説明

インダクタ部品および電子装置

【課題】インダクタ部品を含む複数の電子部品の実装面積を低減させ、高電流を流した場合に所望のインダクタンス値となる電子装置を提供する。
【解決手段】
インダクタ部品1は、板状の基体部11と、磁性材料を含んでおり基体部11の下面に設けられた脚部12と、平面透視において基体部11の中心部を囲むように、基体部11に埋設されたトロイダルコイル導体13とを含んでいる。平面透視において脚部12とトロイダルコイル導体13とが重なるように設けられている。電子装置は、インダクタ部品1と、インダクタ部品1の基体部11の下面と脚部12とによって囲まれた空間に設けられたIC素子2とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子部品モジュール等に用いられるインダクタ部品および電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話機等の電子機器分野において、インダクタおよびIC素子等の複数の電子部品が回路基板に実装された電子部品モジュールの開発が進められている。その電子部品モジュールに用いられるインダクタ部品は、例えば電源用途等において、インダクタンス値の増大化が求められており、磁性材料が用いられている。
【0003】
磁性材料が用いられたインダクタ部品は、高電流におけるインダクタンス値を高くするために、磁性体を飽和させ難くする必要があり、サイズが大きくなる傾向がある。インダクタ部品のサイズの増大化に伴う電子部品モジュールのサイズの増大化を抑えるために、IC素子上にインダクタ部品が設けられている構造が提案されている。
【0004】
インダクタ部品として、インダクタンス値を高くするために、例えばトロイダルコイルを埋設されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−153456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トロイダルコイルは、高電流を流した場合には低電流を流した場合に比べてインダクタンス値が大きく低下する。その結果、高電流を流した場合に、所望のインダクタンス値が得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、板状の基体部と、磁性材料を含んでおり前記基体部の下面に設けられた脚部と、平面透視において前記基体部の中心部を囲むように、前記基体部に埋設されたトロイダルコイル導体とを含んでいる。平面透視において前記脚部と前記トロイダルコイル導体とが重なるように設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によるインダクタ部品は、磁性材料を含んでおり基体部の下面に設けられた脚部が、平面透視において基体に埋設されたトロイダルコイル導体と重なるように設けられていることによって、トロイダルコイル導体に高電流を流した場合に所望のインダクタンス値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における電子装置の分解斜視図を示している。
【図2】図1に示された電子装置のA−Aにおける縦断面図を示している。
【図3】(a)は図1に示された電子装置の第1の層を除いた状態を示す平面透視図であり、(b)は図1に示された電子装置の第1および第2の層を除いた状態を示す平面透視図を示している。
【図4】本発明の第2の実施形態における電子装置の分解斜視図を示している。
【図5】(a)は図4に示された電子装置の第1の層を除いた状態を示す平面透視図であり、(b)は図4に示された電子装置の第1および第2の層を除いた状態を示す平面透視図を示している。
【図6】本発明の第3の実施形態における電子装置の分解斜視図を示している。
【図7】(a)は図6に示された電子装置の第1の層を除いた状態を示す平面透視図であり、(b)は図6に示された電子装置の第1および第2の層を除いた状態を示す平面透視図を示している。。
【図8】第1〜第3の実施形態における電子装置の他の例1を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1〜図3に示されているように、第1の実施形態における電子装置は、インダクタ部品1と、インダクタ部品1の下方に設けられたIC素子2とを含んでいる。インダクタ部品1およびIC素子2は、例えば電子部品モジュールを構成する回路基板3上に実装される。
【0012】
インダクタ部品1は、板状の基体部11と、基体部11の下面に設けられた脚部12と、基体部11に埋設されたトロイダルコイル導体13とを含んでいる。図3において、脚部12、トロイダルコイル導体13およびIC素子2は、基体部11を透視した状態で破線によって示されており、トロイダルコイル導体13は、ドット模様によって塗りつぶされている。
【0013】
基体部11および脚部12は、磁性材料を含んでおり、焼成によって一体的に形成されている。基体部11および脚部12によって、磁性材料構造体が構成されている。例示的な基体11および脚部12は、99質量%以上のフェライトおよび1質量%未満のガラスから成り、フェライトは、高い透磁率を得るという観点において、ZnFe,MnFe,FeFe,CoFe,NiFe,BaFe,SrFeおよ
びCuFeのうちの少なくとも1種類であることが好ましい。
【0014】
基体部11は、板形状を有しており、互いに積層された第1の層111〜第3の層113を含んでいる。図2において、第1の層111〜第3の層113の界面は、仮想の二点鎖線によって示されている。第2の層112は、第1の層111の上に積層されており、第3の層113は、第2
の層112の上に積層されている。
【0015】
脚部12は、平面透視においてトロイダルコイル導体13と重なるように設けられている。本実施形態において、平面透視とは図1および図2に示すB方向から見たときの視点である。脚部12が“トロイダルコイル導体13と重なるように設けられている”とは、単にトロイダルコイル導体13の基体部11の側面への引出しパターンの直下に設けられていることではなく、トロイダルコイル導体13の平面透視において基体部11の中心部を囲んでいる部分の少なくとも一部分の直下に設けられていることをいう。脚部12は、枠形状を有しており、IC素子2が配置された空間を含んでいる。
【0016】
トロイダルコイル導体13は、平面透視において基体部11の中心部を囲むような形状を有しており、基体部11に埋設されている。例えば、トロイダルコイル導体13は、例えば導体を円環状の仮想線の周りに螺旋状に巻いた形状を有している。平面透視において、トロイダルコイル導体13は、脚部12の幅方向12wにおける形成領域内に含まれている。トロイダルコイル導体13は、平面視において複数の直線部分を有しており、脚部12が直線部分の少なくとも一部と重なるように位置している。トロイダルコイル導体13は、第1の層111の
上面に形成された第1のコイルパターン131と第2の層112の上面に形成された第2のコイ
ルパターン132とを含んでいる。第1のコイルパターン131および第2のコイルパターン132は、基体部11の第2の層112に設けられたビア導体によって電気的に接続されている。
【0017】
IC素子2は、インダクタ部品1の基体部11の下面と脚部12とによって囲まれた空間14に設けられている。IC素子2は、例えばDC−DCコンバータにおける制御用IC素子である。IC素子2とインダクタ部品1のトロイダルコイル導体13とは電気的に接続される。
【0018】
以下、磁性材料としてフェライトを含むインダクタ部品1の製造方法について説明する。インダクタ部品1の製造方法は、フェライトを含むスラリーを得る工程と、スラリーを用いてフェライトグリーンシートを得る工程と、コイルパターンを含む積層体を得る工程と、積層体を焼成する工程とを含んでいる。
【0019】
スラリーは、フェライト粉末に適当な有機バインダ、可塑剤および有機溶剤等が混合されて得られる。フェライト粉末は、フェライトグリーンシートの焼結状態において均一化を図るために、仮焼が施されており、粒径の均一化が図られており、球形状に近い形状を有するものがよい。フェライト粉末に部分的に小さい粒径の粒子が含まれている場合、その小さい粒径の粒子の部分のみ結晶粒の成長が低下し、焼結後に得られるフェライト層の透磁率が安定しにくい傾向がある。
【0020】
フェライトグリーンシートは、スラリーを用いて、ドクターブレード法、圧延法およびカレンダーロール法等によって製造される。積層体は、一部のフェライトグリーンシートにコイルパターンが形成されている複数のフェライトグリーンシートを含んでいる。コイルパターンは、銅(Cu),銀(Ag),金(Au)または銀合金等の金属粉末に適用な有機バインダおよび溶剤が混練された導体ペーストを、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法等によってフェライトグリーンシートの表面に塗布することによって形成される。
【0021】
本実施形態におけるインダクタ部品1は、磁性材料を含んでおり基体部11の下面に設けられた脚部12を含んでおり、脚部12は、平面透視において基体部11に埋設されたトロイダルコイル導体13の少なくとも一部と重なるように設けられていることによって、例えば基体部11の下面と脚部12とによって囲まれた空間14にIC素子2を設けてインダクタ部品1を含む複数の電子部品の実装面積を低減させることができる。
【0022】
本実施形態におけるインダクタ部品1において、トロイダルコイル導体13の周囲に形成される磁束線は、脚部12に入り込むように分布している。したがって、トロイダルコイル導体13に高電流を流した場合に、基体部11の第1のコイルパターン131と第2のコイルパ
ターン132とビア導体とで囲まれた領域に生じる磁束の量が低減される。
磁束の量が低減されると、磁束が飽和状態となる電流値を高くできるので、インダクタ部品1は、トロイダルコイル導体13に高電流を流した場合に所望のインダクタンス値得ることができる。
【0023】
本実施形態のインダクタ部品1は、トロイダルコイル導体13が、平面透視において脚部12の幅方向12wにおける形成領域内に含まれている場合、トロイダルコイル導体13の周囲に発生する磁束線が脚部12内に入り易くなり、トロイダルコイル導体13に高電流値を流した場合にインダクタ部品1のインダクタンス値が得ることができる。
【0024】
本実施形態のインダクタ部品1において、トロイダルコイル導体13が、平面視で直線部分を含む形状を有しており、脚部12が、平面視において直線部分の少なくとも一部と重なるように位置している場合、直線部分は比較的均一な磁場を発生し易いため、インダクタ部品1のインダクタンス値をさらに向上できる。
【0025】
本実施形態における電子装置は、上述のインダクタ部品1と、インダクタ部品1の基体部11の下面と脚部12とによって囲まれた空間14に設けられたIC素子2とを含んでいることによって、インダクタ部品1およびIC素子2を含む電子装置の実装面積を低減させ、かつインダクタ部品1の高電流におけるインダクタンス値を向上させることができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図4および図5を参照して、本発明の第2の実施形態における電子装置について説明する。本実施形態の電子装置において、第1の実施形態における電子装置と異なる構成は、第1の実施形態における枠形状の脚部12に代えて直線状の複数の脚部22aおよび22bを有することである。その他の構成は、第1の実施形態における電子装置と同様である。
【0027】
複数の脚部22aおよび22bは、下面視において矩形状の基体部11の一対の辺に沿って配置されている。IC素子2は、複数の脚部22aおよび22bによって挟まれた空間に設けられている。
【0028】
本実施形態におけるインダクタ部品1は、磁性材料を含んでおり基体部11の下面に設けられた複数の脚部22aおよび22bを含んでおり、複数の脚部22aおよび22bは、基体部11に埋設されたトロイダルコイル導体13の少なくとも一部と重なるように設けられていることによって、例えば基体部11の下面と脚部22aおよび22bとによって囲まれた空間にIC素子2を設けてインダクタ部品1を含む複数の電子部品の実装面積を低減させ、かつインダクタ部品1の特性を向上させてインダクタ部品1を含む電子装置の低背化を図ることができる。
【0029】
本実施形態のインダクタ部品1において、トロイダルコイル導体13の形成領域が、平面透視において、複数の脚部22aおよび22bの幅方向22wにおける形成領域内に含まれている場合、トロイダルコイル導体13の周囲に発生する磁束線が複数の脚部22aおよび22b内に入り易くなり、トロイダルコイル導体13に高電流値を流した場合でも、インダクタ部品1のインダクタンス値を向上できる。
【0030】
本実施形態のインダクタ部品1において、トロイダルコイル導体13が、平面視において直線部分を含む形状を有しており、複数の脚部22aおよび22bが、直線部分の直下に位置している場合、インダクタ部品1のインダクタンス値をさらに向上できる。
【0031】
本実施形態のインダクタ部品1において、直線状の複数の脚部22aおよび22bが基体部11の下面における一対の辺に沿って設けられていることによって、例えばIC素子2の実装領域以外に他の電子部品を実装する等、基体部11の下面を有効に利用することができる。
【0032】
本実施形態における電子装置は、上述のインダクタ部品1と、インダクタ部品1の基体部11の下面と複数の脚部22aおよび22bとによって囲まれた空間に設けられたIC素子2とを含んでいることによって、インダクタ部品1およびIC素子2を含む電子装置の実装面積を低減させ、かつインダクタ部品1の高電流におけるインダクタンス値を向上できる。
【0033】
本実施形態の電子装置において、IC素子2が複数の脚部22aおよび22bによって挟まれた空間に設けられていることによって、IC素子2によって発生された熱が複数の脚部22aおよび22bの間から放散され、電子装置の放熱性が向上されている。
【0034】
(第3の実施形態)
図6および図7を参照して、本発明の第3の実施形態における電子装置について説明する。本実施形態の電子装置において、第1の実施形態における電子装置と異なる構成は、第1の実施形態における枠形状の脚部12に代えて柱状の複数の脚部32a〜32dを有することである。その他の構成は、第1の実施形態における電子装置と同様である。
【0035】
複数の脚部32a〜32dは、下面視において矩形状の基体部11の4つの角部分に配置されている。IC素子2は、複数の脚部32a〜32dによって囲まれた空間に設けられている。
【0036】
本実施形態におけるインダクタ部品1は、磁性材料を含んでおり基体部11の下面に設けられた複数の脚部32a〜32dを含んでおり、複数の脚部32a〜32dは、基体部11に埋設されたトロイダルコイル導体13の少なくとも一部と重なるように設けられていることによって、例えば基体部11の下面と複数の脚部32a〜32dとによって囲まれた空間にIC素子2を設けてインダクタ部品1を含む複数の電子部品の実装面積を低減させ、かつ高電流を流した場合にインダクタンス値を向上できるインダクタ部品1を含む電子装置の低背化を図ることができる。
【0037】
本実施形態のインダクタ部品1において、トロイダルコイル導体13の形成領域が、平面透視において、複数の脚部32a〜32dの幅方向22wにおける形成領域内に含まれている場合、トロイダルコイル導体13の周囲に発生する磁束線が複数の脚部32a〜32d内に入り易くなり、トロイダルコイル導体13に高電流を流した場合のインダクタ部品1のインダクタンス値を向上できる。
【0038】
本実施形態のインダクタ部品1において、平面視でトロイダルコイル導体13の中心から遠い第1および第2のコイルパターンにおける特性が向上されており、トロイダルコイル導体13の直線部分における特性の差が低減されている。
【0039】
本実施形態のインダクタ部品1において、柱状の複数の脚部32a〜32dが基体部11の下面における角部分に設けられていることによって、例えばIC素子2の実装領域以外に他の電子部品を実装する等、基体部11の下面を有効に利用することができる。
【0040】
本実施形態における電子装置は、上述のインダクタ部品1と、インダクタ部品1の基体部11の下面と複数の脚部32a〜32dとによって囲まれた空間に設けられたIC素子2とを含んでいることによって、インダクタ部品1およびIC素子2を含む電子装置の実装面積を低減させ、かつインダクタ部品1の高電流におけるインダクタンス値を向上できる。
【0041】
本実施形態の電子装置において、IC素子2が複数の脚部32a〜32dによって囲まれた空間に設けられていることによって、IC素子2によって発生された熱が複数の脚部32a〜32dの間から放散され、電子装置の放熱性が向上されている。
【0042】
(第1〜第3の実施形態の他の例1)
図8を参照して、第1〜第3の実施形態の他の例1を第1の実施形態の変形例として説明する。この他の例1は、第2および第3の実施形態にも適用され得る。他の例1の電子装置において、脚部12は、段差部121を有している。IC素子2は、基体部11の下面に接
合されて、脚部12の段差部121に形成された導体パッドにボンディングワイヤによって電
気的に接続されている。
【0043】
(第1〜第3の実施形態の他の例2)
第1〜第3の実施形態の他の例2を第1の実施形態の変形例として説明する。この他の例2は、第2および第3の実施形態にも適用され得る。他の例2の電子装置において、基体部11の第1の層111〜第3の層113は、部分的に異なる透磁率を有している。具体的には
、複数のコイルパターン131および132間の第2の層112の透磁率が、第2の層112を挟んでいる第1の層111および第3の層113の透磁率よりも低い。上下方向に位置する複数のコイルパターン131および132間では磁束の方向が同じであり強め合うため、第2の層112の透
磁率を低くすることで、磁束の強め合う力を弱めることができる。その結果、高電流を流した場合のインダクタンス値をさらに向上できる。
【符号の説明】
【0044】
1 インダクタ部品
11 基体部
111〜113 第1〜第3の層
12 脚部
121 段差部
13 トロイダルコイル導体
131、132 第1および第2のコイルパターン
14 空間
2 IC素子
3 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基体部と、
磁性材料を含んでおり前記基体部の下面に設けられた脚部と、
平面透視において前記基体部の中心部を囲むように、前記基体部に埋設されたトロイダルコイル導体とを備えており、
平面透視において前記脚部と前記トロイダルコイル導体とが重なるように設けられていることを特徴とするインダクタ部品。
【請求項2】
請求項1に記載されたインダクタ部品と、
該インダクタ部品の前記基体部の下面と前記脚部とによって囲まれた空間に設けられたIC素子とを備えたことを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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