説明

インピーダンス測定装置、及び検出方法

【課題】ノイズの影響を受けにくく、測定精度を向上させることができるインピーダンス測定装置の提供。
【解決手段】インピーダンス測定装置1は、ブリッジ回路2と、電源3と、検出器4とを備える。ブリッジ回路2は、4つの抵抗R1〜R4と、入力端21,22と、出力端23,24とを備える。電源3は、入力端21に接続される正弦波信号源31と、入力端22に接続される余弦波信号源32とを備える。検出器4は、出力端23に接続される第1変換器41と、出力端24に接続される第2変換器42と、位相検波器45とを備える。第1変換器41、及び第2変換器42は、各出力端23,24に流れる電流を電圧に変換して出力する。位相検波器45は、第1変換器41、及び第2変換器42にて出力される信号の位相差を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス測定装置、及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブリッジ回路と、ブリッジ回路における2つの入力端に接続される電源と、ブリッジ回路における2つの出力端に接続され、ブリッジ回路を構成する素子のインピーダンスを検出する検出器とを備えるインピーダンス測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の圧力測定装置は、センサ駆動部(電源)にて圧力センサ部(ブリッジ回路)における入力端間に電圧を印加して、出力端間の電位差を電圧計(検出器)で検出している。これにより、圧力測定装置は、圧力センサ部を構成する抵抗(素子)のインピーダンスを検出して圧力を測定している。
ここで、出力端間の電位差は小さいので、検出器では、例えば、入力インピーダンスの高い差動増幅回路などを用いて出力端間の電位差を検出するのが一般的である。
【0003】
【特許文献1】特開2003−194646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、検出器は、入力インピーダンスが高くなると、ノイズの影響を受けやすくなる。また、出力端間の電位差を検出する検出器では、原理的にノイズの影響を受けやすい。したがって、インピーダンス測定装置の測定精度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、ノイズの影響を受けにくく、測定精度を向上させることができるインピーダンス測定装置、及び検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインピーダンス測定装置は、ブリッジ回路と、前記ブリッジ回路における2つの入力端に接続される電源と、前記ブリッジ回路における2つの出力端に接続され、前記ブリッジ回路を構成する素子のインピーダンスを検出する検出器とを備えるインピーダンス測定装置であって、前記電源は、前記入力端のいずれか一方に正弦波信号を印加する正弦波信号源と、前記入力端のいずれか他方に前記正弦波信号と同一の周波数を有する余弦波信号を印加する余弦波信号源とを備え、前記検出器は、前記出力端のいずれか一方に流れる電流を電圧に変換して出力する第1変換器と、前記出力端のいずれか他方に流れる電流を電圧に変換して出力する第2変換器と、前記第1変換器、及び前記第2変換器にて出力される信号の位相差を検出する位相差検出部とを備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、検出器は、各出力端に流れる電流を検出する第1変換器、及び第2変換器を備えるので、出力端間の電位差を検出する場合と比較して、入力インピーダンスを低くすることができ、ノイズの影響を受けにくくなる。また、検出器は、第1変換器、及び第2変換器にて出力される信号の位相差を検出する位相差検出部を備えるので、原理的にノイズの影響を受けにくい。したがって、インピーダンス測定装置は、ノイズの影響を受けにくい検出器にてブリッジ回路を構成する素子のインピーダンスを検出することができるので、測定精度を向上させることができる。
【0008】
本発明では、前記第1変換器、及び前記第2変換器と、前記位相差検出部との間には、前記正弦波信号、及び前記余弦波信号を通過させる帯域通過フィルタが設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、第1変換器、及び第2変換器にて出力される信号における位相方向のノイズを低減させることができるので、検出器は、更にノイズの影響を受けにくくなる。したがって、インピーダンス測定装置の測定精度を更に向上させることができる。
【0009】
本発明では、前記位相差検出部は、位相検波器であることが好ましい。
このような構成によれば、位相検波器は、汎用部品であり、かつ、高精度であるので、インピーダンス測定装置の測定精度を更に向上させることができるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0010】
本発明の検出方法は、ブリッジ回路と、前記ブリッジ回路における2つの入力端に接続される電源と、前記ブリッジ回路における2つの出力端に接続され、前記ブリッジ回路を構成する素子のインピーダンスを検出する検出器とを備えるインピーダンス測定装置で用いられる検出方法であって、前記電源は、前記入力端のいずれか一方に正弦波信号を印加する正弦波信号源と、前記入力端のいずれか他方に前記正弦波信号と同一の周波数を有する余弦波信号を印加する余弦波信号源とを備え、前記検出器が、前記出力端のいずれか一方に流れる電流を電圧に変換して出力する第1変換ステップと、前記出力端のいずれか他方に流れる電流を電圧に変換して出力する第2変換ステップと、前記第1変換ステップ、及び前記第2変換ステップにて出力される信号の位相差を検出する位相比較ステップとを実行することを特徴とする。
このような検出方法によれば、前述したインピーダンス測定装置の作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、インピーダンス測定装置1の構成図である。
インピーダンス測定装置1は、図1に示すように、ブリッジ回路2と、電源3と、検出器4とを備える。
ブリッジ回路2は、4つの抵抗R1〜R4と、抵抗R1、及び抵抗R3の中間位置、並びに抵抗R2、及び抵抗R4の中間位置に設けられた入力端21,22と、抵抗R1、及び抵抗R2の中間位置、並びに抵抗R3、及び抵抗R4の中間位置に設けられた出力端23,24とを備える。ここで、各抵抗R1〜R4のうち、3つの抵抗についてのインピーダンスは既知であり、残る1つの抵抗についてのインピーダンスは未知である。なお、本実施形態では、説明の便宜上、抵抗R1のインピーダンスを未知とし、抵抗R2〜R4のインピーダンスを既知とする。
【0012】
電源3は、入力端21に接続され、正弦波信号を印加する正弦波信号源31と、入力端22に接続され、余弦波信号を印加する余弦波信号源32とを備える。また、正弦波信号源31、及び余弦波信号源32は、それぞれ接地されている。すなわち、電源3は、ブリッジ回路2における入力端21,22に接続されている。
また、正弦波信号源31から出力される正弦波信号、余弦波信号源32から出力される余弦波信号は、同一の周波数、及び振幅で出力されている。なお、以下の説明では、正弦波信号源31から出力される正弦波信号をV・Sin(ωt)とし、余弦波信号源32から出力される余弦波信号をV・Cos(ωt)とする。
【0013】
検出器4は、出力端23に接続される第1変換器41と、出力端24に接続される第2変換器42と、第1変換器41に接続されるBPF(Band Pass Filter)43と、第2変換器42に接続されるBPF44と、BPF43、及びBPF44に接続される位相検波器45とを備える。
【0014】
第1変換器41は、出力端23に流れる電流を電圧に変換して出力するものであり、オペアンプ411と、このオペアンプ411の反転入力端子(−)、及び出力端子の間に接続された抵抗Raとを備える。また、オペアンプ411の非反転入力端子(+)は、接地されている。
第2変換器42は、出力端24に流れる電流を電圧に変換して出力するものであり、オペアンプ421と、このオペアンプ421の反転入力端子(−)、及び出力端子の間に接続された抵抗Rbとを備える。また、オペアンプ421の非反転入力端子(+)は、接地されている。
すなわち、第1変換器41、及び第2変換器42は、オペアンプ411,421を用いた電流電圧変換回路を構成している。
【0015】
帯域通過フィルタとしてのBPF43,44は、第1変換器にて出力される信号Vout1、及び第2変換器にて出力される信号Vout2における所定の帯域の信号を通過させるものであり、中心周波数は、正弦波信号源31から出力される正弦波信号、及び余弦波信号源32から出力される余弦波信号の周波数とされている。
位相差検出部としての位相検波器45は、BPF43、及びBPF44にて出力される信号の位相差を検出する。すなわち、位相検波器45は、第1変換器41、及び第2変換器42にて出力される信号の位相差を検出する。
【0016】
図2は、検出器4にて抵抗R1のインピーダンスを検出する方法を示すフローチャートである。
電源3にてブリッジ回路2における入力端21,22に正弦波信号V・Sin(ωt)、及び余弦波信号V・Cos(ωt)が印加されると、検出器4は、図2に示すように、以下のステップを実行する。
まず、第1変換器41は、抵抗R1,R2を流れる電流を加算増幅して信号Vout1を出力する(ステップS11:第1変換ステップ)。また同時に、第2変換器42は、抵抗R3,R4を流れる電流を加算増幅して信号Vout2を出力する(ステップS12:第2変換ステップ)。
ここで、第1変換器41にて出力される信号Vout1、及び第2変換器42にて出力される信号Vout2は、以下の式(1),(2)で表される。
【0017】
【数1】

【0018】
また、図3は、第1変換器41にて出力される信号Vout1のベクトル図である。
前述した式(1)において、V=1とすると、第1変換器41にて出力される信号Vout1は、図3に示すように、正弦波成分−Sin(ωt)、及び余弦波成分−Cos(ωt)の合成波で表され、位相θ1は、以下の式(3)で表される。また、図示は省略するが、第2変換器42にて出力される信号Vout2の位相θ2は、以下の式(4)で表される。
【0019】
【数2】

【0020】
第1変換ステップS11、及び第2変換ステップS12にて信号Vout1,Vout2が出力されると、位相検波器45は、信号Vout1、及び信号Vout2の位相差を検出する(ステップS2:位相差検出ステップ)。
位相差検出ステップS2にて信号Vout1、及び信号Vout2の位相差が検出されると、検出器4は、抵抗R1のインピーダンスを検出する(ステップS3:インピーダンス検出ステップ)。
【0021】
具体的に、インピーダンス検出ステップS3では、以下の原理で抵抗R1のインピーダンスを検出する。
まず、抵抗R3,R4のインピーダンスは既知であるので、検出器4は、式(4)に基づいて、信号Vout2の位相θ2を検出する。そして、検出された位相θ2と、位相検波器45にて検出される信号Vout1、及び信号Vout2の位相差とに基づいて、信号Vout1の位相θ1を検出する。さらに、抵抗R2のインピーダンスは既知であるので、検出器4は、検出された位相θ1と、式(3)とに基づいて、抵抗R1のインピーダンスを検出する。
【0022】
本実施形態に係るインピーダンス測定装置1によれば、次のような効果がある。
(1)検出器4は、各出力端23,24に流れる電流を検出する第1変換器41、及び第2変換器42を備えるので、出力端23,24間の電位差を検出する場合と比較して、入力インピーダンスを低くすることができ、ノイズの影響を受けにくくなる。また、検出器4は、第1変換器41、及び第2変換器42にて出力される信号Vout1,Vout2の位相差を検出する位相検波器45を備えるので、原理的にノイズの影響を受けにくい。したがって、インピーダンス測定装置1は、ノイズの影響を受けにくい検出器4にて抵抗R1のインピーダンスを検出することができるので、測定精度を向上させることができる。
【0023】
(2)第1変換器41、及び第2変換器42と、位相検波器45との間には、BPF43,44が設けられているので、第1変換器41、及び第2変換器42にて出力される信号Vout1,Vout2における位相方向のノイズを低減させることができる。したがって、検出器4は、更にノイズの影響を受けにくくなり、インピーダンス測定装置1の測定精度を更に向上させることができる。
【0024】
(3)位相差検出部として、汎用部品であり、かつ、高精度な位相検波器45を採用しているので、インピーダンス測定装置1の測定精度を更に向上させることができるとともに、製造コストを低減させることができる。
(4)正弦波信号源31から出力される正弦波信号、及び余弦波信号源32から出力される余弦波信号は、同一の周波数で出力されているので、ビート信号の発生を抑制することができる。また、正弦波信号、及び余弦波信号は、同一の振幅で出力されているので、抵抗R1のインピーダンスと、位相検波器45にて検出される位相差との線形性を良好にすることができる。
【0025】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、インピーダンス測定装置1は、抵抗R1のインピーダンスを検出していたが、R1:R2とR3:R4との抵抗比や、インピーダンス比を検出することも出来る。また、抵抗R1〜R4に換えてインダクタンスや、キャパシタンスでブリッジ回路を構成し、インダクタンスや、キャパシタンスのインピーダンスもしくは、インピーダンス比を検出するようにしてもよい。なお、本発明におけるインピーダンス測定装置1を、歪みゲージ(抵抗)や、差動トランス(インダクタンス)や、静電容量センサ(キャパシタンス)などに用いることで、各センサの測定精度を向上させることができる。
【0026】
前記実施形態では、検出器4は、BPF43,44を備えていたが、例えば、LPF(Low Pass Filter)や、HPF(High Pass Filter)などを用いてもよい。要するに、正弦波信号源から出力される正弦波信号、及び余弦波信号源から出力される余弦波信号の周波数帯域を通過させるとともに、ノイズの影響を低減させることができるフィルタであればよい。また、ノイズの影響が小さい場合などには、検出器は、このようなフィルタを備えていなくてもよい。
【0027】
前記実施形態では、位相差検出部として位相検波器45を採用していたが、他の構成を採用してもよい。要するに、第1変換器、及び第2変換器にて出力される信号の位相差を検出することができればよい。
前記実施形態では、正弦波信号源31から出力される正弦波信号、及び余弦波信号源32から出力される余弦波信号は、同一の振幅で出力されていたが、同一の振幅で出力していなくてもよい。なお、この場合には、抵抗R1のインピーダンスと、位相検波器45にて検出される位相差との線形性が悪化するという問題があるので、前記実施形態の構成が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、インピーダンス測定装置に利用でき、特に、ブリッジ回路を用いたインピーダンス測定装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】インピーダンス測定装置の構成図。
【図2】検出器にて抵抗のインピーダンスを検出する方法を示すフローチャート。
【図3】第1変換器にて出力される信号のベクトル図。
【符号の説明】
【0030】
1…インピーダンス測定装置、2…ブリッジ回路、3…電源、4…検出器、21,22…入力端、23,24…出力端、31…正弦波信号源、32…余弦波信号源、41…第1変換器、42…第2変換器、43,44…BPF(帯域通過フィルタ)、45…位相検波器(位相差検出部)、S11…第1変換ステップ、S12…第2変換ステップ、S2…位相差検出ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ回路と、前記ブリッジ回路における2つの入力端に接続される電源と、前記ブリッジ回路における2つの出力端に接続され、前記ブリッジ回路を構成する素子のインピーダンスを検出する検出器とを備えるインピーダンス測定装置であって、
前記電源は、
前記入力端のいずれか一方に正弦波信号を印加する正弦波信号源と、
前記入力端のいずれか他方に前記正弦波信号と同一の周波数を有する余弦波信号を印加する余弦波信号源とを備え、
前記検出器は、
前記出力端のいずれか一方に流れる電流を電圧に変換して出力する第1変換器と、
前記出力端のいずれか他方に流れる電流を電圧に変換して出力する第2変換器と、
前記第1変換器、及び前記第2変換器にて出力される信号の位相差を検出する位相差検出部とを備えることを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインピーダンス測定装置において、
前記第1変換器、及び前記第2変換器と、前記位相差検出部との間には、前記正弦波信号、及び前記余弦波信号を通過させる帯域通過フィルタが設けられていることを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインピーダンス測定装置において、
前記位相差検出部は、位相検波器であることを特徴とするインピーダンス測定装置。
【請求項4】
ブリッジ回路と、前記ブリッジ回路における2つの入力端に接続される電源と、前記ブリッジ回路における2つの出力端に接続され、前記ブリッジ回路を構成する素子のインピーダンスを検出する検出器とを備えるインピーダンス測定装置で用いられる検出方法であって、
前記電源は、
前記入力端のいずれか一方に正弦波信号を印加する正弦波信号源と、
前記入力端のいずれか他方に前記正弦波信号と同一の周波数を有する余弦波信号を印加する余弦波信号源とを備え、
前記検出器が、
前記出力端のいずれか一方に流れる電流を電圧に変換して出力する第1変換ステップと、
前記出力端のいずれか他方に流れる電流を電圧に変換して出力する第2変換ステップと、
前記第1変換ステップ、及び前記第2変換ステップにて出力される信号の位相差を検出する位相比較ステップとを実行することを特徴とする検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−128334(P2009−128334A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306970(P2007−306970)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】