説明

インバータ収納ケース用カバー

【課題】車両等にインバータ収納ケースが逆さまに搭載された際にケース下方に配置状態となったケース開口のカバー部分に水等の液体が貯留されることを防止すること。
【解決手段】インバータ収納ケース用カバー30は、全体の平面形状が概略楕円形状でこの長手方向の平行な2辺に上下対向位置に第1ネジ穴形成部30a及び第2ネジ穴形成部30bが形成され、同じ辺に横並びにネジ穴形成部30a,30bが形成され、この全体形状の周回辺に裏側の水平面に対して垂直に突き立った側壁30bが形成されている。ネジ穴形成部30a,30bには、貫通したネジ穴30cが形成され、このネジ穴30cとやや内側に離間して裏面全体を周回するパッキン溝30dがある。第1ネジ穴形成部30aのネジ穴形成面30eに対して、所定の高さh1だけ1段下がった水平な面である段差面30fを形成し、更に段差面30fに貫通した水抜き穴30gを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換を行うインバータを収納するケースの開口部を密閉状態に蓋をするインバータ収納ケース用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図1に示すように、図示せぬインバータを収納するケース10には、収納されたインバータに外部から3相ケーブルU,V,Wと、直流電源のプラス側ケーブルP及びマイナス側ケーブルNを接続するための高圧端子台11が内部に配設されている。高圧端子台11には、各ケーブルU,V,W,P,Nをボルトで固定するための複数の貫通口13が形成されており、各貫通口13がケース10に開けられた開口部12を通して露出するようになっている。また、開口部12の周囲には、ネジ穴16aを有するカバー組付部分16がある。
【0003】
この開口部12から図1のA1−A2断面図である図2に示すように、例えばW相ケーブルを高圧端子台11に導き、ボルト15a及びナット15bでインバータに接続されたW相のバスバWBと接続して高圧端子台11に固定する。このように全てのケーブルU,V,W,P,Nを固定した後に、カバー組付部分16に図3に示すインバータ収納ケース用カバー17を合わせてねじ止めすることにより開口部12に蓋をしてケース10を気密状態とする。
【0004】
インバータ収納ケース用カバー17は、図3に裏側(ケース10蓋時の内部側)から見た平面図に示すように、全体が概略楕円形状でこの長手方向の平行な2辺に図面に向かって上下対称に2つずつ計4つのネジ穴形成部17aが水平に突き出した形状を成す。更に、この全体形状の周回辺に裏面の水平面に対して垂直に突き立った側壁17bが形成されている。各ネジ穴形成部17aには、貫通したネジ穴17cが形成されている。このネジ穴形成部17aの内周側には、ネジ穴17cとやや離間して裏面全体を周回するパッキン溝17dが設けられている。
【0005】
このインバータ収納ケース用カバー17をケース10の開口部12に密着して固定した際に、図3に示すC1−C2線で切断した際の形状を図4に示す。但し、この図4は図2に示したインバータ収納ケース用カバー17で蓋したケース10と上下が180°反転した状態を示す。
【0006】
図4に矢印C3で示すようにC1−C2断面部分は、ネジ穴形成部17aのネジ穴17cにネジ18が螺合されてケース10に固定されている。これによってケース10の開口部12の直立した側壁10aの端面にパッキン溝17dに嵌合されたパッキン19が押圧状態に密着している。但し、パッキン19はゴム等の弾性部材である。これによってインバータ収納ケース用カバー17がケース10に密着状態に固定されている。この種の従来技術として特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−257459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のインバータ収納ケース用カバー17においては、通常ケース10を車両に搭載する場合、図2に示したようにインバータ収納ケース用カバー17が上に配置される状態で搭載される。しかし、車両によってはケース10が上下逆さまに搭載される場合がある。この場合、インバータ収納ケース用カバー17は、図4に示したように逆さまの状態となる。このため、図4に示すようにネジ穴形成部17aが上方が開口した受け皿状態となって、この部分に符号20で示すように水が溜まってしまうことがある。このようにネジ穴形成部17aに水20が溜まると、この水20はパッキン溝17dと側壁17bとの間の凹部にも符号20で示すように溜まる。このように水20が溜まった場合、パッキン19が何らかの原因で損傷したり変形したりしてケース10との間に隙間が生じた場合、ケース10内に水20が浸入してインバータに不具合が生じるという問題がある。なお、水20以外の液体が溜まった場合でも同様の問題となる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両等にインバータ収納ケースが逆さまに搭載された際にケース下方に配置状態となったケース開口のカバー部分に水等の液体が貯留されることを防止することができるインバータ収納ケース用カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、インバータを収納するケースの開口部を当該開口部の端部との間にパッキンを介在して密閉状態に蓋をする形状であり、この形状として前記パッキンを前記開口部の端部に押圧するためのケースへのネジ止め用のネジ穴が形成された平面状のネジ穴形成面を有するネジ穴形成部と、このネジ穴形成部を含むカバー全体の水平状の面の周囲に直立する側壁とを備えるインバータ収納ケース用カバーにおいて、前記ネジ穴形成部は、前記ネジ穴形成面のケース当接側である裏面を上方に向けた際に当該裏面に対して、所定の高さだけ下がった水平な面である段差面を備えると共に、少なくとも当該段差面を貫通した水抜き開口部を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、インバータ収納ケース用カバー(カバー)で開口部が密着状態に蓋されたケースが車両などの被搭載装置に逆さまに搭載されることによってカバーの裏面が上向きとなり、カバーのネジ穴形成部が受け皿状態となってそこから液体がネジ穴形成面に入った場合でも、この水がネジ穴形成面から1段下がった段差面の水抜き穴に導かれ、ケース外部へ流れ落ちる。従って、従来のようにネジ穴形成部に水が溜まることを防止することが出来る。これによって、何らかの原因でパッキンが損傷又は変形して当該パッキンとケースとの間に隙間ができた場合でも、従来のように貯留水がないので、その隙間から水がケース内に浸入することが無くなり、このため、水の浸入によりインバータに不具合が生じるということを防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記水抜き開口部は、前記段差面を貫通した貫通穴であることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、水抜き開口部は段差面を貫通した貫通穴なので、当該穴の形成を容易に行うことができる。従って製造コストの低減を図ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記水抜き開口部は、前記段差面の側壁の一部を除去したスリット部であることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、水抜き開口部は段差面の側壁の一部を除去したスリット部なので、その形成を容易に行うことができる。従って製造コストの低減を図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記ネジ穴形成部を含むカバー全体の側壁を全て除去した形状であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、カバーをケースに密着させた際にネジ穴形成面の部分に側壁が無いので、ケースとの間に前述のような受け皿ができず水が溜まらない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】インバータ収納ケースの外観を示す平面図である。
【図2】図1に示すA1−A2断面図である
【図3】従来のインバータ収納ケース用カバーの裏側から見た平面図である。
【図4】図3に示すC1−C2線で切断した際の断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るインバータ収納ケース用カバーの構成を示す斜視図である。
【図6】(a)は本実施形態のインバータ収納ケース用カバーの裏面側の平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は(a)に示すD1−D2断面図である。
【図7】図6に示すD1−D2線で切断した際の断面図である。
【図8】(a)は本発明の実施形態の応用例1に係るインバータ収納ケース用カバーの構成を示す平面図、(b)は正面図である。
【図9】本発明の実施形態の応用例2に係るインバータ収納ケース用カバーの構成を示す平面図である。
【図10】図9に示すF1−F2線で切断した際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
【0020】
図5は、本発明の実施形態に係るインバータ収納ケース用カバーの構成を示す斜視図、図6(a)はインバータ収納ケース用カバーの裏面側の平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図、(d)は(a)に示すD1−D2断面図である。
【0021】
図5及び図6に示すインバータ収納ケース用カバー30(以降、カバー30とも略す)は、図1及び図2に示したインバータ収納用のケース10の開口部12に密着状態に蓋をしてケース10の内部を気密状態とするものである。カバー30は、全体の平面形状が概略楕円形状でこの長手方向の平行な2辺に図6(a)を参照するように上下対向位置に第1ネジ穴形成部30a及び第2ネジ穴形成部30bが形成され、同じ辺に横並びに第1ネジ穴形成部30a及び第2ネジ穴形成部30bが形成されている。
【0022】
更に、カバー30は、この全体形状の周回辺に裏側の水平面に対して垂直に突き立った側壁30bが形成されている。第1及び第2ネジ穴形成部30a,30bには、貫通したネジ穴30cが形成されている。これらネジ穴形成部30a,30bの内周側には、ネジ穴30cとやや離間して裏面全体を周回するパッキン溝30dが設けられている。
【0023】
本実施形態の特徴は、第1ネジ穴形成部30aのネジ穴30cが形成された水平な面であるネジ穴形成面30eに対して、所定の高さh1だけ1段下がった水平な面である段差面30fを形成し、更に段差面30fに貫通した水抜き穴30gを形成した点にある。なお、段差面30fの水抜き穴30gの近傍に形成されている他の穴30hは、カバー30をケース10に取り付ける際の位置決め穴30hであり、この位置決め穴30hにケース10の開口部12に設けられた図示せぬ垂直棒状の凸部が嵌合されて位置決めが行われる。
【0024】
このような構成のカバー30をケース10の開口部12に密着固定して、このケース10を上下逆さまに(上下180度反転して)車両に搭載した場合に、図6に示すD1−D2線で切断した際の形状は、図7に示す状態となる。即ち、ネジ穴形成部30aのネジ穴30cにネジ18が螺合されてケース10に固定されることによってケース10の開口部12の表面にパッキン溝30dに嵌合されたパッキン19が押圧状態に密着する。
【0025】
この際、ネジ穴形成部30aの側壁30bとケース10との間に矢印Y1で示すように隙間が生じる。この隙間から水が入った場合、この水はネジ穴形成面30eから1段下がった段差面30fに流れ、更に矢印Y2で示すように水抜き穴30gからケース10外部へ流れ落ちる。
【0026】
このように本実施形態のインバータ収納ケース用カバー30によれば、当該カバー30で開口部12が密着状態に蓋されたケース10が逆さまに車両に搭載されることによってカバー30の裏面が上向きとなり、カバー30のネジ穴形成部30aが受け皿状態となってそこから水(又は何らかの液体)がネジ穴形成面30eに入った場合でも、この水がネジ穴形成面30eから1段下がった段差面30fの水抜き穴30gに導かれ、ケース10外部へ流れ落ちるようにすることができる。従って、従来のようにネジ穴形成部30aに水が溜まることを防止することが出来る。これによって、何らかの原因でパッキン19が損傷又は変形して当該パッキン19とケース10との間に隙間ができた場合でも、従来のように貯留水がないので、その隙間から水がケース内に浸入することが無くなり、このため、水の浸入によりインバータに不具合が生じるということを防止することができる。
【0027】
また、水抜き穴30gは、貫通穴なので、その形成を容易に行うことができ、これによって製造コストの低減を図ることができる。
【0028】
また、本実施形態の応用例1として、図8(a)及び(b)に示すように、第1ネジ穴形成部30aの段差面30fに水抜き穴30gを設けず、代わりに、その段差面30fの側壁30bの一部を符号30iで示すように除去したスリット部を形成しても良い。このスリット部30iは、それ以外にも、パッキン溝30dが損なわれない部分の側壁30bであれば図示するように何処に形成しても良い。このように側壁30bにスリット部30iを形成しても、ネジ穴形成部30aの側壁30bとケース10との間の隙間から入った水を、スリット部30iから外部へ導くことが出来る。従って、上記実施形態と同様の作用効果を得ることが出来る。また、スリット部30iは、少なくとも段差面30fの側壁30bの一部を除去して形成するので、その形成を容易に行うことができる。従って製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態で形成した水抜き穴30gと、その応用例で形成したスリット部30iとの双方を含む上位概念として、カバー30の底部又は側壁30bを貫通する水抜き開口部と称す。
【0030】
更に、本実施形態の応用例2として、図9に示すインバータ収納ケース用カバー30−2としても良い。このカバー30−2は、第2ネジ穴形成部30bであるネジ穴形成部30jのみを4つ備え、全体の楕円形状の周囲から側壁30bを無くした形状となっている。その側壁30bを無くした周囲のネジ穴形成部30j以外の部分は段差面30fとなっている。このような構成のカバー30−2をケース10に密着させると、図10ネジ穴形成面30eの部分に側壁30bが無いので、ケース10との間に前述のような受け皿ができず水が溜まらない。従って、上記実施形態と同様の作用効果を得ることが出来る。また、側壁30bが無いので、その分、容易に形成することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 インバータ収納ケース
12 開口部
30 インバータ収納ケース用カバー
30a 第1ネジ穴形成部
30b 第2ネジ穴形成部
30c ネジ穴
30d パッキン溝
30e ネジ穴形成面
30f 段差面
30g 水抜き穴
30h 位置決め穴
30i スリット部
30j ネジ穴形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータを収納するケースの開口部を当該開口部の端部との間にパッキンを介在して密閉状態に蓋をする形状であり、この形状として前記パッキンを前記開口部の端部に押圧するためのケースへのネジ止め用のネジ穴が形成された平面状のネジ穴形成面を有するネジ穴形成部と、このネジ穴形成部を含むカバー全体の水平状の面の周囲に直立する側壁とを備えるインバータ収納ケース用カバーにおいて、
前記ネジ穴形成部は、前記ネジ穴形成面のケース当接側である裏面を上方に向けた際に当該裏面に対して、所定の高さだけ下がった水平な面である段差面を備えると共に、少なくとも当該段差面を貫通した水抜き開口部を備えることを特徴とするインバータ収納ケース用カバー。
【請求項2】
前記水抜き開口部は、前記段差面を貫通した貫通穴であることを特徴とする請求項1に記載のインバータ収納ケース用カバー。
【請求項3】
前記水抜き開口部は、前記段差面の側壁の一部を除去したスリット部であることを特徴とする請求項1に記載のインバータ収納ケース用カバー。
【請求項4】
前記ネジ穴形成部を含むカバー全体の側壁を全て除去した形状であることを特徴とする請求項1に記載のインバータ収納ケース用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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