説明

インスリンを含む安定な非水性液体医薬組成物

本発明は、少なくとも1つの脂質および少なくとも1つのインスリンを含む非水性液体医薬組成物を説明する。脂質を含む医薬組成物を生成する方法、および脂質、共溶媒、界面活性剤、または脂質を含む医薬組成物を精製する方法も説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのインスリンおよび少なくとも1つの脂質を含む安定な非水性液体医薬組成物に関する。少なくとも1つの脂質を含む医薬組成物を生成する方法、および脂質、共溶媒、界面活性剤、または脂質を含む医薬組成物を精製する方法も説明される。
【背景技術】
【0002】
以前のインスリンを含む脂質ベースの組成物は、インスリンの経口投与にとって非常に効率的であることが証明されている。しかし、これらの組成物の有効期間は、脂質不純物および分解生成物が存在する結果として3カ月未満である。調合薬開発は、少なくとも2年の有効期間を必要とする。
【0003】
製造された脂質、天然の脂質、カプリレート、および界面活性剤は、約10〜200ppmの濃度でアルデヒドおよびケトンを含有する場合がある。さらに、脂質が空気に曝されると、酸化およびアルデヒド形成をもたらす。脂質水を含まない組成物において特定される2つの主なインスリン分解生成物は、アルデヒド由来の分解生成物である。
【0004】
アルデヒドおよびケトンは、インスリンの化学安定性は保持されながら、水性医薬組成物中の賦形剤中で最大約200ppmの量で水性製剤中に許容され得ることが多い。アルデヒドおよびケトンがこの限界を超えて存在する場合、高分子量ポリマー(HMWP)などの分解生成物が形成される(Brangeら(1992) Pharmaceutical Research. 9:727〜734)。
【0005】
水性医薬組成物は、例えば、安定性のためにエチレンジアミンを含むことができることが知られている。例えば、WO2006125763では、緩衝液としてエチレンジアミンを含む水性医薬品のポリペプチド組成物が記載されている。
【0006】
しかし、1つまたは複数の脂質を含む非水性液体インスリン医薬組成物を安定化させるための方法は、依然として見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006125763
【特許文献2】WO2008/034881
【特許文献3】WO2009/115469(PCT出願第PCT/EP2009/053017号)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Brangeら(1992) Pharmaceutical Research. 9:727〜734
【非特許文献2】Remington's Pharmaceutical Sciences、1985
【非特許文献3】Remington: The Science and Practice of Pharmacy、19版、1995
【非特許文献4】Stability of Protein Pharmaceuticals、Ahern. T.J. & Manning M. C.、Plenum Press、New York 1992
【非特許文献5】Handbook of Chemistry and Physics、CMC Press
【非特許文献6】Griffin WC:「Classification of Surface-Active Agents by HLB」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1(1949):311
【非特許文献7】Davies JT:「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity (1957):426〜438
【非特許文献8】BASF technical leaflet MEF 151 E (1986)
【非特許文献9】Handbook of Pharmaceutical Excipients、Roweら編、4版、Pharmaceutical Press (2003)
【非特許文献10】Anal. Chem. 1964、36、3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、化学的に安定化され、したがって許容される有効期間を有する、脂質およびインスリンを含む非水性液体医薬組成物を提供することである。少なくとも1つの脂質を含む医薬組成物を得る方法、および化学安定性を得るために組成物および/または組成物の成分を精製するための方法も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つのインスリン、少なくとも1つのスカベンジャー、および任意選択により少なくとも1つの界面活性剤を含む非水性液体医薬組成物であって、スカベンジャーが、アミン、例えば、ジアミン、トリアミン、オキシアミン、ヒドラジン、またはヒドラジドなどの窒素含有求核性化合物である非水性液体医薬組成物に関する。一態様では、非水性液体医薬組成物中のスカベンジャーは、エチレンジアミンまたはその誘導体である。
【0011】
一態様では、非水性液体医薬組成物中の脂質は、高純度脂質である。
【0012】
脂質、共溶媒、界面活性剤、または脂質を含む医薬組成物を精製するための方法であって、精製が、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス上で実施され、それによって過剰のアルデヒドの除去が実現される方法も説明される。脂質が前記方法によって精製されている、非水性液体医薬組成物がさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】2つの異なるグレードのLabrasolからのアルデヒドの除去を示すNMRスペクトルである。
【図2】検量線MBTHアルデヒド分析(standard curve MBTH aldehyde analysis)を示す図である。
【図3】脂質混合物の精製の関数としての、経口投与のための液体脂質中のインスリンB29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30の誘導体の安定性を示す図である。各製剤1〜6の内容は、Table 9(表10)に示されている。
【図4】様々な供給源のプロピレングリコール中に溶解した、インスリンB29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30の誘導体の安定性を示す図である。
【図5】様々な供給源のLabrasolを含有する液体脂質製剤中のインスリンB29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30の誘導体の安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
驚くべきことに、1つまたは複数の脂質、および任意選択により1つまたは複数の界面活性剤を含む非水性液体インスリン医薬組成物は、組成物へのスカベンジャーの添加、および/または開示される方法による脂質の精製によって化学的に安定化され得ることが見出された。
【0015】
本発明は、湿度および空気のようなストレス条件が、製造中に発生していることが多い、医薬組成物の大規模調製において特に有用である。
【0016】
用語「スカベンジャー」は、アルデヒドおよびケトンなどの反応性不純物を除去または不活化するために医薬組成物に添加される化学物質を意味するのに本明細書で使用される。アルデヒドおよびケトンは、例えば、インスリン(A1、B1、またはB29)の遊離アミノ基と反応することがあり、シッフ塩基を形成し、これは、例えば、インスリン共有結合性二量体などの望まない生成物に変換され得る。本発明による「スカベンジャー」は、アルデヒドおよび/またはケトンと反応することができる求核官能基を含有する。
【0017】
本発明の一態様では、非水性インスリン医薬組成物は、例えば、プロピレングリコールなどの共溶媒をさらに含む。
【0018】
本発明の一態様では、スカベンジャーは、製剤の共溶媒中で可溶性である。本発明の一態様では、スカベンジャーは、アミン、例えば、ジアミン、トリアミン、オキシアミン、ヒドラジン、またはヒドラジドなどの窒素含有求核性化合物である。別の態様では、スカベンジャーは、ジアミン、トリアミン、オキシアミン、ヒドラジン、およびヒドラジドからなる群から選択される。別の態様では、スカベンジャーは、エチレンジアミンまたはその誘導体などのジアミンまたはトリアミンであり、エチレンジアミンの誘導体は、エチレンジアミンから形成され、または1つの原子を別の原子もしくは原子の群と置換することによってエチレンジアミンから生じると推測され得る化合物として定義される。一態様では、エチレンジアミンの誘導体は、共溶媒中で可溶性であるジアミンまたはトリアミンである。一態様では、エチレンジアミンの誘導体は、ジエチレントリアミンである。したがって、インスリン分解は、本発明による非水性液体医薬組成物中にエチレンジアミンを含めることによって低減されることが本発明者らによって見出された。
【0019】
一態様では、本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の脂質、1つまたは複数の界面活性剤、エチレンジアミンなどのスカベンジャー、および共溶媒を含む。本発明の一態様では、共溶媒はプロピレングリコールである。
【0020】
本発明の一態様では、スカベンジャーは、共溶媒との組み合わせで存在する。
【0021】
本発明の一態様では、スカベンジャーは、0.5mM〜50mMの間の濃度で医薬組成物中に存在する。別の態様では、スカベンジャーは、0.5mM〜30mMの間の濃度で存在する。別の態様では、スカベンジャーは、0.5mM〜20mMの間の濃度で存在する。別の態様では、スカベンジャーは、1mM〜20mMの間の濃度で存在する。別の態様では、スカベンジャーは、1mM〜10mMの間の濃度で存在する。別の態様では、スカベンジャーは、1mM〜5mMの間の濃度で存在する。
【0022】
本発明の一態様では、インスリンは、組成物中の成分の全量の0.1〜30重量%の間の濃度で医薬組成物中に存在する。別の態様では、インスリンは、0.5〜20重量%の間の濃度で存在する。別の態様では、インスリンは、1〜10重量%の間の濃度で存在する。
【0023】
本発明の一態様では、インスリンは、0.2mM〜100mMの間の濃度で医薬組成物中に存在する。別の態様では、インスリンは、0.5〜70mMの間の濃度で存在する。別の態様では、インスリンは、0.5〜35mMの間の濃度で存在する。別の態様では、インスリンは、1〜30mMの間の濃度で存在する。
【0024】
本発明の一態様では、脂質は、組成物中のインスリンを含めた成分の全量の10重量%〜90重量%の間の濃度で医薬組成物中に存在する。別の態様では、脂質は、10〜80重量%の間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、10〜60重量%の間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、15〜50重量%の間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、15〜40重量%の間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、20〜30重量%の間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、約25重量%の濃度で存在する。
【0025】
本発明の一態様では、脂質は、組成物中にインスリンを含めた成分の全量の100mg/g〜900mg/gの間の濃度で医薬組成物中に存在する。別の態様では、脂質は、100〜800mg/gの間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、100〜600mg/gの間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、150〜500mg/gの間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、150〜400mg/gの間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、200〜300mg/gの間の濃度で存在する。別の態様では、脂質は、約250mg/gの濃度で存在する。
【0026】
本発明の一態様では、共溶媒は、組成物中のインスリンを含めた成分の全量の0重量%〜30重量%の間の濃度で医薬組成物中に存在する。別の態様では、共溶媒は、5重量%〜30重量%の間の濃度で存在する。別の態様では、共溶媒は、10重量%〜20重量%の間の濃度で存在する。
【0027】
本発明の一態様では、共溶媒は、組成物中のインスリンを含めた成分の全量の0mg/g〜300mg/gの間の濃度で医薬組成物中に存在する。別の態様では、共溶媒は、50mg/g〜300mg/gの間の濃度で存在する。別の態様では、共溶媒は、100〜200mg/gの間の濃度で存在する。
【0028】
用語「約」は、本明細書で使用する場合、プラスまたはマイナス10%などの、指定された数値の適度な近傍であるということを意味する。
【0029】
製造者から得られるような脂質賦形剤および/または界面活性剤の品質も、脂質および/または界面活性剤を含む医薬組成物の安定性に影響する場合がある。例えば、非水性液体医薬組成物を安定化する、より高い純度を有するある特定の賦形剤が特定されている。したがって、脂質が高純度脂質である非水性液体医薬組成物が得られることは、本発明の一態様である。一態様では、高純度脂質は、医薬品グレードとして供給業者によって供給される脂質である。一態様では、高純度脂質は、20ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する脂質である。別の態様では、高純度脂質は、10ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する脂質である。別の態様では、高純度脂質は、5ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する脂質である。別の態様では、高純度脂質は、2ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する脂質である。一態様では、脂質は、モノカプリル酸グリセロール(例えば、Rylo MG08 Pharmaなど)、およびモノカプリン酸グリセロール(例えば、DaniscoのRylo MG10 Pharmaなど)からなる群から選択される。別の態様では、脂質は、カプリル酸プロピレングリコール(例えば、AbitecのCapmul PG8、またはGattefosseのCapryol PGMCもしくはCapryol 90など)からなる群から選択される。
【0030】
本発明の一態様では、界面活性剤が高純度界面活性剤である、少なくとも1つの界面活性剤を含む非水性液体医薬組成物が得られる。一態様では、高純度界面活性剤は、医薬品グレードとして供給業者によって供給される界面活性剤である。一態様では、高純度界面活性剤は、20ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する界面活性剤である。別の態様では、高純度界面活性剤は、10ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する界面活性剤である。別の態様では、高純度界面活性剤は、5ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する界面活性剤である。別の態様では、高純度界面活性剤は、2ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する界面活性剤である。
【0031】
本発明者らはまた、医薬組成物の安定性は、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスを使用して精製された脂質および/もしくは界面活性剤賦形剤を使用することによって、および/または界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスを使用して医薬組成物を精製することによって有利に影響を受けることを見出した。小分子薬物を合成するプロセスにおいて通常使用される、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス樹脂は、脂質、界面活性剤、および/または本発明による非水性液体医薬組成物からアルデヒドおよびケトンを除去するために使用することができることが見出された。
【0032】
用語「窒素含有求核性マトリックス」または「窒素含有求核性樹脂」は、化合物が共有結合することができ、アミン、例えば、ジアミン、またはトリアミン、オキシアミン、ヒドラジン、またはヒドラジドなどを含む固定相を意味するのに本明細書で使用され、これは、支持粒子、例えば、任意の種類の有機もしくは無機のポリマーもしくはオリゴマー化合物、例えば、様々なグレードの架橋を伴ったポリスチレン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリスチレンに結合したポリエチレングリコール(例えば、TentaGel)、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、多糖、もしくはケイ酸塩などに、またはカラム管の内壁に共有結合している。本発明の一態様では、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス(樹脂)は、ヒドラジンマトリックス(樹脂)、ヒドラジドマトリックス(樹脂)、オキシアミノマトリックス(樹脂)、ジアミンマトリックス(樹脂)、およびトリアミンマトリックス(樹脂)からなる群から選択されるマトリックスである。
【0033】
一態様では、窒素含有求核性マトリックスは、界面活性剤と適合性であり、「界面活性剤適合性」求核性マトリックスとして本明細書で記述される。用語「界面活性剤適合性の」は、窒素含有求核性マトリックスに関連して本明細書で使用する場合、界面活性剤と均質な混合物を形成することができる物質を指す。固体マトリックスの場合では、用語「界面活性剤適合性の」は、マトリックスの膨張として一般に観察される(マトリックスが膨張できないほど広範に架橋されていない限り)、マトリックス内部での界面活性剤の分布を可能にする物質を指す。
【0034】
本発明の一態様では、窒素含有求核性マトリックスは、両親媒性または親水性界面活性剤と適合性である。一態様では、窒素含有求核性マトリックスは、両親媒性界面活性剤と適合性である。一態様では、窒素含有求核性マトリックスは、親水性界面活性剤と適合性である。
【0035】
一態様では、本発明によって使用される界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスは、ポリマー結合ジエチレントリアミン(例えば、カタログ番号494380としてAldrichによって供給されるような)、ポリマー結合p-トルエン-スルホニルヒドラジド(例えば、カタログ番号としてAldrich 532339によって供給されるような)、およびポリマー結合エチレンジアミン(例えば、カタログ番号547484としてAldrichによって供給されるような)からなる群から選択される。
【0036】
一態様では、本発明によって使用される界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスは、p-トルエンスルホニルヒドラジドポリスチレンマトリックス、ジエチレントリアミンポリスチレンマトリックス、エチレンジアミンマトリックスストラトスフェア、シリカトシルヒドラジンマトリックス、シリカジエチレントリアミンマトリックス、アミノメタクリレート長鎖アミンマトリックス、およびアミノメタクリレート短鎖アミンマトリックスからなる群から選択される。
【0037】
本発明の一態様では、アルデヒドおよび/またはケトンについて精製される脂質、共溶媒、界面活性剤、または医薬組成物の精製は、
1)脂質/共溶媒/界面活性剤/医薬組成物の、本発明による界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスとのインキュベーションステップと、
2)脂質/共溶媒/界面活性剤/医薬組成物が、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスから単離される、例えば、濾過、遠心分離、またはデカンテーションなどの単離ステップと
を含む。
【0038】
本発明の一態様では、脂質/共溶媒/界面活性剤/医薬組成物の、本発明による界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスとのインキュベーションは、室温(r.t.)で16時間実施される。
【0039】
本発明の一態様では、本発明による界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスを用いた脂質/共溶媒/界面活性剤/医薬組成物の精製は、例えば、薬学的賦形剤の粘度を低減するために、より高い温度(60℃など)で実施される。
【0040】
本発明の一態様では、アルデヒドおよび/またはケトンについて精製される脂質、共溶媒、界面活性剤、または医薬組成物の精製は、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスを含むカラムを通過させることによって実施される。
【0041】
本発明の一態様では、非水性液体医薬組成物は、上述した方法の2つまたはすべての組合せによって、すなわち、以下の方法の2つまたはすべてを組み合わせることによって安定化される:1)界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス上での脂質および/または医薬組成物の精製、2)高純度脂質として納入される脂質の使用、および3)非水性液体医薬組成物へのエチレンアミンなどのスカベンジャーの添加。
【0042】
本発明の非水性液体医薬組成物は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、1985、またはRemington: The Science and Practice of Pharmacy、19版、1995に記載されているような従来の技法によって調製することができ、医薬産業のそのような従来の技法は、所望の最終生成物を得るために適切なように成分を溶解および混合することを伴う。
【0043】
一態様では、非水性液体医薬組成物を製造する方法は、不活性雰囲気、例えば、窒素、アルゴン、またはヘリウム下で組成物の成分を混合するステップを含む。一態様では、混合するステップは、窒素下で実施され、別の態様では、混合するステップは、アルゴンまたはヘリウム下で実施される。一態様では、非水性液体医薬組成物を製造する方法は、この方法の第1のステップとして、窒素またはアルゴンの存在下で、共溶媒中にインスリンを溶解させるステップを含む。一態様では、この方法は、例えば、窒素またはアルゴンの存在下でステップを実施することによって、すべてのステップにおいて反応混合物中に酸素が存在しないことが保証される場所で実施される。一態様では、この方法は、すべてのステップにおいて4℃で実施される。一態様では、この方法は、すべてのステップにおいて30℃で実施される。一態様では、この方法は、すべてのステップにおいてr.t.で実施される。一態様では、インスリンを可溶化するステップは、8〜16時間の間実施される。一態様では、脂質相を共溶媒と混合するステップは、約15分間実施される。
【0044】
非水性液体医薬組成物を製造する方法は、例えば、酸素の非存在下、4〜37℃および1〜100バールの圧力で実施することができる。本発明の一態様では、組成物を製造する方法は、1〜20バールの圧力で実施される。本発明の一態様では、医薬組成物が共溶媒を含む場合、前記共溶媒は、組成物に添加される前にまず、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスを使用して、アルデヒドおよび/またはケトンについて精製される。本発明の一態様では、医薬組成物を製造する方法の第1のステップとして、前記精製された共溶媒中にスカベンジャーが溶解され、次いで第2のステップとして、インスリンがスカベンジャーを含有する共溶媒中に溶解される。本発明の一態様では、脂質相は、1つまたは複数の異なる脂質からなる。本発明の一態様では、脂質相は、2つ以上の異なる脂質からなる。本発明の一態様では、脂質相は、2つの異なる脂質からなる。一態様では、1つまたは複数の、あるいは2つ以上の、あるいは2つの脂質は、組成物に添加される前に、混合され、引き続いて、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスを使用して、アルデヒドおよびケトンについて精製される。本発明の一態様では、脂質相は、穏やかな撹拌(agitation)または撹拌(stirring)によってインスリン相と混合される。
【0045】
本発明の一態様では、非水性液体医薬組成物を製造する方法は、窒素の存在下、22℃および大気圧で実施される。本発明の一態様では、共溶媒は、組成物に添加される前に、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス上でアルデヒドおよびケトン不純物について精製される。本発明の一態様では、共溶媒の精製は、1)プロピレングリコールなどの共溶媒の、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスとのインキュベーション、その後の2)共溶媒が単離される単離ステップを含む。一態様では、プロピレングリコールなどの共溶媒は、別個のステップとしてエチレンジアミンと混合される。本発明の一態様では、インスリンは、エチレンジアミンおよびプロピレングリコールを含む混合物中で穏やかに撹拌することによって溶解される。一態様では、脂質および少なくとも1つの界面活性剤は、非水性液体医薬組成物に添加される前に、1つのステップで混合され、次いで、その後のステップで、ジエチレントリアミンマトリックス上でアルデヒドおよび/またはケトン不純物について精製される。一態様では、脂質および少なくとも1つの界面活性剤は、非水性液体医薬組成物に添加される前に、1つのステップで混合され、次いで、その後のステップでp-トルエン-スルホニルヒドラジドマトリックス上でアルデヒドおよび/またはケトン不純物について精製される。一態様では、脂質および少なくとも1つの界面活性剤は、非水性液体医薬組成物に添加される前に、1つのステップで混合され、次いで、その後のステップで、エチレンジアミンマトリックス上でアルデヒドおよび/またはケトン不純物について精製される。本発明の一態様では、脂質および少なくとも1つの界面活性剤の混合物は、インスリン、共溶媒、およびエチレンジアミンなどのスカベンジャーを含む混合物と、穏やかに撹拌することによって混合される。
【0046】
本発明の一態様では、本発明による非水性液体医薬組成物を製造する方法は、以下の連続したステップ、すなわち、
1)プロピレングリコールなどの共溶媒をエチレンジアミンと混合するステップ、
2)エチレンジアミン、およびプロピレングリコールなどの共溶媒を含むステップ1)の混合物中に、穏やかに撹拌することによってインスリンを溶解させるステップ、
3)脂質および少なくとも1つの界面活性剤を混合するステップ、
4)穏やかに撹拌することによって、ステップ3)の脂質/界面活性剤混合物を、ステップ2)のインスリン/プロピレングリコール/エチレンジアミン混合物と混合するステップ
によって窒素の存在下、22℃および大気圧で実施される。
【0047】
本発明の一態様では、本発明による非水性液体医薬組成物を製造する方法は、以下の連続したステップ、すなわち、
1)プロピレングリコールなどの共溶媒を界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスとインキュベートするステップ、
2)界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスをプロピレングリコールなどの共溶媒から濾過し、それによって共溶媒が単離されるステップ、
3)精製されたプロピレングリコールなどの共溶媒をエチレンジアミンと混合するステップ、
4)エチレンジアミン、および精製されたプロピレングリコールなどの共溶媒を含むステップ3)の混合物中に、穏やかに撹拌することによってインスリンを溶解させるステップ、
5)脂質および少なくとも1つの界面活性剤を混合するステップ、
6)ステップ5)の脂質および少なくとも1つの界面活性剤の混合物を、界面活性剤適合性ジエチレントリアミン含有求核性マトリックスなどの界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスとインキュベートするステップ、
7)界面活性剤適合性ジエチレントリアミン含有求核性マトリックスなどの界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスを、脂質/界面活性剤混合物から濾過し、それによって脂質/界面活性剤混合物が単離されるステップ、
8)穏やかに撹拌することによって、ステップ7)の脂質/界面活性剤混合物を、ステップ4)のインスリン/プロピレングリコール/エチレンジアミン混合物と混合するステップ
によって窒素の存在下、22℃および大気圧で実施される。
【0048】
用語「無水」および「非水性」は、医薬組成物について使用される場合、本明細書で互換的に使用され、医薬組成物の調製中に水が添加されない医薬組成物を指す。インスリンおよび/または医薬組成物中の賦形剤の1つもしくは複数は、本発明による医薬組成物を調製する前にそれに結合した少量の水を有する場合がある。一態様では、本発明による無水医薬組成物は、10重量%未満の水を含む。別の態様では、本発明による組成物は、5重量%未満の水を含む。別の態様では、本発明による組成物は、4重量%未満の水、別の態様では、3重量%未満の水、別の態様では、2重量%未満の水、さらに別の態様では、1重量%未満の水を含む。
【0049】
用語「安定性」は、組成物の有効期間を説明するために、非水性液体医薬組成物について本明細書で使用される。したがって、用語「安定化された」または「安定な」は、非水性液体医薬組成物に言及する場合、安定化されていない、または安定でない組成物と比べて、物理的安定性が増大した、化学的安定性が増大した、または物理的および化学的安定性が増大した組成物を指す。
【0050】
用語、非水性液体医薬組成物の「物理的安定性」は、本明細書で使用する場合、熱機械ストレスおよび/または疎水性表面および界面などの安定性を損なう界面および表面との相互作用にタンパク質を曝す結果として、タンパク質の生物学的に不活性な、および/または不溶性の凝集物を形成する、タンパク質の傾向を指す。非水性液体医薬組成物の物理的安定性は、適当な容器(例えば、カートリッジまたはバイアル)中に満たされた組成物を、機械的/物理的ストレス(例えば、撹拌(agitation))に、様々な温度で、様々な時間曝した後に、目視検査および/または濁度測定によって評価される。組成物の目視検査は、暗い背景とともに鋭く集光した光で実施される。組成物の濁度は、濁度の程度をランク付けする視覚的なスコアによって、例えば、0〜3のスケール(濁りを全く示さない組成物は、視覚的スコア0に対応し、昼光中で視覚的な濁りを示す組成物は、視覚的スコア3に対応する)で特徴づけられる。組成物は、これが昼光中で視覚的な濁りを示す場合、タンパク質凝集に関して物理的に不安定であると分類される。あるいは、組成物の濁度は、当業者に周知の単純な濁度測定によって評価することができる。非水性液体医薬組成物の物理学的安定性は、タンパク質の立体配置状態の分光物質(spectroscopic agent)またはプローブを使用することによっても評価することができる。
【0051】
他の小分子を、天然状態から非天然状態へのタンパク質構造の変化のプローブとして使用することができる。例えば、タンパク質の露出した疎水性パッチ(patch)に優先的に結合する「疎水性パッチ」プローブ。これらの疎水性パッチは、タンパク質の天然状態において、その三次構造内に通常埋もれているが、タンパク質がほどけ、または変性し始めるにつれて露出した状態になる。これらの小分子、分光学的プローブの例は、芳香族疎水性色素、例えば、アントラセン、アクリジン、フェナントロリンなどである。他の分光学的プローブは、疎水性アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、およびバリンなどのコバルト金属錯体などの金属-アミノ酸錯体である。
【0052】
医薬組成物の「化学的安定性」という用語は、本明細書で使用する場合、天然タンパク質構造と比較して、潜在的なより小さい生物学的効力および/または免疫原性特性の潜在的な増大を伴う化学分解生成物の形成に至るタンパク質構造の化学共有結合性変化を指す。様々な化学分解生成物が、天然タンパク質の種類および性質、ならびにタンパク質が曝されている環境に応じて形成され得る。化学分解の排除は、まず間違いなく完全に回避することはできず、化学分解生成物の量の増加は、当業者に周知であるように、医薬組成物を貯蔵および使用している間に見られることが多い。ほとんどのタンパク質は、グルタミニルまたはアスパラギニル残基中の側鎖アミド基が加水分解されて遊離カルボン酸を形成するプロセスであるアミド分解の傾向がある。他の分解経路は、高分子量変換生成物の形成を伴い、この場合、2つ以上のタンパク質分子が、アミド基転移および/またはジスルフィド相互作用を通じて互いに共有結合し、共有結合した二量体、オリゴマーおよびポリマー分解生成物の形成に至る(Stability of Protein Pharmaceuticals、Ahern. T.J. & Manning M. C.、Plenum Press、New York 1992)。酸化を、化学分解の別の変形として述べることができる。医薬組成物の化学安定性は、様々な環境条件に曝した後に、様々な時点で化学分解生成物の量を測定することによって評価することができる(分解生成物の形成は、例えば、温度を上昇させることによって、多くの場合加速することができる)。各個々の分解生成物の量は、様々なクロマトグラフィー技法(例えば、SEC-HPLCおよび/またはRP-HPLC)を使用して、分子サイズおよび/または電荷に応じて分解生成物を分離することによって求められることが多い。
【0053】
したがって、上記に略述したように、「安定化された」または「安定な」は、非水性液体医薬組成物に言及する場合、物理的安定性が増大し、化学的安定性が増大し、または物理的および化学的安定性が増大した非水性液体医薬組成物を指す。一般に、非水性液体医薬組成物は、有効期限に達するまで使用および貯蔵している間に安定でなければならない(推奨される使用および貯蔵条件に従って)。
【0054】
本発明の一態様では、インスリンを含む非水性液体医薬組成物は、6週間を超える使用、および2年を超える貯蔵について安定である。
【0055】
本発明の別の態様では、インスリンを含む非水性液体医薬組成物は、4週間を超える使用、および2年を超える貯蔵について安定である。
【0056】
本発明のさらなる態様では、インスリンを含む非水性液体医薬組成物は、4週間を超える使用、および3年を超える貯蔵について安定である。
【0057】
本発明のなおさらなる態様では、インスリンを含む非水性液体医薬組成物は、2週間を超える使用、および2年を超える貯蔵について安定である。
【0058】
用語「脂質」は、水よりも油とより混合できる物質、材料、または成分について本明細書で使用される。脂質は、水中で不溶性またはほとんど不溶性であるが、油または他の非極性溶媒中で容易に可溶性である。
【0059】
用語「脂質」は、1つまたは複数の親油性物質、すなわち、油と均質な混合物を形成するが、水と均質な混合物を形成しない物質を含むことができる。複数の脂質が、非水性液体医薬組成物の親油性相を構成し、油の様相を形成することができる。室温で、脂質は、固体、半固体、または液体となり得る。例えば、固体脂質は、ペースト、顆粒状形態、粉末、またはフレークとして存在することができる。1つを超える賦形剤が脂質を含む場合、脂質は、液体、固体、または両方の混合物とすることができる。
【0060】
固体脂質、すなわち、室温で固体または半固体である脂質の例として、それだけに限らないが、以下のものが挙げられる:
1.Sasol Germany(Witten、ドイツ)からWITEPSOL HI5として市販されている水素化ココグリセリド(約33.5℃〜約37℃の融点(m.p.))などのモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの混合物。脂肪酸トリグリセリド、例えば、C10〜C22脂肪酸トリグリセリドの例には、植物油などの天然油および水素化油が含まれる;
2.エステル、例えば、Gattefosse Corp.(Paramus、NJ)からMONOSTEOL(約33℃〜約36℃のm.p.)として市販されているプロピレングリコール(PG)ステアリン酸;Gattefosse CorpからHYDRINE(約44.5℃〜約48.5℃のm.p.)として市販されている、ジエチレングリコールパルミトステアリン酸など;
3.Gattefosse Corp.のLABRAFIL M2130 CS、またはGelucire 33/01として市販されている、水素化パーム/パーム核油PEG-6エステル(約30.5℃〜約38℃のm.p.)などのポリグリコシル化飽和グリセリド;
4.Cognis Corp.(Cincinnati、OH)からLANETTE 14として市販されているミリスチルアルコール(約39℃のm.p.)などの脂肪アルコール;脂肪酸の脂肪アルコールとのエステル、例えば、パルミチン酸セチル(約50℃のm.p.);例えば、約43℃の融点を有する、Uniqema(New Castle、Delaware)から商標名ARLAMOL ISMLで市販されているイソソルビドモノラウレート;
5.例えば、約33℃の融点を有する、UniqemaからBRIJ 52として市販されているポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、または例えば、約43℃の融点を有する、UniqemaからBRIJ 72として市販されているポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテルを含めたPEG-脂肪アルコールエーテル;
6.ソルビタンエステル、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、UniqemaからSPAN 40またはSPAN 60として市販され、それぞれ約43℃〜48℃または約53℃〜57℃、および41℃〜54℃の融点を有する、モノパルミチン酸ソルビタンまたはモノステアリン酸ソルビタン;および
7.グリセリルモノ-C6〜C14-脂肪酸エステル。これらは、植物油を用いてグリセロールをエステル化し、その後、分子蒸留することによって得られる。モノグリセリドには、それだけに限らないが、対称(すなわち、β-モノグリセリド)ならびに非対称モノグリセリド(α-モノグリセリド)の両方が含まれる。これらには、均一なグリセリド(脂肪酸成分が単一の脂肪酸から主に構成される)、ならびに混合グリセリド(すなわち、脂肪酸成分が様々な脂肪酸から構成される)の両方も含まれる。脂肪酸成分は、例えば、C8〜C14の鎖長を有する飽和および不飽和脂肪酸の両方を含むことができる。特に適しているのは、例えば、Sasol North America(Houston、TX)からIMWITOR 312(約56℃〜60℃のm.p.)として市販されている、モノラウリン酸グリセリル;SasolからIMWITOR 928(約33℃〜37℃のm.p.)として市販されている、グリセリルモノジココエート;IMWITOR 370(約59〜約63℃のm.p.)として市販されている、クエン酸モノグリセリル;または例えば、SasolからIMWITOR 900(約56℃〜61℃のm.p.)として市販されている、モノステアリン酸グリセリル;または例えば、SasolからIMWITOR 960(約56℃〜61℃のm.p.)として市販されている、自己乳化型モノステアリン酸グリセロールである。
【0061】
液体および半固体脂質、すなわち、室温で液体または半固体である脂質の例として、それだけに限らないが、以下のものが挙げられる:
1.モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの混合物、例えば、Abitec Corp.(Columbus、OH)からCAPMUL MCMとして市販されている、中鎖モノグリセリドおよびジグリセリド、カプリル酸グリセリル/カプリン酸グリセリルなど;ならびにRYLO MG08 Pharmaとして市販されているモノカプリル酸グリセロール、およびDANISCOからRYLO MG10 Pharmaとして市販されているモノカプリン酸グリセロール;
2.例えば、C6〜C18、例えば、C6〜C16、例えば、C8〜C10、例えば、C8脂肪酸のグリセリルモノ脂肪酸エステルもしくはグリセリルジ脂肪酸エステル、またはこれらのアセチル化誘導体、例えば、Eastman Chemicals(Kingsport、TN)のMYVACET 9-45もしくは9-08、またはSasolのIMWITOR 308もしくは312;
3.例えば、C8〜C20、例えば、C8〜C12脂肪酸のプロピレングリコールモノ脂肪酸エステルまたはプロピレングリコールジ脂肪酸エステル、例えば、Abitec Corp.またはGattefosseのLAUROGLYCOL 90、SEFSOL 218、またはCAPRYOL 90、またはCAPMUL PG-8(カプリル酸プロピレングリコールと同じ);
4.油、例えば、サフラワー油、ゴマ油、扁桃油、ラッカセイ油、パーム油、コムギ胚芽油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ヤシ油、綿実油、ダイズ油、オリーブ油、および鉱油など;
5.例えば、C8〜C20飽和またはモノ不飽和もしくはジ不飽和の脂肪酸またはアルコール、例えば、オレイン酸、オレイルアルコール、リノール酸、カプリン酸、カプリル酸、カプロン酸、テトラデカノール、ドデカノール、デカノール;
6.中鎖脂肪酸トリグリセリド、例えば、C8〜C12、例えば、MIGLYOL 812、または長鎖脂肪酸トリグリセリド、例えば、植物油;
7.例えば、Gattefosse CorpからLABRAFIL M2125 CSとして市販されている、エステル交換化エトキシ化植物油;
8.脂肪酸および1級アルコール、例えば、C8〜C20脂肪酸およびC2〜C3アルコールのエステル化化合物、例えば、Nikko Chemicals(Tokyo、日本)からNIKKOL VF-Eとして市販されているリノール酸エチル、酪酸エチル、カプリル酸エチルオレイン酸、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、およびカプリル酸エチル;
9.エッセンシャルオイル、または植物にその特徴的な香りを与える任意のクラスの揮発性油、例えば、スペアミント油、丁子油、レモン油、およびペパーミント油など;
10.エッセンシャルオイルの画分または成分、例えば、メントール、カルバクロール、およびチモールなど;
11.合成油、例えば、トリアセチン、トリブチリンなど;
12.クエン酸トリエチル、クエン酸トリエチルアセチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリブチルアセチル;
13.ポリグリセロール脂肪酸エステル、例えば、モノオレイン酸ジグリセリル、例えば、Nikko ChemicalsのDGMO-C、DGMO-90、DGDO;ならびに
14.ソルビタンエステル、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、UniqemaからSPAN 20として市販されているモノラウリン酸ソルビタン;
15.リン脂質、例えば、アルキル-O-リン脂質、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジ-O-アルキルホスファチジン酸、L-α-リゾホスファチジルコリン(LPC)、L-α-リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、L-α-リゾホスファチジルグリセロール(LPG)、L-α-リゾホスファチジルイノシトール(LPI)、L-α-ホスファチジン酸(PA)、L-α-ホスファチジルコリン(PC)、L-α-ホスファチジルエタノールアミン(PE)、L-α-ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン(CL)、L-α-ホスファチジルイノシトール(PI)、L-α-ホスファチジルセリン(PS)、リゾ-ホスファチジルコリン、リゾ-ホスファチジルグリセロール、LARODANから市販されているsn-グリセロホスホリルコリン、またはLipoid GmbHから市販されているダイズリン脂質(Lipoid S100);
16.オレイン酸ポリグリセロール(GattefosseのPlurol Oleique)などのポリグリセロール脂肪酸エステル。
【0062】
本発明の一態様では、脂質は、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドからなる群から選択される1つまたは複数である。さらなる態様では、脂質は、モノグリセリドおよびジグリセリドからなる群から選択される1つまたは複数である。なおさらなる態様では、脂質は、Capmul MCMまたはCapmul PG-8である。なおさらなる態様では、脂質はCapmul PG-8である。さらなる態様では、脂質は、モノカプリル酸グリセロール(DaniscoのRylo MG08 Pharma)である。
【0063】
一態様では、本発明による共溶媒は、半極性プロトン性共溶媒である共溶媒であり、1つもしくは複数のアルコールもしくはアミン官能基、またはこれらの混合物を含有する、親水性、水混和性炭素含有共溶媒を指す。極性は、溶媒の誘電率または双極子モーメントに反映される。溶媒の極性により、溶媒がどの種類の化合物を溶解することができ、溶媒がどの他の溶媒または液体化合物と混和性であるかが決まる。一般に、極性溶媒は、極性化合物を最もよく溶解し、非極性共溶媒は、非極性化合物を最もよく溶解し、すなわち、「同様のものは、同様のものを溶解する」。無機塩(例えば、塩化ナトリウム)などの強極性化合物は、非常に極性の溶媒中にのみ溶解する。
【0064】
半極性共溶媒は、20〜50の範囲の誘電率を有する共溶媒としてここでは定義され、一方、極性および非極性共溶媒は、それぞれ50超および20未満の誘電率によって定義される。半極性プロトン性の例は、参照として水と一緒にTable 1(表1)に列挙されている。
【0065】
【表1】

【0066】
本状況において、1,2-プロパンジオールおよびプロピレングリコールは、互換的に使用される。本状況において、プロパントリオールおよびグリセロールは、互換的に使用される。本状況において、エタンジオールおよびエチレングリコールは、互換的に使用される。
【0067】
本発明の一態様では、共溶媒は、ポリオールからなる群から選択される。用語「ポリオール」は、本明細書で使用する場合、複数のヒドロキシル基を含有する化学化合物を指す。
【0068】
本発明のさらなる態様では、共溶媒は、ジオールおよびトリオールからなる群から選択される。用語「ジオール」は、本明細書で使用する場合、2つのヒドロキシル基を含有する化学化合物を指す。用語「トリオール」は、本明細書で使用する場合、3つのヒドロキシル基を含有する化学化合物を指す。
【0069】
本発明のさらなる態様では、共溶媒は、グリセロール(プロパントリオール)、エタンジオール(エチレングリコール)、1,3-プロパンジオール、メタノール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、エタノール、およびイソプロパノール、またはこれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらなる態様では、共溶媒は、プロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される。本発明の好適な態様では、共溶媒はグリセロールである。この共溶媒は、高い投与量であっても生体適合性であり、インスリンペプチド化合物に関して高い共溶媒力(cosolvent capacity)を有する。本発明の別の好適な態様では、共溶媒は、プロピレングリコールおよびエチレングリコールからなる群から選択される。これらの共溶媒は、低粘度を有し、中等度の用量で生体適合性であり、インスリンペプチドに関して非常に高い共溶媒力を有する。本発明のさらなる態様では、共溶媒はプロピレングリコールである。
【0070】
一態様では、製剤の共溶媒は、少なくとも99.8%の純度を有するプロピレングリコールUSP/EP(Dow ChemicalのプロピレングリコールUSP/EPなど)である。
【0071】
本発明の一態様では、共溶媒のアルデヒド含量は、5ppm未満である。本発明の別の態様では、共溶媒のアルデヒド含量は、2ppm未満である。
【0072】
一態様では、共溶媒は、アルデヒド含量が2ppm未満であるプロピレングリコールである。
【0073】
プロピレングリコールなどの半極性有機溶媒のアルデヒド含量は、実施例9に記載される方法を用いて分析することができる。
【0074】
一態様では、本発明による水性医薬組成物は、界面張力を低減する界面活性剤の混合物などの1つまたは複数の界面活性剤または表面活性剤を含む。界面活性剤は、例えば、非イオン性、イオン性、または両性である。界面活性剤は、生成物の調製に伴う副生成物または未反応出発生成物を含有する複雑な混合物である場合があり、例えば、ポリオキシエチル化によって作製される界面活性剤は、別の副生成物、例えば、PEGを含有する場合がある。本発明による1つまたは複数の界面活性剤は、少なくとも8である親水性親油性バランス(HLB)値を有する。例えば、界面活性剤は、8〜30、例えば、12〜30、12〜20、または13〜15の平均HLB値を有することができる。界面活性剤は、本質的に液体、半固体、または固体とすることができる。
【0075】
界面活性剤の親水性親油性バランス(HLB)は、Griffin(Griffin WC:「Classification of Surface-Active Agents by HLB」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1(1949):311)、またはDavies(Davies JT:「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity (1957):426〜438)によって記載されているように、分子の異なる領域について値を計算することによって求められる、界面活性剤が親水性であるか、親油性であるかの程度の尺度である。
【0076】
用語「界面活性剤」は、本明細書で使用する場合、例えば、液体の空気との、液体の液体との、液体の容器との、または液体の任意の固体との、表面および界面に吸着することができる任意の物質、特に界面活性剤(detergent)を指す。界面活性剤(surfactant)は、エトキシ化ヒマシ油などの界面活性剤(detergent)、ポリグリコール化(polyglycolyzed)グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート-20などのポリソルベート、ポロキサマー188およびポロキサマー407などのポロキサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキル化およびアルコキシ化誘導体などのポリオキシエチレン誘導体(ツイーン、例えば、Tween-20、もしくはTween-80)、モノグリセリドまたはそのエトキシ化誘導体、ジグリセリドまたはそのポリオキシエチレン誘導体、グリセロール、コール酸またはその誘導体、レシチン、アルコール、ならびにリン脂質、グリセロリン脂質(レシチン、セファリン、ホスファチジルセリン)、グリセロ糖脂質(ガラクトピランソイド)、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)、ならびにスフィンゴ糖脂質(セラミド、ガングリオシド)、DSS(ドクセートナトリウム、CAS登録番号[577-11-7]、ドクセートカルシウム、CAS登録番号[128-49-4]、ドクセートカリウム、CAS登録番号[7491-09-0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウムもしくは硫酸ラウリルナトリウム)、ジパルミトイルホスファチジン酸、カプリル酸ナトリウム、胆汁酸およびその塩およびグリシンまたはタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、陰イオン性(アルキル-アリール-スルホネート)一価界面活性剤(surfactant)、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン、リゾリン脂質(例えば、エタノールアミン、コリン、セリン、もしくはトレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)、リゾホスファチジルコリンおよびホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)誘導体、例えば、リゾホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンのラウロイルおよびミリストイル誘導体、ならびにコリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、トレオニン、グリセロール、イノシトール、および正に帯電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン、およびリゾホスファチジルトレオニンである極性頭部基の修飾体、双性イオン性界面活性剤(surfactant)(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパン-スルホネート、ドデシルホスホコリン、ミリストイルリゾホスファチジルコリン、雌鳥の卵のリゾレシチン)、陽イオン性界面活性剤(surfactant)(四級アンモニウムベース)(例えば、セチル-トリメチルアンモニウム臭化物、塩化セチルピリジニウム)、非イオン性界面活性剤(surfactant)(例えば、ドデシルβ-D-グルコピラノシド、ドデシルβ-D-マルトシド、テトラデシルβ-D-グルコピラノシド、デシルβ-D-マルトシド、ドデシルβ-D-マルトシド、テトラデシルβ-D-マルトシド、ヘキサデシルβ-D-マルトシド、デシルβ-D-マルトトリオシド、ドデシルβ-D-マルトトリオシド、テトラデシルβ-D-マルトトリオシド、ヘキサデシルβ-D-マルトトリオシド、n-ドデシル-スクロース、n-デシル-スクロースのようなアルキルグルコシド)、脂肪アルコールエトキシレート(例えば、オクタエチレングリコールモノトリデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノテトラデシルエーテルのようなポリオキシエチレンアルキルエーテル)、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronics/Tetronics、Triton X-100)のようなブロックコポリマー、エトキシ化ソルビタンアルカノエート界面活性剤(surfactant)(例えば、Tween-20、Tween-40、Tween-80、Brij-35)、フシジン酸誘導体(例えば、タウロ-ジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、長鎖脂肪酸およびその塩 C8〜C20(例えば、オレイン酸およびカプリル酸)、アシルカルニチンおよび誘導体、リシン、アルギニン、もしくはヒスチジンのN-アシル化誘導体、またはリシンもしくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リシン、アルギニンもしくはヒスチジン、および中性もしくは酸性アミノ酸の任意の組合せを含むジペプチドのN-アシル化誘導体、中性アミノ酸および2荷電化アミノ酸の任意の組合せを含むトリペプチドのN-アシル化誘導体、またはイミダゾリン誘導体の群から選択することができる界面活性剤(surfactant)、あるいはこれらの混合物から選択することができる。
【0077】
固体界面活性剤の例として、それだけに限らないが、
1.天然または硬化ヒマシ油およびエチレンオキシドの反応生成物。天然または硬化ヒマシ油は、約1:35〜約1:60のモル比でエチレンオキシドと反応させ、生成物からPEG成分を任意選択で除去することができる。様々なそのような界面活性剤は、市販されており、例えば、BASF Corp.(Mt. Olive、NJ)のCREMOPHORシリーズであり、例えば、PEG40硬化ヒマシ油であるCREMOPHOR RH 40であり、これは、約50〜60のけん化価、約1未満の酸価、約2%未満の含水量、すなわち、Fischer、約1.453〜1.457のnD60、および約14〜16のHLBを有する;
2.ポリオキシエチレンステアリン酸エステルを含むポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えば、UniqemaのMYRJシリーズ、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53など。MYRJシリーズ中の特定の化合物は、例えば、約47℃のm.p.を有するMYRJ 53、およびMYRJ 52として入手可能なPEG-40-ステアレートである;
3.UniqemaのTWEENシリーズ、例えば、TWEEN 60を含むソルビタン誘導体;
4.ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびブロックコポリマーまたはポロキサマー、例えば、BASFのPluronic F127、Pluronic F68;
5.ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、UniqemaからBRIJシリーズとして知られ、市販されている、C12〜C18アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテル、ポリ-オキシル10-もしくは20-セチルエーテル、またはポリオキシル23-ラウリルエーテル、または20-オレイルエーテル、またはポリオキシル10-、20-もしくは100-ステアリルエーテル。BRIJシリーズの特に有用な製品は、BRIJ 58; BRIJ 76; BRIJ 78; BRIJ 35、すなわち、ポリオキシル23ラウリルエーテル;およびBRIJ 98、すなわち、ポリオキシル20オレイルエーテルである。これらの製品は、約32℃〜約43℃の間のm.p.を有する;
6.約36℃のm.p.を有するEastman Chemical Co.から入手可能な水溶性トコフェリルPEGコハク酸エステル、例えば、TPGSおよびビタミンE TPGS;
7.例えば、5〜35の[CH2-CH,-O]ユニット、例えば、20〜30ユニットを有するPEGステロールエーテル、例えば、Chemron(Paso Robles、CA)のSOLULAN C24(Choleth-24およびCetheth-24);やはり使用することができる類似の製品は、Nikko ChemicalsからNIKKOL BPS-30(ポリエトキシ化30フィトステロール)、およびNIKKOL BPSH-25(ポリエトキシ化25フィトスタノール)として知られ、市販されているものである;
8.例えば、4〜10の様々なグリセロールユニット、または4、6、もしくは10のグリセロールユニットを有するポリグリセロール脂肪酸エステル。例えば、特に適しているのは、デカ-/ヘキサ-/テトラグリセリルモノステアレート、例えば、Nikko ChemicalsのDECAGLYN、HEXAGLYN、およびTETRAGLYNである;
9.アルキレンポリオールエーテルまたはエステル、例えば、それぞれGELUCIRE 44/14およびGELUCIRE 50/13である、ラウロイルマクロゴール-32グリセリドおよび/またはステアロイルマクロゴール-32グリセリド;
10. C18置換飽和、例えば、ヒドロキシ脂肪酸などの飽和C10〜C22のポリオキシエチレンモノエステル;例えば、約、例えば、600〜900、例えば、660ダルトンのMWのPEGの12ヒドロキシステアリン酸PEGエステル、例えば、BASF(Ludwigshafen、20 ドイツ)のSOLUTOL HS 15。BASF technical leaflet MEF 151 E (1986)によれば、SOLUTOL HS 15は、約70重量%のポリエトキシ化12-ヒドロキシステアレート、および約30重量%の未エステル化ポリエチレングリコール成分を含む。これは、90〜110の水素化価、53〜63のけん化価、最大1の酸数値、および0.5重量%の最大含水量を有する;
11.ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-アルキルエーテル、例えば、C12〜C18アルコールのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-エーテル、例えば、Nikko ChemicalsからNIKKOL PBC 34として市販されている、ポリオキシエチレン-20-ポリオキシプロピレン-4-セチルエーテル;
12.例えば、UniqemaからATLAS G 1821、およびNikko ChemicalsからNIKKOCDS-6000Pの商標名で市販されているポリエトキシ化ジステアレート;
13.レシチン、例えば、Lipoid GmbH(Ludwigshafen、ドイツ)からLIPOID S75として市販されているダイズリン脂質、またはNattermann Phospholipid(Cologne、ドイツ)からPHOSPHOLIPON 90として市販されている卵リン脂質;
が挙げられる。
【0078】
液体界面活性剤の例として、それだけに限らないが、Uniqemaからすべて入手可能な、ソルビタン誘導体、例えば、TWEEN 20、TWEEN 40、およびTWEEN 80など、SYNPERONIC L44、ならびにポリオキシル10-オレイルエーテルや、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasolまたはLabrasol ALF)が挙げられる。
【0079】
本発明の組成物は、約0重量%〜約95重量%の界面活性剤、例えば、約5重量%〜約80重量%、例えば、約10重量%〜約70重量%、例えば、約20重量%〜約60重量%、例えば、約30%〜約50%の界面活性剤を含むことができる。
【0080】
本発明の一態様では、界面活性剤は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびブロックコポリマーまたはポロキサマー、例えば、BASFのPluronic F127、Pluronic F68である。
【0081】
本発明の一態様では、界面活性剤はポロキサマーである。さらなる態様では、界面活性剤は、ポロキサマー188、ポロキサマー407、およびポロキサマー407とポロキサマー188の混合物からなる群から選択される。
【0082】
本発明の一態様では、界面活性剤は、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(例えば、Gattefosseから入手可能なLabrasol)である。
【0083】
本発明のさらなる態様では、界面活性剤は、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、アルデヒド含量が10ppm未満であるPEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Gattefosseから入手可能なLabrasol ALF)である。
【0084】
本発明のなおさらなる態様では、界面活性剤は、ポリオキシエチレン含有界面活性剤、例えば、アルデヒド含量が5ppm未満であるPEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Gattefosseから入手可能なLabrasol ALF)である。
【0085】
PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Labrasol)中のアルデヒド含量は、例えば、NMRによって分析することができる(実施例14を参照)。
【0086】
本発明の一態様では、界面活性剤は、ポリエチレングリコールモノラウリン酸ソルビタン(例えば、MerckまたはCrodaから入手可能なTween 20)である。
【0087】
本発明の一態様では、界面活性剤は、超精製ポリソルベート20(例えば、Crodaから入手可能なTween 20)である。
【0088】
本発明の一態様では、界面活性剤は、アルデヒド含量が10ppm未満である、超精製ポリソルベート20(例えば、Crodaから入手可能なTween 20)である。
【0089】
本発明のさらなる態様では、界面活性剤は、アルデヒド含量が5ppm未満である、超精製ポリソルベート20(例えば、Crodaから入手可能なTween 20)である。
【0090】
本発明のなおさらなる態様では、界面活性剤は、ホルムアルデヒド含量が3ppm未満である、超精製ポリソルベート20(例えば、Crodaから入手可能なTween 20)である。
【0091】
本発明の一態様では、界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(例えば、MerckまたはCrodaから入手可能なTween 80)である。
【0092】
本発明の一態様では、界面活性剤は、超精製ポリソルベート80(例えば、Crodaから入手可能なTween 80)である。
【0093】
本発明のさらなる態様では、界面活性剤は、アルデヒド含量が10ppm未満である、超精製ポリソルベート80(例えば、Crodaから入手可能なTween 80)である。
【0094】
本発明のなおさらなる態様では、界面活性剤は、アルデヒド含量が5ppm未満である、超精製ポリソルベート80(例えば、Crodaから入手可能なTween 80)である。
【0095】
本発明のなおさらなる態様では、界面活性剤は、ホルムアルデヒド含量が3ppm未満である、超精製ポリソルベート80(例えば、Crodaから入手可能なTween 80)である。
【0096】
本発明の一態様では、界面活性剤は、BASFのCremophor RH40である。
【0097】
本発明の一態様では、界面活性剤は、ポリグリセロール-2-カプリレートまたはポリグリセロール-2-カプレートである。
【0098】
本発明のある特定の態様では、非水性液体医薬組成物は、医薬組成物中に一般に見出される、1つまたは複数の追加の賦形剤を含むことができる。そのような賦形剤の例として、それだけに限らないが、抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定剤、保存剤、香料、甘味料、および参照により本明細書に組み込まれているHandbook of Pharmaceutical Excipients、Roweら編、4版、Pharmaceutical Press (2003)に記載されているような他の成分が挙げられる。
【0099】
これらの追加の賦形剤は、全医薬組成物の約0.05〜5重量%の濃度で存在し得る。抗酸化剤、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定剤、または保存剤は一般に、全医薬組成物の約0.05〜1重量%まで構成する。甘味料または香味剤は一般に、全医薬組成物の約2.5重量%〜5重量%まで構成する。
【0100】
抗酸化剤の例には、それだけに限らないが、アスコルビン酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、ブチルヒドロキシルアニソール、ならびにブチルヒドロキシルトルエンが含まれる。
【0101】
一態様では、1つまたは複数の追加の賦形剤は、アミノ酸、およびphe-pheまたはarg-argのようなジアミノ酸からなる群から選択される1つまたは複数である。
【0102】
「インスリン」に関して、「インスリン(an insulin)」または「インスリン(the insulin)」は、本明細書で使用する場合、CysA7とCysB7の間およびCysA20とCysB19の間のジスルフィド架橋、ならびにCysA6とCysA11の間の内部ジスルフィド架橋を有するヒトインスリン、ブタインスリン、もしくはウシインスリン、またはインスリン類似体もしくはその誘導体を意味する。
【0103】
ヒトインスリンは、2本のポリペプチド鎖、すなわち、それぞれ21および30のアミノ酸残基を含有するA鎖およびB鎖からなる。A鎖およびB鎖は、2つのジスルフィド架橋によって相互接続されている。ほとんどの他の種に由来するインスリンも同様であるが、いくつかの位置においてアミノ酸置換を含有する場合がある。
【0104】
インスリン類似体は、本明細書で使用する場合、天然のインスリンに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失および/もしくは置換することによって、および/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって、天然に存在するインスリンの構造、例えば、ヒトインスリンの構造に形式式に由来し得る分子構造を有するポリペプチドである。
【0105】
一態様では、本発明によるインスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて、8未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。一態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて、7未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。一態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて、6未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて、5未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて、4未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて、3未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。別の態様では、インスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて、2未満の修飾(置換、欠失、付加)を含む。
【0106】
本発明によるインスリンの誘導体は、例えば、インスリン主鎖の1つもしくは複数の位置に側鎖を導入することによって、またはインスリン中のアミノ酸残基の基を酸化もしくは還元することによって、または遊離カルボン酸基をエステル基もしくはアミド基に変換することによって化学修飾された天然に存在するヒトインスリンまたはインスリン類似体である。他の誘導体は、ヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンのB29位などにおいて遊離アミノ基またはヒドロキシ基をアシル化することによって得られる。
【0107】
したがって、インスリンの誘導体は、インスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸に結合した側鎖などの少なくとも1つの共有結合性修飾を含むヒトインスリンまたはインスリン類似体である。
【0108】
本明細書において、インスリンの命名は、以下の原理に従って行われる。名称は、ヒトインスリンと比べた突然変異および修飾(アシル化)として与えられる。したがって、「desB30ヒトインスリン」とは、B30アミノ酸残基を欠いているヒトインスリンの類似体を意味する。同様に、「desB29desB30ヒトインスリン」は、B29およびB30アミノ酸残基を欠いているヒトインスリンの類似体を意味する。「B1」、「A1」などとは、それぞれ、インスリンのB鎖中の1位におけるアミノ酸残基(N末端から数えて)、およびインスリンのA鎖中の1位におけるアミノ酸残基(N末端から数えて)を意味する。特定の位置におけるアミノ酸残基も、例えば、PheB1として表すことができ、これは、B1位におけるアミノ酸残基がフェニルアラニン残基であることを意味する。
【0109】
アシル部分の命名に関して、命名は、IUPAC命名法に従って、および他の場合においてペプチド命名法と同様に行われる。例えば、アシル部分:
【0110】
【化1】

【0111】
の命名は、例えば、「オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG」または「17-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-Glu-OEG-OEG」とすることができ、ここでOEGは、アミノ酸NH(CH2)2O(CH2)2OCH2CO-についての略語であり、γ-L-Glu(またはg-L-Glu)は、アミノ酸γグルタミン酸部分のL型についての略語である。
【0112】
修飾されたペプチドまたはタンパク質のアシル部分は、純粋な鏡像異性体の形態であってもよく、ここでキラルアミノ酸部分の立体配置は、DもしくはL(またはR/S専門用語を使用する場合、RもしくはS)であり、あるいはこれは、鏡像異性体の混合物の形態(DおよびL/RおよびS)であってもよい。本発明の一態様では、アシル部分は、鏡像異性体の混合物の形態である。一態様では、アシル部分は、純粋な鏡像異性体の形態である。一態様では、アシル部分のキラルアミノ酸部分はL型である。一態様では、アシル部分のキラルアミノ酸部分はD型である。
【0113】
一態様では、本発明による非水性液体医薬組成物中のインスリンの誘導体は、インスリンペプチドの1つまたは複数のアミノ酸においてアシル化されているインスリンペプチドである。
【0114】
一態様では、本発明による非水性液体医薬組成物中のインスリンの誘導体は、タンパク質分解に対して安定化され(特定の突然変異によって)、B29-リシンでさらにアシル化されたインスリンペプチドである。タンパク質分解に対して安定化された(特定の突然変異によって)インスリンペプチドの非限定的な例は、例えば、WO2008/034881において見出すことができ、これは、参照により本明細書に組み込まれている。
【0115】
アシル化ポリペプチドの非限定例は、例えば、特許出願WO2009/115469(PCT出願第PCT/EP2009/053017号)において見出すことができ、例えば、25頁第3行(PCT/EP2009/053017の24頁)から始まる一節において記載されているようなアシル化ポリペプチドなどである。
【0116】
本発明の一態様では、本発明による非水性液体医薬組成物中のインスリンの誘導体は、WO2009/115469(PCT出願第PCT/EP2009/053017号)に見出されるアシル化インスリン、例えば、WO2009/115469の請求項8に列挙されたアシル化インスリンなどである。
【0117】
本発明の一態様では、インスリンの誘導体は、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル)A14E B25H desB30ヒトインスリン
からなる群から選択される。
【0118】
本発明の別の態様では、インスリンの誘導体は、
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリンである。
【0119】
以下は、本発明による態様の非限定的なリストである。
1.少なくとも1つの脂質、少なくとも1つのインスリン、少なくとも1つのスカベンジャー、および任意選択により少なくとも1つの界面活性剤を含む非水性液体医薬組成物であって、スカベンジャーが、窒素含有求核性化合物である非水性液体医薬組成物。
2.スカベンジャーがアミンである、態様1に記載の非水性液体医薬組成物。
3.スカベンジャーが、ジアミン、トリアミン、オキシアミン、ヒドラジン、およびヒドラジドからなる群から選択される、態様1または2に記載の非水性液体医薬組成物。
4.スカベンジャーがジアミンである、態様3に記載の非水性液体医薬組成物。
5.スカベンジャーが、0.1mM〜5.0mMの間の濃度で組成物中に存在する、態様1から4のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
6.スカベンジャーが、0.1mM〜3.0mMの間の濃度で組成物中に存在する、態様1から5のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
7.スカベンジャーが、0.1mM〜1.0mMの間の濃度で組成物中に存在する、態様1から6のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
8.スカベンジャーが、0.2mM〜0.8mMの間の濃度で組成物中に存在する、態様1から7のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
9.スカベンジャーが、0.1mM〜0.5mMの間の濃度で組成物中に存在する、態様7に記載の非水性液体医薬組成物。
10.スカベンジャーが、0.5mM〜1.0mMの間の濃度で組成物中に存在する、態様7に記載の非水性液体医薬組成物。
11.スカベンジャーがエチレンジアミンまたはその誘導体である、態様1から10のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
12.スカベンジャーがエチレンジアミンである、態様1から11のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
13.脂質および/または界面活性剤が高純度脂質である、態様1から12のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
14.脂質および/または界面活性剤が医薬品グレードである、態様1から13のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
15.脂質および/または界面活性剤が、医薬組成物に添加される場合、20ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する、態様1から14のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
16.脂質および/または界面活性剤が、10ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する、態様15に記載の非水性液体医薬組成物。
17.脂質および/または界面活性剤が、5ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する、態様16に記載の非水性液体医薬組成物。
18.脂質および/または界面活性剤が、2ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する、態様17に記載の非水性液体医薬組成物。
19.脂質および/または界面活性剤が、医薬組成物に添加される前に、油適合性窒素含有求核性マトリックスを使用して精製されている、態様1から18のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
20.脂質および/または界面活性剤が、モノカプリル酸グリセロール(例えば、Rylo MG08 Pharmaなど)、モノカプリン酸グリセロール(例えば、DaniscoのRylo MG10 Pharmaなど)、ポリグリセロール脂肪酸エステル(例えば、Plurol Oleiqueまたはモノカプリル酸ジグリセロールなど)、カプリロカプロイルマクロゴール-8-グリセリド(例えば、Labrasol ALFなど)、ポリソルベート20(Tween 20または超精製Tween 20)、およびポリソルベート80(Tween 80または超精製Tween 80)からなる群から選択される、態様1から19のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
21.脂質および/または界面活性剤が、モノカプリル酸グリセロール(例えば、Rylo MG08 Pharmaなど)、およびモノカプリン酸グリセロール(例えば、DaniscoのRylo MG10 Pharmaなど)からなる群から選択される、態様1から20のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
22.共溶媒をさらに含む、態様1から21のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
23.共溶媒がプロピレングリコールである、態様22に記載の非水性液体医薬組成物。
24.界面活性剤をさらに含む、態様1から23のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
25.界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、態様24に記載の非水性液体医薬組成物。
26.非イオン性界面活性剤が、エトキシ化ソルビタンアルカノエート界面活性剤、およびPEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドからなる群から選択される、態様25に記載の非水性液体医薬組成物。
27.インスリンが、ヒトインスリン、ヒトインスリン類似体、またはこれらの1つの誘導体である、態様1から26のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物。
28.インスリンがインスリンの誘導体である、態様27に記載の非水性液体医薬組成物。
29.インスリンが、
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG) desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)ヘキサデカンジオイル-γ-L-Glu)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)エイコサンジオイル-γ-L-Glu-OEG-OEG)A14E B16H B25H desB30ヒトインスリン
B29K(N(ε)オクタデカンジオイル)A14E B25H desB30ヒトインスリン
からなる群から選択されるインスリンの誘導体である、態様27に記載の非水性液体医薬組成物。
30.態様1から29のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
31.少なくとも1つの脂質、少なくとも1つのインスリン、および共溶媒を含む非水性液体医薬組成物を製造するための方法であって、前記共溶媒、前記脂質、および前記任意選択の界面活性剤が、組成物に添加される前にまず、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス上で精製される方法。
32.インスリンが、第1のステップとして、任意選択により窒素またはアルゴンの存在下で共溶媒中に溶解される、態様31に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
33.不活性雰囲気、例えば、窒素、アルゴン、またはヘリウム下で組成物の成分を混合するステップを含む、態様30から32のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
34.反応がすべてのステップにおいて4℃で実施される、態様30から33のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
35.反応がすべてのステップにおいて30℃で実施される、態様30から34のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
36.反応がすべてのステップにおいて室温(r.t.)で実施される、態様30から35のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
37.反応が、酸素の非存在下で、4〜37℃、および1〜100バールの圧力で実施される、態様30から36のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
38.反応が1〜20バールの圧力で実施される、態様37に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
39.医薬組成物が共溶媒およびスカベンジャーを含み、スカベンジャーが、医薬組成物を製造する方法の第1のステップとして、前記精製された共溶媒中に溶解され、次いで第2のステップとして、インスリンがスカベンジャーを含有する共溶媒中に溶解される、態様30から38のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
40.スカベンジャーが、前記共溶媒中に溶解される前に中和される、態様39に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
41.スカベンジャーが、pHを6〜8に調整することによって中和される、態様40に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
42.スカベンジャーが、中和された後、かつ前記共溶媒中に溶解される前に乾燥される、態様40または41に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
43.スカベンジャーが、凍結乾燥またはスプレー乾燥によって乾燥される、態様42に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
44.脂質相が2つ以上の異なる脂質からなる、態様30から43のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
45.脂質相が、穏やかな撹拌(agitation)または撹拌(stirring)によってインスリン相と混合される、態様30から44のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
46.反応が、窒素の存在下、22℃で、大気圧で実施される、態様30から45のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
47.共溶媒が、組成物に添加される前に界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス上で精製される、態様30から46のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
48.インスリンが、エチレンジアミンおよびプロピレングリコールを含む混合物中で穏やかに撹拌することによって溶解される、態様30から47のいずれか1つに記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
49.脂質、共溶媒、界面活性剤、または脂質を含む医薬組成物を精製するための方法であって、精製が界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス上で実施され、それによって過剰のアルデヒドの除去が実現される方法。
50.界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスが、ヒドラジンマトリックス、ヒドラジドマトリックス、オキシアミノマトリックス、ジアミンマトリックス、およびトリアミンマトリックスからなる群から選択される、態様49に記載の脂質、共溶媒、界面活性剤、または脂質を含む医薬組成物を精製するための方法。
51.界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスが、ポリマー結合ジエチレントリアミン、ポリマー結合p-トルエン-スルホニルヒドラジド、およびポリマー結合エチレンジアミンからなる群から選択される、態様49または50に記載の脂質、共溶媒、界面活性剤、または脂質を含む医薬組成物を精製するための方法。
52.1)脂質/共溶媒/界面活性剤/医薬組成物の、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスとのインキュベーションステップと、
2)脂質/共溶媒/界面活性剤/医薬組成物が、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスから単離される、例えば、濾過、遠心分離、またはデカンテーションなどの単離ステップと
を含む、態様49から51のいずれか1つに記載の脂質、共溶媒、界面活性剤、または脂質を含む医薬組成物を精製するための方法。
53.界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスを含むカラムに通過させるステップを含む、態様49から52のいずれか1つに記載の脂質、共溶媒、界面活性剤、または脂質を含む医薬組成物を精製するための方法。
【0120】
本明細書に引用された、刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、その全体が参照により、かつ各参考文献が、個々におよび具体的に示されて参照により組み込まれ、その全体が本明細書に示されているのと同じ程度に(法によって許容される最大の程度に)、本明細書に組み込まれている。
【0121】
すべての表題および副題は、便宜のためのみに本明細書で使用されており、本発明を限定するものと決して解釈されるべきでない。
【0122】
本明細書に示された、任意の、およびすべての例、または例示的な言い回し(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良好に例示することが意図され、別段の主張のない限り、本発明の範囲を限定しない。明細書中のいかなる言い回しも、任意の主張されていない要素を、本発明を実施するのに本質的であると示すものとして解釈されるべきでない。
【0123】
本明細書における特許文献の引用および組み込みは、便宜のためだけに行われ、そのような特許文献の効力、特許性、および/または権利行使可能性のいずれの観点も反映しない。
【0124】
本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付した特許請求の範囲に挙げた対象物のすべての改変および均等物を含む。
【0125】
(実施例)
(実施例1)
プロピレングリコールの精製:
プロピレングリコール(60g)を、p-トルエンスルホニルヒドラジドポリスチレンマトリックス(6g、1%の架橋、100〜200メッシュ、置換 1.5mmol/g、Aldrich 532339)と混合し、混合物を穏やかに20時間振盪した。固体を、
A.ポリエチレンフィルターを有するポリプロピレンバイアル(MultiSynTech V200PE100)に通す濾過。液体をフィルターに通過させるのに窒素圧をかけた。
またはB.3000rpmで10分間の遠心分離、その後の手作業のデカンテーション
によって除去した。
【0126】
脂質混合物の生成および精製:
以下のものを混合した:
30%のSoftigen 767(Sasol)、40%のCapmul PG 8(Abitec)、および15%のRylo MG08 Pharma(Danisco)。
【0127】
均質な脂質混合物(20g)を、3つの異なるマトリックス、すなわち
1.p-トルエンスルホニルヒドラジドポリスチレンマトリックス(2g、1%の架橋、100〜200メッシュ、置換 1.5mmol/g、Aldrich 532339)
2. ジエチレントリアミンポリスチレンマトリックス(2g、1%の架橋、200〜400メッシュ、置換 4〜5mmol/g、Aldrich 494380)
3.エチレンジアミンマトリックスストラトスフェア(2g、1%の架橋、50〜100メッシュ、置換 5〜6mmol/g、Aldrich 547484)
上で精製した。
【0128】
固体を、
A.ポリエチレンフィルターを有するポリプロピレンバイアル(MultiSynTech V200PE100)に通す濾過。液体をフィルターに通過させるのに窒素圧をかけた。または
B.3000〜5000rpmで10分間の遠心分離、その後の手作業のデカンテーション
によって除去した。
【0129】
精製プロピレングリコールおよび脂質混合物中のインスリンの配合
インスリンB29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30の誘導体を、窒素ガスを流した、閉じたスクリューキャップバイアル中で、22℃で16時間穏やかに撹拌することによって、Table 1(表2)のリストに従って精製したプロピレングリコール中に溶解させた。Table 2(表3)のリストに従って精製した脂質混合物を、インスリン25mgを含有する1グラムの最終的な試料サイズに添加した。サンプルを穏やかに混合し、カートリッジ(気密容器)に満たし、閉じた。化学的安定性は、A:0.2Mの硫酸ナトリウム+0.04Mのリン酸ナトリウム pH 3.5+10%のアセトニトリル、およびB:70%のアセトニトリルのアイソクラチックで(i)、または勾配(g)によって溶出される、100×4.6mmおよび1.7μmのWaters BEH RP8カラム上でのRPC(逆相クロマトグラフィー)により、分解生成物、すなわち疎水性不純物の形成を測定することによって検討した。0〜10分 i:65/35%のA/B、10〜12分 g:44/56%のA/B、12〜13分 i:44/56%のA/B、13〜15分 g:65/35%のA/B、15〜20分 i:65/35%のA/B。流速は0.5ml/分であり、2つのuvシグナルを220nmおよび280nmで記録した。
【0130】
分解生成物の高分子量タンパク質(HMWP)を、37℃で2週間試料をインキュベートする前後で、Watersインスリンカラム上で、2.5Mの酢酸、20%のアセトニトリル、および0.45%のアルギニン中のゲル濾過によって測定した。
【0131】
分解生成物形成の増大は、-20℃および37℃で7日貯蔵した後に測定した。-20℃と比べた37℃での疎水性関連不純物およびHMWPの増加をTable 1(表2)およびTable 2(表3)に列挙する。
【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
(実施例2)
潜在的なアルデヒドスカベンジャーを、プロピレングリコール中に、プロピレングリコール200mg当たり1mgに可溶化した。インスリンB29K A14E A21G B25H desB30の誘導体を、窒素ガスを流した、閉じたバイアル中で、Table 3(表4)のリストに従って、スカベンジャーを含有するプロピレングリコール中に溶解させた。Capmul PG8(Abitec)を、インスリン50mgおよびスカベンジャー1mgを含有する80%の収率の試料1グラムに添加した。試料を穏やかに混合し、カートリッジ(気密容器)に満たし、閉じた。
【0135】
化学的安定性は、A:0.2Mの硫酸ナトリウム+0.04Mのリン酸ナトリウム pH 3.5+10%のアセトニトリル、およびB:70%のアセトニトリルのアイソクラチックで(i)、または勾配(g)によって溶出される、100×4.6mmおよび1.7μmのWaters BEH RP8カラム上でのRPC(逆相クロマトグラフィー)により、分解生成物、すなわちアミド分解物および疎水性不純物の形成を測定することによって検討した。0〜10分 i:76/24%のA/B、10〜12分 g:40/60%のA/B、12〜13分 i:40/60%のA/B、13〜15分 g:76/24%のA/B、15〜20分 i:76/24%のA/B。流速は0.5ml/分であり、2つのuvシグナルを220nmおよび280nmで記録した。
【0136】
分解生成物の高分子量タンパク質(HMWP)を、Watersインスリンカラム上で、2.5Mの酢酸、20%のアセトニトリル、および0.45%のアルギニン中のゲル濾過によって測定した。
【0137】
-20℃と比べた37℃でのアミド分解物、疎水性関連不純物、およびHMWPの増加をTable 3(表4)に列挙する。
【0138】
【表4】

【0139】
(実施例3)
インスリンB29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30の誘導体を、窒素ガスを流した、閉じたバイアル中で、3.3mMのエチレンジアミン塩酸塩を含有するプロプレングリコール中に溶解させた。
【0140】
3つの異なる供給業者、すなわちAbitec、Sasol、Gattefosseの等量の脂質混合物を添加した。試料を穏やかに混合し、カートリッジ(気密容器)に満たし、閉じた。化学的安定性は、Watersインスリンカラム上で、2.5Mの酢酸、20%のアセトニトリル、および0.45%のアルギニン中のゲル濾過によって、分解生成物である高分子量タンパク質(HMWP)を測定することによって検討した。-20℃と比べた37℃でのHMWPの増加を、Table 4(表5)に列挙する。
【0141】
【表5】

【0142】
(実施例4)
インスリンB29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30の誘導体を、窒素を流した、スクリューキャップバイアル中で、エチレンジアミン塩酸塩の存在下および非存在下でプロピレングリコール中に溶解させた。脂質(30%のlabrasolおよび40%のcapryol)を、穏やかに混合することによって添加した。試料をカートリッジ(気密容器)に満たし、閉じた。化学的安定性は、Watersインスリンカラム上で、2.5Mの酢酸、20%のアセトニトリル、および0.45%のアルギニン中のゲル濾過によって、分解生成物である高分子量タンパク質(HMWP)を測定することによって検討した。-20℃と比べた37℃でのHMWPの増加を、Table 5(表6)に列挙する。
【0143】
【表6】

【0144】
(実施例5)
脂質精製。以下の脂質混合物、すなわち、
1.15%のRylo MG08、30%のAcconon CC6、40%のCapryol PGMG
2.15%のRylo MG08、30%のLabrasol、40%のCapryol PGMG
3.15%のRylo MG08、30%のLabrasol、40%のCapmul PG8
を調製した。脂質混合物(20g)を、ジエチレントリアミンポリスチレンマトリックス(2g、1%の架橋、200〜400メッシュ、置換 4〜5mmol/g、Aldrich 494380)上でそれぞれ精製した。
【0145】
ポリエチレンフィルターを有するポリプロピレンバイアル(MultiSynTech V200PE100)に通す濾過によってマトリックスを除去した。液体をフィルターに通過させるのに窒素圧をかけた。
【0146】
インスリンB29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30の誘導体を、プロピレングリコール中に溶解させ、Table 6(表7)に従って脂質と混合した。精製および未精製脂質混合物を添加し、試料を穏やかに混合し、試料をカートリッジ(気密容器)に満たし、閉じた。
【0147】
【表7】

【0148】
(実施例6)
マトリックス比、温度、および時間について最適化されたLabrasol処理:
Labrasolを、1、5または10重量%のジエチレントリアミンポリスチレンマトリックスを用いて、30、40または50℃で、2、4、6、または16時間処理した。
【0149】
NMR分析は、最低5重量%の樹脂、40℃、16時間、または10重量%の樹脂、40℃、6時間を使用する場合、すべてのアルデヒドがlabrasolから除去されることを示した(図2)。
【0150】
(実施例7)
プロピレングリコール中のアルデヒドの比色分析測定:
MBTH溶液:3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラゾン.HCl.H2O(50mg)を、水(100mL)中に溶解させ、琥珀色のフラスコ中に、5℃で、最長1週間貯蔵した。
【0151】
塩化第二鉄溶液:塩化第二鉄(30g)および濃塩酸を、水(100ml)中に溶解させた。この溶液(5.4g)をスルファミン酸(1.5g)と混合し、水で希釈して100mLにした。
【0152】
プロピレングリコール試料(50mg)を、MBTH溶液(2mL)、塩化第二鉄溶液(2mL)、および水(0.5mL)と混合し、沸騰水浴上で1分加熱した。約30分後に、UV/Vis吸収を、空試料(MBTH溶液2mL+塩化第二鉄溶液2.5mL+水0.5mL)に対して、620nm(青色)で測定した。
【0153】
参考文献 Anal. Chem. 1964、36、3。
【0154】
検量線を、水中0〜100ppmのDL-グリセルアルデヒドを用いて作成した。
【0155】
【表8】

【0156】
(実施例8)
以下の賦形剤を精製し、実施例1および6に記載したように、アルデヒド含量について分析した。具体的には、Labrasol ALFおよびモノカプリル酸ジグリセロールをともに、10重量%のジエチレントリアミン樹脂を用いて25℃で20時間処理し、一方、Rylo MG08を、55℃で処理した。プロピレングリコールの精製のために、ジエチレントリアミン樹脂の代わりに10重量%のp-トルエン-スルホニルヒドラジン樹脂を使用した。精製した賦形剤を、Table 8(表9)に示した配合において使用した。
【0157】
抽出方法:SMEDD製剤を室温に到達させた。SMEDD製剤20μlに、1-ブタノール490μlを添加し、その後、0.1重量%のTween80 990μl、0.1MのNa2HPO4/NaH2PO4 pH7.0を添加した。次いで製剤をボルテックスにかけ、RTで30分間インキュベートし、その後再びボルテックスにかけ、次いでRTで、14000rpmで20分間遠心分離した。底部の水相を分析した。
【0158】
化学的安定性は、Waters BEH Shield RP18 UPLCカラム(2.1×100mm、1.7μm)、および以下の実行パラメータ、すなわち、
波長:215nm、カラム温度:50℃、流速:0.4ml/分、実行時間:18.5分、試料負荷:7.5μl、緩衝液A:0.09Mのリン酸水素二アンモニウム pH3.0、10%のアセトニトリル、緩衝液B:90%のアセトニトリル
を使用して、RPC(逆相クロマトグラフィー)で水相を分析することによって評価した。
【0159】
【表9】

【0160】
さらに、分解生成物の高分子量タンパク質(HMWP)について、Watersインスリンカラム上で、2.5Mの酢酸、20%のアセトニトリル、および0.45%のアルギニン中でSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって試料を分析した。結果を図3に示す。
【0161】
【表10】

【0162】
(実施例9)
インスリンB29K(N(ε)オクタデカンジオイル-gGlu-OEG-OEG)A14E B25H desB30の誘導体を、窒素を流した、スクリューキャップバイアル中で、エチレンジアミン塩酸塩の存在下および非存在下でプロピレングリコール中に溶解させた。脂質(40%のlabrasolおよび45%のRylo MG08 Pharma)を、穏やかに混合することによって添加した。試料をカートリッジ(気密容器)に満たし、閉じた。化学的安定性は、Watersインスリンカラム上で、2.5Mの酢酸、20%のアセトニトリル、および0.45%のアルギニン中のゲル濾過によって、分解生成物である高分子量タンパク質(HMWP)を測定することによって検討した。-20℃と比べた37℃でのHMWPの増加を、Table 10(表11)に列挙する。
【0163】
【表11】

【0164】
(実施例10)
3つの供給源のプロピレングリコールを、25mg/gのインスリンの濃度でプロピレングリコール中にインスリンの誘導体を溶解させることによって試験した:プロピレングリコールA(Merck)、プロピレングリコールB(Sigma Aldrich P4347)、およびプロピレングリコールC(Dow Chemical Company、純度>99.8%)。
【0165】
使用した抽出法は、実施例10に記載した通りであった。化学的安定性は、実施例10に記載したように、Waters BEH Shield RP18 UPLCカラム(2.1×100mm、1.7μm)を使用して、RPC(逆相クロマトグラフィー)で水相を分析することによって評価した。さらに、分解生成物の高分子量タンパク質(HMWP)について、Watersインスリンカラム上で、2.5Mの酢酸、20%のアセトニトリル、および0.45%のアルギニン中でSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって試料を分析した。結果を図4に示す。
【0166】
(実施例11)
Gattefosseの2つの供給源のLabrasolおよび1バッチの精製Labrasolを、25mg/gのインスリンの濃度でプロプレングリコール中にインスリンの誘導体を溶解させ、次いでLabrasolを添加することによって試験した。最終的な製剤はすべて、25mg/gのインスリンの誘導体、50%のプロピレングリコール、50%のLabrasolの形態のものであった。使用したLabrasolは、第1:GattefosseのLabrasolテクニカルグレード、第2:GattefosseのLabrasol ALF医薬品グレード、および第3:実施例6に記載したように精製したLabrasol ALFであった。精製Labrasol ALFのアルデヒド含量を、実施例15に記載したようにNMRによって測定した。NMRスペクトルを図2に示す。
【0167】
使用した抽出法は、実施例10に記載した通りであった。化学的安定性は、実施例10に記載したように、Waters BEH Shield RP18 UPLCカラム(2.1×100mm、1.7μm)を使用して、RPC(逆相クロマトグラフィー)で水相を分析することによって評価した。さらに、分解生成物の高分子量タンパク質(HMWP)について、Watersインスリンカラム上で、500mMのNaCl、10mMのNaH2PO4、5mMのH3PO4、50%(v/v)の2-プロパノール中でSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって試料を分析した。結果を図5に示す。
【0168】
(実施例12)
アルデヒド含量のNMRに基づく測定
シグナル強度が、分光計の感度および存在するアルデヒドの量に主に依存するスペクトルを得るために、9ppmを中心とした4ppmのスペクトルウインドウの外側の領域から生じるすべてのNMRシグナルを、バンド選択的反転(selective inversion)を組み込んだダブルパルス磁場勾配スピンエコー実験を使用して抑制した。パルス較正ミス(miscalibration)および定量誤差に関して、方法のロバスト性を最大にするために、一定の断熱ガウシアン反転パルスを選択的反転のために使用した。調査下での物質の混和性に関する問題を回避するために、すべてのスペクトルは、同軸インサート(coaxial insert)中に外部ロック物質を用いて、またはドリフト補償を使用してアンロック状態で取得した。分光計のプローブヘッドのアクティブなボリューム中の余分な試料による追加のシグナルを考慮すると、分光計がB0場の外部摂動から十分に遮蔽されていないのでなければ、アンロック法が好適な方法である。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの脂質、少なくとも1つのインスリン、少なくとも1つのスカベンジャー、および任意選択により少なくとも1つの界面活性剤を含む非水性液体医薬組成物であって、スカベンジャーが、窒素含有求核性化合物である非水性液体医薬組成物。
【請求項2】
スカベンジャーがエチレンジアミンまたはその誘導体である、請求項1に記載の非水性液体医薬組成物。
【請求項3】
脂質および/または界面活性剤が高純度脂質である、請求項1または2に記載の非水性液体医薬組成物。
【請求項4】
脂質および/または界面活性剤が、医薬組成物に添加される際に、20ppm未満のアルデヒドおよび/またはケトン含量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の非水性液体医薬組成物。
【請求項5】
脂質および/または界面活性剤が、医薬組成物に添加される前に、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックスを使用して精製されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の非水性液体医薬組成物。
【請求項6】
界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項1から5のいずれか一項に記載の非水性液体医薬組成物。
【請求項7】
脂質および/または界面活性剤が、モノカプリル酸グリセロール(例えば、Rylo MG08 Pharmaなど)、モノカプリン酸グリセロール(例えば、DaniscoのRylo MG10 Pharmaなど)、ポリグリセロール脂肪酸エステル(例えば、Plurol Oleiqueまたはモノカプリル酸ジグリセロールなど)、カプリロカプロイルマクロゴール-8-グリセリド(例えば、Labrasol ALFなど)、ポリソルベート20(Tween 20または超精製Tween 20など)、およびポリソルベート80(Tween 80または超精製Tween 80など)からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の非水性液体医薬組成物。
【請求項8】
プロピレングリコールである共溶媒をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の非水性液体医薬組成物。
【請求項9】
インスリンがインスリンの誘導体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の非水性液体医薬組成物。
【請求項10】
請求項1から9に記載のいずれか一項に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
【請求項11】
少なくとも1つの脂質、少なくとも1つのインスリン、および共溶媒を含む非水性液体医薬組成物を製造するための方法であって、前記共溶媒、前記脂質、および前記任意選択の界面活性剤が、組成物に添加される前にまず、界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス上で精製される方法。
【請求項12】
医薬組成物が共溶媒およびスカベンジャーを含み、スカベンジャーが、医薬組成物を製造する方法の第1のステップとして、前記精製された共溶媒中に溶解され、次いで第2のステップとして、インスリンがスカベンジャーを含有する共溶媒中に溶解される、請求項10から11のいずれか一項に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
【請求項13】
スカベンジャーが、前記共溶媒中に溶解される前に中和される、請求項12に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
【請求項14】
インスリンが、エチレンジアミンおよびプロピレングリコールを含む混合物中で穏やかに撹拌することによって溶解される、請求項10から12のいずれか一項に記載の非水性液体医薬組成物を製造するための方法。
【請求項15】
脂質、共溶媒、界面活性剤、または脂質を含む医薬組成物を精製するための方法であって、精製が界面活性剤適合性窒素含有求核性マトリックス上で実施され、それによって過剰のアルデヒドの除去が実現される方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504610(P2013−504610A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529270(P2012−529270)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063610
【国際公開番号】WO2011/033019
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【Fターム(参考)】