説明

インダクタンス素子

【課題】 磁性コアの底部に端子板を配置する凹部を形成したインダクタンス素子において、前記凹部を形成することに起因するインダクタンスの低下を抑制できるようにする。
【解決手段】 磁性粉末の集合体である磁性コア10の内部にコイル体20が埋設されている。磁性コア10の底面11に、コイル体10から延びる端子板25,25を配置するための凹部15,15が形成されて、端子板25,25の表面と磁性コア10の底面11との段差が小さくなっている。磁性コア10は、凹部15とコイル体20とで挟まれた領域αにおいて磁性粉末の密度が高くなっており、領域αの部分の磁束密度を高くできる。そのため、凹部15が形成されたことによるインダクタンスの低下が抑制できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粉末を圧縮して成形された磁性コアの内部にコイル体が埋め込まれたインダクタンス素子に係り、磁性コアの底面に端子板を納める凹部が形成されたインダクタンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1ないし3に、コイル体が磁性コアの内部に埋め込まれたインダクタンス素子が開示されている。磁性コアは、磁性粉末が圧縮されて形成されたいわゆる圧粉コアである。磁性粉末は、磁性合金粉末であり、絶縁樹脂がコーティングされた磁性粉末が圧縮されて前記磁性コアが形成されている。
【0003】
このインダクタンス素子は、コイル体から延びる端子板が磁性コアの側面から突出し、さらに磁性コアの底面に向けて折り曲げられて、端子板の表面が磁性コアの底面とほぼ平行に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−324714号公報
【特許文献2】特開2004−296630号公報
【特許文献3】特許第4049246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ないし3に記載されたインダクタンス素子は、磁性コアの底面に露出している端子板の表面が、配線基板のランド部に設置されて半田付けによって固定される。インダクタンス素子が配線基板の表面に安定した状態で設置されるためには、磁性コアの底面と、この底面に現れている端子板の表面との段差が小さいことが好ましい。
【0006】
そこで、特許文献3に記載されたインダクタンス素子は、磁性コアの底面に凹部が形成されて、磁性コアから突出する端子板が折り曲げられて前記凹部内に収納されている。この構造では、端子板の表面と磁性コアの底面との段差が小さくなり、配線基板に安定して設置できるようになる。
【0007】
しかし、磁性コアの底部に端子板を収納する凹部を形成すると、凹部が形成されている領域において、コイル体を覆う磁性コアが薄くなり、その分だけインダクタンスが低下する欠点がある。特に、特許文献3に記載されているように、凹部が形成されている部分の磁性コアの密度が他の領域と均一に設定されたものでは、凹部を形成することによるインダクタンスの低下率が大きくなる。
【0008】
インダクタンスの低下を抑制するために、コイル体と凹部との間で磁性コアを厚く設定することが必要になって、小型のインダクタンス素子を形成することが困難になる。
【0009】
また、凹部の面積を小さくすることでインダクタンスの低下をある程度は抑制できるが、この場合は、端子板を小さくしなくてならなくなり、配線基板のランド部に対するインダクタンス素子の固定強度が低下してしまう。さらに、端子板の面積を小さくすると、コイル体に通電したときに磁性コアに発生する熱を端子板から配線基板側に放熱する作用が低下する。その結果、磁性コアの温度が高くなり、コイル体に流す電流の許容値が低下するなどの問題が発生しやすくなる。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、磁性コアに凹部を形成することによるインダクタンスの減少を抑制できるインダクタンス素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導電性金属材で巻かれたコイル体と、前記コイル体から延びる一対の端子板と、少なくとも前記コイル体が内部に埋め込まれた磁性コアとを有するインダクタンス素子において、
前記磁性コアの底面に一対の凹部が形成され、前記磁性コアの外部に突出した前記端子板が、その表面を前記底面とほぼ平行に向けて前記凹部内に納められており、
前記磁性コアは磁性粉末の集合体であり、前記凹部と前記コイル体との間の磁性粉末の密度が、前記凹部が形成されていない前記磁性コアの底面での前記密度よりも高く設定されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のインダクタンス素子は、前記凹部が、前記磁性コアの側面から中心に向けて形成されており、前記凹部の中心に向けられた縁部が、前記コイル体の内周端に一致し、または内周端よりも中心側に位置しているものである。
【0013】
本発明は、前記凹部の前記縁部が、前記コイル体の内周端よりも中心側に位置しており、前記コイル体の内周端よりも内側で且つ前記凹部が形成されている部分の磁性粉末の密度が、前記凹部が形成されていない前記磁性コアの底面での前記密度よりも高く設定されているものが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインダクタンス素子は、磁性コアの底面に凹部が形成され、端子板が凹部に収納されている。そのため、磁性コアの底面と端子板の表面との段差を小さくでき、配線基板に磁性コアを安定させて設置して端子板とランド部とを半田付けすることが可能になる。
【0015】
前記凹部が形成されている部分でコイル体を覆う磁性コアが薄くなっているが、この部分で磁性粉末の密度が局部的に高いために、凹部とコイル体との間の領域を通過する磁束密度が高くなる。そのため、凹部を形成したことによるインダクタンスの低下を抑制できる。
【0016】
コイル体を覆う磁性コアが比較的薄くてもその部分を通過する磁束密度を高くできるので、磁性コアを必要以上に大きくまたは厚く構成する必要がなくなって、小型のインダクタンス素子を構成しやすくなる。
【0017】
また、凹部の端部をコイル体の内周端よりも内側に延ばすこともできる。この場合に、コイル体の内周端よりも内側の領域で磁性コアを構成する磁性粉末の密度を高くでき、インダクタンスを高めることができる。
【0018】
磁性コアの底面の面積に対する磁性板の面積の比を大きくできるために、配線基板への半田付け強度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態のインダクタンス素子の斜視図。
【図2】図1に示すインダクタンス素子の底面図。
【図3】図1に示すインダクタンス素子の断面図。
【図4】(a)は、シミュレーション実験で使用したインダクタンス素子の側面図、(b)は底面図であり、(a)(b)ともにコイル体を透視して示した。
【図5】凹部とコイル体間(領域α)の成形圧力とインダクタンス変化率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1ないし図3に示すインダクタンス素子1は、磁性コア10の内部にコイル体20が埋設されている。コイル体20に一対の端子板25,25が連結されており、この端子板25,25が磁性コア10の外部に延び出ている。
【0021】
磁性コア10は、底面11と上面12を有しており、底面11と上面12は互いに平行である。図2に示すように、磁性コア10を底面11側から見た形状は八角形である。8つの側面のうちの互いに平行に位置する側面13,13から前記端子板25,25が延び出ている。図1ないし図3には、磁性コア10の底面11および上面12に対して垂直に延び且つ八角形の中心を通過する線が中心線Oとして示されている。
【0022】
なお、磁性コア10の平面形状は、正方形や長方形あるいは円形などにすることも可能である。
【0023】
磁性コア10は、磁性粉末を加圧し圧縮して形成されたいわゆる圧粉コアである。磁性粉末は磁性合金粉末であり、例えば、Feを主体とし、Ni、Sn、Cr、P、C、B、Siなどの各種金属が含まれたFe基金属ガラス合金の粉末であり、水アトマイズ法により粉末化されたものである。
【0024】
磁性粉末は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの絶縁材によってコーティングされる。この磁性粉末がキャビティ内に充填され、上型と下型とで加圧されて磁性コア10が形成される。あるいは、磁性粉末と絶縁材とが混合された状態で、キャビティ内に充填されて、上型と下型とで加圧されて磁性コア10が形成される。いずれの工程においても、絶縁材が磁性粉末どうしを結合するための係合材として機能する。
【0025】
コイル体20は、銅(Cu)または銅合金で形成された平板状の導電材21で形成されている。図3に示すように、平板状の導電材21は、その表面が磁性コア10の底面11および上面12とほぼ平行に向けられて、上下方向に重なるように多重に巻かれている。上下に巻かれた導電材21の間は樹脂材料などで絶縁されている。図2に示すように、コイル体20は外側に向けられた外周端20aと、中心線Oに向けられた内周端20bを有している。外周端20aと内周端20bは、中心線Oに曲率中心を有する円筒面形状である。
【0026】
図3に示すように、一対の端子板25,25は、コイル体20において巻かれている導電材21の両端から延びている。端子板25,25は、コイル体20と別体に形成されて、導電材21の両端に溶接などで接続されている。あるいは端子板25,25が、コイル体20を構成する導電材21の両端部を潰し加工等を行って面積を広げ、導電材21と一体に形成されていてもよい。この場合、インダクタンス素子1の回路基板への装着を考慮して、端子板25,25に半田を塗布する。
【0027】
端子板25,25は、銅または銅合金で形成された板材の表面に、ニッケル(Ni)下地層を介して金(Ag)または金とパラジウム(Pd)との合金膜が形成されるか、もしくは、半田を塗布されたものである。
【0028】
図3に示すように、端子板25,25は、磁性コア10の側面13,13からほぼ垂直に突出する突出基部25aを有している。突出基部25aよりも先部は第1の折曲げ部25bにおいて下向きにほぼ直角に曲げられた垂直片25c,25cとなっている。端子板25,25の先部は、垂直片25c,25cの下端が第2の折曲げ部25dでほぼ直角に折り曲げられて、接続片25e,25eとなっている。接続片25e,25eの下向きの表面25f,25fは、磁性コア10の底面11とほぼ平行に延びている。
【0029】
図3に示すように、磁性コア10の側面13,13と、端子板25,25の垂直片25c,25cとの間に隙間δが形成されている。隙間δは、上下方向にほぼ同じ間隔で延びている。
【0030】
端子板25,25は、第1の折曲げ部25b,25bにおいて予め折り曲げられた状態で、圧粉工程において磁性コア10に埋設される。あるいは、端子板25,25は、圧粉工程において磁性コア10に埋設された後に、第1の折曲げ部25b,25bで折り曲げられる。いずれにせよ、前記隙間δを形成しておくことで、第1の折曲げ部25b,25bの曲げ後の残留応力が磁性コア10の側面13,13に与える影響を低減させることができ、磁性コア10の側面13,13の破損などを防止しやすくなっている。
【0031】
特に、圧粉工程後に磁性コア10から突出する端子板25,25が折り曲げられる場合は、磁性コア10の側面13,13から前記隙間δを空けた位置で第1の折曲げ部25b,25bを折り曲げることにより、折曲げ加工のときに磁性コア10に与えられる応力を低減でき、磁性コア10の側面13,13の破損を防止しやすくなる。
【0032】
図2と図3に示すように、磁性コア10の底面11に一対の凹部15,15が形成されている。図3に示すように、凹部15,15の底面11からの窪み深さは、端子板25,25の厚さ寸法よりもやや浅くなっている。但し、端子板のうねり等を考慮して凹部15,15の底面11からの窪み深さは、端子板25,25の厚さ寸法よりもやや深くしても良い。端子板25,25の接続片25e,25eは凹部15,15の中に収納されており、接続片25e,25eの表面25f,25fと、磁性コア10の底面11との段差が最小に設定されている。
【0033】
図2に示すように、磁性コア10の底面11における凹部15,15の幅寸法Wは、接続片25e,25eの幅寸法よりもわずかに大きく、幅寸法Wは、磁性コア10の幅寸法の1/3以上の広さを有している。
【0034】
凹部15,15は、磁性コア10の側面13,13から中心線Oに向けて奥行き寸法Lの範囲で形成されている。凹部15,15の中心線Oに向く縁部15a,15aは、コイル体20の内周端20bと一致する位置に有るか、またはそれよりも中心線Oに近い位置まで延びている。図2に示す実施の形態では、縁部15a,15aが、内周端20bよりも中心線Oに近い位置まで延びている。
【0035】
したがって、凹部15,15は、そのほとんどの範囲がコイル体20の底部と対向しており、凹部15,15の中心線Oに近い先部は、コイル体20の内周端20bよりも内側の中空部に対向している。
【0036】
磁性コア10は、磁性粉末の集合体が圧縮されたものであるが、図3に示すように、コイル体20の底部と凹部15,15とで挟まれた領域αでは、磁性粉末の密度が、凹部15が形成されていない領域での底面11における磁性粉末の密度よりも高くなっている。また、凹部15,15の縁部15a,15aは、コイル体20の内周端20bよりも中心線Oに近い位置に有るが、コイル体20の中空部において凹部15,15が対向している領域βにおいても、磁性粉末の密度が、凹部15が形成されていない領域での底面11における磁性粉末の密度よりも高くなっている。
【0037】
前記領域αは、図3に示すコイル体20の奥行き寸法Aと、コイル体20と凹部15との間の高さ寸法Bで挟まれた範囲で、且つ図2に示す凹部15,15の幅寸法Wの範囲の立体領域である。前記領域βは、図3に示す内周端20bから縁部15aまでの奥行き寸法Cの範囲で、図2に示す幅寸法Wの範囲であり、図3における高さ寸法は、最大で磁性コア10の厚さ寸法と等しくなる立体領域である。
【0038】
インダクタンス素子1の製造工程では、コイル体20および端子板25,25の一部が成形型のキャビティの内部に支持された状態で、キャビティ内に絶縁材がコーティングされた磁性粉末が充填され、上型と下型とで加圧されて磁性コア10が形成される。
【0039】
この成形作業の際、下型において上向きに形成された突部によって、磁性コア10の一部が他の部分よりも強い加圧力で圧縮されて、凹部15,15が形成される。あるいは、凹部15,15を形成する部分の磁性粉末の供給量を他の領域よりも予め多くしておき、下型の突部によってその部分が加圧されて凹部15,15が形成される。いずれにせよ、凹部15,15の成形圧力が他の部分よりも大きくなり、前記領域αと領域βにおいて、他の領域よりも磁性粉末の密度が高く設定される。
【0040】
磁性コア10は、凹部15,15が形成されている領域αと領域βにおいて、磁性粉末の密度が高くなっているため、コイル体20に通電したときに、領域αと領域βを通過する磁束の密度を高くできる。したがって、凹部15,15を形成しても、全体のインダクタンスの低下を抑制できる。
【0041】
そのため、磁性コア10を必要以上に大きくする必要がなくなり、小型のインダクタンス素子1を構成しやすくなる。また、凹部15,15の面積が広くてもインダクタンスの低下を抑制できるので、磁性コア10の底面11に位置する接続片25e,25eの面積を大きくでき、インダクタンス素子1を、配線基板のランド部に安定して半田付けすることができる。また、接続片25e,25eの面積を広くすることで、コイル体20に通電したときに磁性コア10に発生する熱を、接続片25,25eから配線基板側に逃がしやすくなり、磁性コア10の温度の上昇を抑制できる。
【0042】
さらに、凹部15,15の面積を広くし、凹部15,15の中心線Oに向く縁部15a,15aを、コイル体20の内周端20bよりも内側に延ばすことで、コイル体20の内周端20bよりも内側の領域βにおいて磁性粉末の密度を高くすることができる。その結果、コイル体20の中空部を通過する磁束密度を高くすることができ、インダクタンスを高い値に保ちやすくなる。
【実施例】
【0043】
図4(a)(b)に示した寸法を備えるインダクタンス素子に対して以下のシミュレーション実験を行った。なお図4に示す数値の単位はmmである。またコイル体については、0.76×2mmのコイル線を使用し、コイル被覆を0.02mmとし、コイル内径を4.5mmとし、ターン数を2.5ターンとした。
【0044】
シミュレーション実験では、まず基準値として、図4に示すインダクタンス素子の磁性コア全体に6tonの成形圧力を加えたときの磁性粉末の密度、及びインダクタンスを夫々求めた。
【0045】
続いて図4(a)(b)で示した、コイル体の底部と凹部とで挟まれた領域α(ここでの領域αの定義は、図3で説明した領域αと同じである)に加わる成形圧力を7ton〜15tonまで上昇させ、一方、領域α以外の部分での成形圧力は6tonのままとして、領域αでの磁性粉末の密度、及びインダクタンス素子のインダクタンスLを夫々シミュレーションした。
その実験結果が以下の表1に示されている。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示す領域αにおける磁性粉末の密度について説明する。まず磁性コア全体に6tonの成形圧力を加えたとき、基準値となる磁性粉末の密度は4.962(g/cm3)であった。この基準値は、領域αも含め磁性コア全体における密度を示している。
【0048】
続いて、領域αへの成形圧力を7ton以上に上げていくと、領域αにおける磁性粉末の密度は徐々に上昇していく。ただし、凹部が形成されていない磁性コア底面では、成形圧力が6tonのままであるから、凹部が形成されていない磁性コア底面での磁性粉末の密度は4.962(g/cm3)のままである。
【0049】
すなわち凹部が形成されていない磁性コア底面での成形圧力は6tonのままで、領域αへの成形圧力を7ton以上とすると、領域αにおける磁性粉末の密度が、凹部が形成されていない磁性コア底面での磁性粉末の密度よりも高くなることがわかった。
【0050】
また、図5は表1に示す、領域αへの成形圧力とインダクタンス素子のインダクタンス変化率との関係を示すグラフである。インダクタンス変化率とは、磁性コア全体に6tonの成形圧力を加えたときのインダクタンス(=0.360μH)を基準値としたときのインダクタンスの変化率であり、[インダクタンス(7ton時〜15ton時)/インダクタンスの基準値(6ton時)]×100(%)で示される。
【0051】
表1及び図5に示すように、領域αへの成形圧力を上げてくと、徐々にインダクタンス素子のインダクタンスL及びインダクタンス変化率が上昇することがわかった。
【0052】
このように、領域αの磁性粉末の密度が凹部が形成されていない磁性コア底面での密度よりも高くなることでインダクタンス及びその変化率が大きくなることがわかった。
【0053】
ところで、領域αに加わる成形圧力であるが、図4で示した寸法関係であると、凹部が形成されていない磁性コアの底面に6tonの成形圧力が作用した場合、領域αには概ね8tonの成形圧力が加わると予測される。表1や図5に示すように、領域αにさらに強い成形圧力が作用するようにすればインダクタンスの更なる向上を図ることができる。例えば凹部の凹み寸法をさらに大きくすると領域αへの成形圧力がさらに高くなると考えられるが、凹み寸法をあまり大きくしすぎると、コイル体に作用する成形圧力が領域αと対向する位置で高まりコイル体の変形を招いたり、絶縁不良等を起こすことが考えられるため、凹部寸法については必要とされるインダクタンス値と、構造や特性を維持するうえでの成形圧の許容範囲とのバランスを考慮しながら適宜、決定することが必要である。
【符号の説明】
【0054】
1 インダクタンス素子
10 磁性コア
11 底面
12 上面
13 側面
15 凹部
15a 縁部
20 コイル体
20a 外周端
20b 内周端
21 導電材
25 端子板
25e 接続片
25f 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属材で巻かれたコイル体と、前記コイル体から延びる一対の端子板と、少なくとも前記コイル体が内部に埋め込まれた磁性コアとを有するインダクタンス素子において、
前記磁性コアの底面に一対の凹部が形成され、前記磁性コアの外部に突出した前記端子板が、その表面を前記底面とほぼ平行に向けて前記凹部内に納められており、
前記磁性コアは磁性粉末の集合体であり、前記凹部と前記コイル体との間の磁性粉末の密度が、前記凹部が形成されていない前記磁性コアの底面での前記密度よりも高く設定されていることを特徴とするインダクタンス素子。
【請求項2】
前記凹部は、前記磁性コアの側面から中心に向けて形成されており、前記凹部の中心に向けられた縁部が、前記コイル体の内周端に一致し、または内周端よりも中心側に位置している請求項1記載のインダクタンス素子。
【請求項3】
前記凹部の前記縁部が、前記コイル体の内周端よりも中心側に位置しており、前記コイル体の内周端よりも内側で且つ前記凹部が形成されている部分の磁性粉末の密度が、前記凹部が形成されていない前記磁性コアの底面での前記密度よりも高く設定されている請求項1記載のインダクタンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142554(P2012−142554A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217879(P2011−217879)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(310014322)アルプス・グリーンデバイス株式会社 (47)
【Fターム(参考)】