。
−M−1の合成−
攪拌機を備えた1Lの三口フラスコに4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン40.0g(182mmol)、炭酸水素ナトリウム37.8g(450mmol)、水100g、テトラヒドロフラン300mLを加えて、氷浴下、アクリル酸クロリド35.2g(389mmol)を20分かけて滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌した後、得られた反応混合物から減圧下でテトラヒドロフランを留去した。次に水層を酢酸エチル200mlで4回抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過を行い、減圧下溶媒留去することにより目的の重合性化合物2の白色固体を35.0g(107mmol、収率59%)得た。
【0250】
<水溶性有機溶剤>
・2−ピロリドン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)
【0251】
<比較化合物>
比較化合物(P−1)は、特開昭52−988号公報を参考に合成を行った。また、比較化合物(P−2)は、特開2007−119449号公報(前記特許文献1)の実施例で使用している化合物を参考に合成を行った。
【0252】
【化42】


【0253】
<重合開始剤>
表1における重合開始剤は、イルガキュア 2959 (BASF・ジャパン製)を表す。
【0254】
<界面活性剤>
表1における界面活性剤は、Glide 100(Tego Chemical Service社製)を表す。
【0255】
<増感剤>
表1における増感剤(S−1)は(製品名N−[2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)プロピル-N,N,N-トリメチルアミニウムクロリド、シグマアルドリッチジャパン社製)を表す。
【0256】
実施例及び比較例で使用する化合物のうち、製造元の記載のない化合物は、公知の方法、又は、公知の方法を応用し、合成した。
【0257】
<インク組成物の調製>
得られた分散物(C分散物、M分散物、Y分散物、K分散物)を用い、下記の表1に示す組成の実施例1〜8、及び比較例1〜4のインク組成物を、ミキサー(シルバーソン社製L4R)を用いて2,500回転/分にて10分間撹拌して、それぞれ調製した。得られたインク組成物は、プラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径5μmフィルタ(ミリポア社製のMillex−SV、直径25mm)にて濾過して完成インクとした。
また、インク組成物の粘度を、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYOCO.LTD製)を用い、25℃の条件下で測定したところ、いずれも30mPa・s以下であり、インクジェット吐出が可能な範囲であった。
【0258】
得られたインクをRK PRINT COAT INSTRUMENTS社製 Kハンドコーター KハンドコーターのNo.2バーを用いて、塩化ビニルシート(エイブリィ・デニソン社製、AVERY 400 GLOSS WHITE PERMANENT)に12μmの厚みで塗布した。さらに60℃で3分間水分を乾燥した。
得られた塗膜を用いて、以下の定着性の評価を行った。評価結果は表1に示す。
【0259】
<定着性評価>
得られた塗膜をDeep UVランプ(ウシオ電機(株)製、SP−7)で1000mJ/cmのエネルギーとなる条件で露光した。膜表面の定着度合いを触診にて評価した。べたつきが残る場合は、べたつきが無くなるまで露光を繰り返し、べたつきがなくなるまでの露光量により定着性を評価した。
A:1回の露光でべたつきが無くなる
B:2〜3回の露光でべたつきが無くなる
C:4〜5回の露光でべたつきが無くなる
D:6回以上露光してもべたつきが無くならない
【0260】
得られた各インク組成物及び定着性の評価で作製した印画物を使用し、耐溶剤性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0261】
<耐溶剤性評価>
前述の定着性の評価で得られた塗膜を、更にDeep UVランプ(ウシオ電機(株)製、SP−7)で8000mJ/cmのエネルギーとなる条件で露光した。8000mJ/cmのエネルギー条件で露光した印画物の表面をイソプロピルアルコールを含浸した綿棒にてこすり、以下の基準で評価した。
A:10回以上こすっても、画像に変化が認められなかった。
B:5〜9回のこすりで、画像の濃度が低下した。
C:2〜4回のこすりで、画像の濃度が低下した。
D:1回こすっただけで、画像の濃度が著しく低下した。
【0262】
<吐出回復性評価>
インクジェット記録装置として、市販のインクジェットプリンタ(ローランド ディー.ジー.社製SP−300V)を用意した。得られた各インク組成物を上記インクジェットプリンタに装填し、塩化ビニルシート(エイブリィ・デニソン社製、AVERY 400 GLOSS WHITE PERMANENT)に標準印刷モードにてヘッドから10分間吐出し、ベタ画像及び細線を記録した。10分間吐出を停止した後、標準印刷モードにて再び10分間吐出しベタ画像及び細線を記録して得られた画像(5cm×5cm)を観察した。観察した画像を下記の評価基準に従って目視により評価した。
A:抜けの発生等によるドット欠けの発生が認められず、良好な画像が得られた。
B:抜けの発生等によるドット欠けの発生がわずかに認められたが、実用上支障をきたさない程度であった。
C:抜けの発生等によるドット欠けの発生があり、実用に耐えない画像であった。
D:吐出ができなかった。
【0263】
【表1】



【0264】
前記表1に示すように、本発明における実施例のインク組成物では、定着性、耐溶剤性、及び吐出回復性のいずれにおいても優れた効果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表される基を有する繰り返し単位(a1)と、親水性基を有する繰り返し単位(a2)とを有する重合体、
(b)ラジカル重合性化合物、
(c)水、及び
(d)色材
を有するインク組成物。
【化1】


(式(1)中、Ra及びRは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成してもよい。*は結合位置を表す。)
【請求項2】
前記(b)ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイルオキシ基又は(メタ)アクリルアミド基を有する化合物である、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記インク組成物における前記(a)重合体の含有量が0.5質量%〜20質量%であり、かつ(b)ラジカル重合性化合物の含有量が1質量%〜20質量%である、請求項1又は請求項2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記(a1)が、下記一般式(1’)で表される繰り返し単位である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化2】


(式(1´)において、R及びRは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、Ra及びRは互いに結合して4〜6員の脂環構造を形成していてもよい。Rは水素原子又はメチル基を表す。Zは単結合、−COO−*、又は−CONR−*を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、*はXとの結合位置を表す。Xは2価の有機基を表す。)
【請求項5】
前記Xで表される2価の有機基が、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はアリーレン基を含んでいてもよい、炭素数2〜20のアルキレン基である、請求項4に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記(a2)が下記一般式(2)で表される繰り返し単位である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のインク組成物。
【化3】


(一般式(2)において、Rcyは水素原子またはメチル基を表す。Zは−COO−*、−CONRdy−*または単結合を表し、Rdyは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rは単結合、アルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基からなる群から選ばれる基を表す。Aは親水性基を表す。*はRに結合する位置を表す。)
【請求項7】
前記(a2)における親水性基が、窒素原子又は酸素原子を含む複素環化合物から水素原子を1個除いた残基、アミド基、カルバモイル基、アルキル置換カルバモイル基、アルコール性水酸基及びポリアルキレンオキシ構造を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記(a2)における親水性基が、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基及びそれらの塩、並びに4級アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記インク組成物に対する前記(c)水の含有量が、10質量%〜97質量%である、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項10】
更に(e)水溶性有機溶剤を含む、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記(e)水溶性有機溶剤が下記一般式(E1)で表される化合物である、請求項10に記載のインク組成物。
【化4】


(式(E1)中、Re1及びRe2は各々独立に、−CH−、−NRe4−又は−O−を表し、Re1及びRe2が同時に−CH−であることはなく、Re4は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。Re3は−C2m−、−C2m−2−又は−C2m−4−で表される炭化水素基を表し、mは2〜8の整数を表す。)
【請求項12】
前記(e)が2−ピロリドン又はγ−ブチロラクトンである、請求項11に記載のインク組成物。
【請求項13】
インクジェット記録用であることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のインク組成物。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と
前記インク組成物中に活性エネルギー線を照射する照射工程と、
を含む画像形成方法。

【公開番号】特開2012−162656(P2012−162656A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24480(P2011−24480)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】