説明

インバーター

【課題】後続のフィルターを簡略化しても優れた交流電圧を得る。
【解決手段】バイブレーター2の発振電圧eを出力トランジスター3で電力増巾した後、これを同期弁別作用をするスイッチングトランジスター8、9で同期検波して出力トランス17に加え、この2次コイルSの出力電圧を更にフライバック電圧除去回路とチョークコイル18を通して出力端子ABに交流電圧Eを得るようにしたインバーターで、この交流電圧Eが所要の外部交流電源の交流電源23と全く等しい波形の交流電圧となるようにする為に交流電源23の電圧を制御トランス15に印加し、この2次コイルの出力電圧でバイブレーター2の発振方形波電圧のデューティを制御してその時点の交流電源23の位相角θの正弦値と等しいデューティを得るようにして低次高調波成分を含まない出力電圧Eを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインバーターの改善に関するもので、近来クリーンエネルギーとして色々の直流電源が開発され装置が大容量になって来ると安価で小型軽量等の様々の性能の改善向上が強く要望されるようになって来たのであるがこのインバーターを電力系統の交流電源と並列運転する場合、特に安定な電力授受を行えるインバーターの開発が要望されている。
【背景技術】
【0002】
従来のインバーターはスイッチング素子により直流電圧を方形波成分の交流電圧に変換した後に必要に応じて波形整形回路(以下フィルターと記す)により低歪率の交流電圧に整形使用するものであるからフィルターが大型となる為、この改善が要望されて居るものである。特に大電力となって商用の電力系統との並列運転が要求される場合は、電力系統の電源との間に大きな横流が流れて機器を損傷する危険も考えられるのでこの改善対策は大きなテーマとなって居るものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】 清水 和男著 「安定化電源回路の設計」CQ出版 1978年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバーターは発振周波数を出来るだけ高くして出力トランスを小型化しても発振方形波電圧は理論上高調波成分を多く含んで居るのでフィルターがどうしても大型となる欠点があった。本発明は以下に述べる簡単な制御回路を用いてマルチバイブレーター2(以下バイブレーターと記す)の任意時点における発振電圧eの方形波のデューティが所要の交流電圧波形のその時点の位相角の正弦値と常に等しくなるようにバイブレーター2の発振を制御して低次高調波を除去するようにして大容量のフィルターを改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図1Aは所要の交流電圧を正弦波とした場合、各位相角θとその時点における発振方形波のデューティを概略表示したものである。X軸は位相角θとバイブレーター2の発振周期を55μs程度として50Hzの交流半波10msの間に180ヶの方形波を発振させた場合の発振累計数を示し、Y軸は正弦値(sinθ)を示したもので曲線1はこの値をプロットしたものである。方形波で示した曲線2の波形はその巾の広さで発振方形波のデューティを概略図示したものである。今θ=30°とすれば図からこの時点における方形波の累計数は30ヶとなり、このときのsinθは0.5、方形波のデューティはは50%を示している。θ=60°では累計数は60ヶ、この時点でのsinθは0.86、方形波ののデューティは86%を示している。θ=90°となった時点ではsinθは1.0、方形波ののデューティは100%としなければならないわけであるが、バイブレーターの発振特性上この領域では発振周期が不安定となり易いので、本発明では95%程度に制限しておく事とするものである。図1Bのグラフで最大波高値部の電圧が低下して歪を生ずるので前述の各位相角時点での方形波のデューティもこの分だけ少なく設定して出力電圧低下分は出力トランス17の昇圧比を高くして補正する必要がある。このとき、トランス17の電磁作用で生ずるフライバック電圧を除去すれば、その出力電圧Eは図1Bに示した如く高次の高調波成分のみを含んだ電圧波形となるので、出力端のフィルターは簡単なものでも優れた正弦波の交流電圧Eを得ることが出来る。
【0006】
図2は、インバーターを商用電力系統の交流電源と並列運転出来るように開発した場合の実施例を挙げてその回路構成を示したもので、公知とされる電気回路は省略してある。1.は太陽電池、2.はバイブレーターでこの発振トランジスタQで方形波を発振する。4.5.は結合コンデンサー、6.7.はベース抵抗と等価的に作動するバイアストランジスターで結合コンデンサー4.5.との組合せでバイブレーター2の発振周期を決めるCR時定数回路として作動する。3は出力トランジスターで発振トランジスターQから駆動されて電力増巾した後に同期スイッチ用のトランジスター8.9.を経て出力トランス17の2つの1次コイルPを交互に駆動するので2次コイルSには任意の電圧に変圧された方形波を発生する。しかしトランス17のインダクタンス成分に基づくフライバック電圧も含んで居るので、ダイオード25.26.とスイッチングトランジスター27.28から成るフライドバック電圧除去回路により逆極性電圧成分を除去すると図1Bにその電圧波形を示した如く高調波成分のみを含んだ交流電圧となるので、チョークコイル18とコンデンサー19から成る簡単なフィルター回路を通すだけで優れた波形の交流電圧Eを得ることが出来るものである。交流電源23は、インバーターが直流を交流に変換しようとする交流電圧波形をして居る電源で、インバーターを単独使用する場合はCR発信器等の交流電圧を用い、商用の電力系統と並列運転しようとする場合は電力系統の交流電圧である。図から交流電源23は抵抗21を経て制御トランス15に接続され4ヶの2次コイルlにより適当に変圧された交流電圧を発生して、以下に述べる制御機能を発揮してインバーターの出力電圧Eの電圧波形に低次高調波成分が含まれない様にするものである。
【0007】
太陽電池1に充分な起電力が発生すればこの電圧Eによりベース抵抗10、11を通してバイアストランジスター6、7にベース電流を流入するのでバイブレーター2は発振を開始する。ここで、このベース電流を調整してバイブレーター2の発振電圧eの方形波出力電圧の周期を任意の10〜100μs程度でこの波形のデューティが1%以下の極めて狭いパルス電圧を発生するようにセットすればバイブレーター2は安定な無負荷運転を起動する。ここで制御トランス15に交流電源23から交流電圧が給電されると制御トランス15の2次コイルlの電圧はダイオードブリッヂ13、14で全波整流され図示の極性の脈流電流を生じ、これはベース抵抗12、16を通してバイアストランジスター6、7を駆動する。コイルlの出力は発振電圧eのON期間を長くし、コイルlの出力はOFF期間を短くするように作用するので、バイブレーター2の発振周期は変化せずデューティだけが交流電源23の瞬時位相角時点の波高値に比例して変化し、図1A−1に示す如き方形波の発振電圧eを発生する。2次コイルlの出力電圧は交流電源23の電圧から丸印で示した極性電圧でトランジスター8、9を駆動する。丸印が正極性の期間は、スイッチングトランジスター9をONとするので出力トランジスター3はPコイルを駆動し、負極性の期間はスイッチングトランジスター8をONとしてPコイルを駆動するので出力トランス17の2次コイルSには交流電源23と同じ極性の電圧を発生する。このとき、方形波電圧にはフライバック電圧も含有して居るのでこれを除去する為に設けられたのがフライバック電圧除去回路である。2次コイルlの交流電圧は交流電源23の電圧と丸印で示した極性電圧でスイッチングトランジスター27、28を駆動する。丸印が正極性の期間はスイッチングトランジスター27がONとなるからダイオード25の順方向電流は出力トランス17の出力電流をチョークコイル18に給電するが、逆方向のフライバック電圧はダイオード25でカットされる。負極性の期間ではスイッチングトランジスター28がONとなるので、ダイオード26の順電流方向の電流をチョークコイル18に給電するがフライバック電圧はダイオード26でカットされるので結果的に方形波出力電圧は導通するが、フライバック電圧はカットされるので出力電圧Eは図1Bに示した如き波形の電圧を発生するものである。
【0008】
ここで交流電圧Eが所定の電圧に達すれば電磁リレー22が作動して出力スイッチ24をONとするので、インバーターは外部回路に電力を供給する。図では交流電源23と並列する状態となるのでこの間に電力の授受が行われる。太陽電池の出力が増加して交流電圧Eが高くなれば変流器20を通して負荷電流が流れて2次コイルの出力端に設けた調整抵抗21に負荷電流に比例した電圧Esを発生する。これは交流電源23の電圧に対して減極性に作用するので制御トランス15に印加されて居る交流電圧を減少させるのでバイブレーター2の発振電圧eのデューティが減少し、インバーターの交流電圧Eを減少させるように作動するのでインバーターが過負荷状態になるのを防止する。調整抵抗21はこの感度を調整する為の可変抵抗器であるほうが好ましいものである。図から明らかなようにこの制御回路は特に大きな時間遅れの回路要素を持って居ないので、交流電源23の高調波の歪に基づいた差電圧や交流電源23からの横流で負荷電流の極性が反転した場合でも横流を減少させる方向に作用する優れた特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上、図2にその実施例を挙げて本発明の動作原理を説明せる如く所要の交流電圧を得るために、この電圧を制御トランス15に印加しこの4つの2次コイルの電圧でインバーターの出力電圧Eが低次高調波成分を含まない波形電圧となるように制御して出力端のフィルターを簡略化することに成功したもので、この取扱いも簡単で小型、軽量、安価なインバーターを提供するものであるからこの利用効果は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 交流電圧波形の各瞬時の位相角θの時点でのバイブレーター2の発振電圧eの方形波のデューティがその位相角の正弦値に等しくなるようにした場合の発振電圧eの概略図形と出力トランス17からフライバック電圧除去回路を経て得られる出力電圧Eの電圧波形を示したものである。
【図2】 本発明の動作原理を説明する為に簡単な電子回路で基本的な回路構成を示したものである。
【符号の説明】
【0011】
1 直流電源
2 マルチバイブレーター
3 出力トランジスター
4、5 結合コンデンサー
6、7 バイアス用トランジスター
8、9、27、28 スイッチングトランジスター
10、11、12 ベース抵抗
13、14 ダイオードブリッヂ
15 制御トランス
17 出力トランス
20 変流器
22 電磁リレー
23 交流電源
25、26 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチバイブレーター(2)で方形波電圧を発振させ、この発振電圧(e)を電力増巾、波形整形を行って所要の交流電圧(E)を得るようにしたインバーターで、発振電圧(e)の方形波のON期間とOFF機関の比を示すデューティが交流電源(23)の電圧波形の任意時点の位相角の正弦値と等しくなるように制御する為に制御トランス(15)を設け、これに交流電源(23)の電圧を印加して2ヶの2次コイル(l)(l)に発生する電圧をダイオードブリッジ(13)(14)により整流した脈流電圧でマルチバイブレーター(2)の発振周期の時定数を制御して発振電圧(e)のデューティが交流電源(23)の交流電圧波形の任意時点の位相角の正弦値と等しくなるようにしたインバーター。
【請求項2】
ダイオード(25)とスイッチングトランジスター(27)の直列回路と、ダイオード(26)とスイッチングトランジスター(28)の直列回路とを、並列に接続したフライバック電圧除去回路を、インバーター出力トランス(17)の2次コイル(s)とフィルター用チョークコイル(18)との間に直列に接続して、インバーターの出力電圧(E)にフライバック電圧成分が含まれない様にしたインバーター。

【図1】
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【図2】
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