説明

インサータ及び医療用器具

【課題】カテーテルを病変部の近傍に留置した状態を良好に維持できる機能と、イントロデューサ用シースとカテーテルとの間に存在するクリアランスに血栓が生成することを抑制する機能と、を兼ね備えたインサータ及び医療用器具を提供する。
【解決手段】カテーテル2を体腔内へ導入するためのイントロデューサ用シース3内への前記カテーテル2の挿入を補助する管状部材であるインサータ1であって、前記カテーテル2の外周と摺動可能であり、前記イントロデューサ用シース3に挿入することによって縮径して前記カテーテル2を固定可能な内径のインサータ内周面14と、前記イントロデューサ用シース3の内周と密着しつつ摺動可能な外径のインサータ外周面15と、を有するインサータ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルをイントロデューサ用シースに導入するためのインサータ及び医療用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年医療分野にて、カテーテルと呼ばれる細長く柔らかい中空管状の医療器具を用いて、様々な治療や検査が行われている。治療方法の例としては、カテーテルの長尺性を利用して直接患部に薬剤を投与する方法、加圧によって拡張するバルーンが先端に取り付けられたカテーテルを用いて、体腔内の狭窄部を押し広げて開く方法、先端部にカッターが取り付けられたカテーテルを用いて患部を削り取る方法、逆にカテーテルを用いて動脈瘤や出血箇所あるいは栄養血管に詰め物をして閉じる方法などがある。また、体腔内の狭窄部を開口した状態に維持するために、側面が網目状になっている管形状をしたステントをカテーテルを用いて体腔内に埋め込んで留置する治療方法などがある。さらに、体内の体にとって過剰となった液体をカテーテルを介して吸引することなどがある。
【0003】
カテーテルを用いて治療や検査などを行う場合には、一般的に、カテーテルを体腔内へ導入するためのイントロデューサを使用して、腕または脚に形成された穿刺部位にイントロデューサ用シースを導入し、イントロデューサ用シースの内腔を介してカテーテルを経皮的に血管等の病変部に挿入している。また、この挿入の際にインサータと呼ばれる医療デバイスを用いて挿入を補助している。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、上記インサータについての発明が開示されており、具体的には、湾曲した先端部を有するカテーテルを、インサータを用いて適正に矯正し真っ直ぐにして、イントロデューサ用シースに挿入することのできる発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253513号公報
【特許文献2】特開平10−43309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カテーテルをイントロデューサ用シースに挿入した後、病変部の近傍にカテーテルを留置した場合、少しの振動などで留置位置がずれてしまい、手術に支障をきたすおそれがある。
【0007】
また、カテーテルを挿入した後、イントロデューサ用シースとカテーテルとの間に存在するクリアランスに血液が進入し、該クリアランス内に血栓が生成され、該血栓が血管内に脱落すると脳梗塞等の症状を引き起こすおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、インサータの従来からの機能であるカテーテルをイントロデューサ用シースに挿入する際の補助機能は当然のこと、カテーテルを病変部の近傍に留置した後、振動などが生じても、カテーテルがイントロデューサ用シースに対して移動せず、留置した状態を良好に維持できる機能と、イントロデューサ用シースとカテーテルとの間に存在するクリアランスに血栓が生成することを抑制する機能と、を兼ね備えたインサータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係るインサータは、カテーテルを体腔内へ導入するためのイントロデューサ用シース内への前記カテーテルの挿入を補助する管状部材であるインサータであって、前記カテーテルの外周と摺動可能であり、前記イントロデューサ用シースに挿入することによって縮径して前記カテーテルを固定可能な内径の内周面と、前記イントロデューサ用シースの内周と密着しつつ摺動可能な外径の外周面と、を有するインサータである。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したインサータであれば、インサータをイントロデューサ用シースに挿入することによって、外周面がイントロデューサ用シースの内周と密着しつつ摺動し、内周面が縮径してカテーテルの外周と固定されるために、イントロデューサ用シース及びカテーテルをインサータを介して相互に固定できる。このために、カテーテルを病変部の近傍に留置した後に、振動などが生じても、カテーテルがイントロデューサ用シースに対して移動せず、留置した状態を良好に維持することができる。また、インサータ内周面とカテーテル外周面とが当接し、またイントロデューサ用シースの内周面とインサータの外周面とが当接することから、インサータによって、イントロデューサ用シースとカテーテルとの間に存在するクリアランスが埋められる。このため、該クリアランス内への血液の進入が抑制され、血栓の生成が抑制され、該血栓が血管内に脱落して脳梗塞などの症例を引き起こすおそれが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインサータとイントロデューサ用シースとカテーテルとを組み合わせた状態の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のカテーテルの断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のイントロデューサ用シースの断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るインサータの正面図である(伸縮部材が伸縮なしの状態)。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るインサータの断面図であり、(A)は伸縮部材が伸縮なしの状態、(B)は伸縮部材が収縮状態を示す。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るインサータを、イントロデューサ用シースに互いのテーパ部がかからない程度挿入した状態の断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るインサータにカテーテルを挿入し、病変部の近傍に留置した状態の断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るインサータの先端部を、カテーテルの位置を保持しつつ、イントロデューサ用シースの基端部に挿入した状態の断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るインサータに設けられた連結部とカテーテルテーパ部とを連結させた状態の断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るインサータとイントロデューサ用シースとカテーテルとを組み合わせた状態の断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るインサータの断面図である。
【図12】インサータの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、以下の説明において、デバイスの手元操作部側を「基端側」、体腔内へ挿通される側を「先端側」と称する。
【0013】
まず、本発明の第1の実施形態に係るインサータ1を用いる際に必要な医療用デバイスであるカテーテル2とイントロデューサ用シース3とを説明する。
【0014】
カテーテル2は、図1、2に示すように、内部に空洞部20を有した管状部材であり、直線状に形成されたカテーテル本体部21と、最も基端側に配置され、カテーテル2を操作するための操作部22と、を有している。
【0015】
カテーテル本体部21の先端側には、湾曲形状を有し、病変部の近傍に留置させるための湾曲部23が設けられている。
【0016】
操作部22の先端側には、インサータ1と連結するためのカテーテルテーパ部24が形成されている。カテーテルテーパ部24は外周に形成され、先端側に先細りとなる形状を有している。空洞部20は、必要な薬剤の体内への投与や、逆に体内の体にとって過剰となった液体の吸引などの役割を果たしている。上記カテーテル本体部21の外周には、後述するインサータ内周面14と摺動可能な外径のカテーテル外周面25が形成される。
【0017】
カテーテル本体部21の構成材料としては、例えばポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0018】
また、操作部22の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0019】
イントロデューサ用シース3は、図1、3に示すように、内部に空洞部30を有した管状部材であり、直線状に形成されたイントロデューサ用シース本体部31と、イントロデューサ用シース本体部31の基端部に設けられるイントロデューサ用シースハブ32と、イントロデューサ用シースハブ32の内部に設けられ、血液の逆流を抑制するための血液弁33と、を有する。
【0020】
イントロデューサ用シースハブ32の内部には、イントロデューサ用シース本体部31の内周面(以下、イントロデューサ用シース内周面35と称する場合がある。)と連通し、インサータ1と連結可能なイントロデューサ用シーステーパ部34が形成されている。
【0021】
イントロデューサ用シーステーパ部34は、先端側に先細りとなる形状を有している。またイントロデューサ用シース内周面35は、インサータ1の外周面と密着しつつ摺動可能な内径を有している。またイントロデューサ用シース本体部31の先端側の側面に、血液を循環させるための循環孔36が設けられている。血液弁33は例えば、スリットなどの孔が形成され、血液の流出を防止しつつ、カテーテル2等を挿入可能となっている。
【0022】
イントロデューサ用シース本体部31の構成材料としては、上述したカテーテル本体部21の構成材料と同様のものを使用できる。
【0023】
イントロデューサ用シースハブ32の構成材料としては、上述した操作部22の構成材料と同様のものを使用できる。
【0024】
血液弁33の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。
【0025】
次に、本発明の第1の実施形態に係るインサータ1を説明する。インサータ1は、カテーテル2をイントロデューサ用シース3に挿入する際の補助機能は当然のこと、カテーテル2を病変部の近傍に留置した後、振動などが生じても、カテーテル2がイントロデューサ用シース3に対して移動せず、留置した状態を良好に維持できる機能と、イントロデューサ用シース3とカテーテル2との間に存在するクリアランスに血栓が生成することを抑制する機能と、を兼ね備えている。
【0026】
インサータ1は、図1、4及び5に示すように、内部に空洞部10を有した管状部材であり、最も先端側に形成された管状部11と、管状部11の基端側の外周に形成され、先端側に先細りとなる形状を有しているインサータテーパ部12(固定部)と、基端部に形成され、カテーテルテーパ部24が挿入されて、インサータ1及びカテーテル2を連結でき、かつ回転・伸縮可能な連結部13と、を有している。
【0027】
管状部11は、カテーテル外周面25と摺動可能であってカテーテル2を固定可能な内径のインサータ内周面14と、イントロデューサ用シース内周面35と密着しつつ摺動可能な外径のインサータ外周面15と、を有する。一例として、(カテーテル2の外径)−(インサータ1の内径)=A、(インサータ1の外径)−(イントロデューサ用シース3の内径)=Bとしたときに、Aは0.01mm〜1.50mm、Bは0.00mm〜1.00mmの範囲にあることが好ましい。
【0028】
インサータテーパ部12は、イントロデューサ用シーステーパ部34に挿入することによって管状部11及びインサータテーパ部12自身を縮径させ、イントロデューサ用シース3及びカテーテル2をインサータ1を介して相互に固定できる。これは、インサータテーパ部12をイントロデューサ用シーステーパ部34に挿入した際に、インサータテーパ部12がイントロデューサ用シーステーパ部34から縮径方向に力を受けて、インサータテーパ部12及び管状部11が縮径し、イントロデューサ用シース3とインサータ1とが固定され、かつインサータ1とインサータ1の内部に配置されるカテーテル2とが固定されるためである。
【0029】
また、インサータテーパ部12のテーパ角度αは、イントロデューサ用シーステーパ部34のテーパ角度β以下に設定することが好ましいが、これに限定されない。テーパ角度αをテーパ角度β以下とすることによって、より円滑に縮径できる。
【0030】
テーパ角度αは、例えば0度〜60度が好ましい。また、テーパ角度βは、例えば0度〜45度が好ましい。
【0031】
連結部13は、インサータ1と連結されたカテーテル2の操作部22をカテーテル2の軸方向に対して回転・伸縮が可能である伸縮部材16と、カテーテル2と連結させるための連結部材17と、を有している。図5において、(A)は伸縮部材16が伸縮なしの状態、(B)は収縮状態を示している。ここで「伸縮なし」とは、例えば伸縮部材16が、蛇腹のようなものであるとき、最も伸ばした状態と、最も縮めた状態の中間位置を示しており、「収縮状態」は、上述した最も縮めた状態を示している。
【0032】
連結部材17は、インサータ1の最も基端側に形成され、先端側に先細りとなるテーパ形状の内周を有している。
【0033】
インサータ1の構成材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルブロックアシドコポリマー(Pebax)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、シリコン(Silicone)、ステンレス鋼(SUS)などを用いることができる。
【0034】
次に、第1の実施形態に係るインサータ1の作用を説明する。
【0035】
まず、皮膚の所定位置に導入針などを用いて穿孔し、該穿孔よりガイドワイヤを例えば血管内に挿入する。そして、このガイドワイヤを介してイントロデューサ用シース3とダイレータ(不図示)とを組み合わせた組立体の先端側から血管内へ挿入する。組立体を血管内に挿入した後は、ガイドワイヤ及びダイレータを抜き取って、イントロデューサ用シース3のみを残す。これによって、イントロデューサ用シース3が、体外と血管内とをつなぐ通路として機能する。
【0036】
次に、インサータ1の基端部に、カテーテル2を湾曲部23を伸ばした状態で先端部から挿入する。挿入する際には、カテーテル2の湾曲部23を挿入しやすいように、伸縮部材16を収縮状態とすることが好ましい。このとき、インサータ内周面14とカテーテル外周面25とは摺動しながら挿入される。
【0037】
次に、図6に示すようにイントロデューサ用シース3の基端部にインサータ1を先端部から挿入する。予め、インサータ1内へカテーテル2を挿通しているために、湾曲部23を有するカテーテル2をイントロデューサ用シース3内へ容易に導入できる。このとき、イントロデューサ用シース内周面35とインサータ外周面15とは密着しつつ挿入される。挿入する位置は、インサータテーパ部12が、イントロデューサ用シーステーパ部34にかからない箇所までとする。
【0038】
そして、図7に示すようにカテーテル2を病変部の近傍まで挿入し、先端に形成された湾曲部23を用いて冠動脈に引っ掛け留置する。この一連の作業の際、インサータ内周面14とカテーテル外周面25とが摺動可能であるため、インサータ1を保持しながら、カテーテル2をインサータ1の内部に挿入できる。
【0039】
さらに、インサータ1を用いてカテーテル2をイントロデューサ用シース3に挿入するために、湾曲形状を有するカテーテル2を容易に挿入でき、カテーテル2の折れ曲がりを抑制できる。
【0040】
次に、図8に示すようにカテーテル2が動かないように保持しつつ、インサータテーパ部12をイントロデューサ用シーステーパ部34に挿入する。インサータテーパ部12をイントロデューサ用シーステーパ部34に挿入することによって、下記の要因によってイントロデューサ用シース3及びカテーテル2をインサータ1を介して、相互に固定することができる。すなわち、インサータテーパ部12をイントロデューサ用シーステーパ部34に挿入することによって、インサータテーパ部12及び近接する管状部11が縮径し、イントロデューサ用シース3とインサータ1とが密接し、かつインサータ1とカテーテル2とが密接するためである。この結果、カテーテル2を病変部の近傍に留置した後に、振動などが生じても、カテーテル2がイントロデューサ用シース3に対して移動せず、留置した状態を良好に維持することができる。またインサータテーパ部12及び近接する管状部11が縮径することによって、インサータ内周面14とカテーテル外周面25とが当接し、またイントロデューサ用シース内周面35とインサータ外周面15とが当接することから、イントロデューサ用シース3とカテーテル2との間に存在するクリアランスが埋まる。このために、該クリアランス内への血液の進入が抑制され、血栓の生成を抑制し、該血栓が血管内に脱落して脳梗塞などの症例を引き起こすおそれが抑制される。なお、上記までの工程において、伸縮部材16は収縮した状態で作業を行う。
【0041】
また、インサータテーパ部12のテーパ角度αは、イントロデューサ用シーステーパ部34のテーパ角度β以下に設定されるため、管状部11及びインサータテーパ部12をより円滑に縮径させることができる。
【0042】
次に、図9に示すように、伸縮部材16を収縮した状態から引き伸ばし、連結部材17とカテーテルテーパ部24とを嵌合する。これによって、カテーテル2を病変部の近傍に固定した状態でも、イントロデューサ用シース3と独立して、操作部22をカテーテル2の軸方向に対して回転・直進させられることから、カテーテル2の折れ曲がりを抑制しつつカテーテル2の位置の微調整が可能となり、カテーテル2の操作性が向上する。
【0043】
次に、イントロデューサ用シース3及びカテーテル2をインサータ1を介して相互に固定した後の、先端側での作用について説明する。
【0044】
図1に示すように、管状部11の長さがイントロデューサ用シース本体部31の長さより短いために、インサータ1がイントロデューサ用シース3とカテーテル2との間に存在するクリアランスを埋めていない箇所では、クリアランスの内部に血液が入り込む。しかしながら、イントロデューサ用シース3の先端側の側面に循環孔36が設けられているために、循環孔36を介して、クリアランス内を血液が循環し、クリアランス内での血栓の発生を抑制できる。また、イントロデューサ用シース本体部31の途中から基端側は、管状部11がクリアランスを埋めているために、血液の進入はなくなり、血栓の発生が抑制される。さらに、管状部11の長さが短いことによって、インサータ1の挿入が容易である。
【0045】
以上のように、第1の実施形態によれば、インサータ1はカテーテル2の外周と摺動可能であり、イントロデューサ用シース3に挿入することによって縮径してカテーテル2を固定可能な内径のインサータ内周面14(内周面)と、イントロデューサ用シース内周面35と密着しつつ摺動可能な外径のインサータ外周面15(外周面)と、を有する。したがって、インサータ1をイントロデューサ用シース3に挿入することによって、インサータ1が縮径するため、イントロデューサ用シース3及びカテーテル2をインサータ1を介して相互に固定できる。このために、カテーテル2を病変部の近傍に留置した後に、振動などが生じても、カテーテル2がイントロデューサ用シース3に対して移動せず、留置した状態を良好に維持することができる。また、インサータ内周面14とカテーテル外周面25とが当接し、またイントロデューサ用シース内周面35とインサータ外周面15とが当接することから、インサータ1によって、イントロデューサ用シース3とカテーテル2との間に存在するクリアランスが埋められる。このため、該クリアランス内への血液の進入が抑制され、血栓の生成が抑制され、該血栓が血管内に脱落して脳梗塞などの症例を引き起こすおそれが抑制される。
【0046】
また、インサータ1が先細りのテーパ形状の固定部を有し、イントロデューサ用シース3に挿入することによって、固定部がイントロデューサ用シース内周面35により押圧されて縮径して、カテーテル2を固定可能であるため、カテーテル2を病変部の近傍に留置した状態で、インサータ1をイントロデューサ用シース3に押し込むだけで、イントロデューサ用シース3及びカテーテル2をインサータ1を介して相互に固定可能であり、作業性が向上する。
【0047】
インサータ1は、回転・伸縮可能な連結部13を有し、連結部13は、カテーテル2の基端部に設けられた操作部22と連結可能であるため、カテーテル2を病変部の近傍に固定した状態でも、イントロデューサ用シース3及びインサータテーパ部12と独立して、カテーテル2の折れ曲がりを抑制しつつ、操作部22をカテーテル2の軸方向に対して回転・直進させることができる。よって、カテーテル2の位置の微調整が可能となり、カテーテル2の操作性が向上する。
【0048】
次に本発明の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と共通する部分は説明を省略し、第2の実施形態のみに特徴のある箇所について説明する。
【0049】
本発明の第2の実施形態に係るインサータ4について説明する。インサータ4は図11に示すようにイントロデューサ用シーステーパ部34に挿入するためのインサータテーパ部12が形成されていない代わりに、血液弁33と密接するためのインサータテーパ部18が設けられている。なお、その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0050】
次に、第2の実施形態に係るインサータ4の作用を説明する。
【0051】
第1の実施形態と同様に、まずインサータ4にカテーテル2の先端を挿入した状態で、イントロデューサ用シース3の基端部にインサータ4を先端部から挿入する。次に、インサータ4を保持しながら、カテーテル2を病変部の近傍まで挿入し、湾曲部23を用いて冠動脈に引っ掛け留置する。次に、カテーテル2を保持しながら、インサータ4を先端側に更に押し込む。これによって、血液弁33に接するインサータテーパ部18の径が徐々に大きくなり、一定量挿入すると、図10に示すように血液弁33から受ける縮径方向の力によって縮径するインサータテーパ部18がカテーテル外周面25に密接する。これによって、イントロデューサ用シース3及びカテーテル2がインサータ4を介して相互に固定されることとなる。この結果、カテーテル2を病変部の近傍に留置した後に、振動などが生じても、カテーテル2がイントロデューサ用シース3に対して移動せず、留置した状態を良好に維持することができる。またインサータ4の管状部11が挿入されることによってイントロデューサ用シース3とカテーテル2との間に存在するクリアランスが埋まる。このために、クリアランス内への血液の進入が抑制され、血栓の生成を抑制し、該血栓が血管内に脱落して脳梗塞などの症例を引き起こすおそれが抑制される。なお、上記までの工程において、第1の実施形態と同様に、伸縮部材16は収縮した状態で作業を行う。次に、伸縮部材16を収縮した状態から引き伸ばし、連結部13とカテーテルテーパ部24とを嵌合する。これによって、カテーテル2を病変部の近傍に固定した状態でも、イントロデューサ用シース3と独立して、操作部22をカテーテル2の軸方向に対して回転・直進させられることから、カテーテル2の折れ曲がりを抑制しつつ、カテーテル2の位置の微調整が可能となり、カテーテル2の操作性が向上する。なお、イントロデューサ用シース3及びカテーテル2をインサータ4を介して相互に固定した後の、先端側での作用は第1の実施形態と同様のために記載を省略する。
【0052】
以上のように、第2の実施形態によれば、インサータ4はカテーテル2の外周と摺動可能であり、イントロデューサ用シース3に挿入することによって縮径してカテーテル2を固定可能な内径のインサータ内周面14(内周面)と、イントロデューサ用シース内周面35と密着しつつ摺動可能な外径のインサータ外周面15(外周面)と、を有する。したがって、インサータ4をイントロデューサ用シース3に挿入することによって、インサータテーパ部18及び管状部11が縮径するため、イントロデューサ用シース3及びカテーテル2をインサータ4を介して相互に固定できる。このために、カテーテル2を病変部の近傍に留置した後に、振動などが生じても、カテーテル2がイントロデューサ用シース3に対して移動せず、留置した状態を良好に維持することができる。また、インサータ内周面14とカテーテル外周面25とが当接し、またイントロデューサ用シース内周面35とインサータ外周面15とが当接することから、インサータ4によって、イントロデューサ用シース3とカテーテル2との間に存在するクリアランスが埋められる。このため、該クリアランス内への血液の進入が抑制され、血栓の生成が抑制され、該血栓が血管内に脱落して脳梗塞などの症例を引き起こすおそれが抑制される。
【0053】
インサータ4は、回転・伸縮可能な連結部13を有し、連結部13は、カテーテル2の基端部に設けられた操作部22と連結可能であるため、カテーテル2を病変部の近傍に固定した状態でも、イントロデューサ用シース3及びインサータテーパ部18と独立して、操作部22をカテーテル2の軸方向に対して回転・直進させることができる。よって、カテーテル2の折れ曲がりを抑制しつつ、カテーテル2の位置の微調整が可能となり、カテーテル2の操作性が向上する。
(改変例)
本発明にかかる第1、2の実施形態では、インサータ1、4の管状部11の長さが短く、これによってイントロデューサ用シース3の先端側の側面に血液を循環させるための循環孔36を設けた形状を示したが、図12に示すように、管状部19の長さがイントロデューサ用シース本体部31の長さとほぼ同等に設定してもよい。この効果として、インサータ1、4の挿入に手間が必要となるが、イントロデューサ用シース本体部31の全箇所にわたり、管状部19によってイントロデューサ用シース3とカテーテル2との間に存在するクリアランスが埋められているので、イントロデューサ用シース3とカテーテル2との間に存在するクリアランス内での血栓の生成を抑制でき、循環孔36は必要なくなることがあげられる。
【0054】
本発明に係る第1、2の実施形態では、インサータテーパ部12、18を設けているが、インサータテーパ部12、18を設けず、イントロデューサ用シース内周面35に、先端側に先細りとなるテーパ形状を設けてもよい。このとき、インサータ外周面15に、先端側に先細りのテーパ形状を設けてもよい。
【0055】
また、インサータ1、4を挿入することによって、インサータ1、4が縮径可能であれば、テーパ形状に限られず、段差や突起などを設けてもよい。
【0056】
また、本発明に係る第1、2の実施形態では、インサータ1、4は連結部13を有しているが、連結部13を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、4 インサータ、
2 カテーテル、
3 イントロデューサ用シース、
12、18 インサータテーパ部(固定部)、
13 連結部、
14 インサータ内周面(内周面)、
15 インサータ外周面(外周面)、
22 操作部、
23 湾曲部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを体腔内へ導入するためのイントロデューサ用シース内への前記カテーテルの挿入を補助する管状部材であるインサータであって、
前記カテーテルの外周と摺動可能であり、前記イントロデューサ用シースに挿入することによって縮径して前記カテーテルを固定可能な内径の内周面と、
前記イントロデューサ用シースの内周と密着しつつ摺動可能な外径の外周面と、
を有するインサータ。
【請求項2】
先細りのテーパ形状の固定部を有し、前記イントロデューサ用シースに挿入することによって、前記固定部が前記イントロデューサ用シースの内周により押圧されて縮径して前記カテーテルを固定可能な請求項1に記載のインサータ。
【請求項3】
前記インサータは、基端部に回転・伸縮可能な連結部を有し、前記連結部は、前記カテーテルの基端部に設けられた操作部と連結可能である請求項1または2に記載のインサータ。
【請求項4】
先端部に湾曲部を有するカテーテルと、
前記カテーテルを体腔内へ導入するためのイントロデューサ用シースと、
前記イントロデューサ用シース内への前記カテーテルの挿入を補助する管状部材であり、前記カテーテルの外周と摺動可能であり、前記イントロデューサ用シースに挿入することによって縮径して前記カテーテルを固定可能な内径の内周面及び、前記イントロデューサ用シースの内周と密着しつつ摺動可能な外径の外周面を有するインサータと、
を含む医療用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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