説明

インフレーション成形機

【課題】外周側に接着剤などのタック層を設けた円筒状フィルムであってもシワの発生を防ぐことが可能なインフレーション成形機を提供する。
【解決手段】インフレート成形した円筒状フィルムFを搬送しながら扁平状に変形させるガイド手段5の搬送側に、扁平状に変形した円筒状フィルムFをシート状に折り畳むための一対のピンチロール6,7を配置したインフレーション成形機である。一対のピンチロール6,7は、直径が20〜50mmのピンチロールから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーション成形機に関し、更に詳しくは、円筒状フィルムをシート状に折り畳む際に発生するシワの問題を改善するようにしたインフレーション成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押出機から押し出したフィルムの内側からエアを供給し、該フィルムを円筒状にインフレートするようにしたインフレーション成形機が周知である(例えば、特許文献1,2参照)。このようなインフレーション成形機では、円筒状にインフレートした円筒状フィルムを搬送しながらガイド手段により扁平状に変形させた後、一対のピンチロールによりシート状に折り畳み、それを巻取りコアにロール状に巻き取るようになっている。
【0003】
上述したインフレーション成形機は、フィルム単体をインフレーション成形する場合には問題ないが、接着剤などのタック層を外周面に設けた円筒状フィルムをインフレーション成形した場合には、図4に示すように、一対のピンチロール20,21の外周面にガイド手段22により扁平状に変形した円筒状フィルム23が弛んだ状態で付着(密着)するため、ピンチロール20,21で押圧してシート状に折り畳んだ際に密着した円筒状フィルム23にシワが発生するという問題があった。
【特許文献1】WO2004/110735号公報
【特許文献2】特開2005−125499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、外周側に接着剤などのタック層を設けた円筒状フィルムであってもシワの発生を防ぐことが可能なインフレーション成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明のインフレーション成形機は、インフレート成形した円筒状フィルムを搬送しながら扁平状に変形させるガイド手段の搬送側に、扁平状に変形した円筒状フィルムをシート状に折り畳むための一対のピンチロールを配置したインフレーション成形機において、前記一対のピンチロールを直径が20〜50mmのピンチロールから構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上述した本発明によれば、ピンチロールの径を上記のように小さくすることにより、扁平状に変形させた円筒状フィルムがピンチロールに付着し難くなるため、付着に起因するシワの発生の改善が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は、本発明のインフレーション成形機の一実施形態を示し、このインフレーション成形機は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを押し出すための第1単軸押出機1と、接着剤を押し出すための第2単軸押出機2と、両単軸押出機1,2の押出口1X,2Xに接続された円筒ダイ3を備えている。
【0009】
第1単軸押出機1は、ホッパ1Aから投入された熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルム材料をシリンダー1B内で回転するスクリュー1Cにより混練溶融し、押出口1Xから円筒ダイ3に送るようになっている。第2単軸押出機2も、ホッパ2Aから投入された接着材料をシリンダー2B内で回転するスクリュー(不図示)により混練溶融し、押出口2Xから円筒ダイ3に供給する構成である。
【0010】
円筒ダイ3は、上方のリップ口3Aから外周側に接着層(タック層)を積層した円筒状フィルムFが上方に向けて押し出される構成になっている。リップ口3Aの中心部から圧縮空気が送られ、それにより円筒状フィルムFを所定の直径までインフレート成形するようにしている。
【0011】
円筒ダイ3の上方には、膨張させた円筒状フィルムFを冷却するためのエアリング4が配置されている。エアリング4は、環状の吹き付け口4Aから冷却空気を円筒状フィルムFに吹き付け、上方に搬送される円筒状フィルムFを冷却するようになっている。
【0012】
エアリング4の上方には、冷却した円筒状フィルムFを搬送しながら扁平状に変形させるガイド手段5が設けられている。ガイド手段5は、対面して配置される一対のガイド部材5A,5Aを有している。各ガイド部材5Aは、図2に示すように、矩形状の枠体5A1と、この枠体5A1に円筒状フィルムFの搬送方向である上下方向に配置した複数のガイドローラー群5A2を備えている。各ガイドローラー群5A2は、円筒状フィルムFの搬送方向と交差する横方向に延在し、かつ両端が枠体5A1に取り付けられた軸Mに、所定の間隔で複数のガイドローラーRが回転自在に配列してある。一対のガイド部材5A,5Aは、図1に示すようにハ字状に傾斜して配置され、折り畳む円筒状フィルムFの大きさにより、傾斜角度を変更できるようになっている。
【0013】
ガイド手段5の搬送側である上方には、ガイド手段5により扁平状に変形した円筒状フィルムFをシート状に折り畳むための一対のピンチロール6,7が配置されている。一方のピンチロール6は駆動ロール、他方のピンチロール7は回転自在な従動ロールになっている。他方のピンチロール7は一方のピンチロール6に対して近接離間する方向に移動可能で、不図示の付勢手段によりピンチロール7を付勢することにより、円筒状フィルムFをピンチロール6,7間で挟み込み、それにより扁平状に変形した円筒状フィルムFを押圧してシート状に折り畳むものである。
【0014】
一対のピンチロール6,7は、直径が20〜50mmのピンチロールから構成されている。ステンレス鋼から構成されるピンチロール6,7は、扁平状に変形した円筒状フィルムFが接触する外周面6x,7xがフッ素樹脂でコーティングしてあり、それにより円筒状フィルムFを付着し難くしている。コーティングするフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどを好ましく挙げることができる。フッ素樹脂に代えて、シリコーン樹脂などをコーティングするようにしてもよい。
【0015】
8はシート状に折り畳んだ円筒状フィルムFを巻取りコア8Aにロール状に巻き取る巻取り手段であり、一対のピンチロール6,7によりシート状に折り畳まれた円筒状フィルムFが、複数のガイドロール9を経て巻取りコア8Aに巻き取られるようになっている。
【0016】
上述した本発明のインフレーション成形機では、ホッパ1Aから投入されたフィルム材料が第1単軸押出機1のシリンダー1B内で回転するスクリュー1Cにより混練溶融されながら円筒ダイ3に送られる一方、ホッパ2Aから投入された接着材料がシリンダー2B内で回転するスクリューにより混練溶融されながら円筒ダイ3に供給される。
【0017】
円筒ダイ3のリップ口3Aから接着層を外周側に積層した円筒状フィルムFが上方に向けて押し出される。その際に、リップ口3Aの中心部から供給される圧縮空気により円筒状フィルムFが所定の直径までインフレート成形される。インフレート成形した円筒状フィルムFに対してエアリング4の吹き付け口4Aから冷却空気が吹き付けられ、円筒状フィルムFが冷却される。
【0018】
冷却された円筒状フィルムFはガイド手段5に搬送され、そこで一対のガイド部材5A,5Aにより次第に短径側を小さくするようにして扁平状に変形される。扁平状に変形した円筒状フィルムFは、次いでピンチロール6,7に搬入される。
【0019】
その際に、図3に示すように、一対のピンチロール6,7の径が50mm以下と小さいので、円筒状フィルムFが外周面に付着せずに一対のピンチロール6,7間でピンチされ、シート状に折り畳まれる。ピンチロール6,7によりシート状に折り畳まれた円筒状フィルムFは、複数のガイドロール9を経て巻取り手段8の巻取りコア8Aにロール状に巻き取られる。
【0020】
本発明者は、外周面に接着剤などのタック層を設けた円筒状フィルムにシワが発生する点について鋭意検討したところ、以下のことを知見した。
【0021】
従来、一対のピンチロールには直径100mm以上のものが一般に使用されている。このようなピンチロールでは、図4に示すように、一対のピンチロール20,21の外周面に扁平状に変形した円筒状フィルム23が付着するが、径が大きなピンチロールであっても、径が小さなピンチロールであっても、100mm以上の径のピンチロールにおいては、外周面の略同じ領域で扁平状に変形した円筒状フィルム23が付着することがわかった。
【0022】
そこで、ピンチロールの径に着目した。ピンチロールの径を小さくすればするほど、外周長が短くなり、同じ領域で扁平状に変形した円筒状フィルム23が付着するのであれば、付着する面積を狭くすることができる。そこで、ピンチロールの径を段階的に小さくしてピンチロールとフィルムとの付着関係を調べてみると、50mmを境にして扁平状に変形した円筒状フィルムがピンチロールに付着し難くなることがわかった。多分、フィルムの自重と接触面積の関係で自重が勝るためにフィルムが付着し難くなったと推測される。
【0023】
また、逆にピンチロールの径が20mmより小さくなっても、シワの発生を招き易くなることがわかった。例えば、インナーライナー層用の円筒状フィルムFを作製するのに使用するピンチロール6,7の長さは通常400〜1500mmとなるが、このような長さを有するピンチロール6,7の直径が20mmより小さいと、強度不足により撓み変形する問題が生じ、その結果、径が小さ過ぎても円筒状フィルムFがピンチロール6,7に付着してシワが発生し易くなるのである。更に、成形された円筒状フィルムFの寸法が安定せずに、所望の寸法の円筒状フィルムFが得られ難いこともわかった。
【0024】
そこで、本発明では、ピンチロール6,7を上記の範囲で直径を従来より小さく規定したピンチロールから構成したのである。これにより、接着層を外周側に設けた円筒状フィルムFがピンチロール6,7の外周面に付着するのを抑えることができるので、付着に起因する円筒状フィルムFのシワの問題を改善することができる。
【0025】
本発明において、ガイド手段5とピンチロール6,7との間の距離Lとしては、円筒状フィルムFの搬送方向において100mm以下にするのがよく、これにより扁平状に変形した円筒状フィルムFがガイド手段5とピンチロール6,7との間で弛むのを抑制し、ピンチロール6,7に付着するのを抑えることができる。
【0026】
即ち、接着層を外周側に積層した円筒状フィルムFは、ピンチロール6,7との摩擦が大きくなるため、流れがスムーズではなく、若干擦れながら搬送される。それにより、ガイド手段5とピンチロール6,7との間で円筒状フィルムFに屈曲する力が作用する。その距離Lが長くなると、円筒状フィルムFの剛性が屈曲力に負けて屈曲を起こし、弛んだ状態になる。その状態で搬送されると、ピンチロール6,7に付着してシワが発生するようになるが、その距離Lを100mm以下と短くすることで、それを回避することができる。好ましくは、60mm以下がよい。
【0027】
距離Lの下限値は、ピンチロール6,7がガイド手段5と接触しない範囲であればよく、例えば20mm程度にすることができる。なお、ここで言う距離Lとは、ピンチロール6,7のピンチする点Mと円筒状フィルムFが最後に接触するガイド手段5の位置(図2に示すガイド部材5Aの場合は、最上段に位置するガイドローラーの接触位置)との間の、円筒状フィルムFの搬送方向に沿って測定した長さである。
【0028】
本発明で成形される円筒状フィルムFとしては、例えば、空気入りタイヤのインナーライナー層に使用されるものを好ましく挙げることができる。その場合の円筒状フィルムFは、直径(内径)が250〜800mm、接着層を含む厚さが0.01〜0.3mmの範囲のものである。
【0029】
上記実施形態では、円筒ダイ3から上方に押し出した円筒状フィルムFを上方に搬送しながら一対のピンチロール6,7によりシート状に折り畳むようにしたが、円筒ダイ3から下方に押し出した円筒状フィルムFを下方に搬送しながら一対のピンチロール6,7によりシート状に折り畳むようにしたものであってもよく、インフレート成形した円筒状フィルムFを搬送しながら扁平状に変形させるガイド手段5の搬送側に、扁平状に変形した円筒状フィルムFをシート状に折り畳むための一対のピンチロール6,7を配置したインフレーション成形機であればいずれにも適用することができる。
【0030】
本発明は、接着剤などのタック層を外周側に設けた円筒状フィルムFの成形に好ましく用いることができるが、当然のことながらタック層がない円筒状フィルムの成形にも使用することができる。
【実施例】
【0031】
ステンレス鋼からなる一対のピンチロールの直径及びフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)のコーティングの有無を表1のようにした、図1に示す構成の本発明の成形機1〜4(本実施例1〜4)と比較の成形機1〜3(比較例1〜3)により、接着層を外周側に設けた円筒状フィルムを成形した。
【0032】
成形される円筒状フィルムの内径と厚さ、及び距離Lは表1に示す通りである。また、円筒状フィルムには表2に示す配合を有する熱可塑性エラストマー組成物を使用し、接着層には表3に示す配合を有する接着剤を使用した。
【0033】
成形した円筒状フィルムの寸法を測定すると共に、シワの発生の有無とピンチロールへの付着状態を目視により観察したところ、表1に示す結果を得た。なお、フィルム寸法は、円筒状フィルム内径の設定値±30mm以内を良好、それより大きい場合を不安定と評価した。
【0034】
【表1】

【表2】

【表3】

【0035】
表1から、本発明は、シワの発生を防ぐことができるのがわかる。また、ピンチロールをフッ素樹脂でコーティングすることにより、付着も回避できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のインフレーション成形機の正面説明図である。
【図2】図1の矢印A方向から見たガイド部材の説明図である。
【図3】ガイド手段と一対のピンチロール間を搬送される円筒状フィルムの説明図である。
【図4】従来の装置において、ガイド手段と一対のピンチロール間を搬送される円筒状フィルムの説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 第1単軸押出機
2 第2単軸押出機
3 円筒ダイ
4 エアリング
5 ガイド手段
5A ガイド部材
5A2 ガイドローラー群
6,7 ピンチロール
6x,7x 外周面
8 巻取り手段
F 円筒状フィルム
R ガイドロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレート成形した円筒状フィルムを搬送しながら扁平状に変形させるガイド手段の搬送側に、扁平状に変形した円筒状フィルムをシート状に折り畳むための一対のピンチロールを配置したインフレーション成形機において、前記一対のピンチロールを直径が20〜50mmのピンチロールから構成したインフレーション成形機。
【請求項2】
前記ピンチロールがステンレス鋼から構成され、前記円筒状フィルムが接触するピンチロールの外周面をフッ素樹脂でコーティングした請求項1に記載のインフレーション成形機。
【請求項3】
前記ガイド手段が対面して配置される一対のガイド部材を有し、各ガイド部材は回転自在な複数のガイドローラーを円筒状フィルムの搬送方向と交差する方向に配列したガイドローラー群を円筒状フィルムの搬送方向に複数配置してなる請求項1又は2に記載のインフレーション成形機。
【請求項4】
前記ガイド手段と前記一対のピンチロールとの間の距離Lが円筒状フィルムの搬送方向において100mm以下である請求項1,2又は3に記載のインフレーション成形機。
【請求項5】
前記円筒状フィルムは外周面にタック層を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインフレーション成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269241(P2009−269241A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120030(P2008−120030)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】