説明

インドロカルバゾール化合物のポリマー結合体の合成

本発明は、高製品収率で高純度の製品をもたらす合成経路によって、インドロカルバゾール化合物のポリマー結合体、特にK−252aおよびその誘導体のポリマー結合体を製造するための方法に関する。さらなる態様において、本発明は、ポリマー単位をK−252aまたはK−252a誘導体化合物に結合させる化学基が5員オキサゾリジンジオン環構造によって特徴づけられるK252aおよびその誘導体の新規のポリマー結合体に関する。これらの新規のポリマー結合体は、新規の合成経路を介して高純度および高収率で得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高製品収率で高純度の製品をもたらす合成経路によって、インドロカルバゾール化合物のポリマー結合体、特にK−252aおよびその誘導体のポリマー結合体を製造するための方法に関する。
【0002】
さらなる態様において、本発明は、ポリマー単位をK−252a化合物またはK−252a誘導体化合物に結合させる化学基が5員オキサゾリジンジオン環構造によって特徴づけられるK252aおよびその誘導体の新規のポリマー結合体に関する。これらの新規のポリマー結合体は、新規の合成経路を介して高純度および高収率で得られる。
【0003】
文献には、キナーゼ関連病状、特に、中枢および末梢神経系の神経障害、神経疾患および神経変性障害などのHMGB1関連病状の予防、緩和および治療におけるK−252aおよびその誘導体の治療能力が記載されている(例えば、PCT/EP2005/008258、Annu Rev Pharmacol Toxicol.2004;44:451−74;Neurochem Int.2001 Nov−Dec;39(5−6):459−68;Neuroport.2000 Nov 9;11(16):3453−6; Neuroscience.1998 Sep;86(2):461−72;Brains Res.1994 Jul 4;650(1):170−4)。さらに、現状技術文献では、皮膚病、特に、乾癬などの過剰ケラチノサイト増殖に関連する皮膚病の予防、緩和および治療におけるこれらのインドカルバゾール化合物の治療効果が開示されている(例えば、WO 2005/014003,Raychaudhuri et al.,J.Invest.Dermatol.122:812−819,2004)。さらに、現状技術文献において、K−252aおよびその誘導体はNGF関連疼痛に対する活性薬として有用であることが報告された(例えば、Koizumi et al.,J.Neurosci.8:715−721,1988;Doherty et al.,Neurosci.Lett.96:1−6,1989;Matsuda et al.,Neurosci.Lett.87:11−17,1988,Winston JH et al.J.Pain(2003)4:329−337)。したがって、インドロカルバゾール化合物K−252aおよびその誘導体の生物学的重要性および治療活性も文献に報告されている(例えば、Kim et al.,Biol.Pharm.Bull.21:498−505,1998,Schneider et al.,Org.Lett.7:1695−1698,2005)。
【0004】
K−252aおよびその誘導体のポリマー結合体、ならびに上記病状の予防、緩和および治療に有用な医薬組成物における活性薬としてのそれらの使用がWO2007/022999に開示されている。前記出願の開示内容は、参考として本明細書で援用される。WO2007/022999によれば、活性K−252aインドロカルバゾール誘導体化合物のポリマーへの結合、特にペグ化の目的は、薬物動態学的および毒性学的性能の向上を可能にして、様々な可能性のある応用経路におけるK−252aまたはその誘導体の最良の生物学的利用能を達成する前記活性化合物の投与形態を開発することである。
【0005】
K−252aおよびその誘導体のポリマー結合体の製造のためのWO2007/022999に記載の合成アプローチは、K−252a化合物またはその誘導体のインドロカルバゾール構造に対するポリマー部分の共有結合を含む。特に、WO2007/022999には、好適な反応条件下で、イソシアネート活性化ポリマーと、K−252aまたはその誘導体のテトラヒドロフラン部分のC3位のヒドロキシル基とを反応させることによって、ポリマー部分と活性化合物との共有結合としてカルバミド結合を得ることが開示されている。
【0006】
高純度のK−252aおよびその誘導体のポリマー結合体が医療用途に大いに必要とされるため、高収率および一定収率で得られる高純度の反応生成物をもたらす、活性インドロカルバゾール化合物のポリマー結合体の製造のための方法を提供することが本発明の目的であった。また、本発明の目的は、さらに、複雑な精製工程を排除すること、およびポリマー結合反応の効率を最大にするために目標のポリマー結合化合物の容易な精製および回収を可能にすることであった。
【0007】
意外にも、発明者らは、K−252aまたは誘導体化合物と、結合反応の出発ポリマー試薬として使用されるω−1−H−イミダゾールカルボキサミドポリマー部分とを反応させると、結合プロセスが制御されるため、生成するインドロカルバゾール−ポリマー結合体の所望のより高い収率および純度が得られることを見い出した。
【0008】
したがって、本発明は、式(I)
【化1】

[式中、
1およびR2は、同一の、または異なる残基であり、それぞれ独立して、
(a)水素、ハロゲン、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アシル、ニトロ、カルバモイル、低級アルキルアミノカルボニル、−NR56[式中、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換アラルキル、置換もしくは非置換低級アルキルアミノカルボニル、置換もしくは非置換低級アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルから選択され、またはR5およびR6は、窒素原子と一緒になって複素環基を形成する]、
(b)−CO(CH2j4[式中、jは、1〜6であり、R4は、
(i)水素、ハロゲン、−N3
(ii)−NR56[式中、R5およびR6は、上記定義の通りである]
(iii)−SR7[式中、R7は、水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換アラルキル、−(CH2aCO210(式中、aは、1または2であり、R10は、水素および置換もしくは非置換低級アルキルからなる群から選択される)および−(CH2aCO256からなる群から選択される]、
(iv)−OR8、−OCOR8[式中、R8は、水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリールから選択される]からなる群から選択される]、
(c)−CH(OH)(CH2j4[式中、jおよびR4は、上記定義の通りである]、
(d)−(CH2dCHR11CO212または−(CH2dCHR11CONR56[式中、dは、0〜5であり、R11は水素、−CONR56または−CO213[R13は、水素または置換もしくは非置換低級アルキルであり]であり、R12は、水素または置換もしくは非置換低級アルキルである]、
(e)−(CH2k14[式中、kは2〜6であり、R14は、ハロゲン、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、−COOR15、−OR15(式中、R15は水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリールまたはアシルである)、−SR7(式中、R7は上記定義の通りである)、−CONR56、−NR56(式中、R5およびR6は、上記定義の通りである)または−N3である]、
(f)−CH=CH(CH2m16[式中、mは、0〜4であり、R16は、水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、−COOR15、−OR15(式中、R15は上記定義の通りである)、−CONR56または−NR56(式中、R5およびR6は、上記定義の通りである)である]、
(g)−CH=C(CO2122[式中、式中、R12は上記定義の通りである]
(h)−C≡C(CH2n16[式中、nは0〜4であり、R16は上記定義の通りである]、
(i)−CH2OR22[式中、R22は、3つの低級アルキル基が同一であるか、もしくは異なるトリ低級アルキルシリルであるか、またはR22はR8と同じ意味を有する]、
(j)−CH(SR232および−CH2−SR7[式中、R23は、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルであり、R7は、上記定義の通りである]からなる群から選択され、
3は、水素、ハロゲン、アシル、カルバモイル、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニルまたはアミノであり、
1およびW2は、独立して、水素、ヒドロキシであり、またはW1およびW2は、一緒になって酸素を表し、
Xは、ポリマー部分である]のインドロカルバゾール化合物のポリマー結合体を製造するための方法であって、一般式(II)
【化2】

[式中、
Xは、上記定義の通りである]のω−1H−イミダゾール−カルボキサミドポリマー化合物と、一般式(III)
【化3】

[式中、
1、R2、R3、W1およびW2は、上記定義の通りであり、保護基により場合によって保護されており、Yは脱離基を表す]のインドロカルバゾール化合物とを反応させることを含み、式(I)の化合物を得るために、さらに場合によって、場合によって保護されたR1、R2、R3、W1およびW2から保護基を脱保護することを含む方法に関する。
【0009】
式(I)の結合ポリマー化合物を合成するための本発明の方法の結合反応は、有機溶媒中で塩基によって触媒される。好ましくは、塩基は強塩基である。本発明の好適な実施形態において、塩基は、アルカリ金属水素化物、第三級アミンおよび/またはアルコキシドからなる群から選択される。本発明の非常に好適な実施形態において、本発明のポリマー結合反応を触媒する塩基は、水素化ナトリウムである。しかし、ナトリウムメトキシドなどの他の塩基または、トリメチルアミンを使用することもできる。
【0010】
塩基触媒と式(III)の化合物とのモル比は、好ましくは、約1:1〜約4:1、最も好ましくは約1:1〜約1.5:1、最も好ましくは約1:1である。
【0011】
また、本発明の反応は、好ましくは無水条件の有機溶媒、すなわち乾燥有機溶媒中で実施される。好ましくは、結合プロセスの溶液混合物における水分含有量は、200ppm以下である。有機溶媒をジクロロメタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミドの群から選択することができる。本発明の非常に好適な実施形態において、有機溶媒は、ジクロロメタン、さらにより好ましくは無水ジクロロメタンである。
【0012】
本発明によれば、結合反応を、窒素またはアルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気下で実施することはさらに好適である。
【0013】
さらに、本発明の方法の反応は、好ましくは、0℃の初期工程後に、約−10℃〜約60℃、より好ましくは約0℃〜約25℃、最も好ましくは室温で実施される。
【0014】
本発明の方法による式(I)の目標化合物の製造に続いて、式(I)のポリマー結合体を反応混合物から分離および精製することができる。本発明の好適な実施形態によれば、式(I)の化合物は、フラッシュクロマトグラフィーによる粗製混合物の精製によって得られる。好ましくは、自動化勾配フラッシュ精製システム(automated gradient flash purification system)が使用され、好適なカラムおよび溶媒を備える。精製方法は、好ましくは、逆相カラムおよび直接相カラムから選択され、調整/溶離溶媒は、好ましくは、ジクロロメタン、水、メタノール、アセトニトリル、異なる混合比のギ酸アンモニウム緩衝液から選択される。本発明の非常に好適な実施形態において、式(I)のインドロカルバゾール−ポリマー化合物は、C18カートリッジを備えた逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製され、精製は、(実施例3に報告される)アセトニトリル/5mMギ酸アンモニウム緩衝剤(pH3.5)40:60を用いるアイソクラティック溶離によって実施される。本発明のさらなる好適な実施形態において、式(I)のインドロカルバゾール−ポリマー化合物は、(実施例4および5.3に記載される)順相フラッシュクロマトグラフィーによって精製される。
【0015】
次いで、生成物を例えば硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾別することができ、溶媒を25℃にて減圧下で蒸発により除去する。目標生成物の精製は、当業者に既知の一般的な技法によって実施される。
【0016】
精製工程後、式(I)の生成ポリマー化合物は、少なくとも約95%の純度を有する。より好ましくは、精製工程後、式(I)の化合物は、少なくとも約98%の純度を有する。さらにより好適な実施形態において、生成ポリマー化合物は、98.5%、99%、またはさらに99.5%の純度を有する。
【0017】
さらに、本発明の方法は、式(III)の反応化合物の質量に基づいて、全質量収率の約40質量%〜約98質量%、好ましくは約50質量%〜約95質量%の式(I)の化合物をもたらす。
【0018】
式(III)の残基Yは、脱離基、すなわち、ポリマー部分をK−252aまたはその誘導体化合物のインドロカルバゾール構造に共有結合させる式(I)の化合物のオキサゾリジンジオン環を得るために、本発明のポリマー結合の反応条件下で式(III)の化合物の構造から脱離される基である。本発明によれば、式(I)の化合物を得るために、一般式(II)の化合物のイミダゾール環もポリマー反応部分から結合反応時に脱離される。
【0019】
本発明の好適な実施形態において、式(III)の脱離基Yは、トリフレート、トシレート、メシレート、スルフェート、ハロゲン、ヒドロキシまたは低級アルコキシ基を含む群から選択される。特に好適な実施形態において、式(III)の脱離基Yは、低級アルコキシ基またはヒドロキシ基である。最も好ましくは、脱離基Yは、低級アルコキシ基、特にメトキシ基である。
【0020】
本発明の方法によりインドロカルバゾール化合物に共有結合され、例えば、一般式(I)および(II)においてXによって表されるポリマー部分は、生体適合性でなければならず、天然または半合成もしくは合成起源であり、直鎖状または分枝状構造を有することができる。好ましくは、本発明におけるポリマーXは、ポリ(アルキレンオキシド)、特に(ポリエチレン)オキシドから選択される。しかし、さらなる例示的なポリマーとしては、限定することなく、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリアクリルアミドまたはそのN−アルキル誘導体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリエチルアクリル酸、ポリエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリコール酸、ポリアクチン酸、ポリ(乳酸−共−グリコール)酸、デキストラン、キトサン、ポリアミノ酸、ヒドロキシエチルデンプンが挙げられる。
【0021】
本発明の方法に共有するため、特に本発明の方法の式(II)の反応ポリマーに官能化されるために、上記ポリマー部分は、アミノ官能性末端基を保持するか、またはアミノ官能性末端基を保持するように官能化されるべきである。したがって、ポリマー部分は、一般式X−NH2のアミノ活性化ポリマーであるべきである。
【0022】
実際、式(II)の出発ポリマー反応物質は、ポリマー部分のアミノ基と1,1−カルボニルジイミダゾール化合物とを反応させて、一般式(II)のω−1H−イミダゾール−カルボキサミドポリマー化合物を得ることによって得られる。
【0023】
式(II)のω−1H−イミダゾール−カルボキサミドポリマー化合物の形成は、好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で実施される。非常に好適な実施形態において、有機溶媒は、ジクロロメタン、さらにより好ましくは無水ジクロロメタンである。
【0024】
本発明によれば、ω−アミノポリマーを窒素またはアルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気下で実施することがさらに好適である。
【0025】
さらに、本発明のω−1Hイミダゾールカルボキサミドポリマー化合物の形成の反応は、好ましくは、約10℃〜約60℃、より好ましくは約15℃〜約25℃、最も好ましくは室温で実施される。
【0026】
本発明の非常に好適な実施形態において、ポリマー部分Xは、末端OH基を例えばC1〜C5アルキルまたはC1〜C5アシル基、好ましくはC1−、C2−もしくはC3−アルキル基またはC1−、C2−もしくはC3基で場合によって変性することができるポリエチレングリコール(PEG)部分である。好ましくは、変性ポリエチレングリコールは、末端がアルコキシ置換されたポリエチレングリコール、より好ましくはメトキシ−ポリエチレン−グリコール(mPEG)である。
【0027】
本発明に従って使用されるポリマーは、約100〜約100000Da、好ましくは約200〜約50000Da、より好ましくは約500〜約10000Daの範囲の分子量を有する。本発明の1つの好適な態様によれば、ポリマーは、分子量が約200〜約1500Da、好ましくは約400〜約1200Da、さらにより好ましくは約550〜約1100の範囲である短鎖ポリ(エチレングリコール)、好ましくはメトキシ置換ポリ(エチレングリコール)などの末端がアルコキシ置換されたPEGである。最も好適な実施形態において、短鎖PEGはまたはmPEGは、約550Daまたは約1100Daの平均分子量を有する。本発明の第2の好適な態様によれば、ポリマーは、分子量が約4000〜約6000Da、好ましくは約4500〜約5500Daの範囲である長鎖ポリ(エチレングリコール)、好ましくはメトキシ置換ポリ(エチレングリコール)などの末端がアルコキシ置換されたPEGである。本発明のこの態様の最も好適な実施形態において、長鎖PEGまたはmPEGは、約2000Daまたは約5000Daの平均分子量を有する。
【0028】
本発明のポリマー部分の分子量の値および範囲を定めるために以上に使用されている「約」という用語は、指定値および/または範囲の限界が±20%以内、好ましくは±10%以内で変動し得ることを指す。
【0029】
本出願に使用されているように、そうでないことが本明細書に明示される場合を除いて、以下の用語の各々は、以下に記載の意味を有するものとする。
【0030】
「低級アルキル」という用語は、単独で、または他の基と組み合わせて使用される場合は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個または1〜2個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状低級アルキル基を指す。これらの基は、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、アミル、イソアミル、ネオペンチル、1−エチルプロピルおよびヘキシル等を含む。「低級アルコキシ」、「低級アルコキシカルボニル」、「低級アルキルアミノカルボニル」、「低級ヒドロキシアルキル」および「トリ低級アルキルシリル」基の低級アルキル部分は、上記定義の「低級アルキル」と同じ意味を有する。
【0031】
「低級アルケニル」基は、直鎖状または分枝状であってもよく、ZまたはE型であってもよいC2〜C6アルケニル基として定義される。当該基は、ビニル、プロペニル、1−ブテニル、イソブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、(Z)−2−ペンテニル、(E)−2−ペンテニル、(Z)−4−メチル−2−ペンテニル、(E)−4−メチル−2−ペンテニルおよびペンタジエニル、例えば1,3または2,4−ペンタジエニル等を含む。より好適なC2〜C6−アルケニル基は、C2〜C5−、C2〜C4−アルケニル基、さらにより好ましくはC2〜C3−アルケニル基である。
【0032】
「低級アルキニル」基という用語は、直鎖状または分枝状であってもよく、エチニル、プロピル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1−ペンチニル、3−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニルおよび3−ヘキシニル等を含むC2〜C6−アルキニル基を指す。より好適なC2〜C6−アルキニル基は、C2〜C5−、C2〜C4−アルキニル基、さらにより好ましくはC2〜C3−アルキニル基である。
【0033】
「アリール」基という用語は、6〜14個までの環炭素原子を含むC6〜C14−アリール基を指す。これらの基は、これらの基は、一環式、二環式または三環式であってもよく、縮合環である。好適なアリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントレニル等を含む。「アリールカルボニル」および「アリールアミノカルボニル」基のアリール部分は、上記定義のと同じ意味を有する。
【0034】
「ヘテロアリール」基という用語は、窒素、硫黄または酸素から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含むことができ、C3〜C13−ヘテロアリール基を指す。これらの基は、一環式、二環式または三環式であってもよい。本発明のC3〜C13ヘテロアリール基は、複素芳香族ならびに飽和および部分飽和複素環基を含む。これらの複素芳香族は、一環式、二環式、三環式であってもよい。好適な5または6員複素環基は、チエニル、フリル、ピロリル、ピリジル、ピラニル、モルホニル、ピラジニル、メチルピロリルおよびピリダジニルである。C3〜C13−ヘテロアリールは、二環式複素環基であってもよい。好適な二環式複素環基は、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、イミダゾリルおよびピリミジニルである。最も好適なC3〜C13−ヘテロアリールは、フリルおよびピリジルである。
【0035】
「低級アルコキシ」という用語は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個または1〜2個の炭素原子を含むアルコキシ基を含み、直鎖状または分枝状であってもよい。これらの基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシ、ペントキシおよびヘキソキシ等を含む。
【0036】
「アシル」という用語は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜5個、1〜4個、1〜3個または1〜2個の炭素原子を含む低級アルカノイルを含み、直鎖状または分枝状であってもよい。これらの基は、好ましくは、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、第三級ブチリル、ペンタノイルおよびヘキサノイルを含む。「アシルオキシ」基のアシル部分は、上記定義のと同じ意味を有する。
【0037】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード等を含む。
【0038】
「アラルキル」基という用語は、アルキル基がアリールによって置換されたC7〜C15−アラルキルを指す。アルキル基およびアリールを、炭素原子の総数が7〜15である、上記定義のC1〜C6アルキル基およびC6〜C14−アリール基から選択することができる。好適なC7〜C15−アラルキル基は、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルイソプロピル、フェニルブチル、ジフェニルメチル、1,1−ジフェニルエチル、1,2−ジフェニルエチルである。「アラルキルオキシ」基のアラルキル部分は、上記定義のと同じ意味を有する。
【0039】
置換低級アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、モノまたはゾ低級アルキルアミノ、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオランおよびジチオンなどの1〜3個の独立して選択された置換基を有する。置換低級アルキル、アルケニルおよびアルキニル基の低級アルキル置換基部分、ならびに置換低級アルキル、アルケニルおよびアルキニル基の低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニルおよびモノまたはジ低級アルキルアミノ置換基の低級アルキル部分は、上記定義の「低級アルキル」と同じ意味を有する。
【0040】
置換アリール、置換ヘテロアリールおよび置換アラルキル基は、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、ニトロ、アミノ、モノまたはジ低級アルキルアミノおよびハロゲンなどの1〜3個の独立して選択された置換基をそれぞれ有する。それらの置換基の中の低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニルおよびモノまたはジ低級アルキルアミノ基の低級アルキル部分は、上記定義の低級アルキルと同じ意味を有する。
【0041】
窒素原子と一緒になったR5およびR6によって形成された複素環基は、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペリジノ、モルホリニル、モルホリノ、チオモルホリノ、N−メチルピペラジニル、インドリルおよびイソインドリルを含む。
【0042】
好ましくは、R1およびR2は、水素、ハロゲン、ニトロ、−CH2OH、−(CH2k14、−CH=CH(CH2m16、−C≡C(CH2n15、−CO(CH2j4[式中、R4は−SR7である]、CH2O−(置換もしくは非置換)低級アルキル(置換低級アルキルは、好ましくはメトキシメチル、メトキシエチルまたはエトキシメチルである)、−NR56からなる群から独立して選択される。
【0043】
1およびR2の上記好適な意味において、残基R14は、好ましくは、フェニル、ピリジル、イミダゾリル、チアゾリル、テトラゾリル、−COOR15、−OR15(式中、R15は、好ましくは、水素、メチル、エチル、フェニルまたはアシルから選択される)、−SR7(式中、R7は、好ましくは、置換もしくは非置換低級アルキル、2−チアゾリンおよびピリジルから選択される)および−NR56(式中、R5およびR6は、好ましくは、水素、メチル、エチル、フェニル、カルバモイルおよび低級アルキルアミノカルボニルから選択される)から選択される。さらに、残基R16は、好ましくは、水素、メチル、エチル、フェニル、イミダゾール、チアゾール、テトラゾール、−COOR15、−OR15および−NR56(式中、残基R15、R5およびR6は、上記の好適な意味を有する)から選択される。R1およびR2の上記好適な意味において、残基R7は、好ましくは、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換フェニル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾールおよびテトラゾールからなる群から選択される。さらに、kは、好ましくは2、3または4であり、jは、好ましくは1または2であり、mおよびnは、独立して好ましくは0または1である。
【0044】
好ましくは、R3は、水素またはアセチル、最も好ましくは水素である。また、各W1およびW2は、好ましくは水素である。
【0045】
本発明の好適な実施形態は、ポリマー部分に結合された化合物K−252aに関する。さらにより好適な実施形態は、ポリマー単位をK−252a化合物またはK−252a誘導体化合物に結合させる化学基が5員オキサゾリジンジオン環構造によって特徴づけられるK−252aおよびその誘導体のポリマー結合体に関する。したがって、本発明の非常に好適な実施形態において、式(I)のポリマー結合体は、R1、R2、R3、W1およびW2が水素であり、Xがポリマー部分である化合物により表される。本発明のこの非常に好適な実施形態によれば、ポリマー部分は、ポリエチレングリコール(PEG)またはメトキシ−ポリエチレングリコール(m−PEG)部分である。本発明の好適な実施形態のさらにより好適なポリエチレングリコールまたはメトキシ−ポリエチレングリコールは、平均分子量が約2000Daまたは約5000Daの長鎖PEGまたはmPEGポリマーである。平均分子量が約550Daまたは約1100Daの短鎖ポリエチレングリコールまたはメトキシ−ポリエチレングリコールも好適である。
【0046】
本発明の方法は、K−252aまたは誘導体化合物のインドロカルバゾール化合物1つ以上またはすべての置換基R1、R2、R3、W1およびW2を保護基で保護する工程を場合によって含む。この文脈において、「保護基」という用語は、必要であれば、合成処理時にR1、R2、R3、W1およびW2をマスクするために使用することができ、分子の残りに対して望ましくない影響を与えることなくR1、R2、R3、W1およびW2置換基を回収させる条件下で後に除去することができる当該技術分野で既知の置換基R1、R2、R3、W1およびW2の任意の誘導体を指す。特に、必要であれば、K−252aまたは誘導体化合物のインドロカルバゾール構造のC3位に対するポリマー結合の化学選択性を得るために、本発明の結合プロセスを通じて置換基R1、R2、R3、W1およびW2の1つ以上またはすべてに対して保護基を導入することができる。結合反応後、関与する置換基R1、R2、R3、W1およびW2の本来の官能基を戻して、式(I)のインドロカルバゾール結合化合物を得るために、1つまたは複数の保護基を逆に除去することができる。
【0047】
本発明によれば、当該技術分野で既知の任意の好適な保護基をこの目的に使用することができる。好適な保護基、ならびに置換基R1、R2、R3、W1およびW2を保護および脱保護するための任意の好適な手段および条件の選択を、当業者が有機合成の技術におけるその一般的知識によって達成することができる。採用される保護および脱保護の手段および条件は、関与する官能基R1、R2、R3、W1およびW2の性質に応じて決まる。ヒドロキシ、アミノおよび/またはカルボキシ残基に対する保護基は、好ましくは、アセトニド、エチリデン、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、ベンジルオキシメチル、テトラヒドロピラニル、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ベンジル、トリフェニルメチル、t−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリル、メトキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、アセチル、ベンゾイル、トルエンスルホニル、ジメトキシベンジル、ニトロフェニルオキシカルボニル、ニトロベンジルオキシカルボニル、アリル、フルオレニルメチル、テトラヒドロフラニル、フェナシル、アセトール、フェニル、トリメチルシリル、ピロリジル、インドリル、ヒドラジノ、およびGreene T.W.,et al.,Protective Groups in Organic Synthesis,4th ed.,John Wiley and Son,New York,NY(2007)に見い出すことができるものなどの当該技術分野で既知の他の保護基から選択される。保護および脱保護反応の試薬および条件は、特に、化合物の残りに悪影響を及ぼすことなく保護基を選択的に結合および除去するそれらの適性について選択される。好適な条件および試薬は、当業者の慣行において一般的に既知である。
【0048】
本発明によれば、式(I)の化合物を、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの無機酸の塩、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)、リン酸およびマロン酸などの有機酸の塩を含む製剤学的に認容性の塩として製造することもできる。製剤学的に認容性の塩の形成のための好適な酸は、当業者に既知である。また、式(I)の化合物の製剤学的に認容性の塩を製剤学的に認容性のカチオンで形成することができる。製剤学的に認容性のカチオンは、当業者に既知であり、アルカリカチオン(Li+、Na+、K+)、土類アルカリカチオン(Mg2+、Ca2+、Ba2+)、第四級アンモニウムカチオンなどのアンモニウムおよび有機カチオンを含む。
【0049】
本発明のさらなる態様は、ポリマー単位をK−252a化合物またはK−252a誘導体化合物に結合させる化学基が5員オキサゾリジンジオン環構造によって特徴づけられるK−252aおよびその誘導体の新規のポリマー結合体である。これらの新規のポリマー結合体は、本明細書に開示されている新規の合成方法によって製造される。
【0050】
したがって、特に、本発明のさらなる態様は、式(I)
【化4】

[式中、
1、R2、R3、W1およびW2ならびにポリマー部分Xは、以上に詳細に定義されている通りである]のインドロカルバゾール化合物、またはその製剤学的に認容性の塩のポリマー結合体である。
【0051】
最も好適な実施形態において、本発明は、式(I)[式中、R1、R2、R3、W1およびW2は水素であり、ポリマー部分Xは、ポリエチレングリコール(PEG)または末端がアルコキシ置換されたPEG、例えば好ましくはメトキシ−ポリエチレングリコール(m−PEG)である]の新規のポリマー結合化合物に関する。この化合物は、本発明によるK−252aのポリマー結合化合物に対応する。好ましくは、ポリマー部分は、平均分子量が約2000Daまたは約5000Daである長鎖ポリエチレングリコール、さらにより好ましくはメトキシ−ポリエチレングリコール(m−PEG)などの末端がアルコキシ置換されたPEGである。同様に、好ましくは、平均分子量が約550Daまたは約1100Daである短鎖ポリエチレングリコール、さらにより好ましくはメトキシ−ポリエチレングリコール(m−PEG)などの末端がアルコキシ置換されたPEGである。
【0052】
意外にも、インドロカルバゾール化合物の構成要素と比較して、特にポリマーを欠くK−252aそのものまたはその誘導体と比較して、式(I)の対応するポリマー結合化合物は、溶解度が大きいため、向上した薬物動態学的および毒性学的性能を発揮して、治療および生物活性化合物の生物学的利用能の向上をもたらすことが本出願の発明者らによって見い出された。本発明の別の態様において、意外にも、式(I)のポリマー結合インドロカルバゾール化合物は、分子サイズおよび両親媒性が大きいことにより、局所投与されると限られた全身吸収を示すため、局所的治療および生物学的効果を高めるとともに、局所的適用により全身毒性および/または副作用を低減することが見い出された。
【0053】
意外にも、式(I)のインドロカルバゾール−ポリマー結合体は、インドロカルバゾール化合物そのもの、特にポリマーを欠くK−252aおよびその誘導体の非選択的キナーゼ阻害活性と比較して、TrkAチロシンキナーゼに対する阻害活性における選択性の有意な向上を示すことが本出願の発明者らによって見い出された。したがって、本発明によるポリマー分子に対するインドロカルバゾール化合物、特にK−252aの結合は、望ましくない副作用の必然的な減少とともに、その治療目標に関して選択性がある活性薬の提供に至る。
【0054】
したがって、本発明のさらなる態様は、医薬における活性薬としての式(I)の化合物の使用である。本発明の好適な態様において、式(I)の化合物は、全身投与および治療のための医薬における活性薬として使用される。同様に好適な態様において、本発明は、局所的医薬における活性薬としての式(I)の化合物の使用に関する。
【0055】
特に、本発明の結合ポリマー化合物は、HMGB1関連病状の予防、緩和および治療に有用な医薬における活性薬として使用される。HMGB1関連病状は、HMGB1核タンパク質が実際的に検出不可能である正常な被験体における濃度と比較して、高濃度のアセチルかまたは非アセチル化の形の核タンパク質HMGB1および/またはHMGB1相同タンパク質が生体液および組織に存在する患者の状態である。細胞外HMGB1は、化学走性炎症誘発性ケモカインとして作用する。したがって、HMGB1関連病状は、強炎症性の基礎を有する病状、TNF−アルファ、IL−1、IL−6等のサイトカインの刺激に起因する病状、または中毒、感染、火傷等の毒性事象に起因する病状である。特に、高濃度のHMGB1タンパク質および相同タンパク質は、敗血症の患者の血漿、リウマチ様関節炎患者の血漿および滑液、アルツハイマー病患者の脳、メラノーマ患者の血漿および組織、全身性紅斑性狼瘡患者の血漿、アテローム硬化症患者のアテローム斑等に見い出され、確認された。生体液および組織におけるHMGB1タンパク質および/または相同タンパク質の確認および形跡を、例えばELISAアッセイ等による検出を含む当業者に既知の一般的な診断手段によって検出することができる。
【0056】
したがって、特に、炎症性疾患、狭窄、再狭窄、アテローム硬化症、リウマチ様関節炎、自己免疫疾患、腫瘍、感染性疾患、敗血症、急性炎症性肺傷害、紅斑性狼瘡、神経変性疾患、中枢および末梢神経系の疾患ならびに多発性硬化症を含むが、それらに限定されない様々な疾患が、該当する細胞外HMGB1の存在によって特徴づけられる。特に好適な実施形態において、式(I)の結合ポリマー化合物は、心臓血管疾患、特に、血管形成の最中または後に起こるアテローム硬化症および/または再狭窄の予防、緩和および治療に使用される。より好ましくは、該医薬は、血管形成の最中または後の再狭窄における結合組織再生を阻止、妨害および/または阻害するために使用される。
【0057】
本発明の特に好適な態様において、式(I)の結合ポリマー化合物は、中枢および末梢神経系の神経障害、神経疾患および神経変性障害の予防、緩和および治療のための医薬における活性薬としての使用に効率的である。
【0058】
新規のポリマー結合体化合物は、全身治療による血漿サイトカイン分泌を低減および/または抑制することが可能であることが発明者らによってさらに証明された。したがって、ポリマー結合体化合物は、血漿サイトカイン分泌の増加が関与する病状の予防、緩和および/または治療に有用な全身投与のための医薬における活性薬として使用される。これらの病状は、好ましくは、TNF−α、IFN−γ、MCP−1、MIP−1および/またはRANTESの分泌が主として関与する病状である。
【0059】
特に、本発明の文脈において、血漿サイトカイン分泌の増加に関連する病状としては、炎症性疾患、自己免疫疾患、全身性炎症応答症候群、臓器移植後の再潅流傷害、心臓血管疾患、産科および婦人科疾患、感染性疾患、アレルギー性およびアトピー性疾患、固形および液体腫瘍病状、移植片拒絶疾患、先天性疾患、皮膚疾患、神経疾患、悪液質、腎臓疾患、医原性中毒状態、代謝性および特発性疾患、ならびに眼科疾患が挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
最も好適な実施形態において、本発明の化合物は、ベーチェット病、シェーグレン症候群、血管炎、ブドウ膜炎、網膜炎の予防、緩和および/または治療に有用な全身治療のための医薬における活性薬として使用される。
【0061】
本発明のさらに別の特定の態様において、本発明の結合ポリマー化合物を、皮膚病の予防、緩和および/または治療に有用な局所医薬における活性薬として使用することが好適である。本明細書に記載の結合ポリマー化合物は、(以下の実施例に記載される試験において示されるように)皮膚投与された場合における有害効果もしくは毒性効果(例えば刺激)、または光毒性効果(例えば光変異原生、光毒性もしくは光感作性)を示さないため、局所医薬として非常に有利に使用されることが発明者らによって証明された。
【0062】
本発明の文脈において好適な皮膚病は、ケラチノサイトの過剰増殖によって特徴づけられる病状、例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、ざ瘡、毛孔性紅色粃糠疹、ケロイド、過形成性瘢痕および皮膚腫瘍、例えば、角化棘細胞腫、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌である。より好適な実施形態において、本発明の化合物は、乾癬の予防、緩和および治療に有用な局所医薬における活性薬として使用される。
【0063】
TrkAの阻害における本発明の化合物の向上した選択性により、本発明のさらなる態様は、TrkAが、病状の発生を招く病態生理学的メカニズムにおいて重大な役割を果たす病状の予防、緩和および治療における前記結合化合物の使用である。この文脈では、本発明の非常に好適な実施形態において、式(I)、(II)および/または(III)のK−252aポリマー化合物は、NGF関連疼痛および痛覚過敏症の予防、緩和および治療のための医薬における活性薬として使用される。
【0064】
したがって、本発明のさらなる態様は、上記定義の病状の予防、緩和および/または治療のための医薬の製造のために、上記定義の式(I)の化合物を場合によって製剤学的に認容性の担体、助剤、希釈剤および/または添加剤とともに使用することである。
【0065】
式(I)の化合物またはそれらの製剤学的に認容性の塩をそのまま、または薬物動態活性および投与の目的に応じて様々な医薬組成物の形で投与することができる。本発明のさらに別の態様は、有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物を場合によって製剤学的に認容性の担体、助剤、希釈剤および/または添加剤とともに含む医薬組成物である。医薬担体、助剤、希釈剤および/または添加剤は、当業者に既知であるため、本発明の化合物を含む医薬組成物の調合に適用され得る。
【0066】
本発明の化合物を医薬組成物における唯一の活性薬として採用することができる。あるいは、式(I)の化合物を1つまたはいくつかの活性薬、例えば、上記定義の病状の治療における他の活性医薬と併用することができる。
【0067】
特に、本発明のポリマー結合体化合物を少なくとも1つのステロイド性抗炎症薬、および/または炎症性サイトカインの初期媒介物質を阻害することが可能な1つのさらなる薬剤、例えば、TNF、IL−1α、IL−1β、IL−Ra、IL−8、MIP−1α、MIP−1β、MIP−2、MIFおよびIL−6からなる群から選択されるサイトカインのアンタゴニストまたは阻害薬と併用することができる。特に有用な抗炎症薬は、ジプロピオン酸アルクロメタソン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタソン、ベタメタソン、安息香酸ベタメタソン、ジプロピオン酸ベタメタソン、リン酸ベタメタソンナトリウム、リン酸および酢酸ベタメタソンナトリウム、吉草酸ベタメタソン、酪酸クロベタソール、プロピオン酸クロベタソール、ピバル酸クロコルトロン、コルチソール(ヒドロコルチソン)、酢酸コルチソール(ヒドロコルチソン)、酪酸コルチソール(ヒドロコルチソン)、シピオン酸コルチソール(ヒドロコルチソン)、リン酸コルチソール(ヒドロコルチソン)ナトリウム、コハク酸コルチソール(ヒドロコルチソン)ナトリウム、吉草酸コルチソール(ヒドロコルチソン)、酢酸コルチソン、デソニド、デソキシメタソン、デキサメタソン、酢酸デキサメタソン、リン酸デキサメタソンナトリウム、二酢酸ジフロラソン、吉草酸ジフルコルトロン、酢酸フルドロコルチソン、フルドロキシコルチド、ピバル酸フルメタソン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルトロン、フルオメトロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカソン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタソール、メドリソン、メチルプレドニソロン、酢酸メチルプレドニソロン、コハク酸メチルプレドニソロンナトリウム、葉酸モメタソン、酢酸パラメタソン、プレドニソン、酢酸プレドニソン、リン酸プレドニソンナトリウム、プレドニソロンテブテート、プレドニソン、トリアムシノロン、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンヘキサセトニドから選択される。サイトカインの有用なアンタゴニストまたは阻害薬は、インフリキシマブ、エタネルセプトまたはアダリムマブから選択される。
【0068】
本発明のポリマー化合物と併用することができるさらなる薬剤は、例えば、RAGEのアンタゴニストおよび/または阻害薬、HMGB1のアンタゴニストおよび/または阻害薬、Toll様受容体(TCR)とHMGB1との相互作用のアンタゴニストおよび/または阻害薬、トロンボモデュリンの官能性N末端レクチン様ドメイン(D1)、および/または参考により本明細書で援用される国際特許出願WO2006/002971に記載されている屈曲形構造の合成二本鎖核酸もしくは核酸類似体分子である。
【0069】
本発明の医薬組成物は、当業者、例えば医師に既知の従来の方法で投与され得る。特に、本発明の医薬組成物を注射もしくは注入、特に、静脈内、筋肉内、経粘膜、皮下もしくは腹腔内注射もしくは注入によって、かつ/または経口、局所、皮膚、経鼻、吸入、エアロゾルおよび/または直腸投与等によって投与することができる。投与は、局所投与または全身投与であってもよい。好ましくは、本発明の化合物および医薬組成物の投与を、特に溶液剤もしくは懸濁液剤の形の非経口投与、または特に錠剤もしくはカプセル剤の形の経口投与、または特に粉剤、点鼻剤もしくはエアロゾル剤の形の鼻内投与、または例えば軟膏剤、クリーム剤、油剤、リポソームもしくは経皮貼付剤を介する皮膚投与によって実施することができる。
【0070】
本発明の一態様によれば、医薬組成物は、全身投与される。特に、ポリマー結合体化合物を注射もしくは注入、特に、静脈内、筋肉内、経粘膜、皮下もしくは腹腔内注射もしくは注入、および/または経口投与によって投与することができる。
【0071】
さらに最も好適な実施形態において、本発明の医薬組成物は、局所投与、特に皮膚投与によって投与される。皮膚投与の場合は、本発明の化合物の投与をリポソームの形で実施することができる。
【0072】
本発明のさらなる最も好適な実施形態において、医薬組成物は、特に、ステント、カテーテル、外科手術用具、カニューレ、心臓弁もしくは血管用人工装具を含むが、それらに限定されない医療デバイスに本発明の化合物および組成物を接着、コーティングおよび/または埋設することによって医療デバイスの表面に可逆的に固定される。医療デバイスを体液または体組織と接触させた後に、可逆的に固定された化合物を解放する。その結果、コーティングされた医療デバイスは、医薬を溶離する薬物送達デバイスとして作用することによって、薬物送達動態を制御して、例えば、即時放出、または制御、遅延もしくは持続放出を行うことができる。医療デバイスのコーティング法も当業者に既知である。
【0073】
本発明の医薬組成物を診断または治療用途に使用することができる。診断用途では、式(I)の化合物が、標識された形、例えば、同位体、例えば放射性同位体、もしくは核磁気共鳴によって検出できる同位体を含む形で存在してもよい。好適な治療用途は、局所投与の場合は、乾癬および皮膚炎の予防、緩和および治療であり、全身投与の場合は、再狭窄における結合組織再生の予防、緩和および治療である。
【0074】
医薬組成物における本発明の化合物の濃度は、異なり得る。濃度は、投与すべき薬物の全投与量、採用される化合物の化学特性(例えば疎水性)、投与経路、患者の年齢、体重および症候などの要因に左右されることになる。本発明の化合物は、典型的には、非経口投与では約0.1〜10w/v%の化合物を含む生理緩衝水溶液で与えられる。典型的な投与量範囲は、1日毎に体重1kg当たり約1μg〜約1gであり、好適な投与量範囲は、1日毎に体重1kg当たり約0.01mg〜100mg、好ましくは1日毎に1回〜4回にわたって体重1kg当たり約0.1〜20mgである。投与すべき薬物の好適な投与量は、疾患または障害のタイプおよび進行の程度、特定の患者の全体的な健康状態、選択された化合物の相対的な生物学的効果および化合物賦形剤の処方、ならびにその投与経路などの様々な可変要素に左右される可能性が高い。
【0075】
本発明による改善型合成方法を以下の図面および実施例によってさらに説明するが、それらは、本発明の主題を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、本発明による方法の好適な実施形態を示す。本発明によるK−252aのメトキシポリエチレングリコール結合体を得るために、インドロカルバゾール化合物K−252aとα−メトキシ−ω−1H−イミダゾール−カルボキサミドポリエチレングリコール(mPEG−NH−CO−Im)とを反応させる。本発明のこの好適な化合物において、メトキシ−ポリエチレングリコールは、5員オキサゾリジンジオン環構造を介して活性K−252aに共有結合されている。
【図2】図2は、400MHzの磁場におけるDMSO−d6溶媒中の活性化ポリマーmPEG−NH−CO−lmの1H−NMRスペクトルを示す。
【図3】図3は、直接注入イオントラップエレクトロスプレー電離を用いた500〜1400m/zの範囲のmPEG−NH−CO−lmのESI−MSスペクトルを示す。
【図4】図4は、400MHzにおけるDMSO−d6溶媒中の図1のK−252aポリマー結合体の1H−NMRスペクトルを示す。
【図5】図5は、400MHzにおけるDMSO−d6溶媒中の図1のK−252aポリマー結合体の13C−NMRスペクトルを示す。
【図6】図6は、直接注入イオントラップエレクトロスプレー電離を用いた500〜1400m/zの範囲の図1のK−252aポリマー結合体のESI−MSスペクトルを示す。
【図7】図7は、TrkAに対する図1のK−252aポリマー結合体の阻害曲線を示す。
【0077】
実施例
実施例1:α−メトキシ−ω−1H−イミダゾール−カルボキサミドポリエチレングリコール(mPEG−NH−CO−Im)の合成
【化5】

【0078】
500ml容量の丸底フラスコにて、35.0gのmPEG−NH2(MW1892)(アッセイ96%、17.76mmol)を窒素雰囲気中で85mlのジクロロメタンに溶解させた。溶媒を減圧下で除去し、化合物を2時間にわたってメカニカルポンプによって乾燥させた。次いで、基質を窒素雰囲気中で150mlのジクロロメタンに溶解させ、溶液を2l容量の三口丸底フラスコに移した。
【0079】
4.80gの1,1−カルボニルジイミダゾール(アッセイ90%、26.64mmol)を室温で該溶液に添加した。混合物を窒素下で室温にて撹拌し、TLクロマトグラフィー(溶離剤CH2Cl2/MeOH90:10)によって確認した。第一級アミン基の存在(紫色)をスポットライトで照らすためにTLCをニンヒドリン溶液で処理した。
【0080】
反応は、2時間以内で完了した。混合物を0℃で冷却し、激しく撹拌しながらジエチルエーテルを徐々に添加(60分で700ml)することによって固体生成物を沈殿させた。混合物を0℃で30分間撹拌し、さらに300mlのジエチルエーテルを添加した。生成物をガラス焼結ディスクフィルタ漏斗で濾過し、100mlのジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させた。34.0gの乾燥白色固体を得た(収率94%)。
【0081】
生成物を1H−NMRおよびESI−MSによって特徴づけた。
【0082】

【0083】
ESI−MS(クラスター+2)...944.4、966.4、988.5、1010.5、1032.5...(mPEG−NH2のクラスター+2...897.4、919.4、941.5、963.5、985.5に対して質量増加+47)
【0084】
実施例2:オキサゾリジンジオン結合体の製造のためのK−252aのポリマー結合反応
該方法のスキームを図1に示す。
【0085】
500ml容量の丸底フラスコにて、33.0gのmPEG−NH−CO−lm(16.00mmol)を窒素雰囲気中で85mlのジクロロメタンに溶解させた。溶媒を減圧下で除去し、化合物を2時間にわたってメカニカルポンプによって乾燥させた。
【0086】
熱クライオスタット装置、機械的撹拌機および温度計を備えた2l容量の反応器にて、6.21gのK−252a(アッセイ98%、13.29mmol)を窒素雰囲気下で1.85Lのジクロロメタンに溶解させ、溶液を0℃まで冷却した。0.53gの水素化ナトリウム(アッセイ60%、13.29mmol)を窒素雰囲気中で添加し、混合物を10分間撹拌した。乾燥したmPEG−NH−CO−lmを90mlのジクロロメタンに溶解させ、溶液を0℃で窒素雰囲気中でK−252aとジクロロメタン中NaHとの混合物に添加した。混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで25℃に加熱し、撹拌下でこの温度に10分間維持した。
【0087】
K−252aの変換および混合物における化合物の比率を評価するために、反応混合物をHPLCによって分析した。25℃で10分間放置した後、3.60gの1,1−カルボニルジイミダゾール(アッセイ90%、19.93mmol)を反応混合物に添加し、溶液を25℃で30分間撹拌した。アミド副産物(K−252aの9位のカルボン酸部分によるmPEG結合体)の所望のオキサゾリジンジオン結合体への変換を確認するために、反応混合物をHPLCによって分析した。反応混合物をギ酸(アッセイ98%)で中和して最終pH6とした(約2ml、53mmol)。
【0088】
溶媒を25℃にて減圧下で除去し、44.0gの淡黄色粗製物を得た。
【0089】
粗製物における結合体のHPLC純度は90%を超えていた。粗製混合物における所望の生成物の含有量は、約65〜70%w/wである。
【0090】
実施例3:逆相フラッシュクロマトグラフィーによるK−252aのオキサゾリジンジオン結合体の精製
実施例2の結合工程で得られた粗製混合物を逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製した。フラッシュ65iM KP−C18カートリッジを備えたバイオテージホライゾンシステムを使用した。製造バッチをそれぞれ3.0gの15個のアリコットに分割した。アリコットを個別に処理した。
【0091】
アイソクラティック条件で100%アセトニトリルからアセトニトリル/水40:60、次いで200mLのアセトニトリル/5mMのギ酸アンモニウム(pH3.5)40:60の勾配を適用することによって最初に200mLの溶媒でカラムを調整した。
【0092】
3.0gの粗製物を3.0mlのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、溶液をカラムに充填した。精製をアセトニトリル/5mMのギ酸アンモニウム(pH3.5)40:60のアイソクラティック溶離によって実施した。回収した個々のフラクションをHPLCによって分析し、純粋のフラクションを一緒にした。溶媒を25℃にて減圧下で除去し、約2gの純粋湿性生成物を得た。
【0093】
前の手順に従って各アリコットを精製し、最後に各純粋湿性生成物フラクションを10mlのジクロロメタンに溶解させ、次いで一緒にした。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させた。固体を濾別し、溶媒を25℃にて減圧下で除去した。
【0094】
得られた固体生成物をNMR分光法によって分析し、約1モル当量のギ酸アンモニウムを検出した。この塩を除去するために、生成物を50mlのジクロロメタンに溶解させ、ジクロロメタンで湿らせたシリカゲルパッドで溶離させた。生成物を、700mlの溶媒混合物ジクロロメタン/メタノール9:1を用いた溶離によって回収した。溶離液を回収し、溶媒を25℃にて減圧下で除去した。生成物を再び80mlのジクロロメタンに溶解させ、個体性生物を得るために500mlのジエチルエーテルを添加することによって激しく撹拌しながら0℃で沈殿させた。生成物をガラス焼結ディスクフィルタ漏斗で濾過し、100mlのジエチルエーテルで洗浄し、真空下で16時間にわたって乾燥させた。
【0095】
16.0gの淡黄色粉末を51%の全体収率(結合+精製)で得た。
【0096】
生成物をNMR、ESI−MSおよびHPLCによって特徴づけた。内部標準を使用してNMRによってアッセイを測定したところ、101%w/wに対応した。
【0097】

【0098】
ESI−MS(クラスター+2)...1128.2、1150.3、1172.3、1194.3、1216.3...(mPEG−NH2のクラスター+2...897.4、919.4、941.5、963.5、985.5に対して質量増加+230.8)
【0099】
精密質量:記録されたスペクトルと理論上のスペクトルとの精密質量差は、2ppmに対応する。したがって、得られたポリマー化合物は、少なくとも約98%の純度を有する。
【0100】
実施例4:順相フラッシュクロマトグラフィーによるK−252aのオキサゾリジンジオン結合体の精製
上記実施例1および2に記載されている合成方法を実施し、この合成処理で21.7gの粗製物を得た。
【0101】
前記結合工程により得られた粗製混合物を、340gのKP−SIL(シリカ)(サイズ71×168mm)が装填されたSNAPカートリッジを備えたバイオテージホライゾンシステムを使用する順相フラッシュクロマトグラフィーによって精製した。粗製物を、それぞれ1回ずつ個別に精製される2つのアリコットに分割した(各アリコットは、それぞれ10.86gおよび10.8g)。
【0102】
SNAPカートリッジを940mlのジクロロメタン/メタノール96:4v/vで平衡させた。流量は、65ml/分であった。
【0103】
予め装填されたSMAPSサンプレットカートリッジを使用して、粗製材料を10mlのジクロロメタンに溶解させ、該溶液をサンプレットカートリッジに塗布し、サンプレットをSNAPカートリッジに挿入することによって、サンプル充填を実施した。
【0104】
SNAPカートリッジを、65ml/分の流量で
− 705mlのジクロロメタン/メタノール96:4v/v、
− 1881mlのジクロロメタン/メタノール93:7v/v、
− 942mlのジクロロメタン/メタノール85:15v/v
により溶離させた。
【0105】
最初の999mlの溶離溶媒を廃棄物に送り、次いで溶離溶媒を111ml容量のフラクションで回収した。
【0106】
回収した個々のフラクションをHPLCによって分析し、98%を超える純度の結合生成物化合物を含むフラクション(純粋フラクション)を一緒にした。
【0107】
結合工程による10.8gの粗製混合物材料の残留アリコットを同様にして精製した。
【0108】
粗製混合物の2つのアリコットの精製による選択フラクションを一緒にし、溶媒を25℃にて減圧下で除去して乾固させ、8.11gの結合体生成物を得て、それを再び29mlのジクロロメタンに溶解させ、2℃まで冷却し、激しく撹拌しながら150mlのジエチルエーテルを15分間で添加することによって沈殿させた。混合物を2℃で15分間撹拌し、次いで225mlのジエチルエーテルを添加した。沈殿した固体を凝結ガラスフィルタ(G4)による濾過によって単離し、25℃にて真空下で16時間にわたって乾燥させて、6.95gの試験品目を白色からわずかに黄色の固体として得た。HPLC分析によって測定された純度は99%であった。
【0109】
実施例5:K−252aのオキサゾリジンジオン結合体の合成方法
1)MeO−PEG−NH−Co−lmの合成
MeO−PEG−NH2(MW1892、8.06g)を窒素雰囲気下でジクロロメタン(25ml)に溶解させ、溶媒を40℃にて減圧下で蒸留によって除去した。次いで、残渣(MeO−PEG−NH2)を40℃にて真空(<40mbar)下で2時間以上にわたって乾燥させた。
【0110】
(上記による)乾燥MeO−PEG−NH2を25℃にて窒素雰囲気下でジクロロメタン(35ml)に溶解させ、1,1’−カルボニルジイミダゾール(1.02g)を該溶液に添加し、混合物を室温で2時間以上にわたって撹拌した。(イオンペアリングクロマトグラフィー(IPC):≧95%変換率)。
【0111】
反応混合物を0℃まで冷却し、次いで230mlのジエチルエーテルを激しく撹拌しながら1時間にわたって添加した。混合物を0℃で30分間撹拌し、さらに69mlのジエチルエーテルを25分間にわたって添加した。フィルタケークをジエチルエーテル(23ml)で2回洗浄し、最大40℃にて一定質量まで真空下で乾燥させて、8.25gのMeO−PEG−NH−CO−lmを白色固体として得た。
【0112】
2)ポリマー結合反応
MeO−PEG−NH−CO−lm(72.0g)を窒素雰囲気下でジクロロメタン(185ml)に溶解させ、溶媒を40℃にて減圧下で蒸留によって除去した。残渣を40℃にて真空(<40mbar)下で2時間を超える時間にわたって乾燥させた。
【0113】
K252a(13.11g)をジクロロメタン(3920ml)に溶解させ、次いで溶液を0℃まで冷却した。水素化ナトリウム(60%の1.17g)を少しずつ添加した。
【0114】
乾燥MeO−PEG−NH−CO−lmをジクロロメタン(140ml)に溶解させ、該溶液を5℃未満でK252aの反応混合物に添加し、混合物を0℃で30分間を超える時間にわたって撹拌した。次いで、該混合物溶液を25℃に加熱し、この温度で10分間にわたって撹拌を維持した(IPC1:K252aの変換率>96%)。
【0115】
1,1’−カルボニルジイミダゾール(7.11g)を反応混合物に添加し、溶液を25℃で30分間を超える時間にわたって撹拌した(IPC2:比 粗製物:アミド>80:20)。
【0116】
ギ酸(5ml)を添加して反応混合物のpH6に調整した。溶媒を25℃にて減圧下で蒸留によって除去し、残渣を25℃にて真空下で一定質量まで乾燥させた。
【0117】
3:ポリマー結合体の精製および単離
粗製混合物(81g)を35℃未満で15分間以上にわたって325mlのジクロロメタンに溶解させ、セライト床(3cm)で濾過した。セライトを81mlのジクロロメタンで洗浄した。溶媒を35℃未満にて減圧下で蒸留によって除去し、35℃で一定質量まで乾燥させて77.0gの固体材料を得た。固体材料を770mlのジクロロメタンに溶解させた。
【0118】
実施例5.2の粗製材料を、バイオテージのフラッシュKP−SIL 75Lカートリッジ(75×300mm、800gのシリカ)を使用して、Knauer(クナウア)社の分取りHPLCシステムで精製する。原料溶液を塗布する前に、カートリッジを1.5lのn−ヘプタンでパージし、3lのDCM:MeOH=96:4(v:v)で平衡させた。各処理について、200mlの上記原料溶液DCM:MeOH=96:48(v:v)(充填20g)を注入し、185ml/分の流量および以下に記載の勾配を用いて溶離を開始した。
【0119】
【表1】

【0120】
各カートリッジを1回の処理に対して使用した。生成物は、25分〜90分まで溶離していた。フラクションを回収・分析し、それらの純度(IPC:>98% a/a)に応じて貯蔵した。
【0121】
次いで、溶媒を35℃にて減圧下で除去する。固体を35℃にて真空下で一定質量まで乾燥させて粗製材料(37.92g)を得る。該材料を140mlのジクロロメタンに溶解させ、2℃まで冷却する。700mlのジエチルエーテルを2℃で添加し、15分間を超える時間にわたって撹拌する。1050mlのジエチルエーテルを2℃で添加する。
【0122】
該懸濁液を吸引フィルタにより濾過する。フィルタケークを母液で洗浄し、一定質量まで乾燥させて32.6gの精製薬物基質を得る。HPLC分析により得られた純度は98.99%であった。
【0123】
さらなる実施例は、本発明のポリマー結合体インドロカルバゾール化合物、特に、例えば実施例1〜5に記載されている本発明の合成方法を通じて得られたポリマー結合体を用いて実施したいくつかの試験を説明する。試験された結合体化合物(「試験品目」とも呼ばれる)は、K−252aのPEGとのオキサゾリジンジオン結合体(1892MW)である。
【0124】
実施例6:K−252aのオキサゾリジンジオン結合体についてのTrkAに対するIC50のin vitro評価
この試験の目的は、TrkAキナーゼに対する実施例3の結合体についてのIC50を測定することであった。試験化合物をジメチル−スルホキシド(DMSO)に溶解させ、次いで溶液をアッセイ緩衝液でさらに25倍に希釈して、最終的な試験化合物溶液を作製した。結合体を30000nM、10000nM、3000nM、1000nM、300nM、100nM、30nM、10nM、3nMおよび1nMの濃度で試験した。
【0125】
アッセイ対照のための基準化合物(スタウロスポリン)を、試験化合物の調製に使用した方法と同様にして調製した。
【0126】
アッセイ手順は、オフチップモビリティシフトアッセイ(MSA)によるものであり、以下に報告される。
【0127】
1)5μlの4倍希釈化合物溶液、5μlの4倍希釈基質(CSKtide 1000nM)/ATP(75μM)/金属溶液(Mg 5mM)および10μlの2倍希釈キナーゼ溶液を、アッセイ緩衝液[20mM HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、0.01%のトリトンX−100、2mMのDTT(1,2−ジチオ−トレイトール)、pH7.5]を用いて調製し、混合し、ポリプロピレン384ウェルマイクロプレートのウェルにて室温で1〜5時間*インキュベートした(*;キナーゼに依存する)。
【0128】
2)60μlの停止緩衝液(QuickScout Screening Assist MSA;Carna Bioscience)をウェルに加えた。
【0129】
3)反応混合物をLabChip3000システム(Caliper Life Science)に加え、生成物および基質ペプチドピークを分離し、定量した。
【0130】
4)キナーゼ反応を、生成物(P)および基質(S)ペプチドのピーク高さから計算された生成物比(P/(P+S))によって評価した。
【0131】
反応対照(完全反応混合物)の読取り値を0%阻害率に設定し、バックグラウンド(酵素(−))の読取り値を100%阻害率に設定し、次いで各試験溶液の阻害率を計算した。IC50値を、4パラメータロジスティック曲線への適合によって濃度対%阻害率曲線から計算した。キナーゼ反応を、生成物(P)および基質(S)ペプチドのピーク高さから計算された生成物比(P/(P+S))によって評価した。
【0132】
TrkAに対する結合体のIC50値は202nMであり、TrkAに対する基準化合物(スタウロスポリン)の対応するIC50値は0.372nMであった。これらの結果を図7に要約する。
【0133】
実施例7:ラットにおける急性皮膚毒性試験
実施例3の結合体の急性毒性を、ラットへの一回皮膚投与量の投与後に調査した。
【0134】
2000mg/kgの一回投与量を、5匹の雄および5匹の雌の動物のグループに24時間にわたって投与した。計画された投与の前日に、毛皮を胴体の背面から全体表面の10%の推定面積だけ除去した。皮膚の損傷または摩耗を回避するために注意を払った。試験品目をその調製の直後に体重1kg当たり4mlの投与容量で局所投与した。調合試験品目の必要なアリコットを2.5×2.5cmの寸法のガーゼ上に均一に散布した。次いで、ガーゼ片を動物の皮膚上に配置して、試験品目を皮膚に直接接触させた。合成フィルムの細片を処理部位上に配置し、動物の胴体を弾性の接着性包帯で取り囲むことによって全アセンブリを所定位置に保持した。24時間後にテープ包帯を除去することになる。次いで、処理した皮膚部位を、微温水を使用して、静かに洗浄して残留する試験品目を除去した。その試験全体を通じて、すべての動物を毎日2回検査することになる。動物を処理に対する反応の徴候について、投与時、1日目の投与の約30分、2および4時間後、次いで全体で14日間にわたって毎日検査した。試験に割り当てた日、投与日(1日目)、ならびに8および15日目に各動物の体重を測定した。14日の期間後に、すべての動物を屠殺し、解剖検査した。
【0135】
試験を通じて、雄または雌の動物に死亡が発生せず、臨床的徴候も観察されなかった。試験の終了時に動物に観察された体重の変化は、この動物の種および年齢についての想定範囲内であった。試験の終了時の動物の検屍において内部異常が見い出されなかった。処理部位に異常が観察されなかった。
【0136】
これらの結果は、試験化合物が、2000mg/kgの量の24時間にわたる皮膚曝露後にラットに毒性効果を及ぼさないことを示している。死亡が発生しないことは、L50が2000mg/kgを超えることを証明している。
【0137】
実施例8:ラットにおける13週間の皮膚毒性試験およびその後の4週間の回復期間
この試験の目的は、13週間にわたる毎日の皮膚投与(6時間曝露)後のラットにおける試験品目の毒性を評価し、4連続週の期間にわたるあらゆる潜在的処理関連効果からの見込まれる回復を調査することであった。毒物動態プロファイルの評価も行った。
【0138】
それぞれ10匹の雄および10匹の雌のスプラーグドーリーラットの3つのグループ(雄に偶数番号が付され、雌に奇数番号が付された、第1表参照)は、13連続週間にわたって0.5、2.5および5mg/kg/日の投与量で皮膚投与により試験品目が与えられた(第1表:グループ番号2〜4)。第4の同様に構成されたグループは、媒体(精製水)のみが与えられ、対照としての役割を果たした(第1表:グループ番号1)。それぞれの性の5匹のさらなる動物を、回復評価に向けて、高グループおよび対照グループに含めた(第1表:それぞれグループ番号4および1)。加えて、9匹の雄および9匹の雌を含む毒物動態のための3つのサテライトグループ(第2表:それぞれグループ番号5〜8)ならびに3匹の雄および3匹の雌を含む1つの対照グループ(第2表:グループ番号5)を毒物動態評価のための主要グループとして処理した。
【0139】
処理に割り当てたグループ識別番号および動物番号を以下の第1表および第2表に要約する。
【0140】
第1表(主要グループ):
【表2】

【0141】
第2表(サテライトグループ):
【表3】

【0142】
処理部位を投与の開始の約3時間後に毎日検査した。近隣の未処理の皮膚と比較した場合の部位の刺激に、以下の表に従って数値を割り当てた。
【0143】
【表4】

【0144】
結果
試験を通じて治療に関連する死亡は発生せず(高投与量グループの1匹の雌が試験の40日目に死亡した)、処理に関連する臨床的徴候は観察されなかった。関連する体重変化は記録されず、処理動物の食餌消費量は、試験全体を通じて対照と同等であった。
【0145】
処理部位において刺激の徴候は観察されなかった(刺激指数は0であった)。処理期間終了時に実施した眼検査で処理に関連する病変が検出されなかった。
【0146】
血液学的観点から、高投与量グループの動物および中投与量グループの雌に観察された白血球減少症は、回復期間の終了時に部分的可逆性を示した。毒性的有意性の他の変化は観察されなかった。
【0147】
臨床的化学検査および尿検査の双方から、毒性的有意性の他の変化は観察されなかった。
【0148】
最終体重は、対照グループと処理グループの間で同等であった。毒性的有意性の絶対的および相対的臓器質量の変化は観察されなかった。
【0149】
巨視的観察および微視的観察後に処理に関連する変化は認められなかった。
【0150】
毒物動態に関することについては、1日目に、試験品目の血漿濃度は、0.5、2.5および5mg/kg/日の試験品目が与えられた雄および雌において全般的にLLOQ(定量の下限、=49.9ng/ml)を下回っており、個々の動物が投与後2時間と8時間の間に時折LLOQをわずかに上回る値を示したにすぎなかった。実測値は、投与量に比例していなかった。
【0151】
同様の結果が、第4週および第13週に観察され、より低い吸収発生率が検出された。これは、5mg/kg/日の試験品目が与えられた動物においてのみ投与後6時間と8時間の間にLLOQをわずかに上回る随時の値を示した雄における第4週、ならびに雌(5mg/kg/日のみの投与後4〜8時間の間にLLOQをわずかに上回る値)における第13週に特に顕著であった。
【0152】
媒体のみで処理されたグループの動物について検出可能な量を測定した。上記結果によれば13週間にわたって毎日投与した後に蓄積が生じなかった。
【0153】
結論
検査した試験品目の投与量(すなわち0.5、2.5および5mg/kg/日)のいずれにおいても悪影響は見られなかった。対照と比較した場合に、処理された動物に観察された軽微な白血球減少症は、規模が小さく、全般的に投与量に関連せず、いずれの巨視的変化によっても裏付けされていなかったため、毒性的に重要であると見なされなかった。したがって、5mg/kg/日の高投与量は、13週間にわたってラットに毎日皮膚投与した後に、試験品目についての最大無毒性量(NOAEL)であると考えられる。
【0154】
血漿サンプル分析の結果は、試験品目が皮膚経路を介して最小限しか吸収されないことを示していた。
【0155】
実施例9:ウサギにおける13週間の皮膚毒性試験およびその後の4週間の回復期間
13週間にわたって0.5、2.5および5mg/kg/日の投与量で毎日皮膚投与した後のラビットにおいて試験品目の毒性を調査し、4連続週の期間にわたるあらゆる潜在的処理関連効果からの回復を調査した。
【0156】
それぞれ6匹の雄および6匹の雌のニュージーランドホワイトSPF(指定病原体無感染)ウサギの3つのグループ(雄に偶数番号が付され、雌に奇数番号が付された、第3表参照)は、13連続週間にわたって0.5、2.5および5mg/kg/日の投与量で皮膚投与により試験品目が与えられた(第3表:それぞれグループ番号2〜4)。第4の同様に構成されたグループは、媒体(精製水)のみが与えられ、対照としての役割を果たした(第3表:グループ番号1)。対照および高投与量グループ(表3、それぞれグループ番号4および1)は、回復評価のための性別毎に3匹のさらなる動物を含んでいた。
【0157】
グループ識別番号および処理を以下の第3表に要約する。
【表5】

【0158】
毎日の臨床的徴候、体重、食餌消費量、処理部位の巨視的所見、臨床的病状調査、最終体重、臓器質量、死後の巨視的観察および組織病理検査の調査を実施した。毒物動態評価のために1日目および第13週に各動物から血液サンプルを採取した。
【0159】
処理部位を投与開始の約3時間後に毎日検査した。近隣の未処理の皮膚と比較した場合の部位の刺激に、以下の表に従って数値を割り当てた。
【0160】
【表6】

【0161】
結果
試験を通じて治療に関連する死亡は発生せず(回復対照グループの1匹の雄が試験の29日目に人為的に屠殺された)、処理に関連する臨床的徴候は観察されなかった。
【0162】
処理部位の巨視的観察により刺激の徴候は観察されなかった。
【0163】
関連する体重変化は、試験を通じて記録されず、処理動物の食餌消費量は、対照と同等であった。
【0164】
処理期間の終了時に実施した眼検査において、処理に関連する病変は検出されなかった。
【0165】
血液学および臨床化学では、毒性的有意性の変化は記録されなかった。
【0166】
毒物動態に関することについては、第1週に2.5mg/kg/日の試験品目が与えられた雄の大多数および5mg/kg/日が与えられた雌において試験品目の血漿濃度がLLOQ(定量の下限、=51.30ng/ml)をわずかに上回った。0.5および5mg/kg/日が投与された個々の雄の動物のみが時折LLOQをわずかに上回る値を示した。吸収の発生率は、雄の方が雌と比較してわずかに高かった。吸収は、投与量に比例していなかった。
【0167】
第13週にも非常に低い吸収が観察された。LLOQを上回る値は、全般的に、投与後2〜24時間の間で報告された。吸収は、雄より雌の方がわずかに大きかった。
【0168】
媒体のみで処理された動物については検出可能な量が測定されなかった。
【0169】
上記結果によれば13週間にわたる毎日の投与後に蓄積が生じなかった。
【0170】
最終体重は、対照グループと処理グループの間で同等であり、毒性的有意性の絶対的および相対的臓器質量の変化は観察されなかった。
【0171】
巨視的観察および微視的観察後に処理に関連する変化は認められなかった。
【0172】
結論
検査した試験品目の投与量(すなわち0.5、2.5および5mg/kg/日)のいずれにおいても悪影響は見られなかった。したがって、5mg/kg/日の高投与量は、13週間にわたってウサギに毎日皮膚投与した後に、試験品目についての最大無毒性量(NOAEL)であると考えられる。
【0173】
血漿サンプル分析の結果は、試験品目が皮膚経路を介して最小限しか吸収されないことを示していた。
【0174】
実施例10:ラットにおける急性静脈内毒性試験
実施例3の結合体の急性毒性を、スプラーグドーリーラットへの一回投与量の静脈内投与(生理食塩水中10ml/kg)後に調査し、その後に14日間の観察期間を設けた。
【0175】
5匹の雄および5匹の雌の動物の単一グループに2000mg/kgを投与した。体重1kg当たり10mlの投与容量で、好適な容量のシリンジに装着された皮下注射針を使用する尾静脈への注射によって、選択されたレベルの調合試験品目をその調製の直後に動物に投与した。試験全体を通じて、すべての動物を毎日2回検査した。
【0176】
動物を処理に対する反応の徴候について、投与時、1日目の投与の約30分、2および4時間後、次いで全体で14日間にわたって毎日検査した。試験に割り当てた日、投与日(1日目)、ならびに2、8および15日目に各動物の体重を測定した。観察期間の終了時にすべての動物を屠殺し、解剖検査した。
【0177】
試験を通じて、雄および雌の動物の双方に死亡が発生しなかった。投与の日にすべての動物に観察された臨床的徴候は、活動および立毛の低下であった。一匹の雌において、試験の第2週を通じて背部の脱毛が認められた。
【0178】
試験の終了時に観察された体重の変化は、この種族および年齢の動物について想定範囲内であった。検屍検査ではいずれの動物にも内部異常は検出されなかった。注射部位に異常が観察されなかった。
【0179】
これらの結果は、結合体が、体重1kg当たり2000mgの投与量で一回静脈投与した後にラットに毒性効果をもたらさなかったことを示している。動物に軽度の臨床的徴候しか観察されなかった。試験品目は、試験した投与量で尾静脈に注射された場合に局部的に許容された。
【0180】
実施例11:L5178Y TK+/-マウスリンパ腫細胞の変異(変動法)
変動法を使用して、S9代謝活性の不在下および存在下で、in vitro処理後のマウスリンパ腫L5178Y細胞の5−トリフルオロチミジン耐性変異体の誘発に対してアッセイすることによって、試験品目を変異誘発活性について調査した。この方法は、遺伝子変位、染色体異常誘発および異数性誘発効果を検出することができる。
【0181】
この試験に使用した変異アッセイ方法は、毒性チミジン類似体トリフルオロチミジン(TFT)に対して耐性になったL5178Yコロニーの識別に基づく。この類似体は、酵素チミジンキナーゼ(TK)によって、TK競合細胞の死をもたらす核酸合成に使用されるヌクレオシドに代謝され得る。
【0182】
TK遺伝子の変異を介して生じることが想定されるTK欠損細胞は、トリフルオロチミジンを代謝することができないため、その存在下で生存および成長することができない。
【0183】
L5178Yマウスリンパ腫において、TK酵素に対してコードする遺伝子は、染色体11上に存在する。TK部位(TK+/−)において異型接合性である細胞は、単一ステップの順方向変異を生じて、TK活性がほとんどまたは全く維持されないTK−/−遺伝子型になる。
【0184】
使用した細胞、すなわちL5178Y TK+/−は、メチルコラントレンによってDBA/2マウスに誘発された胸腺腫瘍に由来する2つのクローンの一方から誘導される。L5178Yマウスリンパ腫細胞におけるTK変異系の使用は、十分に特徴づけられ、検証され(Clive D,Johnson KO,Spector JF,Batson AG,Brown MM.Validation and characterization of the L5178Y/TK+/− mouse lymphoma mutagen assay system.Mutat Res.1979 Jan;59(19):61−108)、たいていの管理機関によって認可されている。
【0185】
マウスリンパ腫アッセイは、小形または大形と呼ばれるTFT耐性コロニーの二峰性のサイズ分布をしばしばもたらす。活性対立遺伝子内の点変異および欠失(遺伝子内事象)は、大形コロニーをもたらすと推定された。小形コロニーは、一部に、活性TK対立遺伝子だけでなく、その発現が細胞の成長速度をモジュレートするフランキング遺伝子にも影響を与える病変に起因する。
【0186】
試験品目は、50.0mg/mlの濃度でRPMI1640完全培地に可溶であることが判明した。
【0187】
予備的な細胞毒性アッセイを実施した。溶解度の結果に基づいて、S9代謝の不在下または存在下で5000μg/mlの最大投与量にて試験品目をアッセイした。広範囲のより低い投与量、すなわち2500、1250、625、313、156、78.1、39.1および19.5μg/mlを処理系列に含めた。
【0188】
S9代謝活性化の不在下で、短い処理時間を用いると、投与量と無関係に、いくつかの濃度において相対的生存率のわずかな低下が認められた。長い処理時間を用いると、同時的な負の対照値の約60%において相対的生存率を低下させる2つのより高い濃度で毒性が観察された。
【0189】
S9代謝活性化の存在下では、試験したいずれの濃度においても関連する毒性が観察されなかった。
【0190】
予備的な試験で得られた毒性の結果に基づいて、5−トリフルオロチミジン耐性への変異についての2つの独立したアッセイを、以下の第4表に記載の投与量を使用して実施した。
【表7】

【0191】
S9代謝の不在または存在下で、試験品目による処理の後に関連する変異体頻度の増加が観察されなかった。
【0192】
S9代謝の不在下および存在下で各変異実験に溶媒および正対照処理を含めた。溶媒対照培養における変異体頻度は、正常な範囲内にある。正対照処理で顕著な増加が得られ、アッセイ系が正確に機能していることが示された。
【0193】
試験品目は、報告された実験条件下において、S9代謝活性化の不在下または存在下でin vitro処理した後に、マウスリンパ腫L5178Y細胞に変異を誘発しないと結論づけられた。
【0194】
実施例12:細菌(ネズミチフス菌および大腸菌)における光変異誘発アッセイ
露光後、原核生物であるネズミチフス菌および大腸菌における原栄養性への逆変異のアッセイを行うことによって試験品目を光変異誘発活性について調査した。
【0195】
3つのネズミチフス菌テスター菌株であるTA1537、TA98およびTA100、ならびに大腸菌テスター菌株であるWP2を使用した。軟寒天にて試験品目と共培養された細菌に様々な量のUV光を照射した。
【0196】
採用した手順は、Ames et al.1975によって開発され、Maron and Ames、1983によって修正された。
【0197】
試験品目を無菌蒸留水の水溶液として使用した。
【0198】
試験品目を5000μg/プレートの最大投与量ならびにほぼ半対数間隔をおいた4つのより低い濃度:1580、500、158および50.0μg/プレートにて毒性試験でアッセイした。最大許容投与量に基づいて細菌テスター菌株毎に2つの広い間隔のUV量を選択した。いずれの試験品目濃度においても、またはいずれのUV放射線量においても関連する毒性は観察されなかった。
【0199】
プレート挿入法を使用して、2つの独立した実験を実施した。
【0200】
試験品目を5000μg/プレートの最大投与量ならびに2倍希釈による間隔の4つのより低い投与量:2500、1250、625および313μg/プレートにてアッセイした。調製したプレートを以下のUVAおよびUVB量に曝露した(第5表)。
【表8】

【0201】
結果
試験品目は、試験品目のいずれの投与量においても、いずれのテスター菌株においても、いずれのUV放射線量においても、バックグラウンドのUV効果と比較して復帰変異体コロニーの数の2倍の増加を誘発しなかった。
【0202】
結論
試験品目は、処理がUV光の存在下で実施された場合に、ネズミチフス菌または大腸菌に逆変異を誘発しないと結論づけられる。
【0203】
実施例13:in vitroのチャイニーズハムスタ卵巣細胞における染色体異常(光変異誘発アッセイ)
UVA/UVB放射線の不在下および存在下でのin vitro処理の後でチャイニーズハムスタにおける染色体損傷を引き起こす可能性について試験品目をアッセイした。
【0204】
染色体損傷についての1つのアッセイを紫外光の不在下および存在下で5000、2500、1250、625、313、156、78.1および39.1μg/mlの投与量にて実施した。
【0205】
試験品目の溶液をハンク平衡塩溶液(HBSS)で調製した。
【0206】
UV光の不在下および存在下の双方において、細胞を3時間にわたって処理し、約1.5細胞周期に対応する20時間の収穫時間を使用した。
【0207】
実験には、適切な負対照および正対照を含めた。各試験点において2つの細胞培養物を調製した。
【0208】
収穫時の細胞計数の減少によって測定される試験品目処理の細胞毒性に基づく染色体異常の評価のために投与量を選択した。
【0209】
全投与量範囲にわたって顕著な毒性が観察されなかったため、評価のために選択された投与量は、UV光の不在下および存在下の双方において5000、2500および1250μg/mlであった。
【0210】
100個の中期延展体を、各培養物の染色体異常について評価した。
【0211】
結果
試験品目による処理後に、関連する対照値と比較した、ギャップを包含または排除する、異常を有する細胞の発生率の統計的に有意な増加は、紫外光の不在下または存在下において観察されなかった。
【0212】
(ギャップを包含および排除する)異常を有する細胞の数の統計的に有意な増加は、正対照のミトマイシン−Cおよび8−メトキシプソラレンによる処理の後に観察され、試験系が正確に機能していることが示された。
【0213】
結論
これらの結果によれば報告された実験条件下で、試験品目は、UV光の不在下または存在下でのin vitro処理の後にチャイニーズハムスタ卵巣細胞に染色体異常を誘発しないと結論づけられる。
【0214】
実施例14:Balb/C3t3細胞光毒性アッセイ(ニュートラルレッド取込み)
試験品目の潜在的in vitro光毒性を、異なる投与量の試験品目で処理され、UVA放射線に曝露されたBalb/c3T3細胞に対する細胞毒性についてのニュートラルレッド取込みの測定によって評価した。アール平衡塩溶液(EBSS)を使用して試験品目溶液を調製した。
【0215】
主要アッセイに向けて適切な投与量を選択するために、光の存在下(+UVA)および不在下(−UVA)での予備的な投与量範囲判定実験を実施した。1000μg/mlの最大投与量(試験プロトコルで示される上限)ならびに広範なより低い投与量:500、250、125、62.5、31.3、15.6および7.81μg/mlで試験品目をアッセイした。UVA放射線の存在下および不在下の双方のIC50値を計算しなかったため、光刺激係数(PIF)値を計算することもできなかった。この場合、その化学物質は、光無毒性であると見なされる。同じ投与量範囲を主要アッセイに使用した。
【0216】
1000、500、250、125、62.5、31.3、15.6および7.81μg/mlの投与量を使用して主要実験を実施した。UV光の存在下および不在下での生存率曲線が同様のプロファイルを示し、予備的な投与量判定実験で得られた結果が裏づけられた。両曲線についてのIC50値が存在しなかったため、光刺激係数(PIF)値を計算することができなかった。平均光効果(MPE)は、光無毒性範囲内の0.089であった。
【0217】
この実験は、明らかに負の結果をもたらしたため、さらなる実験を実施しなかった。
【0218】
正対照のクロルプロマジンは、21.9のPIF値で許容し得る正の応答を誘発し、アッセイ系が正確に機能していることを示した。
【0219】
非計算可能PIFまたはMPE<0.1は、得られた結果に基づいて、「光無毒性」を予測するため、試験品目は、報告した実験条件下で「光無毒性」として分類されるべきであると結論づけられる。
【0220】
実施例15:モルモットにおける試験品目0.1%クリームの光刺激/光感作試験
紫外光への曝露を伴う皮膚に対する局所投与後に光アレルギーおよび/または光刺激反応を引き起こす試験品目0.1%クリームの可能性を、モルモットモデルを使用して評価した。
【0221】
試験を2つの段階に分割した。
【0222】
第1の段階では、試験品目の光刺激特性の評価を6つのグループの動物において実施した。これらを使用して、感作アッセイにおける使用のための試験品目の好適な濃度を確定するとともに、光誘発刺激に関する情報を提供した。動物を以下のように処理した(第6表)。
【表9】

【0223】
試験の第2の段階は、全部で5つのグループを以下のように処理した感作の評価であった(第7表)。
【表10】

【0224】
光刺激
それぞれ対照および試験品目、クリーム偽薬ならびに試験品目0.1%クリームで処理されたそれぞれ5匹の動物の2つの(照射)グループ(第6表、グループ1および3参照)、ならびに照射されないことを除いては同様に処理された2つの同様に構成されたグループ(第6表、グループ2および4参照)を使用して、光刺激試験を実施した。希釈されていない試験および対照品目のアリコット(100%)、試験および対照品目の2つの濃縮物(精製水中20%および50%)ならびに媒体のみ(精製水)を、予め動物の背部に準備した所定の皮膚部位に均一に散布した。照射グループ(グループ1および3)の動物を、投与後に、UVA(10ジュール/cm2)およびUVB(0.1ジュール/cm2)放射線に曝露した。5匹の試験(照射)および5匹の対照(非照射)動物(第6表、それぞれグループ6および5参照)において0.001%、0.01%および0.1%の濃度で同じ方法を使用して、正対照基準物質の8−メトキシプソラレンを調査した。対照品目、試験品目または基準品目に対する曝露の約1、4、24、48および72時間後に、処理部位を処理に対する刺激反応の形跡について調査した。
【0225】
結果
1/5の動物において、試験品目0.1%クリームで処理され、UV照射された部位に軽微な刺激が観察された。試験品目で処理されたが、UV照射されていない4/5の動物に軽微または明確な反応が観察された。
【0226】
対照品目(クリーム偽薬)で処理され、UV照射されていない1/5の動物にも軽微な反応が観察された。
【0227】
媒体のみで処理された部位には反応が観察されなかった。
【0228】
試験品目で処理された動物に観察された刺激反応は、UV照射動物にも、より高重度で非照射動物にも認められたため、光誘発されたものではなかった。
【0229】
対照品目で処理された非照射動物にも軽微な随時の反応が観察された。
【0230】
正対照基準品目の8−メトキシプソラレンで処理され、次いで紫外光に曝露された動物は、調査した2つのより高い濃度、すなわち0.01%および0.1%で処理された部位に明確な、または中程度の紅斑および軽微な浮腫を示した。8−メトキシプソラレンに曝露され、後にUV光に曝露されなかった動物には応答が見られず、観察された応答は、光誘発されたものであることが証明された。
【0231】
光感作
対照品目および試験品目で刺激された10匹の動物の2つのグループ(第7表、グループ8および9参照)、および選択された媒体(精製水)で刺激された10匹の動物の1つの対照グループ(第7表、グループ7参照)を使用して光感作試験を実施した。感作を誘発させるために、フロインド完全アジュバントのエマルジョンを動物に皮内注射した。100%濃度の試験および対照品目をFCAの注射部位の間の領域に2週間にわたって全部で6回局所的に投与した。投与後に、動物をUVA(10ジュール/cm2)およびUVB(0.1ジュール/cm2)放射線の双方に曝露した。対照グループの動物を同様にして処理したが、選択された媒体(精製水)を試験または対照品目の代わりに使用した。最終誘発曝露の約2週間後に、媒体ならびにそれぞれ20%および50%濃度の試験または対照品目の局所投与によってすべての動物を攻撃した。これらの濃度は、光刺激試験で得られた結果に基づいて、紫外線照射に関連して皮膚に対して刺激性がないと考えられたため選択された。投与後に、2つの試験グループおよび対照グループの動物をUVA(10ジュール/cm2)およびUVB(0.1ジュール/cm2)放射線の双方に曝露した。各動物のさらなる部位を媒体および試験または対照品目の双方で局所的に処理したが、処理後に紫外線照射に曝露しなかった。攻撃曝露の約24、48および72時間後に、処理部位を処理に対する反応の形跡について調査した。
【0232】
正対照基準品目のムスクアンブレットを、同じ方法を使用して調査して、試験系の有効性を証明した。5匹の動物の1つのグループ(第7表、グループ11参照)をアセトン中15%の濃度のこの物質で誘発した。3匹の動物の対照グループ(第7表、グループ10参照)を媒体(アセトン)のみで同様にして処理した。アセトン中基準品目(ムスクアンブレット)の10%の濃度をその攻撃のために選択した。
【0233】
結果
50%濃度の対照品目、クリーム偽薬で攻撃した後に、紫外線照射すると、グループ(グループ8)の10/10の動物において対照品目に対する応答が生じた。対照品目に対する応答は、グループ8の6/10の動物において、処理されたが照射されなかった部位に観察された。5/5の対照グループの動物(グループ7)において攻撃時に対照品目で処理された後に紫外線照射された部位、そして4/5の対照動物において対照品目で処理されたが照射されなかった部位にも反応が観察された。媒体のみに対する反応は観察されなかった。
【0234】
20%濃度の試験品目0.1%クリームで攻撃した後に、紫外線照射すると、グループ(グループ9)の8/10の動物において試験品目に対する応答が生じた。グループ9の動物において処理されたが照射されなかった部位に、試験品目に対する応答が観察されなかった。5/5の対照グループの動物(グループ7)において攻撃時に試験品目で処理された後に紫外線照射された部位、そして1/5の対照動物において対照品目で処理されたが照射されなかった部位にも反応が観察された。媒体のみに対する反応は観察されなかった。
【0235】
上記結果によれば、試験で処理された動物にも対照品目で処理された動物にも応答が観察されなかった。(試験品目で刺激されなかった)対照グループの動物に観察された反応は、感作でなく物質の刺激効果によるものであった。加えて、反応は、UV照射されなかった部位にも観察された。
【0236】
このため、5%のより低い濃度で試験および対照品目を用いて第2の攻撃(再攻撃)を実施した。
【0237】
5%濃度の試験および対照品目で再攻撃された後、紫外線照射されたグループ8および9のいずれの動物にも応答が観察されなかった。グループ8または9の動物において処理されたが照射されなかった部位に、試験または対照品目に対する応答が観察されなかった。攻撃時に対照または試験品目で処理された対照グループの動物(グループ7)において、いずれの部位にも反応が観察されなかった。媒体のみに対する反応は認められなかった。
【0238】
正対照動物を10%濃度の基準品目(ムスクアンブレット)で攻撃した後、紫外線照射すると、グループ(グループ11)の4/5の動物において応答(非常に軽微または軽微な紅斑)が生じた。グループ11の動物において処理されたが照射されなかった部位に基準品目に対する応答が観察されなかった。媒体で刺激されたグループ10の動物に基準品目に対する応答が観察されなかった。これは、試験系が、物質の光アレルギー特性を検出できることを示している。
【0239】
結論
得られた結果は、試験品目0.1%クリームが、紫外光を伴う皮膚曝露後に光刺激または光アレルギー応答を引き起こし得ることを示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
1およびR2は、同一の、または異なる残基であり、それぞれ独立して、
(a)水素、ハロゲン、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アシル、ニトロ、カルバモイル、低級アルキルアミノカルボニル、−NR56[式中、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換アラルキル、置換もしくは非置換低級アルキルアミノカルボニル、置換もしくは非置換低級アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルから選択され、またはR5およびR6は、窒素原子と一緒になって複素環基を形成する]、
(b)−CO(CH2j4[式中、jは、1〜6であり、R4は、
(i)水素、ハロゲン、−N3
(ii)−NR56[式中、R5およびR6は、上記定義の通りである]
(iii)−SR7[式中、R7は、水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、置換もしくは非置換アラルキル、−(CH2aCO210(式中、aは、1または2であり、R10は、水素および置換もしくは非置換低級アルキルからなる群から選択される)および−(CH2aCO256からなる群から選択される]、
(iv)−OR8、−OCOR8[式中、R8は、水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリールから選択される]からなる群から選択される]、
(c)−CH(OH)(CH2j4[式中、jおよびR4は、上記定義の通りである]、
(d)−(CH2dCHR11CO212または−(CH2dCHR11CONR56[式中、dは、0〜5であり、R11は水素、−CONR56または−CO213であり、R13は、水素または置換もしくは非置換低級アルキルであり、R12は、水素または置換もしくは非置換低級アルキルである]、
(e)−(CH2k14[式中、kは2〜6であり、R14は、ハロゲン、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、−COOR15、−OR15(式中、R15は水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリールまたはアシルである)、−SR7(式中、R7は上記定義の通りである)、−CONR56、−NR56(式中、R5およびR6は、上記定義の通りである)または−N3である]、
(f)−CH=CH(CH2m16[式中、mは、0〜4であり、R16は、水素、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換低級アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換ヘテロアリール、−COOR15、−OR15(式中、R15は上記定義の通りである)、−CONR56または−NR56(式中、R5およびR6は、上記定義の通りである)である]、
(g)−CH=C(CO2122[式中、R12は上記定義の通りである]
(h)−C≡C(CH2n16[式中、nは0〜4であり、R16は上記定義の通りである]、
(i)−CH2OR22[式中、R22は、3つの低級アルキル基が同一であるか、もしくは異なるトリ低級アルキルシリルであるか、またはR22はR8と同じ意味を有する]、
(j)−CH(SR232および−CH2−SR7[式中、R23は、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルであり、R7は、上記定義の通りである]からなる群から選択され、
3は、水素、ハロゲン、アシル、カルバモイル、置換もしくは非置換低級アルキル、置換もしくは非置換アルケニル、置換もしくは非置換低級アルキニルまたはアミノであり、
1およびW2は、独立して、水素、ヒドロキシであり、またはW1およびW2は、一緒になって酸素を表し、
Xは、ポリマー部分である]のインドロカルバゾール化合物のポリマー結合体を製造するための方法であって、
一般式(II)
【化2】

[式中、
Xは、上記定義の通りである]のω−1H−イミダゾール−カルボキサミドポリマー化合物と、一般式(III)
【化3】

[式中、
1、R2、R3、W1およびW2は、上記定義の通りであり、保護基により場合によって保護されており、Yは脱離基を表す]のインドロカルバゾール化合物とを反応させることを含み、式(I)の化合物を得るために、更に場合によって、R1、R2、R3、W1およびW2基を脱保護することを含む前記方法。
【請求項2】
有機溶媒中塩基の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基と式(III)の化合物とのモル比は、約1:1〜約4:1、好ましくは約1:1〜約1.5:1、より好ましくは約1:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基は、アルカリ金属水素化物からなる群から選択され、特に水素化ナトリウムである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ジクロロメタン、クロロホルムおよびN,N−ジメチルホルムアミドの群から選択される有機溶媒、好ましくは無水有機溶媒中で実施される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
不活性ガス雰囲気下、好ましくは窒素またはアルゴン雰囲気下で実施される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
0℃の初期工程後に−10〜60℃、好ましくは25℃までの、最も好ましくは室温で実施される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(I)のポリマー結合体化合物は、クロマトグラフィー精製によって直接得られる、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)のポリマー結合体化合物の精製は、好ましくは、ジクロロメタン、水、メタノール、アセトニトリル、異なる混合比のギ酸アンモニウム緩衝液から選択される溶媒中で実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(III)の化合物の質量に基づいて、約40質量%〜約95質量%、好ましくは約50質量%〜約95質量%の式(I)の化合物の収率をもたらす、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
脱離基Yは、トリフレート、トシレート、メシレート、スルフェート、ハロゲン、ヒドロキシまたは低級アルコキシ基から選択される、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
脱離基Yは、低級アルコキシ基、好ましくはメトキシ基である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ポリマーXは、ポリ(アルキレンオキシド)、特に(ポリエチレン)オキシドから選択される、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーXは、好ましくは、メトキシ−ポリエチレングリコール(m−PEG)などの末端がアルコキシで置換されたポリエチレングリコールから選択される(ポリエチレン)グリコール(PEG)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーXは、約100〜約100000Da、好ましくは約200〜約50000Daの分子量を有する、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーXは、平均分子量が約500〜約10000Da、例えば約550Da、約1100Da、約2000Daまたは約5000Daの(ポリエチレン)グリコール、例えばmPEGである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
1、R2、R3、W1およびW2が水素である、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
式(I)
【化4】

[式中、
1、R2、R3、W1、W2およびXは、請求項1または請求項13から16までのいずれかに定義されている通りである]のインドロカルバゾール化合物、またはその製剤学的に認容性の塩のポリマー結合体。
【請求項19】
1、R2、R3、W1およびW2が水素である、請求項18に記載のポリマー結合体。
【請求項20】
ポリマーXは、平均分子量が約500〜約10000Da、例えば約550Da、約1100Da、約2000Daまたは約5000Daの(ポリエチレン)グリコール、例えばmPEGである、請求項18または19に記載のポリマー結合体。
【請求項21】
医薬に使用するための、請求項18から20までのいずれか一項に記載ポリマー結合体。
【請求項22】
局所投与のための医薬に使用するための、請求項21に記載のポリマー結合体。
【請求項23】
例えば注射、注入または吸入による全身投与のための医薬に使用するための、請求項21に記載のポリマー結合体。
【請求項24】
請求項18から20までのいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリマー結合体を、場合によって製剤学的に認容性の担体、助剤、希釈剤および/または添加剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項25】
診断および/または治療用途のための、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
HMGB1関連病状の予防、緩和および/または治療のための医薬を製造するための、請求項18から21までのいずれか一項に記載のポリマー結合体の使用。
【請求項27】
HMGB1関連病状は、狭窄、再狭窄、アテローム硬化症、リウマチ様関節炎、自己免疫疾患、腫瘍、感染性疾患、敗血症、急性炎症性肺傷害、紅斑性狼瘡、神経変性疾患、中枢および末梢神経系の疾患ならびに多発性硬化症から選択される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記ポリマー結合体は、医療デバイスの表面に可逆的に固定される、請求項26または27に記載の使用。
【請求項29】
中枢および末梢神経系の神経障害、神経疾患および神経変性障害の予防、緩和および/または治療のための医薬を製造するための、請求項18から21までのいずれか一項に記載のポリマー結合体の使用。
【請求項30】
皮膚病の予防、緩和および/または治療のための医薬を製造するための、請求項18から21までのいずれか一項に記載のポリマー結合体の使用。
【請求項31】
前記皮膚病は、ケラチノサイトの過剰増殖によって特徴づけられる、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記皮膚病は、乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、ざ瘡、毛孔性紅色粃糠疹、ケロイド、過形成性瘢痕および皮膚腫瘍である、請求項30または31に記載の使用。
【請求項33】
前記皮膚病は乾癬である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記医薬は、局所投与のために製造される、請求項30から33までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記投与は、リポソームの形で実施される、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
NGF関連疼痛および痛覚過敏症の予防、緩和および/または治療のための医薬を製造するための、請求項18から21までのいずれか一項に記載のポリマー結合体の使用。
【請求項37】
炎症性疾患、自己免疫疾患、全身性炎症応答症候群、臓器移植後の再潅流傷害、心臓血管疾患、産科および婦人科疾患、感染性疾患、アレルギー性およびアトピー性疾患、固形および液体腫瘍病状、移植片拒絶疾患、先天性疾患、皮膚疾患、神経疾患、悪液質、腎臓疾患、医原性中毒状態、代謝性および特発性疾患、ならびに眼科疾患の予防、緩和および/または治療のための医薬を製造するための、請求項18から21までのいずれか一項に記載のポリマー結合体の使用。
【請求項38】
ベーチェット病、シェーグレン症候群、血管炎、ブドウ膜炎、網膜炎の予防、緩和および/または治療のための医薬を製造するための、請求項18から21までのいずれか一項に記載のポリマー結合体の使用。
【請求項39】
前記医薬は、全身投与に向けられる、請求項36から39までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
少なくとも1つの抗炎症薬と組み合わせた、請求項26から39までのいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−513447(P2012−513447A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542820(P2011−542820)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067817
【国際公開番号】WO2010/072795
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511153046)
【氏名又は名称原語表記】Creabilis SA
【住所又は居所原語表記】12, rue Leon Thyes L−2636 Luxembourg, Luxembourg
【Fターム(参考)】