説明

インダクタンス負荷制御装置

【課題】 電流のリプルを小さくすることが可能なスイッチングシーケンスを採用して、インダクタンス負荷に流れる電流を連続的かつ精度よく検出することができるインダクタンス負荷制御装置を提供する。
【解決手段】 Hブリッジ回路(BC)における一方のローサイドスイッチング素子(3)とグラウンド間に介在させた第1の電流検出抵抗器(Rs1) と、Hブリッジ回路(BC)における他方のローサイドスイッチング素子(4)とグラウンド間に介在させた第2の電流検出抵抗器(Rs2)と、第1、第2の電流検出抵抗器(Rs1,Rs2)の端子電圧を差動増幅する差動増幅手段(7-1)とを備える。差動増幅手段(7-1)は、ゲインを自動調整して、Hブリッジ回路(BC)における対角の各スイッチング素子(2,3)をオンさせた場合の駆動電流と差動増幅手段(7-1)の出力との対応関係を、Hブリッジ回路(BC)におけるローサイドのスイッチング素子(3,4) をオンさせた場合の還流電流と差動増幅手段(7-1)の出力との対応関係に一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Hブリッジ回路を用いてモータ巻線等のインダクタンス負荷を制御する装置に関し、特に、上記インダクタンス負荷に流れる電流を連続的に検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からHブリッジ回路のスイッチング素子をオンオフ制御してモータの電流を制御するモータ制御装置が実用されている。このモータ制御装置では、上記スイッチング素子をオンオフ制御するために、モータに流れる電流を検出する必要がある。そこで、従来、次のような手法によってモータ電流を検出している。
【0003】
i)モータコイルに直列接続した電流検出素子によってモータ電流を検出する。(例えば、特許文献1)
ii)Hブリッジ回路とグラウンドとの間に介在させた1つの電流検出抵抗器によってモータ電流を検出する。(例えば、特許文献2)
iii)Hブリッジ回路の一方のローサイドスイッチ素子とグラウンド間に第1の電流検出抵抗を介在させるとともに、Hブリッジ回路の他方のローサイドスイッチ素子とグラウンド間に第2の電流検出抵抗器を介在させ、これらの電流検出抵抗器の端子電圧に基づいてモータ電流を検出する。具体的には、上記各電流検出抵抗器を用いてモータの巻線に流れる駆動電流を検出し、この駆動電流を補正回路で平均化した電流を還流電流と見なすようにしている。(例えば、特許文献3)
【特許文献1】特開2006−129543号公報
【特許文献2】特開2001−25296号公報
【特許文献3】特開平10−100914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記手法i)は、電流検出素子として電源を内蔵する双方向性の高価なものを使用する必要がある。
上記手法ii)は、1つの電流検出抵抗器を用いるので、還流電流を検出することができず、このため、還流電流を流すスイッチングシーケンス、つまり、電流のリプルを小さくすることができるスイッチングシーケンスを採用することができない。
上記手法iii)では、還流電流を直接検出しないで、演算によって得るようにしている。このように、還流電流を直接的に検出しない手法では、上記補正回路等を必要とするため構成が複雑かつ高価になり、しかも、還流電流を精度良く検出することができないおそれがある。さらに、この手法iii)は、還流電流を電源側に戻すスイッチングシーケンスを併用しているので、モータ電流のリプルも大きくなる。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、高価な電流検出手段を使用する必要がなく、しかも、電流のリプルを小さくすることが可能なスイッチングシーケンスを採用して、インダクタンス負荷に流れる電流を連続的かつ精度よく検出することができるインダクタンス負荷制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、ブリッジ接続したスイッチング素子を有し、該スイッチング素子を介してインダクタンス負荷に電流を流すHブリッジ回路と、前記Hブリッジ回路における一方のローサイドスイッチング素子とグラウンド間に介在させた第1の電流検出抵抗器と、前記Hブリッジ回路における他方のローサイドスイッチング素子とグラウンド間に介在させた第2の電流検出抵抗器と、前記第1、第2の電流検出抵抗器の端子電圧に基づいて、前記インダクタンス負荷に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記インダクタンス負荷に流れる電流に基づいてPWM信号を形成するPWM信号形成手段と、前記PWM信号に基づいて、前記Hブリッジ回路における対角の各スイッチング素子を介して前記負荷に駆動電流を流す第1のモードと、前記Hブリッジ回路におけるローサイドのスイッチング素子を介して前記負荷に放電電流を流す第2のモードとを切換えるスイッチングシーケンスを実行するシーケンス制御手段と、を備え、
前記電流検出手段は、前記第1、第2の電流検出抵抗器の端子電圧を差動増幅する差動増幅手段と、前記駆動電流と前記差動増幅手段の出力との対応関係と前記放電電流と前記差動増幅手段の出力との対応関係が一致するように、前記第1のモード時における前記差動増幅手段のゲインと前記第2のモード時における前記差動増幅手段のゲインとを相違させるゲイン調整手段と、を備えている。
【0007】
前記差動増幅手段は、演算増幅器を用いた加算器としての構成を有することができる。この場合、前記ゲイン調整手段は、前記演算増幅器のゲインを規定する抵抗器の抵抗値を変化させるように構成される。
【0008】
前記ゲインを規定する抵抗器として、例えば、前記演算増幅器に接続した帰還抵抗器が適用される。この場合、前記帰還抵抗器が2つの抵抗器を含み、この2つの抵抗器の内の一方の抵抗器に対して他方の抵抗器を直列接続もしくは並列接続することによって前記帰還抵抗器の抵抗値を変化させように構成することができる。
【0009】
前記ゲインを規定する抵抗器として、例えば、前記演算増幅器に接続した入力抵抗器が適用される。この場合、前記入力抵抗器が2つの抵抗器を含み、この2つの抵抗器の内の一方の抵抗器に対して他方の抵抗器を直列接続もしくは並列接続することによって前記入力抵抗器の抵抗値を変化させように構成することができる。
【0010】
前記第1、第2の電流検出抵抗器には、同じ抵抗値を持たすことができる。また、前記差動増幅手段の出力のサージを抑制するために、前記帰還抵抗器にフィルタとしての機能を有するキャパシタを並列接続してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高価な電流検出手段を使用する必要がなく、しかも、電流のリプルを小さくすることが可能なスイッチングシーケンスを採用して、モータの巻線等のインダクタンス負荷に流れる電流を連続的かつ精度よく検出することができる。したがって、電流のリプルが小さくて、しかも、コストの低減と構成の簡単化を図ることが可能な実用性の高いインダクタンス負荷制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置を示すブロック図である。
このインダクタンス負荷制御装置は、インダクタンス負荷であるモータ(例えば、ステッピングモータ)の巻線Lに駆動電流を流すためのH型ブリッジ回路BCを備えている。
H型ブリッジ回路BCは、電源の正極と負極(グラウンド)間に直列接続されたスイッチング素子1,3および上記正極と負極間に直列接続されたスイッチング素子2,4を備え、スイッチング素子1,3の共通接続点およびスイッチング素子2,4の共通接続点に上記巻線Lの一端および他端がそれぞれ接続されている。
なお、スイッチング素子1〜4には、電界効果トランジスタ等が使用される。また、スイッチング素子1〜4には、図示していないフリーホイールダイオードがそれぞれ並列接続されている。
【0013】
このモータ駆動装置は、更に、H型ブリッジ回路BCのローサイドのスイッチング素子3および4とグラウンドとの間にそれぞれ介在させた電流検出用抵抗器Rs1およびRs2と、スイッチング素子1,3にオンオフ信号を出力する駆動回路5と、スイッチング素子2,4にオンオフ信号を出力する駆動回路6と、上記電流検出用抵抗器Rs1,Rs2に接続された差動増幅部7−1と、該差動増幅部7−1の出力に接続された電流制御部8と、該電流制御部8の出力に接続され、所定のスイッチングシーケンスに従ったオンオフ制御信号を駆動回路5,6に出力する制御信号生成部9とを備えている。
【0014】
上記差動増幅部7−1は、演算増幅器11を用いた加算器としての構成を有し、上記電流検出用抵抗器Rs1,Rs2に生じる電圧に基づいてモータ電流に対応する電圧を発生する手段、つまり、電流検出手段として設けられている。上記演算増幅器11は、その反転入力が入力抵抗器R1を介して電流検出用抵抗器Rs1の非グラウンド側端に接続され、その非反転入力が入力抵抗器R2を介して電流検出用抵抗器Rs2の非グラウンド側端に接続されている。また、演算増幅器11は、その反転入力と出力間に、直列接続された帰還抵抗器R3,R4およびフィルタ用キャパシタCp1が介在され、その非反転入力とグラウンド間に、直列接続された帰還抵抗器R5,R6およびフィルタ用キャパシタCp2が介在されている。そして、帰還抵抗器R4およびR6には、それぞれゲイン切換用のアナログスイッチSw1およびSw2が並列接続されている。
なお、本実施形態では、電流検出用抵抗器Rs1,Rs2として抵抗値が等しいものを使用し、また、上記入力抵抗器R1およびR2の抵抗値r1およびr2をr1=r2に設定するともに、上記帰還抵抗器R3,R4,R5およびR6の抵抗値r3,r4,r5およびr6をr3=r4=r5=r6に設定している。
【0015】
以下、本実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置の動作について説明する。
制御信号生成部9は、スイッチング素子2,3(あるいは、スイッチング素子1,4)をオンさせる「Fastモード」とスイッチング素子3,4をオンさせる「Slowモード」とを順次切換えるスイッチングシーケンスを実行する。
上記「Fastモード」では、制御信号生成部9からライン8bおよびライン8dのみにオン制御信号が出力されるので、駆動回路5,6を介してスイッチング素子2,3が同時にオンされ、その結果、図2に実線矢印で示すモータ電流(駆動電流)が流れる。
そして、上記「Slowモード」では、制御信号生成部9からライン8cおよびライン8dのみにオン制御信号が出力されるので、駆動回路5,6を介してスイッチング素子3,4が同時にオンされ、その結果、図3に実線矢印で示すモータ電流(還流電流)が流れる。このモータ電流は、「Fastモード」時に巻線Lに蓄積されたエネルギーに基づくものである。
【0016】
ところで、図3に実線矢印で示す還流電流は、スイッチング素子3、およびスイッチング素子4に並列接続された前記フリーホイールダイオードを通って流れる。したがって、上記還流電流は、スイッチング素子4をオンさせない状態でも流れることになるが、還流電流路の内部抵抗をより小さくするためは、該スイッチング素子4をオンさせることが望ましい。そこで、本実施形態では、上記「Slowモード」時に、スイッチング素子3,4の双方をオンさせるようにしている。
なお、スイッチング素子1,4をオンさせる「Fastモード」では、図2に点線矢印で示すモータ電流が流れる。そして、この場合、「Slowモード」で図3に点線矢印で示すモータ電流(還流電流)が流れることになる。
【0017】
スイッチング素子2,3をオンさせる「Fastモード」では、モータ電流(駆動電流)に対応する電圧が一方の電流検出用抵抗器Rs1の両端に発生する。そして、シーケンスが上記「Slowモード」に移行すると、モータ電流(還流電流)に対応する電圧が電流検出用抵抗器Rs1の両端および電流検出用抵抗器Rs2の両端にそれぞれ発生する。
【0018】
ここで、電流検出用抵抗器Rs1の端子電圧をV1、電流検出用抵抗器Rs2の端子電圧をV2とし、前記スイッチSw1およびSw2が共に図1に示す状態にあるとすると、つまり、演算増幅器11のゲインが固定されているとすると、該演算増幅器11の出力電圧V0は以下のように表される。
0=−[(r3+r4)/r1]×(V1−V2
したがって、V2=0である「Fastモード」での演算増幅器11の出力電圧V0は、
0=−[(r3+r4)/r1]×V1
と表され、また、V2=−V1である「slowモード」での演算増幅器11の出力電圧V0は、
0=−2×[(r3+r4)/r1]×V1
と表される。
【0019】
以上から明らかなように、演算増幅器11のゲインが固定されている場合、「Fastモード」と「slowモード」とでモータ電流と演算増幅器11の出力電圧V0との対応関係が相違することになる。つまり、本実施形態では、例えば、「Fastモード」と「slowモード」におけるモータ電流が等しいとすると、後者における演算増幅器11の出力電圧V0が前者のそれの2倍になる。換言すれば、「Slowモード」における差動増幅部7−1の電流検出レベルが「Fastモード」時におけるそれの2倍になる。
【0020】
図4の上段には、上記「Fastモード」時および「Slowモード」における演算増幅器11の出力電圧波形aが例示されている。この図4から明らかなように、「Slowモード」では、演算増幅器11の出力電圧が点線で示す正規の値の2倍の値を示している。これは、上記電流検出レベルの倍増に基づくものである。
【0021】
「Slowモード」時の差動増幅部7−1の電流検出レベルを「Fastモード」時のそれと一致させるには、「Slowモード」時の演算増幅器11のゲインを「Fastモード」時のそれの1/2に設定すればよい。
「Slowモード」では、スイッチング素子3,4をオンさせるために、制御信号生成部9が出力ライン8c、8dに論理レベル「H」の信号を出力する。差動増幅部7−1に組込まれたアンド回路14は、ライン8c、8dにその各入力が接続されているので、「Slowモード」時にアナログスイッチSw1およびSw2を同時に切換接続する。このため、「Slowモード」時においては、抵抗器R4およびR6が共に短絡されて、演算増幅器11のゲインがr3/r1、つまり、「Fastモード」時のゲインの1/2になる。
かくして、この実施形態によれば、「Slowモード」時の差動増幅部7−1の電流検出レベルと「Fastモード」時のそれとが一致し、その結果、図4の下段に示す波形bから明らかなように、「Slowモード」時に演算増幅器11が還流電流の大きさに対応する正しい電圧を出力することになる。
【0022】
なお、「Fastモード」と「Slowモード」の切換時や、スイッチSw1およびSw2による演算増幅器11のゲインの切換時には、演算増幅器11の出力にサージの影響が現れるおそれがある。図1に示すキャパシタCp1およびCp2は、このサージを抑制するためのローパスフィルタとして設けたものである。
【0023】
モータ電流に対応する差動増幅部7−1の出力は、電流制御部8の減算器12に入力される。減算器12は、電流指令(目標電流を示す電圧)と差動増幅部7−1の出力との偏差(電流偏差)を演算し、その偏差を比較器13に出力する。そこで、比較器13は、図示していない三角波発生器から与えられる三角波と上記偏差とを比較して、該偏差に対応するPWM(パルス幅変調)信号を形成する。そして、前記制御信号生成部9は、上記PWM信号に基づいて上記「Fastモード」および「Slowモード」を規定し、これらのモードに応じてH型ブリッジ回路BCのスイッチング素子1〜4を選択的にオンオフ制御する。
【0024】
上記したように、本実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置によれば、「Slowモード」時の差動増幅部7−1の電流検出レベルと「Fastモード」時のそれとを一致させることができる。したがって、「Fastモード」および「Slowモード」におけるモータ電流を連続的に検出して、該モータ電流を適正に制御することが可能なる。
【0025】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置を示している。
本実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置は、差動増幅部7−2の構成において前記第1の実施形態と相違する。
すなわち、本実施形態に係る差動増幅部7−2は、帰還抵抗器R3を演算増幅器11の反転入力と出力間に介在させた点と、該反転入力と出力間に帰還抵抗器R4とゲイン切換用スイッチSw1を直列に介在させた点と、上記非反転入力とグラウンド間に帰還抵抗器R5を介在させた点と、該非反転入力とグラウンド間に帰還抵抗器R6とゲイン切換用スイッチSw2を直列に介在させた点とにおいて図1に示す差動増幅部7−1と相違する。
【0026】
この差動増幅部7−2において、スイッチSw1、Sw2が図示の接続状態にある「Fastモード」時には、演算増幅器11のゲインがr3/r1であるが、スイッチSw1、Sw2が切換接続される「Slowモード」時には、抵抗器R3に抵抗器R4が並列接続されるとともに、抵抗器R6に抵抗器R5が並列接続されることから、演算増幅器11の帰還抵抗値が半減され、その結果、そのゲインが(r3/2)/r1、つまり、「Fastモード」時のゲインの1/2になる。
したがって、本実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置においても、「Slowモード」時の差動増幅部7−2の電流検出レベルと「Fastモード」時のそれとを一致させることができる。
【0027】
図6は、本発明の第3の実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置を示している。
本実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置は、差動増幅部7−3の構成において前記第2の実施形態と相違する。
すなわち、図6に示す差動増幅部7−3は、入力抵抗器R4をゲイン切換用スイッチSw1を介して入力抵抗器R1に並列接続した点と、入力抵抗器R6をゲイン切換用スイッチSw2を介して入力抵抗器R2に並列接続した点とにおいて図5に示す差動増幅部7−2と相違する。
【0028】
この差動増幅部7−3において、スイッチSw1、Sw2が図示の接続状態にある「Fastモード」時には、抵抗器R4が抵抗器R1に並列接続されるとともに、抵抗器R6が抵抗器R2に並列接続されるので、演算増幅器11のゲインがr3/(r1/2)であるが、スイッチSw1、Sw2が切換接続される「Slowモード」時には、演算増幅器11の入力抵抗値が倍増されるので、そのゲインがr3/r1、つまり、「Fastモード」時のゲインの1/2になる。
したがって、本実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置においても、「Slowモード」時の差動増幅部7−2の電流検出レベルと「Fastモード」時のそれとを一致させることができる。
【0029】
図7は、本発明の第4の実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置を示している。
本実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置は、差動増幅部7−4の構成において前記第3の実施形態と相違する。
すなわち、図7に示す差動増幅部7−4は、抵抗器R4を抵抗器R1に直列接続した点と、ゲイン切換用スイッチSw1を抵抗器R4に並列接続した点と、抵抗器R6を抵抗器R2に直列接続した点と、ゲイン切換用スイッチSw2を抵抗器R6に並列接続した点とにおいて図6に示す差動増幅部7−3と相違する。
【0030】
この差動増幅部7−4において、スイッチSw1、Sw2が図示の接続状態にある「Fastモード」時には、抵抗器R4およびR6が共に短絡されることから、演算増幅器11のゲインがr3/r1であるが、スイッチSw1、Sw2が切換接続される「Slowモード」時には、抵抗器R4が抵抗器R1に直列接続されるとともに、抵抗器R6が抵抗器R2に直列接続されるので、演算増幅器11の入力抵抗値が倍増され、その結果、そのゲインがr3/(2r1)、つまり、「Fastモード」時のゲインの1/2になる。
したがって、本実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置においても、「Slowモード」時の差動増幅部7−2の電流検出レベルと「Fastモード」時のそれとを一致させることができる。
【0031】
上述した各実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置は、高価な電流検出手段を使用する必要がなく、しかも、電流のリプルを小さくすることが可能なスイッチングシーケンスを採用して、モータの巻線等のインダクタンス負荷に流れる電流を連続的かつ精度よく検出することができるので実用性が高い。
【0032】
なお、上記各実施形態では、電流検出用抵抗器Rs1,Rs2として抵抗値が等しいものを使用している。しかし、本発明は、この電流検出用抵抗器Rs1,Rs2として抵抗値の異なるものを使用する場合でも実施可能である。
また、本発明は、インダクタンス負荷がモータの巻線Lではない場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置を示すブロック図である。
【図2】Fastモード時のモータ電流の流通形態を示す説明図である。
【図3】Slowモード時のモータ電流の流通形態を示す説明図である。
【図4】ゲインを固定した場合の演算増幅器の出力波形とゲインを変化した場合の演算増幅器の出力波形を示す波形図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置を示すブロック図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るインダクタンス負荷制御装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
1〜4 スイッチング素子
Rs1,Rs2 電流検出用抵抗器
L モータ巻線
5,6 駆動回路
R1〜R6 抵抗器
7−1〜7−4 差動増幅部
Cp1,Cp2 キャパシタ
Sw1,Sw2 スイッチ
8 電流制御部
9 制御信号生成部
10 電流検出方向生成部
11 演算増幅器
14 アンド回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ接続したスイッチング素子を有し、該スイッチング素子を介してインダクタンス負荷に電流を流すHブリッジ回路と、
前記Hブリッジ回路における一方のローサイドスイッチング素子とグラウンド間に介在させた第1の電流検出抵抗器と、
前記Hブリッジ回路における他方のローサイドスイッチング素子とグラウンド間に介在させた第2の電流検出抵抗器と、
前記第1、第2の電流検出抵抗器の端子電圧に基づいて、前記インダクタンス負荷に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記インダクタンス負荷に流れる電流に基づいてPWM信号を形成するPWM信号形成手段と、
前記PWM信号に基づいて、前記Hブリッジ回路における対角の各スイッチング素子を介して前記負荷に駆動電流を流す第1のモードと、前記Hブリッジ回路におけるローサイドのスイッチング素子を介して前記負荷に放電電流を流す第2のモードとを切換えるスイッチングシーケンスを実行するシーケンス制御手段と、
を備え、前記電流検出手段は、
前記第1、第2の電流検出抵抗器の端子電圧を差動増幅する差動増幅手段と、
前記駆動電流と前記差動増幅手段の出力との対応関係と前記放電電流と前記差動増幅手段の出力との対応関係が一致するように、前記第1のモード時における前記差動増幅手段のゲインと前記第2のモード時における前記差動増幅手段のゲインとを相違させるゲイン調整手段と、
を備えることを特徴とするインダクタンス負荷制御装置。
【請求項2】
前記差動増幅手段は、演算増幅器を用いた加算器としての構成を有し、前記ゲイン調整手段は、前記演算増幅器のゲインを規定する抵抗器の抵抗値を変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のインダクタンス負荷制御装置。
【請求項3】
前記ゲインを規定する抵抗器が前記演算増幅器に接続した帰還抵抗器であることを特徴とする請求項2に記載のインダクタンス負荷制御装置。
【請求項4】
前記帰還抵抗器が2つの抵抗器を含み、この2つの抵抗器の内の一方の抵抗器に対して他方の抵抗器を直列接続もしくは並列接続することによって前記帰還抵抗器の抵抗値を変化させように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のインダクタンス負荷制御装置。
【請求項5】
前記ゲインを規定する抵抗器が前記演算増幅器に接続した入力抵抗器であることを特徴とする請求項2に記載のインダクタンス負荷制御装置。
【請求項6】
前記入力抵抗器が2つの抵抗器を含み、この2つの抵抗器の内の一方の抵抗器に対して他方の抵抗器を直列接続もしくは並列接続することによって前記入力抵抗器の抵抗値を変化させように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のインダクタンス負荷制御装置。
【請求項7】
前記第1、第2の電流検出抵抗器が同じ抵抗値を有することを特徴とする請求項1に記載のインダクタンス負荷制御装置。
【請求項8】
前記差動増幅手段の出力のサージを抑制するために、前記帰還抵抗器にフィルタとしての機能を有するキャパシタを並列接続したことを特徴とする請求項3に記載のインダクタンス負荷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−220032(P2008−220032A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52961(P2007−52961)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】