説明

インク組成物

【課題】蛍光強度と、発色性とを損なうことなく、良好な耐光性を有する記録物を得ることができるインク組成物およびこれを用いた記録方法の提供。
【解決手段】インク組成物は、C.I.アシッドレッド52と、C.I.アシッドレッド92と、特定のモノアゾ染料とを少なくとも含んでなるインク組成物であって、C.I.アシッドレッド52と、C.I.アシッドレッド92との含有量の和と、特定のモノアゾ染料の含有量との比が、特定の範囲内であるインク組成物をインクジェット記録方法に用いる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、蛍光染料を含んでなるインク組成物およびそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
【0002】
背景技術
郵便料金または料金別納郵便物の証印の押印のための料金別納印刷機において、赤色蛍光インクが使用されている。とりわけ、北米においては、料金別納郵便物の証印に使用されるインクとして、米国郵政公社で使用される自動読取装置によって読み取りができる赤色蛍光インクが指定されている。
【0003】
自動読取装置では、バーコードの読み取りだけでなく、郵便物の表裏の検出も同時に行われる。そのため、赤色蛍光インクは、バーコード読み取り精度向上のために高い光学濃度だけでなく、検出郵便物の表裏検知ミス低減のために高い蛍光強度も必要とされる。
【0004】
料金別納郵便物用の蛍光インクとして、特開平9−291246号公報(特許文献1)は、補助溶剤浸透剤としてグリコールエーテルが添加された、耐水性に優れる赤色蛍光インクを開示している。
【0005】
また、特開2006−131667号公報(特許文献2)は、蛍光染料として、C.I.アシッドレッド52および92を用いた水溶解蛍光色材と、顔料としてC.I.ピグメントレッド122等からなる顔料分散体溶液とを併用した、蛍光発色性が良好な水性蛍光インクを開示している。
【0006】
しかしながら、蛍光染料は耐光性に弱いが、耐光性を向上させるために別の染料等を混合すると、蛍光染料と、別の染料との相互作用により蛍光強度が急激に低下する場合があった。
【0007】
また、これまでにC.I.アシッドレッド52および92を用いた赤色蛍光インク組成物に、C.I.ダイレクトイエロー87を併用することにより、蛍光強度と、発色性(光学濃度)とに優れた赤色蛍光インク組成物が提供されている(特開2009−256544号公報:特許文献3)が、蛍光強度と、発色性(光学濃度)とを損なうことなく、良好な耐光性を有するインク組成物については、未だ希求されているといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9―291246号公報
【特許文献2】特開2006−131667号公報
【特許文献3】特開2009−256544号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、今般、C.I.アシッドレッド52と、C.I.アシッドレッド92と、下記式(I)で表される染料とを少なくとも含んでなるインク組成物であって、C.I.アシッドレッド52と、C.I.アシッドレッド92との含有量の和と、アントラピリドン系染料の含有量との比が特定の範囲内にあるインク組成物とすることにより、蛍光強度と、発色性とを損なうことなく、良好な耐光性を有するインク組成物が得られるとの知見を得た。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0010】
従って、本発明は、蛍光強度と、発色性とを損なうことなく、良好な耐光性を有する記録物を得ることができるインク組成物の提供をその目的としている。
【0011】
そして、本発明によるインク組成物は、C.I.アシッドレッド52と、C.I.アシッドレッド92と、下記式(I)で表される染料とを少なくとも含んでなるインク組成物であって、
C.I.アシッドレッド52と、C.I.アシッドレッド92との含有量の和と、下記式(I)で表される染料の含有量との比が、1:0.1〜1:4であるインク組成物である:
【化1】

(上記式中、
〜R10は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、スルホ基、またはそれらの塩を表し、
およびRが、それぞれ独立して、共にアルキル基を表す場合には、Rのアルキル基を構成する炭素数と、Rのアルキル基を構成する炭素数との合計が3以上であり、RおよびRは、それぞれ置換基を有していてもよく、
およびR10が、それぞれ独立して、共にアルキル基を表す場合には、Rのアルキル基を構成する炭素数と、R10のアルキル基を構成する炭素数との合計が3以上であり、RおよびR10は、それぞれ置換基を有していてもよく、
は、水素原子またはアルカリ金属原子を表す)。
【0012】
また、本発明によるインクジェット記録方法は、インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、上記インク組成物を用いるものである。
【0013】
本発明によれば、蛍光強度と、発色性とを損なうことなく、良好な耐光性を有する記録物を得ることができるインク組成物を提供することができる。
【発明の具体的説明】
【0014】
インク組成物
本発明によるインク組成物は、C.I.アシッドレッド52(C.I. Acid Red 52)、C.I.アシッドレッド92(C.I. Acid Red 92)、および上記式(I)で表される染料を少なくとも含んでなるインク組成物であって、C.I.アシッドレッド52と、C.I.アシッドレッド92との含有量の和と、下記式(I)で表される染料の含有量との比が、1:0.1〜1:4であることより、蛍光強度と、発色性とを損なうことなく、良好な耐光性を有する記録物を得ることができる。以下、本発明のインク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0015】
<染料>
本発明によるインク組成物は、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド92、および上記式(I)で表される染料を少なくとも含んでなる。なお、tert-Buは、tert-ブチル基を表す。
【0016】
本発明の好ましい上記式(I)で表される染料の化合物群としては、
〜R10は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、スルホ基、またはそれらのリチウム塩を表し、
およびRが、それぞれ独立して、共にアルキル基を表す場合には、Rのアルキル基を構成する炭素数と、Rのアルキル基を構成する炭素数との合計が4〜6であり、RおよびRは、それぞれ置換基を有さず、
およびR10が、それぞれ独立して、共にアルキル基を表す場合には、Rのアルキル基を構成する炭素数と、R10のアルキル基を構成する炭素数との合計が4〜6であり、RおよびR10は、それぞれ置換基を有さず、
はアルカリ金属原子を表す化合物群が挙げられる。
【0017】
本発明のより好ましい上記式(I)で表される染料の化合物群としては、
〜R10は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、スルホ基、またはそれらのリチウム塩を表し、
およびRが、それぞれ独立して、共にアルキル基を表す場合には、Rのアルキル基を構成する炭素数と、Rのアルキル基を構成する炭素数との合計が4であり、RおよびRは、それぞれ置換基を有さず、
およびR10が、それぞれ独立して、共にアルキル基を表す場合には、Rのアルキル基を構成する炭素数と、R10のアルキル基を構成する炭素数との合計が4であり、RおよびR10は、それぞれ置換基を有さず、
はリチウム原子を表す化合物群が挙げられる。
【0018】
本発明において、前記C.I.アシッドレッド52と、前記C.I.アシッドレッド92との含有量の和と、上記式(I)で表される染料の含有量との比が、1:0.1〜1:4であり、さらに好ましくは、前記含有量比が1:0.1〜1:1.1である。この範囲とすることにより、さらに蛍光強度に優れたインク組成物を得ることができる。
【0019】
本発明において、上記式(I)で表される染料は、蛍光強度と、発色性とを損なうことなく、良好な耐光性を有する記録物を得ることができれば特に限定されないが、好ましくは、インク組成物に対し、0.2〜2.0質量%含まれてなり、さらに好ましくは0.2〜0.8質量%である。この範囲とすることにより、さらに蛍光強度に優れたインク組成物を得ることができる。
【0020】
本発明において、前記C.I.アシッドレッド52は、好ましくは、インク組成物に対し、0.04〜0.1質量%含まれてなり、さらに好ましくは、0.08〜0.1質量%である。この範囲とすることにより、蛍光強度と、発色性とを損なうことなく、良好な耐光性を有する記録物を得ることができる。
【0021】
本発明において、C.I.アシッドレッド92は、好ましくは、インク組成物に対し、0.4〜1.2質量%含まれてなり、さらに好ましくは、0.6〜0.9質量%である。この範囲とすることにより、蛍光強度と、発色性とを損なうことなく、良好な耐光性を有する記録物を得ることができる。
【0022】
<水およびその他の成分>
本発明によるインク組成物は、水は主溶媒として水を含んでなることが好ましく、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることがより好ましい。特に、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水を用いることが、カビやバクテリアの発生を防止してインク組成物の長期保存を可能にする点で好ましい。
【0023】
本発明によるインク組成物は、水溶性有機化合物を含んでなることが好ましい。水溶性有機溶媒は、好ましくは低沸点有機溶剤であり、その例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。特に一価アルコールが好ましい。低沸点有機溶剤は、インクの乾燥時間を短くする効果がある。低沸点有機溶剤の添加量はインクの0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜10質量%の範囲である。
【0024】
また、本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物は、さらに高沸点有機溶媒の一種または二種以上からなる湿潤剤を含んでなる。高沸点有機溶媒剤の好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、へキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル(日本乳化剤社製:ニューコール1006)、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル(日本乳化剤社製:ニューコール1004)などの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。好ましくは、多価アルコールのアルキルエーテル類である。
【0025】
本発明において多価アルコールのアルキルエーテル類の好ましい態様として、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、へキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルを一種または二種以上を組み合わせることもできる。さらに好ましくは、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルとトリエチレングリコールモノブチルエーテル、またはテトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルとトリエチレングリコールモノブチルエーテルとの組み合わせが挙げられる。これらの多価アルコールのアルキルエーテル類を組み合わせて添加することにより、浸透性および高温環境下におけるインク組成物の安定性等の面で優れたインク組成物を得ることができる。これらの二種の多価アルコールのアルキルエーテル類は、さまざまな割合で添加することもできるが、1:1〜1:3の割合で添加することが好ましい。
【0026】
これらの高沸点有機溶媒の添加量は、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。高沸点有機溶媒の添加量を前記範囲に置くことにより、より良好な蛍光強度と発色性とを両立して有する蛍光インク組成物を得ることができる。さらに、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルとの合計含量が、インク組成物中に1〜6質量%、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルとの合計含量が、インク組成物中に1〜10質量%含んでなることが好ましい。
【0027】
更に本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物は、糖、三級アミン、水酸化アルカリ、またはアンモニアを含有してなるのが好ましい。これらの添加によって、長期間の保管においても色材の凝集や粘度の上昇がなく保存安定性に優れ、また開放状態(室温で空気に触れている状態)で放置しても流動性と再分散性を長時間維持し、さらに、印字中もしくは印字中断後の再起動時にノズルの目詰まりが生じることもなく吐出安定性が高いインク組成物が得られる。
【0028】
本発明によるインク組成物に添加することができる糖は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)、および多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)CH2OH(ここで、n=2〜5の整数を表す)で表される)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0029】
これら糖類の含有量は、インク組成物中に0.1〜40質量%、より好ましくは1〜30質量%の範囲である。
【0030】
本発明によるインク組成物に添加することができる三級アミンは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても併用しても構わない。これら三級アミンの本発明のインク組成物への添加量は、0.1〜10質量%、より好ましくは、0.5〜5質量%である。
【0031】
本発明によるインク組成物に添加することができる水酸化アルカリは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムであり、本発明のインク組成物への添加量は、0.01〜5質量%であり、好ましくは0.05〜3質量%である。
【0032】
本発明のインク組成物は、さらに界面活性剤を含有することができる。界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤(例えばドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩など)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなど)および、アセチレングリコール(オレフィンY、並びにサーフィノール82、104、440、465、および485(いずれもAir Products and Chemicals Inc. 製)、並びにオルフィンPD002W(日信化学工業社製))が挙げられる。これらは単独使用または二種以上を併用することができる。好ましくは、オルフィンPD002Wが挙げられる。
【0033】
本発明によるインク組成物は、必要に応じて、pH調整剤、防腐剤、防かび剤、りん系酸化防止剤等が添加されていても良い。好ましい防腐剤としては、例えば、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルIB、またはプロキセルTNなどを挙げることができる。
【0034】
インクジェット記録方法
本発明によるインク組成物を用いるインクジェット記録方法は、インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を加熱された記録媒体に付着させて印字を行うものである。インク組成物の液滴を吐出する方法の例としては、例えば電歪素子を用いて電気信号を機械信号に変換して、ノズルヘッド部分に貯えたインクを断続的に吐出して記録媒体表面に文字や記号を記録する方法、ノズルヘッド部分に貯えたインクを吐出部分に極めて近い箇所で急速に加熱し泡を発生させ、その泡による体積膨張で断続的に吐出することで記録媒体表面に文字や記号を記録する方法が挙げられる。本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物を含むインクセットは、電歪素子を用いたインクジェット記録方法に好ましく用いられる。インク組成物の液滴を吐出は、圧電素子の力学的作用を利用してインク滴を吐出させる記録ヘッドにより行われることが好ましい。
【0035】
本発明によるインク組成物を用いて記録媒体上に記録が行われた記録物は、蛍光強度と、発色性とを損なうことなく、良好な耐光性を有する画像を示す。
【0036】
記録媒体としては、種々のものを使用することができ、例えば、封筒、インクジェット専用紙(マット紙、光沢紙など)、普通紙、印刷本紙、フィルム等を挙げることができる。特に、封筒が好ましい。
【実施例】
【0037】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0038】
インク組成物の調製
下記表1の組成に従い各成分を混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することにより、各インクを調製した。なお、表1中の数値はインク中の含有量(質量基準%)を表す。なお、表1中、TEG-mBEはトリエチレングリコール モノ-ブチルエーテルを表し、N1006はヘキサエチレングリコール モノ-エチルヘキシルエーテル(ニューコール1006:日本乳化剤社製)を表し、EDTAはエチレンジアミン四酢酸ニナトリウムを表し、PD002WはオルフィンPD002W(日信化学工業社製)を表し、MD20はサーフィノールMD20(エアープロダクツジャパン社製)を表し、プロキセルXL2は1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(Avecia社製)を表し、さらに水の量を示す「残量」は、水以外の成分とあわせて合計100%になる量を示す。
なお、表1中のマゼンタ染料A、B、C、およびDは、それぞれ、下記式により表される化合物であり、マゼンタ染料CおよびD式中、M=NHである化合物と、M=Naである化合物とを1:1の割合(モル比)で混合したものである。マゼンタ染料Aは上記式(I)で表される化合物の例である。
【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【表1】

【0044】
評価方法
発色性の評価
各インク組成物をインクジェットプリンターMJ−8000C(セイコーエプソン社製)を用い、360dpiの解像度でScript製DL封筒に100%Dutyのベタパターンの印刷を行った。印刷した記録物を24℃の環境下で24時間放置した後、グレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)を用いてベタ部分のOD値(ODm)を測定し、下記評価基準により評価した。
A:OD値が0.90以上の場合
B:OD値が0.84以上0.90未満の場合
C:OD値が0.84未満の場合
評価結果を下記表2および表3に示す。
【0045】
蛍光強度の評価
記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することにより各インク組成物を吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置MJ−8000C(セイコーエプソン社製)を用いて、Script製DL封筒に100%Dutyのベタパターンを印字し、日立(株)社製の蛍光光度計(F−4500)を用いて下記条件下で蛍光強度を測定した。測定の際の条件は、励起波長を365nmとし、550nmから650nm間の最大蛍光波長での蛍光強度を測定し、下記評価基準により評価した。
A:蛍光強度が300以上の場合
B:蛍光強度が200以上300未満の場合
C:蛍光強度が100以上200未満の場合
D:蛍光強度が100未満の場合
評価結果を下記表2および表3に示す。
【0046】
耐光性の評価
各インク組成物をインクジェットプリンターMJ−8000C(セイコーエプソン社製)を用い、360dpiの解像度でScript製DL封筒にベタ印刷を行った。印刷した記録物を24℃の環境下で24時間放置した後、スガ試験機(株)社製のキセノンウェザーメーター(XL75S)を用いて、24℃、50%RHの条件下、24時間の耐光性試験を行った。その後、グレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)を用いて、ベタ部分のOD値(ODm)を測定した。
得られた結果から次式:
ROD(%)=(D/D0)×100
(式中、Dは耐光性試験後のOD値、D0は耐光性試験前のOD値を表す。)を用いて光学濃度残存率(ROD)を求め、下記評価基準により評価した。
A:RODが60%以上の場合
B:RODが20%以上60%未満の場合
C:RODが20%未満の場合
評価結果を下記表2および表3に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.アシッドレッド52と、C.I.アシッドレッド92と、下記式(I)で表される染料とを少なくとも含んでなるインク組成物であって、
前記C.I.アシッドレッド52と、前記C.I.アシッドレッド92との含有量の和と、下記式(I)で表される染料の含有量との比が、1:0.1〜1:4である、インク組成物:
【化1】

(上記式中、
〜R10は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、スルホ基、またはそれらの塩を表し、
およびRが、それぞれ独立して、共にアルキル基を表す場合には、Rのアルキル基を構成する炭素数と、Rのアルキル基を構成する炭素数との合計が3以上であり、RおよびRは、それぞれ置換基を有していてもよく、
およびR10が、それぞれ独立して、共にアルキル基を表す場合には、Rのアルキル基を構成する炭素数と、R10のアルキル基を構成する炭素数との合計が3以上であり、RおよびR10は、それぞれ置換基を有していてもよく、
は、水素原子またはアルカリ金属原子を表す)。
【請求項2】
前記式(I)で表される染料が、インク組成物に対し、0.2〜2.0質量%含まれてなる、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記C.I.アシッドレッド52が、インク組成物に対し、0.04〜0.1質量%含まれてなる、請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記C.I.アシッドレッド92が、インク組成物に対し、0.4〜1.2質量%含まれてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項5】
インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク組成物を用いる、インクジェット記録方法。

【公開番号】特開2011−195681(P2011−195681A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62987(P2010−62987)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】