説明

インライン直交位相及び反射防止により改善した直交位相干渉検出

【課題】探査ビーム、及び試料中の標的検体の存在を検出するための検出器と一緒に使用される方法及び装置を提供する。
【解決手段】
本装置は、基板と、該基板上に位置するバイオ層であって、該試料が該バイオ層上に堆積された時、該標的検体に反応するよう設計されたバイオ層とを備え、該基板は、該標的検体による該探査ビーム波の散乱をほぼ維持しながら、該基板による該探査ビーム波の反射率をほぼ最小にするよう選択されることが可能である。前記基板は、該基板によって反射された探査ビーム波が、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波とほぼ直交位相となるよう、又は該基板によって反射された探査ビーム波と、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波とが遠距離場において干渉し、前記検出器によって検出可能な強度変調を直接生成するよう設計されることが可能である。前記バイオ層は、複数のスポットからなり、前記複数のスポットは、複数の単位セルにグループ分けされ、該各単位セルは標的検体と反応する特定の抗体と非特定の抗体とを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の1つ以上の標的検体または特定の生物材料の存在を検出するための装置、方法、及びシステムに概ね関し、特にディスク上の標的受容体に結合された生物材料及び/又は検体分子の存在を、該材料及び/又は検体によって該ディスクから反射された探査ビームの光学特性の変化を検知することで検出するためのレーザ走査システムに関する。
【0002】
《関連する出願への相互参照》
本出願は、2006年02月16日付で出願した米国仮特許出願第60/774,273号と、2006年11月30日付で出願した米国仮特許出願第60/868,071号との利益を主張する同一の譲受人に譲渡する通常の特許出願である。これら両方の出願を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
多くの化学、生物、医療、診断等の用途においては、試料中の特定の分子構造体の存在を検出することが望ましい。細胞、ウイルス、バクテリア、毒素、ペプチド、DNA断片、抗体等の多くの分子構造体は、特定の受容体によって認識される。遺伝子チップ、免疫チップ、DNAアレイを含む、癌細胞の遺伝子発現パターンを検出するための生化学技術は、これらの分子構造体と受容体との相互作用を利用する。例えば、非特許文献1〜非特許文献4の記載を参照。これらの技術は、通常、(試験対象の標的検体または分子構造体と相互作用する)所望の受容体を含むよう調製された静止チップを使用する。受容体領域はかなり小さくできるので、複数の検体を試験するチップを作製してもよい。理想的には、何千もの結合受容体が完全な定量評価を提供するために設けられる。これら受容体が生物試料に曝されると、少数の受容体だけが特定のタンパク質又は病原体と結合する。これらの受容体サイトは可能な限り短時間で特定されるのが理想的である。
【0004】
複数の分子構造体を探すための1つの技術は、抗体マイクロアレイを単に含むいわゆる免疫コンパクトディスクである。例えば、非特許文献5〜非特許文献7の記載を参照。従来の蛍光検出が該マイクロアレイ内の試験対象の分子構造体の存在を検知するために使用される。他の免疫定量評価法は、導波管と回折格子結合器とを備える従来のMach-Zender干渉計を使用する。例えば、非特許文献8〜非特許文献12の記載を参照。干渉光学バイオセンサーは、干渉計感度の本質的な利点を有しているが、しばしば1要素当りの大きな表面積、長い相互作用長、又は複雑な共鳴構造を特徴とする。また熱的効果と機械的効果による位相ドリフトの影響を受け易い。
【0005】
上記の技術は、化学、生物、医療、診断等の用途において、定量評価情報を生成し読み出すのに有用であることが証明されているが、既存技術に対して性能が改善された生成・読み出し技術を開発することが望ましい。
【非特許文献1】Sanders, G.H.W. and A. Manz, Chip-based microsystems for genomic and proteomic analysis. Trends in Anal. Chem., 2000, Vol. 19(6), p. 364-378
【非特許文献2】Wang, J., From DNA biosensors to gene chips. Nucl. Acids Res., 2000, Vol. 28(16), p. 3011-3016
【非特許文献3】Hagman, M., Doing immunology on a chip. Science, 2000, Vol. 290, p. 82-83
【非特許文献4】Marx, J., DNA Arrays reveal cancer in its many forms. Science, 2000, Vol. 289, p. 1670-1672
【非特許文献5】Ekins, R., F. Chu, and E. Biggart, Development of microspot multi-analyte ratiometric immunoassay using dual flourescent-labelled antibodies. Anal. Chim. Acta, 1989, Vol. 227, p. 73-96
【非特許文献6】Ekins, R. and F.W. Chu, Multianalyte microspot immunoassay - Microanalytical "compact Disk" of the future. Clin. Chem., 1991 , Vol. 37(11), p. 1955-1967
【非特許文献7】Ekins, R., Ligand assays: from electrophoresis to miniaturized microarrays. Clin. Chem., 1998, Vol. 44(9), p. 2015-2030
【非特許文献8】Gao, H.ら, Immunosensing with photo-immobilized immunoreagents on planar optical wave guides. Biosensors and Bioelectronics, 1995, Vol. 10, p. 317-328
【非特許文献9】Maisenholder, B.ら, A GaAs/AlGaAs-based refractometer platform for integrated optical sensing applications. Sensors and Actuators B, 1997, Vol. 38-39, p. 324-329
【非特許文献10】Kunz, R.E., Miniature integrated optical modules for chemical and biochemical sensing. Sensors and Actuators B, 1997, Vol. 38-39, p. 13-28
【非特許文献11】Dubendorfer, J. and R.E. Kunz, Reference pads for miniature integrated optical sensors. Sensors and Actuators B, 1997 Vol. 38-39, p. 116-121
【非特許文献12】Brecht, A. and G. Gauglitz, recent developments in optical transducers for chemical or biochemical applications. Sensors and Actuators B, 1997, Vol. 38-39, p. 1-7
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの実施形態は、光探査ビーム、及び試料中の標的検体の存在を検出するための検出器と一緒に使用される装置を含む。この装置は基板と、該基板上に位置するバイオ層とを備え、該バイオ層は分布した双極分子からなるか、又は実効的な厚みと屈折率とを有する。該基板は反射係数を0有する。この実施形態では、基板反射係数の大きさはほぼ最小である。この実施形態では、該基板はシリコンを含む誘電体材料、又はシリコン上の二酸化シリコン層であってよい。該バイオ層と基板を、前記標的検体に当たって散乱された探査ビーム波が該基板に当たって反射された探査ビーム波とほぼ直交位相となるよう設計することができる。或いは、該バイオ層と基板を、バイオ層の表面において電場強さをほぼ最大にするよう設計することができる。
【0007】
本発明の別の実施形態は、探査ビーム、及び試料中の標的検体の存在を検出するための検出器と一緒に使用される装置を含む。この装置はバイオ層と、基板上の支持層を含む構造体とを備える。この実施形態では、基板反射係数の大きさはほぼ最小になる。この実施形態では、該支持層の厚みを、支持層の上面からの散乱波が、支持層の下面からの反射波と位相がかなりずれるよう選択できる。
【0008】
本発明の別の実施形態は、試料中の標的検体の存在を検出するための方法を含む。この方法は、複数の分析分子がその上に分布された基板を提供することと、該基板上の該分析分子の少なくとも一部に該試料を接触させることと、探査ビームで該基板を走査することと、反射された探査ビーム信号に基づき検出器において位相変調を強度変調に変換して該試料中の該標的検体の存在又は不在を検出することとを含む。
【0009】
本発明の別の実施形態は、光探査ビーム、及び試料中の標的検体の存在を検出するための検出器と一緒に使用される装置を含む。この装置は基板と、該基板上に位置するバイオ層とを備え、該バイオ層は屈折率を有し、該基板は反射係数を有する。この実施形態では、該バイオ層と基板を、前記標的検体分子に当たって散乱された探査ビーム波が該基板の表面に当たって反射された探査ビーム波とほぼ同相となるよう設計することができる。
【0010】
本発明の別の実施形態は、探査ビーム、及び試料中の標的検体の存在を検出するための検出器と一緒に使用される装置を含む。この装置はバイオ層と、基板上の支持層を含む構造体とを備える。この実施形態では、該支持層の厚みを、支持層の上面からの散乱波が、支持層の下面からの反射波とほぼ直交位相となるよう選択できる。本方法は、反射された探査ビーム信号に基づき位相変調を強度変調に直接変換して該試料中の該標的検体の存在又は不在を検出することを含む。この検出は、開口又は分割検出器なしで実行できる。この検出は、標的検体から戻った散乱波と、これとほぼ同相である基板から戻った反射波とを検出することを含む。
【0011】
本発明の別の実施形態は、探査ビーム、及び試料中の標的検体の存在を検出するための検出器と一緒に使用される装置を含む。この装置はバイオ層と、基板上の支持層を含む構造体とを備える。この実施形態では、該支持層の上面からの反射波と下面からの反射波との位相関係が直交位相状態と同相状態との間で連続的に変化するよう該支持層の厚みを基板に亘って変えることができる。この検出は、該標的検体によって引き起こされた位相変調を強度変調に検出器において変換する開口又は分割検出器有りとなしの両方で実行できる。
【0012】
本発明の追加の実施形態、特徴、及び利点は、下記の説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の原理の理解を促進するために、図面に例示された実施形態が参照され、実施形態を説明するために特定の用語を使用する。しかし、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことは理解されるべきである。当業者が通常想到するような例示した装置の改造及び変更と、実施形態で説明する本発明の原理の更なる適用は考慮されている。
【0014】
本出願は、米国特許第6,685,885号(2001年12月17日付出願、2004年02月03日付公開)の一部継続出願である係属中の米国特許出願第10/726,772号、2003年12月03日付出願(米国特許出願第2004/0166593号公報)に関係する。これらの開示を本明細書に援用する。本出願はまた、2006年02月01日付で出願した米国特許出願第11/345,462号と、2006年02月01日付で出願した米国特許出願第11/345,477号と、2006年02月01日付で出願した米国特許出願第11/345,564号と、2006年02月01日付で出願した米国特許出願第11/345,566号とに関係する。これらの開示を本明細書に援用する。
【0015】
本発明の様々な実施形態を説明する前に、本発明の干渉検出システムにおける直交位相の意図する意味を更に説明する。幾つかの特定の用途において、直交位相とは1つの通常光学「モード」が、約N×π/2(Nは奇数)だけ位相が異なる2つ以上の「散乱された」モードに分かれた場合に干渉システムにおいて発生するものとして狭く解釈されるかも知れない。しかし、本発明と上記特許及び/又は係属中の出願とにおける意味のように、約N×π/2(Nは奇数)だけ位相が互いに異なるモードのうち1つ以上のモードが標的分子と「相互作用」し、残りのモードのうち1つ以上は相互作用しない時、干渉システムは直交位相状態にあるという。この直交位相の定義は干渉システムにも適用可能である。この場合、他の参照波又はビームを指す上記「残りのモード」は異なる分子と相互作用する。位相差がπ/2(又はN×π/2;Nは奇数)±約20又は30%である場合、干渉システムはほぼ直交位相状態にあると考えてよい。
【0016】
直交位相において和を取るは、干渉法の直交位相に直接は関係しない用語「直交位相」の別の使用である。2つの独立な信号は、それらの大きさの2乗の和を取ることで直交位相において合計される。直交位相において和を取ることは、測定中のシステムの変化する特性から生じる2つの変化する出力信号を取り、それらをほぼ一定の単一の測定値に結合するための方法である。
【0017】
本発明における用語「同相」は、同相の強め合う干渉を表現するよう意図され、用語「異相」は、180度位相がずれた弱め合う干渉を表現するよう意図されている。これは、場の振幅が直接加算されるこれらの状態を、奇数個のπ/2の位相差を表現する直交位相状態から区別するためである。
【0018】
表面における生物分子の光学干渉検出は、該分子の影響による探査光学場の位相シフトを利用する。ガラス等の典型的な表面上の抗体等の高分子の単分子層の場合、この位相シフトは通常1ラジアンのたった数%である。この小さな位相シフトは、干渉直交位相状態においてたった数%の検出強度変調を生成する。誘電体層による表面処理は、直交位相干渉における分子位相シフトと相対強度変調とを増大させることができる。波腹高反射率ミラー上で分子を固定すると約3倍の増大が得られる。一方、反射防止表面上で分子を固定すると約15倍の増大が得られる。これは表面の低反射率が、分子散乱場に比べて直接場の遠距離場寄与を低減することで分子位相シフトが増大するためである。このシフトされた場は、位相コントラスト(PC)クラスにおける自己参照直交位相状態にある参照場と比較して検出される。また、インライン直交位相を使用することで位相変調を強度変調に、開口又は分割検出器の必要なく直接変換することができる。PCクラスの直交位相干渉検出は、2006年02月01日付で出願した前記米国特許出願第11/345,462号に記載されている。
【0019】
屈折率は分子散乱によって発生する。分子に入射する電場は散乱され散乱係数fの遠距離場になる:

散乱係数fは実数で励起場Eと同相である。直接波と散乱波の両方からの寄与を含む全遠距離場は下記式で与えられる:

ここで、第1項のiは、近接場から遠距離場への直接場の回折から生じる。2つの項は90℃位相シフトしているので、分子散乱は下記式で与えられる位相シフトを生成する:

これは、単一の分子による散乱に伴う位相シフトである。有限領域内の分子集合体が光を散乱すると、その位相は分子媒体の屈折率の結果であるということができる。媒体がより高密度になると、局所場補正が減極により分子散乱を変形させるが、屈折率の基本原因は分子散乱である。
【0020】
干渉光学バイオセンサーは、生物分子の存在によって引き起こされる探査場の位相シフトを検出するために使用できる。単分子層は下記の位相シフト(空気中2重パス)を生成する:

ここで、k=2π/λ。λ=635nmで、バイオ層の屈折率n≒1.3である場合、2重パス位相シフトΔΦは約0.0475ラジアンである。これは、直交位相の参照波との差として検出された時、たった数%の相対強度変調を生成する。
【0021】
表面における分子散乱によって引き起こされる位相シフトは、分子散乱場を一定にしたまま、直接場の寄与を低減することで増大させることができる。これは、該直接波を構成する反射エネルギーの位相と振幅の両方を調整する誘電体層を基板上に設けることで達成される。
【0022】
完全(金属製)ミラーの近傍にある1つの分子は、該ミラーの表面の境界条件のために電磁場の波節となる。散乱振幅を図1に示す。ミラー上の分子は入射波を散乱し、散乱波と反射波が遠距離場において結合する。正味の散乱振幅は次のとおり:

ここで、垂直入射の場合、θ=180°である。等方性散乱の場合、f(θ)=f(0)であり、遠距離場への散乱寄与は打ち消され、正味の散乱振幅はゼロになり、その結果、該分子が探査ビームに与える位相シフトの点でも波節表面上の該分子は見えなくなる。一方、表面が波腹となるミラーの場合、正味の散乱振幅は次のとおり:

この結果、孤立分子(2重パス)の場合の2倍の振幅となり、このため2倍の位相シフトとなる。これらの単純な結果は、分子による散乱は、波節においてゼロで波腹において入射場の2倍である場に比例していることを反映する。
【0023】
反射係数rの誘電体表面のより一般的な場合は、正味の散乱振幅は次のとおり:

これは、等方性散乱の場合、下記になる:

遠距離場への影響は次のとおり:

rが実数の場合、位相寄与は次のとおり:

より一般的に、r=r+irが複素数の場合:

上記式の重要な特徴は、反射係数rに逆依存であることである。rがゼロに近づくと、反射防止状態の場合、位相シフトはπ/2に漸近する。この制限位相シフトは、直接波と散乱波のπ/2位相差による。rがゼロの時、直接波は存在しない。従って、位相増大の原因が明確であり、直接波からの寄与は散乱寄与に比べて任意に小さくすることができる。
【0024】
表面近くの分子の発見的近似を完成するために、分子の表面高さを微分に含めることができる。これにより遠距離場は下記式で与えられる:

その位相シフトは次のとおり:

この式は前述の1/r依存をまだ含んでいる(rは実数)。
【0025】
上記では、分子位相シフトを増大させる機構について強調したが、目標は分子散乱から生じる遠距離場における増大した強度変調の検出である。検出器において位相変調を強度変調に変換する物理的処理は、探査波(バイオ層から位相変調を運ぶ)と直交位相(又は90度相対位相)の参照波との結合である。直交位相状態において、検出器における強度変調は最大となり、位相変調量に線形従属する。
【0026】
直交位相状態を得る1つの方法は、検体を通過する波と該検体に近接した基板に直交位相角度と呼ばれる角度で入射する波の2つの波を観察により位相変調を検出することである。直交位相角度の2つの波は直交位相状態にあり、強度変化はタンパク質の高さに直接比例する。これは位相コントラスト直交位相と呼ばれ、差分位相コントラスト信号が得られる。上述した分子位相シフトの反射防止による増大は、差分位相コントラスト直交位相の新しい実施形態である。差分位相信号は、基板の反射率を低減することで改善される。
【0027】
直交位相状態を得る第2の方法は、90度位相シフトされる反射係数を有する基板を設計することで位相変調を直接検出することである。この状態は、波節状態と波腹状態の間にある。反射された場が近接場において90度位相シフトする時、反射された参照信号と散乱された分子信号とは、遠距離場において同相となり、干渉し直接強度変調を生成する。従って、検出のための差分位相コントラスト法は必要ない。表面検体は直接測定できる。
【0028】
この形態の直接直交位相検出は反射防止被膜に密接に関係する。支持層が反射率最小に対応する1/4波長条件から少しずれている場合、反射された波は必要な90度位相シフトを得ることができ、遠距離場において直接検出のための状態を生成し、象限検出器を必要としない。従って、反射率最小状態近傍で動作することで、差分位相コントラストと直接位相検出の両方が反射防止による改善の利益を受ける。
【0029】
本開示における用語の意味を明らかにすると、2つの異なる表現を本出願の実施形態に対して使用する。反射防止により改善された差分位相コントラスト(AR改善されたDPC)は、ほぼ反射防止状態又はそれに近い状態の基板上に分子又はバイオ層を配置することによる差分位相コントラスト信号の改善された検出を指す。インライン直交位相は、標的検体分子からの散乱波が、基板からの反射波とほぼ同相の場合に起こる位相・強度直接変換を指す。理論的説明又は結果が両方の実施形態に共通である場合、両方を総称して直交位相状態にあると呼ぶ。
【0030】
これらの実施形態の利点を更に説明すると、位相シフトの他に信号対雑音比も干渉検出に影響する。これは特定の雑音寄与、例えば相対強度雑音(RIN)、ショット雑音、及びシステム雑音に依存する。
【0031】
位相シフトされた場が90度位相シフトされた参照場と混合する直交位相検出状態において、その強度は次のとおり:

この時、相対強度変化は小さい散乱においては次のとおり:

RINが検出雑音において支配的であれば、この雑音は次のとおり:

この時、信号対雑音比は次のとおり:

この場合、rがゼロに近づくと信号対雑音比は増加する。従って、減少する光子流量は増加した感度に影響しない。この場合の最良の条件は反射防止表面である。低反射率はより高いレーザパワーで埋め合わせることができる。
【0032】
一定のシステム雑音が検出雑音において支配的であれば、信号対雑音比は次のとおり:

rがゼロに近づくと信号対雑音比はゼロに近づく。従って、これは都合がよくない。この場合の最良の条件は、波腹表面による高反射率と、差分位相コントラスト検出の使用である。
【0033】
ショット雑音の根本的な限界において、信号対雑音比は次のとおり:

ここで、(SN)はショット雑音の大きさに関係する係数である。このS/Nは、小さいr限界においてrに依存せず、分子位相シフトの自由空間の場合と同等である。
【0034】
従って、信号対雑音性能の観点から、相対強度雑音が支配的となるようにシステム雑音を低減できれば、反射防止状態はS/Nの最良の改善をもたらす。低光子流量は、より高いパワーレーザ源及びAPD等の低強度検出器により埋め合わせることができる。また、反射防止被膜は多層ミラースタックより経済的でありえる。
【0035】
分子層が高密度になると、屈折率nの薄い均質な層によって適切に近似できる。図2は複素数をとりうる層がない反射係数rの基板上のバイオ層を説明するために使用される。この均質な層は厚み「d」と屈折率nを持つ。入射部空間とタンパク質層とにおける場はそれぞれ次のとおり:

ここで、k=nkである。場と1次導関数との連続性によって、これらは下記式を与える:

Cについて解くとそれぞれ次のようになる:

上記2つの式を等号で結び、r’=Bについて解くと次のようになる:

ここで、

この公式をタンパク質層と基板の間の反射係数rと、該基板の「裸の」反射係数rとの関係を計算するために使用すると次のようになる:

これをr’の上記式に代入すると次のようになる:

小さい層厚みdについて展開すると次のようになる:

次の関係:

を使用するとr’の式は次のようになる:

この最後の式は参照波rに関して解釈される。追加の項は、分子散乱波である該層の位相変調を表す。これは、第2項がrと同相の場合、インライン直交位相の条件が成立することを示す。第2項がrと直交位相の場合、差分位相コントラストの条件が成立する。
【0036】
差分位相コントラストの条件かインライン直交位相の条件かが、基板の反射係数によって決まる一方、検出器における位相変調から強度変調への変換は、2つの独立な検出モードを必要とする。これら2つのモードは差分位相コントラストのために奇検出器関数を使用し、インライン直交位相検出のために偶検出器関数を使用する。奇検出器関数は分割検出器を使用し、その左半分と右半分の差を取ることで得られる。偶検出器関数は単に全ビームを検出することで得られる。
【0037】
それぞれの場合の検出器電流は、下記式で与えられる:

なお、タンパク質プロフィールは差分位相コントラストの場合、奇導関数であり、インライン直交位相の場合、偶導関数である。両方の場合とも、分母のr項のために反射率が小さいと値が大きくなる。このため、両方とも反射率最小、又はその近傍において改善される。
【0038】
上記説明において、標的検体分子からの散乱波の位相は、基板からの散乱波の位相と関係する。これら2つの波が同相である時、インライン直交位相となる。これら2つの波が直交位相である時、差分位相コントラストとなる。これらの2つの状態の差はrの位相によって設定される。rの大きさと位相を調整する方法を理解するために、基板は基部材料上の支持層から構成されると考えるのが有益である。分子又はバイオ層は支持層上にある。支持層の屈折率は、反射率(反射係数の大きさ)をほぼ最小にするよう選択することができる。支持層の厚みは、反射位相を調整し検出をインライン直交位相にするか、又は差分位相コントラストにするために変えることができる。
【0039】
最も簡単な反射防止表面は、下記の反射係数を持つ基板上の単一の1/4波長層である:

ここで、nは基部の屈折率、nは支持層の屈折率、nは上部空間の屈折率である。この反射係数は、下記の条件下の1/4波長層の場合、反射防止状態においてゼロに近くなる:

この簡単な反射防止表面の位相は、支持層の厚みが1/4波長である場合、実数(標的検体分子からの散乱波と直交位相)である。これは差分位相コントラストの反射防止改善を与える。支持層の厚みが約1/8波長である場合、反射係数の位相は純虚数となり、反射波は分子による散乱波と同相となる。この場合、支持層上面からの反射波と、支持層下面からの反射波とが直交位相であることが分かる。これがインライン直交位相のための条件である。
【0040】
なお、インライン直交位相は、相互に自己整合である2つのモードを有する。ある反射係数を持った基板上の分子として見ると、分子からの散乱波と基板からの反射波が同相の時、インライン直交位相状態が得られる。支持層上の分子として見ると、支持層上面からの反射波と支持層下面からの反射波とが直交位相である時、インライン直交位相状態が得られる。分子散乱は散乱波を90度位相シフトするので、これら2つの見方は矛盾していない。分子散乱波は上面反射と直交位相であり、上面反射は下面反射と直交位相である。2つの直交位相状態が加算されて同相となる。これは分子散乱波を強度変調へ直接変換する。インライン直交位相の「インライン」は、探査ビームの支持層上面からの反射と、下面からの反射が互いに一直線になっているためである。このようなインライン構成によりインライン直交位相は共通路干渉法に分類される。共通路干渉法は、分子位相シフトに伴う小さな位相差の安定した検出にとって極めて重要である。
【0041】
図3は、反射防止構造体上の単分子層バイオ膜の反射防止改善差分位相コントラスト強度変調を支持層厚の関数として示す。この場合、支持層はバイオ層と屈折率が整合しており、基板屈折率が示されている。考える最も簡単な事例は、屈折率n=1.35のバイオ層と屈折率整合している支持層と、屈折率n=1.35=1.82の基板とである。位相変調がラップ(wrap)を始めるので、n=1.82の理想的な反射防止事例は示されていない。
【0042】
図4は、図3に示された条件に対応する反射率を示す。基板屈折率が1.82に近づくと反射率はゼロに近づく。反射防止状態における低反射率は、絶対強度変調を低減する。これを図5に示す。絶対強度変調は、図3の強度変調と図4の反射率の積である。反射防止状態に近づくと絶対信号は減少する。レーザの相対強度雑音が支配的である限りは、S/Nは減少した絶対光子流量による悪影響を受けない。基板としてのシリコンは、絶対信号の増加と減少のバランスを提供する。
【0043】
基板とバイオ層とが多層である最も一般的な状況は、転送行列手法を使用することで近似される。実際の材料の現実的な複素屈折率が、この手法に容易に組み込まれる。通常の材料と基板構造体は、金、1/4波長誘電体スタック、反射防止表面、及び薄い又は厚い酸化物又は他の被膜が被覆されたシリコンを含む。
【0044】
厚い金は、波節高反射率表面に非常に近い挙動をする。その表面近くで場がゼロとなるので、この表面上のバイオ層をほぼ見えなくする。ガラス上の80nm厚の金の場合の場の2乗を図6Aに示す。完全な波腹ミラーの4に比べて、この金の表面における強度は0.5であり、金の内部で急速に減衰する(減衰長16nm)。ガラス上の金の場合の差分位相コントラストとインライン直交位相の両方の相対強度変調が、金の厚みの関数として図6Bに示されている。強度変調への差分位相寄与が、16nmの厚みの場合たった3%であることが図6Bに示されている。また図6Bは、ガラス上の金の厚み約3nmにおいてバイオ単分子層からほぼ30%の差分位相コントラスト信号があることを示している。インライン強度変調は、少し大きく3nm未満の厚みの場合ほぼ20%である。これはガラス上の薄い金は、差分位相コントラストとインライン直交位相の両方の改善された検出のための候補であることを示唆する。しかし、この厚みの金は、均一な層にならず塊になり易い。一方、ガラスの代りのシリコンの上の金は、シリコンの大きな屈折率のために高位相シフトにならない。
【0045】
誘電体1/4波長スタックは、反射位相の制御に加えて高反射率を持つよう容易に設計できる。2つの最も一般的な位相状態は、波節表面と波腹表面である。これら2つの状態の間に、反射係数が純虚数値を取りこのためインライン直交位相状態である場合が存在する。図7は、誘電体スタック上のバイオ単分子層によって引き起こされる位相変調と反射率変調を示す。表面は、波腹表面状態から始まり、波節表面状態へと進む。この間に反射率変調が無視できる「インライン」状態が存在する。これは、高反射率はバイオ層によって引き起こされる位相シフトによって変えられないためである。従って、インライン直交位相は高反射率基板の場合には適用されない。しかし、差分位相コントラストの場合は、波腹表面は2重パス位相のおよそ2倍の位相シフトを与える。また、改善された差分位相コントラストピークはほぼ100nmのFWHM(半波高全幅)と相対的に広く、該表面を層厚みの僅かな変化によって影響されないようにする。
【0046】
基板とほぼ完全なインピーダンス整合をして反射率をほぼゼロにできる該基板上の1/4波長層を使用して反射防止表面が得られる。この反射防止表面は、表面上のバイオ層によって引き起こされる位相シフトを増大させる。現実的でありうる構造体は、ZrO基板(n=2.2)上のMgF(n=1.38)でできた1/4波長支持層である。この構造体のバイオ層有りの場合と無しの場合の位相と反射率が、図8に示されている。この場合、反射率最小の近くの位相の跳びが顕著であり、バイオ層の効果が大きい。この構造体の相対強度変調が図9に示されている。2つの寄与が存在する。1つは差分位相コントラストからの寄与であり、もう1つは表面によるインライン振幅変調からの寄与である。差分位相コントラストの反射防止による改善は、反射防止状態において非常に大きい。この構造体の場合、反射防止状態から僅かにずれた時、散乱波と反射波が同相でありえて、遠距離場において強め合うよう干渉するので、インライン効果も大きい。このインライン状態は差分でない直接直交位相であり、絶対タンパク質高さを与える。この改善によるFWHM幅は約25nmである。
【0047】
遠距離場にある象限検出器において、差分位相コントラストチャネルと直交位相のインライン振幅チャネルとは、ほぼ直交しているので加えることができる。この時、全強度変調は次のとおり:

これが図9に全曲線として示されている。全変調のFWHMはより広く、より多くの安定性をこの検出方法に提供する。
【0048】
シリコンは、電子産業にとっての重要性のために入手可能な最も一般的な材料の1つである。従って、シリコンは、反射防止被膜との適合性に加えて経済性の理由のために基板の良い選択肢である。図10は、裸のシリコン表面における場の強さの実数部と虚数部と大きさとを示す。場の強さが低く、完全波腹状態の48%である。これは、シリコン上に酸化物層を成長させることで改善できる。屈折率1.3の8nm厚バイオ層は、自由空間において2×(n−1)×d×2×π/λ=0.048ラジアンの位相シフトを与える。図11は、シリコン表面における場の強さの2乗を波腹表面と比較して示す。シリコン上の場の2乗は、波腹の場合の60%である。シリコンの計算された位相シフトは、波腹の場合の8%である。このため、裸のシリコンは干渉法のための有用な表面ではない。
【0049】
一方、シリコン上に熱的に成長させた二酸化シリコンは、空気/酸化物界面と酸化物/シリコン界面の間の強い屈折率差を提供する。酸化物厚みが1/4波長(λ/4)×N(Nは奇数)である時、電場は酸化物表面(波腹)において最大となり、この表面で該電場はバイオ層の影響を最も受ける。これはシリコン上の1/4波長酸化物(抗体層有りと無し)の場合の電場の強さを示す図12に例示されている。表面は波腹であるため、場が最大で差分位相コントラスト状態である。位相シフトはバイオ層によって引き起こされ0.226ラジアンであり、これは裸のシリコン(表面はほぼ波節である)の場合の約20倍である。位相と反射率との感度がシリコン上の酸化物厚みの関数として図13に示されている。ほぼ反射防止状態は100nmの1/4波長厚みの時である。
【0050】
8nm抗体単分子層に応答する強度変調が、酸化物厚みの関数として図14に示されている。図14は、位相チャネル(位相変調の直交位相検出を想定している)と、振幅チャネル(全遠距離場強度を検出)と、これら2つのチャネルの直交位相和とを示す。直交位相和の興味深い利用は、ディスク厚みをディスクに亘って変える場合に発生する。直交位相和は、個々のチャネルのいずれよりも厚み変化への感度が低い。なお、厚いバイオ層の場合の差分位相コントラストチャネルは、30%超の強度変調を有することが可能である。直交位相における和をとると、このチャネル和は、ウェハに亘って変わる酸化物厚みに対する安定性を提供する広い帯域幅を有する。
【0051】
シリコン上の反射防止被膜の限界において、相対変調は任意に大きくできる。これが図15、図16に例示されている。図15は、反射防止被覆シリコン表面の場合の電場を示す。反射防止状態の場合の電場はほぼ1(反射なし)であるが、この状態は光を反射する抗体層によって損なわれる。図16は、抗体バイオ層によって引き起こされる差分強度変調を示す。差分強度変調は、元の反射率が任意にゼロに近くできるので任意に大きくできる。この場合、図16に示すように、酸化物厚みの関数として多数のピークを持ち位相ラッピング(wrapping)が発生する。強度変調は100%を超えることが可能である。
【0052】
図14のインライン強度チャネルは、インライン直交位相と呼ばれる上記新しい直交位相種類の性能を示す。遠距離場において、バイオ層によって引き起こされる位相変調を強度変調に、開口又は分割検出器なしで直接変換する。このインライン応答のピークは80nmと120nmで発生する。
【0053】
インライン検出のための直交位相状態は、厚みが約1/8波長、即ち、Nを奇数、λを支持層における波長(自由空間での波長を該層の屈折率で割ったもの)としてλ/8×Nの時に発生する。場の振幅は1/4波長時に最大(波腹)となり、ゼロ波長又は半波長時にゼロに減少する。従って、インライン直交位相検出において、表面(バイオ層)での場の強さと、インライン直交位相検出状態(1/8波長厚み時)との間のトレードオフがある。このトレードオフは、λ=635nmでn=1.5(SiO)の場合、約80nm(0.2λ)と120nm(0.3λ)において最適化される。この時、バイオ層の存在を検知するための高い電場を有しながら信号波と参照波の間の部分位相シフトが存在する。これらの位置における位相シフトはπ/2ではなく、π/2.5又は72度に近い。従って、検出は直交位相に単に近い状態であるが、名称「直交位相」に値する合理的な直交位相への近さ(20%以内)がある。
【0054】
インライン直交位相検出の1つの実施形態は、固定されたバイオ分子のための基板としてSiO層で被覆されたシリコンウェハを使用する。SiO層の厚みは、SiO上表面からの反射光と下のSi表面からの反射光がほぼ直交位相となるように選択される。タンパク質分子は入射光を散乱し、固定されたタンパク質の質量密度に線形比例した位相シフトを与える。これが直交位相干渉によって遠距離場強度シフトに変換される。タンパク質のパターン形成は、直径0.1mmタンパク質スポットを形成可能な噴射プリンタを使用してスポット印刷により行うことができる。
【0055】
直交位相干渉において、タンパク質の存在は、参照ビームと干渉する信号ビーム(約π/2又は3π/2だけ位相シフトされる)に位相シフトを引き起こす。共通パス干渉法を使用する実施形態は、信号ビームと参照ビームとが共通光路を共用し、相対位相差が機械振動又は動きに影響されずに約π/2となるようにこれらのビームを生成する。直交位相とすることで、全干渉強度シフトは直線的に変化し、タンパク質によって引き起こされる位相シフトの関数として最大の傾斜を持つ。高速回転ディスクを使用することで、典型的な1/fシステム雑音はオクターブ当り40dBの傾斜を持つ。1/f雑音よりかなり高い周波数において、50dB雑音床抑制が得られ、高い精度でタンパク質信号を測定することが可能となる。
【0056】
図17は、インライン直交位相システムの実施形態であるディスク構造体からの反射光線の概略図である。上部酸化物(SiO)表面からの反射光と下のシリコン(Si)表面からの反射光との直交位相干渉に基づいている。これら2つのビームの位相差は、酸化物厚みによって設定される。酸化物厚みが約λ/8又は3λ/8である時、2つのビームは直交位相である。タンパク質の存在は入射ビームを散乱させ、光学位相シフトを与え、これが遠距離場強度シフトに変換される。強度シフトは、直交位相干渉だけでなく、表面電場強さにも依存する。実際のタンパク質信号は、これら2つの要素の組合せである。幾つかの異なる波長について、1nmのタンパク質による強度シフト対酸化物厚みの理論曲線が、図18に示されている。
【0057】
インライン直交位相ディスクは、熱酸化物層を持った100mm直径のシリコンウェハから作製することができる。SiO層の厚みは80nm又は120nmが選ばれ、635nm波長を二酸化シリコンの屈折率で割った値を使用した時、π/2又は3π/2の直交位相に近い状態を得る。3π/2直交位相が好適である。これは、この直交位相とすることで、タンパク質の存在によって引き起こされる強度シフトは正で、従って容易にこれをちり又は塩粒子による散乱(負信号である)から区別できるためである。なお、位相シフトと層厚みの間に線形関係はない。これが、2つの直交位相状態が厚み0.125λと0.375λではなく厚み約0.2λと0.3λで発生する理由である。ここでλは自由空間での波長を屈折率で割ったものである。SiO表面は、タンパク質と共有結合してこれを固定するイソシアン酸塩で被覆されてもよい。
【0058】
1つの実施形態では、光学検出システムは、635nmダイオードレーザを光源として使用する。レーザビームは、5cm焦点距離対物レンズによりディスク上に20μm直径で合焦される。ディスクは、米国Lincoln Laser社から入手可能で20Hzで回転するスピナー等の安定したスピナーに装着される。ディスクからの反射光は同じ対物レンズによって集光され、ビームスプリッターによって光検出器に向けられる。この実施形態では、検出器は象限検出器であり、1つの全強度チャネルと2つの差チャネル(左−右、上部−下部)の3つの出力チャネルを有する。インライン動作の場合、和強度チャネルだけが検出に使用され、他の2つのチャネルは光学位置合せのための診断を提供する。タンパク質によって生成された強度シフトは、図19Aに示すように全光強度の時間軌跡として直接測定される。連続する半径において取られた時間軌跡を一緒にして2次元表示にすることで図19Bに示すような2次元表面プロフィールが得られる。走査の横方向分解能はビーム幅(この場合、20μm)に等しい。
【0059】
インライン直交位相システムの検出感度は1つのトラック上を多数回走査し、走査データ間の差を取ることで測定される。検出感度は平均することで、平均値の数の平方根だけ改善され、平均する時間があまりに長くなり、系統的ずれが支配的になる前に、レーザスポット当り10pmもの感度となる。1つの実験プロトコルでは、16個の平均値で検出感度はレーザスポット当り20pmであり、これはレーザ焦点当り検出可能な最小タンパク質質量約6フェムトグラムに対応する。この質量感度をより大きな領域に当てはめるために、検出領域に亘り平均することの効果を考慮しなければならない。表面粗さの非相関のランダムな分布を仮定すると、より大きな領域に亘る走査時、測定値の標準誤差は、その面積の平方根分の1に減少する。この尺度を使用すると、質量感度は0.3pg/mmになる。
【0060】
図19Bのタンパク質パターンは、Scienion社によって製造されBioDot社によって販売される圧電インクジェットタンパク質プリンタによって印刷される。各スポットは300pLのタンパク質溶液で印刷され、イソシアン酸塩被膜上の100μm直径スポットとなる。25,000超のスポットを1つのシリコンウェハ上に印刷でき、非常に多重の定量評価が可能となる。
【0061】
インライン直交位相生物ディスクの定量評価感度を示すために、平衡逆免疫測定法を用いて投与量応答実験を行った。ディスクはイソシアン酸塩で被覆され、マウスとウサギIgG抗原の25,000超のスポットが印刷され、半径に沿った100本のトラック(各トラックに256スポット)からなる放射状の格子パターンに配列された。これらのスポットは、2つのマウススポットが対角に印刷され、2つのウサギスポットが他の対角に印刷された2×2の単位セル群にグループ分けされた。このディスクを先ず0.05%トゥイーン(Tween)20と10ng/mlのカゼインが添加された10mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液内で全体をインキュベーションし、測定の基線を設定した。次に、このディスクを、0.05%トゥイーン20と10ng/mlのカゼインが添加されたPBS緩衝液内で抗マウスIgGの濃度を100pg/mlから100ng/mlまで増加させて、全体をインキュベーションした。各インキュベーションは、システムが平衡に達し、ディスク表面への質量輸送によって制限されることがないようオービタルシェーカー(VWR)上で20時間続けられた。このディスクは、各インキュベーション後、走査された。各走査結果をインキュベーション前の前走査結果と比較し、全てのスポットについてタンパク質高さ変化を前走査のタンパク質高さで割って各スポットの高さ変化率を求め、特定の(マウス)スポットと非特定の(ウサギ)スポットとの高さ変化率の差を取ることで、抗体・抗原結合を分析した。この高さ変化の相対差は、定量評価信号として定義される。例えば、0.1の定量評価信号は、該特定のスポットが該非特定のスポットより10%多く質量が増えたことを意味する。この分析は、系統的シフトと、洗い落し効果と、両グループのスポットに共通な非特定の結合とを良く排除する。
【0062】
投与量応答実験の結果が、図20A、図20Bに示されている。各単位セル内の定量評価信号のヒストグラムが投与量の関数として図20Aに示され、投与量応答曲線が図20Bに示されている。投与量応答曲線はガウスを各分布に合わせることで得られる。合わせたガウスの中心は平均定量評価信号として使用される。図20Bのデータ点の誤差バーは測定値の標準誤差によって設定される。現在のシステムの感度は、投与量応答曲線が検出基線とぶつかる所で100pg/mlである。この濃度レベルでは、スポット当りの平均検出タンパク質質量変化はたった20フェムトグラムである。投与量応答曲線は16%質量増加で飽和し、印刷されたタンパク質の10%生物活性を示唆する。
【0063】
該ディスクを複数の仮想のウェルに分割し、それぞれを独立な試料として扱うことで、スケーリング分析が行われた。ディスク当りの試料数を増加させると、試料当りのスポット数が減少し、その結果、定量評価の不確実性が増加する。図21は、定量評価の標準誤差対ディスク当りの試料数を示す。この図の誤差バーは、試料の異なるウェルに亘る統計によって設定される。標準誤差は試料数の平方根に比例して増加し、システムが偏りがなく測定雑音は相関がないことを示唆する。この標準誤差は定量評価の検出限界を設定する。これと投与量応答曲線とを組合わせると、図22に示すように定量評価の感度限界をディスク当りの試料数の関数として得ることができる。この検出限界は、雑音増加からの寄与と投与量応答曲線の形状からの寄与を含む。例として、32の異なる定量評価をこのディスクに対して行った場合、各定量評価の検出限界は2ng/mlとなるであろう。この曲線を更に外挿すると、1つの単位セルを独立な試料として扱った場合、定量評価の感度は約10ng/mlとなるであろう。
【0064】
他の実施形態では、シリコンウェハ上に熱的に成長させた二酸化シリコンは、インライン検出のための80nmの酸化膜厚を得られた。タンパク質のスポットが、Deeracプリンタを使用してこれらのウェハ上に形成された。この事例では、遠距離場走査は開口がなく全強度を収集した。図23、図24に示すように、強度の明瞭な変調がウェハ表面上の固定されたタンパク質スポットによって引き起こされた。図23は単一のスポットの断面を示し、外側の山と内側の山が示されている。タンパク質変化は、100pmまで解像可能である。図24は明瞭な輪構造のスポットの高分解能走査画像を示す。
【0065】
ディスクの別の実施形態では、酸化膜厚を80nmから120nmまで変化させる。図25に示すように、120nmにおいて、レイリー散乱(検出されるビームから光を取除く)と対比されている分子位相シフトによる信号の符号が反対になる。反射ビームからのエネルギー散乱は負で、一方、表面上の添加タンパク質負荷は正である。これは分子位相とレイリー散乱との区別を可能にし、追加された質量(位相負荷)と光散乱との区別を可能にする。散乱損失は常に負で、一方、120nm酸化膜ディスク上の添加タンパク質負荷は、強度の正シフトを生じさせる。この原理が実験により示された。約200タンパク質スポット(120nm酸化膜生物ディスク上の120μm直径IgGスポット)の走査画像が、図26に示されている。タンパク質スポット(高さ約3nm)は明るく、小さなちり及び破片は黒いしみとして示されている。
【0066】
直接検出の別の特徴は、非特定結合等の共通モード効果を減算する参照減算である。インライン検出は、例えば前記米国特許出願第11/345,566号に示されているような差分符号化の原理を使用することができる。差分符号化の1つの実施形態は、図27に示す2×2単位セルである。図27の「単位セル」の例は2×2アレイ状に配置された標的スポットと参照スポットを有する。右側のデータは、120nm酸化膜生物ディスク上に印刷された約120μm直径の単位セルスポットのデータである。2つの類似のタンパク質スポットが2×2アレイパターン状に配置されている。1つの組は該検体に特定であり、他方の組は類似の特性を有するが、該検体に特定ではない。インキュベーション時、共通非特定結合が両方のスポット高さを同様に増加させるが、検体への特定結合のために特定スポット高さはより多く増加する。下記の対角和の差を取ることで:

共通非特定結合は直接引くことができ、残りRiはその単位セル内の特定結合分である。
【0067】
インキュベーションステップで引き起こされた背景雑音とランド共通ずれを低減するのを助けるために使用できる追加の処理は直接画像引き算である。これが図28に例示され、真ん中の前走査画像を左の後走査画像(100ng/mlIgGを含むカゼイン緩衝液で20時間インキュベーション後)から引くことを示している。右の差分画像は表面高さの変化を示す。差分画像は、左上と右下スポットが他方の対角の2つのスポットに比べて質量が増えたことを明らかに示す。ちりの効果は差分画像において明らかである。上記単位セルの対角差は差分画像にも適用でき、特定結合の効果を非特定結合及びランドずれから更に分離する。
【0068】
緩衝液に20時間洗浄により引き起こされた表面高さシフトは、生物ディスク表面高さ分布の連続する走査間でランダムで相関がないと仮定する。この仮定は生物ディスクが経験する通常の状態の場合、おそらく有効である。タンパク質検出の限界を設定する表面粗さの例が図29に示されている。図29は、120nm酸化膜生物ディスク上のインライン直交位相の検出感度を示すサンプルデータのグラフである。左上の走査データは右側の2つの線プロットを与える。1つの線は1つのIgGスポットの中心を通り、他方はいわゆるランドを通る。粗さは約0.27pg/mmの質量感度に変換される。図30のヒストグラムは、同じディスクの20時間緩衝液洗浄の前と後の2つの走査データ間の表面高さのルート分散を示す。このルート分散は、焦点スポット当り46ピコメートルであると検出された。これは、直径15〜20μmの焦点スポット当り5フェムトグラムのタンパク質に対応する。
【0069】
表面プラズモン共鳴等の他の表面質量検出技術と比較するために、測定の精度はセンサー面積の平方根に従って向上するので、この数字は対応するサイズに正しくスケールされる必要がある。1mmにスケールされた表面高さ感度は下記式で与えられる:

ここで、afocは焦点レーザスポットの面積で、Δhmeansは高さの差のルート分散である。Δhmeans=46pmで、afoc=200μmの場合、Δhmm=0.65pmになる。この平均表面高さ感度は陽子の半径より小さいことは興味深い(1平方ミリメートルに亘る平均であるのでこれは明らかに可能であるが)。このタンパク質高さに伴う質量は次のとおり:

これは、Δhmm=0.65pmの時、Δmmm=0.25pgを与える。面積スケールAにおいて測定を行う時の表面質量感度の一般的なスケーリングを得るために、これらの式を組み合わせることができ、下記式が得られる:

この式から感度は下記式で決定される:

これの単位は長さ当りの質量である。
【0070】
面積Aを超える大きさの1つの試料の場合、定量評価から検出できる最小捕捉質量は下記式で与えられる:

例として、試料面積が1mmの場合、検出質量は0.25pgである。同様に、最小検出可能表面質量密度を得るために、スケーリング感度は、検知面積の平方根で割算される。平方ミリメートルの場合、これは次のとおり:

この面積依存感度は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される最良値と同等である。この感度は共鳴の必要なく得られるので、他の干渉又は共鳴手法よりずっと丈夫で製造し易い。
【0071】
120nm酸化膜生物ディスクの投与量応答曲線は、ディスク上に2×2単位セルパターン状にスポットを印刷することで得られる。スポットレイアウトの例は図31に示されている。この例では、ディスクには25,600スポットが100半径方向ステップと256角度ステップで形成されている。これは6,400単位セルとなる。投与量応答曲線はディスク全体を10ng/mlカゼインを含むPBS内でインキュベーションし、検体(抗ウサギ)の濃度を増加させて得た。約3,000スポットを使用して得られた投与量応答曲線が図32に示されている。図32は120nm酸化膜ディスク上での一連のインキュベーションした場合の、検体濃度の関数としてスポット質量の変化を示す定量評価データを表す。滑らかな曲線はこのデータに適合したラングミュア関数である。この関数のパラメータはk=35ng/ml、検出限界=3fg(スポット当り)、及び生物活性16%である。飽和と検出限界の間のダイナミックレンジは約300:1である。これらの数値は根本的ではなく、改善される可能性があり、インライン生物ディスクの実験上の性能の単なる例として示されている。
【0072】
本システムは様々な変更及び別の形態が可能であるが、好例の実施形態を図に例示として示し、詳細に説明した。しかし、本システムを開示した特定の形態に限定する意図はなく、添付の請求項によって定義される本システムの思想と範囲に入る全ての変更、等価物、及び別の形態は本発明に含まれることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ミラー上の1つの分子による反射と散乱、及び遠距離場における散乱波と反射波の組合せの概略図である。
【図2】ミラー上の分子群の均一な層の波動関数と境界条件を例示する。
【図3】異なる基板屈折率に対して反射防止構造体上の単分子層バイオ膜の差分位相コントラスト強度変調を支持層厚の関数として例示するグラフである。
【図4】図3に示された条件に対応する反射率対支持層厚を例示するグラフである。
【図5】絶対強度変調(図3の強度変調と図4の反射率の積)対支持層厚を例示するグラフである。
【図6A】ガラス上の金の場合の電場の2乗と位置との関係を例示するグラフである。
【図6B】単分子層に応答するガラス上の金の場合の相対強度変調対金の厚みを例示するグラフである。
【図7】誘電体スタック上のバイオ単分子層によって引き起こされる位相変調と反射率変調対上部層厚を例示するグラフである。
【図8】ZrO上の反射防止層のバイオ層有りの場合と無しの場合の位相及び反射率対厚みを例示するグラフである。
【図9】ZrO上の反射防止層の場合の相対強度変調対支持層厚を例示するグラフである。
【図10】シリコン表面における電場の強さ(実数部と虚数部と全大きさ)と位置との関係を例示するグラフである。
【図11】シリコン表面と波腹表面の場合における電場の強さの2乗と位置との関係を例示するグラフである。
【図12】シリコン上の1/4波長酸化物(抗体単分子層有りと無し)の表面における電場の強さと位置との関係を例示するグラフである。
【図13】バイオ層によって引き起こされる位相シフトと、反射率をシリコン上の酸化物厚みの関数として例示するグラフである。
【図14】8nm抗体単分子層に応答する差分位相コントラスト及び直接強度変調と酸化物厚みとの関係を例示するグラフであり、位相チャネルと、強度チャネルと、これらの直交位相における和との応答を示す。
【図15】反射防止被覆シリコン表面の抗体層有りの場合となしの場合の電場と位置との関係を例示するグラフである。
【図16】抗体バイオ層によって引き起こされる差分位相コントラスト及び直接強度変調を例示するグラフである。
【図17】インライン生物ディスクの実施形態であるディスク構造体とそれによる光線反射の概略図である。
【図18】幾つかの異なる波長に対して1nmのタンパク質によって引き起こされる強度シフト対酸化物厚みを例示するグラフである。
【図19A】タンパク質によって生成され、全光強度の時間軌跡として直接測定された強度シフトを例示するグラフである。
【図19B】連続する半径において取られた時間軌跡を一緒にして2次元表示にすることで得られる2次元表面プロフィールを示す。
【図20A】インラインシステムの実施形態の各単位セルの定量評価信号の分布を投与量の関数として例示するグラフである。
【図20B】インラインシステムの実施形態の投与量応答曲線を例示するグラフである。
【図21】測定誤差対ディスク当りの試料数を例示するグラフである。
【図22】測定誤差と応答曲線によって設定される濃度検出限界を例示するグラフである。
【図23】単一のスポットの断面を示し、外側の山と内側の山が示されている。
【図24】明瞭な輪構造のスポットの高分解能走査画像を示す。
【図25】酸化膜厚120nmにおける分子位相とレイリー散乱との改善された弁別を示すグラフと概略図である。
【図26】120nm酸化膜生物ディスク上の約200スポットの走査画像(2.5mm幅)を示す。スポットの直径は約120μmで、高さは約3nmである。
【図27】2×2アレイ状に配置された標的スポットと参照スポットを有する単位セルの例を示す。右側のデータは、120nm酸化膜生物ディスク上に印刷された約120μm直径の単位セルスポットを示す。
【図28】前走査画像から後走査画像を引いて右の差分画像を生成する画像引き算プロトコルを示す。この差分画像は表面高さの変化を示す。
【図29】120nm酸化膜生物ディスク上のインライン直交位相の検出感度を示す。左上の走査データは右側の2つの線プロットを提供する。1つの線は1つのIgGスポットの中心を通り、他方はいわゆるランドを通る。
【図30】同じディスクの20時間緩衝液洗浄の前と後の2つの走査データの間のルート高さ分散のヒストグラムを示す。
【図31】2×2単位セルパターン(100半径方向スポットと256角度スポット)に配置された25,600スポットを有するディスクレイアウトの実施形態を示す。
【図32】120nm酸化膜ディスク上での一連のインキュベーションした結果のスポット質量の変化を検体濃度の関数として示す定量評価データを表す。曲線は適合したラングミュア関数である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探査ビームと、試料中の標的検体の存在を検出するために該探査ビーム波を検出する検出器とともに使用される装置であって、
基板と、
該基板上に位置するバイオ層であって、該試料が該バイオ層上に堆積された時、該標的検体に反応するよう設計されたバイオ層と
を備え、
該基板は、該標的検体による該探査ビーム波の散乱をほぼ維持しながら、該基板による該探査ビーム波の反射率をほぼ最小にするよう選択されている装置。
【請求項2】
前記基板は、該基板によって反射された探査ビーム波が、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波とほぼ直交位相となるよう設計されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基板は、該基板によって反射された探査ビーム波と、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波とが遠距離場において干渉し、前記検出器によって検出可能な強度変調を直接生成するよう設計されている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記基板は、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波が前記遠距離場において該基板によって反射された探査ビーム波と強め合うよう干渉して強度変調を増大させ、該基板上のちり粒子によって散乱された探査ビーム波は該遠距離場において強度が減少するよう設計されている請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記基板は、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波が該基板によって反射された探査ビーム波とほぼ同相となるよう設計されている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記バイオ層は、前記基板上に形成された複数のスポットからなり、前記検出器は、前記標的検体が該複数のスポットのうちの1つと反応したことを検出する請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記複数のスポットは、複数の単位セルにグループ分けされ、該各単位セルは特定の抗体を含むスポットと非特定の抗体を含むスポットとからなる請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記各単位セルは第1対角と第2対角とを有する2×2スポットアレイであり、該第1対角は特定の抗体を含む一対のスポットからなり、該第2対角は非特定の抗体を含む一対のスポットからなる請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記検出器は前記各単位セルの複数のスポットのそれぞれの測定値を提供し、前記第1対角上の特定の抗体を含む一対のスポットの測定値の和から前記第2対角上の非特定の抗体を含む一対のスポットの測定値の和を引いた値である対角差が計算され、該計算された対角差は4つのスポット全ての測定値の和で割算される請求項8に記載の装置。
【請求項10】
該装置はディスクである請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記探査ビームは、ほぼ単色のレーザであり、
該装置は、
前記標的検体により散乱された探査ビーム波と前記基板により反射された探査ビーム波とを含む標的信号を集光するための対物レンズと、
該標的信号を前記検出器に向けるためのビームスプリッターと
を更に備える請求項1に記載の装置。
【請求項12】
回転機構を更に備え、前記基板と前記試料とが回転しながらこれらに前記探査ビーム波が当たるよう該回転機構が該基板を回転させ、反射された探査ビーム波と散乱された探査ビーム波とが前記対物レンズに入射する請求項11に記載の装置。
【請求項13】
該装置は、相対強度雑音がシステム雑音において支配的となるようにシステム雑音を低減するよう設計されている請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記バイオ層は、複数の単位セルにグループ分けされた複数のスポットからなり、該各単位セルは特定の抗体を含むスポットと非特定の抗体を含むスポットとからなる請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記検出器は左半分出力と右半分出力とを有する分割検出器であり、該左半分出力と右半分出力との差が、前記標的検体の存在を検出するために使用される請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記検出器は全強度出力と2つの差出力とを有する象限検出器であり、該全強度出力だけが前記標的検体の存在を検出するために使用される請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記検出器は1つの全強度出力と1つの差出力とを有する多出力検出器であり、該全強度出力はインライン直交位相測定値を計算するために使用可能であり、該差出力は差分位相コントラスト測定値を計算するために使用可能である請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記標的検体の存在を検出するために前記インライン直交位相測定値と前記差分位相コントラスト測定値との直交位相における和を取る請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記基板は、
基部材料と、
上支持面と、下支持面と、該上支持面と下支持面との距離である厚みとを有する支持層であって、該下支持面が該基部材料に隣接し前記バイオ層が該上支持面上に位置するよう該基部材料上に配置された支持層と
を備える請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記支持層は、該支持層の屈折率が前記上支持面及び前記基部材料による前記探査ビーム波の反射率をほぼ最小にするよう選択される請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記支持層の厚みは、前記上支持面によって反射された探査ビーム波の位相と、前記基部材料によって反射された探査ビーム波の位相とがほぼ直交位相又は同相となるよう選択される請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記支持層の厚みは、前記上支持面によって反射された探査ビーム波が、前記基部材料によって反射された探査ビーム波とほぼ直交位相となるよう選択される請求項19に記載の装置。
【請求項23】
λを前記探査ビーム波の波長、Nを奇数として、前記支持層の厚みは約N×λ/4である請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記支持層の厚みは、前記上支持面によって反射された探査ビーム波が、前記基部材料によって反射された探査ビーム波とほぼ同相となるよう選択される請求項19に記載の装置。
【請求項25】
λを前記探査ビーム波の波長、Nを奇数として、前記支持層の厚みは約N×λ/8である請求項19に記載の装置。
【請求項26】
前記支持層の厚みは、インライン直交位相検出にとって最適な厚みから、前記上支持面において電場強さを最大にする最適な厚みの間となるよう選択される請求項19に記載の装置。
【請求項27】
λを前記探査ビーム波の波長として、前記支持層の厚みは約0.2×λである請求項19に記載の装置。
【請求項28】
前記支持層の厚みは、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波が遠距離場において前記基板によって反射された探査ビーム波と強め合うよう干渉して強度変調を増大させ、該支持層上のちり粒子によって散乱された探査ビーム波は該遠距離場において強度が減少するよう選択される請求項19に記載の装置。
【請求項29】
λを前記探査ビーム波の波長として、前記支持層の厚みは約0.3×λである請求項19に記載の装置。
【請求項30】
前記基部層の材料と前記支持層の材料は、n×nの屈折率の該基部材料の場合に、該支持層は約nの屈折率を有するよう選択される請求項19に記載の装置。
【請求項31】
前記基部材料はガラスであり、前記支持層は金の薄い層である請求項19に記載の装置。
【請求項32】
前記金の層の厚みは約3nmである請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記支持層は、前記基板による前記探査ビーム波の反射率をほぼ最小にするよう設計された該基板上の1/4波長層を含む請求項19に記載の装置。
【請求項34】
前記支持層はMgFであり、前記基部材料はZrOである請求項19に記載の装置。
【請求項35】
前記基部材料はシリコン(Si)であり、前記支持層は二酸化シリコン(SiO)である請求項19に記載の装置。
【請求項36】
試料中の標的検体の存在を検出するための方法であって、
複数の分析分子がその上に分布された基板を提供することと、
該基板上の該分析分子の少なくとも一部に該試料を接触させることと、
探査ビームの波で該基板を走査することと、
該基板と該試料によって反射された探査ビーム波と散乱された探査ビーム波とを含む標的信号を集光することと、
該試料内の該標的検体の存在又は不在を該標的信号の強度変調から検出することと
を含む方法。
【請求項37】
前記集光するステップは、
前記標的検体によって散乱された探査ビーム波を集光することと、
前記基板によって反射された探査ビーム波を集光することと
を含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記標的検体によって散乱された探査ビーム波が前記基板によって反射された探査ビーム波とほぼ同相である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記基板は、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波が遠距離場において該基板によって反射された探査ビーム波と強め合うよう干渉して強度変調を増大させ、該基板上のちり粒子によって散乱された探査ビーム波は該遠距離場において強度が減少するよう設計されている請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記走査するステップは、
前記基板を回転台上に載せることと、
該基板と前記試料とを回転させて前記探査ビームで該基板を走査することと
を更に含む請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記複数の分析分子は、前記基板上に複数の単位セルにグループ分けされた複数のスポットの形態で分布し、該各単位セルは第1対角と第2対角とを有する2×2スポットアレイであり、該第1対角上の2つのスポットは前記標的検体と強く反応するよう設計され、該第2対角上の2つのスポットは前記標的検体と強く反応しないよう設計されている請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記検出するステップは、前記各スポットから強度信号を測定し、前記単位セル毎に、
前記第1対角上の2つのスポットからの測定値の和を第1対角和として計算し、
前記第2対角上の2つのスポットからの測定値の和を第2対角和として計算し、
該第1対角和と第2対角和の差を取ることを更に含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記検出するステップは、
前記標的信号の強度変調からインライン直交位相値を直接測定することと、
差分位相コントラスト値を測定することと、
該インライン直交位相測定値と該差分位相コントラスト測定値との直交位相における和を計算することと
を更に含む請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記接触させるステップの前に前記基板を前走査することと、
該前走査するステップにおいて集められたデータから前記複数の分析分子の少なくとも一部の前走査画像を作成することと、
該前走査画像に含まれるのとほぼ同じ分析分子の一部の後走査画像を作成することと、
該後走査画像を該前走査画像とともに記録することと、
記録された該前走査画像と後走査画像との差の画像を作成することと、
該差の画像を前記検出するステップにおいて使用することと
を更に含む請求項36に記載の方法。
【請求項45】
試料中の標的検体の存在を検出するための基台を準備する方法であって、
基板を提供することと、
該標的検体と相対的に強く反応するよう構成された複数の標的スポットを該基板上に形成することと、
該標的検体と相対的に弱く反応するよう構成された複数の参照スポットを該基板上に形成することと、
該複数の標的スポットと該複数の参照スポットとを、1つ以上の標的スポットと1つ以上の参照スポットとからなる複数の単位セルにグループ分けすることと
を含む方法。
【請求項46】
前記各標的スポットは、前記標的検体と特定的に結合するよう設計された特定の抗体を含み、前記各参照スポットは、該標的検体と特定的に結合するよう設計されていない非特定の抗体を含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記各単位セルは、第1対角と第2対角とを有する2×2スポットアレイであり、該第1対角は2つの標的スポットからなり、該第2対角は2つの参照スポットからなる請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記提供するステップは、
基部材料を提供することと、
上支持面と、下支持面と、該上支持面と下支持面との距離である厚みとを有する支持層を提供することと、
該支持層の該下支持面が該基部材料に隣接するよう該基部材料上に該支持層を配置することと、
前記複数の標的スポットと前記複数の参照スポットとを受け入れるよう該支持層を処置することと
を更に含む請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記支持層と前記基部材料の組合せを、前記上支持面と該基部材料による探査ビーム波の反射率をほぼ最小にするよう選択することを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記上支持面によって反射された探査ビーム波の位相と、前記基部材料によって反射された探査ビーム波の位相とがほぼ直交位相又は同相となるよう前記支持層の厚みを選択することを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項51】
n×nの屈折率の前記基部材料の場合に、前記支持層は約nの屈折率を有するよう該基部材料と該支持層とを選択することを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記支持層の厚みを、前記上支持面によって反射された探査ビーム波が、前記基部材料によって反射された探査ビーム波とほぼ直交位相となる厚みにほぼ等しくすることを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記支持層の厚みを、前記基板によって反射された探査ビーム波と、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波とが遠距離場において干渉し、検出器によって検出可能な強度変調を直接生成する厚みにほぼ等しくすることを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記支持層の厚みを、λを前記探査ビーム波の波長、Nを奇数として約N×λ/4にすることを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記支持層の厚みを、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波が遠距離場において前記基板によって反射された探査ビーム波と強め合うよう干渉して強度変調を増大させ、該基板上のちり粒子によって散乱された探査ビーム波は該遠距離場において強度が減少する厚みにほぼ等しくすることを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記支持層の厚みを、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波が、前記基板によって反射された探査ビーム波とほぼ同相となる厚みにほぼ等しくすることを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記支持層の厚みを、λを前記探査ビーム波の波長、Nを奇数として約N×λ/8にすることを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記支持層の厚みを、インライン直交位相検出にとって最適な厚みから、前記上支持面において電場強さを最大にする最適な厚みの間となるようにすることを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項59】
前記支持層の厚みを、λを前記探査ビーム波の波長として約0.2×λにすることを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項60】
前記支持層の厚みを、前記標的検体によって散乱された探査ビーム波が遠距離場において前記基板によって反射された探査ビーム波と強め合うよう干渉して強度変調を増大させ、該支持層上のちり粒子によって散乱された探査ビーム波は該遠距離場において強度が減少するような値にすることを更に含む請求項48に記載の方法。
【請求項61】
前記支持層の厚みを、λを前記探査ビーム波の波長として約0.3×λにすることを更に含む請求項48に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2009−527739(P2009−527739A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555488(P2008−555488)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/062229
【国際公開番号】WO2007/098365
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】