説明

インフルエンザヘマグルチニンで偽型化したレンチウイルス及びその使用方法

インフルエンザHA、NA及びM2パッケージング遺伝子構築物を正しい比率で用いて、レンチウイルスベクターを高度に偽型化する。インフルエンザHAで偽型化した、特にH5及びノイラミニダーゼで偽型化したレンチウイルスベクター。このようなレンチウイルスベクターを用いて、インフルエンザ抗原に対する免疫応答を誘導する方法、又はインフルエンザ抗原が結合する細胞に遺伝子を形質導入する方法。HAで偽型化したレンチウイルスを用いてインフルエンザ感染を阻害する薬物をスクリーニングする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他のタイプのウイルスからのウイルスタンパク質、例えばインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)又はM2タンパク質で偽型化した(pseudotyped)レンチウイルスに関する。本発明は、改変レンチウイルスベクター及び遺伝子送達システム;並びに該偽型レンチウイルスを用いた抗原、免疫原又はワクチン;並びに偽型レンチウイルスを用いて免疫を誘導するか又はウイルス生成物を検出する方法;並びに抗ウイルス活性又は宿主細胞へのウイルス侵入を遮断する能力について分子をスクリーニングするための偽型レンチウイルスに基づく方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、ウイルスにより通常発現されるエンベロープタンパク質が、異なるウイルスからの外因性エンベロープタンパク質又はキメラ若しくはハイブリッドエンベロープタンパク質で置き換えられたときに、偽型化される。偽型化により、ウイルスは、新しい特性、例えば宿主細胞へのその結合能力の変更、その天然の宿主範囲の改変、又は宿主細胞へさらなる遺伝情報を移動させることを可能にすることを獲得する。
【0003】
レンチウイルスは、レトロウイルス科の中の1つの属を表す。これらの基本的な構造は、コア内のRNAゲノムを含み、このコア上又はコアを貫通して、受容体結合エンベロープタンパク質が配置される。工学的に作製されたレンチウイルスベクターは、レンチウイルスのいくつか又は全ての特徴を示すが、それが由来する天然のレンチウイルスの機能的特徴を改変する、レンチウイルスの構造の変更を含み得る。例えば、レンチウイルスベクターのRNAゲノムは、標的宿主細胞への取り込みのための外因性ポリヌクレオチド配列又は導入遺伝子を含むように改変され得る。天然のレンチウイルスのエンベロープタンパク質は、外因性ウイルスのエンベロープタンパク質での置き換えにより、つまりレンチウイルスベクターの宿主範囲を改変することにより偽型化され得る。
【0004】
レンチウイルスベクターは、複製能を持つか、又は複製能を持たない。複製可能ベクターは、宿主細胞に感染し、自身を再生させるために必要な全ての材料をコードし得るが、複製不能ベクターはコードできない。複製不能ベクターは、生物学的安全性のために、及び複製可能ベクターよりも多くの外因性遺伝物質を保持できる一般的により高いその能力のために、好ましいことがある。
【0005】
レンチウイルスの作製方法、レンチウイルスエンベロープタンパク質を偽型化する方法、及びポリヌクレオチド配列を形質導入するためにそのようなベクターを用いる方法は、当該技術において知られており、以下の文献を参照して組み込まれる。
Kingsmanら、米国特許第6,669,936号は、機能的レンチウイルス補助遺伝子産物を欠く、感染及び形質導入能力を持つレンチウイルスベクターを記載している。
Leboulchら、米国特許第6,365,150号は、複製能力を持つヘルパーウイルスの産生を導く分子組換えの可能性を実質的に除去することにより、安全性が増加した組換えレンチウイルスを産生するレンチウイルスパッケージング細胞について記載している。
【0006】
Marascoら、米国特許第6,830,892号は、標的分子のスクリーニングに有用なレンチウイルスベクターについて記載している。
Marascoら、米国特許第7,078,031号は、偽型レンチウイルスベクターと、それらのベクターを用いる遺伝子送達について記載している。
Spencerら、米国特許第7,090,837号は、レンチウイルスパッケージング構築物及びパッケージングシステム、並びにレンチウイルスベクターを用いる遺伝子形質導入について記載している。
McKayら、Gene Ther. 13:715 (2006)は、家禽ペストウイルス(FPV, H7/Rostok)からのインフルエンザヘマグルチニン(HA)を用いた、レンチウイルスに基づく遺伝子導入について記載している。
Matrosovichら(25)は、NAが、ウイルス感染の早い段階で重要な役割を演じることを示している。
【0007】
このようなベクター及びその使用の方法は、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology), 第1巻(2006年11月20日) (特に第9章「Introduction of DNA into Mammalian Cells」を参照)又は上記もしくは以下の参考文献のセクションに挙げる文献を参照して組み込まれる。
【0008】
レンチウイルスベクターは、1又は複数のレポーター遺伝子、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするポリヌクレオチドも含み得る。適切なレポーター遺伝子、レポーター遺伝子をレンチウイルスベクターに組み込む方法、及びレポーター遺伝子活性を検出する方法は、当該技術において公知であり、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー, 第1巻(2006年11月20日) (特に第9章第II部「Uses of fusion genes in mammalian transfection」を参照)を参照して組み込まれる。
他のウイルスからのエンベロープタンパク質により偽型化されたレンチウイルスベクターは、種々の基礎科学及び臨床での使用のための強力なツールを提供する。まず、遺伝子送達システムとして、これは、遺伝子導入を所望の組織及び細胞にインビトロ及びインビボで指向させることができる(1, 2)。次に、基礎研究のためのツールとして、これは、エンベロープタンパク質が媒介する細胞侵入の分子機構を明らかにするために用い得る(3)。第3に、免疫原として、これは、感染性疾患及び癌に対するワクチン開発において用い得る(4, 5)。第4に、抗原として、感染及びワクチン接種の経過の間の抗体応答を測定するための新規な中和アッセイを開発するために用いられている(6, 7)。最後に、細胞侵入のためのビヒクルとして、これは、侵入遮断物質をスクリーニングするためのハイスループットシステムを開発するために用いて、新しい抗ウイルス剤の開発における補助となり得る(3)。
【0009】
水疱性口内炎ウイルスからのG糖タンパク質(VSV-G)は、レンチウイルスベクターを偽型化して広い範囲の細胞及び組織への遺伝子導入を標的にさせるその高い効力のために、レンチウイルスの偽型化に広く用いられている(8〜10)。しかし、極性化された上皮の頂端膜又は粘膜組織のようないくつかの細胞及び組織は、VSV-Gを用いて偽型化したレンチウイルスベクターに反応しない(refractory)(1, 11)。
【0010】
この制限を克服するために、フィロウイルス(1, 2)、オルトミクソウイルス(11, 12)、パラミクソウイルス(13)、C型肝炎ウイルス(14)、及び他のレトロウイルス(12, 15)のようなその他のウイルスからのエンベロープタンパク質を用いてウイルスを偽型化する努力がなされている。
インフルエンザウイルスは、RNAウイルスのオルトミクソウイルス科のメンバーである。流感として一般に知られるインフルエンザは、鳥類及び哺乳類の感染性疾患である。ヒトでは、インフルエンザの通常の症状は、発熱、のどの痛み、筋肉痛、ひどい頭痛、咳、衰弱及び全身の不快感である。より深刻な場合、インフルエンザは、特に子供及び老人において肺炎を引き起こし、これは死に至らしめることがある。
【0011】
インフルエンザには、インフルエンザA、B及びCと呼ばれる3つの型がある(この科の2つのその他のメンバーであるDhori及びThorgotoウイルスは、ダニが有し、ほとんど遭遇しない)。インフルエンザAウイルス(鳥類又は鳥ウイルスを含む)は、ヒトにおいて最も重篤な疾患を引き起こすが、インフルエンザBも定期的に大発生を引き起こす。
【0012】
A、B及びCの呼称は、元来、ウイルスに対する抗体応答の広いクラスのことであり、3種のウイルスタイプのそれぞれのM1 (カプシド又はマトリクスタンパク質)又はヌクレオタンパク質(NP)の遺伝子の違いに関連することも現在では知られている。これらのウイルスの遺伝子配列の研究は、ある時期にそれらが全て共通の祖先を有していたことを示す。H5N1鳥インフルエンザウイルスは、インフルエンザAクラス又はタイプに属する。
【0013】
タイプ(A、B又はC)は、インフルエンザウイルスの名称の最初に重要な部分である。次いで、サブタイプが重要であるが、これは、ウイルスエンベロープから突出するヘマグルチニン(HA)又はノイラミニダーゼ(NA)表面タンパク質の広いクラスについて命名される。16種のHAサブタイプ(H1〜H16と呼ばれる)と、9種のNAサブタイプ(N1〜N9と呼ばれる)が存在する。これらのインフルエンザAサブタイプの全ての可能な組み合わせは、鳥類に感染するが、H1、H2、H3、H5、H7及びH9、並びにN1、N2及びN7表面タンパク質を有するものだけがヒトに感染し、現在のところ、これらのうち、H1、H2、H3並びにN1及びN2がいずれの程度にも感染する。H5サブタイプは、広いヒト感染性についての新しいサブタイプの候補であると考えられている。このサブタイプは、世界中のほとんどのヒトの免疫系に対して「新しい」ので、このサブタイプが広くヒトに感染性になると、大発生をもたらし、世界中に感染の波をもたらす可能性がある。
【0014】
インフルエンザAウイルスの正式な名称は、よって、タイプとサブタイプとを含み、例えばインフルエンザA/H5N1又はインフルエンザA/H3N2である。これらは、スラッシュの代わりに括弧を用いて記載することもでき、すなわちA(H3N2)などである。本明細書において、議論する全てのインフルエンザウイルスのタイプはAであるので、ウイルスは、サブタイプの組み合わせを用いて単純に、すなわちH3N2のように呼称する。
【0015】
3つの重要なインフルエンザタンパク質は、ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)及びM2であり、これらはインフルエンザウイルスの表面上のエンベロープタンパク質である。
成熟インフルエンザビリオンの表面上では、HAのスパイクは、HA1及びHA2ヘテロダイマーのトリマー複合体である(16, 17)。これは、標的細胞表面上のシアル酸含有受容体に結合し、エンドサイトーシスされるウイルスの膜とエンドソーム膜との融合を媒介することにより、ウイルスが細胞質中に浸透する原因となる(18, 19)。
【0016】
HAは、最初に、膜結合リボソームで合成され、小胞体の内腔に、単独のポリペプチド前駆体HA0として輸送され、次いで、2つのジスルフィドで連結された鎖HA1及びHA2に切断される。
HA0のある形は、HA1のカルボキシル末端に複数の塩基性アミノ酸を有し、トランス-ゴルジネットワーク(TGN)に位置する細胞のエンドペプチダーゼにより切断される(20, 21)。HA0の第2の形は、HA1のカルボキシル末端に複数の塩基性アミノ酸を有さず、2つの群のプロテアーゼ:血液を凝固させるX因子様プロテアーゼであるプラスミンと、特別の呼吸上皮細胞の生成物であるトリプターゼクララ(Clara)の一方によりインビボで切断される(22〜24)。
【0017】
成熟インフルエンザビリオンの表面上には、NAが、ホモテトラマーとして存在する。これは、末端のシアル酸と近接するD-ガラクトース又はD-ガラクトサミンとの間のα-ケト配糖体結合(ketosidic linkage)の切断を触媒する(25)。NAのある機能は、シアル酸をHA、NA及び細胞表面から移動させることである(26)。これはまた、ウイルスが、気道に存在するムチン層を貫通して輸送されることを可能にし、それによりウイルスは上皮細胞を標的にできる(27)。いくつかの鳥類インフルエンザNAタンパク質も、血球凝集を引き起こす受容体結合部位を有するが、インフルエンザウイルスの生活環におけるこの受容体結合機能の役割は、まだわかっていない(28)。最近、NAがウイルス感染の早い段階において重要な役割を演じることも見出された(29)。
【0018】
約20〜60種のM2タンパク質分子が、成熟ビリオンの表面上でホモテトラマーとして発現される。これらは、脱外被の間にイオンがビリオンに侵入することを可能にするイオンチャネルとして機能し、また、TGN及び輸送小胞(transported vesicle)のpHを調節するイオンチャネルとしても作用する(30)。興味深いことに、現在のところ、鳥類インフルエンザA/chicken/Germany/34 (H7N1) 家禽ペストウイルス (FPV) Rostock株が、そのHAがTGN及び輸送小胞中のM2のイオンチャネル活性に依存して、その生物発生の間に正しい立体配置を維持する唯一の株である(31, 32)。M2なしでは、FPV H7HAは、ER上で発現され、細胞表面にほとんど到達しない(11, 32)。
【0019】
FPV H7HAは、レトロウイルスと、EIAV又はHIV-1に基づくレンチウイルスベクターとを偽型化するために用いられている(11, 33)。最近、McKayら(11)は、M2が、レンチウイルスベクターのFPV H7HA偽型化を著しく増大させることを報告した。さらに、彼らは、FPV H7HA/M2で偽型化したレンチウイルスを産生する細胞を可溶性細菌NAで処理すること、又はNAをコードするcDNAを同時発現させることが、産生細胞からの偽ウイルス粒子の放出を増進させることを示した。最後に、彼らは、このFPV H7HA/M2で偽型化したレンチウイルスが、極性化されたマウス気管培養物の頂端膜をエクスビボで、又はマウス気管上皮をインビボで効率的に形質導入することを示した。
【0020】
上記のように、鳥類では16種のHAサブタイプが同定されている。これらのうち、血清型1、2及び3からのHAは、ヒトに伝播され、ヒトからヒトに蔓延している。一方、血清型5、7及び9からのHAもヒトに伝播されているが、現在のところ、ヒトからヒトへの蔓延は報告されていない(34)。しかし、ヒトの気道では、SAα2,6ガラクトース及びSAα2,3ガラクトースをそれぞれ末端に有する両方の型のシアリルオリゴ糖が見出された(35)。
上記のように、SAα2,3ガラクトースに結合するFPV H7HAは、生物発生の間のそのM2への依存性において独特の特徴を有する(31, 32)。本発明の前に、M2及びNAが、他のウイルス株からのHAを用いて偽型化されたレンチウイルスベクターについて必要とされることは知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者らは、よって、偽型化されたレンチウイルス及びこれらに由来するベクターを、レンチウイルスに導入されたときの種々のHAサブタイプの効果、並びにNA及びM2の効果を調べることにより、改良することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0022】
特に、本発明は、
インフルエンザHAタンパク質、又はHAエピトープ若しくはHA細胞接着性リガンドを含むHAタンパク質フラグメントを含むタンパク質
で偽型化され、該HAタンパク質が家禽ペストウイルスH7でないレンチウイルスベクターに関する。
本明細書で記載する場合、このような偽型レンチウイルスベクターは、多くの利点を有し、特に、本発明者らは、HA単独で偽型化されたレンチウイルスベクターが、HAが結合する標的細胞への所望のポリヌクレオチド配列又は導入遺伝子の形質導入を可能にすることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】トランスファー及びパッケージングベクター、並びにH5HA、NA及びM2を発現するDNA構築物の模式図を示す。
【図2】NA偽型の種々の記載された量を用いて又は用いずに模擬、H5HAをトランスフェクションさせた293T細胞に由来する上清を形質導入したMDCK細胞(2A)、並びにM2偽型の種々の記載された量を用いて又は用いずに模擬、H5HAをトランスフェクションさせた293T細胞に由来する上清を形質導入したMDCK細胞(2B)における相対的ルシフェラーゼ活性(RLA)を示す。
【図3】種々の記載された量のM2を用いて又は用いずに、H5HAとNAとを4:1の比率でトランスフェクションさせた293T細胞に由来する上清を形質導入したMDCK細胞における相対的ルシフェラーゼ活性(RLA)を示す。
【図4】10 ng HIV-1 gag p24に等価なH5HA/NA/M2若しくはVSV-G偽型を含有する上清又は模擬を形質導入したCHO、MDCK、293 T、HeLa、Vero、Caco2、HT29及びCEMss細胞における相対的ルシフェラーゼ活性(RLA)を示す。
【図5】バフィロマイシンA1 (5a)又はNH4Cl (5b)を用いて前処理し、次いでH5HA/NA/M2偽型を含む上清を形質導入したMDCK細胞における相対的ルシフェラーゼ活性(RLA)を示す。
【図6】免疫前又はH5HAに特異的な免疫後のプールされた血清試料を用いて前処理したH5HA/NA/M2又はVSV-G偽型の形質導入効率の阻害のパーセンテージを示す。
【図7】鳥類及びヒトウイルスのいくつかのサブタイプに由来するインフルエンザHA及びNAを用いて偽型化したレンチウイルスベクターのルシフェラーゼ活性の結果を示す。
【図8】外因性NA処理を用いて若しくは用いずにH5HA単独にトランスフェクションさせたか、又はH5HA/NAに同時トランスフェクションさせた細胞からの上清及び細胞破砕物のウェスタンを示す。
【図9】外因性NA処理を用いて若しくは用いずにH5HA単独にトランスフェクションさせたか、又はH5HA/NAに同時トランスフェクションさせた細胞からの単離された画分に対するウェスタンを示す。
【図10】H5HA及びその種々のサブクレードの系統を示す。
【図11】抗H5HA (サブクレード1.1)マウス血清及びH5N1についての回復期のヒト血清(サブクレード2.3)に対する新しいH5HA/NAアッセイとの比較として行った、HI (図11A)及びマイクロ中和アッセイ(図11B)の結果を示す。
【図12】抗HA (サブクレード1.1)マウス血清に対する新しいH5HA/NAアッセイの結果、及びH5N1 (サブクレード2.3)についての回復期のヒト血清に対する新しいH5HA/NAアッセイの結果を示す。
【図13】HPLCにより、いくつかの伝統的な中国ハーブから単離された2つの化合物(化合物1:図13A及びB;化合物2:図13C及びD)のEC50 (13A及び13C)及びCC50 (13B及び13D)を示す。
【図14】H1HA配列と、マルチ塩基部位及び異なる株のH5MA配列を創出するための変異とのペプチド配列の比較を示す。
【図15】異なるNA配列のペプチド配列の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好ましくは、HAタンパク質は、上記で定義されるH1、H2、H5及びH7からなる群(すなわち、家禽ペストウイルスH7でない)、より好ましくはH1、H2及びH5からなる群より選択される。特に:
- H1タンパク質は、配列番号3のペプチド配列を含んでよく;対応する核酸コード配列は配列番号16であり;
- H2タンパク質は、配列番号1のペプチド配列を含んでよく;対応する核酸コード配列は配列番号18であり;又は
- H5タンパク質は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7の1つのペプチド配列を含んでよく;対応するヌクレオチドコード配列は、配列番号17、配列番号19、配列番号20、配列番号21である。
【0025】
上記のタンパク質を発現できる場合、わずかに異なる他の核酸も用いることができ、既知の方法により上記のタンパク質から導き出すことができる。
HAタンパク質は、インフルエンザの毒性及び標的特異性の1つの決定因子であり、よって、広範な長期にわたる研究の主題である。現在までに単離されているHAの種々の形はそれぞれ重要であり、本発明のHA分子を有する新しい偽型レンチウイルス材料は、本出願に詳細に記載するように、種々の利点を提供する。
【0026】
好ましくは、レンチウイルスは、NAをさらに含む。特に、NAタンパク質は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11のペプチド配列を含んでよく、対応するヌクレオチドコード配列は、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25である。
偽型化されたレンチウイルスは、標的細胞に結合し、その遺伝物質を形質導入するためにHAのみを必要とするが、本発明者らは、HAに加えて、偽型ウイルスにNAが組み込まれたときに、形質導入効率の結果が実質的に増大することを見出した。
【0027】
好ましくは、レンチウイルスベクターは、H5N1鳥類インフルエンザ株からのNAを含む。
好ましくは、レンチウイルスベクターは、NA及びM2をさらに含む。HAとともに、偽型ウイルスにNA及びM2の両方を含めることにより、形質導入効率のさらなる増加が達成できる。特に、M2タンパク質は、配列番号2のヌクレオチドコード配列によりコードされる。
【0028】
M2単独ではなく、NA単独を、H5HAと同時トランスフェクションさせると、H5HAの細胞表面発現が増加し、形質導入効率が劇的に(4〜5 logs)増加した。最良の形質導入効率は、HA構築物とNA構築物の比が4:1〜8:1の範囲にある場合に得られた。さらに、M2をH5HA及びNAに同時トランスフェクションさせると、形質転換効率がさらに緩やかに(2〜3倍)増加した。
【0029】
本発明者らは、M2ではなくNAが、H5HA偽型の形質転換効率を劇的に増進することを見出した。H5HA/NA/M2偽型は、インフルエンザウイルスの初期の感染工程を模倣し、このことにより、鳥インフルエンザウイルスに対する中和抗体反応の評価及び鳥類インフルエンザウイルスの侵入の遮断物質のスクリーニングのためのハイスループットアッセイを開発するために、これらの偽型が適することとなる。
H5を発現する野生型鳥類インフルエンザウイルスと同様に、H5HA/NA/M2レンチウイルス偽型は、受容体媒介エンドサイトーシスを介して細胞に侵入し、細胞への侵入は、H5HAに特異的な免疫血清により効率的に中和される。特に、H5HA/NA/M2偽型による侵入は、H5HAに特異的な免疫血清によりマウスにおいて、また、H5N1に感染したが、回復したヒト患者からの回復期血清により中和できる。
【0030】
H5HA/NA/M2偽型は、広い範囲の細胞に、VSV-G偽型と共存できる(compatible)効率で遺伝物質を形質導入し、このような偽型レンチウイルスベクターを、新しいタイプのトランスフェクション因子として非常に可能性のある価値を持つものにする。
【0031】
少なくとも2つの観点において、これらの結果は、McKayらによりレンチウイルスベクターのPFV H7HA偽型化について最近報告された結果と非常に異なっている(11)。まず、彼らの報告において、M2は、PFV H7HAの細胞表面発現に必要であるとことが示されている。M2の同時トランスフェクションなしでは、PFV H7HAは、細胞内でしか検出されず、このことは、分泌経路を介してPFV H7HAをやり取りすることが損なわれたことを示す。
これに対して、本発明者らは、M2の発現が、パッケージング細胞の表面上でのH5のような他のHAタンパク質の表面発現のために必要でないことを見出した(図1A)。
いずれの特定の説明にも結び付けられていないが、H5HAとPFV H7HAとの間のパッケージング細胞の表面発現に対するM2の依存性の違いは、HAの生物発生について以前に知られていたことと矛盾しない(27)。今までのところ、PFV H7HAが、その生物発生がTGN及び輸送小胞中のM2のイオンチャネル活性に依存して、正しい立体配置を維持する唯一のHAである(27)。
【0032】
次に、McKayらは、M2及びNAがPFV H7HA偽型レンチウイルスベクターの効率的な形質導入を補強する(約750倍)ことを示している。しかし、本発明において、M2ではなくNAの同時トランスフェクションが、H5HA偽型レンチウイルスベクターの形質導入効率を4〜5 log増加させることが示された(図2)。
また、最適な比率のHA及びNAとのM2の同時トランスフェクションは、さらなる、しかし穏やかな(2〜3倍)形質導入効率の増加をもたらす(図3)。我々の研究におけるM2によるこの2〜3倍の増加は、過去の研究における30倍の増加よりかなり低い(11)。この違いは、また、パッケージング細胞における生物発生の間のPFV H7HA及びH5HAについてのM2の依存性の違いにより説明できるだろう(27)。しかし、HA偽型レンチウイルスベクターの形質導入効率における、過去の研究に比較した(例えば25倍)本発明におけるNAによるより大きい増進(4 log近く)の理由は、明らかでない。彼らの研究において、ほとんどのNAの効果は、ビブリオ・コレラ(Vibrio Cholera)からの可溶性細菌NAタンパク質を用いて見出されたが、いくつかの実験においては、A/PR/8/34からのインフルエンザNAの同時トランスフェクションも試験されている。しかし、本出願で見られる効果は観察されなかった。
【0033】
NA遺伝子は、H5N1鳥類インフルエンザ株に由来し、コドン最適化された。特定の作用機構に結び付けられないが、その可能な説明の1つは、H5HA偽型レンチウイルスベクターの形質導入効率におけるNAの劇的な増進が、非常に病原性が高い鳥類インフルエンザ株に由来するNAの独自性であるということである。
【0034】
特に、このように形質導入効率が増進されたH5HA/NA/M2偽型は、多くの基礎科学的及び臨床的な使用が考えられる。
まず、遺伝子送達システムとして、これは、頂端膜を介して上皮細胞を効率的に形質導入できる(11)。よって、これは、インビボにおいて、粘膜上皮に遺伝子を直接導入するために用いることができる可能性がある。
次に、これは、ウイルス侵入の分子的機構を明らかにし、それにより潜在的な病原性を明らかにするための基礎研究のツールとして用いることができる。
最後に、本研究において証明されるH5HA/NA/M2偽型のよく保存された受容体結合部位及び抗原性決定因子(図5及び6)は、H5HA/NA/M2偽型を、H5N1をワクチン接種したか又はH5N1に感染した個体の免疫状態を包括的に研究し、侵入遮断物質、ひいては新しい抗ウイルス剤をスクリーニングするためのハイスループットアッセイを開発するために用いることができることを示している。
【0035】
好ましくは、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子をさらに含む。
このような導入遺伝子は、それが適切なレポーター遺伝子、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)又はルシフェラーゼの種々の形の1つであれば、さらなるマーカーとして用いることができる。或いは、導入遺伝子は、カナマイシンのような特定の物質に対する耐性を付与するもののような選択マーカーであり得る。或いは、このような導入遺伝子は、標的細胞に導入するために所望される興味対象の遺伝子産物であり得る。具体的には、これは、抗ウイルス遺伝子であってよく、これは、偽型レンチウイルスに対する影響を調べるために所望される。
【0036】
好ましくは、HA発現するポリヌクレオチドは、標的又は宿主細胞についてコドン最適化されている。
このようなコドン最適化HAにより、標的又は宿主細胞での発現の最適レベルが確実になる。異なる生物は、それらが最も一般的に用いて特定のペプチドの種々のアミノ酸残基を特定するコドンの特定の偏りを有する。標的又は宿主細胞の好ましいコドンを用いるようにコード配列を改変することにより、発現レベルを確実によりよく、そしてより安定化する。
【0037】
好ましくは、HA及びNA、並びに存在する場合にM2を発現するポリヌクレオチドは、標的又は宿主細胞についてコドン最適化されており、問題のタンパク質を発現できるという条件において、添付の配列表に列挙する核酸配列と少し異なっていてもよい。
【0038】
本発明において、偽型レンチウイルスベクターは、特定のHA、NA及びM2タンパク質配列に限定されないが、その代わりに、本発明者らは、同じ若しくは異なる単離ウイルスからのHA、NA及びM2タンパク質、又は実際は単独偽型レンチウイルスベクターで用いる場合は異なるHA若しくはNA群からの単離体の組み合わせが、所望の生物学的及び免疫原の特性を有し得ることを示している。
【0039】
好ましくは、HAタンパク質は、異なるHAホモログからの少なくとも2つの部分からなる。
好ましくは、NAタンパク質は、異なるNAホモログからの少なくとも2つの部分からなる。
【0040】
本発明者らは、少なくとも2つの天然タンパク質の部分を含むタンパク質を用いることにより、これらのキメラHA又はNAタンパク質が、元来のタンパク質に匹敵するレベルでともに免疫原性であり、かつ生物学的に活性であることを見出した。このために、本発明者らは、本明細書の図14及び15を参照にして同定できる保存残基により分けられた異なるHA又はNAタンパク質の部分又はドメインを組み合わせることを見出した。
【0041】
本発明のレンチウイルスベクターと、医薬的に許容される賦形剤、担体及び/又は免疫学的アジュバントとを含む組成物も提供される。
また、
HAを発現する少なくとも1つのパッケージングベクターと、
生成及びパッケージング配列と、Gag及びPolレンチウイルスタンパク質を発現する配列と、任意に導入遺伝子とを含むトランスファーベクター構築物と
を含み、該HAタンパク質が家禽ペストウイルスH7HAでないレンチウイルスベクターパッケージングシステムも提供される。
【0042】
HAを発現する少なくとも1つのパッケージングベクターと、
Gag及びPolレンチウイルスタンパク質を発現するヘルパー構築物と、
生成及びパッケージング配列と、任意に導入遺伝子とを含むトランスファーベクター構築物と
を含み、該HAタンパク質が家禽ペストウイルスH7HAでないレンチウイルスベクターパッケージングシステムが提供される。
【0043】
HAを発現する少なくとも1つのパッケージングベクターと、精製及びパッケージング配列とGag及びPolレンチウイルスタンパク質を発現する配列と任意に導入遺伝子とを含むトランスファーベクター構築物とをを含有するレンチウイルスベクターパッケージングシステムが意図される。このようなパッケージングシステムは、HAを発現する少なくとも1つのパッケージングベクターと、Gag及びPolレンチウイルスタンパク質を発現するヘルパー構築物と、生成及びパッケージング配列と任意に導入遺伝子とを含むトランスファーベクター構築物とを含んでもよい。好ましくは、ベクターは、家禽ペストウイルスH7HAを発現しない。上記のレンチウイルスベクターでトランスフェクションされた標的又は宿主細胞も、染色体DNAに組み込まれた導入遺伝子を有する本発明のレンチウイルスベクターでトランスフェクションされた標的又は宿主細胞として意図する。ポリヌクレオチド配列又は導入遺伝子は、細胞を本発明のレンチウイルスベクターと接触させることにより、細胞に形質導入される。
【0044】
上記で定義されるレンチウイルスベクターを、対象に、該ベクターに対する免疫応答を誘導するために充分な量で投与することを含む、免疫応答を誘導する方法も提供される。
本発明の別の実施形態は、上記のレンチウイルスベクター(又はそれでトランスフェクションされた宿主細胞)を、対象に、免疫応答を誘導するために充分な量で投与することを含む、免疫応答を誘導する方法である。このような免疫応答は、偽型レンチウイルス、例えばHA成分に対する細胞性又は体液性応答であってよい。
【0045】
上記で定義されるレンチウイルスベクターを、抗体と、該抗体がレンチウイルスベクターと結合するために適する時間及び条件の下で接触させ、
上記のレンチウイルスベクターが、宿主細胞に結合又は感染する能力に対する上記の接触の影響を決定する
ことを含む、中和抗体を同定する方法も提供される。
このような高い効率のH5HA/NA/M2偽型を用いて、本発明者らは、中和抗体応答を評価し、H5N1鳥類インフルエンザウイルスの侵入遮断物質をスクリーニングするためのハイスループットアッセイを開発している。
【0046】
この技術の具体的な応用は、次のものを含む。インフルエンザHAタンパク質、又はHAエピトープ若しくはHA細胞接着リガンドを含むHAタンパク質フラグメントを含むタンパク質で偽型化されたレンチウイルスベクター。好ましくは、HA (又は他の遺伝子、例えばNA又はM2についてのもの)は、具体的な標的又は宿主細胞についてコドン最適化される。コドン最適化は、分子生物学の技術分野において公知である。最も好ましくは、レンチウイルスベクターは、家禽ペストウイルスH7HAで偽型化されておらず、HAタンパク質は、H1、H2、H5又はH7、好ましくはH1、H2又はH5である。しかし、このようなレンチウイルスベクターは、NA、例えばH5N1鳥類インフルエンザ株からのNAで偽型化されてもよい。好ましくは、ベクターは、レンチウイルスベクターを偽型化するためにより効率的であると見出されている同種インフルエンザHAとNAの対を用いて偽型化されてよい。ベクターは、HAとともに、NAとM2の両方を含んでよい。インフルエンザHAタンパク質又はHAタンパク質フラグメントで偽型化されたレンチウイルスベクターは、導入遺伝子を含んでよい。偽型レンチウイルスベクターは、適切な緩衝液又は培地と混合又は懸濁されていてよく、或いは担体又は免疫学的アジュバントと混合されてよい。免疫応答を促進するアジュバント、例えばミョウバン、フロイントの不完全又は完全アジュバント、Ribiアジュバント及びその他のものは、免疫学の技術分野において公知である。
【0047】
本発明のレンチウイルスベクターでトランスフェクションされた標的又は宿主細胞も提供される。
本発明の標的又は宿主細胞と、医薬的に許容される賦形剤、担体及び/又は免疫学的アジュバントとを含む組成物も提供される。
好ましくは、本発明のレンチウイルスベクターでトランスフェクションされた標的又は宿主細胞では、上記の導入遺伝子は、上記の細胞の染色体DNA中に組み込まれている。
【0048】
細胞を、本発明のレンチウイルスベクターと、形質導入に充分な時間及び条件の下で接触させることを含む、細胞にポリヌクレオチド配列又は導入遺伝子を形質導入する方法も提供される。
細胞を、候補分子及び本発明の偽型レンチウイルスと接触させ、
上記の候補分子が、細胞へのウイルスの結合を調節する能力、又は細胞のウイルス感染を阻害する能力を決定する
ことを含む、細胞へのウイルスの結合を調節する分子又は細胞のウイルス感染を調節する分子を同定する方法も提供される。
【0049】
上記の偽型レンチウイルスベクターは、該レンチウイルスベクターを、抗体と、抗体がレンチウイルスベクターに結合するために適切な時間及び条件の下で接触させ、該接触の、上記のレンチウイルスベクターが宿主細胞に結合又は感染する能力に対する影響を決定することにより、中和抗体を同定又は特徴付けするために用いることができる。本発明の別の態様は、細胞へのウイルスの結合を調節、例えば増大又は減少させる分子、或いはウイルス感染を減弱化(又は促進する場合もある)する分子の同定又は特徴付けに関する。
【0050】
このような方法は、
細胞を、候補分子及び本発明の偽型レンチウイルスと接触させ、次いで、
候補分子が、細胞へのウイルスの結合を調節する能力、又は細胞のウイルス感染を阻害する能力を決定する
工程を含み得る。このような方法において試験される分子は、限定されないが、非タンパク質薬剤、抗体ではないペプチド又はポリペプチド、抗体又は抗体フラグメント、炭水化物、脂質、並びに有機及び無機の両方の薬剤を含むその他の薬理学的物質及び薬剤を含む。好ましくは、上記の分子は、非タンパク質薬剤である。
或いは、分子は、抗体ではないペプチド又はポリペプチドである。
最も好ましくは、分子は、抗体である。
最も好ましくは、分子は、炭水化物又は脂質を含む。
【0051】
本発明をよりよく理解するために、そして本発明をどのように実行するかを示すために、ここで、例示の目的のみのために、本発明による具体的な実施形態、方法及び手順を、添付の図面を参照にして示す。添付の図面において:
図1:トランスファー及びパッケージングベクター、並びにH5HA、NA及びM2を発現するDNA構築物の模式図を示す。模擬(陰性対照)、H5HA (1A)、H5HA及びM2 (1B)、H5HA及びNA (1C)、並びにH5HA、NA及びM2 (1D)をトランスフェクションさせた293Tパッケージング細胞に対するH5HAの細胞表面発現。トランスフェクションされた細胞は、H5HAについて特異的なプールされた免疫血清、次いで、FITCコンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体を用いて染色した。
【0052】
図2:NA偽型の種々の記載された量を用いて又は用いずに模擬、H5HAをトランスフェクションさせた293T細胞に由来する上清を形質導入したMDCK細胞(2A)、並びにM2偽型の種々の記載された量を用いて又は用いずに模擬、H5HAをトランスフェクションさせた293T細胞に由来する上清を形質導入したMDCK細胞(2B)における相対的ルシフェラーゼ活性(RLA)を示す。
図3:種々の記載された量のM2を用いて又は用いずに、H5HAとNAとを4:1の比率でトランスフェクションさせた293T細胞に由来する上清を形質導入したMDCK細胞における相対的ルシフェラーゼ活性(RLA)を示す。
【0053】
図4:10 ng HIV-1 gag p24に等価なH5HA/NA/M2若しくはVSV-G偽型を含有する上清又は模擬を形質導入したCHO、MDCK、293 T、HeLa、Vero、Caco2、HT29及びCEMss細胞における相対的ルシフェラーゼ活性(RLA)を示す。トランスフェクションの間に、293T細胞は、8:2:1の最適比率でのH5HA、NA及びM2にトランスフェクションさせた。
図5:バフィロマイシンA1 (5a)又はNH4Cl (5b)を用いて前処理し、次いでH5HA/NA/M2偽型を含む上清を形質導入したMDCK細胞における相対的ルシフェラーゼ活性(RLA)を示す。トランスフェクションの間に、293T細胞は、8:2:1の最適比率でのH5HA、NA及びM2にトランスフェクションさせた。
【0054】
図6:免疫前又はH5HAに特異的な免疫後のプールされた血清試料を用いて前処理したH5HA/NA/M2又はVSV-G偽型の形質導入効率の阻害のパーセンテージを示す。
図7:鳥類及びヒトウイルスのいくつかのサブタイプに由来するインフルエンザHA及びNAを用いて偽型化したレンチウイルスベクターのルシフェラーゼ活性の結果を示す。同種インフルエンザHA及びNAの対は、レンチウイルスベクターを偽型化するのにより効率的であり、この知見は、インフルエンザウイルスのさらなる研究及び使用について意味を有する。
図8:外因性NA処理を用いて若しくは用いずにH5HA単独にトランスフェクションさせたか、又はH5HA/NAに同時トランスフェクションさせた細胞からの上清及び細胞破砕物のウェスタンを示す。
図9:外因性NA処理を用いて若しくは用いずにH5HA単独にトランスフェクションさせたか、又はH5HA/NAに同時トランスフェクションさせた細胞からの単離された画分に対するウェスタンを示し、ここで、パネルAはトランスフェクションしていない細胞であり、パネルBは、H5HA単独にトランスフェクションさせた細胞であり、パネルCは、H5HA/NAに同時トランスフェクションさせた細胞であり、パネルDは、外因性NA処理で処理したH5HAにトランスフェクションさせた細胞である。
【0055】
図10:は、H5HA及びその種々のサブクレードの系統を示す。
図11:抗H5HA (サブクレード1.1)マウス血清及びH5N1についての回復期のヒト血清(サブクレード2.3)に対する新しいH5HA/NAアッセイとの比較として行った、HI (図11A)及びマイクロ中和アッセイ(図11B)の結果を示す。
図12:抗HA (サブクレード1.1)マウス血清に対する新しいH5HA/NAアッセイの結果、及びH5N1 (サブクレード2.3)についての回復期のヒト血清に対する新しいH5HA/NAアッセイの結果を示す。
【0056】
図13:HPLCにより、いくつかの伝統的な中国ハーブから単離された2つの化合物(化合物1:図13A及びB;化合物2:図13C及びD)のEC50 (13A及び13C)及びCC50 (13B及び13D)を示す。
図14:H1HA配列と、マルチ塩基部位(multibasic site)及び異なる株のH5MA配列を創出するための変異とのペプチド配列の比較を示す。
図15:異なるNA配列のペプチド配列の比較を示す。
【0057】
本発明は、添付の配列表に列挙され、ここにまとめるいくつかの配列にも関する:
配列番号1は、H2HAのペプチド配列である。
配列番号2は、M遺伝子のヌクレオチドコード配列である。
配列番号3は、H1HA WSNのペプチド配列である。
配列番号4は、H5HA 2004 Thailandのペプチド配列である。
配列番号5は、H5HA 2005 Cambodiaのペプチド配列である。
配列番号6は、H5HA 2006 Cambodiaのペプチド配列である。
配列番号7は、H5HA 2006 Shanghaiのペプチド配列である。
配列番号8は、H5N1 NA 2004 Thailandのペプチド配列である。
配列番号9は、H5N1 NA 2005 Combiantのペプチド配列である。
配列番号10は、H5N1 NA 2006 Shanghaiのペプチド配列である。
【0058】
配列番号11は、T-NA(WU)-2のペプチド配列である。
配列番号12は、H151HAのペプチド配列である。
配列番号13は、H515HAのペプチド配列である。
配列番号14は、H151HAのヌクレオチドコード配列である。
配列番号15は、H515HAのヌクレオチドコード配列である。
配列番号16は、H1HA WSNのヌクレオチドコード配列である。
配列番号17は、H5HA 2004 Thailandのヌクレオチドコード配列である。
配列番号18は、H2HAのヌクレオチドコード配列である。
配列番号19は、H5HA 2005 Cambodiaのヌクレオチドコード配列である。
配列番号20は、H5HA 2006 Cambodiaのヌクレオチドコード配列である。
配列番号21は、H5HA 2006 Shanghaiのヌクレオチドコード配列である。
配列番号22は、H5N1 NA 2004 Thailandのヌクレオチドコード配列である。
配列番号23は、H5N1 NA Combiantのヌクレオチドコード配列である。
配列番号24は、H5N1 NA Shanghaiのヌクレオチドコード配列である。
配列番号25は、T-NA(WU)-2のヌクレオチドコード配列である。
【実施例】
【0059】
ここで、本発明者らが意図する具体的な形態を、例として記載する。以下の記載において、数字の詳細は、充分な理解のために示される。しかし、本発明が、これらの具体的な詳細に限定されないことは、当業者に明らかである。別の場合において、公知の方法及び構造は、記載を不必要にあいまいにしないために、記載されない。
【0060】
実施例1:材料及び方法
以下の材料及び方法を用いて、以下に記載するデータを得た。
株化細胞:パッケージング株化細胞293Tは、0.5 mg/mlのG418を含有する完全DMEM培地[すなわち、10% FBS、2 mM L-グルタミン、1 mMピルビン酸ナトリウム、ペニシリン(100 U/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)を補った高グルコースDMEM;Invitrogen Life Technologies]で維持した。HeLa、Vero、ヒトCD4T株化細胞CEMss、CHO及びMDCK株化細胞を、完全DMEM培地で維持した。ヒト上皮株化細胞HT29及びCaco-2を購入し、完全DMEM培地で維持した。
トランスファーベクター、パッケージングベクター及びコドン最適化H5HA、NA及びM2を発現するDNAプラスミド:トランスファーベクターpHR'CMV-Luc及びパッケージングベクターpCMVΔR8.2は、元来、Naldiniら(36)により開発された。H5N1鳥類インフルエンザ株A/Thailand/1(KAN-1)2004のコドン最適化されたH5HA、NA及びM2配列は、GCG Package (Genetic Computer Group, Inc. Madison, WI)を用いて決定し、以前に記載された(37)反復性(recursive) PCRにより作製し、pNGVL-3に由来する哺乳動物発現ベクターCMV/R (38)に挿入した。得られたプラスミド構築物は、それぞれCMV/R-H5HA、CMV/R-NA及びCMV/R-M2と命名した(図1A)。
【0061】
偽型の作製:HIV-1ベクターの偽型を作製するために、4.5×106 293Tパッケージング細胞を、14μg pHR'CMV-Luc、14μg pCMVΔR8.2、及びコドン最適化したH5HA (上記を参照)をコードする2μg DNAプラスミドに、コドン最適化NA及びM2をコードする、記載される量のDNAプラスミドを用いて又は用いずに、リン酸カルシウム沈殿法を用いて同時トランスフェクションさせた。対照として、293T細胞も、HIV-1-ルシフェラーゼトランスファーベクター及びVSV-GをコードするDNAプラスミドに同時トランスフェクションさせた。一晩のインキュベーションの後に、細胞をHBSSで1回洗浄し、100μM酪酸ナトリウムを補った10 mlの完全DMEMで培養した。8時間後に、細胞をHBSSで1回洗浄し、10 mlの完全DMEMで培養した。偽型含有上清を、16〜20時間で収集し、293FTパッケージング細胞の上清及び/又は細胞破砕物中のHIV-1 gag p24の量を、以前に記載されたようにして(39)、ELISAにより測定した。
【0062】
偽型の形質導入:偽型の形質導入効率を測定するための単サイクルアッセイにおいて、1×105 MDCK (ATCC CCL-34)、CEMss (Southwest Foundation for Biomedical Research, san Antonio, TexasのDr. Jon Allanより提供されたヒトCD4 T細胞株)、CHO (ATCC CRL-11398)、293T (ATCC CRL-1573)、HeLa (ATCC CCL-2)、Vero (ATCC CCL-81)、HT-29 (ATcc HTB-38)及びCaco2細胞(ATCC HTB-37)を、1μg/mlポリブレンの存在下に一晩、種々の量の偽型含有上清を用いて形質導入した。次いで、細胞をHBSSで2回洗浄し、完全DMEM培地で2日間培養した。細胞を、次いで、収集し、HBSS (フェノールレッドなし)で1回洗浄し、200μlのHBSS (フェノールレッドなし)に再懸濁した。50μlの細胞懸濁物中のルシフェラーゼ活性を、BrightGlo Luciferaseアッセイにより、製造者の使用説明(Promega)に従って測定した。
【0063】
H5HAをコードするプラスミドDNAを用いるマウスの免疫化:6週齢の雌性BALB/cマウス(1群あたり5匹のマウス)に、100 ugのCMV/RプラスミドDNA発現ベクター、CMV/R-HA、CMV/R-HA-mutant-1又はCMV/R-HA-mutant-2をそれぞれ、3週間隔で3回注射した(i.m.)。免疫前及び免疫後の血清を、1回目の免疫化の7日前及び3回目の免疫化の2週間後にそれぞれ採取した。抗H5HA抗体応答を、ELISA及び中和アッセイ(以下を参照)により決定した。
【0064】
FACS分析:H5HAの細胞表面発現を研究するために、1×106の模擬、H5HA、H5HA/NA、H5/M2及びH5HA/NA/M2をトランスフェクションさせた293 T細胞を、H5HAプラスミドDNAで免疫したマウス(上記を参照)からの血清と、40分間、氷上にてインキュベートした。次いで、細胞をFACSバッファー(1% BSA及び0.02% NaN3を含有するPBS)で2回洗浄し、FITC-コンジュゲートヤギ抗マウスIgG Abとともに、さらに40分間、氷上でインキュベートした。次いで、細胞を、FACSバッファーで2回洗浄し、0.5 mlのFACSバッファー中の1%ホルムアルデヒドで固定した。FACS分析を、FACScan (Becton Dickinson, Mountain View, CA)で行った。
【0065】
中和アッセイ:H5HA/NA/M2偽型の形質導入が、H5HAで免疫されたマウスに由来する血清により中和され得るかを決定する。100μlの上記のようにして作製されたH5HA/NA/M2及びVSV-G偽型を、熱不活化免疫前及び免疫後の血清サンプルの系列5倍希釈とともに又はなしで、1時間、37℃にてインキュベートした。混合物を、次いで、MDCK細胞に、24ウェルプレート中で加えた。一晩のインキュベーションの後に、ウイルスを含有する上清を除去し、新鮮な完全培地で置き換えた。形質導入効率を、形質導入後48時間で、上記のようにして、形質導入された細胞内でのルシフェラーゼ活性の量を測定することにより決定した。中和活性は、免疫前血清サンプルと比較した、それぞれの免疫後血清サンプルでの形質導入のパーセンテージ阻害(ルシフェラーゼ活性)として示す:%阻害 = [1−[免疫後血清サンプル中のルシフェラーゼ/免疫前血清サンプル中のルシフェラーゼ]]×100。力価は、50又は90%の阻害を与える血清の希釈の逆数として算出した(IC50又はIC90)。
【0066】
H5HA/NA/M2偽型の侵入の薬理学的阻害:H5HA/NA/M2偽型が受容体媒介エンドサイトーシスを介して細胞に侵入するかを決定するために、H5HA/NA/M2偽型の形質導入の前及び形質導入の間に、リソソーム栄養性(lysosomotropic)因子である塩化アンモニウム(NH4Cl)、及び空胞性H+-ATPアーゼ阻害剤であるバフィロマイシンA1 (BafA1) (Sigma, St. Louis, MO)を用いて細胞標的を処理した。BafA1の作業溶液を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製し、-20℃にて保存した。NH4Clのストック溶液を蒸留水中で調製し、0.22 umフィルタを通して滅菌した。
BafA1及びNH4Clの、H5HA/NA/M2偽型の侵入に対する影響を評価するために、ウェルあたり2×104 MDCK細胞を、24ウェルプレートに播種し、BafA1及びNH4Clの種々の記載した量を用いて又は用いずに1時間プレインキュベートし、その後、形質導入した。形質導入の間に、100 ulのH5HA/NA/M2偽型含有上清を各ウェルに加え、37℃にて、同じ薬剤の存在下に一晩インキュベートした。上清を、次いで、除去し、新鮮な完全培地で置き換えた。形質導入の48時間後に、細胞を収集し、形質導入された細胞でのルシフェラーゼ活性を、上記のようにして測定した。
【0067】
キメラH151 HA及びH515 HAの構築:キメラH151 HA及びH515 HAは、2つのHAタンパク質、特にH1HA (WSN) 配列番号3の72位及び294位の2つの保存されたシステイン残基の間でドメイン交換することにより作製した。キメラ分子H151 HAオープンリーディングフレームを作製するために、1回目及び2回目のPCR反応において、第1及び第3ドメインを、H1HA (WSN)オープンリーディングフレーム配列番号16を含有するプラスミドから単離した。3回目の反応において、第2ドメインを、H5 HA 2004 Thailandオープンリーディングフレーム配列番号17を含有するプラスミドからのPCRにより単離した。上記のPCR反応の全てのプールされた生成物を含有し、第1ドメインの最も外側の5'部分を認識してアニールするプライマーと、第3ドメインの最も外側の3'部分を認識してアニールするプライマーとを用いる最終反応において、最終反応を行い、全長PCR生成物を、ゲル精製により得て、DNAを配列決定して、これらが正しい生成物であり、正しいDNA配列を有することを確認した。H151 HAについての得られた核酸コード配列は、配列番号14であり、さらなる使用及び研究のために、上記のレンチウイルスベクターにサブクローニングした。PCRサイクル条件は、酵素及び用いた鋳型について標準的であり、プライマーは、標準的な技術を用いて設計した。
【0068】
キメラ分子H515 HAオープンリーディングフレームを作製するために、1回目及び2回目のPCR反応において、第1及び第3ドメインを、H5HA Thailandオープンリーディングフレーム配列番号17を含有するプラスミドから単離した。3回目の反応において、第2ドメインを、PCRにより、H1HA (WSN)オープンリーディングフレーム配列番号16を含有するプラスミドから単離した。上記のPCR反応の全てのプールされた生成物を含有し、第1ドメインの最も外側の5'部分を認識してアニールするプライマーと、第3ドメインの最も外側の3'部分を認識してアニールするプライマーとを用いる最後の反応において、最終反応を行い、全長PCR生成物をゲル精製により得て、DNAを配列決定して、これらが正しい生成物であることを確認した。H515 HAについての得られた核酸コーディング配列は、配列番号15であり、さらなる使用及び研究のために、上記のレンチウイルスベクターにサブクローニングした。
【0069】
実施例2:M2単独ではなくNAの同時トランスフェクションが、パッケージング細胞におけるH5HAの細胞表面発現を増進する。
NA又はM2をコードするDNAプラスミドの、H5HAの細胞表面発現に対する影響を決定するために、293 Tパッケージング細胞を、レンチウイルストランスファーベクターpHR'CMV-Luc及びパッケージングベクターpCMVΔR8.2及びH5HAをコードするDNAプラスミドに、NA又はM2をコードする種々の量のDNAプラスミドを用いて又は用いずにトランスフェクションさせた(図1A)。トランスフェクションの48時間後に、293 Tパッケージング細胞を、抗H5HA特異的免疫血清を用いて染色した。
FPV H7HAについての以前の報告とは対照的に(11)、NA及び/又はM2の同時形質導入なしでは、H5HA単独はパッケージング細胞の細胞表面上で発現し(図1A)、H5HA及びM2の同時トランスフェクションは、H5HAの細胞表面発現を増進しなかった(図1B)。
【0070】
H5HA及びNAの同時トランスフェクション、又はH5HA、NA及びM2の同時トランスフェクションは、H5HAの細胞表面発現を増進する。しかし、H5HA及びNAで同時トランスフェクションした細胞、並びにH5HA、NA及びM2で同時トランスフェクションした細胞における細胞でのH5HA発現のレベルはよく似ており、パッケージング細胞におけるH5HAの細胞表面発現を増進するのは、M2ではなくNAであることを示す(図1C及び1D)。
さらに、H5HA及びNAで同時トランスフェクションした細胞、並びにH5HA、NA及びM2で同時トランスフェクションした細胞から収集した上清は、よく似た量のp24を含有し、これはH5HA単独でトランスフェクションした細胞から収集した上清よりも約2倍高い。
【0071】
実施例3:M2単独ではなくNAの同時トランスフェクションが、H5HA偽型レンチウイルスベクターの形質導入効率を著しく増進する。
NA又はM2をコードするDNAプラスミドの同時トランスフェクションの、レンチウイルスベクターの形質導入効率に与える影響を決定するために、293FTパッケージング細胞を、HIV-1-ルシフェラーゼトランスファーベクター及びH5HAをコードするDNAプラスミドに、NA又はM2をコードする、種々の量のDNAプラスミドを用いて又は用いずにトランスフェクションさせた。組換え偽型を含有する上清を収集し、等量のHIV-1 gag p24を用いて、MDCK細胞に形質導入した。形質導入効率は、形質導入後48時間にて、相対的ルシフェラーゼ活性により測定した。
【0072】
図2Aに示すように、NA又はM2をコードするプラスミドDNAの同時トランスフェクションなしでは、非常に低いが測定可能な相対的ルシフェラーゼ活性(1,000を超えるRLA)が、H5HA単独偽型レンチウイルスベクターで検出された。しかし、NAをコードするプラスミドDNAの、H5HAとの同時トランスフェクションは、NA同時トランスフェクションされたプラスミドDNAの量に依存して、形質導入効率を著しく増大させた(RLAの範囲500,000〜7,000,000)。
最良の形質導入効率は、HA構築物とNA構築物との比率が4:1又は8:1のときに得られた。対照的に、種々の量のM2単独をコードするプラスミドDNAのH5HAとの同時トランスフェクションは、形質導入効率が全くなかった(RLAが100未満) (図2B)。実験は、5回以上繰り返し、同様の結果が得られた。よって、これらの結果は、M2ではなくNAのH5HAとの同時トランスフェクションが、H5HA偽型レンチウイルスベクターの形質導入効率を著しく(4 log近く)増進させることを明確に示した。
【0073】
実施例4: H5HA/NA偽型レンチウイルスベクターの形質導入効率に対するM2の影響。
本発明者らは、次に、H5HA及びNAの両方で同時トランスフェクションされたレンチウイルスベクターの形質導入効率に対するM2の影響を調べた。これを達成するために、293 Tパッケージング細胞に、最適比率(4:1)のH5HA及びNAを、種々の量のM2を用いて又は用いずに同時トランスフェクションした。組換え偽型を含有する上清を収集し、MDCK細胞を形質導入するために用いた。形質導入効率を、相対的ルシフェラーゼ活性により、形質導入の48時間後に測定した。
【0074】
図3は、種々の量のM2を同時トランスフェクションするか又はせずにH5HA/NA偽型を用いて形質導入したMDCK細胞のRLAを示す。H5HA及びNAの同時トランスフェクション(RLA 7,000,000)で偽型化したレンチウイルスベクターを用いて形質導入した細胞に比較して、M2の同時トランスフェクションは、穏やかな(約2〜3倍)の増加を、形質導入効率においてもたらした。さらに、本発明者らは、最適以下のH5HA及びNAの比率(1:1.25又は16:1)では、M2の同時トランスフェクションが、形質転換効率の最小限の増加又は減少さえももたらした(データ示さず)ことも見出した。よって、M2による穏やかな(2〜3倍)増加は、M2用量依存性であるだけでなく、H5HA及びNAの適切な比率にも依存するようである。さらに、この増加は、FPV H7HA、NA及びM2で偽型化された以前に報告されたレンチウイルスベクター(11)で見られた増加よりかなり低い。
【0075】
実施例5:H5HA/NA/M2偽型レンチウイルスベクターの宿主範囲。
本発明者らは、8つの異なる細胞株CHO、MDCK、293 T、HeLa、Vero、Caco2、HT29及びCEMssにおけるH5HA/NA/M2-及びVSV-G-偽型レンチウイルスベクターの形質導入効率も比較した。これを達成するために、細胞に、H5HA/NA/M2-又はVSV-G-偽型レンチウイルスベクター(10 ngのHIV-1 gag p24に等しい)のいずれかを含有する上清を、ポリブレンの存在下に形質導入した。形質導入の48時間後に、形質導入細胞におけるルシフェラーゼ活性を、上記のようにして測定した。
図4は、これらの8細胞株のそれぞれにおいて検出された相対的ルシフェラーゼ活性を示す。Vero細胞以外は、全てのその他の細胞株における形質導入効率は、VSV-G偽型で形質導入したときよりも、H5HA/NA/M2偽型で形質導入したときに、同等であるか又はより高い。
【0076】
実施例6:H5HA/NA/M2偽型レンチウイルスベクターの細胞侵入は、受容体媒介エンドサイトーシスを介する。
次に、H5HA/NA/M2偽型が、受容体媒介エンドサイトーシスを介して細胞に侵入するのかを決定した。これを達成するために、MDCK標的細胞を、種々の用量のバフィロマイシンA1又はNH4Clを用いて前処理した。バフィロマイシンA1はDMSOに溶解するので、MDCK標的細胞も、対照として同量のDMSOで前処理した。前処理の後に、細胞を、H5HA/NA/M2偽型を含有する上清で形質導入した。ルシフェラーゼ活性を、形質導入の48時間後に測定した。
図5は、バフィロマイシンA1又はNH4Clでの前処理を行うか又は行わなかったMDCK細胞で検出された相対的ルシフェラーゼ活性を示す。両方の前処理において、RLAは、用量依存的様式で減少した。細胞を10 nMバフィロマイシンA1で前処理することにより、形質導入効率が1 log減少した。細胞を50及び100 nMバフィロマイシンA1で前処理することにより、形質導入効率が2 log以上減少した(図5A)。細胞を1 MM NH4Clで前処理することにより、形質導入効率が50%減少した。細胞を10 MM NH4Clで前処理することにより、形質導入効率が1 log減少した(図5B)。よって、本発明者らは、5HA/NA/M2偽型が、受容体媒介エンドサイトーシスにより細胞に侵入すると決定した。
【0077】
実施例7:免疫前血清でなくH5HAに特異的な免疫血清が、H5HA/NA/M2偽型の細胞への侵入を中和する。
本発明者らは、H5HA/NA/M2偽型が、H5HA特異的抗体により中和され得るかを決定した。これを試験するために、H5HA/NA/M又はVSV-G偽型を含有する100μlの上清を、種々の希釈の免疫前又はH5HAに特異的な免疫後の血清(詳細は、材料及び方法を参照)と、37℃にて1時間インキュベートした。インキュベーションの後に、偽型及び血清の混合物を、形質導入のためにMDCK標的細胞に加えた。ルシフェラーゼ活性は、形質導入の48時間後に測定した。VSV-Gエンベロープは、細胞質膜の脂質二重層の脂質部分と相互作用するので、VSV-G偽型は、HAエンベロープと、そのシアル酸含有受容体との間の相互作用の要件を迂回して、細胞に侵入する。よって、これらは、陰性対照として用いた。免疫後血清サンプルの中和活性は、免疫前血清サンプルと比較した、免疫後サンプルの各希釈での形質導入のパーセンテージ阻害(ルシフェラーゼ活性)として示す:%阻害 = [1−[免疫後血清サンプル中のルシフェラーゼ/免疫前血清サンプル中のルシフェラーゼ]]×100。力価は、50又は90%の阻害を与える血清の血清希釈の逆数として算出した(IC50又はIC90)。
【0078】
図6は、H5HA変異体を含有するプラスミドDNA(材料及び方法を参照)を用いて免疫したマウスからのプールした免疫後血清サンプルの阻害のパーセントを示す。1/250倍希釈において、阻害はほぼ100%である。1/500希釈において、阻害は90%である。1/1000希釈において、阻害はほぼ62%である。1/2000希釈において、阻害は50%である。しかし、同じ希釈では、VSV-G偽型に対する阻害は検出されなかった(図6)。
【0079】
実施例8:H5HAのNAによる増進の機構についてのさらなる検討
NA増進の機構を調べるために、本発明者らは、外因性NA処理あり若しくはなしでH5HA単独でトランスフェクションしたか、又はH5HA/NAで同時トランスフェクションした細胞の間で、トランスフェクションされた細胞、濃縮上清及び偽粒子におけるHA及びHIV-1 gagタンパク質の量を比較した。
H5HAは、マルチ塩基切断部位を有するが、50%のHA0しかHA1及びHA2に切断されず、HA0、切断されたHA及びHIV-1 gagの量は、H5HA単独でトランスフェクションされたか、又はH5HA/NAで同時トランスフェクションされた細胞に関わらず、同様であった。図8の細胞溶解のパネルを参照。
【0080】
しかし、H5HA単独でトランスフェクションされた細胞よりも、H5HA/NAで同時トランスフェクションされた細胞の濃縮上清において、より多くの切断されたHA及びHIV-1 gagと、より少ないHA0とが検出された。図8の上清のパネルを参照。
さらに、H5HA単独でトランスフェクションされ外因性NAで処理された細胞によるよりも、H5HA/NAで同時トランスフェクションされた細胞により生成される偽粒子において、より多くのH5HAが検出されたことが見出された。図9を参照。
【0081】
よって、H5HA/NA偽型レンチウイルスベクターにおいては、同時トランスフェクションされたNAは、偽型の形質導入効率を増進するための2つの以前に知られていなかった機構を用いる:すなわち、切断されたH5HAを用いる偽型の優先的な放出と、偽粒子へのH5HAの取り込み量の増加。
【0082】
実施例9:新規な抗HA抗体中和活性アッセイ
抗HA抗体、免疫個体からの血清及び感染個体からの血清の中和活性を測定するための現在の標準的なアッセイは、1) ヘマグルチニン阻害(HI)アッセイ、及び2) マイクロ中和アッセイである。
HIアッセイは、抗体の真の中和活性を反映しないかもしれない代用のアッセイである。この試験は、ヘマグルチニンが赤血球(RBC)を凝集させて、ウイルスを同定するという原理を用いる。ヘマグルチニン抗原に対して作製した抗体を加えると、これらは、HA分子の抗原部位に結合し、HAとRBC上の受容体との間の結合を阻害する。よって、HAが存在する場合、抗体はHAに結合し、RBCの血球凝集を妨げる。
【0083】
マイクロ中和アッセイは、野生型ウイルス及び抗HA抗体の中和活性をより正確に測定する細胞ベースのアッセイを用いる。しかし、このアッセイの読み出しは、顕微鏡の下で観察される細胞変性効果(CPE)である。よって、これは主観的測定であり、定量し、かつサンプルとユーザとの間の再生可能な系を開発するのは困難である。さらに、このアッセイは、感染のために野生型ウイルスを用いるので、H5N1のような病原性が高いインフルエンザウイルスを用いる場合、生物有害物質の封鎖レベル3以上の実験室においてしか安全に行うことができない。
【0084】
よって、本発明者らは、本明細書に記載される研究に基づいて、抗HA抗体、免疫個体からの血清及び感染血清の中和活性を測定するために用いられる現在の方法を結局は置き換えると考えられる(このH5HA/NA偽型レンチウイルスベクターに基づく中和アッセイは、客観的で定量されたデータを与えるので)、新しいH5HA/NA偽型レンチウイルスベクターに基づく中和アッセイを開発することを目的とした。これは、野生型ウイルスの代わりに偽型を用いるので、生物有害物質の封鎖レベル2しか必要としない。
【0085】
これを達成するために、本発明者らは、H5HAの主要なサブクレードをカバーするH5HA/NA偽型のパネルを作製した。図10を参照。H5HA (サブクレード1.1)に対して特異的なマウス免疫血清及び感染したヒト個体からのH5N1 (サブクレード2.3)についての回復期のヒト血清を用いて、本発明者らは、並行して中和研究を行った。
本発明者らは、HIアッセイの中和力価を比較した。図11Aマイクロ中和アッセイ及び図11B、及び新しいH5HA/NA偽型に基づく中和アッセイ、図12を参照。
【0086】
この比較の結果は、偽型に基づく中和アッセイがマイクロ中和アッセイと同様の結果を示すだけでなく、はるかにより感度が高く(少なくとも2 log多く)及び定量可能でもあることを示した。
より重要なことには、本発明者らは、サブクレード1.1と2.3の間にはある程度の交差反応性が存在するが、同種サブクレードに対する中和力価は、異種のサブクレードよりもかなり高く、このことは、ワクチン接種されたか又は感染した個体の中和活性のいずれの血清学的調査のために、H5HAの全ての主要なサブクレードをカバーする偽型のパネルを用いることの重要性を強調する(図10及び12を参照)。
よって、本発明者らは、この新しいH5HA/NA偽型レンチウイルスベクターに基づく中和アッセイが、マイクロ中和アッセイよりも感度が高く、定量可能であることを明確に示した。さらに、この新しいアッセイにおいて用いる材料のために、これは、広い範囲の実験室において、より経験が少ない個人により安全に行うことができる。
【0087】
実施例10:抗ウイルス化合物についての新しいスクリーニング法におけるH5HA/NA偽型レンチウイルスの使用
本発明者らは、H5HA/NA偽型レンチウイルスベクターを、抗ウイルス剤をスクリーニングするための細胞に基づくアッセイを開発するためにも用いた。
HPLCによりある伝統的な中国の医薬品から単離された小化合物ライブラリーをスクリーニングするためにこのアッセイを用いて、約5μM (図13A及び13C)のEC50と、それぞれSI>25及び9.12を有する2つの化合物(1及び2)を同定した(図13を参照)。CC50は、50%毒性をもたらす化合物の用量である。EC50は、ウイルス形質導入又は感染の50%阻害をもたらす化合物の用量である。SI、すなわち安全指標は、次のようにして算出した:SI = CC50/EC50。通常、高いSIを有する化合物はより安全(細胞毒性が低い)である。同様に重要であるが、アッセイ開発の間に、本発明者らは、形質導入、細胞培養及び単一ウェル内でのルシフェラーゼ活性の測定を組み合わせることにより、96ウェルフォーマットでのアッセイ工程を合理化することにも成功した。
【0088】
実施例11:さらなるウイルス偽型
本発明者らは、上記の主要なH5HAサブクレードに加えて、HA/NA偽型のパネルを拡張し続け、また、H1HA、H2HA及びH7HAを発現するHA/NA偽型を作製した。さらに、本発明者らは、H1HAとH5HAとのキメラHAも作製し(表1)、これらが生物学的活性及び高い免疫原性を有することを証明した。
キメラHAを発現するこれらの新しい偽型は、HA分子の抗原性及び免疫原性を詳細に吟味するための非常に有用なツールであり、これは、次いで、新しくよりよいワクチン候補を開発することを導く。
【0089】
【表1】

【0090】
表Iにおいて、Thは、A/Thailand/(KAN-1)/2004 H5N1鳥類インフルエンザ株に由来するタンパク質に関する。
表Iは、H1HA/N1NA、H5HA/N1NA、キメラH151HA/N1NA又はキメラH515HA/N1NAを発現する偽型を形質導入したMDCK細胞の相対的ルシフェラーゼ活性を示す。キメラペプチドH151HA (配列番号12)及びキメラペプチドH515HA (配列番号13)は、H1HA (配列番号3)とH5HA (配列番号4)との間で、配列番号3の72位と294位に位置する保存システイン残基間でドメイン交換を行うことにより構築した。よって、H151HA (配列番号12)は、H1HA(配列番号3)からの1-72残基、H5HA (配列番号4)からの72-293残基、及びH1HA(配列番号3)の295-569残基を含む。同様に、H515HA (配列番号13)は、H5HA (配列番号4)からの1-71残基、H1HA (配列番号3)からの73-294残基、及びH5HA (配列番号4)の294-568残基を含む。同様に、2つ以上のHAタンパク質ドメインの部分の別の組み合わせは、保存残基間のドメインを交換することにより創出できる。図14及び15として本明細書に開示されるHA及びNAタンパク質のアラインメントを参照にして、これらの2つのタンパク質全体に広がるいくつかの保存残基を示す。これらの種々のHA及びNAタンパク質の完全ペプチド配列と一緒に、このことは、これらのタンパク質からのドメインの種々の組み合わせを用いて、新しいキメラ形を創出することについての基礎を提供する。
【0091】
【表2−1】

【0092】
【表2−2】

【0093】
【表2−3】

【0094】
【表2−4】

【0095】
【表2−5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザHAタンパク質、又はHAエピトープ若しくはHA細胞接着性リガンドを含むHAタンパク質フラグメントを含むタンパク質
で偽型化され、該HAタンパク質が家禽ペストウイルスH7HAでない、レンチウイルスベクター。
【請求項2】
前記HAタンパク質が、H1、H2、H5及びH7からなる群より選択される請求項1に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項3】
前記HAタンパク質が、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号12、配列番号13からなる群より選択される請求項1又は2に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項4】
NAをさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項5】
H5N1鳥類インフルエンザ株からのNAをさらに含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項6】
前記NAが、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11からなる群より選択される請求項4又は5に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項7】
NA及びM2をさらに含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項8】
導入遺伝子をさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項9】
HAを発現するポリヌクレオチドが、標的又は宿主細胞についてコドン最適化されている請求項1〜8のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項10】
HA及びNA、並びに存在する場合にM2を発現するポリヌクレオチドが、標的又は宿主細胞についてコドン最適化されている請求項1〜9のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項11】
前記HAタンパク質が、異なるHAホモログからの少なくとも2つの部分からなる請求項1〜10のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項12】
前記NAタンパク質が、異なるNAホモログからの少なくとも2つの部分からなる請求項3〜10のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクターと、医薬的に許容される賦形剤、担体及び/又は免疫学的アジュバントとを含む組成物。
【請求項14】
HAを発現する少なくとも1つのパッケージングベクターと、
生成及びパッケージング配列と、Gag及びPolレンチウイルスタンパク質を発現する配列と、任意に導入遺伝子とを含むトランスファーベクター構築物と
を含み、前記HAタンパク質がH7HAでない、レンチウイルスベクターパッケージングシステム。
【請求項15】
HAを発現する少なくとも1つのパッケージングベクターと、
Gag及びPolレンチウイルスタンパク質を発現するヘルパー構築物と、
生成及びパッケージング配列と、任意に導入遺伝子とを含むトランスファーベクター構築物と
を含み、前記HAタンパク質がH7HAでない、レンチウイルスベクターパッケージングシステム。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクターを、対象に、前記ベクターに対する免疫応答を誘導するのに充分な量で投与することを含む、免疫応答を誘導する方法。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクターを、抗体と、前記抗体がレンチウイルスベクターと結合するために適切な時間及び条件の下で接触させ、
前記レンチウイルスベクターが、宿主細胞に結合又は感染する能力に対する前記接触の影響を決定する
ことを含む、中和抗体を同定する方法。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクターでトランスフェクションされた標的又は宿主細胞。
【請求項19】
請求項18に記載の標的又は宿主細胞と、医薬的に許容される賦形剤、担体及び/又は免疫学的アジュバントとを含む組成物。
【請求項20】
請求項8に記載のレンチウイルスベクターでトランスフェクションされ、前記導入遺伝子が細胞の染色体DNAに組み込まれている標的又は宿主細胞。
【請求項21】
細胞を、請求項8に記載のレンチウイルスベクターと、形質導入に充分な時間及び条件の下で接触させることを含む、細胞にポリヌクレオチド配列又は導入遺伝子を形質導入する方法。
【請求項22】
細胞を、候補分子及び請求項1〜12のいずれか1項に記載の偽型レンチウイルスと接触させ、
前記候補分子が、細胞へのウイルスの結合を調節する能力、又は細胞のウイルス感染を阻害する能力を決定する
ことを含む、細胞へのウイルスの結合を調節する分子又は細胞のウイルス感染を調節する分子を同定する方法。
【請求項23】
前記分子が、非タンパク質薬物である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記分子が、抗体でないペプチド又はポリペプチドである請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記分子が抗体である請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記分子が、炭水化物又は脂質を含む請求項22に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの標的細胞にトランスフェクションするために請求項8に記載のレンチウイルスベクターを用いる方法であって、前記HA、NA及びM2が、8:2:1の比率で用いられる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図14−3】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−514439(P2010−514439A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543569(P2009−543569)
【出願日】平成20年1月2日(2008.1.2)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001097
【国際公開番号】WO2008/087563
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509181839)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR OF SHANGHAI
【住所又は居所原語表記】225 South Chongqing Road, Shanghai, 200025, Republic of China
【Fターム(参考)】