説明

インジウムの回収方法及びインジウム溶出装置

【課題】インジウムを効率よく回収できるインジウムの回収方法及びインジウム溶出装置を提供する。
【解決手段】ディスプレイ用フラットパネルを微細化する微細化工程と、ディスプレイ用フラットパネルの微細化物を酸に接触させて、ディスプレイ用フラットパネルに含まれるインジウムを酸に溶出させるインジウム溶出工程と、インジウムを溶出させた酸溶液からインジウムを回収するインジウム回収工程とを備え、インジウム溶出工程は、微細化物と酸とを入れた容器を攪拌して、酸にインジウムを溶出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジウムの回収方法及びインジウム溶出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本において、インジウムの多くはインジウム・スズ酸化物(Indium Tin Oxide、以下、ITOと称する)もしくはインジウム・亜鉛酸化物(indium Zinc Oxide、以下、IZOと称する)として透明導電膜に用いられる。
【0003】
このような透明導電膜は、フラットパネルディスプレイ(以下、FPDと称する)等に使用され、パソコンの液晶ディスプレイ、薄型・大型テレビ等の普及に伴い、需要が高まっている。一方、EUにおける鉛規制強化によってインジウムを含む低融点合金からなる無鉛ハンダのニーズが高まり、需要が増えることが予想される。このため、高価なインジウムに対しては、リサイクルして使用することが求められている。
【0004】
インジウムをリサイクルする技術としては、従来、ITOターゲット等を酸に溶出させた後、硫化物法(例えば、特許文献1参照)、もしくは水酸化物法(例えば、特許文献2参照)やキレート樹脂(例えば、特許文献3参照)によって夾雑金属イオンを除去したり、溶媒抽出(例えば、特許文献4参照)することによって、インジウムを分離、回収する方法が知られている。
そして、上記方法によって分離、回収したインジウムは、さらに電界精錬法(例えば、特許文献5参照)等によって精製する。
【0005】
【特許文献1】特開2000−169991号公報
【特許文献2】特開2002−69684号公報
【特許文献3】特開2002−308622号公報
【特許文献4】特開2000−212658号公報
【特許文献5】特開平6−248370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の方法は、主にITOターゲット等の未使用分やスパッタリング装置付着分を回収する技術であって、使用後の製品や製造工程における不良品等のガラス基板からの回収はほとんど見られなかった。特に、FPDパネル(以下、ディスプレイ用フラットパネルと称する)からインジウムを酸に溶出させる技術についてはこれまで検討されていなかった。このため、ディスプレイ用フラットパネルからのインジウムの回収率は低く、回収率の向上が求められていた。
【0007】
本発明は上記問題に鑑み案出されたものであり、インジウムを効率よく回収できるインジウムの回収方法及びインジウム溶出装置を提供することを目的とするとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、ディスプレイ用フラットパネルを微細化する微細化工程と、前記ディスプレイ用フラットパネルの微細化物を酸に接触させて、前記ディスプレイ用フラットパネルに含まれるインジウムを酸に溶出させるインジウム溶出工程と、インジウムを溶出させた酸溶液からインジウムを回収するインジウム回収工程とを備え、前記インジウム溶出工程は、前記微細化物と酸とを入れた容器を攪拌して、酸にインジウムを溶出させる点にある。
【0009】
上記工程を備えることにより、ディスプレイ用フラットパネルから、インジウムを酸に効率的に溶出させることができる。
したがって、ディスプレイ用フラットパネルからのインジウムの回収効率を高めることができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記インジウム溶出工程は、前記容器からインジウムを溶出させた酸溶液を回収した後、前記容器に酸を供給して前記酸溶液の残液を回収する残液回収工程を備える点にある。
【0011】
上記工程を備えることによりインジウム溶出溶液の残液中のインジウムも回収することができるので、インジウムの回収効率をより高めることができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、残液回収工程の後に、前記容器に水を供給して前記微細化物を洗浄する洗浄工程を備える点にある。
【0013】
上記工程を備えることにより、微細化物に付着した酸を除去することができるので、インジウム回収後の微細化物を安全に処理することができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記インジウム回収工程は、前記酸溶液を酸吸着能を有するアニオン交換樹脂に接触させて、インジウム回収液を分別する分別工程を備える点にある。
【0015】
上記工程を備えることにより、インジウム溶出酸溶液を、インジウム溶液と酸とに効率的に分別することができる。
【0016】
本発明の第5特徴構成は、前記インジウム回収液にアルカリを添加して水酸化物イオン濃度を調整することにより、インジウムを水酸化インジウムとして回収する点にある。
【0017】
インジウム水溶液にアルカリを添加することにより、水酸化インジウムの沈殿が生じる。このため、インジウムを容易に回収することができる。
【0018】
本発明の第6特徴構成は、前記インジウム回収液に硫化剤を添加して硫化物イオン濃度を調整することにより、インジウムを硫化インジウムとして回収する点にある。
【0019】
インジウム水溶液に硫化剤を添加することにより、硫化インジウムの沈殿が生じる。このため、インジウムを容易に回収することができる。
【0020】
本発明の第7特徴構成は、前記インジウム溶出工程の前に、アセトン、60℃以上の水、及び界面活性剤のうちの少なくとも一種の液体を前記微細化物に接触させて、液晶を除去する液晶除去工程を備える点にある。
【0021】
上記工程を備えることにより、微細化物から液晶を除去することとなるので、微細化物を安全に処理することができる。
【0022】
本発明の第8特徴構成は、前記微細化工程において、ディスプレイ用フラットパネルを粒径が1mm以下となるように微細化する点にある。
【0023】
上述のように、微細化物の粒経を1mm以下にすることにより、微細化物と酸との接触面積が増加するので、インジウムを効率的に溶出することができる。
【0024】
本発明の第9特徴構成は、前記インジウム溶出工程において、前記微細化物と前記酸との重量比が、1:3〜1:6である点にある。
【0025】
上述のように、微細化物と酸との重量比を1:3〜1:6にすることにより、インジウム溶出工程において、インジウムを効率的に溶出することができる。
【0026】
本発明の第10特徴構成は、ディスプレイ用フラットパネルを微細化した微細化物と酸とを接触させてインジウムを溶出させた酸溶液を得るインジウムの溶出装置であって、回転攪拌可能に構成され開口部から、前記微細化物と酸とを投入する容器本体と、前記回転攪拌の際に、前記開口部を閉塞する第一蓋体と、前記容器本体への酸の供給及び前記容器本体からの酸溶液の排出の際に前記開口部に取り付ける第二蓋体とを備え、前記第二蓋体は、前記容器本体の内部の側の面に設けたフィルタと、前記容器本体の内部と外部とを前記フィルタを介して連通し、酸の供給及び前記酸溶液の排出を行う給排管と、前記容器本体の内部と外部とを連通し、前記酸溶液の排出の際に、前記容器本体の内部に空気を供給する空気供給管とを備えた点にある。
【0027】
インジウムの溶出装置を上述のように構成することにより、インジウムの酸との接触を効果的に行うことができるので、インジウムの酸への溶出を効率的に行うことができる。
【0028】
本発明の第11特徴構成は、ディスプレイ用フラットパネルを微細化した微細化物と酸とを接触させてインジウムを溶出させた酸溶液を得るインジウムの溶出装置であって、回転攪拌可能に構成され開口部から、前記微細化物と酸とを投入する容器本体と、開口部を閉塞する蓋体とを備え、容器本体は、少なくとも底部に複数の孔部を有し、前記微細化物と酸とを投入する内部容器と、前記内部容器の孔部に設けたフィルタと、内部容器への酸の供給及び前記内部容器からの酸の排出を行う給排部とを有した点にある。
【0029】
インジウムの溶出装置を上述のように構成することにより、インジウムの酸との接触を効果的に行うことができるので、インジウムの酸への溶出を効率的に行うことができる
【0030】
本発明の第12特徴構成は、前記容器本体は、金属製であって、前記容器の内面に樹脂、ゴム、ガラスのうちの少なくとも一種を用いてライニングを施した点にある。
【0031】
上述のように、容器本体の内部にライニングを施すことにより、容器本体の耐酸性及び耐磨耗性を高めることができる。
【0032】
本発明の第13特徴構成は、 前記容器本体の内部において、酸又は酸溶液に接触する電極と前記容器本体の外側部分に接触して設けた電極と、両電極間に流れる電流を検知することにより前記ライニング部の破損を検知する電流検知部とを有する破損検知手段を備えた点にある。
【0033】
上述のように、ライニング部の破損を検知する破損防止手段を備えることにより、早期にライニング部の破損に気付くことができる。この結果、容器から酸が漏出することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明に係るインジウムの回収方法の一例として、ディスプレイ用フラットパネルのITO導電膜からインジウムを回収する方法について、図に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明に係るディスプレイ用フラットパネルからのインジウムの回収方法は、微細化工程と、インジウム溶出工程と、インジウム回収工程とを備える。さらに、液晶除去工程、残液回収工程、洗浄工程、分別工程を備えていても良い。以下、各工程について説明する。ここで、ディスプレイ用フラットパネルとは、例えばパソコンの液晶ディスプレイ、薄型・大型テレビなどのフラットパネルディスプレイを含むものである。
【0035】
(微細化工程)
ディスプレイ用フラットパネルを裁断もしくは粉砕などにより微細化して、ディスプレイ用フラットパネルの微細化物(以下、微細化物の主体はガラスであるので、適宜、カレットとも称する)を得る工程である。カレットの粒子径は1mm以下であることが好ましい。微細化工程は、後述するインジウム溶出工程において、ITO導電膜を酸に溶出させやすくするための工程であり、ITO導電膜が酸に溶出できれば、カレットの粒子径は特に限定されるものではない。尚、裁断および粉砕は、従来公知の方法によって行うことができる。
【0036】
(液晶除去工程)
後述するインジウム溶出工程の前にカレットから、液晶を除去する工程である。アセトン、60℃以上の水、界面活性剤のうちの少なくとも一種の液体を、カレットと接触させて、カレットから液晶を除去する。除去後の液晶は、回収して再利用しても良い。また、例えば1000℃以上で焼却することにより無害化してから廃棄してもよい。
【0037】
(インジウム溶出工程)
カレットに付着したインジウムを酸に溶出させる工程である。カレットと酸とを入れた容器を攪拌して、カレットを酸に接触させて、酸にインジウムを溶出させる。インジウム溶出工程において、液体の重量は、カレットの重量の3倍以上が好ましく、さらに好ましくは3倍以上6倍以下である。また、攪拌速度は、20〜30rpmが好ましい。
酸としては、インジウムを溶出可能なものであれば特に限定されないが、塩酸もしくは塩酸を主成分とする硝酸、過塩素酸、リン酸、フッ酸、有機酸などとの混酸などが挙げられる。
なお、本発明において「攪拌」とは、特に限定されるものではなく、容器を回転させて攪拌する「回転による攪拌」や容器を振動させて攪拌する「振動による攪拌」が例示される。これらの攪拌は、一種類の方法で行ってもよく、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0038】
(残液回収工程)
インジウム溶出酸溶液の残液を回収する工程である。インジウムを溶出させたインジウム溶出酸溶液を回収した後、前記容器に酸溶液を供給し、容器を攪拌する。攪拌後の酸溶液を回収することにより、インジウム溶出酸溶液の残液を回収する。残液回収工程において、残液回収操作の回数は特に限定されないが、インジウムの回収率の観点からは、2回以上行うことが好ましい。
また、例えば残液回収操作を2回行う場合、先の残液回収工程の2回目の残液回収操作で用いた酸を次の残液回収工程の1回目の残液回収操作で用いるようにしてもよい。このようにすることにより、酸中のインジウムの含有量を増加させることができる。また、使用する酸の量を減少させることができる。
【0039】
(洗浄工程)
洗浄工程は、カレットを洗浄して、カレットに付着した酸を除去する工程である。残液回収工程の後に、前記容器に水を供給して前記カレットを洗浄する。洗浄工程において、洗浄操作の回数は特に限定されないが2回以上行うことが好ましい。
また、例えば洗浄操作を2回行う場合、先の洗浄工程の2回目の洗浄操作で用いた水を次の洗浄工程の1回目の洗浄操作で用いるようにしてもよい。このようにすることにより、洗浄工程で使用する水の量を減少させることができる。
【0040】
(分別工程)
インジウム溶出酸溶液から、インジウム回収液を分離する工程である。インジウム溶出酸溶液酸を、酸吸着能を有するアニオン交換樹脂に接触させて、インジウム溶液と酸とに分別する。アニオン交換樹脂としては、公知のものを用いることができる。分別された酸は、適宜、再利用もしくは廃棄することができる。
【0041】
(インジウム回収工程)
インジウム回収溶液からインジウムを回収する工程である。分別工程により得られたインジウム回収溶液に、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加し、水酸化物イオン濃度を調整して、インジウムを水酸化インジウムとして回収する。
また、上記のアルカリの添加に変えて硫化剤を添加して、硫化物イオン濃度を調整して、硫化インジウムとして回収してもよい。
なお、上述の分別工程を省略し、酸溶液に直接、アルカリ若しくは硫化剤を添加して、インジウムを回収しても良い。
【0042】
(装置の概要)
上述の方法を実行するための装置の一例について説明する。
図2に示すように、この装置は、インジウム溶出装置1と酸タンク2とインジウム溶出酸タンク3と洗浄水タンク4とを備える。
インジウム溶出装置1は、カレットと酸とを接触させて、酸にインジウムを溶出させる装置である。酸タンク2は、インジウム溶出工程や残液回収工程で用いられる酸を貯留するタンクである。本実施形態では第1酸タンク21及び第2酸タンク22の2つの酸タンクが設けてある。インジウム溶出酸タンク3は、インジウム溶出工程や残液回収工程で得られたインジウム溶出酸を貯留するタンクである。洗浄水タンク4は、洗浄工程で用いる水を貯留するタンクである。本実施形態では、第1洗浄水タンク41及び第2洗浄水タンク42の2つのタンクが備えてある。
【0043】
第1酸タンク21には、未使用の酸が貯留されている。第2酸タンク22には、残液回収工程で使用された酸が貯留されている。
インジウム溶出工程において、第1酸タンク21の酸が、インジウム溶出装置に供給される。得られたインジウム溶出酸溶液は、インジウム溶出酸タンクに貯留される。
【0044】
残液回収工程において、例えば2回の残液回収操作が行われる。1回目の残液回収操作の際には、第2酸タンク22の酸が、インジウム溶出装置に供給される。残液回収操作で得られたインジウム溶出酸溶液を含む酸は、インジウム溶出酸溶液タンクに貯留される。2回目の残液回収操作の際には、第1酸タンク21の酸が、インジウム溶出装置に供給される。残液回収操作で得られたインジウム溶出酸溶液を含む酸は、第2酸タンク22に貯留される。第2酸タンク22に貯留された酸は、次回の残液回収工程において使用される。
【0045】
第1洗浄水タンク41には、未使用の水が貯留されている。第2タンク42には、先の洗浄工程で使用された水が貯留されている。洗浄工程において、例えば2回の洗浄が行われる。1回目の洗浄の際には、第2洗浄水タンク42の水が、インジウム溶出装置1に供給される。洗浄後、この水は、例えば酸処理などを施して廃棄される。2回目の洗浄の際には、第1洗浄水タンク41の水が、インジウム溶出装置1に供給される。洗浄後の水は第2洗浄水タンク42に貯留され、次回の洗浄工程における1回目の洗浄に用いられる。
【0046】
なお、酸タンクおよび洗浄水タンクの個数は2個に限定されるものではなく、例えば残液回収工程における残液回収操作の回数、洗浄工程における洗浄操作の回数などに応じて適宜変更可能である。
【0047】
(インジウム溶出装置)
このインジウム溶出装置は、カレットを酸と接触させてインジウムを溶出させるものである。図2及び3に示すように、このインジウム溶出装置1は、カレットと酸とを投入する容器本体11と、容器本体11の開口部に設けられる蓋体13とを備える。
【0048】
容器本体11は、金属製の容器部材11aと、容器部材の内面に施されたライニング部11bとを備える。前記ライニング部11bとしては、樹脂、ゴム、ガラスのうちの少なくとも一種を用いてライニングを施した物が挙げられる。また、前記容器本体11は、少なくとも回転による攪拌を行う攪拌手段を有し、開口部と開口部に対向する底面とを結んだ線を回転軸として、回転による攪拌が可能に構成されている。また、この容器本体を支持する支持部6は前記回転軸と略垂直な軸を揺動軸として揺動可能に構成されている。
また、容器本体11は、上述の攪拌手段に加えて、回転以外による攪拌を行う攪拌手段を備えてもよい。
【0049】
蓋体13は、第一蓋体13aと第二蓋体13bとから構成される。第一蓋体13aは、回転攪拌の際に前記開口部に設けられ、前記開口部を閉塞する。第二蓋体13bは、前記容器本体11への液体の供給及び前記容器本体11からの液体の排出の際に前記開口部に設けられる。第二蓋体13bは、容器本体の内部の側の面にフィルタ16を備える。また、第二蓋体13bには、容器本体の内部と外部とをフィルタ16を介して連通して、液体を供給及び排出する給排管14と、容器本体11の内部と外部とを連通し、液体の排出の際に、容器本体11の内部に空気を供給する空気供給管15とが設けてある。
【0050】
また、このインジウム溶出装置1は、ライニング部11bの破損を検知する破損検知手段5を備える。破損検知手段5は、容器本体11の内部に設けた電極54と容器部材11aの外側部分に設けた電極53との間に電圧を印加する電圧印加部52と、電流を検知する電流検知部51とを有する。ライニング部11bが破損すると酸と容器本体11の容器部材11bとが接触し、電気的に導通する。従って、電流検知部51は、両電極54,55が導通することによって流れる電流を検知することにより、ライニング部11bの破損を検知可能である。
なお、容器本体11の内部に設ける電極54は、耐酸性を有するものが好ましい。
【0051】
上述のインジウム溶出装置1において、給排管14から容器本体11の内部へ、酸や水が供給される。また、空気供給管15から容器内部へ空気を供給することにより、容器内部の、酸や水が給排管14から外部へ排出される。
【0052】
(実施例1)
液晶パネルを粉砕したカレットの粒径とインジウム量の溶解量との関係を調べた。液晶パネルのカレットは、篩により、粒径が1mm以下のもの、粒子径が1−2mmのもの、粒径が2−5mmのものの3種類に分級した。
各粒径のカレットについて、7%塩酸を用いてインジウムの溶出を行った。固液の重量比が1:3となるように、カレットを塩酸の中に入れてロータリーエバポレーターにて、回転速度60rpm、溶液温度40℃で回転攪拌して、インジウムを溶出させた。1時間攪拌したとき、2時間攪拌したとき、3時間攪拌したときの塩酸中のインジウムの含有量を測定し、カレット1kgあたりのインジウムの溶出量を求めた。
表1に示すとおり、粒径が1mm以下のカレットでは、インジウムの溶出量は、約650mg/kg−カレットであった。一方、粒径が1−2mmのカレット、粒径が2−5mmのカレットでは、インジウムの溶出量は、約150mg/kg−カレットであった。上述の結果より、酸にインジウムを溶出させる際のカレットの粒径は、1mm以下が好ましいことが分かった。
【0053】
【表1】

【0054】
(実施例2)
液晶パネルを粉砕して粒径を1mm以下にしたカレットを、固液の重量比が1:3となるように7%塩酸の中に入れ、温度を夫々25℃、40℃にして回転速度60rpmで回転攪拌して、塩酸へのインジウムの溶出量の経時変化を調べた。
図5に示すとおり、25℃で攪拌すると、約2時間後に溶出量が約540mg/kg−カレットとなり、平衡に達した。一方、40℃で攪拌すると、1時間後には既に溶出量が約540mg/kg−カレットとなり、平衡に達していた。
【0055】
(実施例3)
液晶パネルを粉砕して粒径を1mm以下にしたカレットを、固液の重量比が夫々1:6、1:3、2:3、1:1となるように、7%塩酸の中に入れ、温度を25℃にして回転速度60rpmで回転攪拌して、塩酸へのインジウムの溶出量を調べた。
表2に示すとおり、2時間攪拌したときのインジウムの溶出量は、固液比が2:3、1:1の場合には、約450mg/kg−カレットで略一定であった。一方、固液比が1:3の場合には、溶出量は約530mg/kg−カレット、固液比が1:6の場合には、溶出量は約600mg/kg−カレットと、液体の比率の増加に伴って、溶出量が増加した。
上述の結果より、酸にカレットを接触させてインジウムを溶出する際の液体の重量は、カレットの重量の3倍以上が好ましく、さらに好ましくは6倍以上であることが分かった。
【0056】
【表2】

【0057】
(実施例4)
液晶パネルを粉砕して粒径を1mm以下にしたカレットを、固液の重量比が1:3となるように、7%塩酸の中に入れ、温度を25℃にして、回転攪拌を夫々20rpm、30rpm、60rpm、90rpm、120rpmとして、1時間攪拌したとき及び2時間攪拌したときのインジウムの溶出量を調べた。
図6に示すとおり、1時間攪拌した場合の溶出量は、回転攪拌速度が20〜30rpmの付近で最大となり、2時間溶出した場合の溶出量は、回転攪拌速度によらず略一定であった。
上述の結果より、回転攪拌速度は、20〜30rpmが好ましいことが分かった。
【0058】
(実施例5)
液晶パネルを粉砕して粒径を1mm以下にしたカレットを、固液の重量比が1:3となるように、7%塩酸の中に入れ、温度を25℃にして、回転攪拌を60rpmとして、2時間攪拌してインジウムを溶出した後、塩酸をカレットから分離した。その後カレットに、固液比が1:3となるように塩酸を加えて、攪拌し残液を回収した。この残液の回収を2回行った。
残液を回収した後のカレットに水を加えて攪拌し、カレットに付着した塩酸を除去した。この操作を3回行った。このときの、インジウム濃度と塩酸濃度との関係を図7に示した。
残液の回収を行わなかった場合のインジウムの回収率は、約75%であった。一方、残液の回収を1回行った場合のインジウムの回収率は、約95%であり、残液の回収を2回行った場合のインジウムの回収率は、約98%であった。上述の結果より、残液の回収を少なくとも1回行うことが好ましいことが分かった。
また、カレットに残留した塩酸濃度は、3回の洗浄で約1/250になった。
【0059】
(インジウム溶出装置の別実施形態)
図4に示すとおり、このインジウム溶出装置100は、容器本体101と容器本体101の内側に設けられ、カレットと酸とを接触させる内部容器102と、内部容器102の側面及び底面に設けられたフィルタ106と、容器本体101の開口部をシール部材105を介して閉塞する蓋体103とを備える。
容器本体101は、少なくとも振動による攪拌を行う攪拌手段を備える。攪拌手段は、一つ又は複数設けてもよく、また、振動方向は一方向でもよく、複数方向でもよい。また、容器本体101は、上述の攪拌手段に加えて、振動以外による攪拌を行う攪拌手段を備えてもよい。
容器本体101は、金属製の容器部材101aと、容器部材101aの内面に施されたライニング部101bを備える。前記ライニング部101bとしては、樹脂、ゴム、ガラスのうちの少なくとも一種を用いてライニングを施した物が挙げられる。また、容器本体101の底面の付近には、酸や水などの供給及び排出を行う給排部104が設けてある。
内部容器102は、例えば塩化ビニルなどの樹脂を用いて構成してあり、その底面及び側面には多数の孔が設けてある。
フィルタ106は、例えばポリプロピレン不繊布で構成してある。フィルタの容器本体101の底面と対向する表面には、例えば塩化ビニルなどの樹脂製の多孔板107が設けてある。上述のようにフィルタ106を、内部容器の底面と多孔板とで狭持することにより保護する。
上述の構成により、内部容器102の底面と容器本体101の底面との間には、空間108が形成され、この空間108を介して酸や水の供給及び排出が行われる。このインジウム溶出装置100は、例えばエアーベアリング110により振動攪拌可能に支持されている。
空間108を介して酸や水の供給及び排出が行われるので、供給及び排出のための面積を大きく確保することができる。このため、容器本体101への酸や水の供給及び容器本体101からの酸溶液や水の排出をスムーズに行うことができる。この結果、インジウムの回収効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るインジウムの回収方法を示す図
【図2】本発明に係るインジウム溶出装置を示す図
【図3】本発明に係るインジウム溶出装置を示す図
【図4】本発明に係るインジウム溶出装置の別実施形態を示す図
【図5】インジウムの溶解量の経時変化に及ぼす温度の影響を示すグラフ
【図6】インジウムの溶解量に及ぼす攪拌速度の影響を示すグラフ
【図7】残液回収工程及び洗浄工程の効果を示すグラフ
【符号の説明】
【0061】
1 インジウム溶出装置
11 容器本体
11a 容器部材
11b ライニング部
13 蓋体
13a 第一蓋体
13b 第二蓋体
14 給排管
15 空気供給管
16 フィルタ
5 損傷検知手段
51 電流検知部
52 電圧印加部
53 電極
54 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ用フラットパネルを微細化する微細化工程と、
前記ディスプレイ用フラットパネルの微細化物を酸に接触させて、前記ディスプレイ用フラットパネルに含まれるインジウムを酸に溶出させるインジウム溶出工程と、
インジウムを溶出させた酸溶液からインジウムを回収するインジウム回収工程とを備え、
前記インジウム溶出工程は、前記微細化物と酸とを入れた容器を攪拌して、酸にインジウムを溶出させるインジウムの回収方法。
【請求項2】
前記インジウム溶出工程は、前記容器からインジウムを溶出させた酸溶液を回収した後、前記容器に酸を供給して前記酸溶液の残液を回収する残液回収工程を備える請求項1に記載のインジウムの回収方法。
【請求項3】
前記残液回収工程の後に、前記容器に水を供給して前記微細化物を洗浄する洗浄工程を備える請求項2に記載のインジウムの回収方法。
【請求項4】
前記インジウム回収工程は、前記酸溶液を酸吸着能を有するアニオン交換樹脂に接触させて、インジウム回収液を分別する分別工程を備える請求項1〜3の何れか一項に記載のインジウムの回収方法。
【請求項5】
前記インジウム回収液にアルカリを添加して水酸化物イオン濃度を調整することにより、インジウムを水酸化インジウムとして回収する請求項4に記載のインジウムの回収方法。
【請求項6】
前記インジウム回収液に硫化剤を添加して硫化物イオン濃度を調整することにより、インジウムを硫化インジウムとして回収する請求項4に記載のインジウムの回収方法。
【請求項7】
前記インジウム溶出工程の前に、アセトン、60℃以上の水、及び界面活性剤のうちの少なくとも一種の液体を前記微細化物に接触させて、液晶を除去する液晶除去工程を備える請求項1〜6の何れか一項に記載のインジウムの回収方法。
【請求項8】
前記微細化工程において、ディスプレイ用フラットパネルを粒径が1mm以下となるように微細化する請求項1〜7の何れか一項に記載のインジウムの回収方法。
【請求項9】
前記インジウム溶出工程において、前記微細化物と前記酸との重量比が、1:3〜1:6である請求項1〜8の何れか一項に記載のインジウムの回収方法。
【請求項10】
ディスプレイ用フラットパネルを微細化した微細化物と酸とを接触させてインジウムを溶出させた酸溶液を得るインジウム溶出装置であって、
少なくとも回転による攪拌が可能な攪拌手段を有するとともに、開口部から前記微細化物と酸とを投入する容器本体と、
回転攪拌の際に、前記開口部を閉塞する第一蓋体と、
前記容器本体への酸の供給及び前記容器本体からの酸溶液の排出の際に前記開口部に取り付ける第二蓋体とを備え、
前記第二蓋体は、前記容器本体の内部の側の面に設けたフィルタと、
前記容器本体の内部と外部とを前記フィルタを介して連通し、酸の供給及び前記酸溶液の排出を行う給排管と、
前記容器本体の内部と外部とを連通し、前記酸溶液の排出の際に、前記容器本体の内部に空気を供給する空気供給管とを備えたインジウム溶出装置。
【請求項11】
ディスプレイ用フラットパネルを微細化した微細化物と酸とを接触させてインジウムを溶出させた酸溶液を得るインジウム溶出装置であって、
少なくとも振動による攪拌を行う攪拌手段を有するとともに、開口部から前記微細化物と酸とを投入する容器本体と、
開口部を閉塞する蓋体とを備え、
容器本体は、少なくとも底部に複数の孔部を有し、前記微細化物と酸とを投入する内部容器と、
前記内部容器の孔部に設けたフィルタと、
内部容器への酸の供給及び前記内部容器からの酸の排出を行う給排部とを有するインジウム溶出装置。
【請求項12】
前記容器本体は、金属製であって、前記容器の内面に樹脂、ゴム、ガラスのうちの少なくとも一種を用いてライニングを施したライニング部を設けた請求項10又は11に記載のインジウム溶出装置。
【請求項13】
前記容器本体の内部において、酸又は酸溶液に接触する電極と前記容器本体の外側部分に接触して設けた電極と、両電極間に流れる電流を検知することにより前記ライニング部の破損を検知する電流検知部とを有する破損検知手段を備える請求項12に記載のインジウム溶出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−270311(P2007−270311A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99702(P2006−99702)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(501344821)株式会社アクアテック (4)
【Fターム(参考)】