説明

インターロイキン−21の抗原性エピトープ、関連抗体及び医療分野におけるそれらの使用

本発明は、インターロイキン−21の抗原性エピトープ、関連抗体、及び医療分野、特に、例えば慢性炎症性腸疾患(IBD)、セリアック病及び乾癬などのIL−21の産生及び/又は活性の増加を特徴とする免疫炎症性疾患の治療におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン−21(IL−21)の抗原性エピトープ及び関連するIL−21中和抗体、並びにIL−21の産生又は活性の増加を特徴とする免疫炎症性疾患、例えばクローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、セリアック病及び乾癬患者治療のためのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
この10年間に、ヒト及び動物モデルで実施されたいくつかの研究が、免疫媒介性疾患の病因についての我々の理解を進め、これらの疾患を有する患者に対する治療的介入を最適にするために貢献している。したがって、乾癬、関節リウマチ、気管支喘息、原発性胆汁性肝硬変、CD、UC、セリアック病、ピロリ菌(Helicobacter pylori(Hp))関連胃疾患、多発性硬化症(Nickoloff 2004、Firestein 2004、Sollid 2002、Podolsky 2002)などの疾患において、Tリンパ球が主要な病原的役割を果たすことが示された。炎症過程の基礎をなす事象の注意深い分子的分析により、Tリンパ球の病原作用は、いくつかの炎症性分子を合成するTリンパ球の能力に最も関連していることを立証でき、そのサイトカイン(又はインターロイキン)としての適切な例は、単球、樹状細胞、線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮細胞及び上皮細胞に作用して多くの炎症作用を行うことができるサイトカインである腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)の産生によって示される(Campbell 2003)。
【0003】
したがって、これらの炎症性疾患の自然経過及びそれらの病態生理学的メカニズムに関するより高い知識が治療選択の改善に寄与しているが、これらの疾患の各々に対する薬理学的介入はいずれも単に対症的であり、治癒的ではない。多くの患者で炎症性活性の消失及び臨床的緩解の誘導には、副腎皮質ステロイドによる治療を必要とする。しかしながら、そのような薬剤はほぼ50%の患者で有効であり、これらの患者の半分は、臨床的緩解を維持するために、連続的な治療を必要とすることが広く知られている。残念ながらステロイドの有益な効果は、頻繁にかつしばしば重篤な副作用という代償で成り立っている(Spahn 1997、Scholmerich 2004)。さらに、しばしば副腎皮質ステロイドを伴うか又はそれに取って代わる免疫抑制治療でさえも、炎症を制限し、症状を管理するのに必ずしも十分ではない。さらに免疫抑制治療は、著しい禁忌及び重篤な副作用という不利な点がある(Podolsky、2002)。
【0004】
1990年代に入手可能となった新しい世代の薬剤は、生物学的薬剤である。これらは組換え型ヒトタンパク質、モノクローナルキメラヒト化抗体及び融合タンパク質を用いる、特異的な炎症性「経路」を管理することを目的とした生物学的療法である。この意昧において、免疫炎症性過程の抑制に優れた効果を示す化合物は、モノクローナル抗TNF−α抗体である(seegersら、2002)。この薬剤は、約50〜70%の患者で炎症を抑制することができる。それにもかかわらず、副作用例えば不顕性の微生物感染の再活性化及び過敏性現象の発生率が反復治療と共に増加することが報告されている。後者の現象は、多くの生物学的機能を有するサイトカインを抗体が遮断するということに基づく可能性がある。実際に、TNF−αはその炎症性作用以上に、免疫寛容の誘導と維持に関与するメカニズムにおいて役割を果たしている。したがって、TNF−αの遮断は、逆に過剰な免疫反応を促進している可能性があると思われる。さらに、3分の1を超える治療患者が、薬剤の有効性を低下させると思われる化合物に対する抗体を産生する(Sandborn、2002)。全体としてこれらの知見は、上記の疾患を有する患者管理のための新規化合物の同定を目的とする今後の研究が必要であることを示唆している(Fiocchi、2001)。
【0005】
インターロイキン−21(IL−21)は、最近同定されたサイトカインであり、主として活性化されたCD4+Tリンパ球で産生される(Habib 2003、Parrish−Novak 2002)。IL−21の生物学的効果は、IL−21Rと名づけられた膜レセプターにより媒介されており、このレセプターはIL−2レセプター及びIL−15レセプターのサブユニットと相同性を示し、レセプターサブユニットγ鎖と相互作用する(Collins 2003、Zhang 2003)。現在までにこのようなレセプターは、T及びB細胞、ナチュラルキラーリンパ球、単球並びに樹状細胞上で示された。
【0006】
IL−21とそのレセプターとの相互作用により誘導されるシグナル伝達カスケードの分析により、このサイトカインは一部の細胞内シグナルを誘発でき、分析した細胞型に厳密に依存する特異的免疫炎症性反応を可能にすることが示されている。特にB細胞で実施されたいくつかの研究で、ヒト又はマウス細胞のそれぞれでIL−21は細胞死のプログラムを促進できるか、若しくは抑制できることが示されている(Mehta 2003、Jin 2004)。同様に、ヒト末梢血Tリンパ球は、IL−21刺激後に、Th1応答を示す高濃度のインターフェロンガンマ(IFN−γ)を産生するが、一部のマウスモデルでは、IL−21がTh2リンパ球でより高濃度に発現し、この細胞型の分化を促進するようであることが示された(Ma 2003、Wurstel 2002)。発癌及び糖尿病の動物モデルで実施された実験はいずれも、Tリンパ球/ナチュラルキラー細胞の活性とサイトカイン産生とを調節するIL−21の能力が確認され、免疫炎症性過程の発症と永続化におけるこの分子の潜在的役割が強調された(Gallegos 2004)。したがって、IL−21の生物学的作用を調節することは、変化したIL−21産生及び/又は活性によって特徴づけられる全ての免疫炎症性疾患に対する新規の有望な治療法になり得ることと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したようにCDの間、慢性炎症性疾患は、主として遠位回腸及び右結腸に局在し、腸管粘膜には多量のT細胞が浸潤している(Podolsky 2002)。またT細胞は、粘膜のレベルでTh1リンパ球に分化し、高濃度のINF−γ及びTNF−αを産生する証拠が存在する。Th1細胞への分化は、IL−12のような局所的に産生されたサイトカインに依存しているように思われる(Neurath MF 1996、Monteleone 1997)。IBDのヒト及び動物モデルの両方で実施された研究では、IL−12によるTh1リンパ球の活性化は、組織損傷を引き起こす分子事象のカスケードを誘発することも示した(Neurath MF 1996、Monteleone 1999)。損傷の基本的な媒介物質は、細胞外基質のいくつかの成分を分解できるプロテアーゼのファミリーであるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)(Monteleone、1999)であり、したがって粘膜の分解と上皮構造の破壊を引き起こす。常に、MMP−1(間質性コラゲナーゼ)、MMP−2(ゼラチナーゼA)、MMP−3(ストロメライシン)及びMMP−9(ゼラチナーゼB)を含む一部のMMPの著しい増加が、胃潰瘍及び腸潰瘍並びにHp感染、CD及びUC患者の炎症を起こした粘膜領域で実証された(Heuschkel 2000、Saarialho−Kere 1996)。さらにMMPの中和は、胎児の腸の外植片でIL−21で活性化されたTh1細胞により誘発される粘膜分解を抑制するのに十分であることが示された(Monteleone、1999)。
【0008】
免疫炎症性疾患の病因におけるMMPの重要性は、CD及びUCに限定されない。これは乾癬、関節リウマチ、糖尿病、多発性硬化症においてもMMPの関与の証拠があるからである(Kane 2004、Wall 2003)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の著者はここで、CD患者の腸管粘膜に持続するIL−21産生が存在し(図1)、このような増加は活動的な病変領域に限定され、病変の種類に依存しない(図2)ことを示す。CDでのIL−21発現の増加は、Tリンパ球の粘膜浸潤の増加を単に反映するものではない。実際に、対照と比較して、IL−21合成の増加はCD4+T細胞及びCD患者由来のCD45RO+リンパ球のタンパク質抽出物中でも実証される(図3)。
【0010】
Th1細胞の分極化及び安定化は、IL−12活性を増強する分子の活性に厳密に依存していることは疑いない。IL−21がこの応答の調節に含まれる可能性があるかどうか調べるために、本発明の著者はIL−21に対する6つの異なる抗体分子(抗血清)の有効性を、設計し、開発し、試験した。これらの抗体産生には、特異的ヒトIL−21配列で免疫感作したNZWウサギを使用した。各抗血清のIL−21活性阻害を図4に示した。特にヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるIL−21媒介Stat3リン酸化(p−Stat3)誘導に及ぼすそれぞれの抗血清の効果が示されている。それぞれの抗血清の中和効果が、ジャーカット細胞(T細胞系)を用いても確認された(図示せず)。さらにGM2抗血清(PBMC及びジャーカット細胞実験の間、GM2抗血清はIL−21活性を一貫して、同等に阻害した)を用いる、CD患者由来の腸固有層単核細胞(LPMC)培養でのIL−21活性の中和は、Stat4及びT−betなどのTh1細胞分化に必須な転写因子の発現の著しい減少並びにIFN−γ合成阻害を伴っていることが示された(図5)。
【0011】
CD患者の炎症を起こした粘膜でのT細胞の顕著な蓄積は、アポトーシス刺激に対するこのような細胞の耐性に一部依存すると考えられている。またこのような現象は、粘膜の炎症性状態の維持において重要な役割を果たしている証拠があり、これは抗TNF−αなどのアポトーシス刺激に対するT細胞の感受性を増すことができる薬剤が、進行中の組織炎症性過程の消失を促進するからである。IBDの間、アポトーシスに対するT細胞の耐性の基礎をなす正確なメカニズムは、局所的に放出されるサイトカインが関与していると考えられるとしてもまだ分かっていない。
【0012】
本発明の著者は、本発明の対象である抗血清を用いるIL−21活性の遮断は、CD及びUC患者から分離されたLPMCの培養物中で生存するCD3+T細胞の顕著でかつ有意な減少と関連性があることを示した(図6)。腸固有層CD3+T細胞の培養物を用いた場合にも、同様なデータが得られた。実際に、CD3+T細胞の蛍光定量分析では、未処理の細胞(AV:11±1;IP:1.5±0.16;AV−IP:20.8±5.7)又はコントロール血清で処理した細胞(AV:11.6±0.69;IP:2±0.7;AV−IP:21±5.77)との比較で、抗IL−21抗血清GM2は、アネキシンV(AV)(28.5±8)又はヨウ化プロピジウム(IP)(7±1.4)又はこれらの両方(41±7.6)でのパーセンテージの有意な増加を生じたことを示した(P<0.01)。また抗IL−21をCD4+T細胞培養物に加えた場合にも、同様の効果が認められた。このような効果は、ミトコンドリア膜電位の喪失と関連していた(図7)。
【0013】
上述のように、IL−21の発現増強が、UC患者の炎症を起こした領域でも示され(図1)、慢性炎症性疾患は、Th1サブタイプに分極化しないT細胞の顕著な粘膜浸潤によって特徴づけられた。したがってこの知見は、IL−21が、Th1の分極化の制御以外の多様な炎症性経路を調節する可能性を示唆している。
【0014】
新たなIL−21の生物学的機能を確かめるために、ヒト腸粘膜細胞でのIL−21レセプター(IL−21R)の発現を最初に特徴づけた。これらの実験のデータは、IL−21Rの発現は免疫細胞に限定されないで、意外にもIL−21Rは腸内筋線維芽細胞などの非免疫性細胞でも発現していることを示している(図8)。このような発現は、TNF−α又はIL−1βなどの炎症性刺激により増強することができる(図9)。次にこのような細胞は、IL−21刺激に応答性であることを確かめた。特に健常な対象(健常対照者)及びIBD患者から分離される腸内筋線維芽細胞の培養へのIL−21の添加により、TIMP−1及びTIMP−2のようなMMPの組織阻害物質の分泌に影響を及ぼすことなく、MMP−1、MMP−2、MMP−3及びMMP−9の大量分泌(図10)をもたらした。MMP産生に及ぼすIL−21の効果は、胎児腸線維芽細胞系(CCD18CO)でも見られ(データは示さず)、用量依存的であった(図10)。さらにまたIL−21は、MT−MMP−1(図11)のような、その活性がMMP−2の活性化に必須である細胞膜MMPの発現を増強することが示された。最後に、MMP合成に及ぼすIL−21の効果は、TNF−αの同時刺激により増強され(図12)、したがってこれらの2つのサイトカインは、MMP産生の調節に協働することが示唆された。
【0015】
CD LPMC由来のIL−21がMMP産生を調節できるかどうか検討するために、CD粘膜の検体から分離した腸管線維芽細胞を、CD LPMC上清(IL−21を含む、図3)の存在下又は不在下で、抗IL−21又は対照抗血清の添加の有り若しくはなしで、48時間培養し、MMP産生をウエスタンブロット法で評価した。図13で示すように、筋線維芽細胞培養へのCD LPMC上清の添加は、全てのMMPの合成増強をもたらし、このような効果は抗IL−21により阻害された。このことはCD LPMCにより産生されるIL−21は、生物学的に活性であり、MMP合成を増強できることを示している。
【0016】
さらに驚くことに、IL−21Rは腸上皮細胞で発現し、このような発現はIBDの間、特にCDで増強されることが示された(図14)。これらのデータによれば、構成的なIL−21R発現が、いくつかの大腸癌上皮細胞系で実証された(図14)。さらに腸上皮細胞は、IL−21に応答性であることが示されている。実際にIL−21による上皮細胞系の刺激後、チロシンリン酸化細胞内タンパク質の内容に著しい変化が生じた(図15、パネルA)。またIL−21が炎症誘発性の分子又は抗炎症性の分子の発現を変更するかどうか調べるために、IL−21で非刺激の又はIL−21で刺激した同じ上皮細胞系の培養液上清を、120の異なるタンパク質の発現に関して分析した。IL−21による刺激は、CD及びUC並びに乾癬のような他の免疫炎症性疾患の間、上皮から過剰に産生されるタンパク質であるMIP−3αの分泌の増強と関連し(図15、パネルB)、炎症を起こした組織へのリンパ球及び樹状細胞の漸増化を伴った(Kwon 2002、Dieu−Nosjean 2000)。次いでこれらのデータをELISAにより確認した(図15、パネルC)。
【0017】
他の胃腸管系の免疫炎症性疾患の病因におけるIL−21の潜在的役割を確かめるために、また本発明の著者は、Hp感染関連胃炎患者の胃及びセリアック病患者の腸での、優勢な粘膜のTh1細胞応答で特徴づけられる2つの症状で、IL−21が過剰発現することを示した(図16及び17)。
【0018】
IL−21R発現は、Hp感染の有無にかかわらず患者から分離した胃上皮細胞及び胃癌上皮細胞系(AGS及びMKN)でも実証された(図18)。常にIL−21によるAGSの刺激は、Hp感染患者胃で過剰に産生される2つのゼラチナーゼであるMMP−2及びMMP−9合成の増強と関連していた(図19、パネルA)(Mori、2004)。
【0019】
MMP2及びMMP9産生に及ぼすIL−21効果の基礎をなす分子メカニズムの分析により、AGS細胞でIL−21がNF−kBを活性化し(図19、パネルB)、市販製品(TPCK)を用いるNF−kB阻害は、IL−21媒介MMP−2及びMMP−9の著しい合成阻害と関連することが明らかとなった(図19、パネルC)。
【0020】
最後に、IL−21及びIL−21Rは乾癬患者の患部で強く誘導されることが示された(図20)。
【0021】
全体としてこれらのデータは、IL−21の調節不全の合成/活性と関連した症状で進行中の炎症抑制に関して、このサイトカイン活性の中和が合理的な目標である可能性を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
したがって、本発明の1つの目的は、下記の配列:
1.ヒトIL−21のアミノ酸146〜162を含み、GM1と命名された、KMI HQH LSS RTH GSE DS(配列番号1)、
2.ヒトIL−21のアミノ酸97〜111を含み、GM2と命名された、NVS IKK LKR KPP STN(配列番号2)、
3.ヒトIL−21のアミノ酸20〜34を含み、GM3と命名された、LGT LVH KSS SQG QDR(配列番号3)、
4.ヒトIL−21のアミノ酸110〜124を含み、GM4と命名された、TNA GRR QKH RLT CPS(配列番号4)、
5.ヒトIL−21のアミノ酸125〜139を含み、GM5と命名された、CDS YEK KPP KEF LER(配列番号5)、
6.ヒトIL−21のアミノ酸78〜93を含み、GM6と命名された、CFQ KAQ LKS ANT GNN E(配列番号6)、又はそれらの少なくとも5つのアミノ酸の部分を含むヒトIL−21配列に属する抗原性エピトープを提供することにある。
【0023】
本発明の別の目的は、上記と同様に抗原性エピトープをコードするオリゴヌクレオチドの配列によって表される。
【0024】
さらにまた、本発明は抗IL−21抗体の調製に関する上で定義されたエピトープの使用に関する。特に抗体は、ポリクローナル若しくはモノクローナルの抗体フラグメント、キメラ抗体又は単鎖抗体であり得る。
【0025】
本発明のさらなる目的は、ヒトIL−21中和のための本発明による抗原性エピトープの少なくとも1つに対する特異的及び選択的な抗体であって、ヒトIL−21タンパク質の下記ペプチド配列:
1.ヒトIL−21のアミノ酸146〜162を含み、GM1と命名された、KMI HQH LSS RTH GSE DS(配列番号1)、
2.ヒトIL−21のアミノ酸97〜111を含み、GM2と命名された、NVS IKK LKR KPP STN(配列番号2)、
3.ヒトIL−21のアミノ酸20〜34を含み、GM3と命名された、LGT LVH KSS SQG QDR(配列番号3)、
4.ヒトIL−21のアミノ酸110〜124を含み、GM4と命名された、TNA GRR QKH RLT CPS(配列番号4)、
5.ヒトIL−21のアミノ酸125〜139を含み、GM5と命名された、CDS YEK KPP KEF LER(配列番号5)、
6.ヒトIL−21のアミノ酸78〜93を含み、GM6と命名された、CFQ KAQ LKS ANT GNN E(配列番号6)の1つに対する抗体である。
【0026】
これらの抗体は、ポリクローナル(Ab)若しくはモノクローナル(mab)、又は抗体フラグメント(Fab Fab’、Fab(ab’)2)又はキメラ、ヒト化、若しくは単鎖(scFv)抗体であってもよい。抗体は哺乳動物抗体であってもよく、ヒト、マウス、ウサギ、ヤギ由来の抗体が好ましい。分子の安定性の増強、分子の分解の阻止又は副作用のリスクの減少に必要な変形も本発明の範囲に含まれる。本発明による抗体は、蛍光色素、放射性同位元素又は薬剤で標識されてもよい。また抗体は、例えばIL−21発現の中和分析又は特性評価分析における実験分野での反応剤として使用することができる。
【0027】
本発明による抗体は、医学分野で有利に使用することができる。さらに本発明は、例えば慢性炎症性腸疾患(IBD)、セリアック病、乾癬などの、IL−21発現の変化を伴う免疫炎症性疾患の治療又はin vitroでの診断用の薬剤調製のための本発明による抗体の使用に関する。特に慢性炎症性腸疾患は、クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)であってもよい。
【0028】
本発明の他の目的は、当業者には周知の1つ若しくは複数の薬剤学的に許容し得るコアジュバント及び/又は賦形剤と共に、有効成分として上記規定の抗体の少なくとも1つを含む医薬組成物を提供することである。組成物は局所的、全身的又は経口経路で投与されるのが好ましい。
【0029】
さらにまた本発明は、本発明による上記規定の抗体及び/又はエピトープの少なくとも1つを含む診断キットに関する。本発明による診断キットには、例えばCD及びUC、セリアック病、乾癬のような慢性炎症性腸疾患(IBD)などの、IL−21発現の変化を伴う免疫炎症性疾患診断用のELISA、ウエスタンブロット法、免疫組織化学又は細胞蛍光測定法などの技術を用いるのが好ましい。このような診断キットは、in vitro又はin vivoでのIL−21発現の中和又は特性評価のために有用である。
【0030】
例示目的であって、限定することを意図せず、その好ましい実施態様に従って、同封の図面の図を特に参照して、次に本発明を説明する。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
CD、UC、Hp感染関連胃炎、及びセリアック病患者におけるIL−21発現の研究
材料と方法
患者と検体
粘膜の検体は、新たに入手した29人のCD患者標本から採取した。18人の患者で疾患は末端回腸に限定されたが、残りの患者では病変は、回腸と大腸の両方に存在した。手術時に、13人の患者はステロイド治療を受け、10人の患者はステロイド+免疫抑制剤で治療され、6人の患者はメサラジン+抗生物質で治療された。18人の患者は、線維性狭窄疾患を有する。回腸結腸の併発を有する患者から、粘膜検体を併発及び発病を免れた回腸及び結腸部位から採取した。
【0032】
追加の粘膜検体を、以下の大腸から採取した。すなわち、a)結腸鏡検査を受けた26人のUC患者及びステロイド及び免疫抑制剤による薬物治療に不十分な応答しかしない慢性活動性経過の間に、結腸切除を受けた4人の患者、b)6人の憩室性疾患患者、10人の過敏性大腸症候群患者及び26人の大腸癌患者。後者の場合、粘膜検体は肉眼でも顕微観察でも病変のない部分から採取した。これらの検体を正常対照とみなした。さらに粘膜検体を以下から採取した。すなわち、1)13人のHp感染関連胃炎患者及び肉眼でも顕微観察でも胃炎のない14人の患者の胃、b)14人のセリアック病患者及び14人の対照健常者の十二指腸。当施設の委員会で倫理的承認を得た。
【0033】
腸固有層単核細胞(LPMC)の分離と培養
LPMCは、DTT−EDTA及びコラゲナーゼ手法により調製した。LPMCのアリコートを、直ちに総タンパク質の抽出に用いたが、残りのLPMCは10%のウシ胎児血清(FBS)(Sigma−Aldrich)補充RPMI1640(Sigma−Aldrich S.r.l.,Milan)に再懸濁して培養するか又は固有層Tリンパ球(T−LPL)の精製に用いた。この目的のために、LPMCを抗CD14、CD19及びCD56抗体(Miltenyi Biotec S.r.l.,Calderara di Reno,Italy)と共に4℃で30分間インキュベートし、次いで磁気細胞選別システム(MACS,Miltenyi Biotec S.r.l.)を用いて、T−LPLをネガティブセレクションにより採取した。CD4+、CD8+及びCD45RO+陽性のT−LPLを、これらの細胞サブタイプ特異的抗体を用いる同じ手順により精製した(Miltenyi Biotec,S.r.l.)。
【0034】
タンパク質の抽出とウエスタンブロット分析
粘膜検体、LPMC又は精製した細胞をホモジナイズし、総タンパク質を10mM Hepes(pH 7.9)、10mM KCl、0.1mM EDTA及び0.2mM EGTAを含む緩衝液Aを用いて抽出した。緩衝液には、1mMのジチオスレイトール(DTT)、10μg/mlのアプロチニン、10μg/mlのロイペプチン及び1mMのフッ化フェニルメタンスルホニルを加えた(全ての試薬はSigma−Aldrichを使用)。
【0035】
IL−21タンパク質は、ヒトIL−21特異的ウサギ抗体を用いて分析した(0.5μg/ml、ProSci Incorporated,Poway,CA,USA)。
【0036】
1次抗体結合を検出するために、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(Dako Ltd)を、最終希釈1:20,000で用い、化学発光キット(Pierce,Rockford,IL,USA)により免疫反応性を可視化した。IL−21の分析後、ブロットを剥離し、次いで添加した内部タンパク質対照として抗ヒトβ−アクチン抗体と共にインキュベートした(最終希釈1:5000で、Sigma−Aldrich)。
【0037】
それぞれのウエスタンブロットバンドの強度を、コンピュータ支援走査デンシトメトリーを用いて分析した(Total lab,AB.EL Science−Ware Srl,Rome)。
【0038】
結果
IL−21は全ての分析した検体で検出されたが、その発現はCD患者で強く増強されていた(図1)。さらに憩室性疾患を有する患者又は対照健常者に比べ、UC患者でIL−21の発現増加が見られた(図1)。CD患者で、IL−21発現の増強は炎症部位で明らかであり(図2、上のブロット)、病変のタイプと関連していなかった(図2、下のブロット)。
【0039】
CD患者で、分析をLPMCから抽出したタンパク質を用いて実施した場合にも、IL−21の発現増加が見られた(図3A)。CD又はUC患者及び対照でのIL−21含有量の相違は、多数の粘膜Tリンパ球浸潤の反映であることを除外するために、患者及び対照の同数のLPLから抽出したタンパク質に関しても分析を実施した。図3、パネルBで示すように、CD患者のT−LPL及びUC患者のより少ない割合のT−LPLが、より高い量のIL−21を含んでいた。IL−21含有量が、対照のCD45RO+LPLに比べCD患者の大腸から分離したCD45RO+LPLでより顕著であるのと同様に(図3Bの右挿入図)、このIL−21の増加は、特にCD4+細胞サブタイプで顕著で(同じ図の左挿入図)、細胞活性化状態に依存していなかった。
【0040】
また、IL−21の発現増加がHp関連胃炎患者(図16)の胃及びセリアック病患者の十二指腸バイオプシー(図17)で示された。
【0041】
(実施例2)
ヒトIL−21中和抗体の開発
材料と方法
IL−21抗原性性配列の分析と決定
可能性ある高抗原性性部位を同定するために、IL−21タンパク質ヒト配列のコンピュータ処理分析を、ワシントンバイオテクノロジー社(Washington Biotechnology Company)(Washington,USA)で実施した。したがって、このような配列は、IL−21に対する免疫及び抗体作成に最適なエピトープと考えられた。
【0042】
ペプチド合成
ペプチド合成及び精製は、ワシントンバイオテクノロジー社で実施した。Fmocケミストリーを用いる「自動化固相ケミストリー(automated,solid−phase chemistry)」技法によって、それぞれのペプチドを合成した。それぞれのペプチド配列で、それぞれのアミノ酸をペプチド結合で結合し、不必要な反応を避けるために保護基を使用した。合成完了時に、過剰な試薬を洗い流した後、完全なペプチドを支持体樹脂から取り出し、純度90%以上の最終生産物を提供するために、クロマトグラフィー技法(逆相カラムクロマトグラフィー)により精製した。次いで、それぞれのペプチドをマススペクトル分析(MALDI)により分析して確認した。
【0043】
ニュージーランドホワイト(NZW)ウサギの免疫感作
ウサギNZW免疫感作は、ワシントンバイオテクノロジー社で実施した。免疫を誘発するために、それぞれのペプチドを巨大タンパク質キャリア(KLH)に結合させ、アジュバントと共に2匹の特定病原体未感染のウサギ(ニュージランドホワイト種)の皮下に注射した。6週間にわたる3回のブースター注射の後、ELISAで抗血清を分析するために試験採血を行った。ELISA測定で抗体価が1:50000より高い場合にのみ、それぞれのウサギから採血した。初回免疫感作後、6又は8週時点で血液を採取した。次いで、ELISAによりそれぞれの抗血清力価の特性を決定した。
【0044】
それぞれの抗血清の中和効果の分析
それぞれの抗IL−21抗血清の中和活性を分析するために、健常ボランティアから採取した血液を用いてPBMCをフィコール層別化で分離し、最初にヒト組換え型IL−21の添加(最終濃度25ng/ml)の有り又はなしで、それぞれ1:500から1:5000の範囲にわたる最終希釈で用いるそれぞれの抗IL−21抗血清又は対照血清の存在又は非存在下で、0.5%BSA(ウシ血清アルブミン)を含むRPMIに再懸濁した。上述のように、リンパ球細胞系(ジャーカット細胞)を用いる実験を同時に実施した。30分のIL−21刺激後、細胞を採取、上述のように総タンパク質の抽出に用いた。次いで、200μgのタンパク質/検体を電気泳動で分離し、ニトロセルロース上へブロットし、モノクローナル特異抗体(Santa Cruz Biotechnology)を用いるウエスタンブロット法によりリン酸化Stat3及び総Stat3含有量を分析した。次いでコンピュータ支援走査デンシトメトリー(Total lab,AB.EL Science−Ware Srl)を用いて、それぞれのウエスタンブロットバンドの強度を定量した。
【0045】
結果
予想通り、IL−21によるPBMCの刺激はStat3リン酸化の増強を伴っていた(図4)。このことはジャーカット細胞を用いた場合でも明らかであった(データは示さず)。それぞれの抗IL−21抗血清は、IL−21に媒介されるリン酸化Stat3の誘導阻害に対して有効であった(図4)。
【0046】
(実施例3)
粘膜Th1細胞応答の調節におけるIL−21の役割
材料と方法
細胞培養
CDでIL−21がTh1の細胞分化に関与するかどうかを検討するために、上述したように、腸切除を受けている6人のCD患者の炎症部位から分離したLPMCを、10%FBSを補充したRPMI 1640に再懸濁した。次いでLPMCを抗IL−21抗血清NZW−GM2(最終希釈1:500)又は対照血清(1:500)の非存在又は存在下で12時間培養後、抗CD3抗体(最終希釈1:500)でさらに24時間刺激した。
【0047】
タンパク質の抽出とウエスタンブロット分析
これらのタンパク質に対する特異抗体(最終希釈1:500のT−bet及び総Stat4(両方とも Santa Cruz Biotechnology製造)、濃度1.5μg/mlのp−Stat4(ミラノHisto−Line Laboratories製造))を用いて、上述したようにT−bet、p−Stat4及びStat4の発現をウエスタンブロット法により分析した。
【0048】
次いで、それぞれのウエスタンブロットバンドの強度を、コンピュータ支援走査デンシトメトリー(Total lab,AB.EL Science−Ware Srl)を用いて定量化した。
【0049】
ELISA
製造業者(Peprotech,London,UK)の説明書に従い市販のELISAキットで、LPMC培養液上清をIFN−γ含有量に関して分析した。
【0050】
結果
IFN−γは測定可能であり、p−Stat4及びT−betは刺激されていないLPMC培養で発現した(図5)。抗CD3によるLPMC刺激作用は、活性なStat4及びT−betの著しい増加を伴い、そしてこれはIFN−γ分泌の増強を伴った。重要なことは、GM2抗血清を用いるIL−21活性の中和により、抗CD3により誘導された活性なStat4及びT−betの発現が阻害され、したがって結果としてIFN−γの有意な阻害を生じたことであった(p=0.02)(図5)。
【0051】
(実施例4)
IBD腸管Tリンパ球の生存度に及ぼす抗IL−21抗血清の効果
材料と方法
患者と検体
粘膜検体は、疾患が末端回腸及び上行結腸に限定している8人のCD患者の手術標本から採取した。手術の時点で、全ての患者はステロイド及び免疫抑制療法を受け、線維性狭窄疾患を有している。また粘膜検体は、以下の結腸から採取した。すなわち、a)ステロイド及び免疫抑制剤による薬理学的治療に不十分な応答しかしない疾患に対して結腸切除を受けている4人のUC患者、b)6人の大腸癌患者。この後者の場合、粘膜検体は肉眼でも顕微観察でも病変のない部分から採取した。これらの検体は正常対照とみなした。当施設の委員会で倫理的承認を得た。
【0052】
腸固有層単核細胞(LPMC)の分離と培養
LPMCは、DTT−EDTA−コラゲナーゼ手法により調製した。上述したように、LPMCのアリコートを直ちにCD4+Tリンパ球の精製に用いたが、残りのLPMCは10%のウシ胎児血清(FBS)(Sigma−Aldrich)補充RPMI1640(Sigma−Aldrich S.r.l.,Milan)に再懸濁して培養した。
【0053】
未分画のLPMC及びCD4+Tリンパ球の両方を、希釈度の異なるGM2抗lL−21抗血清又は対照血清の存在又は非存在下で、2時間から20時間にわたって培養した。
【0054】
細胞死及びミトコンドリアの膜内外電位差の細胞蛍光測定分析
細胞死の割合は、細胞をヨウ化プロピジウム5μg/mL(PI;Sigma−Aldrich)と共に20分間インキュベートし、続いてフィコエリトリン(FITC)標識したAnnexin V(AV)(Becton Dickinson,Milano)の市販溶液を用いて染色して分析した。同様にAVパーセンテージは、抗CD3ヒトモノクローナル抗体(Becton Dickinson)を用いて後者を同定することによりCD3+Tリンパ球で評価した。次いで細胞蛍光を、細胞蛍光計FACSCaliburのFL−1及びFL−2チャネル(Becton Dickinson)を用いて測定した。ミトコンドリアの膜内外電位差分析のために、細胞を培養の最後の20分間、20μMの3,3’−ヨウ化ジヘキシルオキサカルボシアニン(DiOC6(3)(Invitrogen S.r.L.,Milano)と共にインキュベートした後、蛍光を細胞蛍光測定によって評価した。
【0055】
結果
20時間培養後、LPMC培養への抗IL−21抗血清(GM2)の添加により、生存CD3+リンパ球が非常に減少した。細胞蛍光測定分析は、非刺激細胞(AV:11±1;pI:1.5±0.16;AV/PI/:20.8±5.7)又は対照血清で処理した非刺激細胞(AV:11.6±0.69;pI:2±0.7;AV−PI:21±5.77)に比べて、抗IL−21はAV陽性細胞(28.5±8)、pI(7±1.4)及びAV/PI(41±7.6)の割合を有意に高めていることを示している(P<0.01)(図6)。
【0056】
抗IL−21は、陽性のAV及びPICD4+Tリンパ球の割合を増強し(データは示さず)、したがって抗IL−21効果は、抗体媒介性細胞障害反応のメカニズムを介して生じる可能性を除外した。これらの抗IL−21の効果は、ミトコンドリアの膜内外電位差の著しい減少を伴っていた(図7)。
【0057】
(実施例5)
筋線維芽細胞及び粘膜上皮細胞でのIL−21レセプター発現並びにMMP及びMIP−3αの誘導でのIL−21の役割
材料と方法
腸管筋線維芽細胞の分離
上述したように、CD患者(N=8)及びUC患者(N=8)並びに対照健常者(N=8)からの分離したLPMCを、1%非必須アミノ酸及び10%FBSを含むMEM 1×に再懸濁し、37℃で24時間インキュベートした。次いでプレートに付着していない細胞を除去し、付着した細胞を上述の培地の存在下でインキュベートした。3回継代後、得られた筋線維芽細胞集団を、特異的モノクローナル抗体を用いて形態学的に及び表現型的に特徴づけた。
【0058】
胃及び腸管上皮細胞の分離
8人のHp胃炎患者及び胃炎を有しない8人の患者(対照健常者)の幽門洞、並びに8人のCD患者、8人のUC患者及び8人の対照健常者の結腸から採取した内視鏡バイオプシーから、胃及び腸管上皮細胞を分離した。バイオプシー検体は、ハンクス液で直ちに洗浄後、1mMのEDTAを含む溶液中で30分間インキュベートした。最後に得られた細胞集団を、パーコール勾配層別化により大規模に精製した(Sigma−Aldrich)。
【0059】
腸管筋線維芽細胞培養及び胎児腸管線維芽細胞系
CD患者、UC患者及び正常対照被験者の筋線維芽細胞並びに胎児腸管線維芽細胞系、CCD18COを、集密になるまで1%非必須アミノ酸及び10%FBSを含むMEM 1×中で維持した。次いで細胞をFBS不存在下で、MEM 1×で24時間維持し、最後に様々なIL−21の用量で48時間刺激するか又は刺激しなかった。同様に、筋線維芽細胞を25ng/mlのTNF−αの存在下で、50ng/mlのIL−21で刺激した。CD LPMCにより産生されたIL−21がMMP合成を調節できたかどうかを検討するため、3人のCD患者の腸から分離したLPMCを上述のように培養して、48時間後に上清を採取し、使用するまで−80℃で凍結した。次いでこのような上清を希釈1:20で、抗IL−21抗血清(GM2)(最終希釈1:500)又は対照血清を最初に添加又は無添加で、CD患者の腸管筋線維芽細胞培養に加えた。48時間培養後、筋線維芽細胞上清を採取してMMP含有量について分析した。
【0060】
IL−21R発現が調節できるかどうかを検討するために、正常被験者の腸から分離した筋線維芽細胞を、TNF−α(20ng/ml)又はIL−1β(20ng/ml)で24時間刺激し、IL−21R含有量をウエスタンブロット法により評価した。
【0061】
AGS培養
AGSを集密になるまで、10%FBSを含むDMEM/F12中で維持した。次いで細胞を24時間、FBSの不存在下でDMEM/F12中で維持し、最終的に様々なIL−21の投与量で、5分から48時間にわたって刺激するか又は刺激しなかった。これと平行して、IL−21(50 ng/ml)でさらに48時間刺激する前に、AGS培養をTPCK、NF−kB活性阻害剤(1〜10μM)で60分間処理した。
【0062】
EMSA
上述したように刺激及び非刺激のAGSをホモジナイズし、10mM Hepes(pH 7.9)、10mM KCl、0.1mM EDTA及び0.2mM EGTAを含む緩衝液Aを用いて細胞質の抽出物を採取した。核抽出物は、残存している核を20mM Hepes(pH 7.9)、0.4M NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA及び10%グリセリンを含む緩衝液C中で可溶化して調製した。両方の緩衝液に、1mMのジチオスレイトール(DTT)、10μg/mlのアプロチニン、10μg/mlのロイペプチン及び1mMのフッ化フェニルメタンスルホニル(Sigma)を補充した。核タンパク質のDNA結合試験を、10mMのTris−HCl、50mMのKCl、1mMのDTT、2.5%のグリセリン、5mMのMgCl、1μgのPoly(dl−dC)、ビオチン標識オリゴヌクレオチド及び5μgの核タンパク質を含む50fmolの(Sigma)プローブを含む20μlの反応容量で、室温で20分間実施した。
【0063】
DNAプローブは、市販キット(Pierce,Rockford,IL,U.S.A.)を用いてビオチン3’標識された、2つのコンセンサスオリゴヌクレオチド(FWD、5’:−AGTTGAGGGGAGTTTCCCAGG−3’(配列番号7)、REV、5’:−CGGACCCTTTCAGGGGAGTTGA−3’(配列番号8))を用いて調製した。結合特異性は、核タンパク質試料を、結合を飽和させるために100倍モル過剰の、非標識のNF−kBプローブ又はIL遺伝子(IL2G)、(5’:ACAACGCGTGAGCTCTCTAGAAAGCATCATCTCAACACTAACTTGATAATTAAGTGCCTCGAGCACA−3’(配列番号9))の非標識オリゴヌクレオチドと共にインキュベートすることにより確認した。
【0064】
中和実験で、プローブを添加する前に、抗NF−kB/p65ヒトモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)又は対照抗体(Dako Ltd)(両方とも濃度2.5μg/20μlで用いた)を、核タンパク質と共に45分インキュベートした。6%未変性ポリアクリルアミドゲルを、電気泳動分離に使用した。メンブラン上へブロット後に、標識オリゴヌクレオチドをEMSA化学発光キット(Pierce)で検出した。
【0065】
DLD−1培養
DLD−1は、集密になるまで10%FBSを含むRPMI1640中で維持した。次いで細胞を24時間FBSの不存在下で、RPMI1640中で維持し、最後に15分〜48時間様々なIL−21の投与量で刺激するか又は刺激しなかった。
【0066】
IL−21R免疫組織化学
IL−21R発現は、CD患者及び対照健常者の腸切除検体で評価した。組織切片を切断し、次いでキシレン及びエタノール処理により、脱パラフィン化し、脱水した後、スライドをクエン酸緩衝液(0.01M)、pH 6(Sigma−Aldrich)中で、電子レンジで20分間インキュベートした。希釈1:20で用いた抗IL−21Rヒトモノクローナル抗体(R&D Systems)又は対照抗体と共にインキュベーションを4℃で一夜実施した。染色特異性は、ブロッキングペプチドを用いて確認した。TBS洗浄(Sigma)後、スライドをHRPパーオキシダーゼ結合2次抗体(希釈1:50、Dako SpA,Milan)と共に室温で30分間インキュベートした。
【0067】
基質としてジアミノベンジジン(Sigma)を添加し、ヘマトキシリンでコントラスト処理により、免疫反応性細胞が認められた。対照切片は、前述のとおり1次抗体を対照抗体(Dako)と置換して、同じ免疫組織化学的な条件下で調製した。キシレン及びエタノール処理に続く脱水後に、スライドを光学顕微鏡で解析した。
【0068】
IL−21Rのウエスタンブロット
IL−21Rに関するウエスタンブロット分析を、抽出した総タンパク質を用いて実施した。抽出物は、腸筋線維芽細胞細胞系、CCD18CO、胃及び腸管上皮細胞、並びに胃癌上皮細胞(AGS)及び腸癌上皮細胞(HT−29、HT−115、Colo205、DLD−1、T84、Caco−2)から調製した。タンパク質抽出及びIL−21R分析は、上述のように実施した。IL−21Rの検討には、市販のモノクローナル抗体(最終濃度1μg/ml、R&D Systems)を用いた。
【0069】
MMPウエスタンブロット
インキュベーションに続いて、IL−21でまだ非刺激であるか又は刺激した筋線維芽細胞及びAGSの培養上清を採取し遠心分離して、特異的モノクローナル抗体(R&D Systems)を用いるウエスタンブロット法による、MMP−1、MMP−2、MMP−3、MMP−9、TIMP−1及びTIMP−2の分析に用いた。さらにタンパク質抽出物を、IL−21で刺激した細胞及び非刺激の細胞から調製し、次いで特異的モノクローナル抗体(R&D Systems)を用いるウエスタンブロット法によるMT−MMP−1の分析に用いた。
【0070】
タンパク質アレイシステム
腸管上皮細胞のIL−21刺激作用がタンパク質/サイトカイン/ケモカインの含有量の変更を伴ったかどうかを分析するために、IL−21で刺激したか又は非刺激のDLD−1培養上清を、同時に120個のタンパク質が分析可能な市販のタンパク質アレイシステム(Protein Array System)キット(RayBiotech,Inc.Norcross,GA,USA)を用いるタンパク質分析に付した。それぞれの上清1mlを、120個のタンパク質に対する抗体を含むメンブラン上で一夜インキュベートした。数回の洗浄後、ブロットをビオチン標識2次抗体とインキュベートし、次いでストレプトアビジン及び基質と共にインキュベートした。それぞれのバンドの強度をコンピュータ支援分析により評価した。
【0071】
MIP−3αELISA
上述したようにIL−21で刺激したか又は非刺激のDLD−1培養上清で、市販ELISAキット(R&D Systems,Space Import−Export Srl,Milan)によりMIP−3αを分析した。光学密度は、ELISAリーダーDynatech MR 5000により波長450nmで測定した。結果はpg/mlで示した。
【0072】
結果
IL−21Rは、腸管の初代筋線維芽細胞及び胎児腸管線維芽細胞(CCD18CO)で構成的に発現していることが分かった(図8)。また同じ細胞型が、機能性を有するIL−21Rの必須成分である共通のγ鎖レセプターを発現した(図8)。IL−21R発現は、TNF−α及びIL−1βを含む炎症性刺激によりさらに増強された(図9)。
【0073】
重要なことに、IL−21による腸管筋線維芽細胞の刺激により、TIMPではなくMMPの分泌が増強された。このことは初代筋線維芽細胞及びCCD18COの両方において確認された(図10)。またIL−21は細胞膜MMPの発現、例えばその活性がMMP−2の活性化に必須であるMT−MMP−1の発現を増強した(図11)。さらにMMP合成の刺激に関して、IL−21はTNF−αと協働した(図12)。MMPの誘導に関して、IL−21の生物学的役割を確かめるために、CD LPMC上清は、腸管筋線維芽細胞によるMMP合成を促進し、このような効果は、抗IL−21抗血清GM2の添加により阻害されることが示された(図13)。IL−21Rの構成的な発現は、腸管初代上皮細胞及び大腸癌上皮系でも見られた(図14)。重要なことは、免疫組織化学(図14、パネルA)及びウエスタンブロット(図14、パネルB)分析が、IBD患者、特にCD患者の上皮細胞で、IL−21Rの発現増強を示したことである。腸管上皮細胞の生物活性に及ぼすIL−21の効果を検討するために、DLD−1細胞はIL−21Rを発現するので、これらの細胞系を選択した。IL−21によるこれらの細胞をin vitroで刺激すると、様々なリン酸化タンパク質の含有量の変化を伴っていた(図15、パネルA)。IL−21に対する細胞応答は、IL−21刺激に応答してDLD−1がMIP−3αを高度に分泌するという証拠により裏づけられた(図14、パネルB及びC)。胃の初代上皮細胞並びにAGS及びMKNなどの胃癌上皮細胞系は、構成的にレセプターを発現したので、IL−21Rの発現は腸管上皮に限定されていなかった(図18)。IL−21によるAGSの刺激は、Hp感染患者の上皮で過剰に産生された2つのゼラチナーゼであるMMP−2及びMMP−9(図19、パネルA)の分泌増強を常にもたらした。IL−21がNF−kB活性化を増強し(図19、パネルB)、TPCKによるNF−kBの阻害は、IL−21の媒介するMMP−2及びMMP−9合成を減少させた(図19、パネルC)と想定するならば、この効果はNF−kBの活性化を調節するIL−21の機能に依存しているようである。
【0074】
(実施例6)
乾癬患者でのIL−21及びIL−21Rの発現の検討
材料と方法
患者と検体
皮膚バイオプシー検体は、9人の乾癬患者の病変部及び非病変部から採取した。募集時には患者は治療を受けていなかった。バイオプシー検体は液体窒素で直ちに凍結し、使用するまで−80℃で保持した。
【0075】
IL−21及びIL−21Rのウエスタンブロット
各検体からの総タンパク質抽出物を、上述の方法を用いてIL−21及びそのレセプターに関して分析した。
【0076】
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−EP 1443 055。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1、パネルAは、ウエスタンブロット法で測定される、3人のCD患者、3人のUC患者及び3人の対照健常者由来の腸管粘膜検体からの総タンパク質抽出物中の、IL−21(上のブロット)及びβ−アクチン(下のブロット)の発現を示す。下のパネルは、任意の濃度測定単位で発現したそれぞれの対象者でのIL−21/β−アクチンタンパク質比率を示す(グラフの中でそれぞれの場所で示されている)。水平バーは、それぞれの群の中央値を示す。
【図2】図2、パネルAは、ウエスタンブロット法で評価される、3人のCD患者及び2人の対照健常者由来の腸管粘膜検体からの、総タンパク質抽出物中のIL−21(上のブロット)及びβ−アクチン(下のブロット)の発現の分析を示す。それぞれのCD患者に関しては、検体を炎症(病変部)及び非炎症部位から取り出した。右のパネルは、異なる患者及び対照健常者で測定し、任意の濃度測定単位の平均±標準偏差として示したIL−21/β−アクチンタンパク質含有比率を示す。図2のパネルBは、3人の炎症性CD患者、3人の線維性狭窄CD患者及び2人の対照健常者由来の腸管粘膜検体からの総タンパク質抽出物中のIL−21タンパク質量(上のブロット)及びβ−アクチン(下のブロット)を示す。右のパネルは、異なる患者及び対照健常者で評価し、任意の濃度測定単位の平均±標準偏差として示したlL−21/β−アクチンタンパク質比率を示す。
【図3】図3、パネルAは、ウエスタンブロット法で測定される、2人のCD患者、2人のUC患者及び2人の対照健常者由来の腸固有層単核細胞(LPMC)の総タンパク質抽出物中のIL−21(上のブロット)及びβ−アクチン(下のブロット)の発現を示す。パネルBは、2人のCD患者、2人のUC患者及び2人の対照健常者の腸固有層(LPL)T細胞から分離した総タンパク質抽出物のIL−21及びβ−アクチンの典型的なウエスタンブロットを示す。左の挿入図は、1人のCD患者、1人のUC患者及び1人の対照健常者から分離したCD4+LPL又はCD8+LPLsでのIL−21の発現を示す。右の挿入図は、2人CD患者、2人のUC患者及び2人の対照健常者の腸から精製したCD45RO+LPLでのIL−21タンパク質量を示す。
【図4】図4は、ヒト組換え型IL−21で刺激したヒト末梢血単核細胞(PBMC)における、転写因子Stat3(pStat3)のリン酸化誘導に及ぼす、それぞれの抗IL−21抗血清(配列GM1、GM2、GM3、GM4、GM5、GM6)の阻害効果を示す。下のブロットは、同じ検体における総Stat3の量を示す。PStat3及び総Stat3はどちらも、ウエスタンブロット法により評価した。
【図5】図5は、CD患者の腸から分離したLPMCにおける、Th1応答(T−bet及びStat4)並びにインターフェロンガンマ(IFN−γ)合成を伴う転写因子の発現に及ぼすGM2抗血清の阻害効果を示す。T−bet(A)並びにリン酸化Stat4及び総Stat4(B)の量を、総タンパク質抽出物のウエスタンブロット法により分析し、一方、培養上清のIFN−γ分泌(C)は、市販キットを用いてELISAにより評価した。
【図6】図6は、正常被験者並びにCD及びUC患者の腸から分離し、抗IL−21抗血清(GM2)又は対照血清の存在又は非存在下で20時間培養したLPMC検体に関して、細胞蛍光測定法で測定したCD3+細胞及び/又はアネキシンV(AV)のパーセンテージを示す。
【図7】図7は、CD患者の腸から分離し、抗IL−21抗血清(GM2)又は対照血清の存在、非存在下で4時間培養したCD4+T細胞に関して、細胞蛍光測定法で測定したDIOC6量を示す。
【図8】図8は、1人の正常被験者(対照)、1人のCD患者及び1人のUC患者の結腸、胎児腸線維芽細胞細胞系(CCD18CO)並びにCD患者の末梢血リンパ球(PBL)から分離した筋線維芽細胞からの総タンパク質抽出物での、IL−21R及びγ−鎖レセプターサブユニットに関する典型的なウエスタンブロットを示す。図のパネルBは、8人のCD患者、8人のUC患者及び8人の対照健常者由来の腸管筋線維芽細胞から調製したタンパク質抽出物中の、IL−21R/β−アクチン量の比率を示す。数値は任意の濃度測定単位で表し、全ての実験の平均±標準偏差を示す。
【図9】図9は、1人の正常被験者の結腸から分離し、培地のみでの培養(非刺激)又はTNF−α(20ng/ml)若しくはIL−1β(20ng/ml)による刺激を24時間行った初代筋線維芽細胞からの総タンパク質抽出物での、IL−21Rに関する典型的なウエスタンブロットを示す。図のパネルBは、上述したように刺激した腸管筋線維芽細胞から調製したタンパク質抽出物中のIL−21R/β−アクチン量の比率を示す。数値は任意の濃度測定単位で表し、3つの独立した実験の平均値±標準偏差を示す。
【図10】図10は、CD患者から分離した腸管筋線維芽細胞での、MMP(MMP−1、2、3及び9)の合成に及ぼすIL−21の刺激効果を示す。MMPに及ぼすIL−21効果は用量依存的で、MMP(TIMP1及びTIMP2)の組織阻害物質の産生に関し、いかなる変化とも関連していない。同様の結果がUC患者の腸から分離した筋線維芽細胞で得られた。Ve+=CD患者の大腸からのタンパク質抽出物を陽性対照として用いた。
【図11】図11は、CD患者から分離し、培地のみ又はIL−21の段階的な投与量で培養した腸管筋線維芽細胞から調製したタンパク質抽出物でのMT−MMP1の合成に及ぼすIL−21の効果を示す。MT−MMP1に及ぼすIL−21の効果は用量依存的である。Ve+=CD患者の大腸からのタンパク質抽出物を陽性対照として用いた。図のパネルBは、上述したように、刺激した腸管筋線維芽細胞から調製したタンパク質抽出物中のMT−MMP1/β−アクチン量の比率を示す。数値は任意の濃度測定単位で表し、3つの独立した実験の平均値±標準偏差を示す。
【図12】図12は、CD患者から分離した腸管筋線維芽細胞で、IL−21及びTNF−αがMMP−1、2、3及び9の合成の増強に協働するが、TIMP1及びTIMP2に及ぼす誘導効果をもたないことを示す。
【図13】図13は、CD筋線維芽細胞の培養へCD LPMC上清を添加すると、MMP合成が増強し、このような効果は抗IL−21抗血清(GM2)により阻害され得るが、対照抗血清では阻害されないことを示す。
【図14】図14は、腸管上皮細胞でのIL−21Rの発現を示す。パネルAは、免疫組織化学により評価した、対照健常者及びCD患者からの大腸検体でのIL−21Rの発現を示す。パネルBは、1人の正常被験者(対照)、1人のCD患者及び1人のUC患者の上皮細胞から抽出した総タンパク質中のIL−21R及びβ−アクチンを示す典型的なウエスタンブロットを図示する。パネルCは、7人のCD患者、7人のUC患者及び7人の対照健常者の大腸から分離した上皮細胞から調製したタンパク質抽出物での、lL−21R/β−アクチンタンパク質の比率を示す。数値は任意の濃度測定単位(a.u.)で表し、全ての実験の平均値±SDを示す。パネルDは、6つの異なる大腸癌上皮細胞系から抽出した総タンパク質中のIL−21を示す典型的なウエスタンブロットを図示する。
【図15】図15(パネルA)は、DLD−1細胞でいくつかのリン酸化タンパク質の発現に及ぼすIL−21の効果を示す。リン酸化タンパク質(上のブロット)及びβ−アクチン(下のブロット)を示す典型的なウエスタンブロットを示す。パネルBは、48時間培養後のDLD−1細胞でのタンパク質分泌に及ぼすIL−21効果を示す。分析は同時に120の異なるタンパク質を評価することができる市販キットを用いて実施した。IL−21に刺激された細胞で、MIP−3αの分泌の増強(円はタンパク質を示す)が認められた。次いでELISAにより、非刺激及びIL−21で刺激したDLD−1の上清で、このような増加がMIP−3αの分析により確認された(パネルC)。
【図16】図16は、3人のHp感染患者及び3人の対照健常者の胃粘膜の検体から調製した総タンパク質抽出物中のIL−21(上のブロット)及びβ−アクチン(下のブロット)を示す典型的なウエスタンブロットを示す。
【図17】図17は、3人のセリアック病患者(celiacs)及び3人の対照健常者の十二指腸粘膜検体から調製した総タンパク質抽出物中のIL−21(上のブロット)及びβ−アクチン(下のブロット)を示す典型的なウエスタンブロットを示す。
【図18】図17は、2人のHp関連胃炎患者及び2人の正常被験者(対照)の胃から分離した上皮細胞から抽出した総タンパク質中のIL−21Rを示す典型的なウエスタンブロットを示す。パネルBは、胃癌上皮細胞系(AGS及びMKN)から抽出した総タンパク質中のIL−21R及びγ−鎖を示す典型的なウエスタンブロットを示す。
【図19】図19、パネルAは、上皮胃細胞(AGS)でMMP−2及びMMP−9の分泌に及ぼすIL−21の用量依存的な効果を示す。パネルBは、AGS細胞でNF−kB活性化を増強するIL−21の機能を示す。3つの典型的なEMSAの1つを示す。パネルCは、TPCKによるNF−kB活性化阻害がIL−21に媒介されるMMP2及びMMP9の合成を如何に減少させるかを示す。
【図20】図20は、4人の乾癬患者の病変部及び非病変部から採取した皮膚のバイオプシーにより調製した総タンパク質抽出物のIL−21(上のブロット)、IL−21R(中央のブロット)及びβ−アクチン(下のブロット)に関する典型的なウエスタンブロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の配列:
KMI HQH LSS RTH GSE DS(配列番号1)、
NVS IKK LKR KPP STN(配列番号2)、
LGT LVH KSS SQG QDR(配列番号3)、
TNA GRR QKH RLT CPS(配列番号4)、
CDS YEK KPP KFF LER(配列番号5)、
CFQ KAQ LKS ANT GNN E(配列番号6)、
又はそれらの少なくとも5つのアミノ酸の部分
を含むヒトIL−21配列に属する抗原性エピトープ。
【請求項2】
請求項1に記載の抗原性エピトープをコードするオリゴヌクレオチド配列。
【請求項3】
ヒトIL−21に対する抗体を調製するための請求項1に記載のエピトープの使用。
【請求項4】
前記抗体がポリクローナル又はモノクローナル、抗体フラグメント、キメラ抗体又は単鎖抗体である請求項3に記載の使用。
【請求項5】
請求項1に記載の抗原性エピトープの少なくとも1つに特異的及び選択的な中和抗体。
【請求項6】
蛍光色素、放射性同位元素又は薬剤で標識された請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
医療分野における使用のための請求項5又は6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
IL−21発現の変化を伴う免疫炎症性疾患の治療に対する薬剤を調製するための請求項5から7までに記載の抗体の使用。
【請求項9】
IL−21発現の変化を伴う免疫炎症性疾患のin vitro診断のための請求項5から7までに記載の抗体の使用。
【請求項10】
IL−21発現の変化を伴う前記免疫炎症性疾患が、慢性炎症性腸疾患、セリアック病、乾癬である請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記慢性炎症性腸疾患が、クローン病又は潰瘍性大腸炎である請求項10に記載の使用。
【請求項12】
薬剤学的に許容し得る1つ若しくは複数のコアジュバント及び/又は賦形剤と共に有効成分として請求項5から7までに記載の少なくとも1つの抗体を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項5及び/又は6に記載の抗体及び/又は請求項1に記載のエピトープの少なくとも1つを含む診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−521797(P2008−521797A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542522(P2007−542522)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【国際出願番号】PCT/IT2005/000691
【国際公開番号】WO2006/057027
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(505367017)ジュリアーニ インターナショナル リミテッド (9)
【Fターム(参考)】