説明

インフルエンザウイルス感染を処置および検出するために有用な核酸分子、ポリペプチド、抗体、およびそれらを含有する組成物

【課題】インフルエンザウイルスの感染を診断および処置するために使用することができる組成物の提供。
【解決手段】細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸アプタマー分子。特定のアミノ酸配列によって規定される血球凝集素の領域と結合する単離された核酸アプタマー分子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎動物(例えば、鳥類、ブタおよびヒトなど)におけるインフルエンザウイルス感染を処置および検出するために利用することができる核酸分子、ポリペプチド、抗体、およびそれらを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは現在まで、記録された歴史を通して人類における主要な死因および疾病原因の1つである。インフルエンザの流行が一定の間隔で発生しており、さらにインフルエンザの流行は重篤度が大きく異なっている。しかし、最も高頻度には高齢者においてではあるが、著しい死亡数および罹患者を常に生じさせている。インフルエンザの感染は、頭痛、咳、発熱および全身的倦怠感を含む一群の急性症状をもたらす。以前から存在する肺疾患または心臓血管疾患を伴う重症例または重篤な状況では、入院が必要となる。直接的なウイルス感染による肺炎、または二次的な細菌侵入もしくはウイルス侵入による肺炎は、最も頻発する合併症である。インフルエンザウイルス感染の臨床的局面についての総説については、Douglas(1990)、New England Journal of Medicine、322:443〜450を参照のこと。
【0003】
インフルエンザウイルスは現在、内部の抗原性タンパク質の違いに基づいて、A型、B型およびC型の3つのタイプに分けられる:A型およびB型は近い関係にあり、ほとんどの感染を占める一方で、C型インフルエンザウイルスは、疾患を引き起こす潜在的可能性においては関連性の低い第3のウイルスであり、おそらくは公衆衛生ではほとんど問題とならない。全体的な遺伝子相同性はA型およびB型の間で30%未満であるが、これらのウイルスは共通の祖先を有し、マイナス鎖センス極性の8個のRNAを含む。血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)が、脂質を含有するウイルス粒子の表面に発現し、インフルエンザウイルスにおいて観測される抗原性変化に主に関わっている。
【0004】
抗原ドリフトにより生じるインフルエンザの新しい株が、一定の頻度で、通常的には毎年現れ、感染サイクルを開始し、世界中に広がる。個々の発生がどのように開始されるかについてはほとんど知られていない。多くの新しいサブタイプのインフルエンザがあまり大きくない頻度で現れるが、大流行をもたらし得る。
【0005】
人口の20%までがインフルエンザ感染をある年には発症することがあり、また、インフルエンザの流行は、合衆国では毎年、20000名の死者の原因となっていることが理解される[Palese(2002)、J.Clin.Invest.、110:9〜13]。過去100年の間におけるインフルエンザのこれまでにない最悪の影響が1918年の大発生であった。これにより、合衆国では500000人以上が犠牲になり、平均寿命がほぼ10年低下した[Heilman(1990)、Clin.North Am.、37:669〜688]。
【0006】
個人および社会に対するインフルエンザの影響を考えた場合、現在の課題は、感染の危険性が相当に高い対象(例えば、若年小児および高齢者など)におけるインフルエンザ感染を防止するために使用することができる非常に強力な予防ツールを作製することである。
【0007】
いくつかの取り組みが、新規な抗インフルエンザ剤を発見するために着手されている。
【0008】
不活性化インフルエンザウイルスワクチン−重篤な合併症の危険性がある集団についてインフルエンザウイルスに対処するための最も効果的な方法は予防によるものである。効果的であるために、現行のワクチンは、A型ウイルス成分、B型ウイルス成分、および好ましくはC型ウイルス成分を含有しなければならない。ワクチンを調製するために、それらのウイルス株が孵化卵において成長させられ、その後、ウイルスが精製され、化学的不活性化によって非感染性にされる。利用可能なインフルエンザワクチンの使用は、集団における死亡数を低下させるための効果的な方法である。しかしながら、ウイルスの常に変化し続ける性質のために、現在広まっているウイルス株から保護するための適切な組成を有するワクチンの開発は複雑であり、費用がかかる。そのうえ、ワクチンを受ける際の患者の協力は一般に非常に低い。従って、インフルエンザウイルスからの重篤な合併症の危険性がある非常に多数の患者が保護されないでいる。
【0009】
低温適合化インフルエンザウイルスワクチン−温度感受性インフルエンザウイルスを生ワクチンとして作製することが、動物および哺乳動物における病原性が著しく弱められるので試みられている[Wareing(2001)、Vaccine、19:3320〜3330;Maasab(1990)、Adv.Biotechnol.Processes、14:203〜242]。典型的には、低温適合化ウイルスを作製するために、インフルエンザウイルスは、その成長を25℃で適合させるために、ニワトリ腎臓細胞および孵化卵において継代培養される。従って、毎年適合したワクチン配合物を、現在の株に見出される抗原を反映する主要なウイルス表面抗原(すなわち、HAおよびNA)をコードする2つの遺伝子を含むために遺伝子操作することができ、これに対して、残る6個の遺伝子は低温適合化親株に由来する。そのような生ウイルスワクチンは、化学的に不活性化されたウイルス調製物によって誘発されるよりも長く持続する交差反応的免疫性に関連し得る局所的な中和免疫性および細胞媒介の免疫応答を誘導することができる。しかしながら、生ワクチンの使用では、毒性の復帰変異体の拡大から生じるかもしれない予期されない合併症に対する広範囲のモニターリングが要求され、このことは、本質的には、合衆国ではそのような治療のための免許交付がないことを明らかにしている。
【0010】
遺伝子操作された生インフルエンザウイルスワクチン−RNAウイルスのゲノムにおける部位特異的な変化を操作するための様々な技術の出現は、新しいワクチン法を開発することを可能にした[Enami(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:3802〜3805;Garcia−Sastre(1998)、Trends.Biotechnol.、16:230〜235]。従って、1回だけの複製サイクルを受けるウイルス粒子の作製がWatanbeおよび共同研究者[(2002)、J.Virol.、76:767〜773]によって明らかにされている。NEP発現遺伝子(NS2)を有しないウイルス粒子の調製物による細胞の感染はウイルスタンパク質の産生をもたらすが、感染性粒子の形成を生じさせない。従って、このような調製物は、感染性ウイルスの複製を可能にすることなく、保護的な抗体応答を誘導し、かつ強力な細胞媒介の免疫応答を刺激する。ウイルス弱毒化のための別の方法は、M2遺伝子が除去されている複製欠陥株の作製である。そのような欠失変異体は組織培養で効率的に成長するが、マウスにおいて不良に成長するだけであり、従って、潜在的な生ウイルスワクチン候補となる[Watanbe(2001)、J.Virol.、75:5656〜5662]。しかしながら、高頻度ではあるが、そのような操作されたウイルスの感染力価は低すぎて、臨床的状況では有用になり得ない。
【0011】
DNAワクチン接種−この方法では、1つまたは複数のインフルエンザタンパク質をコードするプラスミドDNAの局所的な投与または注射による投与が伴う。しかしながら、今日まで、インフルエンザに対するDNAワクチン接種に関する報告は動物モデルにおける研究に限られており、治療効力はヒト対象では明らかにされていない[Donnelly(1995)、Nat Med.、1:583〜587;Ljungberg(2000)、268:244〜25−;Kodihalli(2000)、Vaccine、18:2592〜2599]。
【0012】
抗ウイルス剤−4つの抗ウイルス剤が現在、合衆国では承認されている:アマンタジンおよびリマンチジンは、ウイルスの脱外被に関与するイオンチャネルM2タンパク質の化学的に関連する阻害剤であり[Hay(1985)、EMBO J、4:3021〜3024]、ザナミビルおよびオセルタミビルはNA阻害剤であり[Palese(1976)、J.Gen.Virol.、33:159〜63]、細胞質膜からのインフルエンザウイルス粒子の正確な放出を妨げる。これらの抗ウイルス薬は、インフルエンザに対する何らかの医学的介入のための重要な補助であり、ウイルスに対する予防において使用することができる(未だ承認されてないザナミビルを除く)。さらに、これらの薬剤は、ワクチンが開発されていない新しい大発生株が出現した場合には非常に貴重であり得る。
【0013】
全体的な利点にもかかわらず、現在利用可能な抗ウイルス剤の広範囲に及ぶ使用は、副作用、患者の協力、および薬剤耐性変化体の起こり得る出現に関する問題によって制限されている。
【0014】
アンチセンス−アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用するインフルエンザウイルスの阻害への試みが報告されている。Leiterおよび共同研究者はホスホジエステルオリゴヌクレオチドおよびホスホロチオアートオリゴヌクレオチドをA型インフルエンザウイルスおよびC型インフルエンザウイルスに対して標的化している。Leiter,J.、Agrawal,S.、Palese,P.&Zamecnik,P.C.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:3430〜3434(1990)。この研究において、ポリメラーゼPB1の遺伝子およびmRNAがvRNAの3’領域およびmRNAの5’領域においてそれぞれ標的化された。A型インフルエンザの配列特異的な阻害は観測されなかったが、C型インフルエンザのある程度の特異的な阻害が認められた。他のインフルエンザウイルスセグメントまたはmRNAは標的化されなかった。
【0015】
従って、上記の制限を有しない、インフルエンザウイルスの感染を診断および処置するために使用することができる組成物が必要であることが広く認識されており、そのような組成物を有することは非常に好都合である。
【発明の概要】
【0016】
本発明の1つの局面によれば、細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子が提供される。
【0017】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、ポリヌクレオチド配列は、配列番号11および配列番号12からなる群から選択される。
【0018】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリペプチドはインフルエンザウイルスのポリペプチドである。
【0019】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリヌクレオチド配列は、配列番号1のアミノ酸位置91〜261によって規定される血球凝集素の領域と結合することができる。
【0020】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリペプチドは宿主細胞のポリペプチドである。
【0021】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、宿主細胞のポリペプチドはシアル酸受容体である。
【0022】
本発明の別の局面によれば、インフルエンザウイルス感染を阻害することができる分子を作製する方法が提供され、この方法は、(a)複数の核酸分子を、細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと接触させること;(b)前記ポリペプチドと特異的に結合することができる少なくとも1つの核酸分子を前記複数の核酸分子から同定すること;および(c)前記ポリペプチドと特異的に結合することができる少なくとも1つの核酸分子を単離し、それにより、インフルエンザウイルス感染を阻害することができる分子を作製することを含む。
【0023】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、この方法はさらに、(a)に先だって、コンビナトリアル合成法を使用して複数の核酸分子を作製することを含む。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、この方法はさらに、(a)の前、または(c)の後で、複数の核酸分子を修飾することを含む。
【0025】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、この方法はさらに、ステップ(a)〜ステップ(c)を繰り返すことを含む。
【0026】
本発明のなお別の局面によれば、細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子と、生理学的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0027】
本発明のさらに別の局面によれば、包装材と、前記包装材に含有される、インフルエンザ感染を処置または防止するために特定された医薬組成物とを含む製造物が提供され、この場合、医薬組成物は、細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を有効成分として含む。
【0028】
本発明のさらなる局面によれば、インフルエンザウイルス感染を処置または防止する方法が提供され、この方法は、その必要性のある対象に、細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子の治療効果的な量を与え、それにより、インフルエンザウイルス感染を処置または防止することを含む。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、与えることは、(i)前記核酸分子の投与;および/または(ii)前記核酸分子を発現するポリヌクレオチドを投与することによって行われる。
【0030】
本発明のなおさらなる局面によれば、生物学的サンプルにおけるインフルエンザウイルスを同定する方法が提供され、この方法は、(a)生物学的サンプルを、インフルエンザウイルスのポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子と接触させること;および(b)生物学的サンプル中のインフルエンザウイルスポリペプチドに結合した前記核酸分子を検出し、それにより、インフルエンザ感染を同定することを含む。
【0031】
本発明のさらにさらなる局面によれば、抗ウイルス剤をインフルエンザウイルス感染組織に標的化する方法が提供され、この方法は、その必要性のある対象に、インフルエンザウイルスのポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子にコンジュゲート化された抗ウイルス剤の治療効果的な量を投与し、それにより、抗ウイルス剤をインフルエンザ感染組織に標的化することを含む。
【0032】
本発明のさらなる局面によれば、細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子にコンジュゲート化された抗ウイルス剤を含む組成物が提供される。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリペプチドはインフルエンザウイルスのポリペプチドである。
【0034】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリペプチドは、血球凝集素、ノイラミニダーゼ、RNA指向RNAポリメラーゼコアタンパク質、M1マトリックスタンパク質、M2マトリックスタンパク質およびNSタンパク質からなる群から選択される。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリヌクレオチド配列は、配列番号1のアミノ酸位置91〜261によって規定される血球凝集素の領域と結合することができる。
【0036】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリペプチドは宿主細胞のポリペプチドである。
【0037】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、宿主細胞のポリペプチドはシアル酸受容体である。
【0038】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリヌクレオチド配列は一本鎖である。
【0039】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリヌクレオチド配列はDNAである。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリヌクレオチド配列はRNAである。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、核酸分子はさらに、検出可能な標識を含む。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリヌクレオチド配列は2’−フルオロ(2’−F)修飾ヌクレオチドを含む。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、10ヌクレオチド〜35ヌクレオチドの間の長さを有するポリヌクレオチド配列が選択される。
【0044】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、医薬組成物はさらに薬剤を含む。
【0045】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、薬剤は、免疫調節剤、抗生物質、抗ウイルス剤、アンチセンス分子およびリボザイムからなる群から選択される。
【0046】
本発明のなおさらなる局面によれば、インフルエンザウイルスに対するワクチン接種のために有用なポリペプチドが提供され、このポリペプチドは、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して少なくとも60%の相同性であるアミノ酸配列を含む(ただし、このポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない)。
【0047】
本発明のさらにさらなる局面によれば、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して少なくとも60%の相同性であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ただし、このポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない)と、医薬的に許容され得るキャリアまたは希釈剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0048】
本発明のさらにさらなる局面によれば、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して少なくとも60%の相同性であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ただし、このポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない)を特異的に認識する抗原結合部位を含む抗体または抗体フラグメントが提供される。
【0049】
本発明のさらにさらなる局面によれば、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して少なくとも60%の相同性であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ただし、このポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない)をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0050】
本発明のさらにさらなる局面によれば、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して少なくとも60%の相同性であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ただし、このポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない)をコードする単離されたポリヌクレオチドを含む核酸構築物が提供される。
【0051】
本発明のさらにさらなる局面によれば、前記核酸構築物を含む宿主細胞が提供される。
【0052】
本発明のさらにさらなる局面によれば、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して少なくとも60%の相同性であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ただし、このポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない)をコードするポリヌクレオチドと、医薬的に許容され得るキャリアまたは希釈剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0053】
本発明のさらにさらなる局面によれば、インフルエンザウイルス感染を処置または防止する方法が提供され、この方法は、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して少なくとも60%の相同性であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ただし、このポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない)の治療効果的な量を、その必要性のある対象に与えることを含む。
【0054】
本発明のさらにさらなる局面によれば、インフルエンザウイルス感染を処置または防止する方法が提供され、この方法は、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して少なくとも60%の相同性であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ただし、このポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない)を特異的に認識する抗原結合部位を含む抗体または抗体フラグメントの治療効果的な量を、その必要性のある対象に与えることを含む。
【0055】
本発明のさらにさらなる局面によれば、生物学的サンプルにおけるインフルエンザウイルスを同定する方法が提供され、この方法は、(a)生物学的サンプルを、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して少なくとも60%の相同性であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(ただし、このポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない)を特異的に認識する抗原結合部位を含む抗体または抗体フラグメントと接触させること;および(b)生物学的サンプルにおける前記抗体または抗体フラグメントを含む免疫複合体を検出し、それにより、生物学的サンプルにおけるインフルエンザウイルスを同定することを含む。
【0056】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、ポリペプチドは配列番号13〜配列番号15に示される通りである。
【0057】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、アミノ酸配列は配列番号13〜配列番号15に示される通りである。
【0058】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、アミノ酸配列は配列番号1のアミノ酸位置91〜261によって規定される。
【0059】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、アミノ酸配列は配列番号1のアミノ酸位置116〜261によって規定される。
【0060】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、アミノ酸配列は配列番号1のアミノ酸位置116〜245によって規定される。
【0061】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、抗体または抗体フラグメントはさらに標識を含む。
【0062】
記載された好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、免疫複合体を検出することは、(b)の後で標識の強度を定量することによって行われる。
【0063】
本発明のさらにさらなる局面によれば、配列番号11または配列番号12に示されるような核酸分子が提供される。
【0064】
本発明は、インフルエンザウイルス感染を診断および処置するために使用することができる核酸分子、ポリペプチド、それに対して作製された抗体、およびそれらを含有する組成物を提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。
【0065】
別途定義されない場合、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と同様または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。また、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本発明は、例としてだけであるが、添付されている図面を参照して、本明細書中に記載される。次に図面を詳しく具体的に参照して、示されている細目は、例としてであり、また、本発明の好ましい実施形態の例示的な議論のためだけのものであり、従って、本発明の原理および概念的局面の最も有用かつ容易に理解された記述であると考えられるものを提供するために示されていることが強調される。これに関して、記述を図面と一緒に理解することにより、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具体化され得るかが当業者には明らかになるので、発明の構造的詳細を、発明の基本的な理解のために必要であるよりも詳細に示すことは試みられていない。
【図1a】図1aは、本発明の核酸分子に取り込むことができる核酸の修飾を表す、Eaton(1997)、Curr.Opin.Chem.Biol.、1:10〜16から改変された概略図であり、5位が修飾された2’−デオキシウリジンおよびウリジンを示す。
【図1b】図1bは、本発明の核酸分子に取り込むことができる核酸の修飾を表す、Eaton(1997)、Curr.Opin.Chem.Biol.、1:10〜16から改変された概略図であり、8位が修飾された2’−デオキシアデニン、アデニンおよびグアノシンを示す。
【図1c】図1cは、本発明の核酸分子に取り込むことができる核酸の修飾を表す、Eaton(1997)、Curr.Opin.Chem.Biol.、1:10〜16から改変された概略図であり、2’−修飾ウリジンを示す。
【図2】図2a〜図2bは、ELISAによって測定されたときの、本発明の教示に従って作製されたインフルエンザ特異的アプタマー(A21およびA22)およびコントロールの一本鎖アプタマーの完全なインフルエンザウイルスまたはHA91〜261ペプチドに対する結合レベルを表すヒストグラムである。コントロール核酸と比較した場合、ウイルスペプチドに対するA21およびA22の著しい結合(それぞれ、p=0.042およびp=0.0008)、ならびに、A22アプタマーと比較した場合、完全なウイルスに対するA21の結合の著しい低下(p=0.017)に留意すること。図2c〜図2eは、DNAdrawソフトウエア(18)によって作製されるような、A22アプタマーの提案される二次構造(図2c)、A21アプタマーの提案される二次構造(図2d)、および、NP147〜158をコードするコントロールオリゴヌクレオチドの提案される二次構造(図2e)の概略図である。
【図3a−b】図3aは、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイを使用して測定されたときの、インフルエンザウイルスで処理されたMDCK細胞の生存性に対する本発明のA22アプタマーの効果を示す用量応答曲線である。最も大きな保護効果が、A22を50pmol〜100pmolの濃度範囲で使用して達成されたことに留意すること。図3bは、H3N2感染MDCK細胞およびH2N2感染MDCK細胞に対する本発明の(それぞれ50pmolでの)A21アプタマーおよびA22アプタマーの保護効果を表すヒストグラム表示である。
【図3c−d】図3cは、MTTアッセイによって測定されたときの、宿主細胞タンパク質とは無関係なA22の細胞保護効果を図示するヒストグラム表示である。MDCK細胞を、示された時間について50pmolのA22による処理の後60分間、インフルエンザウイルスとインキュベーションした。処理群およびコントロール群の間に大きな差がないことに留意すること(30分についてはp=0.237、60分についてはp=0.09)。同様に、細胞生存性における大きな差がないことが2つのインキュベーション時間の間において明らかであった(p>0.05)。図3dは、MTTアッセイによって測定されたときの、感染MDCK細胞に対するA22の保護効果を図示するヒストグラムである。MDCK細胞を、50pmolのA22による60分間の処置の前の30分間または60分間、インフルエンザウイルスとインキュベーションした。非感染細胞と比較したとき、60分のウイルス処置MDCK細胞に対するA22の大きくない効果が明らかであったが、30分のウイルス処置MDCK細胞に対するA22の著しい保護効果が認められたことに留意すること。
【図4】図4は、インフルエンザによる細胞の感染に対するA22の効果を表す顕微鏡写真である(図4a〜図4f)。図4a〜図4cは、インフルエンザによる感染後のMDCK細胞(図4a)、A22による前処理の後のMDCK細胞(図4b)、または非感染MDCK細胞の光学顕微鏡画像である。図4d〜図4fは、インフルエンザウイルスとの2日間のインキュベーションの後(図4d)、インフルエンザウイルスおよびA22との2日間のインキュベーションの後(図4e)、またはA22単独との2日間のインキュベーションの後(図4f)におけるMDCK細胞の免疫蛍光画像である。
【図5】図5は、A22の存在下または非存在下でのインフルエンザウイルス感染BALB/cマウスの肺切片を示す顕微鏡写真である(図5a〜図5f)。様々な処置群におけるマウスを、インフルエンザウイルスを鼻腔内接種した6日後に屠殺し、その肺の小さい一部を取り出し、組織学的検査のために緩衝化された10%中性ホルマリンに入れた。染色を、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて行った。図5a−非感染マウスから得られた肺切片;図5b−インフルエンザウイルス感染マウスから得られた肺切片;図5c−ウイルス感染の1日前にA22アプタマーで処置された「−1日」群のマウスから得られた肺切片;図5d−ウイルス感染と同時にA22で処置された「0日」群のマウス肺切片;図5e〜図5f−感染後2日目にA22で処置された「+2日」群の肺から得られた2つの異なる切片である。マウスの肺の約60%が、図5fでは、非感染コントロールの組織学と類似するパターンに対応し、これに対して、肺の40%が単核細胞の大量の拡大を含有した(図5e)ことが推定される。
【図6a】図6aは、体重によって測定されたときのインフルエンザウイルス感染マウスに対するA22の保護効果を図示するグラフである。マウスに100HAUのA/Port Chalmers/1/73を鼻腔内接種によって感染させた。−1日群−ウイルス接種の1日前に2.5nmolのA22で処置されたマウス;+2日群−ウイルス接種後2日目に2.5nmolのA22で処置されたマウス;0日群−ウイルス接種と同時にA22で処置されたマウス。感染させた非処置マウスの体重が、それぞれの時間間隔について、A22で処置されたマウスの体重と比較された(図6a)。
【図6b】図6bは、肺のウイルス負荷量によって測定されたときのインフルエンザウイルス感染マウスに対するA22の保護効果を図示するグラフである。マウスに100HAUのA/Port Chalmers/1/73を鼻腔内接種によって感染させた。−1日群−ウイルス接種の1日前に2.5nmolのA22で処置されたマウス;+2日群−ウイルス接種後2日目に2.5nmolのA22で処置されたマウス;0日群−ウイルス接種と同時にA22で処置されたマウス。A22の保護能力を、肺のウイルス負荷量を測定することによって調べた(図6b)
【図7】図7aは、A22アプタマーを使用したときの、インフルエンザのいくつかの株を(それぞれ10HAUで)用いたマウス感染の阻害を表すグラフである。図7bは、本発明のA21アプタマーおよびA22アプタマー、ならびにコントロールのオリゴヌクレオチドおよび抗インフルエンザ薬オセルタミビルを使用したときの、A/Texas/1/77インフルエンザ株によるマウス感染の阻害を表すグラフである。
【図8a−d】図8a−dは、ELISAによって測定されたときの、組換えHA91〜261フラグメントに対する抗体と様々なインフルエンザウイルス株との交差反応効果を図示するグラフである(図8a〜図8d)。IgGレベルが免疫化マウス(黒記号)および非免疫化マウス(白記号)の血清サンプルにおいてELISAによって測定された。図8a−Port Chalmeras/1/73感染マウス;図8b−PR/8/34感染マウス;図8c−Texas/1/77感染マウス;および、図8d−Japanese/57感染マウス。
【図8e】図8eは、ELISAによって測定されたときの、組換えHA91〜261フラグメントに対する抗体と様々なインフルエンザウイルス株との交差反応効果を図示するグラフであり、完全なA/Texas/1/77ウイルス(ひし形)、A/Port Chalmers/1/73ウイルス(三角)、A/PR/8/34ウイルス(丸)およびA/Japanese/57ウイルス(十字)によって誘導される株特異的な免疫応答を図示する。
【図9】図9aは、Ni−NTAカラムによって精製されたHA91〜108ペプチドのSDS−PAGE分析を表す顕微鏡写真である。M−分子量マーカー;1−10μgのHA91〜108ペプチド;2−20μgのHA91〜108ペプチド。図9bは、ELISAアッセイによって測定されたときのHA91〜108ペプチドの抗原性を表すグラフである。HA91〜261ペプチドをELISAプレートに被覆し、HA91〜108ペプチドに対するウサギ抗血清(黒四角)または完全なA/Texas/77インフルエンザウイルスに対するウサギ抗血清(白丸)と反応させた。コントロールの血清なしがアスタリスクによって示される。
【図10】図10a〜図10bは、ELISAアッセイによって測定されたときの本発明のHA91〜261ペプチドの免疫原性を表すグラフ表示である。鼻腔内(三角)または肉趾(ひし形)のいずれかによりHA91〜261ペプチドで免疫化されたマウス、あるいはペプチドに対応するDNAワクチン(黒丸)で免疫化されたマウスからの示された血清希釈物を、HA91〜261ペプチド(図10a)または完全なウイルス(図10b)で被覆されたマイクロタイタープレートと接触させ、ELISAアッセイを行った。DNAプライミング−タンパク質追加抗原刺激によって免疫化されたマウスからの血清が黒四角によって示され、また、非免疫化マウスからの血清がアスタリスクによって示される。コントロールの空ベクターpCDNA3.1で免疫化されたマウスからの血清が白丸で示される。図10cは、抗HA91〜261ペプチドと多数のインフルエンザウイルス株との交差反応性を表すヒストグラムである。
【図11】図11は、肺ホモジネート物のELISAアッセイによって測定されたときの、HA91〜261ペプチド(黒三角)またはDNAワクチン(黒四角)によるマウスの鼻腔内免疫化の後における本発明のHA91〜261ペプチド(図11a)またはA/Texas/77ウイルス(図11b)との反応性を有するIgA抗体の産生を図示するグラフである(図11a〜図11b)。一緒にされたDNAプライミング−タンパク質フラグメント追加抗原刺激が黒四角によって示され、非免疫化コントロールマウスがアスタリスクによって示される。ベクターpCDNA3.1で免疫化コントロールが白四角によって示される。
【図12】図12は、HA91〜261ペプチド(図12a)またはウイルス粒子(図12b)によるインビトロ刺激に応答したHA91〜261DNAおよび/またはHA91〜261ペプチドによる免疫刺激マウスから得られた脾臓細胞の増殖を表すヒストグラムである。増殖がチミジン取り込みによってモニターされ、培地コントロールと比較して刺激指数として表された。
【図13】図13は、インフルエンザウイルス刺激に応答した脾臓細胞によるサイトカイン分泌を表すヒストグラムである(図13a〜図13b)。マウスを3週間の間隔で3回免疫化し、取り出したその脾臓細胞を不活性化インフルエンザウイルスによりインビトロで刺激した。精製サイトカインの標準曲線との比較により定量された平均サイトカイン濃度が示される。
【図14】図14は、本発明のペプチドワクチンおよび/またはDNAワクチンで免疫化されたマウスにおけるCTL応答を表すヒストグラムである(図14a〜図14b)。BALB/cマウスをpHA91〜261DNAまたはペプチドで免疫化し、脾臓細胞をウイルス特異的CTL活性についてアッセイした。それぞれの群についてのデータは、20:1(図14a)および50:1(図14b)のエフェクター対標的比での51Cr標識された標的細胞の溶解によって表される。
【図15】図15は、本発明のpHA91〜261DNA構築物またはペプチド構築物で免疫化されたマウスにおける致死量未満のインフルエンザウイルス抗原投与感染に対する保護を表すヒストグラムである(図15a〜図15b)。マウスは最後の免疫化の4週間後に抗原投与され、5日後に屠殺された。それぞれの群から得られた肺ホモジネートの10−8希釈物を赤血球凝集アッセイによってウイルスの存在についてアッセイした。結果が、10−8のホモジネート希釈度での各群におけるウイルス陽性肺の百分率として表され(図15a)、そしてまたLogEID50として表される(図15b)。アスタリスクは統計学的有意差(p<0.05)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明は、脊椎動物(例えば、鳥類、ブタおよびヒトなど)におけるインフルエンザウイルス感染を処置および検出するために使用することができる核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体および医薬組成物に関する。
【0068】
本発明の原理および操作は、図面および付随する記述を参照してより良く理解することができる。
【0069】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することが可能であり、または様々な方法で実行される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであり、限定であるとして見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0070】
インフルエンザは、臨床的な病的状態、死亡者および大きい経済的損失を発生の毎年に引き起こす主要な公衆衛生問題である。今日まで、ワクチン接種法は、インフルエンザ抑制の基礎となっているが、危険性が高い集団群における罹患者および死亡者を防止することに向けられてきている。しかしながら、インフルエンザウイルスの表面タンパク質(すなわち、血球凝集素およびノイラミニダーゼ)の迅速かつ予測できない変化のために、新しいウイルス株が出現するので、効果的なワクチンの開発は複雑であり、費用がかかる。
【0071】
現在、利用可能な抗ウイルス薬には、ウイルスM2イオンチャネル遮断剤のアマンタジンおよびリマンタジン、ならびにノイラミニダーゼ遮断剤のザナミビル(Relenza(商標))およびオセルタミビル(Tamiflu(商標))が含まれ、これらはウイルス粒子の放出および出芽を妨げている。M2イオンチャネル遮断剤は、M2タンパク質をコードしないB型インフルエンザウイルスに対しては効果がなく、また、重篤な副作用および獲得された耐性によって制限される一方で、ザナミビルの使用は気道抵抗を伴い、オセルタミビルの使用は非常に費用がかかる。
【0072】
本明細書中上記に記載されるように、インフルエンザウイルスは2つの表面抗原[ノイラミニダーゼおよび血球凝集素(HA)]をコードしており、これらはゆっくりした変化(すなわち、抗原シフトおよび抗原ドリフト)を受け、インフルエンザにおける大きな抗原性変化を生じさせている。HA分子(75kD〜80kD、GenBankアクセション番号AF092062、配列番号1)は、種々のウイルス株の血清学的特異性を規定する際の最も重要な抗原であり、これには、複数の抗原決定基が含まれており、そのいくつかが、異なる株において配列変化を受ける領域に存在し(すなわち、株特異的な決定基)、他の決定基が、多くのHA分子に共通する領域に存在する(すなわち、共通決定基)。
【0073】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、HAポリペプチドにおける保存された配列と結合するように設計されたオリゴヌクレオチド(例えば、アプタマー)は、宿主細胞に対するウイルス結合を防止するために利用できることを発見している。本明細書中下記および下記の実施例の節において例示されるように、本発明者らは、入念な実験によって、インフルエンザウイルス感染を診断および処置するために使用することができるアプタマー核酸分子を始めて提供している。そのようなアプタマー分子はウイルス交差反応性を示し、そのため、インフルエンザウイルスに対する万能的なワクチンとして使用することができる。
【0074】
アプタマーは、目的とするポリペプチドと特異的に結合し、その指定された機能を阻害するために選択される、三次構造を有する核酸配列である。アプタマーおよびその作用機構のさらなる記載が、Osborne他、Curr.Opin.Chem.Biol.、1997、1(1):5〜9;およびPatel,D.J.、Curr.Opin.Chem.Biol.、Jun.1997、1(1):32〜46によって示される。
【0075】
従って、本発明の1つの局面によれば、細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子が提供される。
【0076】
細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと特異的に結合する本発明のこの局面の核酸分子の能力は、インフルエンザウイルス感染の治療および診断におけるその使用を可能にする。
【0077】
本明細書中で使用される「細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチド」は、A型〜C型のインフルエンザウイルス株を含むオルトミクソウイルス科ウイルスによってコードされるポリペプチド、宿主細胞のポリペプチド、またはそれらのペプチドフラグメントを示す。
【0078】
細胞のウイルス感染に関係するインフルエンザウイルスポリペプチドの例には、限定されないが、血球凝集素、ノイラミニダーゼ、RNA指向RNAポリメラーゼコアタンパク質(PB1、PB2およびPAを含む)、M1マトリックスタンパク質およびM2マトリックスタンパク質、ならびにNSタンパク質が含まれる。
【0079】
インフルエンザウイルス感染に関係する宿主細胞ポリペプチドの例には、限定されないが、末端のN−アセチルノイラミン酸(NANA=シアル酸)基を含有するムコタンパク質、HLAタンパク質およびエンドサイトーシスタンパク質、シアル酸含有のグリカンおよび粘膜糖タンパク質が含まれる。
【0080】
本発明のこの局面のポリペプチド標的は、本発明の核酸分子の特異性を最大にし、かつ、その細胞毒性を低下させるために、好ましくはウイルス性であることが理解される。従って、好ましいポリペプチド標的配列は、A型〜C型のインフルエンザウイルスによって共有される保存されたアミノ酸配列を含む。そのような配列と結合するように作製された核酸分子は万能的なワクチンとして使用することができる。
【0081】
保存されたウイルスペプチド標的の例を下記の表1に示す。
【表1】

【0082】
本発明のこの局面の核酸分子は、本明細書中上記で記載されたポリペプチド標的と特異的に結合することができる一本鎖または二本鎖のDNA分子またはRNA分子あるいはそれらの任意の修飾体を示す。本発明のこの局面の核酸分子は交換可能に「アプタマー」として示される。
【0083】
典型的には、本発明のこの局面による核酸分子は、10塩基〜100塩基などの様々な長さを有する。しかし、短い核酸分子(例えば、10塩基〜35塩基)が、生物利用能(すなわち、分解に対する抵抗性、および増大した細胞取り込み)などの、経済的な事情、製造上の事情および治療的な事情のために好ましくは使用されることが理解される。
【0084】
本発明のこの局面の現在知られている実施形態によれば、核酸分子は、好ましくは、配列番号11および配列番号12に示される核酸分子(すなわち、A21およびA22)である。
【0085】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のこの局面による核酸分子は、好ましくは、標的ポリペプチドに対する高まった生物利用能および改善された効力を得るために修飾される。修飾には、核酸塩基または分子全体に対するさらなる電荷、分極性、水素結合、静電的相互作用および可動性を組み込む様々な化学基が含まれるが、これらに限定されない。付加または修飾される化学基は、ポリペプチド標的のトポロジーに一致する立体配座的に柔軟な連結を含むように選択される。また、本発明のこの局面の核酸分子を修飾するための化学がトリホスファート(NTP)合成またはホスホルアミダイト合成のいずれかについて可能にする対策が取られる。
【0086】
従って、例えば、本発明のこの局面の核酸分子は、好ましくは、標的ポリペプチドに対する特異的な架橋を可能にし、それにより高親和性の化合物を形成する修飾を含む。
【0087】
付加される架橋基は、疎水性の機能性、親水性の機能性、または荷電した機能性を含有することができる。架橋は、イミン、アセタール、エステルおよびジスルフィド連結の形成によって、そして同様に、α,β−不飽和カルボニルリンカーへの共役付加によって達成することができる。ホスホルアミダイト合成のために好適である2’−デオキシウリジンヌクレオシドの様々な例が図1aに示され、これらは、小さい疎水性官能基(例えば、ビニル(群1、図1a)など)、大きい疎水性官能基(例えば、プレニル(群13〜群14、図1a)など)、および、様々な程度の側鎖疎水性を有するカルボニル化合物(群3、群6〜群11、図1a)を含む。
【0088】
ピリミジン塩基の修飾(例えば、5位におけるRNAウリジンヌクレオシド修飾など)は、ケトンの形態でコンジュゲート化することができる疎水性基[群17、群18、図1a、Crouch(1994)、Nucleosides Nucleotides、13:939〜944]、アミドの形態でコンジュゲート化することができる疎水性基[群24、群27、図1a、Dewey(1995)、J.Am.Chem.Soc.、117:8474〜8475]などを含み、これらはDNA核酸分子またはRNA核酸分子のいずれにも結合することができる。アミドは水素結合能をアプタマーに付与することができることが理解される。いずれの場合でも、本明細書中上記に記載されるように、架橋カルボニル基をウリジンの5位に結合することができる(群15〜群18、図1a)。しかし、カルボニルリンカーの予想される反応性は、標的ポリペプチドの境界に依存して著しく異なり得ることが理解される。
【0089】
プリン修飾の様々な例が図1bに示される。例えば、疎水性の置換基をRNAまたはDNAのプリンヌクレオシドの8位において結合することができる(群28〜群30、図1b)。立体的障害の程度をアミド連結によって変化させることができる(群31、群33、群34、群37および群38、図1b)。親水性の基(群35、図1b)および荷電した基(群36および群39、図1b)をプリンヌクレオシドの8位に取り付けることができる。標的ポリペプチドに対する既知の親和性を有する官能基をプリン塩基の8位に結合することができることが理解される(例えば、ビオチン化ヌクレオシド(群40、図1b)など)。
【0090】
修飾のためのさらなる部位には、RNAの2’位、ならびに、RNAおよびDNAのホスホジエステル酸素が含まれるが、これらに限定されない。2’位のピリミジンヌクレオシド修飾を、Sebesta(1996)、Tetrahedron、52:14385〜14402;McGee(1996)、Tetrahedron、Lett.、37:1995〜1998;McGee(1996)、J.Org.Chem.、61:781〜785に従って行うことができる。本質的には、アミンリンカー(例えば、ヒドロキシルアミンリンカーなど)を使用して、異なるトポロジーを有する疎水性基(群41〜群43、群46および群49、図1c)、親水性基(群45および群47、図1c)、および標的ポリペプチドに対する特異的な親和性を示す基(群45、図1c)を結合することができる。
【0091】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のこの局面の核酸分子はまた、その生物利用能を増大させるために修飾することができる。下記には、そのような修飾に対する非限定的な例が例示される。
【0092】
本発明のこの局面の核酸分子は、3’から5’へのホスホジエステル連結で結合したプリン塩基およびピリミジン塩基からなる複素環ヌクレオシドを含むことができる。
【0093】
好ましく使用される核酸分子は、本明細書中下記において概略的に記載されるように、骨格、ヌクレオシド間連結または塩基のいずれかにおいて修飾された核酸分子である。そのような修飾は、しばしば、オリゴヌクレオチドの取り込みおよび細胞内条件に対する抵抗性を促進させることができる。
【0094】
一連の合成化学を、NTPまたはホスホルアミダイト試薬のいずれかに変換することができるヌクレオシドの修飾のために利用することができる。さらなる詳細については、EatonおよびPieken(1995)、Annu.Rev.Biochem.、64:837〜863を参照のこと。
【0095】
本発明のこの局面に従って有用である核酸分子の具体的な例には、修飾された骨格または非天然のヌクレオシド間連結を含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドには、米国特許第687808号、同第4469863号、同第4476301号、同第5023243号、同第5177196号、同第5188897号、同第5264423号、同第5276019号、同第5278302号、同第5286717号、同第5321131号、同第5399676号、同第5405939号、同第5453496号、同第5455233号、同第5466677号、同第5476925号、同第5519126号、同第5536821号、同第5541306号、同第5550111号、同第5563253号、同第5571799号、同第5587361号および同第5625050号に開示されるように、骨格内にリン原子を保持するものが含まれる。
【0096】
好ましい修飾された核酸骨格には、例えば、ホスホロチオアート、キラルなホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルホスホナートおよび他のアルキルホスホナート(3’−アルキレンホスホナートおよびキラルなホスホナートを含む)、ホスフィナート、ホスホルアミダート(3’−アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートを含む)、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに、通常の3’−5’連結を有するボラノホスファート、これらの2’−5’連結したアナログ、ならびに、反転した極性を有するもの(この場合、ヌクレオシドユニットの隣接対は3’−5’から5’−3’に連結するか、または2’−5’から5’−2’に連結する)が含まれる。様々な塩、混合塩、および遊離酸形態もまた使用することができる。
【0097】
あるいは、リン原子をその中に含まない修飾された核酸骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルのヌクレオシド間連結、ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルの混合型ヌクレオシド間連結、あるいは、1つまたは複数の短鎖のヘテロ原子または複素環でのヌクレオシド間連結によって形成される骨格を有する。これらには、米国特許第5034506号、同第5166315号、同第5185444号、同第5214134号、同第5216141号、同第5235033号、同第5264562号、同第5264564号、同第5405938号、同第5434257号、同第5466677号、同第5470967号、同第5489677号、同第5541307号、同第5561225号、同第5596086号、同第5602240号、同第5610289号、同第5602240号、同第5608046号、同第5610289号、同第5618704号、同第5623070号、同第5663312号、同第5633360号、同第5677437号および同第5677439号に開示されるように、モルホリノ連結(これはヌクレオシドの糖部分から一部が形成される);シロキサン骨格;スルフィド骨格、スルホキシド骨格およびスルホン骨格;ホルムアセチル骨格およびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル骨格およびメチレンチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファマート骨格;メチレンイミン骨格およびメチレンヒドラジノ骨格;スルホナート骨格およびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに、N、O、SおよびCHの混合した構成要素部を有する他の骨格が含まれる。
【0098】
本発明に従って使用することができる他の核酸分子は、ヌクレオチドユニットの糖およびヌクレオシド間連結の両方(すなわち、骨格)において修飾された核酸分子であり、新規な基で置換される。塩基ユニットは、適切なポリヌクレオチド標的との相補のために保持される。そのような核酸配列模倣体に対する一例として、ペプチド核酸(PNA)が含まれる。PNAオリゴヌクレオチドは、糖−骨格がアミド含有骨格(特に、アミノエチルグリシン骨格)で置換されるオリゴヌクレオチドを示す。塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合する。PNA化合物の調製を教示する米国特許には、限定されないが、米国特許第5539082号、同第5714331号および同第5719262号(これらのそれぞれが参考として本明細書中に組み込まれる)が含まれる。本発明において使用することができる他の骨格修飾が米国特許第6303374号に開示される。
【0099】
本発明の核酸分子はまた、塩基修飾または塩基置換を含むことができる。本明細書中で使用される「非修飾」または「天然」の塩基には、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。修飾塩基には、他の合成された塩基および天然の塩基が含まれ、例えば、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチル誘導体および他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピル誘導体および他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換されたアデニンおよびグアニン、5−ハロ(特に5−ブロモ)、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換されたウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどが含まれる。さらなる塩基には、米国特許第3687808号に開示される塩基、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering(858頁〜859頁、Kroschwitz,J.I.編、John Wiley&Sons、1990)に開示される塩基、Englisch他(Angewandte Chemie,International Edition、1991、30、613)によって開示される塩基、および、Sanghvi,Y.S.(第15章、Antisence Research and Applications、289頁〜302頁、Crooke,S.T.およびLebleu,B.編、CRC Press、1993)によって開示される塩基が含まれる。そのような塩基は、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増大させるために特に有用である。これらには、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン類、ならびに、N−2置換、N−6置換およびO−6置換のプリン(2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含む)が含まれる。5−メチルシトシンの様々な置換は、核酸二重鎖安定性を0.6C〜1.2C増大させることが示されており[Sanghvi YS他(1993)、Antisence Research and Applications、CRC Press、Boca Raton、276〜278]、さらにより具体的には、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わされたときには、現時点で好ましい塩基置換である。
【0100】
本発明の核酸分子の別の修飾では、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布または細胞取り込みを高める1つまたは複数の成分またはコンジュゲートをオリゴヌクレオチドに化学的に連結することが含まれる。そのような成分には、米国特許第6303374号に開示されるように、脂質成分、例えば、コレステロール成分、コール酸、チオエーテル(例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール)、チオコレステロール、脂肪族鎖(例えば、ドデカンジオールまたはウンデシル残基)、リン脂質(例えば、ジヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホナート)、ポリアミン鎖またはポリエチレングリコール鎖、あるいはアダマンタン酢酸、パルミチル成分、あるいはオクタデシルアミン成分またはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール成分が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
所与のオリゴヌクレオチド分子におけるすべての位置が均一に修飾されることは必ずしも必要でなく、実際、上記修飾の1つ以上を1つの化合物に取り込むことができ、またはオリゴヌクレオチド内の1つだけのヌクレオシドにおいてさえ取り込むことができる。
【0102】
下記の実施例の節において例示されるように、本発明者らは、結論として、本発明の核酸分子はインビトロおよびインビボで細胞のインフルエンザウイルス感染を防止することができることを示している。さらに、ウイルス抗原投与後のウイルスの拡大を阻害する本発明の核酸分子の能力は、抗インフルエンザ予防および抗インフルエンザ治療の適用における本発明の核酸分子の使用を示唆している。
【0103】
従って、本発明の別の局面によれば、インフルエンザウイルス感染を処置する方法が提供される。
【0104】
本明細書中で使用される用語「処置する」は、インフルエンザウイルス感染を妨げること、または、インフルエンザウイルス感染に関連する症状を実質的に減少(すなわち、軽減または低下)させることを示す。
【0105】
この方法は、その必要性のある対象に本明細書中上記で記載される本発明の核酸分子の治療効果的な量を与えることによって行われる。
【0106】
本明細書中で使用される「その必要性のある対象」は、インフルエンザウイルスに関連する症状に罹っている対象、または、インフルエンザに罹る危険性がある対象を示す。そのような対象の例には、65歳以上の人々;心臓、肺もしくは腎臓の慢性的疾患、糖尿病、免疫抑制、または貧血の重篤な形態を有する人々、療養施設および長期養護施設の居住者、アスピリン治療を受けている、従って、インフルエンザに感染した後でライ症候群を発症することについて危険性を有し得る小児および十代、および、危険性が高い人との接触が緊密であるか、または頻繁である人々が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
好ましくは、本発明の核酸分子は、0.1μg/Kg体重〜150μg/Kg体重(好ましくは1μg/Kg体重〜100μg/Kg体重、より好ましくは1μg/Kg体重〜50μg/Kg体重、さらにより好ましくは1μg/Kg体重〜15μg/Kg体重)の間の濃度で与えられる。
【0108】
本発明の核酸分子(すなわち、有効成分)は、そのものとして、または、医薬的に許容され得るキャリアと混合される医薬組成物の一部として対象に与えることができる。
【0109】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0110】
本明細書中において、用語「有効成分」は、生物学的効果を説明することができる調製物を示す。
【0111】
本明細書中以降、表現「生理学的に許容され得るキャリア」および表現「医薬的に許容され得るキャリア」は、交換可能に使用され得るが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に包含される。
【0112】
アプタマーの活性はその分子量と直接的に相関するので、本発明の核酸分子を高分子量のキャリアにコンジュゲート化するための対策が取られる。そのような高分子量キャリアには、限定されないが、ポリアルキレングリコールおよびポリエチレングリコール(PEG)が含まれ、これらは、有機媒体および水性媒体の両方における広範囲の溶解性を有する生体適合性ポリマーである(Mutter他(1979))。
【0113】
あるいは、マイクロ粒子、例えば、マイクロカプセルまたはカチオン性脂質などが、本発明のこの局面の医薬的に許容され得るキャリアとして役立ち得る。
【0114】
本明細書中で使用される場合、マイクロ粒子には、合成ポリマーおよび/または天然ポリマーから形成されるリポソーム、ビロソーム、ミクロスフィアおよびマイクロカプセルが含まれる。マイクロカプセルおよびミクロスフィアを作製するための様々な方法が当業者には知られており、これらには、溶媒蒸発、溶液流延、噴霧乾燥および溶媒伸長が含まれる。様々なマイクロ粒子に取り込むことができる有用なポリマーの例には、多糖、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシド、ならびにタンパク質およびペプチドが含まれる。
【0115】
様々なリポソームを、Kim他、Biochim.Biophys.Acta、728:339〜348(1983);Liu他、Biochim.Biophys.Acta、1104:95〜101(1992);Lee他、Biochim.Biophys.Acta、1103:185〜197(1992);Wang他、Biochem.、28:9508〜9514(1989)によって報告される方法などのこの分野で広く知られている方法によって作製することができる。あるいは、本発明のこの局面の核酸分子はマイクロ粒子に取り込むことができ、または、マイクロ粒子の外側にイオン的もしくは共有結合的のいずれかで結合させることができる。
【0116】
カチオン性のリポソームまたはマイクロカプセルは、本発明のこの局面の核酸分子などの負に荷電した化合物(これらのリポソームの正に荷電した外側表面にイオン的に結合することができる)を送達するために特に有用なマイクロ粒子である。様々なカチオン性リポソームが、Felgner他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7413〜7417(1987);Felgner、Advanced Drug Delivery Reviews、5:163〜187(1990);Clarenc他、Anti−Cancer Drug Design、8:81〜94(1993)によって報告されるように、核酸または核酸−タンパク質複合体をインビトロおよびインビボの両方で細胞に送達することにおいて非常に効果的であることが知られている。カチオン性のリポソームまたはマイクロカプセルは、その混合物から形成されるリポソームまたはマイクロカプセルが、負に荷電した化合物とイオン的に結合する正味の正荷電を有するように、カチオン性側鎖基を十分な量で含有する1つまたは複数の脂質を含む混合物を使用して作製することができる。カチオン性リポソームを製造するために使用することができる正に荷電した脂質の例には、アミノ脂質のジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(PE)(これは正荷電の第一級アミノ頭部基を有する)、ホスファチジルコリン(PC)(これは、第一級アミンでない正荷電の頭部基を有する)、およびN[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリエチルアンモニウム(「DOTMA」、Felgner他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:7413〜7417(1987);Felgner他、Nature、337:387〜388(1989);Felgner、Advanced Drug Delivery Reviews、5:163〜187(1990)を参照のこと)が含まれる。
【0117】
上述の通り、本発明のこの局面の医薬組成物は賦形剤をさらに含んでもよい。本明細書中では、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖および様々なタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0118】
薬剤の処方および投与技術は“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,Mack Publishing Co.,Easton,PAの最新版に見出すことができ、これは参照によってここに組み入れられる。
【0119】
好適な投与経路は例えば経口、経腸、経粘膜、特に経鼻、経小腸内または筋肉間、皮下および骨髄内注射を含む非経口送達、ならびに鞘内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻内または腸内注射を含むことができる。
【0120】
代わりに、調製物は全身的な様式よりも、例えば患者の体の特定の領域中に調整物を直接注射することによって局所投与されることができる。
【0121】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている方法によって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、湿式粉砕、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0122】
従って、本発明に従って使用される医薬組成物は、薬学的に使用され得る調製物への活性な化合物の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つ以上の生理学的に受容可能なキャリアを使用して従来の様式で配合することができる。適切な配合は、選ばれる投与経路に依存する。
【0123】
注射の場合、本発明の化合物は、好ましくは、生理学的に適合し得る緩衝液(ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的食塩水緩衝液など)における水溶液で配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透させられるバリアに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤は、この分野では広く知られている。
【0124】
経口投与の場合、化合物は、活性な化合物を、この分野で十分に知られている医薬的に受容可能なキャリアと組み合わせることによって容易に配合することができる。そのようなキャリアにより、本発明の化合物は、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される医薬調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に受容可能なポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0125】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、活性な化合物の量を明らかにするために、または活性な化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
【0126】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された有効成分を含有し得る。軟カプセルでは、活性な化合物を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
【0127】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0128】
吸入による投与の場合、本発明に従って使用される化合物は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器で使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、化合物と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0129】
ここで記述される調製物は非経口投与のために、例えばボーラス注射又は連続注入のために処方されることができる。注射のための処方は単位投薬形態、例えばアンプル又は多用量容器の形態で、所望により保存剤を添加された状態で提示されることができる。組成物は油性または水性媒体中の懸濁液またはエマルションであることができ、懸濁、安定化および/または分散剤の如き処方薬剤を含むことができる。
【0130】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態における活性な調製物の水溶液が含まれる。さらに、活性な化合物の懸濁物を、適切なオイル状の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有し得る。場合により、懸濁物はまた、高濃度の溶液の調製を可能にするために化合物の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有し得る。
【0131】
あるいは、有効成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌されたパイロジェン非含有水)を用いて構成される粉末形態にすることができる。
【0132】
本発明の化合物はまた、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を使用して、坐薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物で配合することができる。
【0133】
本発明に関連して使用される好適な医薬組成物には、意図された目的を達成するために効果的な量で有効成分が含有される組成物が含まれる。より詳細には、治療効果的な量は、疾患の症状を防止もしくは緩和もしくは改善するために、または処置されている患者の生存を延ばすために効果的な抗酸化性調製物の量を意味する。
【0134】
治療効果的な量の決定は、特に本明細書中に示される詳細な開示を考慮に入れて十分に当業者の能力の範囲内である。
【0135】
本発明の方法で用いられるいかなる調製物についても治療効果的な量又は用量はインビトロでのアッセイから最初に推定されることができる。例えば、用量は動物モデルで処方されることができ、かかる情報はヒトにおける有用な用量を一層正確に決定するために用いられることができる。
【0136】
本明細書中に記載される化合物の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば、対象とする化合物についてIC50およびLD50(試験動物の50%に死をもたらす致死量)を測定することによって明らかにすることができる。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用に対する投薬量範囲を決定するために使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる。例えば、(54)を参照のこと。
【0137】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬はまた、徐放性組成物の単回投与で行うことができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0138】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている患者、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0139】
適合し得る薬学的キャリアに配合された本発明の調製物を含む組成物はまた、適用される状態の処置のために、調製され、適切な容器に入れられ、表示され得る。
【0140】
本発明の医薬組成物は、所望される場合には、有効成分を含有する1つ以上の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴い得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物についての米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。
【0141】
本発明の核酸分子はまた、本明細書中上記で記載された任意の好適な投与様式を用いて個々の対象に投与された核酸構築物から発現させることができることが理解される。あるいは、核酸構築物は、適切な送達ビヒクル/方法(トランスフェクションおよび形質導入など)および必要に応じた発現システムによって好適な細胞に導入され、その後、改変された細胞が培養で拡大培養され、個体に戻される。
【0142】
本発明のRNA核酸分子の細胞発現を可能にするために、本発明の核酸構築物はさらに、少なくとも1つのシス作用調節エレメントを含む。本明細書中で使用される表現「シス作用調節エレメント」は、トランス作用の調節因子と結合し、その下流に存在するコード配列の転写を調節するポリヌクレオチド配列(好ましくはプロモーター)を示す。
【0143】
任意の利用可能なプロモーターを本方法論によって使用することができる。アプタマー発現ベクターにおいて使用される好ましいプロモーターには、polIIIプロモーター、例えば、ヒトの小核U6遺伝子プロモーターおよびtRNA遺伝子プロモーターなどが含まれる。短いRNA分子をインビボで産生させるためのU6遺伝子転写シグナルの使用がNoonberg他、Nucleic Acids Res.、22:2830〜2836(1994)によって記載され、tRNA転写シグナルの使用がThompson他、Nucleic Acids Res.、23:2259〜2268(1995)によって記載される。
【0144】
多くのpolIIIプロモーターは内在的であり、polIII転写物がプロモーター配列を含むように転写ユニットの内部に配置されることが理解される。アプタマー分子を発現させるために有用であるためには、これらのプロモーター配列はアプタマーの構造または機能を妨害してはならない。従って、好ましいRNA polIII RNAプロモーターは、内在的でないU6遺伝子プロモーターである[KunkelおよびPederson、Nucleic Acids Res、17:7371〜7379(1989);Kunkel他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83:8575〜8579(1986);Reddy他、J.Biol.Chem.、262:75〜81(1987)]。アプタマー分子を発現させるために有用である好適なpolIIIプロモーターシステムが、Hall他、Cell、29:3〜5(1982);Nielsen他、Nucleic Acids Res.、21:3631〜3636(1993);FowlkesおよびShenk、Cell、22:405〜413(1980);GuptaおよびReddy、Nucleic Acids Res.、19:2073〜2075(1991);Kichhoefer他、J.Biol.Chem.、268:7868〜7873(1993);RomeroおよびBlackburn、Cell、67:343〜353(1991)によって記載される。RNA分子を発現させるためのpolIIIプロモーターの使用はまた、Ribozyme Pharmaceuticals,Inc.によって国際特許出願公開WO95/23225に記載される。
【0145】
本発明のアプタマーを発現させるために有用な他のプロモーターには、例えば、ウイルス(例えば、ポリオーマ、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはサイトメガロウイルス)のゲノム、または異種哺乳動物プロモーターに由来するもの(例えば、ベータアクチンプロモーター)が含まれる。SV40ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーターを、SV40のウイルス複製起点をも含有するSV40制限フラグメントとして得ることができる[Fiers他、Nature、273:113(1978)]。ヒトサイトメガロウイルスの即時初期プロモーターをHindIIIE制限フラグメントとして得ることができる(Greenway,P.J.他、Gene、18:355〜360(1982))。宿主細胞または近縁種に由来するプロモーターもまた使用できることが理解される。
【0146】
本発明の方法の構築物は好ましくはさらに、適切な選択マーカーおよび/または複製起点を含む。好ましくは、利用される構築物はシャトルベクターであり、これは大腸菌において増殖することができ(この場合、構築物は適切な選択マーカーおよび複製起点を含む)、かつ、細胞内での増殖または選ばれた組織における組み込みのために適合し得る。本発明による構築物は、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体であり得る。
【0147】
現在好ましいインビボ核酸移入技術には、ウイルス構築物または非ウイルス構築物(例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、I型単純ヘルペスウイルスまたはアデノ関連ウイルス(AAV)、および脂質に基づくシステムなど)を用いたトランスフェクションが含まれる。脂質媒介移入のための有用な脂質が、Lasic D.、Liposomes:From Physics to Applications、Elsevier:Amsterdam、1993によって記載される。
【0148】
好ましくは、カチオン性脂質が、本明細書中上記で記載されるように、等モル量での中性脂質との組合せで使用される。トランスフェクション複合体における有用な中性脂質には、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)(Hui他、Biophys.J.、(71)590〜599(1996));コレステロール(Liu他、Nat.Biotech.、15:167〜173(1997))が含まれる。
【0149】
典型的には、脂質混合物はクロロホルム中で調製され、乾燥され、そして、例えば、5%デキストロース水溶液または生理学的緩衝液において再水和され、リポソームを形成させる。得られるリポソームは一定の撹拌とともに核酸溶液と混合されて、カチオン性脂質−核酸のトランスフェクション複合体を形成させる。静脈内投与のための好ましいトランスフェクション複合体サイズは50nm〜5000nmであり、最も好ましくは100nm〜400nmである。
【0150】
DNA/脂質複合体は好ましくは、約0.625mg/mlのDNA濃度で調製され得ることが理解される。送達用量は体重1グラムあたり約10.mu.g〜約2mgである。反復用量を約2日〜約2ヶ月の間隔で送達することができる。
【0151】
現在知られている実施形態によるインビボ使用のための最も好ましい構築物はウイルス(最も好ましくは、アデノウイルス、AAV、レンチウイルスまたはレトロウイルス)である。ウイルス構築物(例えば、レトロウイルス構築物など)は、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサーまたは遺伝子座規定エレメント、あるいは、遺伝子発現を他の手段(例えば、選択的スプライシング、核RNA輸出、またはメッセンジャーの翻訳後修飾など)によって制御する他のエレメントを含む。そのようなベクター構築物はまた、ウイルス構築物に既に存在しない限り、パッキングシグナル、長末端反復(LTR)またはその一部、ならびに、使用されるウイルスに対して適切なプラス鎖プライマー結合部位およびマイナス鎖プライマー結合部位を含む。加えて、そのような構築物は、典型的には、ペプチドまたは抗体を、構築物が置かれる宿主細胞から分泌させるためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は哺乳動物のシグナル配列である。場合により、構築物はまた、ポリアデニル化を行わせるシグナル、ならびに、1つまたは複数の制限部位、および翻訳終結配列を含むことができる。例として、そのような構築物は、典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッキングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、および3’LTRまたはその一部を含む。
【0152】
インビボ核酸送達プロトコルのための好ましい様式が下記に示される:SomiaおよびVerma(2000)、Nature Reviews、1:91〜99;Isner(2002)、心筋遺伝子治療、Nature、415:234〜239;High(2001)、遺伝子治療:2001年の展望、Haemophilia、7:23〜27;HammondおよびMcKirnan(2001)、心臓疾患のための血管形成遺伝子治療:動物研究および臨床試験の再検討、49:561〜567。
【0153】
本発明の核酸分子を与える前に、または本発明の核酸分子を与えるのと同時に、または本発明の核酸分子を与えた後、薬剤を対象に与えることができる。
【0154】
薬剤は、インフルエンザ感染またはインフルエンザ感染に関する臨床的状態(例えば、肺炎など)の防止または処置を容易にする分子であり得る。薬剤の例には、本発明のこの局面によれば、免疫調節剤(例えば、抗体)、抗生物質、抗ウイルス剤(例えば、アマンタジン)、アンチセンス分子およびリボザイムなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0155】
本発明の核酸分子の抗体様の性質(すなわち、ポリペプチド標的に対する特異的な結合)は、本明細書中上記で記載された薬剤が、投与された核酸分子または核酸分子を含有する脂質キャリアに結合しているとき、感染性組織に特異的に標的化されることを可能にする。
【0156】
例えば、インフルエンザウイルスのポリペプチド(背景の節においてさらに記載されている)に向けられたアンチセンス分子は、本発明のアプタマー配列を使用して標的化することができる。「キメラ」なアンチセンス分子は、それぞれが少なくとも1つのヌクレオチドから構成される2つ以上の化学的に異なる領域を含有するオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対するオリゴヌクレオチドの増大した抵抗性、増大した細胞取り込み、および/または、標的ポリヌクレオチドに対する増大した結合親和性を付与するようにオリゴヌクレオチドが改変される少なくとも1つの領域を含有する。オリゴヌクレオチドのさらなる領域は、RNA:DNAハイブリッドまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することができる酵素に対する基質として役立ち得る。そのような酵素の一例として、RNaseH(これは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである)が挙げられる。従って、RNaseHの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それにより、遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害の効率を大きく高める。その結果、同じ標的領域にハイブリダイゼーションするホスホロチオアートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、多くの場合、匹敵する結果を、キメラなオリゴヌクレオチドが使用されたとき、より短いオリゴヌクレオチドを用いて得ることができる。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動、および、必要ならば、この分野で知られている会合核酸ハイブリダイゼーション技術によって日常的に検出することができる。
【0157】
本発明のキメラなアンチセンス分子は、上記で記載されるように、2つ以上のオリゴヌクレオチド(修飾オリゴヌクレオチド)の複合構造として形成され得る。そのようなハイブリッド構造の調製を教示する代表的な米国特許には、限定されないが、米国特許第5013830号、同第5149797号、同第5220007号、同第5256775号、同第5366878号、同第5403711号、同第5491133号、同第5565350号、同第5623065号、同第5652355号、同第5652356号および同第5700922号(これらはそれぞれが参考として本明細書中に全体が組み込まれる)が含まれる。
【0158】
あるいは、リボザイム配列を、本発明の核酸分子を使用して標的化することができる。リボザイムは、mRNAの切断による遺伝子発現の配列特異的な阻害のためにますます使用されている。数個のリボザイム配列を本発明のオリゴヌクレオチドに融合することができる。これらの配列には、血管形成経路における重要な成分であるVEGF−R(血管内皮増殖因子受容体)の形成を特異的に阻害するANGIOZYME、およびHEPTAZYME(C型肝炎ウイルス(HCV)RNAを選択的に破壊するために設計されたリボザイム)(Ribozyme Pharmaceuticals,Incorporated−WEBホームページ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0159】
場合により、「DNAザイム」を、本発明の方法を使用して標的化することができる[Breaker,R.R.およびJoyce,G.、Chemistry and Biology(1995)、2:655;Santoro、S.W.&Joyce,G.F.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1997、943:4262]。DNAザイムは一本鎖であり、両方のRNAを切断する。DNAザイムに対する一般的なモデル(「10−23」モデル)が提案されている。「10−23」DNAザイムは、それぞれが7個〜9個のデオキシリボヌクレオチドからなる2つの基質認識ドメインによって挟まれた15デオキシリボヌクレオチドの触媒ドメインを有する。このタイプのDNAザイムはその基質RNAをプリン:ピリミジン接合部において効果的に切断することができる(Santoro、S.W.&Joyce,G.F.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、199;DNAザイムの総説については、Khachigian,LM、Curr Opin Mol Ther、2002、4:119〜21を参照のこと)。
【0160】
一本鎖および二本鎖の標的切断部位を認識する操作された合成DNAザイムの構築および増幅の様々な例が米国特許第6326174号(Joyce他)に開示されている。ヒトウロキナーゼ受容体に対して向けられた類似する設計のDNAザイムが最近、ウロキナーゼ受容体の発現を阻害し、また、結腸ガン細胞の転移をインビボで首尾よく阻害することが観測された(Itoh他、20002、アブストラクト409、Ann Meeting Am Soc Gen Ther、www.asgt.org)。別の適用において、bcr−ablガン遺伝子に対して相補的なDNAザイムは、白血病細胞におけるガン遺伝子の発現を阻害し、そして、CMLおよびALLの場合において自家骨髄移植における再発率を低下させることに成功した。
【0161】
核酸−脂質カップリングの様々な方法がこの分野では広く知られており、米国特許第5756291号に記載される。
【0162】
例えば、Asseline,U.他[Proc Natl Acad Sci、81、3297〜3301(1984)]は、3’−リン酸基を介したポリメチレンリンカーによるインターカレート剤の共有結合的結合を記載する。Mori,K.他(FEBS Letters、249、213〜218(1989))は、オリゴヌクレオチドの5’末端におけるメチレンリンカーによる様々な基の共有結合的結合を記載する。PCT国際特許出願公開WO89/05853(1989年6月29日公開;その開示全体は本明細書により参考として組み込まれる)には、ヌクレオチド配列とキレート化剤とのコンジュゲートを形成させるための様々な方法が記載され、この場合、キレート化剤は、共有結合による結合または多価官能基由来の結合ユニットのいずれかによってヌクレオチド配列に結合される。
【0163】
従って、本発明のアプタマーまたは修飾アプタマーは単独で治療的適用において使用することができ、あるいは、薬剤を標的化して、医薬品またはトキシンを所望する標的に送達するために使用することができる。
【0164】
インフルエンザウイルスのポリペプチドと特異的に結合する本発明の核酸分子の能力は診断的適用におけるその使用を可能にする。
【0165】
今日まで、数多くの検査をA型インフルエンザおよびB型インフルエンザの診断のために利用することができる。生物学的サンプルにおけるインフルエンザウイルスを同定するための従来の方法では、細胞を培養することが伴い、それにより、ウイルス感染の非常に高感度かつ特異的な検出をもたらしている。しかしながら、この方法は、細胞培養のために要求される時間によって著しく制限され、インフルエンザウイルスの同定は2日〜10日に及ぶことがあり、従って、医師を適切な治療に導くことにおいて効果的になっていない。インフルエンザウイルス感染は通常、自己に限定されるので、治療が効果的となるならば、診断は迅速でなければならない。従って、細胞培養法は、遡及的疫学的情報を提供するためにだけ使用される。
【0166】
他のインフルエンザ診断方法では、モノクローナル免疫蛍光アッセイ[Spada,B.他、J.Virol.Methods、(1991)33:305]および酵素結合免疫アッセイ[EIA、Ryan−Poirier,K.A.他、J.Clin.Microbiol.、(1992)30:1072]の使用が含まれる。しかしながら、これらの方法は、A型インフルエンザウイルスの感染の同定に限定されるだけでなく、相当の技術的専門知識を要求し、また、高レベルの偽陽性をもたらしている。
【0167】
従って、本発明のなお別の局面によれば、生物学的サンプルにおけるインフルエンザウイルスを同定する方法が提供される。
【0168】
本明細書中で使用される場合、生物学的サンプルは、血液、脊髄液、胸膜液、呼吸器液および鼻腔吸引物などの任意の身体サンプルを示す。体液を脊椎動物から得る様々な方法がこの分野で広く知られている。例えば、鼻腔洗浄物を、Henrickson、J.Viol.Methods、46:189〜206、1994、またはHallおよびDouglas、J.Infect.Dis.、131:1〜5、1975に記載されるように得ることができる。
【0169】
この方法は、生物学的サンプルを、本明細書中上記に記載される、インフルエンザウイルスのポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む核酸分子と接触させることによって行われる。
【0170】
本発明の核酸分子は、例えば、本明細書中下記に記載されるように、固体の基質に結合させることができる。
【0171】
接触させることは、ポリペプチド−核酸分子の二重鎖の形成を可能にする条件のもとで行われる。
【0172】
二重鎖は、好ましくは、何らかの非特異的に結合したポリペプチドを除くために洗浄され、これにより、複合体内において特異的に結合したそのような核酸分子のみを検出することが可能になる。
【0173】
生物学的サンプルにおける、ポリペプチドと結合した核酸分子が検出され、それにより、インフルエンザ感染が同定される。
【0174】
一般に、ポリペプチド−核酸分子複合体のモニターリングはこの分野で広く知られており、本明細書中上記に記載されるように行うことができる。これらの方法は、一般には、例えば、本明細書中下記に記載されるように、標識またはマーカーを検出することに基づく。
【0175】
好ましくは、感染サンプルの検出は、インフルエンザウイルスに感染していない正常なサンプルとの比較によって行われる。
【0176】
本発明の核酸分子を作製するために、影響を受けにくい選択法が好ましくは用いられる。
【0177】
従って、本発明のさらなる局面によれば、細胞のインフルエンザウイルス感染を阻害することができる核酸分子を得る方法が提供される。
【0178】
この方法は下記のように行われる。
【0179】
最初に、複数の核酸分子が、本明細書中上記で記載されたように細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチド標的と接触させられる。
【0180】
二重鎖形成(すなわち、ポリペプチド標的と核酸分子との間での非ワトソン・クリック相補)の後、ポリペプチドと特異的に結合することができる、複数の核酸分子のうちの少なくとも1つの核酸分子が同定される。
【0181】
最後に、ポリペプチドと結合した核酸分子が単離され、それにより、インフルエンザウイルス感染を阻害することができる分子を得る。
【0182】
二本鎖DNA分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマー結合のために使用することができる2つの規定されたヌクレオチド配列によって挟まれたランダム化ポリヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド配列のライブラリーから得ることができる。ライブラリーは、二本鎖のPCR生成物を生じさせるために増幅される[Bielinska(1990)、Science、250(4983):997〜1000]。ランダム化配列は完全にランダム化され得る(すなわち、任意の位置において塩基を見出す確率が1:4である)か、または、部分的にランダム化され得る(任意の位置において塩基を見出す確率が0〜100%の間の任意のレベルで選択される)。
【0183】
一本鎖アプタマーを調製する場合、下流側のプライマーが5’末端においてビオチン化され、PCR生成物がアビジンアガロースカラムに加えられる。一本鎖DNA配列が、弱塩基性緩衝液による溶出によって回収される。
【0184】
一本鎖RNA分子を、T7バクテリオファージのポリメラーゼプロモーター部位を含有する二本鎖PCR生成物を生じさせるために増幅されるオリゴヌクレオチド配列ライブラリーから得ることができる。その後、RNA分子を、T7RNAポリメラーゼを使用するインビトロ転写によって作製することができる。
【0185】
本発明のこの局面の核酸分子は、天然に存在する核酸またはそのフラグメント、化学合成された核酸、酵素合成された核酸、あるいは前記技術の組合せによって作製された核酸分子から作製することができる。
【0186】
本発明のこの局面のライブラリーは、本明細書中上記で記載される選択された核酸修飾の構造的適用範囲および化学的適用範囲を提供するために十分に大きく作製される。
【0187】
典型的には、本発明のこの局面によるランダム化核酸配列ライブラリーは少なくとも1014個の配列変化体を含む。
【0188】
核酸修飾を標的ポリペプチドとのインキュベーションの前に行うことができる。この場合、スクリーニングは最終的な修飾アプタマーに対して行われるが、修飾は、スクリーニング中に行われる、酵素プロセス(例えば、転写)などの何らかのプロセスを妨害しないように制限される。
【0189】
あるいは、核酸分子は選択(すなわち、ポリペプチドと結合した核酸分子の単離)の後に修飾することができる。従って、広範囲の官能基を同時に使用することができる。この場合、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)を、正確な官能基を解明するために使用することができる[Pomerantz(1996)、Anal.Chem.、68:1989〜1999]。
【0190】
いずれの場合でも、核酸分子が得られると、核酸分子は、本明細書中上記で述べられたように、ポリペプチド標的と接触させられる。
【0191】
核酸分子と本発明のこの局面の標的ポリペプチドとのインキュベーションは、好ましくは、生理学的な条件のもとで行われる。本明細書中で使用される表現「生理学的な条件」は水溶液における塩濃度およびイオン強度を示し、これらは、インフルエンザウイルスが感染し得る脊椎動物対象の代謝において見出される流体(生理学的緩衝液または生理学的生理的食塩水とも呼ばれる)を特徴づける。例えば、ヒト対象における生理学的流体は、7.1の細胞内pH、および、細胞内塩濃度(mM単位)が3〜15のナトリウム;140のカリウム;6.3のマグネシウム;10−4のカルシウム;3〜15の塩化物、ならびに7.4の細胞外pH、および、細胞外塩濃度(mM単位)が145のナトリウム;3のカリウム;1〜2のマグネシウム;1〜2のカルシウム、そして110の塩化物によって表される。
【0192】
核酸分子は、溶液中または固体基質に結合したときのいずれでも、標的ポリペプチドとインキュベーションすることができる。
【0193】
上記の塩基修飾体のいくつかは、核酸分子を固体基質に結合するための中間体として使用できることが理解される。例えば、図1cの群48に示される修飾ウリジンは、固相合成において使用されるホスホルアミダイト試薬としての活性化の前に、イミダゾールを広範囲の疎水性基、親水性基、荷電基および架橋基で置換することによってさらに修飾することができる一般的な中間体として役立ち得る。
【0194】
核酸分子を固体基質に結合するための様々な方法がこの分野で知られており、これらには、ガラス印刷(これは、Schena他、1995、Science、270:467〜47によって一般的に記載される)、フォトリソグラフィー技術[Fodor他(1991)、Science、251:767〜773]、インクジェット印刷およびマスキングなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0195】
典型的には、コントロールサンプルが、固体支持体および/または非標的エピトープなどの標的以外の物質に結合する核酸分子を選択しないために含められる。
【0196】
結合していない核酸分子の分離、および結合した核酸配列の同定は、この分野で広く知られている方法を使用して行うことができる。例として、特に限定されないが、選択的溶出、ろ過および電気泳動などを含む(米国特許第5756291号を参照のこと)。
【0197】
あるいは、結合したアプタマー分子を画像化によって同定することができる。例えば、明視野、エピ蛍光または共焦点法を使用する光学顕微鏡観察、または走査プローブ顕微鏡観察を、ポリペプチドと結合した核酸分子を同定するために使用することができる(米国特許第6287765号を参照のこと)。可視化を容易にするために、核酸分子またはポリペプチドは、好ましくは、この分野において標準的に使用される任意の放射性、蛍光性、生物学的または酵素的なタグまたは標識を使用して標識される。
【0198】
下記には、本発明における使用のために好適な多数の標識化方法が例示される。例えば、本発明の核酸分子は、合成後、ビオチン化dNTPもしくはビオチン化rNTPを取り込むことまたはいくつかの類似する手段(例えば、ビオチンのプソラレン誘導体をRNAに光架橋すること)、その後、標識されたストレプトアビジン(例えば、フィコエリトリンにコンジュゲート化されたストレプトアビジン)または同等物を加えることによって標識することができる。あるいは、蛍光成分が使用される。これには、フルオレセイン、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン(Perkin Elmer Cetus)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX(Amersham)およびその他[例えば、Kricka他(1992)、Academic Press、San Diego、Calif]が含まれる。あるいは、放射性標識が使用される[Zhao他(1995)、Gene、156:207]。しかしながら、放射性粒子の散乱、および、その結果としての、広く離れた結合部位のための要求のために、放射性同位体よりも、蛍光団の使用がより好まれる。
【0199】
本明細書中上記に記載される検出方法のいずれかにおける生じたシグナルの強度が、手作業により、または、そのような目的のために適するソフトウエアアプリケーションおよびハードウエアを使用して分析され得ることが理解される。
【0200】
アプタマー配列(すなわち、ポリペプチドと結合した核酸)の単離は、典型的には、PCRなどによる配列増幅を伴う。増幅を、標的ポリペプチドから分離する前に、または、標的ポリペプチドから分離するのと同時に、または標的ポリペプチドから分離した後に行うことができる。PCR法はこの分野では広く知られており、例えば、米国特許第4683195号および同第4683202号および同第4800159号、ならびに、Methods in Enzymology(1987)、155:335〜350に記載される。RNA分子が使用される場合、増幅されたDNA配列がRNAに転写されることが理解される。
【0201】
他の増幅方法を用いることができ、これには、標準的なクローニングおよびリガーゼ連鎖反応などが含まれる(米国特許第4957858号を参照のこと)。例えば、アプタマーが同定されると、リンカーを、標準的なベクターへのクローニングを容易にするために両端に結合することができる。一本鎖アプタマーまたは二本鎖アプタマーをクローン化し、回収することができる。
【0202】
回収された核酸分子は、元の一本鎖形態または二重鎖形態であっても、その後、選択および増幅(すなわち、標的ポリペプチド結合)の繰り返される処理のために使用することができる。典型的には、3回〜6回の選択/増幅の後、nM〜Mの範囲の好ましい親和性で結合する核酸分子を得ることができる。
【0203】
ポリペプチド標的と特異的に結合することができる核酸分子を同定するための様々な方法がこの分野では知られていることが理解される[例えば、米国特許第5270163号;EllingtonおよびSzostak(1990)、Nature、346:818〜822;Bock他(1992)、Nature、255:564〜566;Wang他(1993)、Biochemistry、32:1899〜1904;Bielinska他(1990)、Science、250:997〜1000]。例えば、米国特許第5270163号には、下記のように核酸リガンドを同定するためのSELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment:指数的濃縮によるリガンドの系統的進化)と呼ばれる方法が開示される。ランダム化配列の領域を有する一本鎖核酸の候補混合物が標的化合物と接触させられ、標的に対する増大した親和性を有するそのような核酸が候補混合物の残りから分配される。分配された核酸は、リガンド濃縮された混合物を得るために増幅される。Bockおよび共同研究者は、支持体に結合した標的分子と、ランダム配列、およびPCRのためのプライマーとして役立ち得る配列を含有するオリゴヌクレオチドの混合物との複合体化を伴う、標的生体分子と特異的に結合するオリゴマー配列を同定するための方法を記載する[Bock他(1992)、Nature、255:564〜566]。その後、標的−オリゴヌクレオチド複合体が支持体および複合体を形成していないオリゴヌクレオチドから分離され、複合体を形成したオリゴヌクレオチドが回収され、続いてPCRを使用して増幅される。回収されたオリゴヌクレオチドは配列決定することができ、また、複合体化を使用する選択、分離、増幅および回収の一連の処理に供することができる。
【0204】
あるいは、本発明の核酸配列は合理的薬物設計によって作製することができる。
【0205】
合理的薬物設計は、酵素阻害剤を同定する強力な手段であり、これは、例えば、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)により引き起こされるヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)、およびヒトガン(慢性骨髄性白血病)に対する最初の効果的な薬理学的治療を提供するためにそれぞれ使用されるHIVプロテアーゼ阻害剤(Lam他、1994、Science、263、380;Wlodawer他、1993、Ann Rev Biochem.、62、543;Applet、1993、Perspectives in Drug Discovery and Design、1、23;Erickson、1993、Perspectives in Drug Discovery and Design、1、109)およびbcr−ablチロシンキナーゼ阻害剤(Mauro MJ他、2002、J Clin Oncol.、20、325〜34)を同定するためにとりわけ使用されている。
【0206】
核酸配列構造データベース(「3Dデータベース」)をスクリーニングすることによって合理的薬物設計による推定的なアプタマー配列を同定するために、「スキャナー」型のアルゴリズムを用いるソフトウエアでは、インフルエンザの血球凝集素ポリペプチドのシアル酸受容体結合ポケット(GenBankアクセション番号AF092062のアミノ酸位置116〜261)などの分子の結合ポケットの三次元構造を規定する原子の座標、および、アプタマー構造との結合ポケットの結合を適格化するように、結合ポケットとのスクリーニングされたアプタマー構造の「ドッキング」をコンピューターモデル化するためにデータベースに蓄えられている核酸配列構造の三次元構造を規定する原子の座標が用いられる。従って、このプロセスを、データベースに蓄えられている複数の仮想的なアプタマー構造のそれぞれを用いて繰り返すことにより、結合ポケットとの所望する結合相互作用を潜在的に有する化学構造、従って、仮想的な阻害剤を同定するために、そのような複数のものをコンピューターによりスクリーニングすることが可能になる。
【0207】
本発明の核酸分子を同定するための核酸構造データベースの例には、RNA構造データベース(www.RNABase.org)およびNDBデータベース(http:///www.imb−jena.de/RNA.html#Databases)が含まれる。
【0208】
あるいは、精緻化されたアプタマー配列を、精緻化されたアプタマーをコンピューターにより組み立てるために、結合ポケットの三次元構造および基本アプタマー(例えば、A22)の三次元構造を規定する1組の原子座標を利用する「ビルダー」型のアルゴリズムを含むソフトウエアを使用して既知のアプタマー構造(例えば、A22、配列番号12)を改変することによって解明することができる。そのような「スキャナー」型アルゴリズムおよび「ビルダー」型アルゴリズムを用いるソフトウエアによる合理的薬物設計を行うための十分な指針をこの分野の文献において得ることができ(例えば、Halperin I.他、2002、Proteins、47、409〜43;Gohlke H.およびKlebe G.、2001、Curr Opin Struct Biol.、11、231〜5;Zeng J.、2000、Comb Chem High Throughput Screen.、3、355〜62;RACHEL:Theory of drug design、http://www.newdrugdesign.com/Rachel_Theory.htm#Softwareを参照のこと)、さらに詳しくは本明細書中下記に記載される。
【0209】
スクリーニングされたアプタマー構造の結合ポケットとの結合を適格化するために合理的薬物設計において使用されるソフトウエアプログラムによって用いられる基準には、ギャップ間隔、水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス力、疎水性/親水性などが含まれる。一般に、スクリーニングされた分子とポリペプチド結合領域との接触面積が大きいほど、立体的障害が小さくなり、「ギャップ間隔」が低くなり、水素結合の数が多くなり、そして、スクリーニングされた分子とポリペプチド結合領域との間でのファンデルワールス力の総数が多くなるほど、標的ポリペプチドと結合するスクリーニングされた分子の能力が大きくなる。「ギャップ間隔」は、結合ポケット内に存在するスクリーニングされた分子のファンデルワールス表面と、結合ポケットにおけるアミノ酸残基により規定される結合ポケットの表面との間における非占有空間を示す。ギャップ間隔は、例えば、使用者が規定する格子間隔とともに、ドッキングされた分子の周りの一連の立体格子に基づくアルゴリズムを使用して同定することができ、ポリペプチド標的の結合領域の内部に存在するドッキングされたアプタマーを改変することによって都合よく占めることができる体積を表す。
【0210】
化合物間の接触面積は、MSプログラム(Connolly ML.、1983、Science、221、709〜713)を使用して、ドッキングされた立体配座における化合物の座標から直接に計算することができる。
【0211】
「スキャナー」型アルゴリズムを用いる好適なソフトウエアには、例えば、ドッキングソフトウエア、例えば、GRAM、DOCKまたはAUTODOCK(これらは、Dunbrack他、1997、Folding and Design、2、27に総説される)、INSIGHTIIパッケージ(Molecular Simulations Inc.、1996、San Diego、Calif.)のAFFINITYソフトウエア、GRID(Goodford PJ.、1985、「生物学的に重要な高分子の表面におけるエネルギー的に有利な結合部位を決定するためのコンピューター手法」、J.Med.Chem.、28、849〜857;GRIDはオックスフォード大学(Oxford、英国)から入手することができる)、およびMCSS(Miranker A.およびKarplus M.、1991、「結合部位の機能性マップ:多コピー同時検索法」、Proteins:Structure Function and Genetics、11、29〜34;MCSSはMolecular Simulations(Burlington、Mass.)から入手することができる)が含まれる。
【0212】
AUTODOCKプログラム(Goodsell DS.およびOlson AJ.、1990、Proteins:Struct Funct Genet.、8、195〜202;これはScripps Research Institute(La Jolla、Calif.)から入手することができる)は、スクリーニングされた分子を、モンテカルロ・シミュレーションによるアニーリング法を使用して柔軟な様式で結合ポケットにドッキングすることを助ける。この手法は、研究者により持ち込まれる偏りを伴わない検索を可能にする。このような偏りは、標的化された結合ポケットにおけるスクリーニングされた分子の配向および立体配座に影響を及ぼし得る。
【0213】
DOCKプログラム(Kuntz ID.他、1982、J Mol Biol.、161、269〜288;これはカリフォルニア大学(San Francisco)から入手することができる)は結合ポケットの空間充填表示のネガティブ画像の記述に基づいており、エネルギー評価のための力場、制限された立体配座的柔軟性、およびエネルギー評価における疎水性の検討を含む。
【0214】
モデル化またはドッキングの後、CHARMM(Brooks BR.他、1983、J Comp Chem.、4、187〜217)またはAMBER(Weiner SJ.他、1984、J Am Chem Soc.、106、765〜784)などのプログラムを用いた標準的な分子力学的力場によるエネルギー最小化または動力学を行うことができる。
【0215】
本明細書中で使用される「エネルギーの最小化」は、原子の幾何学的形状の何らかのさらなる小さい摂動により、分子力学的力場によって測定されるような系の総エネルギーを増大させることが生じるように、系統的な変化によって化学構造を有する原子の幾何学的形状を達成することを意味する。最小化および分子力学的力場はコンピューター化学では十分に理解されている(例えば、Burkert U.およびAllinger NL.、「分子力学」、ACSモノグラフ177、59頁〜78頁、American Chemical Society、Washington,D.C.(1982)を参照のこと)。
【0216】
「ビルダー」型アルゴリズムを用いるプログラムには、LEGEND(Nishibata Y.およびItai A.、1991、Tetrahedron、47、8985;これはMolecular Simulations(Burlington、Mass.)から入手することができる)、LEAPFROG(Tripos Associates、St.Louis、Mo.)、CAVEAT(Bartlett,PA.他、1989、Special Pub Royal Chem Soc.、78、182〜196;これはカリフォルニア大学(Berkeley)から入手することができる)、HOOK(Molecular Simulations、Burlington、Mass.)およびLUDI(Bohm HJ.、1992、J.Comp Aid Molec Design、6、61〜78;これはBiosym Technologies(San Diego、Calif.)から入手することができる)が含まれる。
【0217】
CAVEATプログラムは、所望する結合ベクトルに基づく結合性分子を示唆する。HOOKプログラムは、多数コピーの官能基を同時検索において使用することによってドッキング部位を提案する。LUDIは、記述子に基づくのではなく、フラグメントに基づくプログラムであり、結合ポケットと一致させるために少しより大きいフラグメントが提案され、その的中が、Cambridge Structural Database(CSD)、Protein Data Bank(PDB)から採用された幾何学的基準、および結合データに基づく基準に基づいてスコア化される。LUDIは、ドッキングされた化学構造の阻害定数を計算するために都合よく用いることができる。最終的なドッキング位置における化合物の阻害定数(Ki値)を、LUDIソフトウエアを使用して計算することができる。
【0218】
合理的薬物設計の途中またはその後で、中間的な化学構造または推定的なアプタマーの結合ポケットとのドッキングを、コンピュータースクリーンに表示されるその三次元モデルなどのその構造モデルによって可視化することができ、その結果、合理的薬物設計の途中での使用者の介入により化学構造を最適化することが都合よくできるようになる。
【0219】
そのような三次元構造モデルを表示するために有用なソフトウエアプログラムには、RIBBONS(Carson,M.、1997、Methods in Enzymology、227、25)、O(Jones,TA.他、1991、Acta Crystallogr.A47、110)、DINO(DINO:Visualizing Structural Biology(2001)、http://www.dino3d.org);ならびに、QUANTA、INSIGHT、SYBYL、MACROMODE、ICM、MOLMOL、RASMOLおよびGRASP(これらは、Kraulis、J.、1991、Appl Crystallogr.、24、946に総説される)が含まれる。
【0220】
他の分子モデル化技術もまた本発明に従って用いることができる(例えば、Cohen NC.他、1990、「医薬品化学のための分子モデル化ソフトウエアおよび方法」、J.Med.Chem.、33:883〜894;Navia M.A.およびMurcko M.A.、1992、「薬物設計における構造情報の使用」、Current Opinions in Structural Biology、2、202〜210)。例えば、試験化合物の構造が知られている場合、試験化合物のモデルを本発明の構造のモデルに重ねることができる。無数の方法および技術が、このステップを行うためにこの分野では知られており、それらはいずれも使用することができる(例えば、下記を参照のこと:Farmer P.S.、「薬物設計」、Ariens EJ(編)、第10巻、119頁〜143頁(Academic Press、New York、1980);米国特許第5331573号;米国特許第5500807号;Verlinde C.、1994、Structure、2、577〜587;Kuntz ID.、1992、Science、257、1078〜108)。
【0221】
いずれの場合でも、仮想的なアプタマー配列が同定されると、その仮想的なアプタマー配列は、標的ポリペプチドに対する特異的な結合について調べられる。これは、バンドシフトアッセイ(米国特許第5756291号)およびアフィニティークロマトグラフィー[Schott、H.、Affinity Chromatography(Marcel Dekker、Inc.、New York、1981)]などの、この分野で知られている数多くの生化学的方法を使用して行うことができる。
【0222】
あるいは、またはさらに、本発明の核酸配列は、下記の実施例の節の実施例2(インビトロ)および実施例3(インビボ)においてさらに記載されるように、MDCK培養細胞株などにおいてインビトロで、またはインビボでインフルエンザウイルス感染の阻害について調べることができる。
【0223】
本明細書中上記で記載されるように、アプタマー設計における重要な構成要素はポリペプチド標的の選択である。本発明のアプタマー分子を選択するために使用されるペプチドは、インフルエンザ関連の治療的適用および診断的適用における強力なツールとして使用することができることが理解される(13)。
【0224】
従って、本発明のなおさらなる局面によれば、インフルエンザウイルス(すなわち、オルトミクソウイルス)に対するワクチン接種のために有用なポリペプチドが提供される。
【0225】
本発明のこの局面のポリペプチドは、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを利用するWisconsin配列分析パッケージのBestFitソフトウエアを使用して決定されたとき(この場合、様々なインフルエンザ株の間におけるポリペプチドの保存を反映し、また、機能的なホモログを同様に含めて、ギャップ生成ペナルティーが8に等しく、ギャップ伸長ペナルティーが2に等しい)、配列番号13に対して好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%またはそれ以上、例えば、95%〜100%の相同性であるアミノ酸配列を含む。
【0226】
本発明のこの局面のポリペプチドはインフルエンザウイルスのHA2ドメインを含まない。
【0227】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、シアル酸受容体などの宿主細胞決定基に対する結合を媒介するインフルエンザHAの球状領域を包含する、配列番号14のアミノ酸位置116〜261によって規定されるアミノ酸配列を含む。
【0228】
より好ましくは、本発明のポリペプチドは、インフルエンザHAのさらなる最小限の球状領域を包含する、配列番号15のアミノ酸位置116〜245によって規定されるアミノ酸配列を含む。
【0229】
インフルエンザHAポリペプチドの受容体結合ポケットは、立体配座的制限により免疫系に大部分がさらされないので、本発明のこの局面のポリペプチドは好ましくはさらに、例えば、配列番号1のアミノ酸位置91〜261によって規定されるようなさらなる抗原性エピトープを含む[McEwen(1992)、Vaccine、10:405〜411;Muller(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79:569〜573;Shapira(1985)、J.Immunopharmacol.、7:719〜723]。
【0230】
他の抗原性エピトープ(これは好ましくは保存されている)が、例えば、本明細書中上記の表1に示されるような本発明のポリペプチドに含められ得ることが理解される。
【0231】
好ましくは、本発明のこの局面のポリペプチドは、配列番号13〜15に示される通りである。
【0232】
あるいは、本発明のこの局面のポリペプチドは、配列番号13〜15に示されるアミノ酸配列を含む。
【0233】
本明細書中および請求項の節で使用される用語「ポリペプチド」には、天然のペプチド(分解産物または合成的に合成されたペプチドまたは組換えペプチドのいずれか)、ペプチド模倣体(典型的には合成的に合成されたペプチド)そしてペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドが含まれ、これらは、例えば、ペプチドを体内でより安定化させる修飾、またはペプチドの細胞浸透能力を高める修飾を有し得る。そのような修飾には、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合の修飾(CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHを含むが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれるが、これらに限定されない。ペプチド模倣体化合物を調製するための方法はこの分野では十分に知られており、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載される(これは、全体が本明細書中に示されるように参考として組み込まれる)。これに関するさらなる詳細が本明細書中下記に示される。
【0234】
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は、例えば、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、o−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキル(例えば、メチル)である)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは、炭素原子において自然界で示される「通常」の側鎖である)によって置換することができる。
【0235】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合の任意のところに存在させることができ、そして同時に数カ所(2カ所〜3カ所)においてさえ存在させることができる。
【0236】
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)は、TIC、ナフチル(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどの合成された非天然型の酸に置換することができる。
【0237】
上述のことに加えて、本発明のペプチドは一以上の修飾されたアミノ酸または一以上の非アミノ酸モノマー(例えば脂肪酸、複合体炭水化物など)も含むことができる。
【0238】
従って、本明細書中および請求項の節で使用される用語「アミノ酸」には、20個の天然に存在するアミノ酸;インビボで多くの場合には翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンを含む);および他の非通常型アミノ酸(2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンを含むが、これらに限定されない)が含まれることが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、この用語が本明細書中で定義されるように少なくとも1つの付加アミノ酸にペプチド結合またはペプチド結合アナログを介して連結されるD−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方が含まれる。
【0239】
下記の表2〜表3には、天然に存在するアミノ酸のすべて(表2)および非通常型アミノ酸または修飾型アミノ酸(表3)が示される。
【表2】

【表3】



【0240】
本発明のペプチドは、好ましくは、線状形態で利用される。しかし、環化がペプチドの特性をひどく妨害しない場合、ペプチドの環状形態もまた利用できることが理解される。
【0241】
本発明者らは、結論として、本発明の教示に従って作製されたポリペプチドが体液性免疫応答および細胞性免疫応答を誘発し得ることを示している(実施例の節の実施例7〜実施例8を参照のこと)。
【0242】
DNA免疫化は、ペプチド免疫化と比較した場合、多くのウイルス剤に対するより良好な細胞性免疫応答を生じさせることが広く理解されている。
【0243】
従って、本発明のさらにさらなる局面によれば、本明細書中上記に記載される本発明のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0244】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードするゲノムポリヌクレオチド配列、相補的ポリヌクレオチド配列または複合ポリヌクレオチド配列を構成し得る。
【0245】
本明細書中で使用される表現「相補的ポリヌクレオチド配列」は、逆転写酵素または任意の他のRNA依存性DNAポリメラーゼを使用して、最初はメッセンジャーRNAの逆転写から生じる配列を包含する。そのような配列は続いて、DNA依存性DNAポリメラーゼを使用してインビボまたはインビトロで増幅することができる。
【0246】
本明細書中で使用される表現「ゲノムポリヌクレオチド配列」は、最初は染色体に由来し、染色体の連続した一部分を反映する配列を包含する。
【0247】
本明細書中で使用される表現「複合ポリヌクレオチド配列」は、少なくとも一部が相補的であり、かつ、少なくとも一部がゲノム性である配列を包含する。複合配列は、HAの球状領域をコードするために要求されるいくつかのエクソン配列、グリコシル化コンセンサス部位、ならびに、それらの間に置かれたいくつかのイントロン配列を含むことができる。イントロン配列は、他の遺伝子を含む任意の供給源のものが可能であり、典型的には、保存されたスプライシングシグナル配列を含む。そのようなイントロン配列はさらに、シス作用の発現調節エレメントを含むことができる。イントロン配列はまた、翻訳されたタンパク質にも寄与し得る。
【0248】
下記の実施例の節の実施例7において示されるように、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドに対して作製された抗体は多数のインフルエンザ株種と交差反応し、そのため、様々な臨床的適用において使用することができる。
【0249】
従って、本発明のさらなる局面によれば、上述の本発明のポリペプチドを特異的に認識する抗原結合部位を含む抗体または抗体フラグメントが提供される。
【0250】
本発明において使用される用語「抗体」は、完全な抗体分子を意味し、句「抗体フラグメント」はその機能的なフラグメント、例えば、マクロファージに結合することができるFab、F(ab’)およびFvなどを意味する。これらの機能的な抗体フラグメントは次のように定義される。:(i)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合性フラグメントを含有するフラグメントであり、完全な分子を酵素パパインで消化して、無傷の軽鎖と、一方の重鎖の一部とを生じさせることによって作製することができる。(ii)Fab’は、完全な抗体をペプシンで処理し、その後、還元して、無傷の軽鎖と、重鎖の一部とを生じさせることによって得ることができる抗体分子のフラグメントである。2つのFabフラグメントが1つの抗体分子あたり得られる。(iii)(Fab’)は、その後の還元を行うことなく、完全な分子を酵素ペプシンで処理することによって得ることができる抗体のフラグメントである。F(ab’)は、2つのジスルフィド結合によって一緒にされた2つのFab’フラグメントのダイマーである。(iv)Fvは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作されたフラグメントとして定義される。(v)単鎖抗体(「SCA」)は、遺伝子的に融合された単一鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結されて、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子である。(vi)ペプチドは単一の相補性決定領域(CDR)をコードする。
【0251】
抗体(即ちモノクローナル及びポリクローナル抗体)を作成する方法は当該技術分野では周知である。抗体は当該技術分野で知られたいくつかの方法のいずれか一つを介して作成されることができ、これらの方法(Orlandi D.R.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.86:3833−3837,Winter G.et al.(1991)Nature 349:293−299)に開示されるように抗体分子のインビボ生成の誘導、免疫グロブリンライブラリーまたは極めて特異的に結合する試薬のパネルのスクリーニングを用いることができるかまたは培養中の連続細胞系によるモノクローナル抗体分子の生成を用いることができる。これらはハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術及びEpstein−Bar−Virus(EBV)ハイブリドーマ技術(Kohler G.,et al.(1975)Nature 256:495−497,Kozbor D.,et al.(1985)J.Immunol.Methods 81:31−42,Cote R.J.et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:2026−2030,Cole S.P.et al.(1984)Mol.Cell.Biol.62:109−120)を含むがこれらに限定されない。
【0252】
そのような抗体フラグメントを製造する様々な方法がこの技術においては知られている(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1988)を参照のこと:これは参照により本明細書中に組み込まれる)。例えば、本発明による抗体フラグメントは、フラグメントをコードするDNAを大腸菌または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物または他のタンパク質発現システム)において発現させることによって調製することができる。
【0253】
抗体フラグメントは、従来の方法による完全な抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体フラグメントを、抗体をペプシンで酵素切断して、F(ab’)として示される5Sフラグメントを得ることによって製造することができる。このフラグメントは、3.5SのFab’一価フラグメントを製造するために、チオール還元剤、および場合により、ジスルフィド連結の切断から生じるスルフヒドリル基に対する保護基を使用してさらに切断することができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素切断により、2つの一価Fab’フラグメントおよびFcフラグメントが直接的に得られる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4036945号および同第4331647号、ならびにそれらに含まれる参考文献に記載されている(それらの特許は本明細書によりその全体が参照により組み込まれる)。また、Porter,R.R.、Biochem.J.、73:119〜126、1956も参照のこと。抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成させるための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝学的な技術などもまた、フラグメントが、無傷の抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用することができる。
【0254】
FvフラグメントはV鎖およびV鎖の会合を含む。この会合は、Inbar他、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、69:2659〜62、1972に記載されているように非共有結合性であり得る。あるいは、可変鎖を、分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、または、グルタルアルデヒドなどの化学剤によって架橋することができる。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによってつながれたV鎖およびV鎖を含む。これらの単鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによりつながれたVドメインおよびVドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。この構造遺伝子は発現ベクターに導入され、続いて、発現ベクターは大腸菌などの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞により、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一ポリペプチド鎖が合成される。sFvを製造するための様々な方法が、例えば、WhitlowおよびFilpula、Methods、2:97〜105、1991;Bird他、Science、242:423〜426、1988;Pack他、Bio/Technology、11:1271〜77、1993;Ladner他、米国特許第4946778号(これは本明細書によりその全体が参照により組み込まれる)によって記載されている。
【0255】
CDRペプチド(「最小認識ユニット」)は、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製される。例えば、LarrickおよびFry、Methods、2:106〜10、1991を参照のこと。
【0256】
ヒトの治療または診断のためにはヒト化された抗体を用いることが好ましいことは理解されるであろう。非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または抗体の他の抗原結合性の部分配列など)のキメラ分子である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望する特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基によって置換されているヒト免疫グロブリンレシピエント抗体が含まれる。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても、あるいは取り込まれたCDR配列またはフレームワーク配列においても、そのいずれにも見出されない残基を含むことができる。一般に、ヒト化抗体は、実質的にはすべての可変ドメインまたは1つ以上の(典型的には2つ)可変ドメインを含み、この場合、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部を、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の一部を少なくとも含む[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜329(1988);Presta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992)]。
【0257】
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法がこの技術においては広く知られている。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、輸入残基と呼ばれており、この輸入残基は、典型的には、輸入可変ドメインに由来する。ヒト化は、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに使用することによって、Winterおよび共同研究者の方法に従って本質的には行うことができる[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyen他、Science、239:1534〜1536(1988)]。従って、そのようなヒト化抗体は、実質的に完全でないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4816567号)。実際、ヒト化抗体は典型的にはヒト抗体であり、この場合、一部のCDR残基およびおそらくは一部のFR残基が、齧歯類抗体における類似部位に由来する残基によって置換される。
【0258】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレーライブラリー[HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marks他、J.Mol.Biol.、222:581(1991)]を含む、この分野で知られている様々な技術を使用して製造することができる。Cole他およびBoerner他の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体を調製するために利用することができる[Cole他、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);Boerner他、J.Immunol.、147(1):86〜95(1991)]。同様に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されている遺伝子組換え動物(例えば、マウス)に導入することによって作製することができる。抗原投与したとき、ヒト抗体の産生が認められ、この場合、その産生は、遺伝子再配置、組み立ておよび抗体レパートリーを含むすべての点に関してヒトにおいて見られる産生と非常に似ている。この方法は、例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号、同第5661016号、および下記の科学的刊行物:Marks他、Bio/Technology、10、779〜783(1992);Lonberg他、Nature、368:856〜859(1994);Morrison、Nature、368:812〜13(1994);Fishwild他、Nature Biotechnology、14:845〜51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology、14:826(1996);LonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.、13:65〜93(1995)に記載されている。
【0259】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のポリペプチドおよび核酸配列は、インフルエンザウイルス感染を処置するために使用することができる。
【0260】
従って、本発明のなおさらなる局面によれば、インフルエンザウイルス感染を処置する方法が提供される。
【0261】
この方法は、本明細書中上記で記載される本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび/または抗体の治療効果的な量をその必要性のある対象に与えることによって行われる。
【0262】
好ましい投与経路および医薬組成物が本明細書中上記に記載される。
【0263】
本発明の教示に従って作製された抗体は、生物学的サンプルにおけるインフルエンザウイルスを同定するためにもまた使用することができることが理解される。
【0264】
この方法は、本明細書中上記に記載されるような生物学的サンプルを本発明の抗体または抗体フラグメントと接触させることによって行うことができる。
【0265】
その後、生物学的サンプルにおける抗体または抗体フラグメントを含む免疫複合体が検出され、それにより、生物学的サンプルにおけるインフルエンザウイルスを同定する。
【0266】
好ましくは、免疫複合体は、何らかの非特異的に結合した抗体を除くために、検出に先だって洗浄され、これにより、一次免疫複合体内における特異的に結合したそのような抗体のみを検出することが可能になる。
【0267】
一般に、免疫複合体形成の検出はこの分野では広く知られており、いくつかの適切な方法のいずれか1つによって達成することができる。これらの方法は一般に、例えば、本明細書中上記で記載されたように、標識またはマーカーの検出に基づいている。
【0268】
本発明の教示に従って作製された核酸分子、そのコンジュゲート、ポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび抗体は診断キットまたは治療キットに含めることができる。これらの試薬は、適切な緩衝液および保存剤とともに1つまたは複数の容器に詰めることができ、また、診断のために、または治療的処置を導くために使用することができる。
【0269】
従って、核酸分子およびそのコンジュゲートはそれぞれを1つの容器において混合することができ、または個々の容器に入れることができる。好ましくは、容器はラベルを含む。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジおよび試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。
【0270】
また、安定化剤、緩衝剤および阻止剤などの他の添加剤もまた加えることができる。そのようなキットの核酸分子およびそのコンジュゲートはまた、記載されたように固体支持体に結合することができ、診断目的のために使用することができる。キットはまた、試験された対象がインフルエンザウイルス感染に罹患しているか、またはインフルエンザウイルス感染を発症する危険性を有するかどうかを明らかにするための説明書を含むことができる。
【0271】
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なお、これら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0272】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0273】
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学及び組み換えDNAの技法が広く含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている[例えば以下の諸文献を参照されたい。「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら1989年;Ausubel, R.M.編1994年「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻;Ausubelら著1989年「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons,米国メリーランド州バルチモア;Perbal著「A Practical Guide to Molecular Cloning」John Wiley & Sons,米国ニューヨーク1988年;Watsonら、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国ニューヨーク1998年;米国特許の4666828号、4683202号、4801531号、5192659号及び5272057号に記載される方法;Cellis, J.E.編「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻1994年;Coligan, J.E.編「Current Protocols in Immunology」I〜III巻1994年;Stitesら編「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、米国コネティカット州ノーウォーク1994年;MishellとShiigi編「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H. Freeman and Co.、米国ニューヨーク1980年;また利用可能な免疫検定法は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている。米国特許の3791932号、3839153号、3850752号、3850578号、3853987号、3867517号、3879262号、3901654号、3935074号、3984533号、3996345号、4034074号、4098876号、4879219号、5011771号及び5281521号;Gait,M.J.編「Oligonucleotide Synthesis」1984年;Hames, B.D.及びHiggins S.J.編「Nucleic Acid Hybridization」1985年;Hames,B.D.及びHiggins S.J.編「Transcription and Translation」1984年;Freshney, R.I.編「Animal Cell Culture」1986年;「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press 1986年;Perbal, B.著「A Practical Guide to Molecular Cloning」1984年及び「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ1990年;Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press、1996年;なおこれらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである]。その外の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。本明細書に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。本明細書に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0274】
実施例1
血球凝集素特異的アプタマー−理論的根拠および設計
指数的濃縮によるリガンドの系統的進化(SELEX)を、インフルエンザ血球凝集素(HA)と結合するアプタマーオリゴヌクレオチドを同定するために行った。
【0275】
材料および実験手順
ライブラリー作製:共通する5’配列AATTAACCCTCACTAAAGGG(配列番号16、T3として示される;Stratagene、La)および共通する3’配列5’−TATGGTCGAATAAGTTAA−3’(配列番号17)によって挟まれた30ヌクレオチドのランダム化配列を中央部に含有するアプタマーライブラリーを380B DNA合成機(Applied Biosystems)において合成した。ライブラリーは、1016個の分子のすべてについて、製造者の説明書(Applied Biosystems)に従って作製された30ヌクレオチドのランダムセグメントを含んだ。
【0276】
SELEX−ssDNAアプタマーを80℃で10分間変性し、その後、氷上で10分間冷却した。アプタマー(30nmol)を、500μlの選択緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM KCl、100mM NaCl、1mM MgCl tRNA、0.2%BSA)において37℃で30分間、25μgのHA91〜261ペプチド(さらには本明細書中下記に記載される)と混合した。アプタマー−ペプチド複合体を、25μlのNi−NTAスーパーフロー(Qiagen、Hilden、ドイツ)を加えることによって精製し、アプタマーライブラリーにおける共通配列に対するプライマー[すなわち、5’−AATTAACCCTCACTAAAGGG−3’(配列番号18(T3))および3’プラマイマー5’TTAACTTATTCGACCATA−3’(配列番号19)]を使用するPCRによって増幅した。SELEXを3回繰り返し、その後、増幅されたヌクレオチドを大腸菌に形質転換した。SELEXについてのPCR条件は、95℃で5分間/95℃で1分間/55℃で1分間/72℃で1分間/72℃で10分間および100pmolの各プライマーを含んだ。
【0277】
アプタマーの逆スクリーニング−それぞれの個々のクローンに由来する選択されたssDNA分子を、5’プライマー(T3プライマー)に関して同じ配列であるB−T3(Stratagene、La Jolla、CA)およびクレノウフラグメント(2ユニット/ml)を使用してビオチン化した。一本鎖のビオチンコンジュゲート化A22アプタマーを逆スクリーニングのために調製するために、T3プライマー(配列番号18)をビオチン標識した(Stratagene、La Jolla、CA)。
【0278】
96ウエル平底ELISAプレート(Nunc、デンマーク)を、各ウエルを0.1MのNaHCOに希釈された100μlのストレプトアビジン(100μg/ml)で被覆し、その後、37℃で一晩インキュベーションすることによって調製した。PBSで数回洗浄した後、ウエルを、1%BSAを含有する200μlのPBSにより室温で2時間ブロッキング処理し、続いて、PBS−T(0.05%(v/v)Tween−20を含有する10mM PBS)で3回洗浄した。その後、100μlの2.5pmol/100μlのビオチン化ssDNAをウエルに加え、37℃で2時間インキュベーションし、その後、PBS−Tで4回洗浄した。T3プライマーを陰性コントロールとして使用した(配列番号18)。洗浄後、100μlの10血球凝集素ユニット(HAU)のインフルエンザウイルスまたは2μgのヒスチジン標識されたHA91〜261ペプチドを示されたウエルに加え、37℃で2時間インキュベーションした。その後、ウエルをPBS−Tで4回洗浄し、抗ヒスチジン抗体(Qiagen、Hilden、ドイツ)および抗ウイルス抗体(組換えHA91〜261で免疫化されたマウスから得られた血清サンプル)を対応のウエルに加えた。逆スクリーニングアッセイをELISAによって完了させた。
【0279】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)−高結合能ELISAプレート(Immunoplate、Nunc、デンマーク)を、4℃で一晩インキュベーションすることによって、リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に希釈された100HAU/mlの様々なインフルエンザウイルス株を含有する100μlの尿膜液で被覆した。PBSによる数回の洗浄工程の後、ウエルを、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する200μlのPBSでブロッキング処理し、室温で90分間インキュベーションした。その後、プレートを、0.05%(v/v)Tween−20を含有するPBS(PBS−T)で3回洗浄した。その後、各ウエルに100μlの連続希釈された血清サンプルを加えて、ウエルを37℃で2時間インキュベーションした。このインキュベーション期間の後、プレートをPBS−Tで5回洗浄し、結合した抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識のヤギ抗マウスIgGコンジュゲート(HRP;Jackson Laboratories)を使用して検出した。免疫複合体を、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン溶液(TMB、Zymed)と室温で30分間インキュベーションすることによって可視化した。反応を50μlの2M HSOで停止させ、プレートをマルチチャンネル分光光度計(Titertek、Multiskan MCC/340 MK II、Lab system、フィンランド)で読み取った。
【0280】
結果
HA分子のアミノ酸91〜261に結合するオリゴヌクレオチドを同定するために、保存されたリンカーの間にランダムな30ヌクレオチドを含有するヌクレオチドライブラリーを合成した。ライブラリーは1018タイプの異なるssDNAを含み、これらをHA91〜261ペプチドにハイブリダイゼーションさせ、Ni−NTA樹脂によって精製した。精製後、ssDNAを、リンカー配列を使用するPCRによって増幅した。このプロセスを4回繰り返し、HA91〜261結合体の再スクリーニングをELISAによって行った。
【0281】
この逆スクリーニングプロセスにより、「A21」および「A22」(それぞれ、配列番号11および配列番号12)として示される2つのオリゴヌクレオチドアプタマーが得られた。A21およびA22はHA91〜261に対する同じ結合能を示し、しかしながら、完全なウイルスとの結合における著しい差が明らかであった(図2a〜図2b)。従って、A22オリゴヌクレオチドの構造的および機能的な分析のみをさらに行った。A22、A21およびコントロールオリゴヌクレオチドについてのDNAdrawプログラム(18)を使用して提案される二次構造が図2c〜図2eに示される。
【0282】
実施例2
インフルエンザ感染からのインビトロでのアプタマーによる保護
インフルエンザ感染(H3N2 Port Chalmers株)に対するA22アプタマーの保護効果を、MDCK細胞を使用してインビトロで調べた(19)。
【0283】
材料および実験手順
ウイルス−A/Port Chalmers/1/73(H3N2)、A/Texas/1/77(H3N2)、PR/8/34(H1N1)およびJapanese/57(H2N2)のインフルエンザ株を11日目の孵化ニワトリ卵(Bar On Hatchery、Hod Hasharon,イスラエル)の尿膜腔において成長させた。ウイルスの成長および精製を、BarretおよびInglis(23)によって記載される標準的な方法に従って行った。尿膜液におけるウイルスの力価測定を血球凝集アッセイによって行った。
【0284】
細胞−Madin−Darbyイヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC #CCL34)を、熱不活性化10%ウシ胎児血清(FCS)が補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において維持した。
【0285】
MTTアッセイ−MDCK細胞をアッセイの1日前に96ウエルプレートに入れた(7x10個/ウエル)。細胞をダルベッコリン酸塩緩衝化生理的食塩水(DPBS)で2回洗浄し、その後、示されたアプタマー濃度の存在下または非存在下で10HAUのPort Chalmers/1/73(H3N2)または10HAUのJapan(H2N2)を含む、25mMのHEPESおよび4mMの重炭酸ナトリウム(pH7.3)が補充されたハンクス平衡塩溶液(HBSS)との1時間のインキュベーションを行った。感染後、細胞を成長培地において37℃で72時間インキュベーションした。MTTアッセイを、PBSに溶解された4mg/mlのMTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド、Sigma、St.Louis、米国)を細胞培養物に加え、37℃で3時間インキュベーションすることによって行った。その後、プレートを800xgで10分間遠心分離した。上清を吸引し、ホルマザン色素を150μl/ウエルのイソプロピルアルコール(Merck、Darmstadt、ドイツ)に溶解し、O.D.値をELISAリーダーにより540nmで測定した。
【0286】
ウイルス感染前のインビトロでのウイルスからの保護−MDCK細胞を実験の24時間前に96ウエルプレートに置床した(7x10個/ウエル)。各ウエルをDPBSで2回洗浄し、その後、細胞を50pmolのA22で37℃において示された時点について処理した。その後、細胞をDPBSで2回洗浄し、富化HBSSにおいて10HAUのH3N2を1時間感染させた。インキュベーション後、細胞を成長培地に移し、37℃で72時間インキュベーションした。その後、MTTアッセイを記載のように行った。
【0287】
ウイルス感染後のインビトロでのウイルスからの保護−MDCK細胞をウイルス感染の24時間前に96ウエルプレートに置床した(7x10個/ウエル)。ウイルス感染を上記のように行った。感染細胞をDPBSで穏やかに3回洗浄した。その後、細胞を50pmolのA22で37℃において1時間処理した。インキュベーション後、細胞を成長培地に移し、37℃で72時間インキュベーションした。その後、MTTアッセイを記載のように行った。
【0288】
免疫染色−5x10個のMDCK細胞をガラス製カバーガラスに置いた。24時間後、インフルエンザウイルス(Port Chalmers/1/73、H3N2)を、A22との1時間のプレインキュベーションとともに、またはプレインキュベーションを行うことなく加えた。さらに48時間後、細胞を、0.5%のTritonX−100を含有する3%パラホルムアルデヒドで透過処理し、続いて、新しく調製した3%パラホルムアルデヒドにおいて固定処理した。インフルエンザ表面抗原の血球凝集素を、培養物をインフルエンザ血球凝集素に対して特異的なマウスモノクローナル抗体(1:100希釈、Santa Cruz Biotechnology Inc.)とインキュベーションすることによって検出した。抗体とのインキュベーションはすべてが加湿チャンバーにおいて室温で1時間行われ、その後、PBSにおける3回洗浄が行われた。一次抗体を、Cy3コンジュゲート化ヤギ抗マウス免疫グロブリン(Jackson Immunoresearch Laboratories、米国)二次抗体を用いて検出した。核を、2μg/mlの4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI;Sigma、イスラエル)で染色することによって可視化した。免疫蛍光顕微鏡観察を、Nikon Eclipse E600顕微鏡を使用して行った。写真を、Spotソフトウエアプログラムを使用することによって撮影した。画像を、Adobe Photoshop(Adobe Systems、Mountain View、CA)を用いて処理した。
【0289】
結果
細胞をインフルエンザウイルス感染からインビトロで保護するアプタマーの能力を調べた。図3aに示されるように、ウイルス感染(H2N2)の前にアプタマーA22で処理された細胞は、ウイルスに関連した細胞死の著しい減少を明らかにした。興味深いことに、保護効果は、おそらくは非感染細胞での高い濃度のために、A22の50pmol〜100pmolの間の濃度で最大であった(図3b)。従って、さらなるウイルス株H3N2の感染に対する50pmolのA22の効果を調べた。図3bに示されるように、A22は、非感染MDCK細胞と比較した時、H2N2およびH3N2による細胞の感染に対して約60%および約70%の保護をそれぞれ誘発した。興味深いことに、図3bにもまた示されるように、A21アプタマーはまた、細胞死を全く低下させなかった非関連のオリゴヌクレオチドコントロールと比較した場合、ウイルスのインビトロ感染性を低下させることができた。
【0290】
宿主タンパク質と結合するA22アプタマーの能力を次に明らかにした。ウイルス感染の前に、MDCK細胞をA22(50pmol)と30分間または60分間インキュベーションし、その後、洗浄を繰り返した。図3cに示されるように、非処置細胞および処置細胞の生存率の間には著しい差がないことが明らかであり、また、A22に対する細胞の2つの暴露(すなわち、ウイルス感染の前およびウイルス感染の後)の間における何らかの差を検出することができなかった。これらの結果は、A22の阻害活性が宿主細胞上のシアル酸含有受容体を直接的に阻止することに起因しないことを示唆している。
【0291】
宿主細胞受容体にウイルスが結合した後に加えられた場合、A22が依然として保護的であるどうかを調べるために、MDCK細胞を10HAUのH3N2ウイルスと30分間または60分間インキュベーションし、その後、50pmolのA22による処理を行った。図3dに示されるように、ウイルスとの60分のインキュベーションの後では、A22の効果は大きくなかった。対照的に、非感染細胞と、ウイルスと60分間インキュベーションされた細胞との間における差は著しかった(p=0.0028)。とりわけ、非常に大きい差が、感染細胞と、A22による処置の前に30分間だけウイルスとインキュベーションされた細胞との間において観測された。従って、これらの結果は、ウイルス−宿主細胞受容体の相互作用がその最適条件に達すると、A22は細胞死を防止することができないことを示唆している。
【0292】
細胞に対するウイルスの結合および進入を防止することにおけるA22の効果もまた、顕微鏡観察分析によって明らかにされた。光学顕微鏡観察を使用した図4a〜図4cにおいて見られるように、MDCK細胞の全体的な形態はウイルス感染により損傷を受けた(図4a)。比較において、A22の存在下では、破壊が阻害され、細胞形態はほとんどが保存された(図4b)。さらに、A22による単なる処理は細胞の形態に影響を及ぼさなかった(図4c)。このことは、損傷がウイルスによってのみ引き起こされたことを示す。これらの知見はさらに、Cy3標識された特異的な抗HAモノクローナル抗体を使用してウイルスの存在をモニターする免疫蛍光によって立証された。示されるように、ウイルスの存在が感染細胞において明瞭に現れる(図4d)が、ウイルスの存在はA22の添加によってほぼ完全に防止される(図4e)。処理されていない細胞は、A22で処理された細胞と一致するようであった。
【0293】
実施例3
インフルエンザ感染からのインビボでのアプタマーによる保護
インフルエンザ感染(H3N2 Port Chalmers株)に対するA22アプタマーの保護効果を感染マウスにおいて調べた。
【0294】
材料および実験手順
マウス−10週齢〜12週齢のBALB/cマウスをHarlan Laboratories(Rehovot、イスラエル)から購入した。
【0295】
動物感染−マウスに、2.5nmolのA22アプタマーとともに、またはA22アプタマーを伴うことなく、種々の時間間隔について、100HAUのPort Chalmers/1/73(H3N2)ウイルスを含有する致死量未満の感染性尿膜液を鼻腔内に接種した。マウスの体重を2週間にわたってモニターした。肺におけるウイルス力価を卵力価測定法(19)によって測定した。簡単に記載すると、マウスをウイルス接種後6日目に屠殺し、肺を取り出し、PBS/0.1%BSA(10%w/v)中でホモジネートした。ホモジネーション後、サンプルを遠心分離して、破砕物を除き、−70℃で貯蔵した。実験当日、解凍した肺ホモジネートを9日目〜11日目の孵化卵の尿膜腔に注入した(10倍連続希釈物の100μl)。37℃で48時間のインキュベーションおよび4℃で一晩のインキュベーションの後、尿膜液を取り出し、ウイルスの存在を血球凝集アッセイにより測定した。これらのアッセイの結果をlogEID50として表した(26)。
【0296】
血球凝集アッセイ−ニワトリの赤血球(CRBC)をAlsevier溶液で希釈し、0.5%の最終濃度にした。アッセイを、50μlのサンプルおよび50μlの0.5%CRBCを含有するマイクロタイタープレートにおいて行った。アッセイの結果を、90分のインキュベーションが終了したときのLogEID50として表した。
【0297】
組織学−肺の組織学のために、マウスを7日目に屠殺し、肺を取り出して10%中性緩衝化ホルマリン(pH7.0)に入れた。その後、肺を切片化し、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色した。スライドは、何も知らせていない観察者により検鏡された。
【0298】
統計学的分析−統計学的分析を、スチューデントt検定を使用することによって行い、p<0.05を統計学的に有意であると見なした。
【0299】
結果−A22の抗ウイルス性をウイルス感染の前および後におけるインビボで明らかにした。簡単に記載すると、マウスを、「非処理」、「0日」、「−1日」および「+2日」と呼ばれる4つの群に分けた。各マウスには100HAUのインフルエンザA/Texas/1/77ウイルスが抗原投与された。「0日」群におけるマウスには、ウイルスおよび2.5nmol/mlのA22の混合物が鼻腔内(i.n.)接種された。「−1日」群および「+2日」群におけるマウスには、2.5nmol/mlのA22がウイルス感染の1日前およびウイルス感染の2日後にそれぞれi.n.接種された。インフルエンザ感染を、(i)ウイルス処置後16日間の体重減少;(ii)肺のウイルス力価;(iii)肺の組織学的検査(切片はウイルス接種後7日目に採取された)を含む3つのパラメーターによってモニターした。
【0300】
非感染マウス(図5a)とは対照的に、感染マウスは、単核細胞および崩壊領域の大きな拡大を含む典型的な病理学を示した(図5b)。比較において、A22処置マウスの肺において、特に「0日」群および「−1日」群(それぞれ、図5cおよび図5d)では、はるかに少ない単核細胞浸潤が明らかであり、また、肺胞のほとんどが開いたままであった。興味深いことに、「+2日」群では、損傷部位および非損傷部位の両方を認めることができた(図5e〜図5f)。これらの知見は、A22の投与が肺における炎症領域を減少させることを示唆している。さらに、コントロール群と比較した場合、処置群(+2日、0日および−1日)は、著しくより少ない体重低下および増強された回復を示した(図6a)。
【0301】
A22の保護能力もまた、マウスの肺におけるウイルス負荷量を測定する全卵力価測定法(20)を使用して調べた。図6bに示されるように、異なる時間間隔について2.5nmol/mlのA22(125pmol/マウス)で処置されたマウスは、非処置マウスと比較した場合、ウイルス攻撃に対する保護効果を明らかにした。「0日群」における保護効果は最も顕著であり、非処置群と比較した場合、肺のウイルス力価において2以上のlog差(これは99%を越える保護に等しい)で発現した。「+2日」群および「−1日」群の間におけるA22保護効果の大きな差は認められなかった。
【0302】
これらの結果は、A22が、感染前において、また、感染後数日でさえも効果的であることを示唆している。A22の低い濃度のみがこの保護実験では使用された(nmol/mlの濃度)ので、A22の保護効果はさらに増大し得ることが考えられることが理解される。
【0303】
実施例4
アプタマー処置は様々なインフルエンザ株による感染に対する保護をもたらす
HAの受容体結合領域は非常に保存された領域であるので、A22の保護効果が他のインフルエンザ株による感染に対してもまた発現するかどうかを調べることは興味深いことであった。アプタマーの効果を、現在利用することができる抗インフルエンザ治療、すなわち、ノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビル)の効果と比較することもまた興味深いことであった。
【0304】
材料および実験手順
材料−オセルタミビルをRoche(Basel、スイス)から購入した。
【0305】
動物および感染手順−本明細書中上記に記載されるように行った。
【0306】
結果
結果が図7aに示される。図7aは、感染当日でのA22による処置の結果として、3つのインフルエンザ株に感染したマウスにおける肺のウイルス力価の減少を明らかにしている。A22が、A/PR/8/34(H1N1)、A/Japanese/37(H2N2)、ならびにA/Texas/1/77(H3N2)のすべての試験された株による感染を防止することにおいて効率的であることは注目に値する。これらの知見は、図3bに示されたインビトロアッセイの結果を裏付けている。A22とは対照的に、インフルエンザの核タンパク質領域NP147〜158をコードするコントロールの無関係なヌクレオチド(配列番号22)はウイルス力価の大きな変化をもたらさなかった。アプタマーA21が、A22よりも効果が小さいが、依然としてA/Texas/1/77(H3N2)の肺ウイルス力価を低下させることができたことは興味深いことである(図7bを参照のこと)。
【0307】
インフルエンザ感染を阻害するA22アプタマーの能力もまた、現在利用することができる抗インフルエンザ薬の1つ(ノイラミニダーゼ阻害剤オセルタミビル)の能力と比較した。この目的のために、A22およびオセルタミビルの両方を、鼻腔内経路を使用してウイルスとともに1回投与した。下記の表4に示されるように、20μg/マウスのオセルタミビル(1mg/kg体重)の用量はウイルス力価を0.62logEID50ほど減少させた。このことはウイルス負荷量における4.17倍の減少を表している。これは、この特定の実験におけるA22により影響される1.1logEID50ほどの減少(ウイルス負荷量における10倍越える減少)と対比される。
【表4】

【0308】
これらの結果は、本発明のアプタマー配列についての作用機構、本質的には、ウイルス細胞表面上のHAの受容体結合領域に対する直接的な結合、それにより、宿主細胞に対するウイルスの結合を妨げ、そして、その結果として、宿主細胞へのウイルス進入を妨げることを示唆している。
【0309】
実施例5
多数のインフルエンザ株とのアプタマーの交差反応性
多数のインフルエンザ株に対する本発明のA22アプタマーの交差反応性を、ELISAアッセイを使用して決定した。
【0310】
材料および実験手順−実施例1に記載される通りに行った。
【0311】
結果
本発明のDNAアプタマーはHA91〜261の保存された配列に基づいて設計されたので、HA91〜261と様々なインフルエンザ株との間での交差反応がELISAによって明らかにされた。図8a〜図8eに示されるように、この保存されたペプチドに対して作製された抗体は検討中のすべてのインフルエンザ株と交差反応した。従って、このことは、このペプチドが保存されていることを立証しており、また、本発明のアプタマー薬物の広範囲の潜在的可能性を裏付けている。
【0312】
実施例6
組換えHA91〜261ペプチドの作製および特長づけ
実験的手順
RT−PCRによるHA91〜261ペプチドの作製−インフルエンザ株A/Port Chalmers/1/73の総RNAを単離し、HAタンパク質の残基91〜97および残基255〜261に対応する2つのプライマー(それぞれ、5’−GGATCCAGCAAAGCTTTCAGCAACTGT−3’(配列番号20)および5’−GTCGACGCGCATTTTGAAGTAACCCC−3’(配列番号21))、ならびにTaqポリメラーゼ(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いる逆転写酵素(RT)−PCRのために使用した。得られたPCR生成物(これはHAタンパク質の球状領域の一部(91〜261のアミノ酸)をコードする)をDNA配列分析によって確認した。その後、PCR生成物を遺伝子産物の大腸菌における過剰発現のためにpQE30プラスミド(Qiagen、Hilden、ドイツ)にクローン化した。5時間のIPTG誘導によって得られた過剰発現ペプチドを、Ni−NTAカラム(Qiagen)を使用して精製した。PCR生成物はさらに、マウスの筋肉における注射のために、pCDNA3.1HisCプラスミド(Invitrogen、Carlsbad、CA)にクローン化された。免疫化研究のために、プラスミドDNAを、Endofreeプラスミドギガキット(Qiagen)を使用して増幅した。
【0313】
結果
インフルエンザウイルスRNAのHA91〜261領域をコードするDNA構築物を哺乳動物発現および細菌発現のために作製した。この目的のために、HA91〜261配列をコードするcDNAフラグメントを、インフルエンザHAのアミノ酸残基91〜97およびアミノ酸残基255〜261(それぞれ配列番号20及び21)に対応するプライマーを使用してA型インフルエンザウイルス(すなわち、H3N2)からPCRによって増幅した。得られたPCR生成物をpQE30プラスミドにクローン化し、そのN末端部分を、精製のために、読み枠を一致させて6個のHis残基で修飾した。過剰発現させ、精製したHA91〜261タンパク質フラグメントは、図9aに示されるように、12%SDS−PAGEにおいて25kDaのバンドとして移動した。
【0314】
HA91〜261の抗原性を、HA91〜108ペプチドに対して惹起された特異的なウサギ抗体を用いたELISAアッセイ、または、インフルエンザウイルスに対するウサギ抗血清を用いたELISAアッセイによって確認した(図9b)。
【0315】
DNAワクチン接種のために、HA91〜261ペプチドをコードするPCR生成物をpHA91〜261哺乳動物発現ベクターにクローン化し、CMVプロモーターのもとでマウス細胞において発現させた。PCR生成物のBamHI/SalIフラグメントをDNA配列決定分析によって確認し、その後、読み枠を一致させたATG開始コドンおよびN末端の6個のHis残基のもとでpCDNA3.1HisCベクターのBamHI/XhoI部位に挿入した。
【0316】
実施例7
ペプチドおよびDNAのワクチン接種により生じる体液性免疫応答
材料および実験手順
免疫化手順および感染手順−8匹〜10匹のマウスからなる群を、HA91〜261をコードするプラスミドDNAの100μgで筋肉内(i.m.)に免疫化した。マウスに、最初の免疫化のために使用されたのと同じ量の抗原を使用して、3週間間隔で2回の追加抗原刺激を行った。
【0317】
HA91〜261ペプチドに対する免疫化のために、50μlのPBSにおいて動物あたり50μgのペプチドを、エーテルで軽く麻酔したマウスの鼻孔に(i.n.)投与し、または、完全フロイントアジュバント(CFA)における同じペプチドで肉趾において注射した。ペプチドワクチンおよびDNAワクチンの混合使用(組み合わされたDNAプライミング−タンパク質追加抗原刺激)のために、マウスには、2回のi.m.注射がプラスミドpHA91〜261を使用して行われ、次いで、HA91〜261ペプチドによる鼻腔内への追加抗原刺激が行われた。
【0318】
マウスの感染を、マウスあたり1HAUのインフルエンザウイルスを含有する感染性尿膜液の、軽いエーテル麻酔のもとでの鼻腔内接種によって最後の追加抗原刺激の1ヶ月後に行った。
【0319】
血清および肺ホモジネートの調製−免疫化マウスにおける特異的な抗インフルエンザ抗体の産生を測定するために、IgGアッセイ用の血清を、2回目および3回目の免疫化の3週間後に集められた血液から作製した。(0.1%BSA/PBSに懸濁された)肺ホモジネートに由来する上清液をIgAアッセイおよび肺ウイルス力価の測定のために集めた。
【0320】
統計学的分析−統計学的分析を、Stat−ViewIIソフトウエア(Abacus Concepts、Berkeley、CA)を使用して行った。フィッシャーPLSD検定を、確率(p)値を計算するために利用した。結果が、少なくとも2回の繰り返された独立した実験の平均および標準誤差として表される。
【0321】
結果
異なるワクチン接種法により誘導される体液性免疫応答−本明細書中上記に記載されるHA91〜261のペプチド調製物およびDNA調製物を、抗体を誘導するその能力を測定するためにマウスに投与した。
【0322】
最後の免疫化の2週間後、HA91〜261ペプチドまたはプラスミドpHA91〜261のいずれかで免疫化されたマウス(群あたり2匹のマウス)に由来する肺ホモジネートをIgAレベルの測定のために集めた。免疫化マウスにおけるIgGレベルを測定するために、IgGアッセイを行った。簡単に記載すると、血清を3回目の免疫化の3週間後に集められた血液から調製した。各群のサンプルを一緒にプールし、完全なウイルスを認識する抗体だけでなく、HA91〜261ペプチドと反応し得る抗体の存在についてELISAによって分析した。図10aに示されるように、HA91〜261ペプチドを用いた肉趾による免疫化のみがIgG抗体を誘発させ、その一方で、HA91〜261ペプチドを認識する検出可能なIgG抗体は鼻腔内免疫化の後では認められなかった。しかしながら、完全なウイルスを認識する著しいレベルのIgG抗体(図10b)が、アジュバントを何ら伴わないHA91〜261ペプチドを用いた鼻腔内免疫化の後において依然として認められた。
【0323】
図10cに示されるように、HA91〜261ペプチドによって誘導される抗体は、H1N1(PR/8/34)およびH2N2(Japanese/57)を含む異なるインフルエンザウイルス株との交差反応性を示した。
【0324】
興味深いことに、DNAプラスミドpHA91〜261を用いた免疫化は抗体応答を誘発しなかった(図10a)。
【0325】
図11aに示されるように、HA91〜261ペプチドまたはpHA91〜261プラスミドのいずれも、このペプチドフラグメントを認識するIgA抗体の産生を誘発することができなかった。しかしながら、HA91〜261ペプチドで免疫化されたマウスは、完全なウイルスを認識する著しいレベルのIgA抗体を産生した(図11b)。対照的に、IgA応答が、pHA91〜261プラスミドで免疫化されたマウスでは検出されなかった。
【0326】
その後、相乗的または付加的な抗体応答をもたらすHA91〜261ペプチドおよびDNAの両方の能力を検討した。この目的のために、DNAプライミングおよびその後のタンパク質追加抗原刺激による免疫化法を行った。図10a〜図10cおよび図11a〜図11bに示されるように、DNAおよびペプチドワクチンの組み合わせられた注射は、完全なウイルスに対する著しいレベルのIgG抗体およびIgA抗体を誘発した。しかしながら、HA91〜261タンパク質フラグメント単独での注射と比較した場合、明らかな付加的な効果はなかった。
【0327】
従って、これらの結果は、本発明の教示に従って作製されたペプチドワクチンおよびDNAワクチンはともに体液性免疫応答を誘導することを示しており、しかし、それをコードするDNAと比較した場合、著しくより大きい抗体産生がペプチドによる免疫化のときに明らかであったことを示している。
【0328】
さらに、異なるインフルエンザ株とのIgG抗体の交差反応性は、HA分子のHA91〜261球状領域が万能的なワクチン接種をもたらし得ることを示唆している。
【0329】
IgA抗体およびIgG抗体を誘導する本発明のワクチンの能力は特に重要である。これは、IgGは血清中に産生されると考えられる一方で、IgA抗体は、重要な局所的抗インフルエンザ効果を発揮し得る肺において主に産生されるからである。これらの結果は、気道疾患では、ワクチン保護が気道分泌IgAの増大と相関するという知見[Lue(1988)、J.Immunol.、140:3793〜3800;Nedrud(1987)、J.Immunol.、139:3484〜3492]に照らしてさらに強められる。
【0330】
実施例8
ペプチドおよびDNAのワクチン接種により生じる細胞性免疫応答
材料および実験手順
脾臓細胞増殖アッセイ−BALB/cマウスを、上記で記載されたように3週間の間隔で、アジュバントを伴うことなく50μg/50μlのHA91〜261ペプチドで(i.n.)免疫化し、または、PBSにおける100μgのpHA91〜261プラスミドで(i.m.)免疫化した。脾臓を3回目の免疫化の14日後に解剖し、HA91〜261ペプチドに対する増殖応答を調べた。細胞を、5x10細胞/ウエルをRPMI−HEPES(Sigma、St.Louis、米国)に含有する0.2mlの培養物の三連を使用して、96ウエル平底プレート(Nunc、デンマーク)において培養した。脾臓細胞を示された濃度のHA91〜261ペプチドまたは不活性化された精製ウイルスで刺激し、48時間培養した。細胞を1mCi(37Bq)の[H]チミジン(Amershampharmacia、英国)で一晩パルス処理した。チミジン取り込みをPackardβ−カウンターで測定した。
【0331】
サイトカインアッセイ−抗体および精製サイトカインをPhamingen(San Diego、CA)から得た。精製された抗サイトカイン捕獲mAbを、炭酸塩緩衝液(0.1M NaHCO、pH8.2)において2μg/ml(ラット抗マウスIL−4)または4μg/ml(ラット抗マウスIL−2、IL−10およびIFN−γ)に希釈して、ELISAプレートに被覆し、4℃で一晩インキュベーションした。PBS−Tween(0.05%のTween−20を含有する10mM PBS)で洗浄した後、プレートを、10%ウシ胎児血清(Biological Industries、イスラエル)を含むPBSを用いて、ウエルあたり200μlで室温で2時間でブロッキング処理した。標準サンプルおよび希釈サンプルをウエルに加え、4℃で一晩インキュベーションした。プレートを洗浄し、PBS/10%血清におけるビオチン化抗サイトカイン検出mAbを各ウエルに1時間加えた。その後、ペルオキシダーゼコンジュゲート化アビジンを加え、アッセイを、ELISAについて記載された工程と同じ工程を使用して進めた。サイトカインを、上記のように捕捉および検出された精製サイトカインの標準曲線との比較によって定量した。
【0332】
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)アッセイ−CTL殺傷アッセイを、本質的には、Zweerink他(1997、Eur.J.Immunol.、7:630〜635)によって記載されるように行った。簡単に記載すると、HA91〜261ペプチドおよび/またはpHA91〜261DNAで免疫化されたマウスに由来する脾臓細胞を、インフルエンザA/Texas/77ウイルスをインビトロ感染させた同系の実験未使用の脾臓細胞で5日間刺激した。P815標的細胞(ATCC TIB64)を、RPMI+HEPES(n−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンn’−(2−エタンスルホン酸))において、37℃、5%COで、放射性クロム酸ナトリウム(51Cr、10個の細胞に対して5μCi)およびインフルエンザウイルスと90分間インキュベーションした。エフェクター脾臓細胞を集め、洗浄し、徹底的に洗浄された標的細胞と様々なキラー対標的比で37℃において5時間インキュベーションした。標的細胞の溶解を培地への51Cr放出によってモニターし、自然放出についての補正の後の総放出(これは1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)による標的細胞の溶解によって測定される)の百分率として表した。
【0333】
結果
HA91〜261による増殖性脾臓細胞応答の誘導−Tヘルパー活性を生じさせる際の効率を評価するために、免疫化マウスの脾臓における細胞性免疫応答をチミジン取り込みにより調べた。図12aに示されるように、ペプチド免疫化マウスから得られた脾臓細胞は、HA91〜261ペプチドと同時インキュベーションされたとき、非常に増殖した。興味深いことに、HA91〜261ペプチドに対するこの細胞応答は、示された濃度のHA91〜261ペプチド(すなわち、5μg/ml〜20μg/ml、ならびに3.1/5μg、4.7/10μgおよび6.2/20μgの刺激)との相互作用によって示されるように用量依存的であった。HA91〜261ペプチドで免疫化されたマウスはまた、完全なウイルスに対する正の増殖応答を示した(図12b)。対照的に、DNAフラグメントで免疫化されたマウスから得られた脾臓細胞において観測された増殖応答はほとんど検出できなかった。組み合わされたDNAプライミング−タンパク質追加抗原刺激のとき、正の応答を完全なウイルスに対してのみ認めることができ、そして、この場合でさえも、その応答は、HA91〜261ペプチド単独で得られた応答よりも大きくなかった(図12b)。
【0334】
HA91〜261ペプチドによる免疫化の後で産生されたT細胞サブタイプを特徴づけるために、サイトカイン放出プロフィールを明らかにした。図13a〜図13bに示されるように、HA91〜261で免疫化されたマウスから得られた脾臓細胞のみが、精製ペプチドおよび完全なインフルエンザウイルスの両方に応答して著しいレベルのIL−2(図13a)およびIFN−γ(図13b)を分泌した。このことは、これらのリンパ球がTh1サブタイプに属することを示す。この細胞サブタイプは抗体依存的な細胞媒介型細胞傷害性および感染細胞のクリアランスに関係づけられる。対照的に、Th2応答を表すIL−4およびIL−10は検出することができなかった(データは示されず)。サイトカイン分泌が、DNAまたはそのペプチドの組合せで免疫化されたマウスから得られた細胞によって全く観測されなかった。
【0335】
pHA91〜261DNA免疫化によるCTL応答の誘導−CTL記憶細胞を活性化するために、pHA91〜261DNA構築物またはHA91〜261ペプチドで免疫化されたマウスから得られた脾臓細胞を、インフルエンザウイルスを感染させた抗原呈示細胞で刺激した。得られたエフェクター細胞を、非処置であるか、または様々なエフェクター対標的細胞比でウイルスを感染させた51Cr標識のP815標的細胞とインビトロで同時インキュベーションした。
【0336】
図14a〜図14bに示されるように、CTLが、DNA構築物で免疫化されたマウスにおいてウイルス刺激の後でのみ明らかであり、そのような刺激は、ウイルス感染した標的細胞の特異的な溶解をもたらした。そのような応答は、HA91〜261ペプチドまたは組み合わされたDNAプライミング−タンパク質追加抗原刺激で免疫化されたマウスでは観測されなかった。
【0337】
DNAワクチン接種により誘導されるCTL活性は、DNAワクチン接種後におけるウイルス抗原に対する好ましいCTL応答を立証する以前の知見[Raz(1996)、Natl.Acad.Sci.USA、93:5141〜5145;Ulmer(1993)、Science、259:1745〜1749]と一致している。例えば、異種ウイルスの攻撃に対するマウスのクラスI限定CTLおよび保護の誘導が、NPまたはHAをコードするプラスミドDNAに関して明らかにされている[Johnson(2000)、J.Gen.Virol.、81:1737〜1745]。
【0338】
しかし、これらの結果は、HA分子の同じ領域に対応するDNAフラグメントおよびペプチドフラグメントにより誘発される免疫応答経路の違いを示唆している。
【0339】
実施例9
HAペプチド免疫化はインフルエンザウイルス感染から保護する
材料および実験手順
ウイルス抗原投与に対する保護アッセイ−免疫化後1ヶ月目に、免疫化マウスに、1HAU/マウスを含有する感染性尿膜液のi.n.接種物を投与した。5日後、(上記で記載されたように)マウスを屠殺し、肺および血液サンプルを取り出し、−70℃で保存した。アッセイの直前に、肺を解凍し、PBS/0.1%BSA(10%w/v)中でホモジネートし、破砕物を除くために遠心分離した。ウイルス力価を全卵力価測定法[Fayolle(1991)、J.Immunol.、147:4069〜4073]によって測定した。肺ホモジネート(100μlの10倍連続希釈物)を9日目〜11日目の孵化卵の尿膜腔に注入した。37℃で48時間のインキュベーションおよび4℃で一晩のインキュベーションの後、尿膜液を取り出し、ウイルスの存在を、50μlの尿膜液と、生理的食塩水における0.5%ニワトリ赤血球の50μlとを含有するマイクロタイタープレートにおいて、赤血球凝集によって測定した。結果が、特定のホモジネート希釈度(10−8)における陽性肺の百分率、ならびにLogEID50(20)として表される。
【0340】
結果
HA91〜261ペプチドおよび対応するDNAフラグメントpHA91〜261の両方によって誘導される正の体液性免疫応答および細胞性免疫応答に照らして、ウイルス抗原投与に対する保護免疫性をもたらすこれらの薬剤の能力を検討した。ペプチドまたはDNA構築物による鼻腔内免疫化または筋肉内免疫化(3週間の間隔での3回の投与)をそれぞれ行った後、マウスを最後の追加抗原刺激の1ヶ月後に1HAUのインフルエンザA/Texas/1/77ウイルスで抗原投与した。5日後、動物を屠殺し、肺における感染性ウイルスの存在を測定した。図15a〜図15bに示されるように、DNA構築物またはHA91〜261ペプチドのいずれかで免疫化されたマウスは、非免疫化マウスと比較して、ウイルス抗原投与に対する著しいレベルの保護(80%に近い)を明らかにした。しかしながら、DNAおよびペプチドの組み合わされたワクチン接種は、完全なウイルスに対する著しい細胞性免疫応答を誘発したとしても、保護を誘導しなかった。
【0341】
これらの結果は、本発明の教示に従って作製されたペプチドワクチン接種およびDNAワクチン接種はともにウイルス感染に対して動物を保護することを示している。
【0342】
本発明を、その具体的実施態様とともに説明してきたが、多くの変形と変更が当業技術者には明らかであることは明白である。したがって、本発明は、本願の特許請求の範囲の精神と広い範囲内に入っているこのような変形と変更をすべて含むものである。本明細書に記載のすべての刊行物、特許及び特許願は、あたかも、個々の刊行物、特許又は特許願各々が、本願に具体的にかつ個々に参照して示されているように、本願に援用するものである。さらに、本願における任意の文献の引用もしくは確認は、このような文献が本発明に対する従来技術として利用できるという自白とみなすべきではない。



【配列表フリーテキスト】
【0343】
配列番号2〜10,13,14および15は合成ペプチドの配列である。配列番号11,12および23は合成オリゴヌクレオチドの配列である。配列番号16〜22は一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞のインフルエンザウイルス感染に関係するポリペプチドと特異的に結合することができるポリヌクレオチド配列を含む単離された核酸アプタマー分子であって、前記ポリヌクレオチド配列は、配列番号1のアミノ酸位置91〜261によって規定される血球凝集素の領域と結合する単離された核酸アプタマー分子。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチド配列は、配列番号11および配列番号12からなる群から選択される請求項1に記載の単離された核酸アプタマー分子。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチド配列は一本鎖である請求項1に記載の単離された核酸アプタマー分子。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチド配列はDNAである請求項1に記載の単離された核酸アプタマー分子。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチド配列はRNAである請求項1に記載の単離された核酸アプタマー分子。
【請求項6】
検出可能な標識をさらに含む請求項1に記載の単離された核酸アプタマー分子。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチド配列は2’−フルオロ(2’−F)修飾ヌクレオチドを含む請求項1に記載の単離された核酸アプタマー分子。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチド配列は10ヌクレオチド〜35ヌクレオチドの間の長さを有するポリヌクレオチド配列から選択される請求項1に記載の単離された核酸アプタマー分子。
【請求項9】
請求項1に記載の単離された核酸アプタマー分子を作製する方法であって、以下のステップを含む方法:
(a)複数の核酸分子を、請求項1に記載の血球凝集素と接触させること;
(b)前記血球凝集素と特異的に結合することができる少なくとも1つの核酸分子を前記複数の核酸分子から同定すること;および
(c)前記血球凝集素と結合することができる少なくとも1つの核酸分子を単離し、それにより、インフルエンザウイルス感染を阻害することができる単離された核酸アプタマー分子を作製すること。
【請求項10】
前記複数の核酸分子は一本鎖である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の核酸分子はDNA分子である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の核酸分子はRNA分子である請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の核酸分子の各々は検出可能な標識をさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の核酸分子の各々は2’−フルオロ(2’−F)修飾ヌクレオチドを含む請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の核酸分子は10ヌクレオチド〜100ヌクレオチドの間の長さを有するポリヌクレオチド配列から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の核酸分子は10ヌクレオチド〜35ヌクレオチドの間の長さを有するポリヌクレオチド配列から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(a)に先だって、コンビナトリアル合成法を使用して前記複数の核酸分子を作製することをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(a)の前、またはステップ(c)の後で、前記複数の核酸分子を修飾することをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(a)〜ステップ(c)を繰り返すことをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離された核酸アプタマー分子と、生理学的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項21】
前記単離された核酸アプタマー分子はそこに結合された抗ウイルス剤を含む請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
包装材と、前記包装材に含有される、インフルエンザ感染を処置または防止するために特定された請求項20または21に記載の医薬組成物とを含む製造物。
【請求項23】
インフルエンザウイルス感染を処置または防止するための医薬の製造のための請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離された核酸アプタマー分子の使用。
【請求項24】
生物学的サンプルにおけるインフルエンザウイルスを同定する方法であって、以下のステップを含む方法:
(a)生物学的サンプルを、請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離された核酸アプタマー分子と接触させること;および
(b)生物学的サンプル中の前記インフルエンザウイルスポリペプチドに結合した前記単離された核酸アプタマー分子を検出し、それにより、インフルエンザ感染を同定すること。
【請求項25】
インフルエンザ感染を処置するために特定された医薬の製造のための、抗ウイルス剤にコンジュゲート化された請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離された核酸アプタマー分子の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図3a−b】
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【図3c−d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a−d】
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【図8e】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−279385(P2010−279385A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180666(P2010−180666)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【分割の表示】特願2006−502644(P2006−502644)の分割
【原出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【出願人】(502379147)イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド (14)
【Fターム(参考)】