説明

インバータ電源装置

【課題】交流フィルタとΔ-Y結線である変圧器を介して三相交流電圧を出力するインバータ電源装置に、誘導負荷等を接続した場合、従来の電流検出器構成では、カレントトランス(CT)を用いる場合は、過渡電流によりCTが磁気飽和し、検出値に大きな誤差が発生する、もしくは変圧器の励磁電流を検出できずに定常的に誤差を生じる。直流電流検出器(DCCT)を用いることで誤差なく電流を検出できるが、DCCTの動作電源として電源線を引くことで制御電源の信頼性の低下や引き通し線が増加する問題がある。
【解決手段】交流フィルタに入力される電流を検出するCTと、変圧器から出力される相電流の差を検出するように接続され、前述のCTとの感度の比が変圧器の巻線比と等しいCTを差動結線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流フィルタとΔ-Y結線である変圧器を介して三相交流電圧を出力するインバータ電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交流フィルタとΔ-Y結線である変圧器を介して三相交流電圧を出力するインバータ電源装置は一般的に、変圧器の偏磁と交流フィルタの共振を防ぐため、直流電流検出器(DCCT)及びカレントトランス(CT)によって回路中の電流値を検出し、その制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−322267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のDCCTとCTの構成のうち図2-aに示されるフィルタインダクタ部にDCCTを用い、変圧器二次側にCTを用いた構成の場合、誘導負荷等を投入したときに流れる過渡的な直流電流により変圧器二次側のCTが偏磁し実際の電流より小さい値が検出されることとなり、DCCTの検出値とCTの検出値の差が大きくなることで、制御系が、変圧器の偏磁が無い場合でも、変圧器の偏磁があると誤認して誤ったゲート信号を出し、変圧器を逆に偏磁させてしまうという問題がある。
【0005】
図2-bに示されるフィルタインダクタ部にDCCTを用い、フィルタコンデンサ部にCTを用いた構成の場合、CTに直流電流が流れることは無いが、CTが変圧器の一次側にあることにより、変圧器の励磁電流が検出できず、出力電圧に定常的な誤差が発生するという問題がある。
【0006】
図2-cに示されるフィルタインダクタ部にDCCTを用い、変圧器二次側にもDCCTを用いた構成の場合、原理的には変圧器の偏磁や定常的な誤差は生じないが、DCCTは電源を必要とするため、制御系の電源を比較的長距離引き通すことになり、配線数の増加、制御電源の信頼性低下という問題があり、さらに、DCCTはCTと比べ複雑な構造をしているため、故障率が増加するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するために、フィルタインダクタ部にDCCTとCTを用い、変圧器二次側に各相の差分を取得するようにCTを用いる構成とし、交流フィルタ入力部のCTと変圧器二次側のCTを差動結線したものを検出値として制御に用いる。
【0008】
すなわち、交流フィルタとΔ-Y結線である変圧器を介して三相交流電圧を出力するインバータ電源装置において、交流フィルタに入力される電流と変圧器から出力される電流の差をフィルタインダクタ部の電流を取得するカレントトランスと変圧器二次側の相電流の差分を取得するよう接続されたカレントトランスとその差動結線によって検出することを特徴とするインバータ電源装置とすることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明には次のような効果がある。
1.過渡的な直流電流でCTが偏磁した場合でも、差動結線によりDCCTとではなくCTどうしで差分をとることと、変圧器二次側のCTでは各相の差分を取得するよう結線されていることでインダクタ部のCTと同等の偏磁となるため、検出値のオフセットが発生せず、変圧器の偏磁と誤認されない。
2.変圧器の一次側と二次側で差分をとるため変圧器の励磁電流を検出できる。
3.二次側にDCCTを用いていないため制御電源を引き通す必要が無く、また故障しにくい。
4.定常誤差が無く偏磁発生時でも誤った値を検出しないため制御ゲインを大きく取ることができ、システム全体の応答性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の回路構成図(実施例1)
【図2】従来の回路構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
交流フィルタとΔ-Y結線である変圧器を介して三相交流電圧を出力するインバータ電源装置で、フィルタインダクタ部での各相を仮にR相、S相、T相、変圧器二次側の各相をU相、V相、W相とし、変圧器内部の構成はR-S相間の巻線がU相の巻線と、S-T相間の巻線がV相の巻線と、T-R相間の巻線がW相の巻線とそれぞれ磁気的に密に結合しているものとする。このときR相を流れる電流は、U相から正の向きで、W相から負の向きで影響を受けるため、U相とW相を逆向きにCTのコアに通すことでR相の位相と同様になり、変圧器の巻線とCTの感度を揃えることによって大きさを同等とすることができ、R相と差動結線するだけで交流フィルタ共振電流成分と変圧器励磁電流成分の和を検出できる。S相、T相についても同様に結線とCTの感度を揃えることで共振電流成分と励磁電流成分を検出できる。また、R相のCTの電流/磁気飽和特性とU相-W相のCTの電流/磁気飽和特性を変圧器の巻線比と揃えることで、CTに偏磁が発生した場合でも変圧器の偏磁とは誤認されず、制御ゲインの減少となって安全側に動作する。
【実施例1】
【0012】
図1に本発明の実施例を示す。
インバータから出力されフィルタインダクタを流れる電流をDCCTとCTにより検出し、変圧器二次側の負荷電流が隣の相と互い違いにCTを通るように配線することで各相電流の差分を検出するよう構成でき、CTの検出値の向きが互いに逆になるよう直列に接続することで構成される。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明により高い信頼性と高い応答性を持った誤差の少ない電流制御を行うインバータ電源装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 三相インバータ
2 交流フィルタ
3 フィルタインダクタ
4 フィルタコンデンサ
5 Δ-Y結線変圧器
6 直流電流検出器
7 カレントトランス
8 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流フィルタとΔ-Y結線である変圧器を介して三相交流電圧を出力するインバータ電源装置において、交流フィルタに入力される電流と変圧器から出力される電流の差をフィルタインダクタ部の電流を取得するカレントトランスと変圧器二次側の相電流の差分を取得するよう接続されたカレントトランスとその差動結線によって検出することを特徴とするインバータ電源装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−27262(P2013−27262A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162768(P2011−162768)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】