説明

インターリーブ制御力率改善回路用チョークコイル

【目的】 インターリーブ制御力率改善回路用のチョークコイルの提供を目的とする。
【構成】 本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルは、同一線上に位置する2つのコイル用巻芯コア11,21と閉磁路コア30が組み合い、該閉磁路コア30の中央部30aに対し、巻芯コア11,21がギャップG1またはG2を介して対向し、巻芯コア11,21には、それぞれチョークコイルとして電流を通過させるコイル14,24と、コイル14および24の電流値を検出する検出コイル15,25が巻回設置され、前記コイル14,24によって、略一体として組み合う巻芯コア11,21と閉磁路コア30に、相互干渉がない磁束磁路13,23の発生が可能となり、1個のコイル部品としてインターリーブ力率改善回路に対応した2個のチョークコイルを具備することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源高調波を低減する力率改善回路用チョークコイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子電気機器の高調波対策として、力率改善(Power Factor
Correction)回路が使用されている。力率改善回路とは、機器の電源内における入力電流を入力電圧と同様の波形に制御することにより、無効な電力の発生を抑制するものである。
【0003】
力率改善回路には色々な方式があり、インターリーブ方式もそのひとつである。図6にインターリーブ制御の力率改善回路例の簡略図を示す。インターリーブ方式とは、チョークコイルL1,L2を高いピーク電流が流れ、チョークコイルL1,L2に設けた検出コイルL1c,L2cにより、電流i1またはi2の電流値0(ゼロ)を検出した制御ICにより、半導体素子からなるスイッチSW1,SW2でデュアル制御することにより、従来のシングル制御等の力率改善回路に比べ、ダイオードD1,D2などのロス低減により無効電力を抑制して更なる効率の改善ができるとともに、リップルの低減による出力コンデンサC1の小型化、低ノイズ化によるノイズフィルタNFの小型化などが図れ、電源の薄型化を可能としたものである。
【0004】
しかしながら、その一方で、チョークコイルL1,L2には、ピーク電流の大きな電流が流れることになり、そのために高飽和磁束密度である軟磁性合金からなる圧粉コアを使用したチョークコイルが主に使用されている。(特許文献1)
【0005】
【特許文献1】特開2001−68365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軟磁性合金圧粉コアは、主にリング形状が用いられており、巻線作業の完全自動化が難しく、常に生産性に問題を抱えている。また、軟磁性合金圧粉からなるEE,EI形状などの組み合わせコアでは、リング形状に比べ、高圧力下でのプレス成形が必要となり、どうしても価格が高いものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑み、生産性に優れ、インターリーブ制御力率改善回路に最適なチョークコイルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、同一線上に位置する2つのコイル用巻芯コアは、それぞれの巻芯コアに設けるギャップによって、前記巻芯コアに巻回設置するコイルにより2つの開磁路が形成され、該開磁路は前記ギャップと巻芯コアを除く磁路が閉磁路コアで構成され、かつ、2つの巻芯コアと前記閉磁路コアは略一体として組み合い、それぞれの巻芯コアにコイルが設けられ、どちらか一方のコイルにより磁束磁路が発生しても、他方のコイルに変成作用を起こす磁束磁路が発生しないことを特徴とするインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルである。
【0009】
また、本発明の上記コイル用巻芯コアは、コイル巻回方向の両端部、片端部、あるいは、巻芯コア分割部のいずれかにギャップを設けることを特徴とし、さらに、上述の本発明のコイル用巻芯コアは、該巻芯コアに組み合い開磁路を構成する閉磁路コアに使用する軟磁性材より飽和磁束密度が高い、Fe−Al−Si,Fe−Si,アモルファス,超微結晶軟磁性などの金属系軟磁性合金からなり、圧粉体,積層体,磁性樹脂体のコア形体であることを特徴とするインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチョークコイルは、インターリーブ制御力率改善回路に対応した2回路のチョークコイルを1個のチョークコイルで対応でき、また、飽和磁束密度の高い軟磁性合金材をコイル巻回設置の巻芯コアのみに用いることにより、生産性および価格の低減化を可能とし、インターリーブ制御力率改善回路の小型化を可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルの実施形態を図を用いて説明する。図1は、本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルの実施形態の作用を説明する簡略図である。
【0012】
図1に示す本発明のチョークコイルは、同一線上に位置する2つのコイル用巻芯コア11,21が、単体で閉磁路を具備したコア30と組み合い、また、該閉磁路コア30の中央部30aに対し、巻芯コア11,21がギャップG1またはG2を介して対向する。
【0013】
巻芯コア11,21には、それぞれチョークコイルとして電流を通過させるコイル14,24と、コイル14および24の電流値0Aを検出する検出コイル15,25が巻回設置し、前記コイル14,24により、略一体として組み合う巻芯コア11,21と閉磁路コア30に磁束磁路13,23が発生可能となる。
【0014】
上記図1のチョークコイルを、図6のインターリーブ制御力率改善回路のチョークコイルL1,L2として使用した場合の作用は、電流i1が流れるコイル14により、磁束磁路13が発生し、コイル14に所定のインダクタンス値が発生する。
【0015】
また、磁束磁路13は磁路内にギャップG1を有すため、電流i1に対して磁気飽和を発生させることなく、電流i1に応じたインダクタンス値を得ることができる。
【0016】
さらに本発明のチョークコイルは、電流i1が流れるコイル14よって発生する磁束磁路13は、他方のコイル24を設ける磁芯コア21片端部のギャップG2により、コイル24に変成作用を起こす磁束磁路28を発生させることはなく、コイル14のみに作用する磁束磁路13が発生するため、他のコイル24を流れる電流i2の0A検出が、検出コイル25で容易に検出できる。
【0017】
また、図6の電流i2がコイル24に流れると、磁束磁路23が発生し、コイル24に所定のインダクタンス値が発生する。また、磁束磁路23は磁路内にギャップG2を有すため、電流i2に対して磁気飽和を発生させることなく、電流i2に応じたインダクタンス値を得ることができる。
【0018】
さらに本発明のチョークコイルは、電流i2が流れるコイル24よって発生する磁束磁路23は、他方のコイル14を設ける磁芯コア11片端部のギャップG1により、コイル14に変成作用を起こす磁束磁路28を発生させることはなく、コイル24のみに作用する磁束磁路23が発生するため、他のコイル14を流れる電流i1の0A検出が、検出コイル15で容易に検出できる。。
【0019】
すなわち、本発明のチョークコイルは、どちらかのコイル14および24によって発生する磁束磁路は、他方のコイル14あるいは24に変成作用を起こす磁束磁路28を発生させることはなく、各コイル14および24を流れる電流i1あるいはi2の0A時、すなわち、磁束磁路13または磁束磁路23が発生しない状態を造り出すことができ、検出コイル15,25により、前記状態が容易に検出することができ、しかも、見掛け上1つに組み合うコアに対して2つのコイルが設けられ、1個のコイル部品としてインターリーブ力率改善回路に対応した2個のチョークコイルを具備することができたものである。
【0020】
図2は、本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルの別の実施形態に使用する開磁路を構成する組み合わせコアを示したものである。
【0021】
図2(a)は、それぞれの巻芯コア31a,31bの両端部にギャップG3を設け、コア32を組み合わせて、コイル間の干渉を発生させない個別の磁束磁路33a,33bを構成することができた。
【0022】
図2(b)は、巻芯コア41a,41bを分割するギャップG4を設け、コア42を組み合わせて、コイル間の干渉を発生させない個別の磁束磁路43a,43bを構成することができた。
【0023】
図2(c)は、巻芯コア51a,51bの片端部にギャップG5を設け、コア52を組み合わせて、コイル間の干渉を発生させない個別の磁束磁路53a,53bを構成することができた。なお、コア52は、図2(a),(b)と異なり、そのコア形状のみで閉磁路を構成するものではないが、本明細書中では、本発明に係る巻芯コアと組み合うことにより開磁路を形成するコアを閉磁路コアとして明示するものであり、従って、図2(c)のコア52も本明細書中に明示する閉磁路コアに含まれる。
【0024】
図2(a)から(c)に説明の通り、本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルに用いるコアは、コイルを巻回する2つの巻芯コアは、少なくとも2カ所のギャップを含んで同一線上に配置することにより、それぞれの巻芯コアに巻回設置したコイルによって発生した磁束磁路が、他方の巻芯コアを通る磁束磁路が発生することはなく、相互干渉が発生しない個別の磁束磁路を有すコアにより、本発明のチョークコイルを達成できたものである。
【0025】
図1から図2に示す本発明のチョークコイルに使用する各コアの形態は、以下の通りである。巻芯コアは飽和磁束密度が高く、磁気飽和の変動が緩慢な軟磁性合金材を使用するのが最も好ましく、Fe−Si合金,Fe−Al−Si合金,アモルファス合金,超微結晶軟磁性合金などを使用すればよく、これらの軟磁性合金材より、粉体成形の圧粉体,板片を重ねた積層体,樹脂と軟磁性合金粉体からなる磁性樹脂体等を本発明の巻芯コアとして使用するものである。
【0026】
また、巻芯コアと組み合う閉磁路コアは、比較的安価で購入も容易なソフトフェライト材を使用するのが最も好ましく、図1から図2に示すコア30,32,42,52は、単体あるいは複数コアの組み合わせでその形状を成せばよい。
【0027】
図3と図4は、本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルの実施例を示したものであり、図3は実施例のチョークコイルの斜視外観図、図4は実施例のチョークコイルの側面断面図である。
【0028】
実施例として、本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルを実際に設計した。設計条件は、インダクタンス:200μH、電流:2Arms(ピーク電流:6A)、高さ:8mmMax.とした。
【0029】
また、コイルの巻芯コアは、Fe−Si軟磁性合金の圧粉体を用い、その他は、Mn−Znソフトフェライトコアを使用した。
【0030】
上記条件により作製したチョークコイルの仕様は、図3および図4に示す容姿,構造とし、平面寸法:70mm−40mm,高さ:8mm、コイルはそれぞれ0.55mmφ−55ターン、検出コイルは、0.25mmφ−6ターンとなった。
【0031】
このチョークコイルは、図1に示したコアおよびコイル形態を成し、同一の部位に対して図1と同じ符号を付した。コイル14およびコイル24の巻芯コア11,21を軟磁性合金であるFe−Si合金圧粉体より得、その他の閉磁路コア(日字型コア)30は、Mn−Znソフトフェライトより1個体として構成した。
【0032】
端子62を有すボビン61に巻回するコイル14,検出コイル15と、端子67を有すボビン66に巻回するコイル24、検出コイル25は、巻芯コア11,21としてFe−Si合金圧粉体を各ボビン61,66に挿入設置し、ソフトフェライトコアからなる日字型コア49を図示の通り組み合わせた。
【0033】
Fe−Si合金圧粉体からなる巻芯コア11,21の先端は、ソフトフェライトからなる日字型コア30の中央部30aに対して、ギャップG1,G2を介して対向し、他方の先端はソフトフェライトからなる日字型コア30に対向する。
【0034】
コイル14,24の巻芯コア11,21は、ソフトフェライトより飽和磁束密度が高いFe−Si合金よりなり、コイル11,21を流れる電流に対して磁気飽和の到達点が高く、また、電流の変動に応じたインダクタンスの低下も緩慢とすることができた。
【0035】
ギャップG1,G2は、各ボビン61、66と一体として設ける,スペーサを使用する、空間として設ける等、必要とするギャップ長を得ることができるものであれば特に制限するものでない。なお、本実施例では、ギャップG1,G2を1mmが最適となった。
【0036】
チョークコイルとしての電気的特性は、各コイル14,24の100kHzにおける直流重畳特性は、図5に示す通り0A:220μH、2A:215μH、6A:193μHと、各電流に対して高いインダクタンス値を得ることができた。また、コイル14あるいはコイル24のコイル端末を繋げて短絡状態にした時、他方のコイル14または24のインダクタンス値を確認すると、220μHを発生しており、一方のコイルによって発生する磁束が、他方のコイルに対して影響を与えないことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルの実施形態の作用を説明する簡略図である。
【図2】本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルの別の実施形態に使用する開磁路を構成する組み合わせコアを説明する図である。
【図3】本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルの実施例の斜視外観図である。
【図4】本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルの実施例の側面断面図である。
【図5】本発明のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイルの実施例の直流重畳特性図である。
【図6】インターリーブ制御力率改善回路の簡略図である
【符号の説明】
【0038】
11:巻芯コア
13:磁束磁路
14:コイル
15:検出コイル
20:共通コア部
21:巻芯コア
23:磁束磁路
24:コイル
25:検出コイル
28:磁束磁路
30:閉磁路コア
30a:閉磁路コアの中央部
G1,G2:ギャップ
i1,i2:電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一線上に位置する2つのコイル用巻芯コアは、それぞれの巻芯コアに設けるギャップによって、前記巻芯コアに巻回設置するコイルにより2つの開磁路が形成され、該開磁路は前記ギャップと巻芯コアを除く磁路が閉磁路コアで構成され、かつ、2つの巻芯コアと前記閉磁路コアは略一体として組み合い、それぞれの巻芯コアにコイルが設けられ、どちらか一方のコイルにより磁束磁路が発生しても、他方のコイルに変成作用を起こす磁束磁路が発生しないことを特徴とするインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイル。
【請求項2】
コイル用巻芯コアは、コイル巻回方向の両端部、片端部、あるいは、巻芯コア分割部のいずれかにギャップを設けることを特徴とする請求項1記載のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイル。
【請求項3】
コイル用巻芯コアは、該巻芯コアに組み合い開磁路を構成する閉磁路コアに使用する軟磁性材より飽和磁束密度が高い、Fe−Al−Si,Fe−Si,アモルファス,超微結晶軟磁性などの金属系軟磁性合金からなり、圧粉体,積層体,磁性樹脂体のコア形体であることを特徴とする請求項1および請求項2記載のインターリーブ制御力率改善回路用チョークコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−16234(P2010−16234A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175721(P2008−175721)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000110240)日立フェライト電子株式会社 (19)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】