説明

インパルス電流発生装置

【課題】 従来のRLC回路方式のインパルス電流発生装置を改良して、コンデンサの充電電圧を高くしなくても、インパルス電流の波尾部での電流裁断を防止することができるインパルス電流発生装置を提供する。
【解決手段】 このインパルス電流発生装置は、負荷12が接続される出力端子20、22間に互いに直列に接続されたコンデンサ4、インダクタンス8、抵抗10および放電ギャップ装置30aと、コンデンサ4に充電する直流充電回路2とを備えている。放電ギャップ装置30aは、固定電極32と、可動電極34と、可動電極34を固定電極32に向けて駆動して固定電極32に接触させる電極駆動装置36とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばサージ防護デバイス(略称SPD)、その他の電気機器等の負荷に、試験等のために、インパルス電流を供給するインパルス電流発生装置(略称ICG)に関する。更に、サージ防護デバイスに、インパルス電流に商用周波電流を重畳させた電流を供給するインパルス電流発生装置に関する。
【0002】
この明細書において、サージ防護デバイスとは、2004年に制定されたJIS C 5381:2004において定義されているものである。即ち、サージ防護デバイスは、過渡的な過電圧を制限し、サージ電流を分流することを目的とするデバイスのことである。このデバイスは、1個以上の非線形素子を内蔵している。つまりサージ防護デバイスは、従来、アレスタ、避雷器、サージアブソーバ等と称されていた機器の総称である。
【背景技術】
【0003】
負荷にインパルス電流を供給するインパルス電流発生装置の主な回路方式には、非特許文献1にも記載されているように、RLC回路方式とクローバー回路方式とがある。
【0004】
RLC回路方式は、図1に示すように、コンデンサ4、放電ギャップ6、インダクタンス8および抵抗10の直列回路に負荷12を接続する。コンデンサ4に直流高電圧を充電しておき、放電ギャップ6にトリガをかけて放電(即ち導通)させることにより、コンデンサ4に蓄積された電荷によって負荷12にインパルス電流Iimp を供給することができる。このインパルス電流Iimp の波形の一例を図3に示す。
【0005】
この回路方式では、コンデンサ4の静電容量をC、インダクタンス8のインダクタンスをL、抵抗10の抵抗値をRとすると、インパルス電流Iimp の波頭長Tf および波尾長Tt は、抵抗10の抵抗値Rと、サージインピーダンス√(L/C)の値との比によって決定される。
【0006】
なお、放電ギャップ6および後述するクローバーギャップ14用のトリガ電極およびそれ用のトリガ回路等の図示は省略している。
【0007】
クローバー回路方式は、図2に示すように、コンデンサ4、放電ギャップ6およびインダクタンス8の直列回路に負荷12を接続する。中間にはクローバーギャップ14を設けている。コンデンサ4に直流高電圧を充電しておき、放電ギャップ6にトリガをかけて放電(即ち導通)させることにより、コンデンサ4に蓄積された電荷は、通電ルート16で流れて、負荷12にインパルス電流Iimp として供給されて消費されると共に、一部はインダクタンス8に蓄積される。この過程で、0.4π√(L/C)で決まる時間幅(波頭長Tf )の波頭部が発生する。
【0008】
次に、上記インパルス電流Iimp がピークに達した時点で、クローバーギャップ14にトリガをかけてそれを放電(即ち導通)させることにより、インダクタンス8を電源とする通電ルート18が形成される。この過程で、負荷12の抵抗値をRとすると、時定数L/Rの波尾部が発生し、波尾長Tt が決定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】田中和彦、他3名、「高電圧試験装置の最新技術動向」、日新電機技報、日新電機株式会社、2008年3月11日、第53巻(通巻130号)、頁27−37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記クローバー回路方式は、負荷12以外の抵抗成分(即ちエネルギー消費成分)を必要としないので、RLC回路方式に比べてエネルギー効率が高いという長所がある反面、(a)インパルス電流Iimp の波尾部が負荷12の抵抗値Rによって左右されるので、当該波尾部の調整を負荷12が変るたびに行う必要がある、(b)放電ギャップ6およびその放電制御回路(トリガ回路等)以外に、クローバーギャップ14およびその放電制御回路(トリガ回路およびその制御回路等)が必要であり構成が複雑で大型になる、等の短所がある。
【0011】
一方、上記RLC回路方式は、(a)インパルス電流Iimp の波頭長Tf および波尾長Tt が負荷12に依存せずに決まるので、負荷12に合わせた調整が不要であり、汎用性が高い、(b)クローバー回路方式のようなクローバーギャップおよびその放電制御回路が不要であり構成が簡単である、という長所がある反面、インパルス電流Iimp の波尾部でコンデンサ4の電圧が低くなったときに、放電ギャップ6の放電が維持できなくなり、インパルス電流Iimp の波尾部が裁断された波形になってしまう場合がある、等の短所がある。
【0012】
特に、2004年に制定された上記JISには、波頭長Tf /波尾長Tt が、それ以前の8/20μsの波形の他に、10/350μsという長波尾長の試験波形も規定されており、このような長波尾長の波形の場合は、波尾部での電流裁断が起こりやすくなる。
【0013】
従来のRLC回路方式のインパルス電流発生装置において、波尾部での電流裁断を防止するためには、例えば、コンデンサ4の充電電圧をこれまでのもの(例えば20kV程度)よりもかなり高く(例えば200kV程度に)して、コンデンサ4の電圧が低下したときでも放電ギャップ6の放電を確実に維持する、という手段が採り得るけれども、コンデンサ4の充電電圧を上記のように高くすると、コンデンサ4用の充電回路を上記のように高電圧出力のものにする必要があると共に、回路の絶縁対策が非常に難しくなり、そのためにコストが非常に嵩むという新たな課題が生じる。
【0014】
インパルス電流発生装置は、インパルス電流を所定の波形で通電できれば良いのであり、電圧そのものは殆ど重要ではないので、高電圧の絶縁対策等に多くの費用をかけるのは合理的とは言えない。
【0015】
そこでこの発明は、従来のRLC回路方式のインパルス電流発生装置を改良して、コンデンサの充電電圧を高くしなくても、インパルス電流の波尾部での電流裁断を防止することができるインパルス電流発生装置を提供することを一つの目的としている。
【0016】
ところで、上記JISには、より具体的にはJIS C 5381−1:2004の7.6.5項には、クラスI試験及びクラスIIの試験の動作責務試験として、「SPDには5A以上の公称電流容量をもつ電源からUC の電圧を課電する。この試験は、SPDを通じて電流インパルスを段階的にIpeak(3.9による)又はImax (3.10による)まで増加して実施する。」ことが規定されている。この動作責務試験を実施するためには、インパルス電流に商用周波電流を重畳させた電流をサージ防護デバイス(SPD)に供給して試験(以下これを、商用周波電流重畳試験と呼ぶことにする)を行う必要がある。
【0017】
この商用周波電流重畳試験は、インパルス電流と商用周波電流との位相調整が難しい等の理由によって、上記RLC回路方式、クローバー回路方式のいずれを採用しているインパルス電流発生装置においても、上記規格に準じた試験は我が国では実施できていないのが現状である。
【0018】
中でもクローバー回路方式では、前述したように、インパルス電流Iimp の通電中にクローバーギャップ14で閉回路を形成することになり、それが負荷であるサージ防護デバイスに商用周波電流を通電することの支障になるので、クローバー回路方式で上記商用周波電流重畳試験を実現することは困難である。
【0019】
そこでこの発明は、従来のRLC回路方式のインパルス電流発生装置を更に改良して、コンデンサの充電電圧を高くしなくても、インパルス電流の波尾部での電流裁断を防止することができることに加えて、サージ防護デバイスに、インパルス電流に商用周波電流を重畳させた電流を供給することができるインパルス電流発生装置を提供することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明に係るインパルス電流発生装置の一つは、負荷にインパルス電流を供給するインパルス電流発生装置であって、前記負荷が接続される第1および第2の出力端子間に互いに直列に接続されたコンデンサ、インダクタンス、抵抗および放電ギャップ装置と、前記コンデンサに充電する直流充電回路とを備えており、かつ前記放電ギャップ装置は、固定電極と、可動電極と、当該可動電極を前記固定電極に向けて駆動して前記固定電極に接触させる電極駆動装置とを備えている、ことを特徴としている。
【0021】
この発明に係るインパルス電流発生装置の他のものは、試験対象のサージ防護デバイスに、インパルス電流に商用周波電流を重畳させた電流を供給するインパルス電流発生装置であって、前記サージ防護デバイスが接続される第1および第2の出力端子間に互いに直列に接続された主コンデンサ、インダクタンス、抵抗、主放電ギャップ装置および補助放電ギャップと、前記主コンデンサに充電する直流充電回路とを備えており、前記主放電ギャップ装置は、固定電極と、可動電極と、当該可動電極を前記固定電極に向けて駆動して前記固定電極に接触させる電極駆動装置と、前記固定電極と可動電極間の放電を開始させるトリガ電極とを備えており、前記補助放電ギャップは、その放電開始電圧が、前記主コンデンサの充電電圧よりも低く、かつ後記商用周波電源回路の出力電圧よりも高いものであり、更にこのインパルス電流発生装置は、前記第1および第2の出力端子間にリアクトルを直列に介して接続されていて、商用周波数の電流を出力する商用周波電源回路と、前記主放電ギャップ装置のトリガ電極にトリガ電圧を供給するトリガ発生回路と、前記主放電ギャップ装置の電極駆動装置による前記可動電極の駆動と、前記トリガ発生回路からの前記トリガ電圧の出力とを同期させる制御を行うものであって、しかも当該トリガ電圧を、前記商用周波電源回路の出力電圧が所定位相のときに出力させる制御を行う制御回路とを備えている、ことを特徴としている。
【0022】
前記制御回路は、前記商用周波電源回路の出力電圧の位相がほぼπ/2[rad]のときに、前記トリガ発生回路から前記トリガ電圧を出力させる制御を行うものが好ましい。
【0023】
前記商用周波電源回路と前記リアクトルとの間において前記商用周波電源回路に並列に接続されていて、前記リアクトルと協働して、前記商用周波数で共振する共振回路を形成している補助コンデンサを備えていても良い。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、放電ギャップ装置の可動電極を、電極駆動装置によって、固定電極に向けて駆動して固定電極に接触させることができるので、インパルス電流の波尾部でコンデンサの電圧が低くなっても、当該放電ギャップ装置における通電を維持することができる。従って、コンデンサの充電電圧を高くしなくても、インパルス電流の波尾部での電流裁断を防止することができる。
【0025】
しかも、放電ギャップ装置の可動電極を上記のように駆動することによって、トリガ電極を設けなくても、放電ギャップ装置における放電を開始させることができるので、トリガ電極およびトリガ回路が不要になる。
【0026】
請求項2に記載の発明によれば、主放電ギャップ装置が可動電極および電極駆動装置を備えているので、請求項1に記載の発明の場合と同様に、インパルス電流の波尾部で主コンデンサの電圧が低くなっても、当該主放電ギャップ装置における導通を維持することができる。しかも、補助放電ギャップは、その放電開始電圧が主コンデンサの充電電圧よりも低いので、インパルス電流の波尾部で主コンデンサの電圧が低くなっても、当該補助放電ギャップにおける導通を長期間維持することができる。従って、主コンデンサの充電電圧を高くしなくても、インパルス電流の波尾部での電流裁断を防止することができる。
【0027】
更に、商用周波電源回路を備えているので、サージ防護デバイスにインパルス電流が流れてサージ防護デバイスが導通することによって、商用周波電源回路からサージ防護デバイスへ商用周波電流が流れるようになる。従って、インパルス電流に商用周波電流を重畳させた電流をサージ防護デバイスに供給することができる。しかも制御装置は、上記同期をさせる制御等を行うので、インパルス電流に、商用周波電流を所定の位相関係でうまく同期させて重畳させることができる。
【0028】
しかも、上記リアクトルおよび補助放電ギャップによって、インパルス源側と商用周波電源回路との干渉をうまく防止することができると共に、補助放電ギャップの働きによって、インパルス電流の続流として商用周波電流をサージ防護デバイスにうまく供給することができる。即ち、上記リアクトルは、インパルス電流に対しては阻止フィルタと同様の作用をするので、インパルス電流が商用周波電源回路へ流入するのを阻止することができる。上記補助放電ギャップは、上記重畳の際に、主コンデンサの電圧低下に伴って放電が自然に消滅して開放されるので、商用周波電源回路とインパルス源側とを切り離すことができる。それによって、商用周波電流がインパルス源側へ流入するのを阻止することができると共に、サージ防護デバイスに供給する電流をインパルス電流から商用周波電流へとうまく続けて切り換えることができる。
【0029】
請求項3に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、制御回路は、商用周波電源回路の出力電圧の位相がほぼπ/2[rad]のときに、トリガ発生回路からトリガ電圧を出力させる制御を行うので、商用周波電源回路の出力電圧の位相が、リアクトルおよひサージ防護デバイスを含む直列回路の遅れ位相とほぼ等しいときに、主放電ギャップ装置を放電させてインパルス電流によってサージ防護デバイスを導通させることができ、それによって、商用周波電源回路からサージ防護デバイスに供給する商用周波電流をサージ防護デバイスの導通時にほぼ0から立ち上げることができると共に、当該商用周波電流に過渡現象が生じるのを防止することができる。その結果、インパルス電流に商用周波電流がうまくつながった波形の電流をサージ防護デバイスに供給することができるので、サージ防護デバイスに対して商用周波電流重畳試験をより的確に実施することが可能になる。
【0030】
請求項4に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、サージ防護デバイスが導通すると、補助コンデンサに蓄積されていた電荷によってサージ防護デバイスに過渡電流が流れ、しかもこの過渡電流は商用周波数で振動(減衰振動)する正弦波状の電流となる。このような電流を商用周波電源回路以外からもサージ防護デバイスに供給することができるので、サージ防護デバイスに所定の大きさの商用周波電流を供給する場合に、商用周波電源回路の容量を小さくすることができる。それによって、当該商用周波電源回路の小型化、低コスト化等を、ひいてはインパルス電流発生装置の小型化、低コスト化等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来のRLC回路方式のインパルス電流発生装置の概略例を示す回路図である。
【図2】従来のクローバー回路方式のインパルス電流発生装置の概略例を示す回路図である。
【図3】インパルス電流の波形の一例を示す図である。
【図4】この発明に係るインパルス電流発生装置の一実施形態を示す回路図である。
【図5】この発明に係るインパルス電流発生装置の他の実施形態を示す回路図である。
【図6】図5に示すインパルス電流発生装置の動作の例を示すフローチャートである。
【図7】インパルス電流に商用周波電流を重畳させた電流波形の一例を示す図である。
【図8】RL直列回路に交流電圧を印加したときに流れる電流を説明するための図である。
【図9】RLC直列回路において、充電されていたコンデンサの電荷を急に放電するときに流れる過渡電流を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(1)第1の実施形態
図4に、この発明に係るインパルス電流発生装置の一実施形態を示す。なお、この出願では、説明を簡単にするために、抵抗、インダクタンス、静電容量の符号R、L、Cを異なる回路においても共通して使用しているが、異なる回路におけるR、L、Cの値が必ずしも互いに同一でないことは言うまでもない。
【0033】
このインパルス電流発生装置は、前述したRLC回路方式に属する。即ちこのインパルス電流発生装置は、負荷12にインパルス電流Iimp を供給する装置であって、負荷12が接続される第1および第2の出力端子20、22間に互いに直列に接続されたコンデンサ4、インダクタンス8、抵抗10および放電ギャップ装置30aと、コンデンサ4に充電する、より具体的には直流高電圧を充電する直流充電回路2とを備えている。
【0034】
負荷12は、例えば、前述したサージ防護デバイス、その他の電気機器等である。
【0035】
直流充電回路2の出力電圧、即ちコンデンサ4の充電電圧Vc は、例えば20kV程度であるが、これに限られるものではない。
【0036】
放電ギャップ装置30aは、固定電極32と、可動電極34と、当該可動電極34を矢印Bで示すように固定電極32に向けて駆動して固定電極32に接触させる電極駆動装置36とを備えている。
【0037】
電極駆動装置36は、例えば、油圧シリンダ、空気圧シリンダ等である。
【0038】
放電ギャップ装置30aは、可動電極34を駆動する前の状態では、当然のことながら、その放電開始電圧はコンデンサ4の充電電圧Vc よりも大きいので、固定電極32と可動電極34との間は放電しない。
【0039】
このインパルス電流発生装置においては、コンデンサ4を所定の充電電圧Vc に充電した状態で、電極駆動装置36によって可動電極34を固定電極32に向けて駆動すると、トリガ電圧を印加しなくても、両電極32、34間がその放電開始電圧以下に近づくと、両電極32、34間で放電が生じて両電極32、34間が導通する。それによって、コンデンサ4に蓄積されていた電荷によって、インダクタンス8、抵抗10および放電ギャップ装置30aを経由して、負荷12にインパルス電流Iimp が流れ始める。かつそれ以降も、可動電極34は固定電極32に接触するまで駆動される。これによって、負荷12に所定波形(例えば図3に示したような波形)のインパルス電流Iimp を供給することができる。
【0040】
上記インパルス電流Iimp の波頭長Tf および波尾長Tt の決定については、図1を参照して説明したのと同じであるので、ここでは重複説明を省略する。
【0041】
コンデンサ4の充電電圧Vc を20kV程度とすると、その程度の電圧では、放電ギャップ装置30aの両電極32、34間の空隙が例えば10mm程度になると放電を開始するけれども、その距離から両電極32、34が接触するまでの機械的動作時間は、通常は、インパルス電流Iimp の波尾長Tt よりも遥かに長い。しかし、両電極32、34間で一旦放電が開始すると、その放電によって両電極32、34間にプラズマが生じて、しかも当該プラズマが充満している空間が可動電極34の移動によって圧縮され続けるので、インパルス電流Iimp の波尾部でコンデンサ4の電圧が低くなっても、両電極32、34間の放電を持続させることが可能である。
【0042】
なお、両電極32、34の接触(衝突)による両電極32、34表面の劣化を抑えるためには、両電極32、34の材料を当該劣化に強いものにすれば良い。例えば、カーボンは好適な材料の一つである。
【0043】
以上のようにこのインパルス電流発生装置によれば、放電ギャップ装置30aの可動電極34を、電極駆動装置36によって、固定電極32に向けて駆動して固定電極32に接触させることができるので、インパルス電流Iimp の波尾部でのコンデンサ4の電圧が低くなっても、当該放電ギャップ装置30aにおける通電を維持することができる。従って、コンデンサ4の充電電圧Vc を高くしなくても、インパルス電流Iimp の波尾部での電流裁断を防止することができる。
【0044】
例えば、前述した10/350μsという長波尾長のインパルス電流Iimp を供給する場合でも、20kV程度の充電電圧Vc で、波尾部での電流裁断を防止することができる。即ち、前述した200kVの1/10程度の電圧で済む。その結果、直流充電回路2の小容量化、小型化、低コスト化を図ることができる。また、回路の絶縁対策も容易であるので、この観点からもコスト低減を図ることができる。
【0045】
しかも、放電ギャップ装置30aの可動電極34を上記のように駆動することによって、トリガ電極を設けなくても、放電ギャップ装置30aにおける放電を開始させることができるので、トリガ電極およびトリガ回路が不要になる。従ってその分、構成の簡素化およびコスト低減を図ることができる。
【0046】
(2)第2の実施形態
図5に、この発明に係るインパルス電流発生装置の他の実施形態を示す。図4に示した実施形態と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては図4に示した実施形態との相違点を主体に説明する。
【0047】
このインパルス電流発生装置は、試験対象のサージ防護デバイス42に、インパルス電流Iimp に商用周波電流Infを重畳させた電流Iを供給する装置である。この電流Iの波形の一例を図7に示す。但し図7では、図面寸法に制限があるために、インパルス電流Iimp と商用周波電流Infの振幅比を実際よりも小さく図示している。
【0048】
インパルス電流Iimp は、例えば、ピーク値が20kAである。波形は、例えば、波頭長Tf /波尾長Tt (図3も参照)が10/350μsである。8/20μs等にする場合もある。商用周波電流Infは、例えば、ピーク値が500Aである。5A等にする場合もある。
【0049】
サージ防護デバイス42は、前述したとおりのものである。
【0050】
このインパルス電流発生装置は、サージ防護デバイス42が接続される第1および第2の出力端子20、22間に互いに直列に接続された主コンデンサ4、インダクタンス8、抵抗10、主放電ギャップ装置30bおよび補助放電ギャップ40と、主コンデンサ4に充電する、より具体的には直流高電圧を充電する直流充電回路2とを備えている。
【0051】
主放電ギャップ装置30bは、固定電極32と、可動電極34と、当該可動電極34を矢印Bで示すように固定電極32に向けて駆動して固定電極32に接触させる電極駆動装置36と、固定電極32と可動電極34間の放電を開始させるトリガ電極38とを備えている。
【0052】
補助放電ギャップ40は、その放電開始電圧が、直流充電回路2による主コンデンサ4の充電電圧Vc よりも低く、より具体的には十分に低く、かつ以下に述べる商用周波電源回路48の出力電圧よりも高いものである。
【0053】
例えば、主コンデンサ4の充電電圧Vc は前述したように20kV、商用周波電源回路48の出力電圧は200V(実効値)であり、補助放電ギャップ40の放電開始電圧は400V〜500V程度である。このように、補助放電ギャップ40の放電開始電圧は、充電電圧Vc の1/40〜1/50程度であり、充電電圧Vc よりも十分に低い。
【0054】
従って、図5に示す装置の総合的な動作説明は後でするが、主放電ギャップ装置30bのトリガ電極38に後述するトリガ電圧Vt を供給して主放電ギャップ装置30bを放電(即ち導通)させると、補助放電ギャップ40も放電(即ち導通)し、それによってサージ防護デバイス42にインパルス電流Iimp を供給することができる。
【0055】
このインパルス電流発生装置は、更に、第1および第2の出力端子20、22間にリアクトル44を直列に介して接続されていて、商用周波数fn の電流(即ち商用周波電流)Infを出力する商用周波電源回路48と、主放電ギャップ装置30bのトリガ電極38にトリガ電圧Vt を供給するトリガ発生回路58とを備えている。
【0056】
商用周波電源回路48は、例えば、商用周波電源50と、変圧器52と、この商用周波電源回路48の出力電圧を分圧して出力する分圧器54とを備えている。商用周波電源50は、例えば、60Hz、200Vの商用電源である。変圧器52は、例えば、一次電圧/二次電圧が200V/200Vの絶縁変圧器である。この変圧器52は、絶縁が主目的であるので、この発明に必須のものではない。
【0057】
このインパルス電流発生装置は、更に、主放電ギャップ装置30bの電極駆動装置36による可動電極34の駆動と、トリガ発生回路58からのトリガ電圧Vt の出力とを同期させる制御を行うものであって、しかも当該トリガ電圧Vt を、商用周波電源回路48の出力電圧が所定位相のときに出力させる制御を行う制御回路60を備えている。制御回路60は、この例では、分圧器54からの電圧を用いて、商用周波電源回路48の出力電圧の位相を測定して、前記制御を行う。
【0058】
制御回路60は、商用周波電源回路48の出力電圧の位相がほぼπ/2[rad]のときに、トリガ発生回路58からトリガ電圧Vt を出力させる制御を行うのが好ましく、この実施形態では制御回路60はそのような制御を行う。その理由を以下に説明する。
【0059】
サージ防護デバイス42に上記インパルス電流Iimp を供給すると、サージ防護デバイス42が動作してその本来の機能(即ち前述したサージ電圧を制限し、サージ電流を分流する機能)を発揮する。このときサージ防護デバイス42は、簡単に言えば、非常に小さい抵抗値で急に導通する。
【0060】
このサージ防護デバイス42の急な導通を、スイッチの投入動作と見ると、図5に示す商用周波電源回路48、リアクトル44およびサージ防護デバイス42の直列回路は、図8に示す回路と実質的に等価になる。即ち、交流電源e(t)が商用周波電源回路48に、スイッチSWがサージ防護デバイス42に、インダクタンスLがリアクトル44に、抵抗Rがサージ防護デバイス42他の回路の抵抗に、それぞれ相当する。
【0061】
この図8は、過渡現象を解説した書籍によく記載されている例である。後述する図9も同様である。
【0062】
図8の回路において、t=0でスイッチSWを投入して交流電圧e(t)=Emsin(ωt+θ)を印加したときに流れる電流をi1 とすれば、回路方程式は次式となる。Em は交流電圧の最大値、ωは角周波数、θはスイッチSW投入時の交流電圧の位相である。
【0063】
[数1]
L(di1 /dt)+Ri1 =Emsin(ωt+θ)
【0064】
上記式から、t=0のときi1 =0という初期条件を適用して電流i1 を求めると数2となる。ここで、Zは上記RL直列回路のインピーダンス、θは遅れ位相であり、数3で表される。
【0065】
【数2】

【0066】
[数3]
|Z|=√(R2 +ω2 2 )、
φ=tan-1(ωL/R)
【0067】
上記数2の右辺の第1項は定常電流を、第2項は過渡電流を表している。従って、sin(θ−φ)=0すなわちθ=φであれば、過渡現象が生じず、電流i1 として次式で表される正弦波の定常電流が流れる。
【0068】
[数4]
1 =(Em /|Z|)sinωt
【0069】
このことを、図5に示す装置で言えば、θ=φすなわち商用周波電源回路48の出力電圧の位相θが、リアクトル44およびサージ防護デバイス42を含む直列回路の遅れ位相φとほぼ等しいときに、主放電ギャップ装置30bおよび補助放電ギャップ40を放電させてインパルス電流Iimp によってサージ防護デバイス42を導通させるのが好ましい。より具体的には、上記遅れ位相φは、図5の装置では、リアクトル44のインダクタンスLに比べて上記直列回路の抵抗Rが非常に小さいので、ほぼπ/2[rad]となる。従って、商用周波電源回路48の出力電圧の位相θがほぼπ/2[rad]のときに、トリガ発生回路58からトリガ電圧Vt を出力させて、主放電ギャップ装置30bおよび補助放電ギャップ40を放電させるのが好ましい。
【0070】
そのときの上記電流i1 を、図5に示す装置で言えば、数4にω=2πfn を代入して、次式で表される。この電流i1 が上記商用周波電流Infとして流れる。Em は商用周波電源回路48の出力電圧のピーク値(例えば√2×200V)である。
【0071】
[数5]
1 =(Em /|Z|)sin2πfn
【0072】
上記のようにすることによって、商用周波電源回路48からサージ防護デバイス42に供給する商用周波電流Infを、サージ防護デバイス42の導通時にほぼ0から立ち上げることができると共に、当該商用周波電流Infに過渡現象が生じるのを防止することができる。その結果、図7に示す例のように、インパルス電流Iimp に商用周波電流Infがうまくつながった波形の電流Iをサージ防護デバイス42に供給することができるので、サージ防護デバイス42に対して商用周波電流重畳試験をより的確に実施することが可能になる。
【0073】
次に、図5に示すインパルス電流発生装置の動作の例を、制御回路60による制御の部分を主体にして、図6を参照しながら説明する。
【0074】
直流充電回路2によって主コンデンサ4を所定の充電電圧Vc に充電しておく。かつ商用周波電源回路48を動作させて、それから商用周波数fn の電圧を出力しておく。
【0075】
制御回路60は、次に述べるインパルス電流発生指令SSを受ける前から、商用周波電源回路48の出力電圧の位相θを継続して測定している(ステップS1)。従って制御回路60は、商用周波電源回路48の出力電圧の位相θがπ/2(単位radは以下では省略)になる時点を判定することができる。当該π/2になる時点は、一定の周期(即ち上記商用周波数fn の周期)で到来する。
【0076】
試験対象のサージ防護デバイス42に、インパルス電流Iimp に商用周波電流Infを重畳させた電流Iを供給する試験を実行するときは、制御回路60にインパルス電流発生指令SSを与える(ステップS2)。このインパルス電流発生指令SSは、例えば、スイッチによる接点信号でも良いし、他の制御回路から与えられる指令信号でも良い。
【0077】
インパルス電流発生指令SSを受けると制御回路60は、主放電ギャップ装置30bの電極駆動装置36に駆動指令を与える時間と、トリガ発生回路58からトリガ電圧Vt を出力させる時間との時間差をTd とすると、商用周波電源回路48の出力電圧の位相がπ/2になるよりも時間差Td だけ前に、主放電ギャップ装置30bの電極駆動装置36に上記駆動指令を与える(ステップS3)。それに応答して、電極駆動装置36は可動電極34の駆動を開始し、可動電極34が固定電極32に接触するまで駆動を続ける。なお、上記のように商用周波電源回路48の出力電圧の位相がπ/2になる時点は一定周期で繰り返して到来するので、制御回路60による上記制御は可能である。
【0078】
その直後に、即ち上記時間差Td 後に、制御回路60は、トリガ発生回路58にトリガ電圧Vt を出力させる出力指令を与える(ステップS4)。それに応答して、トリガ発生回路58はトリガ電圧Vt を出力してトリガ電極38に供給する。これによって、商用周波電源回路48の出力電圧の位相がπ/2のときにトリガ電圧Vt を出力させることができる。上記可動電極34の駆動とこのトリガ電圧Vt の供給とによって、固定電極32と可動電極34間で放電が生じて両電極32、34間が導通する。即ち主放電ギャップ装置30bが放電して導通する(ステップS5)。
【0079】
なお、上記時間差Td は、可動電極34をあまり動かさなくても、トリガ電圧Vt 印加によって、主放電ギャップ装置30bにおける放電を開始させることができる場合は、非常に小さい値でも良い。ほぼ0で良い場合もある。このような場合は、可動電極34の駆動開始とトリガ電圧Vt 印加とはほぼ同時になる。
【0080】
上記時間差Td の長さや、トリガ電圧Vt を出力するタイミングを調整可能にしておいても良い。そのようにすれば、商用周波電源回路48の出力電圧の位相がπ/2のときにトリガ電圧Vt を出力させる等の制御をより柔軟に行うことができる。
【0081】
主放電ギャップ装置30bの導通によって、主コンデンサ4の充電電圧Vc が補助放電ギャップ40に印加されるので、補助放電ギャップ40が放電して導通する(ステップS6)。これによって、主コンデンサ4に蓄積されていた電荷によって、インダクタンス8、抵抗10、主放電ギャップ装置30bおよび補助放電ギャップ40を経由して、サージ防護デバイス42にインパルス電流Iimp が流れ始める(ステップS7。図7も参照)。このインパルス電流Iimp のピーク値および波形の例は、前述したとおりである。
【0082】
このとき、リアクトル44は、インパルス電流Iimp に対して阻止フィルタと同様の作用をするので、インパルス電流Iimp が商用周波電源回路48へ流入するのを阻止することができる。この場合のリアクトル44のインダクタンスLは、一例を挙げると800μH程度であるが、これに限られるものではなく、上記阻止作用を奏することができれば良い。後述する補助コンデンサ46と協働して後述する共振条件を成立させる場合のようにインダクタンスLが大きくても、リアクトル44は上記阻止作用を奏する。
【0083】
上記インパルス電流Iimp がサージ防護デバイス42に流れると、前述したようにサージ防護デバイス42は非常に小さい抵抗値で導通するので、商用周波電源回路48からサージ防護デバイス42に商用周波電流Infが流れ始める(ステップS9。図7も参照)。この商用周波電流Infは、補助放電ギャップ40の放電が停止して当該補助放電ギャップ40が開放されてインパルス電流Iimp が終了するまで、インパルス電流Iimp に重畳して流れる。この商用周波電流Infのピーク値の例は前述したとおりである。
【0084】
インパルス電流Iimp を供給することによって、主コンデンサ4の電圧は低下する(ステップS10)。しかし、前述したように、主放電ギャップ装置30bの電極駆動装置36によって可動電極34を固定電極32に接触させているので、上記第1の実施形態の場合と同様に、インパルス電流Iimp の波尾部で主コンデンサ4の電圧が低くなっても、当該主放電ギャップ装置30bにおける導通を維持することができる。しかも、補助放電ギャップ40は、前述したようにその放電開始電圧が主コンデンサ4の充電電圧Vc よりも十分に低いので、インパルス電流Iimp の波尾部で主コンデンサ4の電圧が低くなっても、当該補助放電ギャップ40における導通を長期間維持することができる。従って、主コンデンサ4の充電電圧Vc を高くしなくても、インパルス電流Iimp の波尾部での電流裁断を防止することができる。
【0085】
主コンデンサ4の電圧低下が更に進むと、補助放電ギャップ40における放電が自然に消滅して補助放電ギャップ40は開放される(ステップS11。図7も参照)。これによって、主放電ギャップ装置30bの両電極32、34間が接触によって導通を続けていても、商用周波電源回路48とインパルス源側(即ち補助放電ギャップ40よりも主コンデンサ4側。以下同様)とを切り離すことができる。それによって、商用周波電流がインパルス源側へ流入するのを阻止することができると共に、サージ防護デバイス42に供給する電流をインパルス電流Iimp から商用周波電流Infへとうまく続けて切り換えて、インパルス電流Iimp の続流として商用周波電流Infをサージ防護デバイス42にうまく供給することができる(図7参照)。
【0086】
その後は、サージ防護デバイス42に商用周波電流Infが流れる。そしてサージ防護デバイス42の機能が正常であれば、サージ防護デバイス42によって、商用周波電流Infが半サイクルで遮断される(ステップS12。図7も参照)。この遮断が正常に行われるか否かを試験するのが、前記商用周波電流重畳試験の主な目的である。
【0087】
ところで、図5中に二点鎖線で示すように、商用周波電源回路48とリアクトル44との間において商用周波電源回路48に並列に接続されていて、リアクトル44と協働して、商用周波数fn で共振する共振回路(より具体的には直列共振回路)を形成している補助コンデンサ46を備えていても良い。
【0088】
この場合も、サージ防護デバイス42の急な導通を、スイッチの投入動作と見ると、図5に示す補助コンデンサ46、リアクトル44およびサージ防護デバイス42の直列回路は、図9に示す回路と実質的に等価になる。即ち、コンデンサCが補助コンデンサ46に、スイッチSWがサージ防護デバイス42に、インダクタンスLがリアクトル44に、抵抗Rがサージ防護デバイス42他の回路の抵抗に、それぞれ相当する。コンデンサCすなわち補助コンデンサ46の充電は、商用周波電源回路48が行っている。
【0089】
図9の回路において、コンデンサCが電圧E0 に充電されているとして、t=0でスイッチSWを投入すると、コンデンサCに蓄積されていた電荷によって過渡電流i2 が流れる。この電流i2 は、図5に示す装置の場合を考えると、前述したようにインダクタンスLに比べて抵抗Rが非常に小さくて、次の数6が成立しているので、数7で表される正弦波状の減衰振動電流となる。数7の第2行は、その第1行に数6の条件を適用した結果である。
【0090】
[数6]
(1/LC)≫(R/2L)2
【0091】
【数7】

【0092】
上記のことを図5に示す装置で言えば、サージ防護デバイス42が急に導通すると、補助コンデンサ46から上記数7の第2行に示す過渡電流i2 がサージ防護デバイス42に流れる。前述したように商用周波電源回路48の出力電圧の位相がπ/2のときに主放電ギャップ装置30b等が放電してサージ防護デバイス42が導通させられるので、数7中の電圧E0 は、商用周波電源回路48の出力電圧のピーク値(例えば√2×200V)にほぼ等しくなる。
【0093】
しかも図5に示す装置では、前述したように、リアクトル44および補助コンデンサ46は、商用周波数fn で共振条件を成立させているから、次式が成立している。
【0094】
[数8]
n =1/2π√(LC)
【0095】
この場合の各値の一例を挙げると、商用周波数fn は60Hz、リアクトル44のインダクタンスLは78mH、補助コンデンサ46の静電容量Cは90μFである。
【0096】
この数8を数7の第2行に代入すると、結局、補助コンデンサ46から流れる過渡電流i2 は次式となり、商用周波数fn で振動(減衰振動)する正弦波状の電流i2 を補助コンデンサ46からサージ防護デバイス42に供給することができる。
【0097】
【数9】

【0098】
従って、この例の場合は、商用周波電流Infとして、互いに同じ商用周波数fn の数5に示した電流i1 (これは商用周波電源回路48から供給される)と、数9に示した電流i2 (これは補助コンデンサ46から供給される)とが、互いに同期して重畳してサージ防護デバイス42に流れる。即ちInf=i1 +i2 が流れる。両電流i1 とi2 が互いに同期していることは、数5、数9のsinの位相が一致していることからも分かる。
【0099】
このように上記例の場合は、商用周波数fn の電流を、商用周波電源回路48以外からもサージ防護デバイス42に供給することができるので、サージ防護デバイス42に所定の大きさの商用周波電流Infを供給する場合に、商用周波電源回路48の容量を小さくすることができる。それによって、当該商用周波電源回路48の小型化、低コスト化等を、ひいてはこのインパルス電流発生装置の小型化、低コスト化等を図ることができる。
【符号の説明】
【0100】
2 直流充電回路
4 コンデンサ、主コンデンサ
8 インダクタンス
10 抵抗
12 負荷
30a 放電ギャップ装置
30b 主放電ギャップ装置
32 固定電極
34 可動電極
36 電極駆動装置
38 トリガ電極
40 補助放電ギャップ
42 サージ防護デバイス
44 リアクトル
46 補助コンデンサ
48 商用周波電源回路
58 トリガ発生回路
60 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷にインパルス電流を供給するインパルス電流発生装置であって、
前記負荷が接続される第1および第2の出力端子間に互いに直列に接続されたコンデンサ、インダクタンス、抵抗および放電ギャップ装置と、
前記コンデンサに充電する直流充電回路とを備えており、
かつ前記放電ギャップ装置は、固定電極と、可動電極と、当該可動電極を前記固定電極に向けて駆動して前記固定電極に接触させる電極駆動装置とを備えている、ことを特徴とするインパルス電流発生装置。
【請求項2】
試験対象のサージ防護デバイスに、インパルス電流に商用周波電流を重畳させた電流を供給するインパルス電流発生装置であって、
前記サージ防護デバイスが接続される第1および第2の出力端子間に互いに直列に接続された主コンデンサ、インダクタンス、抵抗、主放電ギャップ装置および補助放電ギャップと、
前記主コンデンサに充電する直流充電回路とを備えており、
前記主放電ギャップ装置は、固定電極と、可動電極と、当該可動電極を前記固定電極に向けて駆動して前記固定電極に接触させる電極駆動装置と、前記固定電極と可動電極間の放電を開始させるトリガ電極とを備えており、
前記補助放電ギャップは、その放電開始電圧が、前記主コンデンサの充電電圧よりも低く、かつ後記商用周波電源回路の出力電圧よりも高いものであり、
更にこのインパルス電流発生装置は、
前記第1および第2の出力端子間にリアクトルを直列に介して接続されていて、商用周波数の電流を出力する商用周波電源回路と、
前記主放電ギャップ装置のトリガ電極にトリガ電圧を供給するトリガ発生回路と、
前記主放電ギャップ装置の電極駆動装置による前記可動電極の駆動と、前記トリガ発生回路からの前記トリガ電圧の出力とを同期させる制御を行うものであって、しかも当該トリガ電圧を、前記商用周波電源回路の出力電圧が所定位相のときに出力させる制御を行う制御回路とを備えている、ことを特徴とするインパルス電流発生装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記商用周波電源回路の出力電圧の位相がほぼπ/2[rad]のときに、前記トリガ発生回路から前記トリガ電圧を出力させる制御を行う請求項2記載のインパルス電流発生装置。
【請求項4】
前記商用周波電源回路と前記リアクトルとの間において前記商用周波電源回路に並列に接続されていて、前記リアクトルと協働して、前記商用周波数で共振する共振回路を形成している補助コンデンサを備えている請求項2または3記載のインパルス電流発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−130637(P2011−130637A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289206(P2009−289206)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【特許番号】特許第4525858号(P4525858)
【特許公報発行日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】