説明

イントロデューサー組立体

【課題】イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化したイントロデューサー組立体であって、止血弁の止血性能を長期にわたって維持することができ、さらに、ダイレーターチューブの本来の機能に支障を来たすことがないようにする。
【解決手段】イントロデューサー組立体は、ダイレーターチューブ650を止血弁640の挿通部641に挿通し、イントロデューサーシース611とダイレーター613とを予め一体化してある。止血弁とキャップ612との間に配置した変形部材690は、キャップをシースハブ630に向けて移動させると、止血弁をシースハブ630のテーパー部634の先端側へ移動させて、挿通部が閉塞状態となる方向の圧縮力を止血弁に付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イントロデューサー組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年医療において、カテーテルと呼ばれる細長い中空管状の医療器具を用いて様々な形態の治療や検査が行われている。このような治療方法としては、カテーテルの長尺性を利用して直接患部に薬剤を投与する方法、加圧によって拡張するバルーンを先端に取り付けたカテーテルを用いて体腔内の狭窄部を押し広げて開く方法、先端部にカッターが取り付けられたカテーテルを用いて患部を削り取って開く方法、逆にカテーテルを用いて動脈瘤や出血箇所あるいは栄養血管に詰め物をして閉じる方法などがある。また、体腔内の狭窄部を開口した状態に維持するために、側面が網目状になっている管形状をしたステントをカテーテルを用いて体腔内に埋め込んで留置する治療方法などがある。さらに、体内の体にとって過剰となった液体を吸引することなどがある。
【0003】
カテーテルを用いて治療・検査などを行う場合には、一般的に、カテーテルイントロデューサーを使用して、腕または脚に形成された穿刺部位にイントロデューサーシースを導入し、イントロデューサーシースの内腔を介してカテーテル等を経皮的に血管等の病変部に挿入している。
【0004】
特許文献1には、イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化しておき、治療・検査などを行う現場において両者を組み付ける作業の煩雑さを低減するようにしたイントロデューサー組立体が開示されている。イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化すると、イントロデューサーシースに備えられた止血弁にダイレーターチューブを挿通した状態が、使用されるまで継続されることになる。この場合、ダイレーターチューブの挿通にともなう圧縮力が長期にわたって止血弁に作用する。このため、経年変化によって、止血弁にいわゆる「へたり」が生じ、ダイレーターチューブを抜き取ったときに、止血弁が十分な止血性能を発揮しない虞がある。そこで、特許文献1のイントロデューサー組立体にあっては、ダイレーターチューブの長手方向のうち、止血弁に接触したままとなる部位における外径を、他の部位における外径よりも小径に形成してある。これによって、止血弁に長期にわたって作用する圧縮力を低減し、ダイレーターチューブを抜き取ったときの止血性能の低下を抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−168532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ダイレーターチューブの長手方向の一部分を縮径すると、ダイレーターチューブに作用する応力が、径が変化する部位に集中してしまってダイレーターチューブが折れ易くなる。このため、ダイレーターチューブの本来の機能である、シースチューブの芯材としての機能を十分に発揮することができなくなる。
【0007】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化したイントロデューサー組立体であって、止血弁の止血性能を長期にわたって維持することができ、さらに、ダイレーターチューブの本来の機能に支障を来たすことがないイントロデューサー組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のイントロデューサー組立体は、シースチューブ、前記シースチューブの先端側へ向けて先細るテーパー部が形成され前記シースチューブの基端側に取り付けられるシースハブ、および前記シースハブの前記テーパー部に保持されカテーテルを挿通するための挿通部が設けられた止血弁を備えるイントロデューサーシースと、
ダイレーターチューブ、および前記ダイレーターチューブの基端側に取り付けられるダイレーターハブを備えるダイレーターと、
前記ダイレーターチューブが挿通される貫通孔を備え、前記シースハブと前記ダイレーターハブとの間に配置され、前記シースハブに対して離間した第1の位置から前記シースハブに対して係止される第2の位置まで移動自在なキャップと、
前記シースハブおよび前記キャップに設けられ、前記キャップを前記シースハブに対して係止して前記キャップを前記第2の位置に保持する係止部材と、
前記止血弁と前記キャップとの間に配置され、前記キャップを前記第2の位置に移動させることによって、前記止血弁を前記テーパー部の先端側へ移動させて、前記挿通部が閉塞状態となる方向の圧縮力を前記止血弁に付与する変形部材と、を有している。そして、前記ダイレーターチューブを前記キャップの前記貫通孔および前記止血弁の前記挿通部に挿通し、前記キャップを前記第1の位置に保持した状態において、前記イントロデューサーシースと前記ダイレーターとを予め一体化させてある。
【発明の効果】
【0009】
キャップを第2の位置に移動させると、変形部材が止血弁をテーパー部の先端側へ移動させ、挿通部が閉塞状態となる方向の圧縮力を止血弁に付与するため、使用前は止血弁を開放状態としておきダイレーターチューブを挿通していても止血弁への負担が少なく、使用時にはダイレーターチューブを抜き取った後にも、止血弁が十分な止血性能を発揮する。しかも、ダイレーターチューブの長手方向の一部分を縮径する必要がないので、ダイレーターチューブの本来の機能である、シースチューブの芯材としての機能も十分に発揮される。したがって、本発明によれば、イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化したイントロデューサー組立体であって、止血弁の止血性能を長期にわたって維持することができ、さらに、ダイレーターチューブの本来の機能に支障を来たすことがないイントロデューサー組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(A)は、本発明の実施形態に係るイントロデューサー組立体を示す図であって、包装フィルム内にパッケージ化した状態を示す図、図1(B)は、図1(A)の破線部1Bで示す部分の拡大断面図である。
【図2】イントロデューサー組立体のイントロデューサーシース、キャップ、およびダイレーターを分解して示す平面図である。
【図3】図3(A)は、止血弁を示す斜視図、図3(B)は、止血弁を示す正面図、図3(C)は、図3(B)の3C−3C線に沿う断面図、図3(D)は、止血弁を示す背面図である。
【図4】イントロデューサー組立体の作用の説明に供する概略断面図であって、ダイレーターハブをキャップに仮止めする前のキャップ−シースハブ組立体を示す概略断面図である。
【図5】イントロデューサー組立体の作用の説明に供する概略断面図であって、キャップをシースハブに対して離間した第1の位置に保持し、ダイレーターハブをキャップに仮止めした状態を示す概略断面図である。
【図6】図5に示される状態から、キャップをシースハブに対して係止する第2の位置まで移動したときの状態を示す概略断面図である。
【図7】図6に示される状態から、ダイレーターを抜き取った後のキャップ−シースハブ組立体を示す概略断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るイントロデューサー組立体の作用の説明に供する概略断面図であって、キャップをシースハブに対して離間した第1の位置に保持し、ダイレーターハブをキャップに仮止めした状態を示す概略断面図である。
【図9】図8に示される状態から、キャップをシースハブに対して係止する第2の位置まで移動したときの状態を示す概略断面図である。
【図10】押圧部材の改変例を示す図であり、図10(A)は、押圧部材が設けられたキャップの斜視図、図10(B)は、押圧部材による止血弁の押圧を模式的に示した断面図である。
【図11】改変例に係る押圧部材の作用の説明に供するイントロデューサー組立体の概略断面図であって、キャップをシースハブに対して離間した第1の位置に保持し、ダイレーターハブをキャップに仮止めした状態を示す概略断面図である。
【図12】図11に示される状態から、キャップをシースハブに対して係止する第2の位置まで移動したときの状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
イントロデューサー組立体610は、体腔内へのアクセスルートを確保するためのデバイスである。なお、以下の説明において、デバイスの手元操作部側を「基端側」、体腔内へ挿通される側を「先端側」と称す。
【0013】
図1、図2、および図6を参照して、イントロデューサー組立体610を概説すると、イントロデューサー組立体610は、イントロデューサーシース611と、キャップ612と、ダイレーター613とを有している。本実施形態のイントロデューサー組立体610にあっては、イントロデューサーシース611とダイレーター613とを予め一体化させ、包装フィルム(包装部材に相当する)120内にパッケージ化してある。イントロデューサーシース611は、シースチューブ620、シースチューブ620の先端側へ向けて先細るテーパー部634が形成されシースチューブ620の基端側に取り付けられるシースハブ630、およびシースハブ630のテーパー部634に保持されカテーテルを挿通するための挿通部641が設けられた止血弁640を備えている。ダイレーター613は、ダイレーターチューブ650、およびダイレーターチューブ650の基端側に取り付けられるダイレーターハブ660を備えている。キャップ612は、ダイレーターチューブ650が挿通される貫通孔670を備え、シースハブ630とダイレーターハブ660との間に配置され、シースハブ630に対して離間した第1の位置S1(図5をも参照)から、シースハブ630の基端面側から押し込まれることによってシースハブ630に対して係止される第2の位置S2(図6を参照)まで移動自在である。
【0014】
イントロデューサー組立体610はさらに、係止部材680と、変形部材690と、を有している。係止部材680は、シースハブ630およびキャップ612に設けられ、キャップ612をシースハブ630に対して係止してキャップ612を第2の位置S2に保持する(図6を参照)。変形部材690は、止血弁640とキャップ612との間に配置され、キャップ612を第2の位置S2に移動させることによって、止血弁640をテーパー部634の先端側へ移動させて、挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力を止血弁640に付与する。挿通部641はダイレーターチューブ650等を通過可能であり、かつ、開閉可能である部分をいう。
【0015】
そして、イントロデューサー組立体610は、ダイレーターチューブ650をキャップ612の貫通孔670および止血弁640の挿通部641に挿通し、キャップ612を第1の位置S1に保持した状態において、イントロデューサーシース611とダイレーター613とを予め一体化させた状態で密封包装されている(図4をも参照)。以下、イントロデューサー組立体610について詳述する。
【0016】
イントロデューサーシース611は、体腔内へ留置されて、その内部に、例えばカテーテル、ガイドワイヤ、塞栓物等を挿通して、体腔内へ導入するためのものである。
【0017】
シースチューブ620は、経皮的に体腔内へ導入される。
【0018】
シースチューブ620の構成材料としては、例えばポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0019】
シースハブ630には、シースチューブ620の内部と連通するサイドポート14が形成されている。サイドポート14には、例えばポリ塩化ビニル製の可撓性を有するチューブ15の一端が液密に接続されている。チューブ15の他端は、例えば三方活栓16が装着されている。この三方活栓16のポートからチューブ15を介してイントロデューサーシース11内に生理食塩水のような液体を注入することによってプライミング処理が行われる。
【0020】
図4を参照して、シースハブ630は、シースハブ本体631と、シースハブ本体631内に形成された中心孔632と、止血弁640を保持するテーパー部634と、テーパー部634に設けられ止血弁640のテーパー部634の先端側への移動を規制する規制部材635と、シースハブ本体631の基端側の外周面に形成された第2ネジ部682と、を有している。
【0021】
テーパー部634の内径寸法は基端側から先端側にかけて先細り、テーパー部634の先端において中心孔632と同一の寸法となるように形成されている。テーパー部634は、シースハブ630の軸方向と交差する方向における断面形状が略円形に形成されており、楕円形の外形形状を有する止血弁640が嵌め込んで保持されている(図3(B)を参照)。止血弁640は、圧縮力が付与される前の状態においてはテーパー部634の基部側において保持されている。
【0022】
規制部材635は、シースハブ630に一体的に形成されており、テーパー部634の内径寸法を部分的に縮径するリング状の突起によって構成されている。本実施形態にあっては、2つの規制部材635をテーパー部634に設けている。
【0023】
シースハブ630の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0024】
図3(A)(B)(C)(D)を参照して、止血弁640は、略楕円形の膜状(円盤状)をなす弾性部材から構成されている。止血弁640の両面のうち、キャップ612に向かい合う側の端面を「表面」といい、反対側の端面を「裏面」という。止血弁640の表面は、図3(A)においては上側に示され、図3(B)においては正面に示されている。
【0025】
止血弁640の表面は、中心部が深くなる凹部642を備え、その凹部642の中心に、表面にのみ到達する第1のスリット643が形成されている。凹部642は、ダイレーターチューブ650やカテーテルを挿通するときに、ダイレーターチューブ650等の先端をガイドするガイド面となる。また、挿通するときの抵抗力を小さくする機能を発揮する。止血弁640の裏面には、裏面にのみ到達する第2のスリット644が形成されている。止血弁640の挿通部641は、第1のスリット643と第2のスリット644とを十字状に交差させるように切り込むことによって構成されている。すなわち、止血弁640の挿通部641は、該止血弁640のキャップ612に向かい合う側およびその反対側に形成されたスリット643、644の重なりにより形成されている。第1と第2のスリット643、644のそれぞれは、所定寸法の幅(例えば、約0.5mm)を持った溝状に形成されている。このため、止血弁640の挿通部641は、ダイレーターチューブ650を挿通部641に挿通する前、かつ、変形部材690によって止血弁640を移動させる前の無負荷状態において、開口した小孔645を含んでいる(図4を参照)。
【0026】
止血弁640の外形寸法は、シースハブ630のテーパー部634において止血弁640を嵌め込んで保持させることが可能な寸法で適宜設計することが可能である。止血弁640の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。
【0027】
図5を参照して、止血弁640の挿通部641は、ダイレーターチューブ650が挿通されると、ダイレーターチューブ650によって押し広げられて変形する。本実施形態の挿通部641は開口した小孔645を含んでいるので、開口した小孔を含まない構成の挿通部と比較して、ダイレーターチューブ650を挿通したときの変形量が少ない。また、凹部642も備えているので、この点からも、ダイレーターチューブ650を挿通したときの変形量が少ない。したがって、挿通部641を閉塞する方向の圧縮力の付与を解除した状態において、ダイレーターチューブ650を引き抜くと、挿通部641は弾性復元力によって図4に示す初期の形状にまで復帰することになる。
【0028】
図7に示すように、止血弁640は、変形部材690によって表面側から押圧されると、テーパー部634の内壁面に沿って移動しつつ第1のスリット643に沿って折れ曲がる。このため、少なくとも表面側においては、開口していた小孔645が閉じられ、挿通部641が閉塞状態となる。止血弁640を上記のような形状に変形させるために、略楕円形の止血弁640は、楕円の短軸Sa、長軸Laのうち、短軸Saに第1のスリット643を沿わせて形成している(図3(B)を参照)。変形した後の止血弁640の平面視が略円形状になるため、止血弁640の外周面とシースハブ630のテーパー部634の内壁面との間のクリアランスが周方向に均一なものとなり、シール性が保たれる。
【0029】
ダイレーター613は、イントロデューサーシース611を血管内に挿入するときに、シースチューブ620の折れを防いだり、皮膚の穿孔を拡径したりするために用いられる。
【0030】
ダイレーターチューブ650は、シースチューブ620内に挿通される。図1に示すように、ダイレーターチューブ650の先端部651が、シースチューブ620の先端から露出した状態となる。なお、キャップ612を押し込むまで、ダイレーターチューブ650の先端部651がシースチューブ620の先端から露出しないようにしてもよい。
【0031】
ダイレーターチューブ650は、イントロデューサーシース611とダイレーター613とを一体化させた状態においてイントロデューサーシース611に供給される流体をダイレーターチューブ650内へ流通させるための穴652を有している(図1(B)を参照)。イントロデューサーシース611とダイレーター613とを一体化させた状態においては、シースハブ630とダイレーターチューブ650との間、およびシースチューブ620とダイレーターチューブ650との間には僅かなクリアランス(隙間)が形成されている。このため、イントロデューサーシース611に供給されたプライミング処理のための生理食塩水や滅菌処理のためのEOGは、シースハブ630内を通り、ダイレーターチューブ650に形成した穴652を通ってダイレーターチューブ650内に流れ込む。したがって、イントロデューサーシース611とダイレーター613とを予め一体化しておいても、ダイレーターチューブ650内のプライミング処理や滅菌処理を支障なく実施することができる。
【0032】
ダイレーターチューブ650内へ流体を流通させるための穴652の個数については、特に制限はないが、流体の円滑な流通を促すことを可能にするために、少なくとも2個以上設けられていることが望ましい。また、寸法や形状についても特に制限はない。
【0033】
ダイレーターチューブ650の構成材料としては、例えばポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0034】
図5を参照して、ダイレーターハブ660は、ダイレーターハブ本体661と、ダイレーターハブ本体661内に形成された中心孔662と、ダイレーターハブ本体661の先端側に設けられたフランジ部663と、を有している。フランジ部663は、キャップ612よりも大径に形成されている。フランジ部663から先端側に向けて、複数個(例えば、周方向に4個程度)に分割されたアーム664が伸びている。個々のアーム664は、径方向に弾性変形自在となっている。アーム664の先端には、径方向内方に向けて突出する爪部665が形成されている。
【0035】
ダイレーターハブ660の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0036】
図4および図5を参照して、キャップ612は、略円盤形状を有している。キャップ612は、シースハブ630の基端面を覆うように取り付けられている。キャップ612の両面のうち、ダイレーターハブ660に向かい合う側の端面を「表面」といい、反対側の端面を「裏面」という。
【0037】
キャップ612は、表面に形成された傾斜面671と、傾斜面671に連続して設けられ先端側に向けてテーパー状に伸びるガイド部672と、ガイド部672の先端に形成された貫通孔670と、外周面に形成されたリング溝673と、止血弁640の外周部分を押圧してテーパー部634の先端側へ止血弁640を移動させる変形部材690と、を有している。キャップ612の外周壁の内周面には、シースハブ630に形成された第2ネジ部682と噛み合う第1ネジ部681が形成されている。傾斜面671およびガイド部672は、ダイレーターチューブ650やカテーテルを挿通するときに、ダイレーターチューブ650等の先端を貫通孔670にガイドする。リング溝673に、ダイレーターハブ660のアーム664の爪部665が係脱自在に嵌り込むことが可能になっている(図5を参照)。
【0038】
キャップ612の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0039】
図6を参照して、キャップ612を第2の位置S2に保持するための係止部材680は、キャップ612に設けた第1ネジ部681とシースハブ630に設けた第2ネジ部682と、から構成されている。第1ネジ部681と第2ネジ部682とがしっかりと強固に噛み合っている状態において、第1と第2のネジ部681、682のうち相互に噛み合っている領域におけるネジ部から係止部材680が構成されている。キャップ612をシースハブ630にねじ込むことによって、キャップ612はシースハブ630に対して係止され、第2の位置S2において保持されることになる。
【0040】
図4を参照して、イントロデューサー組立体610は、キャップ612をシースハブ630またはダイレーターハブ660に対して仮止めすることによって、キャップ612を第1の位置S1に保持する保持部材710を有することが好ましい。イントロデューサー組立体610を使用するときまで、キャップ612が第2の位置S2に移動することを防止して、止血弁640の圧縮変形を抑えて、止血弁640の止血性能を長期にわたって維持することを可能にするためである。保持部材710は、キャップ612をシースハブ630に対して仮止めするものであり、キャップ612に設けた第1ネジ部681とシースハブ630に設けた第2ネジ部682と、から構成されている。第1ネジ部681と第2ネジ部682とが緩やかに噛み合っている状態において、第1ネジ部681のうち図中下方先端部と、第2ネジ部682のうち図中上方先端部とから保持部材710が構成されている。
【0041】
変形部材690は、キャップ612における止血弁640に向かい合う側の端面に突出して設けられた押圧リングから構成されている。変形部材690としての押圧リングは、止血弁640とキャップ612との間に配置されている。キャップ612を第2の位置S2に移動させることによって、押圧リング675が止血弁640を表面側から押圧する。止血弁640は、シースハブ630のテーパー部634の内壁面に押し付けられながら移動する。これにより、挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力が止血弁640に付与される。
【0042】
図5を参照して、イントロデューサー組立体610は、ダイレーターハブ660をキャップ612に対して着脱自在に接続する接続部材720を有している。接続部材720は、キャップ612に設けたリング溝673と、ダイレーターハブ660に設けた爪部665と、から構成されている。リング溝673および爪部665は、ダイレーターハブ660を図5中の矢印Aの方向に回すことによってキャップ612を同時に回してダイレーターハブ660をシースハブ630にねじ込むことが可能に、かつ、ダイレーターハブ660を逆方向の矢印Bの方向に回すことによってダイレーターハブ660をキャップ612から外すことが可能なように形成されている。例えば、リング溝673を、ダイレーターハブ660を矢印Aの方向に回したときに爪部665と当接するストッパ面と、ダイレーターハブ660を矢印Bの方向に回したときにリング溝673から抜け出るようなガイド面とを備えるように形成すればよい。なお、アーム664の弾性を利用して、ダイレーターハブ660を軸方向に引っ張ることによって、キャップ612から外すようにしてもよい。
【0043】
接続部材720(リング溝673、爪部665)によってダイレーターハブ660をキャップ612に対して接続する力は、係止部材680(第1ネジ部681、第2ネジ部682)によってキャップ612を第2の位置S2に保持する力よりも小さく設定してある。キャップ612を第2の位置S2まで移動した後に、ダイレーター613のみを簡単に取り除くことができるようにするためである。
【0044】
次に、イントロデューサー組立体610の作用について説明する。
【0045】
図4を参照して、止血弁640に対して挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力を付与するのに先立ってシースハブ630に対してキャップ612を仮止めさせる。
【0046】
仮止めされたキャップ612およびシースハブ630に対してダイレーター613を接近移動させ、ダイレーターチューブ650をキャップ612の貫通孔670および止血弁640の挿通部641に挿通させる。
【0047】
図5を参照して、キャップ612を第1の位置S1に保持した状態において、ダイレーターチューブ650がイントロデューサーシース611内に挿入される。キャップ612は、保持部材710(第1ネジ部681、第2ネジ部682)によって、シースハブ630に対して仮止めされた状態を維持する。ダイレーターハブ660は、接続部材720(リング溝673、爪部665)によって、キャップ612に対して仮止めしている。変形部材690としての押圧リングは、止血弁640をテーパー部634の先端側へ向けて押圧しておらず、止血弁640には挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力を付与していない。
【0048】
図6を参照して、図5に示される状態から、ダイレーターハブ660を回すことによってキャップ612を同時に回してシースハブ630にねじ込み、キャップ612を第1の位置S1から第2の位置S2まで移動させる。キャップ612の移動に伴って変形部材690が止血弁640の外周縁部を押圧し、止血弁640をシースハブ630のテーパー部634の先端側へ移動させる。止血弁640は、テーパー部634の内壁面に押し付けられながら移動する。止血弁640には、変形部材690が付与する押圧力およびテーパー部634の内壁面への押し付けによる押圧力、すなわち挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力が付与される。キャップ612は、シースハブ630に対して係止されることによって、第2の位置S2において保持される。
【0049】
シースハブ630のテーパー部634に設けられた規制部材635は、止血弁640がテーパー部634の内壁面に沿って移動する際、止血弁640の裏面の外周縁部を支持する。止血弁640の表裏両面の外周縁部が変形部材690と規制部材635とによって挟持されるため、止血弁640の移動が規制される。したがって、止血弁640に圧縮力を付与した状態において、止血弁640に位置ずれが生じることを防止することができる。
【0050】
図7を参照して、図6に示される状態から、図中上向きにダイレーター613を引き抜く。接続部材720(リング溝673、爪部665)によってダイレーターハブ660をキャップ612に対して仮止めする力は、係止部材680(第1ネジ部681、第2ネジ部682)によってキャップ612を第2の位置S2に保持する力よりも小さい。したがって、キャップ612を第2の位置S2まで押し込んだ後に、ダイレーター613のみを簡単に取り除くことができる。
【0051】
変形部材690が止血弁640を押圧した状態が係止部材680によって保持されるため、止血弁640には挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力が付与されている。止血弁640の挿通部641は、変形部材690による表面側からの押圧、およびテーパー部634の内壁面への押し付けに伴う圧縮変形によって閉塞状態となる。これにより、止血弁640は、ダイレーターハブ660の基端から血液等の液体の漏出を好適に防止する。
【0052】
イントロデューサーシースを使用したカテーテルの挿入操作について以下簡単に説明する。
【0053】
まず、皮膚の所定位置に導入針などを用いて穿孔し、該穿孔よりガイドワイヤを例えば血管内に挿入する。そして、このガイドワイヤをイントロデューサーシース611の先端からその内腔に挿通させて、ガイドワイヤに沿うようにしてイントロデューサーシース611を血管内へ挿入する。この挿入のとき、ダイレーターチューブ650の先端部651が皮膚の穿孔を拡径する。これにより、イントロデューサーシース611の先端側を血管内に挿入することができる。イントロデューサーシース611を血管内に挿入した後は、ガイドワイヤおよびダイレーター613を抜き取ってイントロデューサーシース611のみを残す。これにより、イントロデューサーシース611が、体外と血管内とをつなぐ通路として機能し、このシースを通してカテーテル等の器具を血管内へ挿入できる。
【0054】
止血弁640に対して付与される圧縮力の大きさは、シースハブ630に対するキャップ612のねじ込み量、すなわちキャップ612の移動量によって調整することができる。したがって、ダイレーターチューブ650およびカテーテルを挿通する手技を行った後、より大径のダイレーターチューブおよびカテーテルを挿通させる手技を再度行うような場合は、ねじ込み量を一旦減少させ、止血弁640に付与される圧縮力を弱める操作を行えばよい。これにより、挿通部641を閉塞させる力が弱まるため、より大径のダイレーターチューブおよびカテーテルの挿通を行うことが可能になる。また、複数個設置されたそれぞれの規制部材635が止血弁640の移動量を確認するための目安として機能するため、キャップ612のねじ込み量の調整、ひいては止血弁640に付与される圧縮力の調整を多段階で行うことができる。このため、挿入するカテーテルの径に合わせた圧縮力の調整をより簡単な操作で行うことができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、キャップ612を第2の位置S2に移動させると、変形部材690が止血弁640をテーパー部634の先端側へ移動させ、挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力を止血弁640に付与するため、使用前は止血弁640を開放状態としておきダイレーターチューブ650を挿通していても止血弁640への負担が少なく、使用時にはダイレーターチューブ650を抜き取った後にも、止血弁640が十分な止血性能を発揮する。しかも、ダイレーターチューブ650の長手方向の一部分を縮径する必要がないので、ダイレーターチューブ650の本来の機能である、シースチューブ620の芯材としての機能も十分に発揮される。したがって、イントロデューサーシース611とダイレーター613とを予め一体化したイントロデューサー組立体610であって、止血弁640の止血性能を長期にわたって維持することができ、さらに、ダイレーターチューブ650の本来の機能に支障を来たすことがないイントロデューサー組立体610を提供することができる。
【0056】
イントロデューサー組立体610の出荷時に既にイントロデューサーシース611とダイレーター613とを予め一体化してあることから、治療などの手技現場において組み合わせる手間が省け、手技の短縮化を図ることができる。
【0057】
手技現場において組み合わせる作業がなくなるので、ダイレーター613の先端折れが発生したり、ダイレーター613を挿入するときの止血弁640の損傷が発生したりする虞を根本的に解消することができる。先端折れや止血弁640からの漏れがなくなるので、患者に対する低侵襲性を向上させることができる。
【0058】
イントロデューサーシース611とダイレーター613とを予め一体化させたイントロデューサー組立体610を包装フィルム120内にパッケージしてある(図1参照)。イントロデューサーシース611とダイレーター613とを別体にして1つの包装フィルム内にパッケージする場合に比較すると、イントロデューサー組立体610をセットするトレーが小さくなる。トレーが小さくなることを通して、省スペース化および省資源化を図ることができ、製造工場や病院、さらには地球に対して、エネルギーロスを最小化することができる。また、一体化させたイントロデューサー組立体610を包装フィルム120によって密封包装しているため、使用前の流通過程等においてイントロデューサー組立体610に汚染が生じることを好適に防止することができる。
【0059】
また、止血弁640の表裏両面の外周縁部を変形部材690と規制部材635とによって挟持することによって、止血弁640に位置ずれが生じることを防止することができる。イントロデューサー組立体610を使用した手技において、止血弁640の位置ずれに起因した手元の操作感覚への影響が生じることを防止することができる。
【0060】
また、ダイレーターチューブ650に形成した穴652を通して、イントロデューサーシース611に供給した生理食塩水やEOGをダイレーターチューブ650内に流通させることが可能になっているため、イントロデューサーシース611とダイレーター613とを予め一体化しておいても、ダイレーターチューブ650内のプライミング処理や滅菌処理を支障なく実施することができる。
【0061】
変形部材690がキャップ612に一体的に設けられた実施形態を示したが、変形部材は、キャップの移動に伴って止血弁をシースハブのテーパー部の先端側へ移動させる機能を少なくとも発揮し得る構成を備えていればよい。したがって、例えば、止血弁に一体的に形成された突出部などをキャップの移動に伴わせて押し込み、この押し込みによって止血弁を移動させるような構成を採用することも可能である。
【0062】
(他の実施形態)
図8および図9は、本発明の他の実施形態に係るイントロデューサー組立体810の作用の説明に供する概略断面図である。なお、図1〜図7に示される部材と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0063】
本実施形態では、止血弁640の外周側面とシースハブ630のテーパー部634との間に、シースハブ630の軸方向と交差する方向に止血弁640を押圧する押圧部材820を設けている。押圧部材820は、変形部材690によってテーパー部634の先端側へ移動されて止血弁640に対して押圧力を付与する。このような押圧部材820を有する点において上述した実施形態と相違している。以下、本実施形態について説明する。
【0064】
変形部材690は、シースハブ630のテーパー部634の先端側に伸びて形成されたアームによって構成されている。変形部材690としてのアームは、キャップ612に一体的に形成されている。
【0065】
押圧部材820は、弾性部材によって構成されている。弾性部材の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、シリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。本実施形態にあっては、弾性材料からなる公知のOリングを押圧部材820として利用している。
【0066】
本実施形態に係るイントロデューサー組立体810の作用を説明する。
【0067】
図8を参照して、キャップ612を保持部材710によってシースハブ630に対して仮止めさせ、ダイレーターハブ660を接続部材720によってキャップ612に対して仮止めさせている。押圧部材としての弾性部材820は、止血弁640の外周側面とシースハブ630のテーパー部634との間に配置されている。変形部材690は、止血弁640および弾性部材820をテーパー部634の先端側へ移動させておらず、止血弁640には、挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力が付与されていない。
【0068】
図9を参照して、図8に示される状態から、キャップ612をシースハブ630にねじ込み、キャップ612を第1の位置S1から第2の位置S2まで移動させる。キャップ612の移動に伴って変形部材690が弾性部材820を押圧して、弾性部材820および止血弁640をテーパー部634の先端側へ移動させる。弾性部材820は、テーパー部634の内壁面に沿って移動して、シースハブ630の軸方向と交差する方向に圧縮変形する。弾性部材820の圧縮変形に伴い止血弁640の外周側面に押圧力が付与される。この押圧力が、挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力として止血弁640に作用する。止血弁640の挿通部641が閉塞し、ダイレーターハブ660の基端から血液等の液体の漏出を防止することが可能になる。
【0069】
このように、止血弁640の外周側面とシースハブ630のテーパー部634との間に配置された弾性部材820を圧縮変形させて、シースハブ630の軸方向と交差する方向に止血弁640を押圧することにより、挿通部641を閉塞させるための圧縮力を止血弁640の外周側面側から主に作用させることが可能になる。止血弁640の中心軸方向に向かう圧縮力を効率的に付与することが可能になるため、挿通部641の遮蔽性を向上させることができ、その結果、止血弁640の止血機能を向上させることができる。
【0070】
実施形態にあっては、変形部材690と押圧部材820とを別体に形成された構成を示したが、例えば押圧部材が変形部材に一体的に設けられた構成を採用することも可能である。また、押圧部材をなす弾性部材の外形形状は、止血弁の外周側面に対して押圧力を付与し得る限りにおいて特に制限はなく、図示された形状以外の形状を適宜採用することが可能である。
【0071】
(押圧部材の改変例)
上述した他の実施形態にあっては、押圧部材を、止血弁640の外周側面とシースハブ630のテーパー部634との間に配置された弾性部材によって構成した場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。押圧部材は、止血弁640の外周側面とシースハブ630のテーパー部634との間に配置され、シースハブ630の軸方向と交差する方向に止血弁640を押圧することが可能な限りにおいて適宜変更することが可能である。例えば、図10〜図12に示すように、押圧部材830は、シースハブ630の軸方向と交差する方向で止血弁640を挟持するように対をなして配置された挟持部材830によって構成することができる。挟持部材830は、シースハブ630の先端側への移動に伴い止血弁640を押圧する。以下、押圧部材の改変例について説明する。
【0072】
図10(A)(B)を参照して、押圧部材としての挟持部材830は、変形部材690とともに成形によってキャップ本体674に一体的に形成されている。変形部材690にはスリット675を形成している。スリット675は、変形部材690の先端部がテーパー部634の内壁面に沿って弾性的に変形することを可能にするために設けられている。本改変例にあっては、変形部材690のうち、弾性変形可能に設けられた部分によって挟持部材830を構成している。すなわち、止血弁640をシースハブ630のテーパー部634の先端側へ移動させる変形部材690は、シースハブ630の軸方向と交差する方向に止血弁640を挟持する挟持部材830としての機能も兼ね備えている。挟持部材830は、キャップ612の貫通孔670を間に挟んで対をなす3組(6個)のものを、キャップ本体674の周方向に沿って等間隔に配置している。
【0073】
本改変例に係るイントロデューサー組立体810の作用を説明する。
【0074】
図11を参照して、キャップ612を保持部材710によってシースハブ630に対して仮止めさせ、ダイレーターハブ660を接続部材720によってキャップ612に対して仮止めさせている。押圧部材としての挟持部材830は、止血弁640の外周側面とシースハブ630のテーパー部634との間に配置されている。向かい合うように対をなして配置された挟持部材830の間に止血弁640を挟み込ませている。変形部材690は、止血弁640および挟持部材830をテーパー部634の先端側へ移動させておらず、止血弁640には、挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力が付与されていない。
【0075】
図12を参照して、図11に示される状態から、キャップ612をシースハブ630にねじ込み、キャップ612を第1の位置S1から第2の位置S2まで移動させる。挟持部材830は、変形部材690とともに移動してテーパー部634の内壁面に沿って弾性的に変形する。止血弁640は、挟持部材830によって挟持された状態でテーパー部634の先端側へ移動させられる。この際、対をなして配置された挟持部材830の間の距離が狭まり、シースハブ630の軸方向と交差する方向に止血弁640が押圧される(図10(B)を参照)。これにより、止血弁640は挿通部641が閉塞状態となる方向の圧縮力を受ける。止血弁640の挿通部641が閉塞し、ダイレーターハブ660の基端から血液等の液体の漏出を防止することが可能になる。
【0076】
このように、改変例に係る押圧部材830を利用した形態においても、挿通部641を閉塞させるための圧縮力を止血弁640の外周側面側から主に作用させることができる。止血弁640の中心軸方向に向かう圧縮力を効率的に付与することが可能になるため、挿通部641の遮蔽性を向上させることができ、その結果、止血弁640の止血機能を向上させることができる。
【0077】
押圧部材としての挟持部材の外形形状、組数、長さ等は改変例において示したものに特に制限されるものではなく、止血弁に対してシースハブの軸方向と交差する方向に押圧力を付与し得る限りにおいて適宜変更することが可能である。
【0078】
(その他の変形例)
上述した各実施形態にあっては、係止部材および保持部材として、第1、第2ネジ部からなるねじ込み式の構成を採用しているが、例えばイントロデューサーシースに対するダイレーターの相対的な移動に伴わせて両部材を接続、および分離する嵌め込み式の構成を採用することも可能である。例えば、シースハブおよびダイレーターハブに、凹状の溝や凹状の溝に係脱自在な突起等を設けることにより、簡易な構成の嵌め込み式の接続形態を実現させることができる。
【0079】
シースハブのテーパー部に設けられる規制部材の数や外形形状には、特に制限はなく、止血弁の位置ずれを防止する機能を発揮し得る限りにおいて適宜変更することが可能である。但し、実施形態において示したように、複数個の規制部材を設けることによって止血弁に付与する圧縮力を多段階で調整することが可能になるため、このような観点から規制部材は複数個設けられていることが好ましい。また、押圧部材を利用した実施形態にあっては、規制部材の設置を省略しているが、このような実施形態においても規制部材を設けることは可能である。押圧部材としての弾性部材および押圧部材としての挟持部材の移動を規制するストッパとして規制部材を活用することができ、止血弁に付与する圧縮力を多段階で調整することが可能になる。
【符号の説明】
【0080】
120 包装フィルム(包装部材)、
610 イントロデューサー組立体、
611 イントロデューサーシース、
612 キャップ、
613 ダイレーター、
620 シースチューブ、
630 シースハブ、
634 テーパー部、
635 規制部材、
640 止血弁、
641 挿通部、
645 小孔、
650 ダイレーターチューブ、
652 穴、
660 ダイレーターハブ、
670 貫通孔、
680 係止部材、
681 第1ネジ部、
682 第2ネジ部、
690 変形部材、
710 保持部材、
720 接続部材、
820 弾性部材(押圧部材)、
830 挟持部材(押圧部材)、
S1 第1の位置、
S2 第2の位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースチューブ、前記シースチューブの先端側へ向けて先細るテーパー部が形成され前記シースチューブの基端側に取り付けられるシースハブ、および前記シースハブの前記テーパー部に保持されカテーテルを挿通するための挿通部が設けられた止血弁を備えるイントロデューサーシースと、
ダイレーターチューブ、および前記ダイレーターチューブの基端側に取り付けられるダイレーターハブを備えるダイレーターと、
前記ダイレーターチューブが挿通される貫通孔を備え、前記シースハブと前記ダイレーターハブとの間に配置され、前記シースハブに対して離間した第1の位置から前記シースハブに対して係止される第2の位置まで移動自在なキャップと、
前記シースハブおよび前記キャップに設けられ、前記キャップを前記シースハブに対して係止して前記キャップを前記第2の位置に保持する係止部材と、
前記止血弁と前記キャップとの間に配置され、前記キャップを前記第2の位置に移動させることによって、前記止血弁を前記テーパー部の先端側へ移動させて、前記挿通部が閉塞状態となる方向の圧縮力を前記止血弁に付与する変形部材と、を有し、
前記ダイレーターチューブを前記キャップの前記貫通孔および前記止血弁の前記挿通部に挿通し、前記キャップを前記第1の位置に保持した状態において、前記イントロデューサーシースと前記ダイレーターとを予め一体化させてなる、イントロデューサー組立体。
【請求項2】
前記止血弁の外周側面と前記テーパー部との間に配置され、前記変形部材によって前記テーパー部の先端側へ移動されて前記シースハブの軸方向と交差する方向に前記止血弁を押圧する押圧部材を有する請求項1に記載のイントロデューサー組立体。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記テーパー部の先端側への移動に伴い前記シースハブの軸方向と交差する方向に圧縮変形して前記止血弁を押圧する弾性部材によって構成されている請求項2に記載のイントロデューサー組立体。
【請求項4】
前記押圧部材は、前記シースハブの軸方向と交差する方向で前記止血弁を挟持するように対をなして配置され前記テーパー部の先端側への移動に伴い互いに接近して前記止血弁を押圧する挟持部材によって構成されている請求項2に記載のイントロデューサー組立体
【請求項5】
前記テーパー部に設けられ、前記止血弁の前記テーパー部の先端側への移動を規制する規制部材を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のイントロデューサー組立体。
【請求項6】
前記ダイレーターチューブは、前記イントロデューサーシースと前記ダイレーターとを一体化させた状態において前記イントロデューサーシースに供給される流体を前記ダイレーターチューブ内へ流通させるための穴を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のイントロデューサー組立体。
【請求項7】
前記イントロデューサーシースと前記ダイレーターとを予め一体化させた状態の前記イントロデューサー組立体を包装する包装部材を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のイントロデューサー組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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