説明

インフルエンザ赤血球凝集素およびノイラミニダーゼ変異体

インフルエンザ赤血球凝集素およびノイラミニダーゼ変異体を含むポリペプチド、ポリヌクレオチド、再集合体ウイルス、免疫原性組成物およびワクチンならびにそれらを使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インフルエンザの様々な株および進化株に対するワクチンは、地域の保健および商業的な観点から重要であり、その理由は、毎年非常に多くの人々が、異なる株および種類のインフルエンザウイルスに感染しているためである。幼児、高齢者、十分な健康管理を受けられない幼児や高齢者、および免疫系に欠陥のある人々は、このような感染によって死亡する非常に高い危険にある。インフルエンザ感染の問題を悪化させているのは、新規インフルエンザ株が容易に進化し、様々な種間で蔓延することが可能であり、そのために、新規ワクチンを継続的に製造せざるを得ないということである。
【0002】
かかる種々のインフルエンザウイルス/ウイルス株に特異的な防御免疫応答を生じさせることが可能である非常に多くのワクチンが、50年以上にわたって製造されており、かかるワクチンとしては、完全ウイルスワクチン、スプリットウイルスワクチン、表面抗原ワクチンおよび生弱毒性ウイルスワクチンが挙げられる。しかし、これらワクチン型のいずれかの適切な製剤が、全身性免疫応答を生じさせることが可能である一方で、生弱毒性ウイルスワクチンは、気道における局所的な粘膜免疫系を刺激できるという利点を有する。ワクチンを製造するために、インフルエンザウイルス、およびその断片を製造することにおけるかなりの作業が、本願発明者らおよびその同僚らによってなされた(例えば、米国特許出願第60/420,708号(2002年10月23日出願)、米国特許出願第60/574,117号(2004年5月24日出願、米国特許出願第10/423,828号(2003年4月25日出願); 米国特許出願第60/578,962号(2004年6月12日出願); および米国特許出願第10/870,690号(2004年6月16日出願)を参照のこと。なおこれらの開示は、本明細書中に参考として援用される)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
異なるインフルエンザ株の継続的な出現(または再出現)のために、新しいインフルエンザワクチンが絶えず望まれる。このようなワクチンは一般的に、新たに出現したウイルス株の抗原性部分を用いて製造されており、よって、新規、新たに出現したか、または新たに再出現したウイルス株のポリペプチドおよびポリヌクレオチド(とりわけ、抗原性遺伝子の配列)が、非常に望まれる。
【0004】
本発明は、新規および/または新たに単離したインフルエンザの赤血球凝集素ならびにノイラミニダーゼ変異体を、提供し、これらは、非常に多くの型のワクチンを製造すること、および研究、診断などに用いることができ、以下の説明より、非常に多くの他の利点が、明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本明細書におけるいくつかの態様では、本発明は以下から選択される単離されたまたは組換えポリペプチドを含む:配列番号1, 3, 5, 7、配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728のいずれかによりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
配列番号 2, 4, 6, 8、配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340, および配列番号6の残基341-562のいずれかのアミノ酸配列を含むポリペプチド;
配列番号1, 3, 5, 7、配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728のオープンリーディングフレームのいずれかによりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
任意の代替物(例えば、シグナルペプチドを有しない成熟形態、またはウイルス(例えば、インフルエンザ)の表面に存在するポリペプチド)という形態のポリペプチドであって、配列番号 2, 4, 6, 8、配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、配列番号6の残基341-562のいずれかのアミノ酸配列を含むもの;
配列番号1, 3, 5, 7、配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの全長に渡り実質的に、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされる任意のポリペプチド;
配列番号1, 3, 5, 7、配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728から選択されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドに、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされる任意のポリペプチド;
ならびに、上記のいずれかの断片であって該配列が赤血球凝集素もしくはノイラミニダーゼポリペプチドまたは赤血球凝集素もしくはノイラミニダーゼポリペプチドの断片を含むもの。ある実施形態において、かかるポリペプチド断片は、本発明の全長ポリペプチドの特異的に結合する抗体を生じる。様々な実施形態において、本発明の単離されたまたは組換えポリペプチドは実質的に、上記ポリペプチドのいずれかの連続した約300個のアミノ酸残基と同一である。また別の実施形態において、本発明は、上記ポリペプチドのいずれかにおける、少なくとも約350個、少なくとも約400個、少なくとも約450個、少なくとも約500個、少なくとも約520個、少なくとも約550個、少なくとも約559個、少なくとも約565個、または少なくとも約566個の連続したアミノ酸にわたって実質的に同一であるアミノ酸配列を含む単離されたまたは組換えポリペプチドを含む。一部の実施形態において、ポリペプチド配列(例えば、本明細書において「配列表」として列挙しているもの)は、565, 559、等未満のアミノ酸を含む。かかる実施形態において、より短い列挙されたポリペプチドは、場合により565, 559等未満のアミノ酸を含みうる。他の実施形態において、本発明のポリペプチド(例えば、配列番号 2, 4, 6, 8、配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562) は場合により、融合タンパク質、リーダー配列を有するタンパク質、前駆体ポリペプチド、分泌シグナルもしくは局在化シグナルを有するタンパク質、またはエピトープタグ、EタグもしくはHisエピトープタグを有するタンパク質を含む。さらなる実施形態において、本発明は、配列番号 2, 4, 6, 8、配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと、少なくとも85%, 少なくとも90%, 少なくとも93%, 少なくとも95%, 少なくとも98%, 少なくとも98.5%, 少なくとも99%, 少なくとも99.2%, 少なくとも99.4%, 少なくとも99.6%, 少なくとも99.8%, または少なくとも99.
9%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを包含する。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号 2, 4, 6, 8、配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340または配列番号6の341-562のいずれかと、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, または50アミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を含む。本発明の赤血球凝集素配列は、未改変および改変した多塩基性切断部位を有する両配列を含むことができる(これにより卵中でウイルスの増殖を可能とする)。配列番号2および6の赤血球凝集素ポリペプチド配列は、内在性アミノ末端シグナルペプチド配列を有するが、本発明の赤血球凝集素ポリペプチド配列は、赤血球凝集素ポリペプチドの成熟形態(アミノ末端シグナルペプチドが切断されたもの)をも含む。任意のインフルエンザ株のあらゆる赤血球凝集素ポリペプチド配列の切断部位を慣用的に当技術分野の任意の数の方法を用いて調べるかまたは予測することができる。
【0006】
別の態様において、本発明は、上記に列挙したポリペプチドまたはその断片を1または複数含む組成物を含む。本発明はまた、上記アミノ酸配列の少なくとも1つを含む少なくとも1個の抗原に対して惹起されたポリクローナル抗血清により特異的に結合されるポリペプチドまたはその断片を包含する。上記ポリペプチドに特異的なこのような抗体もまた、本発明の特徴である。一の実施形態において、本発明のポリペプチドは免疫原性である。
【0007】
本発明はまた、免疫学的有効量の1以上の上記ポリペプチド(例えば、配列番号 2, 4, 6, 8、配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340および配列番号6の残基341-562)のいずれか1以上を含む免疫原性組成物、ならびに、生理学的に許容可能な担体中の免疫学的有効量の1以上の上記ポリペプチドのいずれかを個体に投与することを含む、当該個体の免疫系を刺激して、インフルエンザウイルスに対する防御免疫応答を生じさせる方法を含む。
【0008】
さらに、本発明は、上記ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを1以上を含む再集合体インフルエンザウイルスを含み、これに加え、かかる再集合体インフルエンザウイルスを免疫学的有効量含む免疫原性組成物を包含する。生理学的に許容可能な担体中の免疫学的有効量のかかる再集合体インフルエンザウイルスを投与することを含む、個体の免疫系を刺激してインフルエンザウイルスに対する防御免疫応答を生じさせる方法もまた、本発明の一部である。
【0009】
他の実施形態において、本発明は以下から選択される単離されたまたは組換えポリヌクレオチド、すなわち配列番号1, 3, 5, 7、配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728またはそれらの相補的配列のいずれかのヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、配列番号 2, 4, 6, 8、配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340および配列番号6の残基341-562から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその相補的ヌクレオチド配列、高度にストリンジェントな条件下で、上記いずれかのポリヌクレオチド配列の実質的に全長にわたってハイブリダイズするポリヌクレオチド配列、ならびに上記ヌクレオチド配列のいずれかの全体または断片を含むポリヌクレオチド(かかる配列は、赤血球凝集素もしくはノイラミニダーゼポリペプチドまたは赤血球凝集素もしくはノイラミニダーゼポリペプチドの断片をコードするものである)を含む。本発明はまた、上記ポリヌクレオチドによりコードされる任意のポリペプチドと少なくとも約300アミノ酸にわたり、または少なくとも約350アミノ酸にわたり、少なくとも約400アミノ酸にわたり、少なくとも約450アミノ酸にわたり、少なくとも約500アミノ酸にわたり、少なくとも約502アミノ酸にわたり、少なくとも約550アミノ酸にわたり、少なくとも約559アミノ酸にわたり、少なくとも約565アミノ酸にわたり、または少なくとも約566アミノ酸にわたり、実質的に同一であるアミノ酸配列をコードする単離されたまたは組換えポリヌクレオチドを含む。アミノ酸が長さにして例えば、566, 565, 559等(例えば「配列」を参照のこと)未満である場合には、長さは場合により566, 565, 559等未満であると理解されたい。本発明はまた、赤血球凝集素もしくはノイラミニダーゼポリペプチドまたは赤血球凝集素もしくはノイラミニダーゼポリペプチドの1以上の断片をコードするヌクレオチド配列を含む任意の上記ポリヌクレオチド包含する。本発明の他の態様は、ポリペプチド(例えば赤血球凝集素またはノイラミニダーゼのポリペプチド)をコードする単離または組換えポリヌクレオチドを含み、かかるポリペプチドの配列は、上記ポリペプチドの少なくとも1つに対して、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.2%、少なくとも99.4%、少なくとも99.6%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%の同一性を有する。本発明はまた、赤血球凝集素またはノイラミニダーゼのポリペプチドをコードする単離または組換えポリヌクレオチドを含み、かかるポリヌクレオチドは、上記ポリヌクレオチドの1または複数個を変異させるまたは組み換えることによって製造される。一の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、1以上の例えばリーダー配列、前駆体配列、またはエピトープタグ配列などをコードするヌクレオチド配列を1または複数個含むことができ、場合によって融合タンパク質をコードすることができる。
【0010】
また別の実施形態において、本発明は、上記ポリヌクレオチドを2またはそれ以上有する物質からなる組成物(例えば、少なくとも約2、5、10、50またはそれ以上のポリヌクレオチドを含むライブラリー)を含む。このような組成物は場合によって、1または複数個の上記ポリヌクレオチドを(例えば、機械的に、化学的に、制限酵素/RNAse/DNAseなどを用いて酵素的に)切断することによって製造することができる。本発明の他の組成物としては、例えばデオキシリボヌクレオチド三リン酸および熱安定性ポリヌクレオチドポリメラーゼの存在下で、1または複数個の上記ポリヌクレオチドをインキュベートすることによって製造される組成物が挙げられる。
【0011】
本発明はまた少なくとも1つの上記ポリヌクレオチド、またはその切断もしくは増幅された断片を含む細胞を包含する。かかる細胞は、場合により、かかるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを発現しうる。本発明の他の実施形態は、上記ポリヌクレオチドのいずれかを含むベクター(例えばプラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、ウイルス断片等)を含む。かかるベクターは場合により発現ベクターを含みうる。本発明の好ましい発現ベクターとしては、限定するものではないが、pol Iプロモーターおよびターミネーター配列またはpol Iおよびpol IIプロモーターの両方を用いるベクター、「いわゆるpolI/polIIプロモーターシステム」 (例えば、Zobel et al., Nucl. Acids Res. 1993, 21:3607; US20020164770; Neumann et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96:9345; Fodor et al., J. Virol. 1999, 73:9679; および US20030035814)を含むベクターが挙げられる。かかるベクターにより形質導入された細胞もまた本発明の範囲内にある。
【0012】
一部の実施形態において、本発明は、1以上の上記ポリヌクレオチド(例えば、赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼをコードするもの)または1以上のその断片を含むウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)を包含する。かかるウイルスを含む免疫原性組成物もまた本発明の一部である。かかるウイルスは、1以上の上記ポリヌクレオチド(または1以上のその断片)を含む再集合体ウイルス、例えば6:2再集合体ウイルス(例えば、1以上のドナーウイルス由来の6つの内部ゲノムセグメント及び2つのゲノムセグメント(例えば、HAまたはNAゲノムセグメント)を有するもの)を含みうる。一の実施形態において、ゲノムセグメントは、本発明の赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼポリペプチドをコードし得る。一の実施形態において、本発明の再集合体ウイルスは生ウイルスである。別の実施形態において、本発明の再集合体ウイルスは、温度感受性(ts)、低温適合化 (ca)または弱毒化(att)ウイルスである。一の実施形態において、本発明の再集合体ウイルスは、ドナーウイルスの少なくとも1, 少なくとも2, 少なくとも3, 少なくとも4, 少なくとも5または6つの内部ゲノムセグメント(例えば、A/Ann Arbor/6/60, PR8, etc)を含む。別の実施形態において、本発明の再集合体ウイルスは、A/Ann Arbor/6/60以外のドナーウイルスの少なくとも1, 少なくとも2, 少なくとも3, 少なくとも4, 少なくとも5または6の内部ゲノムセグメントを含む。本発明の一の好ましい実施形態は再集合体インフルエンザウイルスであり、ここで該ウイルスは6:2再集合体インフルエンザウイルスであり、A/Ann Arbor/6/60由来の6つの内部ゲノムセグメントおよび配列番号2, 4, 6, 8、配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562のポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする2つのゲノムセグメントを含む。別の実施形態において、本発明の再集合体インフルエンザウイルスは、6:2 再集合体インフルエンザウイルスを含み、ここで前記ウイルスはA/Ann Arbor/6/60以外の1以上のドナーウイルス由来の6つの内部ゲノムセグメントおよび配列番号2, 4, 6, 8、配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、及び配列番号6の残基341-562のポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドをコードする2つのゲノムセグメントを含む。別の代替的な実施形態において、本発明の再集合体インフルエンザウイルスには6:2 再集合体インフルエンザウイルスが含まれ、ここで前記ウイルスはA/Ann Arbor/6/60以外の1以上のドナーウイルス由来の6つの内部ゲノムセグメントおよび2つのゲノムセグメントを含み、このとき該2つのゲノムセグメントは任意の流行インフルエンザウイルス由来のHAおよび/またはNAポリペプチドをコードするものである。再集合体インフルエンザウイルスの複製を可能とする条件下で適当な媒体で、インフルエンザウイルスを抱えている宿主細胞を培養すること、および該再集合体インフルエンザウイルスを1以上の該宿主細胞または該媒体から単離することによる再集合体インフルエンザウイルスの製造方法もまた本発明の一部である。
【0013】
本明細書における他の実施形態では、本発明は免疫学的に有効な量の任意の上記再集合体インフルエンザウイルスを有する免疫原性組成物を含む。他の実施形態としては、個体に免疫学的に有効な量の任意の上記再集合体インフルエンザウイルス(場合により生理学的に効果的な担体中にあるもの)を投与することによる、インフルエンザウイルスに対する防御的な免疫応答を生じさせるための該個体の免疫系を刺激する方法が挙げられる。
【0014】
本発明の他の態様としては、任意の上記宿主細胞を該ポリペプチドの発現を可能にする条件下で適当な培地中で培養すること、および1以上の該宿主細胞または該細胞を増殖させた培地から該ポリペプチドを単離することを含む単離されたまたは組換えポリペプチドの製造方法が挙げられる。
【0015】
免疫原性組成物もまた本発明の態様である。例えば、1以上の任意の上記ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドならびに場合により製薬上許容可能な賦形剤のような賦形剤または1以上の製薬上許容可能な成分を含む免疫原性組成物がある。本発明の免疫原性組成物はまた、任意の1以上の上記ウイルスを(例えば、1以上の製薬上許容可能な投与成分と共に)含み得る。
【0016】
被験体に効果的な量の任意の上記ウイルス(または免疫原性組成物)を投与することによる該被験体における免疫原性応答を生じさせる方法もまた本発明の範囲内にある。さらに、任意の1以上の上記ウイルス(免疫原性組成物)の、ウイルス感染に対する免疫原性応答を生じるのに効果的な量での投与による被験体におけるウイルス感染(例えば、ウイルス性インフルエンザ)の予防的または治療的処置方法もまた本発明の一部である。かかる処置の被験体としては、限定するものではないが、鳥類(例えば、家禽) および哺乳動物 (例えばヒト)が含まれる。かかる方法はまた、被験体へのin vivo 投与ならびに被験体の1以上の細胞へのin vitro またはex vivo 投与を含みうる。さらに、かかる方法はまた、ウイルスの組成物および製薬上許容可能な賦形剤の投与であって、これらが該被験体においてウイルス感染を予防的にまたは治療的に処置するのに効果的な量で投与されることを含み得る。
【0017】
他の態様において、本発明には1以上の流行インフルエンザ株の赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列およびA/Ann Arbor/6/60の1以上のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組成物が含まれる。さらに、本発明には、1以上の流行インフルエンザ株の赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列およびPR8, A/Leningrad/17またはA/Ann Arbor/6/60の1以上のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組成物が含まれる。かかる配列は本明細書において「配列表」に列記されているものを含みうる。さらに、本発明の好ましい実施形態としては、1以上の流行インフルエンザ株の赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼをコードする配列および選択された骨格株をコードするヌクレオチド配列を6:2再集合体として含む組成物が挙げられる。かかる組成物は好ましくは本明細書の「配列表」から選択される赤血球凝集素およびノイラミニダーゼおよび骨格株(ここで該骨格株はPR8, A/LENINGRAD/17または A/Ann Arbor/6/60である)をコードする配列を含む。本発明はまた、赤血球凝集素が改変された多塩基性切断部位を含む、上記組成物を含む。本発明はまた、かかる上記組成物を含む、生弱毒化インフルエンザワクチンを含む。
【0018】
これらおよび本発明の他の目的と構成は、図面および請求の範囲とあわせて、下記の詳細な説明を読むことにより、さらに完全に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】種々の示されたH2ワクチンウイルスでワクチン接種されたフェレットの肺におけるH2野生型チャレンジウイルスの複製。力価は左右の肺の平均を示す。
【図2】種々の示されたH2ワクチンウイルスでワクチン接種されたフェレットのNTにおけるH2野生型チャレンジウイルスの複製。
【図3】種々の示されたH2ワクチンウイルスでワクチン接種されたマウスの肺におけるH2野生型チャレンジウイルスの複製。
【図4】種々の示されたH2ワクチンウイルスでワクチン接種されたマウスのNTにおけるH2野生型チャレンジウイルスの複製。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、インフルエンザ赤血球凝集素とノイラミニダーゼのポリペプチドおよびポリヌクレオチド、ならびにかかるポリペプチドおよびポリヌクレオチドを含むベクター、組成物、再集合体インフルエンザウイルス等およびそれらの使用方法を含む。本発明のさらなる特徴は、本明細書中により詳細に記載される。
【0021】
定義
特に断りのない限り、本明細書中に用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同様の意味を有する。以下の定義は、当該分野におけるそれらの意味を補足し、本発明に対して与えられ、関連する件または無関係の件(例えば、一般に所有される特許または特許出願)にまで及ぶべきものではない。本明細書中に記載されるものと同様か、または類似する方法および材料を、本発明を試験するために用いることができるが、好ましい方法および材料が、本明細書中に記載される。従って、本明細書中で用いられる専門用語は、特定の実施形態のみを記載するためのものであり、限定することを意図しない。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から他の意味が明確に示されない限り、複数のものを含む。したがって、例えば、「ウイルス(a virus)」とは、複数のウイルスを含み、「宿主細胞(a host cell)」とは、宿主細胞の混合物などを含む。
【0023】
「再集合体(reassortant)」という用語は、ウイルスについていう場合、ウイルスが、2以上の親ウイルス株または供給源に由来する、遺伝子成分および/またはポリペプチド成分を含むことを示す。例えば、7:1再集合体は、第1ウイルス由来の7つのウイルスゲノムセグメント (または遺伝子セグメント)、および単一の補完的ウイルスゲノムセグメント、例えば、本発明の赤血球凝集素またはノイラミニダーゼをコードするセグメント、を含む。6:2再集合体は6つのゲノムセグメント、例えば、第1ウイルス由来の6つの内部ゲノムセグメント、および2つの補完的ゲノムセグメント、すなわち第2ウイルスまたは第2および第3ウイルス由来の赤血球凝集素およびノイラミニダーゼコート化ゲノムセグメントを含む。
【0024】
「宿主細胞」という用語は、異種ポリヌクレオチド(例えばベクター)を含み、該ポリヌクレオチドの複製および/または発現を支持する細胞を意味する。宿主細胞は、原核細胞(例えばE. coli)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫、両生類、トリまたは哺乳動物の細胞(ヒト細胞を含む))でありうる。一の実施形態において、宿主細胞は、限定するものではないが、Vero(アフリカミドリザルの腎臓)細胞、BHK(ベビーハムスター腎)細胞、ニワトリ初代腎(PCK)細胞、イヌ腎臓由来(Madin-Darby Canine Kidney:MDCK)細胞、ウシ腎臓由来(Madin-Darby Bovine Kidney:MDBK)細胞、293細胞(例えば、293T細胞)およびCOS細胞(例えば、COS1細胞、COS7細胞)でありうる。
【0025】
「免疫学的有効量」のインフルエンザウイルスとは、後に起こるインフルエンザウイルスへの曝露に対する、個体(例えば、ヒト)自体の免疫応答を増強するのに十分な量である。誘発された免疫レベルは、分泌性抗体および/または血清抗体を中和する量を測定すること(プラーク中和検定、補体結合検定、酵素結合免疫吸着検定またはマイクロ中和検定)によってモニタリングすることができる。
【0026】
インフルエンザウイルスに対する「防御免疫応答」とは、個体が後にかかるインフルエンザウイルスなどに曝されたり、および/または感染された場合、疾患から防御する、個体(例えば、ヒト)が示す免疫応答をいう。いくつかの実例において、(例えば、天然に蔓延している)インフルエンザウイルスはさらに、感染を生じうるが、深刻な感染を生じ得ない。一般的に、防御免疫応答は、検出可能なレベルの宿主で生じた血清および分泌性抗体を生じ、かかる抗体は、同一株および/またはサブグループ(ならびにおそらく異なる、非ワクチン株および/またはサブグループ)のウイルスを、in vitroおよびin vivoにて中和することができる。
【0027】
本明細書中で用いられる「抗体」とは、1または複数のポリペプチドを含むタンパク質であり、かかるポリペプチドは、実質的にまたは部分的に、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片にコードされる。認識される免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμの定常領域遺伝子、ならびに多種多様の免疫グロブリンの可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεに分類され、それらはその後、免疫グロブリンのクラスであるIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEにそれぞれ定義された。一般的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一ポリペプチド鎖対からなり、各対は、1つの「軽」鎖(約25 kD)と1つの「重」鎖(約50〜70 kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100〜110 個またはそれ以上のアミノ酸からなる可変領域を規定する。可変型軽鎖(VL)および可変型重鎖(VH)という用語は、これらの軽鎖および重鎖をそれぞれいう。抗体は、完全な免疫グロブリンとして、または様々なペプチダーゼで消化されて製造された、複数の充分に特徴付けされた断片として存在する。従って、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合以下の抗体を消化し、F(ab)'2を製造する。F(ab)'2はFabの二量体であり、それ自体は、ジスルフィド結合によってVH-CH1に結合した軽鎖である。F(ab)'2を、穏和な条件下で還元して、ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、それによって、(Fab')2二量体をFab'単量体に変えることができる。Fab' 単量体は本質的に、ヒンジ領域の一部を伴うFabである(他の抗体断片についてのより詳細な説明については、Fundamental Immunology, W.E. Paul(編) Raven Press, N.Y.(1999)を参照のこと)。様々な抗体断片は、完全な抗体の消化に関して規定されるが、当業者は、このようなFab' 断片が、化学的に、または組換えDNA方法を用いて、新規に(de novo)合成できることがわかる。従って、本明細書中で用いられる場合、抗体という用語は、抗体または断片を含み、これらは、完全な抗体の改変によって製造されるか、または組換えDNA方法用いてde novoで合成される。抗体としては、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重鎖抗体、または一本鎖抗体(一本鎖 Fv(sFvまたはscFv)抗体を含み、この可変重鎖および可変軽鎖は、(直接的にまたはペプチドリンカーを介して)共に結合し、連続したポリペプチドを形成する)、およびヒト化抗体またはキメラ抗体を含む。
【0028】
インフルエンザウイルス
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチド、例えば、配列番号 1-8は、インフルエンザのHA配列およびNA配列の変異体である。一般的に、インフルエンザウイルスは、セグメント化された一本鎖RNAゲノムを含む内部リボヌクレオタンパク質核とマトリックスタンパク質で裏打ちされた外側のリポタンパク質エンベロープとからなる。インフルエンザウイルスのゲノムは、8個のゲノムセグメントからなる直鎖(−)リボ核酸(RNA)からなり、かかる核酸は、免疫原性赤血球凝集素(HA)タンパク質とノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、ならびに6個の内部核ポリペプチド(ヌクレオカプシド核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質(M)、非構造タンパク質(NS)および3個のRNAポリメラーゼ(PA、PB1、PB2)タンパク質)をコードする。複製の進行中に、ゲノムウイルスRNAは、宿主細胞の核内で(+)鎖メッセンジャー RNAと、(−)鎖ゲノムcRNAに転写される。8個のゲノムセグメントの各々は、リボヌクレオタンパク質複合体に包装され、かかる複合体は、RNAに加えて、NPとポリメラーゼの複合体(PB1、PB2およびPA)を含有する。
【0029】
インフルエンザは一般的に、インフルエンザAとインフルエンザBカテゴリに分類される。インフルエンザ AウイルスとインフルエンザBウイルスはそれぞれ、8個のセグメンからなる陰極性を有する一本鎖RNAを含む。インフルエンザAゲノムは、11個のポリペプチドをコードする。セグメント1〜3は、3個のポリペプチドをコードし、これらのポリペプチドは、RNA依存性RNAポリメラーゼを構成する。セグメント1は、ポリメラーゼ複合体タンパク質PB2をコードする。他のポリメラーゼタンパク質PB1およびPAは、それぞれ、セグメント2およびセグメント3によってコードされる。さらに、いくつかのインフルエンザ株のセグメント1は、小タンパク質PB1-F2をコードし、かかるタンパク質は、PB1コード領域内の選択的リーディングフレームより産生される。セグメント4は、赤血球凝集素(HA)表面糖タンパク質をコードし、かかるタンパク質は、感染の間の細胞接着および侵入に関与する。セグメント5は、ヌクレオカプシド核タンパク質(NP)ポリペプチドをコードし、かかるポリペプチドは、ウイルスRNAに関連する主要な構造成分である。セグメント6は、ノイラミニダーゼ(NA)エンベロープ糖タンパク質をコードする。セグメント7は、2個のマトリックスタンパク質(M1およびM2と示される)をコードし、これらは異なるようにスプライシングされたmRNAから翻訳される。セグメント8は、2個の非構造タンパク質であるNS1およびNS2をコードし、これらは選択的にスプライシングされたmRNA変異体から翻訳される。インフルエンザBの8個のゲノムセグメントは、11個のタンパク質をコードする。最も大きな3個の遺伝子は、RNAポリメラーゼの構成成分(PB1、PB2およびPA)をコードする。セグメント4は、HAタンパク質をコードする。セグメント5は、NPをコードする。セグメント6は、NAタンパク質とNBタンパク質をコードする。NBとNAの両タンパク質は、バイシストロニックmRNAの重複したリーディングフレームから翻訳される。インフルエンザBのセグメント7もまた、2個のタンパク質(M1およびBM2)をコードする。最も小さなセグメントは、2個の産物をコードし、NS1は、全長RNAから翻訳され、一方NS2は、スプライシングされたmRNA変異体から翻訳される。
【0030】
インフルエンザウイルスワクチン
本明細書中の配列、組成物および方法は、主として、ただそれだけではないが、ワクチン用のインフルエンザウイルスの製造に関する。歴史的に、インフルエンザウイルスワクチンは主に、選択したウイルス株または関連株の経験的な予測に基づくウイルス株を用いて発育鶏卵で製造されている。最近では、認可された弱毒性、温度感受性マスター株に関連して選択した赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ抗原を組み込んだ再集合体ウイルスが製造されている。鶏卵での複数回の継代によるウイルス培養の後、インフルエンザウイルスを回収し、場合によっては、例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはβ-プロピオラクトンを用いて不活性化する(あるいは代替的に生弱毒性ワクチンに用いる)。このように、HA配列およびNA配列(例えば、配列番号 2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562)が、インフルエンザワクチンを構築するのに非常に有用であることがわかる。本発明は、HAおよび/またはNAポリペプチドならびにA/Japan/57およびA/swine/MO/2006 (HAポリペプチドおよびポリヌクレオチドが例えば本明細書に記載のような改変等の改変された多塩基性切断部位を含む場合を含む)のポリヌクレオチドを含むウイルス/ワクチンを含み、また、該ウイルス/ワクチンが骨格(すなわち、6つの内部ゲノムセグメント)、例えばca A/AA/6/60, A/Leningrad/17またはPR8などの骨格を含む場合を含む。
【0031】
細胞培養において組換えワクチンおよび再集合体ワクチンを製造する試みは、ワクチン製造用に認可されたいくつかの株が、標準的な細胞培養条件下で効率的に増殖できないために妨げられている。しかし、本願発明者およびその共同研究者らによる先の研究は、培養における組換えウイルスおよび再集合体ウイルスの製造のためのベクター系および方法を提供し、それによって、1または複数の選択した抗原性ウイルス株(例えば、A株もしくはB株)、様々なサブタイプまたは亜種など(例えば本明細書中のHA配列および/またはNA配列を含む)に対応するワクチンを迅速に製造することが可能となった。「インフルエンザウイルスの産生のための複数プラスミド系」と題される、米国特許出願第60/420,708号(2002年10月23日出願)、米国特許出願第10/423,828号(2003年4月25日出願)および米国特許出願第60/574,117 号(2004年5月24日出願)を参照のこと。一般的に、培養物を、制御された湿度およびCO2の下、温度レギュレーター(温度が35℃を超えないことを確実にするサーモスタットなど)を用いて一定温度にした、細胞培養インキュベーターなどのシステムに維持する。再集合体インフルエンザウイルスは、マスターインフルエンザウイルスのゲノムセグメント、およびこれと併用される目的株由来の補完的セグメント(例えば、本明細書中のHAおよび/またはNA抗原性変異体)に対応するベクターサブセットを導入することによって、容易に得ることができる。一般に、マスター株は、ワクチン投与に関して望ましい特性に基づいて選択する。例えば、ワクチン製造のために(例えば、生弱毒性ワクチンの製造のために)、マスタードナーウイルス株は、弱毒性表現型、低温適合化および/または温度感受性について選択することができる。一の実施形態において、マスタードナーウイルスは、温度感受性、低温適合化、または弱毒化の性質の1以上を付与する6つの内部ゲノムセグメント (すなわち骨格)を含む。本明細書中のどこか、および例えば、米国特許出願第10/423,828号などに説明されるように、本発明の様々な実施形態は、HAおよび/またはNA遺伝子(例えば、本明細書中に示した配列など)を付加する「骨格」としてA/Ann Arbor(AA)/6/60のインフルエンザ株を利用して、望ましい再集合体ウイルスを製造する。したがって、例えば、6:2再集合体では、2個の遺伝子(すなわち、NAおよびHA)は、免疫原性反応が望まれるインフルエンザ株に由来し、一方、他の6個の遺伝子は、Ann Arbor 株または他の骨格株などに由来する。Ann Arborウイルスは、その低温適合化、弱毒性、温度感受性の特性ゆえに有用である。当然ながら、本明細書中のHA配列およびNA配列は、多数の他のウイルス遺伝子またはウイルス型と再集合することが可能であることがわかる(例えば、多数の異なる「骨格」(例えばPR8など)は、再集合体に存在するその他のインフルエンザ遺伝子(すなわち、非HA遺伝子および非NA遺伝子)を含む。
【0032】
本明細書中の種々の実施形態は、A/Japan/57またはA/swine/MO/2006について、本明細書におけるHAおよび/またはNA配列を有する生弱毒化ワクチンを含みうる。かかるワクチンは典型的には例えば、配列番号 2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562のHAおよび/またはNAポリペプチド、またはそれらをコードする対応する配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062、および 配列番号5の残基1063-1728のヌクレオチドを含む。鶏卵におけるワクチンウイルス株(例えば再集合体)の増殖から生じる一つの問題は、特定の株(これらは大流行に関与しうる)はワクチンを製造すべき鶏卵を殺すことができ、したがって慣用の(非プラスミドレスキュー)再集合製造を用いることによっては操作、製造等をすることが困難である、ということである。証拠によるとかかる株はヒトにおけるインフルエンザをもたらすことおよび大流行をもたらしうることが示唆されるので、かかる株は興味の対象である。したがって、ウイルス株(例えば本明細書におけるHAおよびNA配列)を用いたインフルエンザ再集合体を創作/操作するプラスミドレスキュー系の使用は、かなり望ましく、かつ本発明の構成をなす。しかしながら、本明細書の配列はまた、非プラスミド系または伝統的な系でも使用可能であることが理解される。
【0033】
本明細書中の種々の実施形態において、抗原性配列(例えばHAおよび/またはNAポリペプチド)ならびにウイルスおよびかかるウイルス由来のワクチンは、多塩基性切断部位を有する。一部の高度に病原性のインフルエンザ株は赤血球凝集素配列内に複数の塩基性アミノ酸切断部位を有する。例えば、Li et al., J. of Infectious Diseases, 179:1132-8, 1999を参照のこと。かかる切断部位は、本明細書中の典型的な実施形態では、例えば、現行の配列が由来する野生型配列と比較して配列が改変または変更されている(例えば切断を無効にするかそこでの切断を低減するため等)。かかる改変/変更は、野生型配列における切断部位の種々の配列に起因して、株に応じて異なり得る。例えば、成熟H5の326-329における4多塩基性残基(アルギニン-アルギニン-リシン-リシン)は、典型的には本明細書中の配列では除かれている(野生型と比較して)。種々の実施形態において、多塩基性切断部位はいくつかの方法により改変されうる(そのいずれも本発明に含まれる)。例えば、多塩基性切断部位は、一度に1アミノ酸づつ除かれうる(例えば、1つのアルギニンを除く、2つのアルギニンを除く、2つのアルギニンおよびリシンを除く、または2つのアルギニンおよび2つのリシンを除く)。さらに、切断部位の直ちに上流のアミノ酸を除くまたは改変することもできる(例えば、RからTへ、等); また切断部位の直ちに下流のアミノ酸をコードするヌクレオチドを改変することもできる。さらに、インフルエンザウイルスの赤血球凝集素ポリペプチド配列はアミノ末端シグナルペプチド配列を含み、したがって本発明の赤血球凝集素ポリペプチド配列は、赤血球凝集素ポリペプチドの成熟(アミノ末端シグナルペプチドが切断された)形態および赤血球凝集素のプレ切断型の両方を含む。任意のインフルエンザ株の任意の赤血球凝集素ポリペプチド配列の切断部位は、慣用的に当技術分野における任意の数の方法を用いて測定または予測することができる。
【0034】
ウイルス(一般的にワクチンとして用いられるか、またはワクチン製造用のもの)、場合によっては、本願配列を含むウイルスに用いられる場合、「温度感受性」、「低温適合化」および「弱毒性」という用語は、当該分野で周知である。例えば、「温度感受性」(ts)という用語は、例えば、インフルエンザA株については、ウイルスタイターが、33℃と比べて39℃において100フォールドまたはそれ以上減少することを示すか、あるいは、インフルエンザB株については、ウイルスタイターが、33℃と比べて37℃において100フォールドまたはそれ以上減少することを示すことをいう。「低温適合化」(ca)という用語は、ウイルスが、25℃において、33℃における増殖の100フォールド以内の増殖を示すことをいい、一方、「弱毒性」(att)という用語は、ウイルスが、フェレットの上気道では複製するが、肺組織では検出されず、動物にてインフルエンザ様疾患を生じないことを示す。中間の表現型を有するウイルス(すなわち、39℃(A株ウイルスについて)もしくは37℃(B株ウイルスについて)にて100フォールド未満のタイター減少を示すか、または25℃にて、33℃における増殖の100フォールド以上(例えば、200フォールド、500フォールド、1000フォールド、10,000フォールド未満内)の増殖を示すか、および/またはフェレットの上気道における増殖と比較して肺における減少した増殖(すなわち、部分的に弱毒性)および/もしくは動物において弱められたインフルエンザ様疾患を示すウイルス)もまた、有用なウイルスであり、本明細書中のHA配列およびNA配列と結合して用いることができることがわかる。
【0035】
さらに、本発明のHA配列およびNA配列は場合によって、再集合体ワクチンの製造においてまたは再集合体ワクチンにおいて(ならびに/または他のts、cs、caおよび/もしくはattウイルスやワクチン)に用いる。しかし、本発明のHA配列およびNA配列などが、特定のワクチン組成物または製造方法に限定されず、そのため、株特異的HAおよびNA抗原(例えば、配列番号 2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562、または特異的HAおよびNA抗原をコードする対応するヌクレオチド、例えば、配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728のいずれか)を利用するワクチン型またはワクチン製造方法のいずれにも実質的に用いることができることに留意する。
【0036】
FluMistTM
これまでに述べたように、インフルエンザワクチンの非常に多くの例および型が存在する。インフルエンザワクチンの例は、FluMistTMであり、これは生弱毒性ワクチンであり、インフルエンザ疾患から子供および大人を保護する(Belsheら、(1998) The efficacy of live attenuated, cold-adapted, trivalent, intranasal influenza virus vaccine in children N Engl J Med 338:1405-12; Nichol ら、(1999) Effectiveness of live, attenuated intranasal influenza virus vaccine in healthy, working adults: a randomized controlled trial JAMA 282:137-44)。本発明の方法および組成物は、FluMistTMワクチンの製造に適合させ/これを用いて使用されうる。しかし、本明細書中の配列、方法、組成物もまた、同様のまたは異なるウイルスワクチンの製造に適合されることが、当業者に理解される。
【0037】
FluMistTMワクチン株は、例えば、当該ワクチンが対象とする株(例えば野生型株)などに由来するHAおよびNA遺伝子セグメントと共に、共通マスタードナーウイルス(MDV)由来の6個の遺伝子セグメント(PB1、PB2、PA、NP、MおよびNS)を含む。したがって、本明細書中のHA配列は、より様々なFluMistTM製剤の一部であり得る。FluMistTMのインフルエンザA株用のMDV(MDV-A)は、連続して低温にて、ニワトリ腎臓組織の初代培養中にて野生型A/Ann Arbor/6/60(A/AA/6/60)株を連続継代することによって製造されたものである(Maassab(1967) Adaptation and growth characteristics of influenza virus at 25 degrees C Nature 213:612-4)。MDV-Aは、25℃にて効率的に複製する(ca, 低温適合化)が、その増殖は、38℃および39℃にて制限される(ts, 温度感受性)。さらに、このウイルスは、感染したフェレットの肺では複製しない(att, 弱毒化)。ts表現型は、気道の最も冷めた領域を除く全ての領域における複製が制限されることによって、ヒトでのワクチンの弱毒化に寄与すると考えられる。この特性の安定性は、動物モデルおよび臨床的研究で示されている。化学的突然変異誘発によって製造されたインフルエンザ株のts表現型と対比して、MDV-Aのts特性は、感染したハムスターを用いた継代培養後、または小児からのシェド単離体中でも戻らない(最近の総説については、Murphy & Coelingh(2002) Principles underlying the development and use of live attenuated cold-adapted influenza A and B virus vaccines Viral Immunol 15:295-323を参照のこと)。
【0038】
12種の別個の6:2再集合体株に関わる20,000人を超える成人および子供たちにおける臨床研究は、これらのワクチンが、弱毒性であり、安全でありかつ有効であることを示している(Belsheら(1998)The efficacy of live attenuated, cold-adapted, trivalent, intranasal influenza virus vaccine in children N Engl J Med 338:1405-12; Boyceら、(2000) Safety and immunogeniciity of aduvanted and unaduvanted subunit influenza virus vaccines administered intranasally to healthy adults vaccine 19:217-26; Edwardsら(1994) A randomized controlled trial of cold adapted and inactivated vaccines for the prevention of influenza A disease J Infect Dis 169:68-76; Nicholら、(1999) Effectiveness of live, attenuated intranasal influenza virus vaccine in healthy, working adults: a randomized controlled trial JAMA 282:137-44)。MDV-Aの6個の内部遺伝子と野生型ウイルスの2個のHAおよびNA遺伝子セグメントを保有する再集合体(すなわち、6:2再集合体)は、一貫してca、tsおよびatt表現型を保持する(Maassabら(1982) Evaluation of a cold-recombinant influenza virus vaccine in ferrets J. Infect. Dis. 146:780-900)。
【0039】
インフルエンザB株を用いたこのような再集合体ウイルスの製造はより困難であるが、しかし、最近の研究(例えば「インフルエンザウイルスの産生のための複数プラスミド系」、米国特許出願第60/420,708号(2002年10月23日出願)、米国特許出願第10/423,828号(2003年4月25日出願)、および米国特許出願第60/574,117号(2004年5月24日出願)などを参照のこと)は、全体としてクローン化cDNAに由来するインフルエンザBウイルスを製造するための8プラスミド系を示した。ワクチン製剤(例えば、鼻腔内投与に有用な生ウイルスワクチン製剤)に好適な弱毒性生インフルエンザAおよびBウイルスの製造方法も示された。
【0040】
これまでに記載した系および方法は、組換えおよび再集合体インフルエンザAおよびBウイルスの細胞培養における迅速な製造に有用であり、かかるウイルスは、生弱毒性ワクチン(例えば、鼻腔内投与に好適なワクチン)を含むワクチンとしての使用に好適なウイルスを含む。本発明の配列(例えば、配列番号 1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063, 配列番号1の残基1064-1729, 配列番号5の残基88-1062または配列番号5の残基1063-1728のヌクレオチド配列、および配列番号 2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340, 配列番号2の残基341-562, 配列番号6の残基16-340, または配列番号6の残基341-562のヌクレオチド配列によりコードされる対応するアミノ酸配列)、方法などは場合によって、例えば、ワクチン製造用の再集合体インフルエンザウイルスに関するこれまでの研究などとともに、またはそれと組み合わせて、ワクチン用のウイルスの製造に使用される。
【0041】
ワクチンを予防投与するたの方法および組成物
上記のように、FluMistTMワクチンの製造に用いることに代えて、または加えて、本発明を他のワクチン製剤に用いることができる。一般的に、本発明の組換えウイルスおよび再集合体ウイルス(例えば、配列番号 1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062もしくは配列番号5の残基1063-1728のポリヌクレオチド、または配列番号 2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、もしくは配列番号6の残基341-562のポリペプチドまたはその断片を含むもの)を、適切な担体または賦形剤中で免疫学的に有効な量で予防的に投与して、HAおよび/またはNA配列によって決定されるような1または複数のインフルエンザウイルス株に特異的な免疫応答を刺激することができる。一般的に、担体または賦形剤は、製薬上受容可能な担体または賦形剤(例えば、滅菌水、食塩水、緩衝食塩水溶液、ブドウ糖水溶液、水性グリセロール溶液、エタノール、またはそれらの組合せ)である。無菌性、pH、等張性および安定性が保証されている上記のような溶液の調製は、当該分野で確立されたプロトコルに従って行う。一般的に、担体または賦形剤は、アレルギーおよび他の望ましくない効果を最小限にするように、かつ特定の投与経路(例えば、皮下、筋肉内、鼻腔内など)に適するように選択する。
【0042】
本発明の関連する態様は、個体の免疫系を刺激して、インフルエンザウイルスに対する防御免疫応答を生じさせるための方法を提供する。この方法において、免疫学的有効量の組換えインフルエンザウイルス(例えば、本発明のHAおよび/もしくはNA分子を含むもの)、免疫学的有効量の本発明のポリペプチド、ならびに/または免疫学的有効量の本発明の核酸を、生理学的に許容可能な担体に含めて個体に投与する。
【0043】
一般的に、本発明のインフルエンザウイルスを、1または複数のインフルエンザウイルス株に特異的な(すなわち、本発明のHAおよび/またはNA株に対する)免疫応答を刺激するのに十分な量で投与する。好ましくは、インフルエンザウイルスの投与によって、このような株に対する防御免疫応答を誘発する。1または複数のインフルエンザ株に対する防御免疫応答を誘発するための用量および方法は、当業者に公知である。例えば、USPN 5,922,326; Wrightら、Infect. Immun. 37:397-400(1982); Kimら、Pediatrics 52:56-63(1973);およびWrightら、J. Pediatr. 88:931-936(1976)を参照のこと。例えば、インフルエンザウイルスを、1回の投与あたり、約1〜1000 HID50(ヒト感染用量)、すなわち、約105〜108pfu(プラーク形成単位)の範囲で投与する。一般に、この用量は、例えば、年齢、身体の状態、体重、性別、食事、投与時間、および他の臨床的要因に基づいて、上記範囲内で調節する。予防的ワクチン製剤は、例えば、針とシリンジまたは無針注射装置を用いて皮下または筋肉内注射することによって、全身投与する。あるいは、ワクチン製剤を、液滴、大きな粒子状エアロゾル(約10μmよりも大きい)、または上気道への噴霧のいずれかによって、鼻腔内投与する。上記いずれかの送達経路によって、防御的な全身性免疫応答を生じるが、鼻腔内投与は、インフルエンザウイルスの侵入箇所において粘膜免疫系を誘発するというさらなる利点をもたらす。鼻腔内投与については、弱毒性生ウイルスワクチンがしばしば好ましい(例えば、弱毒性、低温適合化および/または温度感受性組換えまたは再集合体インフルエンザウイルス)。上記参照のこと。単一用量を用いて防御免疫応答を刺激することが好ましいが、さらなる用量を、同一または異なる経路で投与して、所望される予防的効果を達成することができる。
【0044】
一般的に、ワクチンに用いるような本発明の弱毒性組換えインフルエンザは、十分に弱毒性であるために、感染症状、または少なくとも重篤な感染症状は、その弱毒性インフルエンザウイルスを用いて免疫化した(そうでなければ感染した)ほとんどの個体で発症しない。いくつかの例において、弱毒性インフルエンザウイルスがなお、穏やかな疾患(例えば、穏やかな上部呼吸器疾患)の症状を生じたり、および/またはワクチン接種をしていない個体に汎発したりすることが可能である。しかし、その病原性は、十分に抑制され、そのため重篤な下気道感染は、ワクチン接種した宿主または偶発的な宿主において生じない。
【0045】
あるいは、免疫応答を、本明細書中の配列を含むインフルエンザウイルスを用いて、樹状細胞をex vivoまたはin vivoにてターゲティングすることによって刺激することが可能である。例えば、増殖樹状細胞を、十分量のウイルスに、樹状細胞がインフルエンザ抗原を捕捉することができるほど十分な時間曝する。次に細胞を、ワクチン接種される被験体に、標準的な静脈内移植法によって移す。
【0046】
防御免疫応答の刺激を、単一用量を用いて惹起することが可能であるが、追加の用量を、同一または異なる経路で投与して、所望される予防的効果を達成することができる。新生児および幼児では、例えば、複数回投与が十分なレベルの免疫を誘発するために必要とされうる。投与は、幼児期を通して、間をおいて継続することができ、それは、野生型インフルエンザ感染に対して十分なレベルの防御を維持するのに必要なためである。同様に、成人(特に繰り返しまたは重篤なインフルエンザ感染を受けやすい人(例えば、医療従事者、介護士、幼い子供、高齢者および易感染性心肺機能を有する人の家族))は、防御免疫応答を確立および/または維持するために複数回の免疫化を必要としうる。誘発された免疫レベルは、例えば、中和化分泌型抗体および血清抗体の量を測定すること、ならびに所望されるレベルの防御を誘発および維持するために必要とされる調節された用量または繰り返しおこなうワクチン接種によって管理することができる。
【0047】
場合によって、インフルエンザウイルスを予防投与するための製剤はまた、インフルエンザ抗原に対する免疫応答を増強するための1または複数種のアジュバントを含む。好適なアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、ミネラルゲル(水酸化アルミニウムなど)、界面活性剤(リゾレシチン)、プルロニックポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素エマルション、カルメットゲラン菌(bacille Calmette-Guerin;BCG)、コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)、ならびに合成アジュバントQS-21が挙げられる。
【0048】
所望される場合、インフルエンザウイルスの予防ワクチン投与を、1または複数種の免疫賦活性分子の投与とともに行うことができる。免疫賦活性分子としては、免疫賦活性、免疫増強性および前炎症活性を有する種々のサイトカイン、リンホカインおよびケモカイン(例えば、インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13など);増殖因子(例えば、顆粒球マクロファージ(GM)コロニー刺激因子(CSF))ならびに他の免疫賦活性分子、例えば、マクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1、B7.2などが挙げられる。免疫賦活性分子を、インフルエンザウイルスと同一の製剤に含めて投与することも、別々に投与することもできる。タンパク質(例えば、本発明のHAおよび/またはNAポリペプチド、例えば配列番号 2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340, 配列番号2の残基341-562, 配列番号6の残基16-340, および配列番号6の残基341-562のいずれか)またはそのタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号 1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063, 配列番号1の残基1064-1729, 配列番号5の残基88-1062または配列番号5の残基1063-1728のいずれか)を含む発現ベクターを投与して、免疫賦活性効果を生じることができる。
【0049】
上記方法は、疾患または障害(一般的に、インフルエンザ)を治療的および/または予防的に処置するのに有用であり、かかる方法は、治療的または予防的に有効なHAおよび/またはNAポリペプチド(もしくはペプチド)あるいはHAおよび/またはNA RNA(例えば、アンチセンスRNAもしくはリボザイム)をコードする異種ポリヌクレオチドを含む本発明のベクターを、標的細胞の集団にin vitro、ex vivoまたはin vivoにて導入することを含む。一般的に、目的のポリペプチド(もしくはペプチド)またはRNAをコードするポリヌクレオチドは、「発現ベクター」および「追加の発現エレメント」と題される上記の章に記載されるような適切な調節配列に機能的に結合されている。場合によって、2以上の異種コード配列が、単一のベクターまたはウイルスに組み込まれている。例えば、治療的または予防的に活性なHAおよび/もしくはNAポリペプチドまたはRNAをコードするポリヌクレオチドに加えて、ベクターはまた、さらなる治療的または予防ポリペプチド(例えば、抗原、同時刺激分子、サイトカイン、抗体など)および/またはマーカーなどを含むことができる。
【0050】
特定のサブグループの特定の株の弱毒性インフルエンザウイルスを用いた個体のワクチン接種は、異なる株および/またはサブグループのインフルエンザウイルスに対する交差防御を誘導できるが、所望される場合には交差防御を、少なくとも2つのインフルエンザウイルスの株または亜型株、(例えば、それぞれが異なるサブグループを示す)に由来する弱毒性インフルエンザウイルスを用いて個体にワクチン接種することによって増強できる。さらに、ワクチンの組み合わせは場合によって、汎発流行性ワクチン(例えば種々のトリの株のような汎発流行性インフルエンザ株に対するもの、例えば本明細書に記載の配列または他の他の汎発流行性株を参照のこと)と非汎発流行性株との混合物を含む。ワクチン混合物(または複数のワクチン接種)は、ヒト株および/または非ヒトインフルエンザ株(例えば、トリおよびヒトなど)に由来する成分を含むことができる。同様に、本発明の弱毒性インフルエンザウイルスワクチンは場合によって、他の感染性因子に対する防御免疫応答を誘導するワクチンと組み合わせることができる。
【0051】
本発明のポリヌクレオチド
インフルエンザウイルスのHAおよびNAポリヌクレオチドセグメントは、HAおよびNAコード配列の5’および3’の両方にある、コード領域(ORFをコードする)および非コード領域(NCR)の両方を有することは当技術分野で周知である。また、インフルエンザウイルスのHAおよびNAセグメント全体の増幅を促進するために、こうしたNCRに対してプライマーを作成しうることも知られている(例えば、Hoffmann et al. Arch Virol. 2001 Dec;146(12):2275-89を参照のこと)。さらに、インフルエンザのHAおよびNAのNCRは、再集合体を達成する効率を増大させうることが知られている。したがって、こうしたNCRのヌクレオチド配列 ((例えば、少なくとも約60%, または少なくとも70%, または少なくとも80%, または少なくとも90%, または少なくとも約91% または少なくとも約92%, または少なくとも約93%, または少なくとも約94%, または少なくとも約95%, または少なくとも約96%, または少なくとも約97%, または少なくとも約98%, または少なくとも約98.5%, たは少なくとも約98.7%, または少なくとも約99%, または少なくとも約99.1%, または少なくとも約99.2%, または少なくとも約99.3%, または少なくとも約99.4%, または少なくとも約99.5%, または少なくとも約99.6% または少なくとも約99.7%, または少なくとも約99.8%, または少なくとも約99.9%の同一性を有する)その断片およびバリアントを含む)は本発明の範囲内にある。任意の汎発流行性株のHAおよびNAセグメントを増幅するに当たり、増幅(例えば、RT-PCRによるもの)のためにHAおよびNA NCRの保存(例えば関連株の間で保存されている)領域に結合するポリヌクレオチドプライマーを作製し使用することができる。 一の実施形態において、本発明のHAおよびNAポリヌクレオチドは、汎発流行性ウイルス株のHAおよびNA配列のNCRおよびORFの両方を含む (これにはそれらの断片およびバリアント(例えば、少なくとも約60%, または少なくとも70%, または少なくとも80%, または少なくとも90%, または少なくとも約91% または少なくとも約92%, または少なくとも約93%, または少なくとも約94%, または少なくとも約95%, または少なくとも約96%, または少なくとも約97%, または少なくとも約98%, または少なくとも約98.5%, または少なくとも約98.7%, または少なくとも約99%, または少なくとも約99.1%, または少なくとも約99.2%, または少なくとも約99.3%, または少なくとも約99.4%, または少なくとも約99.5%, または少なくとも約99.6% または少なくとも約99.7%, または少なくとも約99.8%, または少なくとも約99.9%)が含まれる)。別の実施形態において、本発明のHAおよびNAポリヌクレオチドは、汎発流行性ウイルス株のHAおよびNA配列(例えば、配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729,配列番号5の残基88-1062、配列番号5の残基1063-1728)のNCRを含まないが、ORFを含む(これにはその断片およびバリアント(例えば、その少なくとも約60%, または少なくとも70%, または少なくとも80%, または少なくとも90%, または少なくとも約91% または少なくとも約92%, または少なくとも約93%, または少なくとも約94%, または少なくとも約95%, または少なくとも約96%, または少なくとも約97%, または少なくとも約98%, または少なくとも約98.5%, または少なくとも約98.7%, または少なくとも約99%, または少なくとも約99.1%, または少なくとも約99.2%, または少なくとも約99.3%, または少なくとも約99.4%, または少なくとも約99.5%, または少なくとも約99.6% または少なくとも約99.7%, または少なくとも約99.8%, または少なくとも約99.9%)が含まれる) 。
【0052】
本発明のHAおよびNAポリヌクレオチド、例えば、配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062、および配列番号5の残基1063-1728、ならびにそれらの断片は、場合により、上記のワクチンの代わりに、またはそれらに加え、種々の目的に用いられる。他の例示的な用途を本明細書に記載するが、それらは例証を目的としたものであり、実際の用途の範囲の限定をするものではない。本発明のヌクレオチド配列の種々の構築方法、精製方法および特徴付けをする方法も本明細書に記載する。いくつかの実施形態において、本発明の1または複数のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、様々な状況下で対応する核酸または関連する核酸を検出するためのプローブとして、都合よく用いられる。かかる状況とは、例えば核酸ハイブリダイゼーション実験であり、それは、他の種に感染していたり、または異なるインフルエンザの発生において同種のインフルエンザ変異体(例えば、本明細書中の配列についての相同体など)を見出したり、および/または特徴付けするためのものである。プローブは、DNA分子またはRNA分子のいずれかでありえ(例えばゲノムまたはクローン化DNAの制限断片、cDNA、PCR増幅産物、転写物、およびオリゴヌクレオチド)、約10ヌクレオチドの短い長さのものから全長配列のオリゴヌクレオチドまたは1 kbまたはそれ以上のcDNAと様々でありうる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のプローブは、ヌクレオチド配列または、例えば、配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063, 配列番号1の残基1064-1729, 配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728もしくはそれらの相補配列のなかより選択される部分配列を含む。あるいは、上に示した配列のうちの1つの変異体であるヌクレオチド配列をプローブとして用いる。最も一般的には、このような変異体は、1または数個の保存的なヌクレオチド変異を含む。例えば、オリゴヌクレオチド対(またはセット)が選択されえ、その2つ(またはそれ以上)のヌクレオチド配列が、互いの保存的な変異であり、1のヌクレオチド配列は、第一の変異体に等しく対応するか、またはその他のポリヌクレオチド配列が、さらなる変異体に等しく対応する。このようなオリゴヌクレオチドプローブ対は、例えば、多型ヌクレオチドを検出するか、または例えば、他の種に感染しているかまたは異なる(例えば、時間的におよび/もしくは地理的に異なる)インフルエンザの発生において存在する同種のインフルエンザHAおよびNA変異体を検出するための、特定のハイブリダイゼーション実験に特に有用である。他の用途において、プローブは、より異なったものが選択され、すなわち、少なくとも約91%(または約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約98.5%、約98.7%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、約99.9%もしくはそれ以上)同一であるプローブが選択される。
【0053】
本発明のプローブ(例えば、本明細書中の配列に由来する配列によって例示されるもの)をまた用いて、本技術分野で慣用される手順にしたがって、さらなる有用なポリヌクレオチド配列を同定することができる。一実施形態のセットにおいて、1または複数の上記のようなプローブを用いて、発現産物または染色体セグメントのライブラリー(例えば、発現ライブラリーもしくはゲノムライブラリー)をスクリーニングして、クローンを同定する。かかるクローンは、例えば本明細書中の配列すなわち、変異体、相同体などの1または複数のプローブと同一であるか、または有意な配列類似性を有する配列を含む。ライブラリースクリーニングのような物理的方法などに加えて、コンピューターを利用した生物情報学的アプローチ、例えば、BLASTおよび他の配列相同性検索アルゴリズムなど、もまた、関連するポリヌクレオチド配列を同定するために用いることができることが理解される。この方法で同定されるポリヌクレオチド配列もまた、本発明の特徴である。
【0054】
オリゴヌクレオチドプローブは場合によって、当業者に周知である種々の方法によって製造される。最も一般的には、オリゴヌクレオチドプローブは、周知の合成方法(例えば、自動合成機などを使用する固相ホスホアミダイトトリエステル法(BeaucageおよびCaruthers(1981) Tetrahedron Letts 22(20):1859-1862に記載される)または他の方法(Needham-Van Devanterら、(1984) Nucl Acids Res, 12:6159-6168に記載される))によって製造される。オリゴヌクレオチドはまた、当業者に公知である様々な商業的供給源によってオーダーメイドされうる。オリゴヌクレオチドの精製(必要な場合)は一般に、未変性のアクリルアミドゲル電気泳動または陰イオン交換HPLC(PearsonおよびRegnier(1983) J Chrom 255:137-49に記載される)によって行う。合成オリゴヌクレオチドの配列は、化学分解法を用いて検証できる(GrossmanおよびMoldave(編) Academic Press, New York, Methods in Enzymology 65:499-560におけるMaxamおよびGilbert(1980)らの化学分解法)。オーダーメイドのオリゴもまた、当業者に公知である様々な商業的供給源に注文することができる。
【0055】
他の状況において、例えば、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを発現する細胞または生物体(例えば、本発明の配列を含むウイルスを保有するもの)の特質に関連して、ポリペプチド、ペプチドまたは抗体であるプローブを、都合よく利用する。例えば、本発明のアミノ酸配列(例えば、配列番号 2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562)のいずれかに由来するか、および/または本発明のポリヌクレオチド配列、例えば配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062、および配列番号5の残基1063-1728から選択されるものによりコードされた、単離された、または組換えポリペプチド、ポリペプチド断片およびペプチドを都合よく用いて、ファージディスプレイライブラリー、コンビナトリアルライブラリー、ポリクローナル血清などから、抗体を同定および単離する。本発明のポリペプチド断片には、本発明のHAまたはNAポリペプチドのアミノ酸配列(例えば、配列番号2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、配列番号6の残基341-562)の、少なくとも5の連続的なアミノ酸残基, もしくは少なくとも10の連続的なアミノ酸残基, もしくは少なくとも15の連続的なアミノ酸残基, もしくは少なくとも20の連続的なアミノ酸残基, もしくは少なくとも25の連続的なアミノ酸残基, もしくは少なくとも40の連続的なアミノ酸残基, もしくは少なくとも50の連続的なアミノ酸残基, もしくは少なくとも60の連続的なアミノ残基, もしくは少なくとも70の連続的なアミノ酸残基, もしくは少なくとも連続する80アミノ酸残基、もしくは少なくとも連続する90アミノ酸残基、もしくは少なくとも連続する100アミノ酸残基、もしくは少なくとも連続する125アミノ酸残基、もしくは少なくとも150の連続的なアミノ酸残基、もしくは少なくとも連続する175アミノ酸残基、もしくは少なくとも連続する200アミノ酸残基、もしくは少なくとも連続する250アミノ酸残基、もしくは少なくとも連続する350、もしくは少なくとも連続する400、もしくは少なくとも連続する450、もしくは少なくとも連続する500、もしくは少なくとも連続する550アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドが含まれる。前記ポリペプチド断片および前記ポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の好ましい実施形態である。
【0056】
任意のポリペプチド配列または部分配列、例えば配列番号 2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562, 配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562ならびに/または本発明のポリヌクレオチド配列、例えば配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062、および配列番号5の残基1063-1728から選択される配列にコードされるもの、に特異的な抗体も同様に、例えば、細胞または組織に由来する発現産物を評価するためのプローブとして役立つ。さらに、抗体はとりわけ、アミノ酸配列(例えば、本明細書中に与えられたもの、または本発明のポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書中に示されたものから選択したもの)にコードされたもの)を含むタンパク質の発現を、in situ、組織アレイ、細胞、組織または生物体(例えば、同定されていないインフルエンザウイルスなどに感染した生物体)にて評価するのに好適である。抗体を、検出可能な試薬で直接的に標識するか、または特異的抗体の重鎖の定常領域(すなわち、アイソタイプ)に特異的な二次抗体を標識することによって間接的に検出することができる。特異的抗体の製造に関するさらなる詳細を以下に提供する。
【0057】
診断アッセイ
本発明のポリヌクレオチド配列を、診断アッセイに用いて、試料中のインフルエンザ(ならびに/または赤血球凝集素および/もしくはノイラミニダーゼ)を検出すること、赤血球凝集素様配列および/またはノイラミニダーゼ様配列を検出すること、ならびに化学的に合成されたポリヌクレオチド断片または組換えポリヌクレオチド断片(例えば、本明細書中の配列から選択したもの)のいずれかを用いてインフルエンザ臨床分離株における株の違いを検出することができる。例えば、少なくとも10〜20ヌクレオチドを含む赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼ配列の断片を、プライマーとして用いて、当該分野で周知であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法(例えば、逆転写PCR)を使用してポリヌクレオチドを増幅したり、またポリヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイにおいてプローブとして用いて、臨床検体中のインフルエンザRNAなどの標的遺伝的物質を検出したりすることができる。
【0058】
本発明のプローブ、例えば本明細書に記載の配列から選択された配列によって例示されるものをまた用いて、当該分野で慣用的な手順にしたがって、さらなる有用なポリヌクレオチド配列を同定することができる(例えば、インフルエンザのさらなる株を特徴付けるため)。1セットの好ましい実施形態において、上記のような1または複数のプローブを用いて、発現産物またはクローン化ウイルスポリヌクレオチドのライブラリー(すなわち、発現ライブラリーまたはゲノムライブラリー)をスクリーニングして、本明細書中の配列と同一であるか、または有意な配列同一性を有する配列を含むクローンを同定する。その後、これらの同定した配列の各々を用いて、上記のような変異体プローブ対またはセットを含むプローブを作製することができる。ライブラリースクリーニングのような物理的方法などに加えて、コンピューターを利用した生物情報学的アプローチ(例えば、BLASTおよび他の配列相同性検索アルゴリズムなど)もまた、関連するポリヌクレオチド配列を同定するために用いることができることがわかる。
【0059】
本発明のプローブは特に、細胞、組織または他の生物学的試料(例えば、鼻洗浄液または気管支洗浄液)中のインフルエンザポリヌクレオチドの存在を検出すること、およびその正体を決定することに有用である。例えば、本発明のプローブを都合よく用いて、生物学的試料(例えば、被験体(ヒト被験体など)またはモデル系(培養細胞試料など)が、インフルエンザ、または特定のインフルエンザ株に曝されていたか、またはそれらに感染したか否かを決定する。生物学的試料またはモデル系に由来する(例えば、これらから単離した)ポリヌクレオチドに対する選択したプローブのハイブリダイゼーションが検出されることによって、選択したプローブのポリヌクレオチドが由来するウイルス(または関連ウイルス)への曝露または感染が示される。
【0060】
プローブの設計は、意図される用途に影響されることがわかるであろう。例えば、いくつかの対立遺伝子特異的プローブと標的との相互作用が、単一のアッセイ(例えば、単一のDNAチップ)にて検出されるべきものである場合、全てのプローブについて類似の融解温度を有していることが望ましい。したがって、プローブの長さを調節して、そしてアレイ上の全てのプローブについての融解温度が、近似するようにする(異なるプローブは異なるGC含有量を有する場合、特定のTm 値を得るためには、異なるプローブに対し異なる長さが必要とされることがわかるであろう)。プローブ設計において主に考慮することは、融解温度であるが、他の要因を場合によって用いて、プローブ構築(例えば、プライマーの自己相補性に対する選択など)をさらに調節する。
【0061】
ベクター、プロモーターおよび発現系
本発明は、本明細書中に記載される1または複数のポリヌクレオチド配列を組み入れた組換え構築物を含む。このような構築物は場合によって、ベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)など)を含み、これに1または複数の本発明のポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062、および配列番号5の残基1063-1728またはその部分配列のいずれかを含む)が、順方向または逆方向で挿入されている。例えば、挿入されたポリヌクレオチドは、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチド配列の全てもしくは一部分を含むウイルス染色体配列またはcDNAを含むことができる。一実施形態において、構築物はさらに調節配列を含み、かかる調節配列は、例えば、該配列に機能的に結合されたプロモーターを含む。多数の好適なベクターおよびプロモーターが、当業者に公知であり、これらは市販されている。
【0062】
本発明のポリヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスRNAおよび場合によって、ポリペプチド(またはペプチド)発現産物(例えば、本発明の赤血球凝集素および/もしくはノイラミニダーゼ分子、またはその断片)を作製するのに好適な種々のベクターのうちのいずれか1つの中に含むことができる。このようなベクターには、染色体、非染色体および合成DNA配列(例えば、SV40誘導体; 細菌性プラスミド; ファージ DNA; バキュロウイルス; 酵母プラスミド;プラスミドとファージ DNAの組み合わせ物に由来するベクター、ワクシニア、アデノウイルス、家禽ポックスウイルス、仮性狂犬病、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスなどのウイルスDNAおよびその他多数(例えば、pCDL)が含まれる。遺伝物質を細胞に導入することができ、複製を望む場合には、関連宿主で複製することができる任意のベクターを用いることができる。
【0063】
発現ベクターにおいて、目的のHAおよび/またはNAポリヌクレオチド配列を適切な転写制御配列(例えば、プロモーター、および場合によって1もしくは複数のエンハンサー)の近くに、かつその配列に向けて物理的に配置し、mRNA合成を制御する。すなわち、目的のポリヌクレオチド配列を、適切な転写制御配列に機能的に結合する。このようなプロモーターの例としては、LTRまたはSV40プロモーター、E. coli lacまたはtrpプロモーター、ファージλPLプロモーター、および原核細胞もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子発現を制御することが知られている他のプロモーターが挙げられる。
【0064】
種々のプロモーターが、インフルエンザウイルスのゲノムセグメントの転写を調節するための発現ベクターに用いるのに好適である。特定の実施形態において、サイトメガロウイルス(CMV)DNA依存型RNAポリメラーゼ II(Pol II)プロモーターを用いる。所望する場合、例えば、条件発現を制御するために、特定の条件または特定の組織または細胞においてRNA転写を誘導する他のプロモーターを代わりに用いることができる。非常に多くのウイルスプロモーターおよび哺乳動物(例えば、ヒト)プロモーターが入手可能であるか、または意図される特定の用途に従って単離することができる。例えば、動物およびヒトウイルスのゲノムより得られる代替的なプロモーターとしては、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス 2)、パピローマウイルス、B型肝炎ウイルス、ポリオーマウイルス、およびサルウイルス 40(SV40)などのプロモーター、ならびに様々なレトロウイルスプロモーターが挙げられる。哺乳動物のプロモーターとしては、その他多くのものの中から、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターなどが挙げられる。
【0065】
転写は場合によって、エンハンサー配列を含めることによって増強される。エンハンサーは一般に短い(例えば、10〜500 bp)シス作用性DNAエレメントであり、これは、プロモーターと協調して作用し、転写を増強する。多くのエンハンサー配列が、哺乳動物遺伝子(ヘモグロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテインおよびインスリン)ならびに真核細胞ウイルスより単離されている。エンハンサーは、異種コード配列の5'または3' 位置にてベクターにつなげることができるが、一般にプロモーターの5'位置に挿入される。一般に、プロモーターおよび、所望する場合、さらなる転写増強配列を選択し、異種DNAが導入されるべき宿主細胞型における発現を最適化する(Scharf ら(1994) Heat stress promoters and transcription factors Results Probl Cell Differ 20:125-62; Kriegler ら(1990) Assembly of enhancers, promoters, and splice signals to control expression of transferred genes Methods in Enzymol 185: 512-27)。場合によって、単位複製配列(アンプリコン)はまた、翻訳を開始するためのリボゾーム結合部位または内部リボソーム進入部位(IRES)を含むことができる。
【0066】
本発明のベクターはまた、転写の終結およびmRNAを安定させるのに必要な配列(例えば、ポリアデニル化部位またはターミネーター配列)を都合よく含む。このような配列は一般に、真核生物、またはウイルスのDNAまたはcDNAの5'非翻訳領域(ときには3'非翻訳領域)より得ることができる。一実施形態において、SV40ポリアデニル化シグナル配列は、双方向性ポリアデニル化部位を与えることができ、この部位は(+)鎖mRNA分子の転写を、(−)鎖ウイルスゲノムの複製を開始するPolIプロモーターから隔離する。
【0067】
さらに、上記のように発現ベクターは場合によって、形質転換した宿主細胞を選択するための表現型特性を与えるために1または複数の選択可能なマーカー遺伝子を含み、これまでに挙げた遺伝子に加えて、ジヒドロ葉酸還元酵素またはネオマイシン耐性などのマーカーが、真核細胞培養における選択に好適である。
【0068】
上記のような適切なポリヌクレオチド配列、ならびに適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターを用いて、宿主細胞を形質転換しタンパク質の発現を可能とすることができる。本発明のベクターは、細菌細胞において複製することができ、最も頻繁には、発現のために、哺乳動物細胞(例えば、Vero細胞、BHK細胞、MDCK細胞、293細胞、COS細胞など)にそれらベクターを導入することが望ましい。
【0069】
他の箇所に記載したように、本明細書中のHA配列およびNA配列は様々な実施形態において、プラスミドレスキュー再集合体に含まれるプラスミド内に含むことができる。例えば、2002年10月23日に出願された米国特許出願番号第60/420,708号、2004年5月24日に出願された米国特許出願番号第60/574,117号、2003年4月25日に出願された米国特許出願番号第10/423,828号、2004年6月12日に出願された米国特許出願番号第60/578,962号、および2004年6月16日に出願された米国特許出願番号第10/870,690号、ならびに米国特許出願第20020164770号を参照されたい。これらは参照により本明細書に組み入れるものとする。例えば、本発明の好ましい発現ベクターとしては、限定するものではないが、pol Iプロモーターおよびターミネーター配列を有するベクター、または「polI/polIIプロモーター系」のpol Iおよびpol IIプロモーターの両方を用いるベクター (例えば、Zobel et al., Nucl. Acids Res. 1993, 21:3607; US20020164770; Neumann et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96:9345; Fodor et al., J. Virol. 1999, 73:9679; および 米国特許出願第20030035814号)が挙げられる。製造される再集合体(リアソータント)は、A/Ann Arbor/6/60ドナー株(および/またはその誘導体および改変体), PR8ドナー株骨格, A/Leningrad/17ドナー株骨格等のドナー株などに由来する6個の他のインフルエンザ遺伝子と共に配置されたHAおよびNA遺伝子を含むことができる。他の骨格株は例えば米国特許出願第20040137013号および第20030147916号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0070】
付加的な発現エレメント
最も一般的には、インフルエンザウイルス HAおよび/またはNAタンパク質をコードするゲノムセグメントは、その発現(ウイルスの機能的タンパク質への翻訳を含む)に必要なさらなる配列を含む。他の状況において、ミニ遺伝子、またはウイルスタンパク質(例えば、HAおよび/またはNA タンパク質)をコードする他の人工構築物を用いることができる。さらに、このような場合、該異種コード配列の効率的な翻訳を助ける特定の開始シグナルを含むことがしばしば望ましい。これらのシグナルは、例えば、ATG開始コドンおよび隣接配列を含むことができる。挿入物全体の翻訳を確実にするために、開始コドンを、ウイルスタンパク質に関して正確なリーディングフレームに挿入する。外因性転写エレメントおよび開始コドンは、天然および合成の様々な起源のものでありうる。発現効率は、用いる細胞系に適切なエンハンサーを含めることによって増強できる。
【0071】
所望される場合、付加的に発現されるエレメント(例えば、シグナル配列、分泌配列または局在化配列など)をコードするポリヌクレオチド配列を、通常は目的のポリヌクレオチド配列とインフレームにて、ベクターに組み込み、例えば所望の細胞コンパートメント、膜または細胞小器官におけるポリペプチドの発現を目的としたり、または細胞膜周辺腔もしくは細胞培養培地中へのポリペプチドの分泌を行わせたりすることができる。このような配列は、当業者に公知であり、分泌リーダーペプチド、細胞小器官ターゲティング配列(例えば、核局在化配列、ER保持シグナル、ミトコンドリア移行配列)、膜局在化/アンカー配列(例えば、ストップトランスファー配列、GPI アンカー配列)などが挙げられる。
【0072】
本発明のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの翻訳が望まれる場合、付加的な翻訳特異的開始シグナルが翻訳の効率を改善することができる。これらのシグナルとしては、例えば、ATG開始コドンと隣接配列、IRES領域などが挙げられる。いくつかの場合には、例えば、本発明のポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書中の配列におけるもの)、翻訳開始コドンおよび関連配列エレメントを組み込むコード配列を含む全長cDNA分子または染色体セグメントを、目的のポリヌクレオチド配列と一緒に適切な発現ベクターに挿入する。このような場合、付加的な翻訳制御シグナルはしばしば必要ではない。しかし、ポリペプチドコード配列、またはその一部のみが挿入される場合、例えば、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルがしばしば、関連配列を発現するために与えられる。開始コドンは、正確なリーディングフレーム中に配置して、目的のポリヌクレオチド配列の転写を確実にする。外因性転写エレメントと開始コドンは、天然および合成の様々な起源のものでありうる。発現効率は、用いる細胞系に適切なエンハンサーを含むことによって増強できる(例えば、Scharf D.ら(1994) Results Probl Cell Differ 20:125-62; Bittnerら(1987) Methods in Enzymol 153:516-544を参照のこと)。
【0073】
組換えウイルスの製造
ネガティブ鎖RNAウイルスを、遺伝子的に操作して、組換え逆遺伝学的アプローチを用いて回収できる(例えば、PaleseらのUSPN 5,166,057を参照のこと)。このような方法は元々、インフルエンザウイルスゲノムを操作するために用いられており(Luytjesら(1989) Cell 59:1107-1113; Enamiら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:11563-11567)、多種多様なセグメント化されたおよびセグメント化されていないネガティブ鎖 RNAウイルス(例えば、狂犬病(Schnellら(1994) EMBO J. 13: 4195-4203); VSV(Lawsonら(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 4477-4481); 麻疹ウイルス(Radeckeら(1995) EMBO J. 14:5773-5784); 牛疫ウイルス(Baron & Barrett(1997) J. Virol. 71: 1265-1271); ヒトパラインフルエンザウイルス(Hoffman & Banerjee(1997) J. Virol. 71: 3272-3277; Dubinら(1997) Virology 235:323-332); SV5(Heら(1997) Virology 237:249-260); 犬ジステンパーウイルス(Gassenら(2000) J. Virol. 74:10737-44);およびセンダイウイルス(Parkら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 5537-5541; Katoら(1996)Genes to Cells 1:569-579))に首尾よく用いられていた。当業者は、本発明のHA配列およびNA配列を含むインフルエンザウイルスを製造するための、これらおよび同様の技術に精通している。このような方法にしたがって製造される再集合体インフルエンザウイルスもまた本発明の特徴であり、本発明のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドを1以上含む再集合体インフルエンザウイルスも然りである。
【0074】
細胞培養および発現宿主
本発明はまた、本発明のベクターが導入された(形質導入、形質転換またはトランスフェクトされた)宿主細胞、および組換え技術による本発明のポリペプチドの製造法に関する。宿主細胞は、本発明のベクター(例えば、発現ベクター)を用いて遺伝子操作されている(すなわち、形質導入、形質転換またはトランスフェクトされている)。上記のように、ベクターは、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態でありうる。適切な発現宿主の例としては、細菌細胞(例えば、大腸菌(E. coli)、ストレプトミセス、およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium); 真菌細胞(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア(Pichia pastoris)および, アカパンカビ(Neurospora crassa);または昆虫細胞(ハエ(Drosophila)およびガ(Spodoptera frugiperda)が挙げられる。
【0075】
最も一般的には、哺乳動物細胞を用いて、本発明のHAおよびNA分子を培養する。インフルエンザウイルスを複製するのに好適な宿主細胞としては、例えば、Vero細胞、BHK細胞、MDCK細胞、293細胞およびCOS細胞(293T細胞COS7細胞などを含む)が挙げられる。一般的に、上記細胞系統のうちの2種(例えば、MDCK細胞と293T細胞またはCOS細胞のいずれか)を例えば、1:1の割合で含む共培養を用いて複製効率を改善する。一般的に、細胞を、標準的な市販の培養培地(例えば、血清(例えば、10%胎児ウシ血清)を添加したダルベッコ改変イーグル培地)または無血清培地中で、制御された湿度および中性に緩衝されたpH(例えば、pH 7.0〜7.2)を維持するのに好適なCO2濃度下にて培養する。場合によって、培地は、細菌の増殖を防ぐための抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンなど)および/または、好ましい増殖特性を促すためのL-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、付加的な添加物(例えば、トリプシン、β−メルカプトエタノールなど)などの栄養分を含む。
【0076】
遺伝子操作した宿主細胞は、プロモーターを活性化すること、形質転換体を選択すること、または挿入したポリヌクレオチド配列を増幅することに適切なように改変した慣用の栄養培地中で培養することができる。温度、pHなどの培養条件は一般に、発現を行うために選択された特定の宿主細胞でこれまでに用いられていた条件であり、当業者にとって、また本明細書中に引用される参考文献(例えば、Freshney(1994)Culture of Animal Cells, a Manual of BasicTechnique, 第3版, Wiley- Liss, New Yorkおよびその引用文献を含む)中にて、明らかである。他の役立つ参考文献としては、例えば、Paul(1975) Cell and Tissue Culture, 第5版, Livingston, Edinburgh; Adams(1980) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Cell Culture for Biochemists, WorkおよびBurdon(編) Elsevier, Amsterdamが挙げられる。in vitroでのインフルエンザウイルス製造に特に重要である組織培養方法に関するさらなる詳細としては、例えば、CohenおよびShafferman(編) Novel Strategies in Design and Production of vaccinesにおけるMertenら、(1996) Production of influenza virus in cell cultures for vaccine preparationが挙げられ、これはその全体があらゆる目的のために、本明細書中に援用される。さらに、本発明に適合されたこのような方法のバリエーションは、日常的な実験によって容易に決定でき、また当業者はこれらに精通している。
【0077】
インフルエンザウイルス(例えば、本発明のHAおよび/またはNA配列を有する)を製造するための細胞は、血清含有培地または無血清培地中にて培養しうる。いくつかの場合において、例えば、精製したウイルスを調製するために、一般に無血清条件中で宿主細胞を増殖することが望ましい。細胞を小規模(例えば、25 ml未満の培地)の培養チューブもしくは培養フラスコ、または大きなフラスコで撹拌しながら、回転ボトル中で、またはフラスコ、ボトルもしくはリアクター培養中のマイクロキャリアビーズ(例えば、DEAE-デキストランマイクロキャリアビーズ(Dormacell, Pfeifer & Langenなど)、Superbead(Flow Laboratories)、スチレンコポリマー−トリ−メチルアミンビーズ(Hillex, SoloHill, Ann Arborなど)上で培養できる。マイクロキャリアビーズは、(直径100〜200ミクロンの範囲の)小さな球体であり、細胞培養の容積あたり接着性細胞増殖のための大きな表面積を与える。例えば、1リットルの培地は、2000万個以上のマイクロキャリアビーズを含み、8000 cm2以上の増殖面を提供することができる。ウイルスを商業的に製造するために、例えば、ワクチン製造のために、しばしば細胞を、バイオリアクターまたは発酵槽中で培養することが望ましい。バイオリアクターは、1リットル未満〜100リットルを超える容量まで利用できる(例えば、Cyto3バイオリアクター(Osmonics, Minnetonka, MN); NBSバイオリアクター(New Brunswick Scientific, Edison, NJ); B. Braun Biotech Internationalからの実験室または商業的規模のバイオリアクター(B. Braun Biotech, Melsungen, Germany))。
【0078】
培養の容積にかかわらず、本発明の多くの所望される態様において、培養物を適切な温度に維持し、温度依存性多重プラスミド系(例えば、「インフルエンザウイルスの製造のための複数プラスミド系」2002年10月23日に出願された米国特許出願番号第60/420,708号、2003年4月25日に出願された米国特許出願番号第10/423,828号、および2004年5月24日に出願された米国特許出願番号第60/574,117号を参照のこと)を用いて、濾過を行うためにウイルス溶液を加熱して、組換えおよび/または再集合体インフルエンザウイルスの効率的な回収を確実にすることが重要である。一般的に、レギュレーター(例えば、サーモスタットまたは細胞培養系および/もしくは他の溶液の温度を感知および維持するための他の装置)を用いて、温度が、適当な期間(例えば、ウイルス複製などの間)、正確なレベルであることを確実にする。
【0079】
本明細書中のいくつかの実施形態(例えば、再集合体ウイルスが、ベクター上のセグメントから製造されるものである場合)において、インフルエンザゲノムセグメントを含むベクターを、真核細胞に異種ポリヌクレオチドを導入するための当該分野で周知である方法(例えば、リン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法、およびポリアミントランスフェクション試薬を用いたトランスフェクション法を含む)にしたがって、宿主細胞に導入する(例えば、トランスフェクトする)。例えば、ベクター(プラスミドなど)を、再集合体ウイルスなどを製造するために、製造者の指示に従ってポリアミントランスフェクション試薬 TransIT-LT1(Mirus)を用いて、宿主細胞(例えば、COS細胞、293T細胞またはCOS細胞もしくは293T細胞とMDCK細胞の組合せ)にトランスフェクトすることができる。したがって、1実施形態において、総容積200μlにて、およそ1μgの各ベクターを、160μlの培地(好ましくは無血清培地)中に希釈したおよそ2μlのTransIT-LT1を用いて宿主細胞の集団に導入する。DNAとトランスフェクション試薬の混合物を、室温で45分間インキュベートして、その後800μlの培地を加える。トランスフェクション混合物を、宿主細胞に加えて、そして細胞を、記載されるように、当業者に周知である他の方法によって培養する。したがって、細胞培養にて組換えまたは再集合体ウイルスを製造するために、それぞれ8個のゲノムセグメント(PB2、PB1、PA、NP、M、NS、HAおよびNA、例えば、本発明のもの)を組み込むベクターを、およそ20μlのTransIT-LT1と混合し、宿主細胞にトランスフェクトする。場合によって、血清含有培地を、トランスフェクションの前に、無血清培地(例えば、Opti-MEM I)に代え、4〜6時間インキュベートする。
【0080】
あるいは、エレクトロポレーションを用いて、インフルエンザゲノムセグメントを組み込むベクターを宿主細胞に導入することができる。例えば、インフルエンザAウイルスまたはインフルエンザBウイルスを組み込むプラスミドベクターを、以下の手順にしたがってエレクトロポレーションを用いて、Vero細胞に都合よく導入する。簡潔に言えば、例えば、10%胎児ウシ血清(FBS)を添加した改変イーグル培地(MEM)中で増殖したおよそ5×106個のVero細胞を、0.4 mlのOptiMEM中に懸濁し、エレクトロポレーションキュベットに置く。25μlまでの容積中の20μgのDNAを、キュベット中の細胞に添加し、次にそれをタッピングして穏やかに混合する。エレクトロポレーションを、製造者の指示にしたがって、300ボルト、950 マイクロファラッド、28〜33msecの時定数で行う(例えば、BioRad Gene Pulser IIと共に接続されたCapacitance Extender Plusを用いる)。細胞を穏やかにタッピングして再び混合し、エレクトロポレーションからおよそ1〜2分後、10% FBSを含む0.7 ml MEMをキュベットに直接加える。次に細胞を、2 ml MEM、10% FBSを入れた標準的な6ウェル組織培養皿のうちの2ウェルに移す。キュベットを、残っている細胞を回収するために洗浄し、そしてこの洗浄懸濁液を上記2ウェルに分ける。最終容量は、およそ3.5 mLである。次に細胞を、ウイルスの増殖を許容する条件下(例えば、低温適合化株については、およそ33 ℃)でインキュベートする。
【0081】
哺乳動物の宿主細胞において、多数の発現系(例えば、ウイルスベースの系)を用いることができる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、コード配列を場合によって、後期プロモーターと3つに分かれたリーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体にライゲーションする。ウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域中への挿入によって、感染した宿主細胞にて目的のポリペプチドを発現することができる生存可能なウイルスを生じる(LoganおよびShenk(1984) Proc Natl Acad Sci 81:3655-3659)。さらに、転写エンハンサー(例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー)を用いて、哺乳動物の宿主細胞における発現を増加させることができる。
【0082】
宿主細胞株は場合によって、挿入された配列の発現を変化させる能力または所望される様式に発現されたタンパク質を処理する能力について選択される。このようなタンパク質の修飾としては、限定はされないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化(lipidation)およびアシル化が挙げられる。タンパク質の翻訳後プロセシング(前駆型を切断し成熟型にする)は時々、正確な挿入、折りたたみ、および/または機能にとって重要である。さらに、宿主細胞内の適切な位置(例えば、細胞表面上)もまた重要である。異なる宿主細胞(例えば、COS、CHO、BHK、MDCK、293、293T、COS7など)は、翻訳後活性に関する特異的な細胞機構および特徴的なメカニズムを有し、今回導入される外来性タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実に行うように選択できる。
【0083】
本発明のポリヌクレオチドにコードされるか、またはそのポリヌクレオチドにコードされる配列を有する組換えタンパク質を長期間、高収率で製造するために、安定した発現系が場合によって用いられる。例えば、本発明のポリペプチドを安定して発現する細胞系統を、複製または内在性発現エレメントのウイルス性開始点と選択可能なマーカー遺伝子を含む発現ベクターを用いてトランスフェクトする。例えば、ベクターの導入後、細胞を富栄養培地中で1〜2日間増殖させ、その後、選択培地へと変えた。選択可能なマーカーの目的は、選択するために耐性を与えることであり、それが存在することによって、導入した配列をうまく発現している細胞の増殖および回収を可能とする。したがって、例えば、単一の細胞型に由来する安定した形質転換細胞の耐性凝集塊を、細胞型に適切な組織培養技術を用いて増殖させることができる。
【0084】
本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を用いて形質転換した宿主細胞は場合によって、コードされたタンパク質の発現および細胞培養からの回収を行うのに好適な条件下で培養する。このタンパク質を発現する細胞は、選別、単離および/または精製することができる。組換え細胞によって産生されたタンパク質またはそれらの断片は、分泌されるか、膜に結合するか、または細胞内に保持することができ、それは配列(例えば、膜保持シグナルなどをコードする融合タンパク質)および/または用いたベクターによって決定される。
【0085】
本発明のポリヌクレオチドに対応する発現産物はまた、非動物性(例えば、植物、酵母、真菌、細菌など)の細胞にて製造することができる。Sambrook、BergerおよびAusubelに加えて、細胞培養に関して詳しく述べる以下の全ては、Payneら、(1992) Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems John Wiley & Sons, Inc. New York, NY中に見出される; GamborgおよびPhillips(編)(1995) Plant Cell, Tissue and Organ Culture; Fundamental Methods Springer Lab Manual, Springer-Verlag(Berlin Heidelberg New York)ならびにAtlasおよびParks(編) The Handbook of MIcrobiological Media(1993) CRC Press, Boca Raton, FL。
【0086】
細菌系において、多数の発現ベクターを、発現される産物の意図される用途に応じて選択することができる。例えば、大量のポリペプチドまたはその断片が、抗体の製造に必要とされる場合、容易に精製される融合タンパク質を高レベルで発現するベクターが、都合よく用いられる。このようなベクターとしては、限定はしないが、多機能性E. coli クローニングおよび発現ベクター(例えば、BLUESCRIPT(Stratagene))が挙げられ、このベクター中の目的のコード配列(例えば、本明細書中に見出される配列を含むものなど)を、アミノ末端翻訳開始メチオニンおよびそれに続く7残基のβ−ガラクトシダーゼの配列(触媒的に活性なβガラクトシダーゼ融合タンパク質を生じる)とともにベクターにインフレームでライゲーションできる; pIN ベクター(Van Heeke & Schuster(1989) J Biol Chem 264:5503-5509); pET ベクター(Novagen, Madison WI)など。同様に、酵母(Saccharomyces cerevisiae)において、構成的または誘導性プロモーター(α因子、アルコール酸化酵素およびPGHなど)を含む多数のベクターを、所望の発現産物を製造するために用いることができる。概説については、Ausubel(下記)およびGrantら、(1987); Methods in Enzymology 153:516-544。
【0087】
核酸のハイブリダイゼーション
比較ハイブリダイゼーションを用いて、本発明の核酸の保存的なバリエーションを含め、本発明の核酸(例えば、配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062、および配列番号5の残基1063-1728)を同定することができる。この比較ハイブリダイゼーション法は、本発明の核酸を識別するのに好ましい方法である。さらに、例えば本明細書に記載の配列によって表される核酸に、高ストリンジェントな、超高ストリンジェントなおよび非常に超高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする標的核酸は、本発明の構成をなす。このような核酸の例としては、所定の核酸配列と比較した場合、1または数個のサイレントな核酸置換または保存的な核酸置換を有するものが挙げられる。
【0088】
試験標的核酸は、完全一致の相補的な標的に対するプローブ核酸と比較して少なくとも半分程度よくハイブリダイズする場合に、プローブ核酸に対して特異的にハイブリダイズするとされ、すなわち、完全一致プローブが、完全一致相補的標的に、任意の一致しない標的核酸に対するハイブリダイゼーションに見られる比率よりも少なくとも約5−10倍高いシグナル対ノイズの比率で結合する条件下で、プローブと標的とのハイブリダイゼーションにおけるシグナル対ノイズの比率が上記完全一致の場合の比率の少なくとも半分の高ささであるときをいう。
【0089】
核酸は、結合する場合に、典型的には溶解状態で、「ハイブリダイズ」する。核酸は、種々の十分に特徴付けされた物理化学的な力(例えば、水素結合、溶媒排除、塩基スタッキングなど)によってハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションについて非常に多くのプロトコルが、当該分野で周知である。核酸ハイブリダイゼーションについての詳細なガイドが、Tijssen(1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Acids Prpbes part I chapter 2,「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays,」(Elsevier, New York)、Ausubel、Sambrook、およびBergerならびにKimmel(以下の全て)に見出される。HamesおよびHiggins(1995) Gene Probes 1 IRL Press at Oxford University Press, Oxford, England,(Hames and Higgins 1)ならびにHamesおよびHiggins(1995) Gene Probes 2 IRL Press at Oxford University Press, Oxford, England(Hames and Higgins 2)は、DNAおよびRNA(オリゴヌクレオチドを含む)の合成、標識、検出および定量についての詳細を与える。
【0090】
100個以上の相補的残基を有する相補的核酸を、サザンブロットまたはノザンブロットにてフィルター上でハイブリダイゼーションを行うためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、1mgのヘパリンを含む50%ホルマリンを用いて、42℃にてハイブリダイゼーションを一晩行うことを含む。ストリンジェントな洗浄条件の例は、65℃にて15分間、0.2×SSCを用いて洗浄することを含む(SSC緩衝液および他の核酸ハイブリダイゼーションパラメータに関する詳細については、Sambrook(以下)を参照のこと)。しばしば高ストリンジェントな洗浄が、低ストリンジェントな洗浄に続いて行われ、バックグラウンドのプローブシグナルを除去する。低ストリンジェントな洗浄の例は、40℃にて15分間、2×SSCを用いて洗浄することである。一般的に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて、無関係のプローブについてみられるものよりも、5倍の(またはそれよりも高い)シグナル対ノイズの比率が、特異的なハイブリダイゼーションの検出を示す。
【0091】
ハイブリダイゼーションの後、ハイブリダイズしていない核酸を、一連の洗浄によって除去でき、その洗浄のストリンジェンシーは、所望の結果に応じて調節できる。低ストリンジェントな洗浄条件(より高い塩濃度とより低い温度を用いる)は、感度を高めるが、非特異的なハイブリダイゼーションシグナルおよび高いバックグラウンドシグナルを生じうる。より高ストリンジェントな条件(例えば、より低い塩濃度およびTm値に近似する高い温度を用いる)は、一般的に、主に特異的シグナルを残しながら、バックグラウンドシグナルを低下させる。さらに、Rapley, R.およびWalker, J.M. (編), Molecular Biomethods Handbook(Hummana Press, Inc. 1998を参照のこと)。
【0092】
核酸のハイブリダイゼーション実験(例えば、サザンハイブリダイゼーションおよびノザンハイブリダイゼーション)との関係において「ストリンジェントなハイブリダイゼーション洗浄条件」は、配列依存的であり、異なる環境パラメーター下では異なる。核酸のハイブリダイゼーションに関する詳細なガイドが、Tijssen(1993)(上記)ならびにHamesおよびHiggins, 1および2に見られる。いずれかの試験核酸についての、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は、経験的に容易に決定することができる。例えば、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を決定する場合、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を、選択した一連の基準を満たすまで徐々に高める(例えば、ハイブリダイゼーションまたは洗浄の際の、温度を高める、塩濃度を下げる、界面活性剤の濃度を高めるおよび/または有機溶媒(例えば、ホルマリン)の濃度を高めることによる)。例えば、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を、徐々に高め、それはプローブが、完全に一致する相補的な標的に結合し、その場合に、シグナル対ノイズの比率が、非対応の標的に対してプローブがハイブリダイゼーションしたためにみられる比率よりも、少なくとも5倍高くなるまで行う。
【0093】
一般的に、特定のハイブリダイゼーションアッセイにおいて、シグナル対ノイズの比率が、無関係のプローブについて見られる比率と比べて少なくとも2倍(またはそれ以上(例えば、少なくとも倍、10倍、20倍50倍100倍もしくはそれ以上))である場合、それは特異的なハイブリダイゼーションの検出を示す。本発明との関連において、2つの配列間における少なくともストリンジェントなハイブリダイゼーションを検出することは、例えば、本明細書中の配列表に与えた本発明の核酸との比較的強い構造的類似性を示す。
【0094】
「非常にストリンジェントな」条件は、特定のプローブについての熱融点(Tm)に等しくなるように選択する。Tm値は、(所定のイオン強度およびpH下における)温度であり、かかる温度にて50%の試験配列が、完全に一致するプローブにハイブリダイズする。本発明のために、一般的に、「高ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を、所定のイオン強度およびpH下における特定配列のTm値よりも約5℃低くなるように選択する(下に示すように、高ストリンジェントな条件はまた、比較の用語で表すことができる)。目的のヌクレオチド配列(例えば、「プローブ」)に密接に関連するか、または同一である標的配列は、ストリンジェントなまたは高ストリンジェントな条件下で同定できる。低ストリンジェントな条件は、相補性の低い配列に適している。
【0095】
「超高ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件とは、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件のストリンジェンシーを、完全に一致する相補的な標的核酸に対するプローブの結合についての、シグナル対ノイズの比率が、非対応の標的核酸に対するハイブリダイゼーションにてみられる比率の、少なくとも10倍高くなるまで増加させたものをいう。このような条件下でプローブにハイブリダイズし、その場合のシグナル対ノイズの比率が、完全に一致する相補的な標的核酸のものの少なくとも半分である、標的核酸は、超高ストリンジェントな条件下でプローブ結合するといわれる。
【0096】
ストリンジェントなまたは高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(またはさらによりストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)および洗浄条件を決定する場合、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を、選択した一連の基準を満たすまで徐々に高める(例えば、ハイブリダイゼーションまたは洗浄の際の、温度を高める、塩濃度を下げる、界面活性剤の濃度を高めるおよび/または有機溶媒(例えば、ホルムアミド)の濃度を高めることによる)。例えば、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を徐々に高め、それは、所望されるように、1または複数の本発明のポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書中に与えた配列(例えば配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063, 配列番号1の残基1064-1729, 配列番号5の残基88-1062、および配列番号5の残基1063-1728)から選択される配列もしくは特有部分配列)および/または相補ポリヌクレオチド配列を含むプローブが、完全に一致する相補的な標的(さらに、本明細書中に与えた配列から選択される1または複数の核酸配列もしくは部分配列を含む核酸および/またはそれらの相補的ポリヌクレオチド配列)に結合し、その場合に、シグナル対ノイズの比率が、非対応の標的(例えば、本願提出時の公開されたデータベース(GenBankなど)に存在する既知のインフルエンザ配列から選択される1または複数の配列または部分配列を含むポリヌクレオチド配列および/またはそれらの相補的ポリヌクレオチド配列)へのプローブのハイブリダイゼーションに関して見られる比率の少なくとも2倍(場合によって、5倍、10倍または100倍以上)高くなるまで行われる。
【0097】
本発明のポリヌクレオチド、またはそれらの部分配列を用いて、新規標的核酸を得ることができる。このような標的核酸もまた、本発明の特徴である。例えば、このような標的核酸は、本発明のポリヌクレオチド(配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062、および配列番号5の残基1063-1728)のいずれかに対応する特有のオリゴヌクレオチドプローブに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む。
【0098】
同様に、さらに高いレベルのストリンジェンシーを、関連するハイブリダイゼーションアッセイのハイブリダイゼーション条件および/または洗浄条件を徐々に高めることによって決定できる。例えば、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件のストリンジェンシーを高め、それは、完全に一致する相補的な標的核酸へプローブの結合に関する、シグナル対ノイズの比率が、非対応の標的核酸へのハイブリダイゼーションに関してみられる比率の少なくとも10倍、20倍、50倍、100倍、もしくは500倍またはそれ以上高くなるまで行う。特定のシグナルは、関連アッセイに用いた標識(例えば、蛍光標識、比色分析用標識、放射性標識など)によって決まる。このような条件下でプローブにハイブリダイズし、その場合のシグナル対ノイズの比率が、完全に一致する相補的な標的核酸においてみられる比率の少なくとも半分である標的核酸は、非常に超ストリンジェントな条件下でプローブに結合するといわれ、これは本発明の構成をなす。
【0099】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、前記にかかわらず、それらがコードするポリペプチドが実際に同一である場合、実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが、遺伝暗号によって可能となる最大限のコドン縮重を用いて作製された場合に、生じる。
【0100】
目的の生体分子のクローニング、突然変異誘発および発現
本発明に適用できる分子生物学的技術(例えば、クローニング、突然変異、細胞培養など)を記載する一般的な教科書としては、以下のものが挙げられる;BergerおよびKimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA(Berger); Sambrookら、Molecular Cloning - A Laboratory Manual(第3版), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 2000(「Sambrook」)ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubelら、(編)Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc.,(supplemented through 2002)(「Ausubel」))。これらの教材は、突然変異誘発、ベクターの使用、プロモーターおよび他の多くの関連トピック(例えば、HAおよび/またはNA分子などの産生など)を記載している。
【0101】
種々の型の突然変異誘発を場合によって、本発明に用いて、例えば、新規もしくは新たに単離したHAおよび/もしくはNA分子を製造および/または単離したり、ならびに/あるいは本発明のポリペプチド(例えば配列番号 2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562におけるもののようなHAおよびNA分子)をさらに改変/突然変異させたりする。突然変異誘発としては、限定はしないが、部位特異的、ランダム点突然変異誘発、相同組換え(DNA シャッフリング)、ウラシル含有テンプレートを用いた突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、ホスホロチオエート改変型DNA突然変異誘発、ギャップを有する二本鎖DNAを用いた突然変異誘発、などが挙げられる。さらなる好適な方法としては、点ミスマッチ修復、修復欠損宿主系統を用いた突然変異誘発、限定選択および限定精製、欠失突然変異誘発、全遺伝子合成による突然変異誘発、二本鎖損傷修復などが挙げられる。突然変異誘発(例えば、キメラ構築物を含む)もまた本発明中に含まれる。一実施形態において、突然変異誘発は、天然の分子または変化もしくは突然変異した天然の分子に関する既知の情報(例えば、配列、配列比較、物理的特性、結晶構造など)によって導くことができる。
【0102】
上記教科書および本明細書中に見られる実施例は、これらの方法および以下の出版物(およびそれらに引用される参考文献)を記載する: Sieberら、Nature Biotechnology, 19:456-460(2001); Lingら、Approaches to DNA mutagenesis: an overview, Anal Biochem 254(2): 157-178(1997); Daleら、Oligonucleotide-directed random mutagenesis using the phosphorothioate method, Methods Mol Biol 57:369-374(1996); I. A. Lorimer, I. Pastan, Nucleic Acids Res 23, 3067-8(1995); W. P. C. Stemmer, Nature 370, 389-91(1994); Arnold, Protein engineering for unusual environments, Current Opinion in Biotechnology 4:450-455(1993); Bassら、Mutant Trp repressors with new DNA-binding specificities, Science 242:240-245(1988); Fritzら、Oligonucleotide -directed construction of mutations: a gapped duplex DNA procedure without enzymatic reactions in vitro, Nucl Acids Res 16: 6987-6999(1988); Kramerら、Improved enzymatic in vitro reactions in the gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed construction of mutations, Nucl Acids Res 16: 7207(1988); Sakamar and Khorana, Total synthesis and expression of a gene for the a-subunit of bovine rod outer segment guanine nucleotide-binding protein(transducin), Nucl Acids Res 14: 6361-6372(1988); Sayersら、Y-T Exonucleases in phosphorothioate-based oligonucleotide -directed mutagenesis, Nucl Acids Res 16:791-802(1988); Sayersら、strand specific cleavage of phosphorothioate-containing DNA by reaction with restriction endnucleases in the presence of ethidium bromide,(1988) Nucl Acids Res 16: 803-814; Carter, Improved oligonucleotide -directed mutagenesis using M13 vectors, Methods in Enzymol 154: 382-403(1987); Kramer & Fritz oligonucleotide -directed construction of mutations via gapped duplex DNA, Methods in Enzymol 154:350-367(1987); Kunkel, The efficiency of oligonucleotide directed mutagenesis, in Nucleic Acids & Molecular Biology(Eckstein, F. and Lilley, D.M.J. eds., Springer Verlag, Berlin))(1987); Kunkelら、Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection, Methods in Enzymol 154, 367-382(1987); Zoller & Smith, oligonucleotide -directed mutagenesis: a simple method using two oligonucleotide primers and a single-strand DNA template, Methods in Enzymol 154:329-350(1987); Carter, Site-directed mutagenesis, Biochem J 237:1-7(1986); Eghtedarzadeh & Henikoff, Use of oligonucleotides to generate large deletions, Nucl Acids Res 14: 5115(1986); Mandecki, Oligonucleotide-directed double-strand break repair in plasmids of Escherichia coli: a method for site-specific mutagenesis, Proc Natl Acad Sci USA, 83:7177-7181(1986); Nakamaye & Eckstein, Inhibition of restriction endonuclease Nci I cleavage by phosphorothioate groups and its application to oligonucleotide-directed mutagenesis, Nucl Acids Res 14: 9679-9698(1986); Wellsら、Importance of hydrogen-bond formation in stabilizing the transition state of subtilisin, Phil Trans R Soc Lond A 317: 415-423(1986); Botstein & Shortle, Strategies and applications of in vitro mutagenesis, Science 229:1193-1201(1985); Carterら、Improved oligonucleotide site-directed mutagenesis using M13 vectors, Nucl Acids Res 13: 4431-4443(1985); Grundstroemら、oligonucleotide-directed mutagenesis by microscale 'shot-gun' gene synthesis, Nucl Acids Res 13: 3305-3316(1985); Kunkel, Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection, Proc Natl Acad Sci USA 82:488-492(1985); Smith, In vitro mutagenesis, Ann Rev Genet 19:423-462(1985); Taylorら、The use of phosphorothioate-modified DNA in restriction enzyme reactions to prepare nicked DNA, Nucl Acids Res 13: 8749-8764(1985); Taylorら、The rapid generation of oligonucleotide-directed mutations at high frequency using phosphorothioate-modified DNA, Nucl Acids Res 13: 8765-8787(1985); Wellsら、Cassette mutagenesis: an efficient method for generation of multiple mutations at defined sites, Gene 34:315-323(1985); Kramerら、The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction, Nucl Acids Res 12: 9441-9456(1984); Kramerら、Point Mismatch Repair, Cell 38:879-887(1984); Nambiarら、Total synthesis and cloning of a gene coding for the ribonuclease S protein, Science 223: 1299-1301(1984); Zoller & Smith, oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors, Methods in Enzymol 100:468-500(1983);およびZoller & Smith, oligonucleotide-directed mutagenesis using M13-derived vectors: an efficient and general procedure for the production of point mutations in any DNA fragment, Nucl Acids Res 10:6487-6500(1982)。上記多くの方法についてのさらなる詳細は、Methods in Enzymol Volume 154に見出すことができ、これらはまた、様々な突然変異誘発、遺伝子単離、遺伝子発現および他の方法に関するトラブルシューティングの問題に関する有用な操作を記載する。
【0103】
例えば、本発明の突然変異誘発(例えば、本発明のHAおよび/またはNA分子のライブラリーを突然変異させるか、または変化させる)に用いるためのオリゴヌクレオチドは一般に、例えば、自動合成機(Needham-VanDevanterら、Nucleics Res, 12:6159-6168(1984)に記載される)を使用して、固相ホスホラミダイトトリエステル法(Beaucage and Caruthers, Tetrahedron Letts 22(20):1859-1862,(1981)に記載される)に従って化学的に合成される。
【0104】
さらに、本質的に、任意のポリヌクレオチドは、種々の商業的供給源(例えば、The Midland Certified Reagent Company(mcrc@oligos.com), The Great American Gene Company(www.genco.com), ExpressGen Inc.(www.expressgen.com), Operon Technologies Inc.(Alameda, CA)およびその他多数)によってオーダーメイドされるか、またはそれらに普通に注文できる。同様に、ペプチドおよび抗体は、種々の供給源(例えば、PeptidoGenic(pkim@ccnet.comにて入手できる)、HTI Bio-products, Inc.(www.htibio.com)、BMA Biomedicals Ltd.(U.K.)、Bio.Synthesis, Inc.,およびその他多数)によってオーダーメイドされうる。
【0105】
本発明はまた、HAおよび/もしくはNA分子または本発明の他のポリペプチドおよび/もしくはポリヌクレオチド、例えば配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729, 配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728を含む宿主細胞および生物に関する。宿主細胞は一般的に、本発明のベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターでありうる)を用いて操作する(例えば、形質転換、形質導入またはトランスフェクトする)。ベクターは、例えば、プラスミド、細菌、ウイルス、裸のポリヌクレオチドまたはコンジュゲート化ポリヌクレオチドの形態でありうる。ベクターは、エレクトロポレーション(Fromら、Proc Natl Acad Sci USA 82, 5824(1985)を参照のこと)、ウイルスベクターによる感染、あるいは、小さなビーズもしくは粒子のマトリックス内またはその表面に核酸を伴う小さな粒子を用いた高速弾道貫入(high velocity ballistic penetration)(Kleinら、Nature 327, 70-73(1987))を含む、標準的な方法によって、細胞および/またはマイクロ生物体に導入する。Berger、Sambrook、およびAusubelは、種々の適切な形質転換法を提供する。上記を参照のこと。
【0106】
標的核酸に細菌細胞へ導入するためのいくつもの周知の方法が利用可能であり、これらの方法のいずれもが、本発明に使用可能である。これらの方法としては、レシピエント細胞とDNAを含む細菌のプロトプラストとの融合、エレクトロポレーション、噴出体の照射(projectile bombardment)、およびウイルスベクターを用いた感染などが挙げられる。細菌細胞を用いて、本発明のDNA構築物を含む複数のプラスミドを増幅することができる。細菌をlog段階まで増殖し、そして細菌内のプラスミドを、当該分野で公知の種々の方法によって単離できる(例えば、Sambrookを参照のこと)。さらに、非常に多くのキットが、細菌からプラスミドを精製するために商業的に入手可能である(例えば、Pharmacia BiotechよりEasyPrepTM、FlexiPrepTM; StratageneよりStrataCleanTM;およびQiagenよりQIAprepTMを参照のこと)。次に、単離、精製したプラスミドを、さらに操作して、細胞にトランスフェクトするために用いられるか、または生物体を感染させるために関連ベクターに組み入れられる他のプラスミドを製造する。一般的なベクターは、転写および翻訳ターミネーター、転写および翻訳開始配列、ならびに特定の標的核酸の発現を調節するのに有用なプロモーターを含む。ベクターは場合によって、少なくとも1つの独立ターミネーター配列、真核生物もしくは原核生物またはその両方にてカセットの複製を可能とする配列(例えば、シャトルベクター)ならびに原核生物および真核生物の両方の系のための選択マーカーを含む一般的な発現カセットを含む。ベクターは、原核生物、真核生物または場合により両方における複製および組み込みに好適である。Giliman & Smith, Gene 8:81(1979); Robertsら、Nature, 328:731(1987); Schneider, B.ら、Protein Expr Purif 6435:10(1995); Ausubel, Sambrook, Berger(上記全て)を参照のこと。クローニングに有用な細菌および細菌ファージのカタログが、例えば、ATCCより与えられる(例えば、ATCCより出版されるThe ATCC Catalogue of Bacteria and Bacteriophage(1992) Ghernaら(編) )。シークエンス、クローニングおよび分子生物学の他の態様のための、理論的考察に基づく、さらなる基本的な方法はまた、Watsonら(1992)Recombinant DNA Second Edition Scientific American Books, NYに見いだされる。上記を参照のこと。本明細書の配列について有用であるさらなるベクターは、ワクチンのためのインフルエンザウイルスの製造に関する章およびそこで参照されている文献に例示されている。
【0107】
ポリペプチドの製造および回収
好適な宿主細胞系統または株に形質導入し、適切な細胞密度まで宿主細胞を増殖させた後、選択したプロモーターを、適切な方法(例えば、温度変化または化学物質による導入)によって導入し、そして細胞をさらなる期間培養する。いくつかの実施形態において、次に、分泌性ポリペプチド産物(例えば、分泌性融合タンパク質形態のHAおよび/またはNAポリペプチド)を培養培地から回収する。他の実施形態において、本発明のHAおよび/またはNAポリペプチドを含むウイルス粒子を、細胞より製造する。あるいは、細胞を遠心分離によって回収し、物理的または化学的手段によって粉砕し、そして生じた粗製抽出物をさらなる精製のために確保した。タンパク質を発現するために用いた真核細胞または細菌細胞は、当業者に周知である都合の良いいずれかの方法(凍結融解を繰り返す、超音波処理、力学的な破壊もしくは細胞溶解剤の使用、または他の方法を含む)によって粉砕できる。さらに、本発明のHAおよび/またはNAポリペプチド産物を発現する細胞を、細胞からポリペプチドを分離することなく利用できる。このような状況において、本発明のポリペプチドは場合によって、細胞表面上に発現され、(例えば、抗体などに結合する、細胞表面上のHAおよび/またはNA分子(またはそれらの断片、例えば、融合タンパク質などを含む)を有することに基づいて)試験される。このような細胞もまた、本発明の特徴である。
【0108】
発現されたポリペプチドは、組換え細胞の培養物から、当該分野で周知である複数の方法(硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー(例えば、当業者に公知であるタグ付けシステムのいずれかを用いたもの)、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む)のいずれかによって回収、および精製することができる。所望される場合、タンパク質の折りたたみ工程を用いて、成熟型タンパク質の構造を達成するために用いることができる。さらに、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、最終精製工程に用いることができる。本明細書中に示した参考文献に加えて、種々の精製法が、当該分野で周知であり、それは例えば、Sandana(1997) Bioseparation of Proteins, Academic Press, Inc.;ならびにBollagら、(1996) Protein Methods, 第2版Wiley-Liss, NY; Walker(1996) The Protein Protocols Handbook Humana Press, NJ, HarrisおよびAngal(1990) Protein Purification Applications: A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, England; HarrisおよびAngal Protein Purification Methods: A Practical Approach IRL Press at Oxford, Oxford, England; Scopes(1993) Protein Purification: Principles and Practice 第3版 Springer Verlag, NY; JansonおよびRyden(1998) Protein Purification: Principles, High Resolution Methods and Applications, 第2版 Wiley-VCH, NY; ならびに Walker(1998) Protein Protocols on CD-ROM Humana Press, NJ、中に挙げられた方法を含む。
【0109】
本発明の発現されたポリペプチドが、ウイルスにて製造された場合、ウイルスは一般に、感染した(トランスフェクトした)細胞が増殖した培養培地から回収される。一般に、粗製培地を、インフルエンザウイルスを濃縮する前に、清澄化させる。一般的な方法としては、限外濾過、硫酸バリウムへの吸着および溶出、ならびに遠心分離が挙げられる。例えば、感染培養物に由来する粗製培地をまず、細胞の残骸および他の大きな微粒子物質を除去するのに十分な時間(例えば、10〜30分間)、遠心分離する(例えば、1000〜2000×g)ことによって、清ませることができる。場合によって、次に清ました培地上清を遠心分離し(例えば、15,000×gにて、およそ3〜5時間 )、インフルエンザウイルスをペレット化する。適切な緩衝液(例えば、STE(0.01 M Tris-HCl; 0.15 M NaCl; 0.0001 M EDTA)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)(pH 7.4)など)中にウイルスペレットを再懸濁した後、ウイルスを、ショ糖(60%-12%)または酒石酸カリウム(50%〜10%)を用いた密度勾配遠心分離によって濃縮する。連続的または段階的勾配(例えば、12%ずつ4段階の12%〜60%のショ糖勾配)が好適である。勾配物を、回収のための明確なバンドにウイルスを濃縮するのに十分なスピード、および時間で遠心分離する。あるいは、最大規模の商業的用途のために、ウイルスを連続的な様式で操作するゾーン遠心分離ローターを使用して密度勾配物より溶出する。当業者が組織培養からインフルエンザウイルスを調製するのに十分なさらなる詳細は、例えば、Nicholsonら(編) Textbook of Influenza pp. 324-332中のFurminger. Vaccine Production; Mertenら、(1996) Production of influenza virus in cell cultures for vaccine preparation, in Cohen & Shafferman(編) Novel Strategies in Design and Production of Vaccines pp. 141-151,および米国特許第5,690,937号に提供される。所望される場合、回収したウイルスを、安定剤としてのスクロースホスフェートグルタメート(SPG)存在下で−80℃にて保存できる。
【0110】
あるいは、無細胞転写/翻訳系を用いて、アミノ酸配列あるいはその部分配列、例えば、配列番号2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562などの配列、または本発明のポリヌクレオチド配列、例えば、配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063, 配列番号1の残基1064-1729, 配列番号5の残基88-1062、および配列番号5の残基1063-1728によりコードされる配列を含むポリペプチドを製造できる。複数の好適なin vitroでの転写および翻訳系が市販されている。in vitroでの転写および翻訳プロトコルの一般的なガイドが、Tymms(1995) In vitro Transcription and Translation Protocols: Methods in Molecular Biology Volume 37, Garland Publishing, NYに見出される。
【0111】
さらに、ポリペプチドまたはそれらの部分配列(例えば、抗原性ペプチドを含む部分配列)を、手動で、または自動システム、固相技術を用いた直接的なペプチド合成によって製造できる(Stewartら、(1969) Solid-Phase Peotide Synthesis, WH Freeman Co, San Francisco; Merrifield J(1963) J Am Chem Soc 85:2149-2154を参照のこと)。例示的な自動システムとしては、Applied Biosystems 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer, Foster City, CA)が挙げられる。所望される場合、部分配列を別々に化学的に合成し、化学的方法を用いて組み合わせ、全長ポリペプチドを製造することができる。
【0112】
修飾アミノ酸
本発明の発現したポリペプチドは、1または複数の修飾アミノ酸を含むことができる。修飾アミノ酸が存在することによって、例えば、(a)ポリペプチドの血清半減期を延伸させること、(b)ポリペプチドの抗原性を減少/増加させること、(c)ポリペプチドの保存安定性を増加させること、などに都合よくありうる。アミノ酸は、例えば、組換え製造の間に、翻訳と同時にもしくは翻訳後に修飾されるか(例えば、哺乳動物細胞での発現の間のN-X-S/TモチーフにおけるN結合型グリコシル化)または合成手段によって(例えば、PEG化によって)修飾される。
【0113】
修飾アミノ酸の非限定的な例としては、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、プレニル化(例えば、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸など、および例えば、脂質部分または他の有機誘導剤にコンジュゲートすることによって修飾されたアミノ酸が挙げられる。アミノ酸を修飾することについて当業者をガイドするのに適した参考文献には、多数の論文が掲載される。プロトコルの例は、Walker(1998) Protein Protocols on CD-ROM Human Press, Towata, NJに見いだされる。
【0114】
融合タンパク質
本発明はまた、本発明の配列(例えば、HAおよび/またはNAポリペプチドをコードするもの、例えば、配列番号2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340, 配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340, および配列番号6の残基341-562)またはそれらの断片と、例えば、免疫グロブリン(もしくはその一部)、例えば、GFP(緑色蛍光タンパク質)または他の同様のマーカーなどをコードする配列との融合体を含む融合タンパク質を提供する。このような融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、本発明の別の態様である。本発明の融合タンパク質は場合によって、例えば、本発明の非融合タンパク質と同様の用途の用いられる(例えば、治療的、予防的、診断的、実験的用途など、本明細書中に記載される用途を含む)。免疫グロブリン配列とマーカー配列との融合に加えて、本発明のタンパク質はまた場合によって、例えば、融合タンパク質の選択および/または融合タンパク質の特定の細胞型、領域などに対するターゲティングを可能とする配列と融合する。
【0115】
抗体
本発明のポリペプチドを用いて、本明細書中に与えられたポリペプチドおよび/または本発明のポリヌクレオチド(例えば、本明細書中に示されたもの)にコードされるポリペプチドならびにそれらの同類的変異体に特異的な抗体を製造することができる。上に述べたポリペプチドに特異的な抗体は、例えば、標的ポリペプチドの活性、分布および発現に関して、診断および治療目的などに有用である。
【0116】
本発明のポリペプチドに特異的な抗体は、当業者に周知である方法で製造することができる。このような抗体としては、限定はしないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、一本鎖、Fab断片およびFab発現ライブラリーで製造される断片が挙げられる。
【0117】
ポリペプチドは、抗体製造のために生物学的活性を必要としない(例えば、全長の機能的赤血球凝集素またはノイラミニダーゼは必要ではない)。しかし、ポリペプチドまたはオリゴペプチドは、抗原性でなけらなならない。特異的抗体を誘導するために用いられるペプチドは一般に、少なくとも約4 個のアミノ酸、しばしば少なくとも5個または10個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有する。ポリペプチドの短いストレッチは、別のタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン)およびキメラ分子に対して製造される抗体と融合することができる。
【0118】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を製造するための非常に多くの方法が当業者に公知であり、本発明のポリペプチド、および/または本発明のポリヌクレオチド配列にコードされるポリペプチドなどに特異的な抗体を製造することに適合できる。例えば、Coligan(1991) Current Protocols in Immunology Wiley/Greene, NY; Paul(編)(1998) Fundamental Immunology, 第4版, Lippincott-Raven, Lippincott Williams & Wilkins; HarlowおよびLane(1989)Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press, NY; Stitesら、(編) Basic and Clinical Immunology(第4版) Lange Medical Publications, Los Altos, CA、およびそれらに引用される参考文献; Goding(1986)Monoclonal Antibodies: Principles and Practice(第2版) Academic Press, New York, NY; ならびにKohlerおよびMilstein(1975) Nature 256: 495-497を参照のこと。抗体調製のための他の好適な技術は、ファージまたは同様のベクター中の組換え抗体のライブラリーを選択することを含む。Huseら、(1989) Science 246: 1275-1281;およびWardら、(1989) Nature 341: 544-546を参照のこと。特異的なモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体ならびに抗血清は一般に、KDが、例えば、少なくとも約0.1μM、少なくとも約0.01μMまたはそれ以下、一般に少なくとも約0.001μMまたはそれ以下で用いて結合する。
【0119】
特定の治療的用途に、ヒト化抗体が望ましい。キメラ(ヒト化)抗体を製造するための詳細な方法は、米国特許第5,482,856号に見出すことができる。ヒト化抗体および他の抗体の製造技術および操作技術のさらなる詳細は、Borrebaeck(編)(1995)Antibody Engineering, 第2版 FreemanおよびCompany, NY(Borrebaeck); McCaffertyら(1996)Antibody Engineering, A Practical Approach IRL at Oxford Press, Oxford, England(McCafferty)、ならびにPaul(1995)Antibody Engineering Protocols Humana Press, Towata, NJ(Paul)に見出すことができる。特定の手順に関するさらなる詳細は、例えば、Ostbergら(1983), Hybridoma 2: 361-367, Ostberg, 米国特許第4,634,664号、およびEngelmanら米国特許第4,634,666号に見出すことができる。
【0120】
免疫反応性によるポリペプチドの定義付け
本発明のポリペプチドが、種々の新しいポリペプチド配列(例えば、HAおよびNA分子を含む)を提供するために、ポリペプチドはまた、例えば、免疫学的アッセイにて、認識されうる新しい構造的特徴を与える。本発明のポリペプチド、および抗血清に結合されるポリペプチドに特異的に結合する抗血清の製造は、本発明の特徴である。
【0121】
例えば、本発明はポリペプチド(例えば、HAおよびNA分子)を含み、かかるポリペプチドは、本明細書中に与えられた配列(例えば、配列番号2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340, 配列番号2の残基341-562、配列番号6の残基16-340、および配列番号6の残基341-562)のうちの1または複数から選択されるアミノ酸配列を含む免疫源などに対して製造された抗体または抗血清に特異的に結合するか、それらと特異的に免疫反応する。他の相同体との交差反応を取り除くために、抗体または抗血清を、出願時の公開データベースで見出されるHAおよび/またはNA分子(例えば、「対照」ポリペプチド)を用いてサブトラクションする。核酸、その核酸にコードされるポリペプチドに相当する他の対照配列を製造し、抗体/抗血清をサブトラクションするために用いる。
【0122】
ある典型的な形態において、免疫アッセイは、ポリクローナル抗血清を使用し、かかる抗血清は、本明細書中の配列(例えば、配列番号2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562, 配列番号6の残基16-340, および配列番号6の残基341-562)など、またはそれらの実質的な配列(すなわち、与えられた全長配列の少なくとも約30%)に相当する1または複数の配列を含む1または複数のポリペプチドに対して生じた。本配列由来の生じうるポリペプチドの免疫原のセットは、集合的に「免疫原性ポリペプチド」と以下いう。得られた抗血清が場合によって、赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼの対照相同体に対して低い交差反応を有するように選択し、そしてこのような交差反応を、免疫アッセイにポリクローナル抗血清を使用する前に、例えば、1または複数の赤血球凝集素およびノイラミニダーゼの対照相同体を用いた免疫吸着によって、除去する。
【0123】
免疫アッセイに使用するための抗血清を製造するために、1または複数の免疫原性ポリペプチドを、本明細書中に記載されるように製造および精製する。例えば、組換えタンパク質を、組換え細胞にて製造できる。マウスの同系交配(マウスの実質的な遺伝的同一性により、より再現性がある結果が得られるために、本アッセイに用いられる)を、標準的なアジュバント(例えば、フロイントアジュバントなど)と組み合わせた免疫原性タンパク質と標準的なマウス免疫化プロトコルを用いて免疫化する(特定の免疫反応を決定するために使用できる抗体製造、免疫アッセイ形式、および条件の標準的な説明については、例えば、HarlowおよびLane(1988)Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照のこと)。抗体に関するさらなる参考文献および考察はまた、本明細書中に見出され、本発明に用いて、免疫反応によってポリペプチドを同定することができる。あるいは、本明細書中に開示される配列に由来する1または複数の合成または組換えポリペプチドを、担体タンパク質にコンジュゲートし、免疫原として用いる。
【0124】
ポリクローナル血清を回収し、免疫アッセイ(例えば、固相支持体上に固定した1または複数の免疫原性タンパク質を用いた固相免疫アッセイ)にて免疫原性ポリペプチドに対するタイターを評価する。106またはそれ以上のタイターを有するポリクローナル抗血清を選択し、プールして、そして赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼの対照ポリペプチドを用いてサブトラクションして、サブトラクション・プール・タイター評価したポリクローナル抗血清を製造する。
【0125】
サブトラクション・プール・タイター評価したポリクローナル抗血清を、比較免疫アッセイにて、対照相同体に対する交差反応について検査する。この比較アッセイにおいて、特徴的な結合条件を、サブトラクション・タイター評価したポリクローナル抗血清について決定し、かかる血清は、タイター評価されたポリクローナル抗血清が対照相同体に結合する場合と比べて、免疫原性ポリペプチドに結合する場合に少なくとも約5〜10フォールド高い、シグナル対ノイズの比率を生じる。すなわち、結合反応のストリンジェンシーは、非特異的な競合体(例えば、アルブミンまたは脱脂粉乳)を添加するか、および/または塩条件、温度などを調節することによって、調節する。これらの結合条件は、その後続くアッセイに用いられ、かかるアッセイは、試験ポリペプチド(免疫原性ポリペプチドおよび/または対照ポリペプチドと比較されるポリペプチド)が、プール・サブトラクションしたポリクローナル抗血清と特異的に結合するか否かを決定するためのものである。特に、試験ポリペプチドが、特徴的な結合条件下にて対照受容体相同体よりも少なくとも2〜5倍高い、シグナル対ノイズの比率を示し、かつ免疫原性ポリペプチドと比べて少なくとも約1/2の、シグナル対ノイズの比率を示す場合、それは既知の受容体と比べて、免疫原性ポリペプチドとの実質的な構造類似性を共有し、それ故に、本発明のポリペプチドである。
【0126】
別の例において、競合的結合形式における免疫アッセイを、試験ポリペプチドを検出するために用いる。例えば、示したように、交差反応抗体を、プールした抗血清混合物から、対照ポリペプチドを用いた免疫吸着によって取り除く。次に、免疫原性ポリペプチドを、固体支持体上に固定し、かかる固体支持体を、サブトラクション・プールした抗血清に曝した。試験タンパク質を、アッセイに添加し、プール・サブトラクションした抗血清への結合を競合する。固定したタンパク質と比べて、プール・サブトラクションした抗血清への結合を競合する試験タンパク質の能力を、結合を競合するためにアッセイに加えられた免疫原性ポリペプチドの能力と比較する(免疫原性ポリペプチドは、プールした抗血清への結合に関して、固定した免疫原性ポリペプチドと効果的に競合する)。試験タンパク質の%交差反応を、標準的な計算を用いて算出する。
【0127】
パラレルアッセイにて、プール・サブトラクションされた抗血清への結合を競合する対照タンパク質の能力を場合によって、抗血清への結合を競合する免疫原性ポリペプチドの能力と比較して決定する。さらに、対照ポリペプチドの%交差反応を、標準的な計算を用いて算出する。%交差反応が、対照ポリペプチドと比べて試験ポリペプチドについて少なくとも5〜10倍高いか、または試験ポリペプチドの結合が、およそ免疫原性ポリペプチドの結合範囲である場合、試験ポリペプチドは、プール・サブトラクションされた抗血清に特異的に結合するとされる。
【0128】
一般的に、免疫吸着・プールされた抗血清を、本明細書中に記載される競合的結合免疫アッセイに用いて、免疫原性および/または対照ポリペプチドと任意の試験ポリペプチドを比較することができる。この比較を行うために、免疫原性ポリペプチド、試験ポリペプチドおよび対照ポリペプチドを、広範な濃度でそれぞれアッセイし、そして例えば、固定した対照タンパク質、試験タンパク質または免疫原性タンパク質へのサブトラクションした抗血清の結合を50%阻害するのに必要とされる各ポリペプチドの量を、標準的な技術を用いて決定する。競合アッセイにて結合に必要とされる試験ポリペプチドの量が、必要とされる免疫原性ポリペプチドの量の2倍未満であり、試験ポリペプチドが、免疫原性タンパク質に対して製造された抗体に特異的に結合するといわれる場合、与えられた量は、対照ポリペプチドの少なくとも約5〜10倍高い。
【0129】
特異性をさらに決定する場合、プールした抗血清は場合によって、(対照ポリペプチドよりもむしろ)免疫原性ポリペプチドを用いて完全に免疫吸着し、その免疫吸着は、検出される、免疫原性ポリペプチドへの得られた免疫原性ポリペプチドのサブトラクション・プールした抗血清の結合が、わずかであるかまたは無くなるまで行う。次に、この完全に免疫吸着した抗血清を、試験ポリペプチドとの反応性について検査する。みられる反応性がわずかであるか、または無い場合(すなわち、完全に免疫吸着した抗血清の免疫原性ポリペプチドへの結合について見られる、シグナル対ノイズの比率が2倍未満)、試験ポリペプチドは、免疫原性タンパク質によって誘発された抗血清に特異的に結合される。
【0130】
核酸およびポリペプチド配列変異体
本明細書中に記載されるように、本発明は、核酸ポリヌクレオチド配列およびポリペプチドアミノ酸配列(例えば、赤血球凝集素およびノイラミニダーゼ配列)ならびに、例えば、その配列を含む組成物および方法を提供する。この配列の例は、本明細書中に開示される(例えば、配列番号1-8)。しかし、当業者は、本発明が本明細書中に開示されるこれらの配列に必ずしも限定されず、そして本発明がまた、本明細書中に記載される機能を有する多数の関連配列および無関連の配列(例えば、HA分子および/またはNA分子をコードするもの)を提供することがわかる。
【0131】
当業者はまた、開示された配列の多数の変異体が、本発明に含まれることがわかるであろう。例えば、機能的に同一である配列を生じる、開示された配列の同類的なバリエーションが、本発明に含まれる。開示された配列の少なくとも1つにハイブリダイズする核酸ポリヌクレオチド配列の変異体は、本発明に含まれると考えられる。例えば、標準的な配列比較技術によって決定されるような、本明細書中に開示される配列の特有配列もまた、本発明中に含まれる。
【0132】
サイレントなバリエーション
遺伝暗号の縮重により、本発明のポリペプチドおよび/またはウイルスをコードする種々の核酸配列が場合によって製造され、そのうちのいくつかは、HAおよびNA核酸ならびに本明細書中のポリペプチド配列に対して低レベルの配列同一性を保有できる。以下は、多くの生物学および生化学の教材に見られる、遺伝子暗号を特定する典型的なコドン表を与える。
【表1】

【0133】
コドン表は、多数のアミノ酸が、2以上のコドンでコードされていることを示す。例えば、コドン(AGA、AGG、CGA、CGC、CGGおよびCGU)の全ては、アミノ酸アルギニンをコードする。コドンによって、アルギニンが特定される、本発明の核酸の全ての位置にて、コドンを、コードされるポリペプチドを変えることなく、対応する上記コドンのいずれかに変えることができる。RNA配列中のUは、DNA配列中のTに対応することが理解される。
【0134】
このような「サイレントなバリエーション」は、以下に記載される「保存的に改変されたバリエーション」のうちの1種である。当業者は、核酸中の各コドン(通常メチオニンについての唯一のコドンであるATGおよび通常トリプトファンについての唯一のコドンであるTTGは除く)は、機能的に同一であるポリペプチドをコードするように、標準的な技術によって改変できることがわかる。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレントなバリエーションは、記載した配列のいずれかにより示されたものとされる。したがって、本発明は明示的に、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列の生じうるバリエーションのそれぞれおよび全てを提供し、かかるバリエーションは、可能性のあるコドン選択に基づいて組合せを選択することによって製造することができる。これらの組合せを、本発明の赤血球凝集素またはノイラミニダーゼポリペプチドをコードする核酸配列に用いられるように、標準的な3組遺伝暗号(例えば、表1に示したもの、または当該分野で商業的に利用可能であるもの)にしたがって製造される。本明細書中の全ての核酸の上記のような全てのバリエーションは、遺伝暗号と組み合わせて配列を考慮することによって、特異的に提供および記載される。当業者は、本明細書中の方法を用いて、これらのサイレントな置換を十分に行うことが可能である。
【0135】
保存的バリエーション
遺伝暗号の縮重により、「サイレントな置換体」(すなわち、コードされたポリペプチドに変化を生じない核酸配列の置換体)は、アミノ酸をコードする本発明の全ての核酸配列の特徴を示す。同様に、アミノ酸配列中の1または数個のアミノ酸が、高度に類似した特性を有する異なるアミノ酸で置換されている「保存的アミノ酸置換体」はまた、開示された構築物(例えば、本明細書中の置換体)に高度に類似しているために容易に同定される。開示された配列それぞれのこのような保存的バリエーションは、本発明の特徴である。
【0136】
特定の核酸配列の「保存的バリエーション」とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸か、またはその中の核酸がアミノ酸配列をコードしないときは、本質的に同一の配列をいう(以下の表2を参照のこと)。当業者は、コード配列中の単一アミノ酸または小さな割合のアミノ酸(一般的に5%未満、より一般的に4%、3%、2%または1%未満)を、変化、付加または欠失する個々の置換、欠失または付加が、「保存的に改変されたバリエーション」であり、その変化によって、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、または化学的に類似したアミノ酸とのアミノ酸置換を生じることがわかる。したがって、リストに挙げた本発明のポリペプチド配列の「保存的バリエーション」は、同一の保存的置換基を有する保存的に選択したアミノ酸を用いた小さな割合(ポリペプチド配列のアミノ酸の、一般的に5%未満、より一般的に4%、3%、2%または1%未満)の置換を含む。最後に、コードされた核酸分子の活性を変化させない配列の付加(例えば、非機能的配列の付加)は、基本的核酸の保存的バリエーションである。
【表2】

【0137】
特有のポリペプチド配列およびポリヌクレオチド配列
一の態様において、本発明は、本明細書中に開示されるHAおよびNA分子の配列(配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062、および配列番号5の残基1063-1728)より選択される核酸中の特有の配列を含む核酸を提供する。特有の配列は、例えば、出願時のGenBankまたは他の同様の公開データベースに見出される核酸に相当する核酸と比べて特有である。アライメントを、例えば、デフォルトパラメータにセットしたBLASTを用いて実施することができる。任意の特有の部分配列は、本発明の核酸を同定するために、例えば、プローブとして有用である。上記参照のこと。
【0138】
同様に、本発明は、本明細書中に開示されるHAおよびNA分子の配列(例えば、配列番号2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340、配列番号2の残基341-562, 配列番号6の残基16-340, および配列番号6の残基341-562)より選択されるポリペプチド中に特有の配列を含むポリペプチドを含む。ここで、特有の配列は、例えば、出願時のGenBankまたは他の同様の公開データベースなどに見出されるポリヌクレオチド配列に対応するアミノ酸に相当するポリペプチドと比べて特有である。
【0139】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下で特有のコードオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする標的核酸を提供し、かかるオリゴヌクレオチドは、本発明のHAおよびNA分子の配列より選択されたポリペプチド中に特有の配列をコードし、かかる特有の配列は、任意の対照ポリペプチド(例えば、出願時のGenBankまたは他の同様の公開データベースなどに見出される核酸に相当する核酸配列)に相当するポリペプチドと比べて特有である。特有の配列は、上記のように決定する。
【0140】
配列の比較、同一性、および相同性
2またはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列との関連において、用語「同一」または%「同一性」とは、同一であるか、または同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定の割合で有する2もしくはそれ以上の配列または部分配列をいう(最大一致(maximum correspondence )で比較および整列させて、下記の配列比較アルゴリズム(もしくは当業者が利用可能である他のアルゴリズム)のうちの1つを用いるか、または見比べて検査することによって測定した場合)。
【0141】
2つの核酸またはポリペプチド(例えば、HAもしくはNA分子をコードするDNAまたはHAまたはNA分子のアミノ酸配列)との関係において、「実質的に同一」という表現は、少なくとも約90%、好ましくは91%、最も好ましくは92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%もしくはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する、2またはそれ以上の配列または部分配列をいう(最大一致で比較および整列させ、配列比較アルゴリズムを用いるか、または見比べて検査することによって測定した場合)。このような「実質的に同一」な配列は一般的に、実際の祖先を参照することなく、「相同」なものであるとされる。好ましくは、「実質的な同一性」は、アミノ酸が赤血球凝集素または赤血球凝集素断片である場合、比較される2つの配列の全長配列の少なくとも約200残基の長さ、少なくとも約250残基の領域にわたっており、そして少なくとも約300残基、350残基、400残基、425残基、450残基、475残基、480残基、490残基、495残基、499残基、500残基、502残基、559残基、565残基もしくは566残基にわたるアミノ酸配列の領域に存在する。
【0142】
配列比較および相同性決定のために、一般的に1の配列は、基準配列として作用し、これに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いた場合、試験配列および基準配列をコンピューターにインプットし、必要な場合、部分配列座標を示し、そして配列アルゴリズムプログラムパラメーターを示す。次に、配列比較アルゴリズムは、示したプログラムパラメーターに基づいて、基準配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
【0143】
比較のための配列の最適アライメントを、例えば、局所的な相同性アルゴリズム(Smith & Waterman, Adv Appl Math 2:482(1981))、相同性アライメントアルゴリズム(Needleman & Wunsch, J Mol Biol 48:443(1970))、類似検索方法(Pearson & Lipman, Proc Natl Acad Sci USA 85:2444(1988))、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA等のアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)のコンピュータによる実装により、または目視により検査すること(一般的に、Ausubelら(上記)を参照のこと)によって、行うことができる。
【0144】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、これはAltschulら、J Mol Biol 215:403-410(1990)に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアが、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)より公開されており利用可能である。このアルゴリズムは、まず、クエリー配列中の短いワード長W(データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合、一致するかまたはポジティブな値をもつ閾値スコアを満たす)を同定することによって、ハイスコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tとは、近傍ワードスコアの閾値といわれる(Altschulら(上記)を参照のこと)。これらの最初の近傍ワードヒットは、検索を開始し、それらを含む長いHSPを見つけるためのシードとして機能する。次に、ワードヒットを、累積的アライメントスコア(cumulative alignment score)が増加しうる限り、各配列に沿って両方向に伸長する。累積的スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(一致する残基対の報酬スコア;常に0よりも大きい)およびN(不一致残基のペナルティスコア;常に0よりも小さい)を用いて算出する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを用いて、累積的スコアを算出する。各方向へのワードヒットの伸長は、以下の場合に停止する:累積的アライメントスコアが、得られた最大値から量Xだけ減少するとき;累積的スコアが、1もしくは複数のネガティブスコア残基アライメントの蓄積により、0またはそれ以下となるとき;またはいずれかの配列が末端に到達したとき。BLASTアルゴリズムのパラメーター(W、TおよびX)は、アライメントの感度およびスピードを決定する。BLASTNプログラムは(ヌクレオチド配列について)デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、カットオフ100、M=5、N=−4および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いる(Henikoff & Henikoff(1989) Proc Natl Acad Sci USA 89:10915を参照のこと)。
【0145】
パーセント配列同一性を算出することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性を統計学的に分析する(例えば、Karlin & Altschul, Proc Natl Acad Sci USA 90:5873-5787(1993)を参照のこと)。類似性の1測定は、最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であるBLAST アルゴリズムによって与えられ、かかる最小合計確率は、偶然に生じる2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列間の一致する確率の指標を与える。例えば、核酸は、基準核酸に対する試験核酸の比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合、基準配列と類似すると考えられる。
【0146】
有用な配列アライメントアルゴリズムの別の例は、PILEUPである。PILEUPは、累積的な、対アライメントを用いて関連配列の群から複数の配列アライメントを生じる。これはまた系統樹をプロットでき、かかる系統樹は、アライメントを生じるのに用いられたクラスター形成の関連性を示す。PILEUPは、Feng & Doolittle(1987) J. Mol. Evol. 35:351-360の累積的アライメント法を単純化したものを使用する。用いられた方法は、Higgins & Sharp(1989) CABIOS5:151-153に記載される方法に類似する。このプログラムは、例えば、最長で5,000文字からなる300配列までを整列することができる。多重アライメント法は、整列した2つの配列のクラスターを生じる、最も類似する2つ配列の対アライメントを用いて開始する。次にこのクラスターを、次に最も関連する配列または整列させた配列のクラスターと整列させるこことができる。2つ配列クラスターを、2つの個々の配列の対アライメントを単純に伸長することによって、整列させることができる。最終アライメントは、一連の累積的な、対アライメントによって達成する。このプログラムはまた、クラスター形成の関係を示す樹状図または系統樹をプロットするために用いることができる。プログラムを、特定の配列および配列比較の領域についてのそれらのアミノ酸またはヌクレオチド座標を示すことによって行う。
【0147】
複数のDNAまたはアミノ酸の配列アライメントに好適であるアルゴリズムのさらなる例は、CLUSTALWプログラムである(Thompson, J. D.ら、(1994) Nucl. Acids. Res. 22: 4673-4680)。CLUSTALWは、配列群間の多重対比較を行い、それらを相同性に基づく多重アライメントに構築する。ギャップオープンおよびギャップ伸長ペナルティーは、例えば、それぞれ10および0.05でありうる。アミノ酸アライメントについては、BLOSUMアルゴリズムを、タンパク質重量マトリックスとして用いることができる。例えば、HenikoffおよびHenikoff(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915−10919を参照のこと。
【0148】
キットおよび試薬
本発明は場合によって、キットとして使用者に提供する。例えば、本発明のキットは、本明細書中に記載される1または複数の核酸、ポリペプチド、抗体または細胞系統(例えば、本発明のHAおよび/またはNA分子を含むか、または有するもの)を含む。このキットは、診察用の核酸またはポリペプチド(例えば、抗体)、プローブセット(例えば、好適な容器に詰めたcDNA マイクロアレイ)または他の核酸(例えば、1または複数の発現ベクター)を含むことができる。このキットは典型的にはさらに、発現産物、チューブおよび/または他の副成分を標識するための1または複数の付加的な試薬(例えば、基質、標識、プライマー)、試料を回収するための試薬、緩衝液、ハイブリダイゼーションチャンバー、カバーガラスなどを含む。キットは場合によってさらに、発見のためにキットの構成要素を用いる好ましい方法、または診断セットの用途などを詳細に述べる指示セットまたは使用者マニュアルを含む。
【0149】
指示書に従って用いる場合、キットを例えば、疾患状態または症状を評価するため、細胞または生物体における疾患状態または症状の進行に対する製剤または他の治療処置の効果を評価するため、あるいはワクチンとして使用するためなどに用いることができる。
【0150】
さらなる態様において、本発明は、本明細書中の方法、組成物、システムおよび装置を具現化するシステムキットを提供する。本発明のシステムキットは場合によって、以下の1または複数を含む:(1)装置、システム、システム構成要素、もしくは装置構成要素;(2)本明細書中に記載される方法を実施するため、および/もしくは本明細書中の装置または装置構成要素を操作するため、および/もしくは本明細書中の組成物を使用するための指示書。さらなる態様において、本発明は、本明細書中の装置、装置構成要素、組成物もしくはキットを使用するため、本明細書中の方法もしくはアッセイを実施するため、および/または本明細書中のアッセイもしくは方法を実施するための装置もしくはキットの使用を提供する。
【0151】
さらに、キットは、1または複数の上記のような翻訳系(例えば、細胞)を、適切なパッケージング材料、キットの構成要素を収納するための容器、本明細書中の方法を実施するための指示材料などと共に含むことができる。同様に、翻訳系の産物(例えば、HAおよび/またはNA分子などのタンパク質)をキットの形態で、例えば、キットの構成要素を収納する容器、本明細書中の方法を実施するための指示材料などと共に与えることができる。
【0152】
本発明の方法および組成物の使用を容易にするために、ワクチン成分および/または組成物(例えば、尿膜液中の再集合体ウイルスなど)ならびに、実験または治療ワクチン目的のためのインフルエンザウイルスのパッケージングおよび感染に有用な付加的成分(例えば、緩衝液、細胞、培養培地)のいずれかを、キットの形態で包装することができる。一般的に、キットは、上記構成要素に加えて、さらなる材料を含み、かかる材料は、例えば、本発明の方法を実施するための指示書、パッケージング材料、および容器を含むことができる。
【実施例】
【0153】
H2N2 インフルエンザウイルスは1957年の汎発流行を引き起こし、1968年にH3N2 インフルエンザウイルスによって置き換えられるまで、ヒトにおいて流行した。疾患を引き起こす能力を証明したことから、H2ウイルスは、1968年以後に生まれた人におけるH2特異的免疫の欠落に鑑み、汎発流行を引き起こす潜在力を有しうる。14種の地理的にそして時期的に多様なH2トリおよびヒトインフルエンザウイルスを、その複製能力およびフェレットにおいて広範な交差反応性抗体応答を惹起させる能力について評価した。インフルエンザA/Japan/57 (H2N2), A/mallard/NY/78 (H2N2)およびA/swine/MO/2006 (H2N3)ウイルスを播種したフェレット由来の血清は、赤血球凝集阻害および中和アッセイにおいて、異種H2ウイルスに対し、広範な交差反応性抗体応答を惹起した。
【0154】
A/Ann Arbor/6/60 (AA)低温適合化された(ca) (H2N2)骨格を使用し、3種のca ウイルスを作製した。すなわち、ca A/Japan/57, ca A/mallard/NY/78および ca A/swine/MO/2006である。A/Japan/57およびA/swine/MO/2006のHAおよびNA配列を表3に示す。各caワクチンウイルスの、同種および異種野生型(wt) H2ウイルスチャレンジに対する保護能力をフェレットにおいて評価した。保護の効力は上気道において変動した。ca AAおよびca A/Japan/57ワクチンは同種チャレンジに対して完全な保護をもたらしたのに対して、ca A/mallard/NY/78およびca A/swine/MO/2006ワクチンは同種チャレンジからの部分的な保護をもたらし、このとき偽(mock)免疫化動物と比較してウイルス力価において著しい低減を伴った。ca ワクチンウイルスのいずれも、上気道において異種チャレンジに対して完全な保護を付与しなかった。下気道において、各caワクチンは、同種wtウイルスでのチャレンジからの完全な保護をもたらした。ca AAおよびca A/swine/MO/2006ワクチンは全ての異種wtチャレンジウイルスに対して下気道において完全な保護をもたらした。
【表3】

【0155】
図1および2は、フェレットにおける、ca AA, ca A/Japan/57, ca A/mallard/NY/78およびca A/swine/MO/2006ワクチンにより付与される保護の効力を示す。フェレットは、単一用量のca再集合体ウイルスワクチンでワクチン接種された。ついで該フェレットをwt AA, wt A/Japan/57, wt A/mallard/NY/78およびwt A/swine/MO/2006 インフルエンザウイルスでチャレンジした。フェレットのチャレンジから3日後の肺および鼻甲介を取得し、該組織におけるウイルス力価を決定した。図1および2は、組換H2ワクチンにより付与される、フェレットでの肺および鼻甲介における同種および異種野生型H2ウイルスに対する保護の効力をそれぞれ示す。
【0156】
図3および4は、マウスにおける、ca AA, ca A/Japan/57, ca A/mallard/NY/78およびca A/swine/MO/2006ワクチンにより付与される保護の効力を示す。マウスは、単一用量のca再集合体ウイルスワクチンでワクチン接種された。ついで該マウスをwt AA, wt A/Japan/57, wt A/mallard/NY/78およびwt A/swine/MO/2006 インフルエンザウイルスでチャレンジした。マウスのチャレンジから3日後の肺および鼻甲介を取得し、該組織におけるウイルス力価を決定した。図3および4は、組換H2ワクチンにより付与される、マウスでの肺および鼻甲介における同種および異種野生型H2ウイルスに対する保護の効力をそれぞれ示す。
【0157】
前述の発明は、明瞭性と理解を目的とするために詳細に記載されているが、当業者は、この開示を読むことによって、形態および細部において様々な変更が、本発明の真の目的から離れることなくなされることが明らかとなるであろう。例えば、上記の全ての技術および装置は、様々な組合せで用いることができる。全ての出版物、特許、特許出願、または本出願に引用される他の文献は、あたかも個々の出版物、特許、特許出願、または他の文献のそれぞれが、あらゆる目的のために参考として援用されるように示されているかのごとく、同等の程度まで、あらゆる目的のためにその全体が参考として援用される。
【0158】
配列表
ca A/Japan/57
配列番号1 ca A/Japan/57 H2 のヌクレオチド配列
分子全体の長さ: 1773 nt

【0159】
配列番号2 ca A/Japan/57 H2 のアミノ酸配列
分子全体の長さ: 562 aa

【0160】
配列番号3 ca A/Japan/57 N2 のヌクレオチド配列
分子全体の長さ: 1466 nt

【0161】
配列番号4 ca A/Japan/57 N2 のアミノ酸配列
分子全体の長さ: 471 aa

【0162】
ca A/swine/MO/2006
配列番号5 ca A/swine/MO/2006 H2のヌクレオチド配列
分子全体の長さ: 1772 nt

【0163】
配列番号6 ca A/swine/MO/2006 H2 のアミノ酸配列
分子全体の長さ: 562 aa

【0164】
配列番号 7 ca A/swine/MO/2006 N3 のヌクレオチド配列
分子全体の長さ: 1453 nt

【0165】
配列番号 8 ca A/swine/MO/2006 N2 のアミノ酸配列
分子全体の長さ: 469 aa


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたポリペプチドであって、
i)配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063、配列番号1の残基1064-1729、配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728のいずれかに示されるポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド;
ii)配列番号2, 4, 6, 8, 配列番号2の残基16-340, 配列番号2の残基341-562, 配列番号6の残基16-340, および配列番号6の残基341-562のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
iii)配列番号2, 4, 6, および8のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの成熟形態;
iv) 配列番号 2, 4, 6, 8,配列番号2の残基16-340, 配列番号2の残基341-562, 配列番号6の残基16-340, および配列番号6の残基341-562から選択されるアミノ酸配列を含み、
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基が置換、挿入または欠失されている、ポリペプチド、
からなる群より選択される前記単離されたポリペプチド。
【請求項2】
免疫学的に有効な量の、請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つ含む免疫原性組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体。
【請求項4】
インフルエンザウイルスに対する防御的免疫応答を生じるための個体の免疫系の刺激方法であって、
i) 生理学的に許容可能な担体中の、免疫学的に有効な量の請求項1に記載のポリペプチドを該個体に投与すること、
を含む前記方法。
【請求項5】
請求項1に記載のポリペプチドを含む再集合体インフルエンザウイルス。
【請求項6】
免疫学的に有効な量の請求項5に記載の再集合体インフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物。
【請求項7】
インフルエンザウイルスに対する防御的免疫応答を生じるための個体の免疫系の刺激方法であって、
i) 生理学的に許容可能な担体中の免疫学的に有効な量の請求項5に記載の再集合体インフルエンザウイルスを該個体に投与すること、
を含む前記方法。
【請求項8】
単離されたポリヌクレオチドであって、
i)配列番号1, 3, 5, 7, 配列番号1の残基89-1063, 配列番号1の残基1064-1729, 配列番号5の残基88-1062および配列番号5の残基1063-1728またはその相補配列のいずれかに示されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
ii) (a)のポリヌクレオチド配列と、少なくとも90%, 少なくとも91%, 少なくとも92%, 少なくとも93%, 少なくとも94%, 少なくとも95%, 少なくとも96%, 少なくとも97%, 少なくとも98%, または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列、
iii) 1未満、2未満、3未満、4未満、5未満、6未満、7未満、8未満、9未満、10未満、11未満、12未満、13未満、14未満、15未満、20未満、25未満、30未満、40未満、または50未満のヌクレオチドが置換、挿入または欠失されている (a)のポリヌクレオチド、ならびに
iv)請求項1に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
からなる群より選択される前記ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む、免疫原性組成物。
【請求項10】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む、再集合体インフルエンザウイルス。
【請求項11】
免疫学的に有効な量の、請求項10に記載の再集合体インフルエンザウイルスを含む、免疫原性組成物。
【請求項12】
インフルエンザウイルスに対する防御的免疫応答を生じるための個体の免疫系の刺激方法であって、
i) 生理学的に許容可能な担体中の、免疫学的に有効な量の請求項10に記載の再集合体インフルエンザウイルスを該個体に投与すること、
を含む前記方法。
【請求項13】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項14】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項15】
ベクターが、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたはウイルスの断片である、請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
ベクターが発現ベクターである、請求項14に記載のベクター。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項18】
単離されたまたは組換えポリペプチドの製造方法であって、
i) 核酸の発現を可能とする条件下で適当な培地中で請求項13または17に記載の細胞を培養すること、および
ii) 細胞または培地から該ポリペプチドを単離すること、
を含む前記方法。
【請求項19】
6:2 再集合体インフルエンザウイルスであって、ここで前記ウイルスが1以上のドナーウイルス由来の6つの内部ゲノムセグメントおよび少なくとも第1の免疫原性インフルエンザ表面抗原をコードする第1のゲノムセグメントを含み、ここで該第1インフルエンザ表面抗原が請求項1に記載のポリペプチドを含むものである、前記再集合体インフルエンザウイルス。
【請求項20】
第2の免疫原性インフルエンザ表面抗原をコードする第2のゲノムセグメントをさらに含み、該第2のインフルエンザ表面抗原が請求項1に記載のポリペプチドを含むものである、請求項19に記載の再集合体ウイルス。
【請求項21】
6:2 再集合体インフルエンザウイルスであって、ここで前記ウイルスが1以上のドナーウイルス由来の6つの内部ゲノムセグメントおよび少なくとも第1の免疫原性インフルエンザ表面抗原をコードする第1のゲノムセグメントを含み、ここで該第1表面抗原をコードするゲノムセグメントが請求項8に記載のポリヌクレオチドを含むものである前記再集合体インフルエンザウイルス。
【請求項22】
第2の免疫原性インフルエンザ表面抗原をコードする第2のゲノムセグメントをさらに含み、ここで該第2の表面抗原をコードするゲノムセグメントが請求項8に記載のポリヌクレオチドを含むものである、請求項19に記載の再集合体ウイルス。
【請求項23】
該1以上のドナーウイルスがA/Ann Arbor/6/60である請求項19〜22のいずれか1項に記載の再集合体ウイルス。
【請求項24】
該1以上のドナーウイルスがA/Ann Arbor/6/60以外のものである、請求項19-22のいずれか1項に記載の再集合体ウイルス。
【請求項25】
該1以上のドナーウイルスがPR8である、請求項24に記載の再集合体ウイルス。
【請求項26】
該1以上のドナーウイルスがA/Leningrad/17である、請求項24に記載の再集合体ウイルス。
【請求項27】
ウイルスが、改変された多塩基性の切断部位を有する赤血球凝集素を含む、請求項19-26のいずれか1項に記載の再集合体ウイルス。
【請求項28】
前記1以上のドナーウイルスの前記内部ゲノムセグメントが、温度感受性、低温適合化、または弱毒化の1以上の特性を付与するものである、請求項19-27のいずれか1項に記載の再集合体ウイルス。
【請求項29】
免疫学的に有効な量の、請求項19-28のいずれか1項に記載の再集合体インフルエンザウイルスを含む、免疫原性組成物。
【請求項30】
請求項19-28のいずれか1項に記載の再集合体インフルエンザウイルスを含む、生弱毒化インフルエンザワクチン。
【請求項31】
請求項19-28のいずれか1項に記載の再集合体インフルエンザウイルスを含む、ウイルス成分ワクチンまたは死滅ウイルスワクチン。
【請求項32】
請求項29に記載の組成物を含む、生弱毒化インフルエンザワクチン。
【請求項33】
請求項29に記載の組成物を含む、ウイルス成分ワクチンまたは死滅ウイルスワクチン。
【請求項34】
インフルエンザウイルスに対する防御的免疫応答を生じるための個体の免疫系の刺激方法であって、
i) 生理学的に効果的な担体中で、免疫学的に有効な量の請求項19-28のいずれか1項に記載の再集合体インフルエンザウイルスを該個体に投与すること、
を含む前記方法。
【請求項35】
被験体における予防的または治療的な処置方法であって、
i) ウイルス感染に対する免疫原性応答を生じるのに効果的な量で請求項19-28のいずれか1項に記載の再集合体インフルエンザウイルスを該被験体に投与すること、
を含む前記方法。
【請求項36】
インフルエンザウイルスに対する防御的免疫応答を生じるための個体の免疫系の刺激方法であって、
i) 免疫学的に有効な量の請求項29に記載の免疫原性組成物を該個体に投与すること、
を含む前記方法。
【請求項37】
被験体における予防的または治療的な処置方法であって、
i) ウイルス感染に対する免疫原性応答を生じるのに効果的な量で、請求項29に記載の免疫原性組成物を該被験体に投与すること、
を含む前記方法。
【請求項38】
インフルエンザウイルスに対する防御的免疫応答を生じるための個体の免疫系の刺激方法であって、
i) 免疫学的に有効な量の、請求項30-33のいずれか1項に記載のワクチンを該個体に投与すること、
を含む前記方法。
【請求項39】
被験体における予防的または治療的な処置方法であって、
i) ウイルス感染に対する免疫原性応答を生じるのに効果的な量で請求項30-33のいずれか1項に記載のワクチンを該被験体に投与すること、
を含む前記方法。
【請求項40】
被験体がヒトである、請求項34-39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
請求項19-28のいずれか1項に記載の再集合体インフルエンザウイルスに特異的に結合する単離された抗体。
【請求項42】
細胞培養においてインフルエンザウイルスを製造する方法であって、
i) 宿主細胞の集団に、少なくとも1以上のドナーウイルス由来の6つの内部ゲノムセグメントおよび少なくとも第1の免疫原性インフルエンザ表面抗原をコードする第1のゲノムセグメントに対応するヌクレオチド配列を含む複数のベクターを導入すること、ここで該第1の表面抗原は請求項1に記載のポリペプチドを含むものである、
ii) 該宿主細胞の集団を培養すること、ならびに
iii)複数のインフルエンザウイルスを回収すること、
を含む前記方法。
【請求項43】
該複数のベクターがさらに、第2の免疫原性インフルエンザ表面抗原をコードする第2のゲノムセグメントに対応するヌクレオチド配列を含み、ここで該インフルエンザ表面抗原は請求項1に記載のポリペプチドを含むものである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
細胞培養におけるインフルエンザウイルスの製造方法であって、
i)宿主細胞の集団に、少なくとも1以上のドナーウイルス由来の6つの内部ゲノムセグメント、および少なくとも第1の免疫原性インフルエンザ表面抗原をコードする第1のゲノムセグメントに対応するヌクレオチド配列を含む複数のベクターを導入すること、ここで前記第1ゲノムセグメントは請求項8に記載のポリヌクレオチドを含むものである、
ii) 該宿主細胞の集団を培養すること、ならびに
iii) 複数のインフルエンザウイルスを回収すること、
を含む前記方法。
【請求項45】
前記複数のベクターが、さらに第2の免疫原性インフルエンザ表面抗原をコードする第2のゲノムセグメントに対応するヌクレオチド配列を含み、ここで該第2の表面抗原コード化ゲノムセグメントが請求項8に記載のポリヌクレオチドを含むものである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記1以上のドナーウイルスがA/Ann Arbor/6/60である、請求項42〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記1以上のドナーウイルスがA/Ann Arbor/6/60以外のものである、請求項42〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記1以上のドナーウイルスがPR8である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記1以上のドナーウイルスがA/Leningrad/17である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
ウイルスが、改変された多塩基性切断部位を有する赤血球凝集素を有する、請求項42〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記1以上のドナーウイルスが、温度感受性、低温適合化、または弱毒化の1以上の性質を有する、請求項42〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
免疫学的に有効な量の、請求項42〜51のいずれか1項に記載の方法により製造されたインフルエンザウイルスを含む免疫原性組成物。
【請求項53】
請求項52に記載の免疫原性組成物を含む、生弱毒化インフルエンザワクチン。
【請求項54】
請求項52に記載の免疫原性組成物を含む、ウイルス成分ワクチンまたは死滅ウイルスワクチン。
【請求項55】
請求項42〜51のいずれか1項に記載の方法により製造されたウイルスを含む生弱毒化インフルエンザワクチン。
【請求項56】
請求項42〜51のいずれか1項に記載の方法により製造された、ウイルス成分ワクチンまたは死滅ウイルスワクチン。
【請求項57】
インフルエンザウイルスに対する防御的免疫応答を生じるための個体の免疫系の刺激方法であって、
i) 該個体に、生理学的に効果的な担体中の、免疫学的に有効な量の、請求項42〜51のいずれか1項に記載の方法により製造されたインフルエンザウイルスを投与すること、
を含む前記方法。
【請求項58】
被験体における予防的または治療的な処置方法であって、
i) 該被験体に、請求項42〜51のいずれか1項に記載の方法により製造されたインフルエンザウイルスを、ウイルス感染に対する免疫原性応答を生じるのに効果的な量で、投与すること、
を含む前記方法。
【請求項59】
インフルエンザウイルスに対する防御的免疫応答を生じるための個体の免疫系の刺激方法であって、
i) 該個体に請求項52に記載の免疫原性組成物を投与すること、
を含む前記方法。
【請求項60】
被験体における予防的または治療的な処置方法であって、
i) 該被験体に、請求項52に記載の免疫原性組成物を、ウイルス感染に対する免疫原性応答を生じるのに効果的な量で、投与すること、
を含む前記方法。
【請求項61】
インフルエンザウイルスに対する防御的免疫応答を生じるための個体の免疫系の刺激方法であって、
i) 該個体に、請求項53〜56のいずれか1項に記載のワクチンを投与すること、
を含む前記方法。
【請求項62】
被験体における予防的または治療的な処置方法であって、
i) 該被験体に、請求項53〜56のいずれか1項に記載のワクチンを、ウイルス感染に対する免疫原性応答を生じるのに効果的な量で、を投与すること、
を含む前記方法。
【請求項63】
請求項42〜51のいずれか1項に記載の方法により製造されたインフルエンザウイルスに特異的に結合する単離された抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−517239(P2012−517239A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550155(P2011−550155)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/022970
【国際公開番号】WO2010/093537
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(504333972)メディミューン,エルエルシー (108)
【出願人】(506392001)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ ナショナル インスティテューツ オブ ヘルス (5)
【Fターム(参考)】