説明

ウェハレンズの製造方法

【課題】成形型を利用し熱変化をともなう転写工程によって樹脂層を形成する際に、レンズ等の光学面の位置ズレを低減できるウェハレンズの製造方法を提供すること。
【解決手段】マスター型30,130の平均線膨張係数と基板11の平均線膨張係数とが略等しいので、マスター型30,130と基板11との間に樹脂材料41a,41bを挟んで転写によってレンズ樹脂層12,13を形成する際に、マスター型30,130と基板11とを加熱して硬化させても、基板11やレンズ樹脂層12,13を元の温度に戻せば、レンズ樹脂層12,13を構成するレンズ要素L1,L2の光学面の間隔は、元の温度におけるマスター型30,130の転写面31a,32aに対応するものとなる。これにより、レンズ要素L1,L2又は光学面の位置ズレを低減したウェハレンズ10を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の光学レンズを有するウェハレンズの製造方法に関し、特に基板上に転写によって樹脂製の転写層を形成することで得られるウェハレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハレンズの製造方法として、光学部材の光学面形状に対応する複数の成形面部分を有する成形型を用い、基板の一面と成形型の成形面との間に光硬化性樹脂を充填し、光硬化性樹脂を光照射によって硬化させることでウェハレンズを得るものが存在する(特許文献1参照)。
【0003】
また、レンズアレイ等の製造方法として、個体組成物層上に樹脂によって表面形状を形成し、かかる表面形状を誘電体多層膜で被覆するものがある(特許文献2参照)。この製造方法では、転写型の型芯材料として、樹脂、ガラス、及び金属の使用が可能であることが開示されており、表面の離型膜に近似した膨張係数を有するものを選ぶことが望ましいとしている(特許文献2の第53段落参照)。
【0004】
特許文献1のようなウェハレンズの製造に際しては、光硬化性樹脂を完全に硬化させるため、光硬化性樹脂に対して加熱処理が行われる場合がある。この場合、成形型と基板との線膨張係数の差により、成形型の膨張に従う位置で樹脂が完全硬化するため、完成したウェハレンズを構成する個々のレンズ間のピッチが所期の値から数10μmずれたものとなってしまう。例えば携帯電話用カメラのセンサーピッチは、ここ数年で半分以下に減少しており、携帯電話用撮像レンズの組レンズ間の偏芯許容量も例えば4μmから2μmにまで減少している。このため、加熱によって完全硬化を行ったウェハレンズは、偏芯許容量を満たさないものとなってしまう。
【0005】
なお、特許文献2のようなレンズアレイ等の製造方法において、転写型の型芯材料と離型膜の材料とが近似した膨張係数を有していても、表面の樹脂層を加熱処理する場合には、レンズ間のピッチがずれることを防止できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2010/032511号パンフレット
【特許文献2】特開2004−163490号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、成形型を利用し加熱をともなう転写工程によって樹脂層を形成する際に、レンズ等の光学面の位置ズレを低減できるウェハレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るウェハレンズの製造方法では、基板と、基板の一方の基板面上に形成され複数の光学面を含む成形面を有する樹脂層と、を備えるウェハレンズの製造方法であって、成形面は、当該成形面に対応する転写面を有するマスター型を利用した1回以上の熱変化を伴う転写によって形成され、マスター型の平均線膨張係数と基板の平均線膨張係数とが略等しい。ここで、平均線膨張係数は、マスター型が使用される温度範囲内での線膨張係数の平均値を意味する。また、平均線膨張係数が略等しいとは、マスター型の主要部又は基材と、基板の主要部又は基材との関係で足り、マスター型や基板の全部分で平均線膨張係数が一致することは必要でない。
【0009】
上記製造方法によれば、マスター型の平均線膨張係数と基板の平均線膨張係数とが略等しいので、マスター型と基板との間に樹脂を挟んで転写によって樹脂層を形成する際に、例えばマスター型と基板とを加熱して硬化させる場合のように、温度上昇によってマスター型と基板とが膨張していたとしてもマスター型と基板との関係はほぼ等しく、基板や樹脂層を元の温度に戻せば、複数の光学面の間隔は、元の温度におけるマスター型の転写面に対応するものとなる。これにより、光学面の位置ズレを低減したウェハレンズを得ることができる。
【0010】
本発明の具体的な側面又は観点によれば、ウェハレンズの製造方法において、熱変化は加熱によるものである。
【0011】
本発明の別の側面によれば、マスター型の平均線膨張係数と基板の平均線膨張係数との差は、1ppm/℃以下であり、より好ましくは0.5ppm/℃以下である。この場合、加熱による温度上昇が20℃で、ウェハレンズの直径が200mmとすると、周辺での光学面の位置ズレは±2μm程度以下となる。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、樹脂層が、光硬化性の樹脂であり、加熱処理によって仕上げの硬化が行われる。この場合、光照射後の樹脂層を加熱処理によって完全硬化させることができ、完全硬化に伴って光学面の位置ズレが発生することを防止できる。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、マスター型が、金属材料を含んで形成され、基板が、ガラス材料で形成されている。この場合、マスター型が金属材料であるので、マスター型の耐久性を高めることができ、基板がガラス材料であるので、ウェハレンズの耐久性を高めつつウェハレンズを構成する光学素子の光学特性を確保することができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面によれば、マスター型が、インバー材で形成されている。この場合、マスター型と基板とを加熱する際のマスター型等の膨張量を低レベルとすることができ、樹脂層を加熱処理によって歪み等の問題が発生しにくくなる。
【0015】
本発明のさらに別の側面によれば、マスター型と基板とが、同一の材料で形成されている。この場合、マスター型の平均線膨張係数と基板の平均線膨張係数とを確実に一致させることができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面によれば、成形面が、マスター型の転写によって形成される。この場合、ウェハレンズをマスター型から直接的に得ることができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面によれば、成形面が、マスター型から1回の転写で得たサブマスター型の転写と、マスター型から2回の転写で得たサブサブマスター型の転写とのいずれかによって形成される。この場合、ウェハレンズをサブマスター型やサブサブマスター型から間接的に直接得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は、第1実施形態の製造方法によって得られるウェハレンズの側面図であり、(B)は、図1のウェハレンズから得た光学レンズの側面図である。
【図2】ウェハレンズを形成するためのマスター型を説明する側方断面図である。
【図3】ウェハレンズを形成するための別のマスター型を説明する側方断面図である。
【図4】マスター型や基板の膨張量を説明する図である。
【図5】(A)〜(F)は、第1実施形態に係るウェハレンズの製造方法を説明する断面図である。
【図6】サブマスター型やサブサブマスター型を説明する断面図である。
【図7】(A)〜(F)は、第1実施形態に係るウェハレンズの製造方法の変形例を説明する断面図である。
【図8】(A)〜(F)は、第1実施形態に係るウェハレンズの製造方法の別の変形例を説明する断面図である。
【図9】(A)〜(F)は、第2実施形態に係るウェハレンズの製造方法を説明する断面図である。
【図10】(A)〜(F)は、第2実施形態に係るウェハレンズの製造方法の変形例を説明する断面図である。
【図11】(A)〜(F)は、第2実施形態に係るウェハレンズの製造方法の別の変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るウェハレンズの製造方法について説明する。
【0020】
A)ウェハレンズ等の構造
図1(A)に示すように、ウェハレンズ10は、基板11と、第1レンズ樹脂層12と、第2レンズ樹脂層13と有し、第1及び第2レンズ樹脂層12,13全体によって基板11を上下から挟んだような積層構造を有する。
【0021】
ウェハレンズ10のうち基板11は、ウェハレンズ10の全体に亘って一様に延びる平板であり、光透過性を有するホウ珪酸系、石英系、珪酸塩系その他のガラスで形成されている。基板11の厚さは、基本的には光学的仕様によって決定されるが、少なくとも成形型から離型してウェハレンズ10を得るに際して破損しない程度の厚さとなっている。なお、基板11の上下の両面11a,11bは、研磨等によって平坦な鏡面に加工されている。ただし、基板11は樹脂であってもよい。この場合、転写型が金型であるなど異なる素材の場合により効果を生じる事となる。
【0022】
第1レンズ樹脂層12は、基板11の一方の面11a上に形成され、XY面に沿って2次元的に配列されている多数の第1レンズ要素L1で構成される。各第1レンズ要素L1は、光透過性を有し、第1レンズ本体1aと第1フランジ部1bとを備え、第1レンズ要素L1の表面は、転写によって成形される第1被転写面(成形面)12aとなっている。第1レンズ本体1aは、図1(B)にも示すように、例えば凸形状の非球面型又は球面型のレンズ部であり、第1光学面OS1を有している。周囲の第1フランジ部1bは、第1光学面OS1の周囲に広がる平坦な第1フランジ面FP1を有し、この第1フランジ面FP1は、光軸OAに垂直なXY面に対して平行に延びている。
【0023】
第1レンズ樹脂層12は、例えば光硬化性樹脂で構成される。光硬化性樹脂は、主成分である重合性単量体等の重合性組成物と、重合性組成物の重合硬化を開始させるための光重合開始剤と、必要に応じて用いられる各種添加剤とを含む光硬化性樹脂材料を硬化させることにより得られる。このような光硬化性樹脂材料は、硬化前の状態では流動性を有している。光硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、ビニル樹脂等がある。エポキシ樹脂は、光重合開始剤のカチオン重合により重合性組成物を反応硬化させて得ることができ、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、及びビニル樹脂は、光重合開始剤のラジカル重合により重合性組成物を反応硬化させて得ることができる。
【0024】
第2レンズ樹脂層13は、基板11の他方の面11b上に形成され、XY面に沿って2次元的に配列されている多数の第2レンズ要素L2で構成される。第2レンズ樹脂層13に含まれる各第2レンズ要素L2は、基板11を挟んで、第1レンズ樹脂層12に含まれる各第1レンズ要素L1とそれぞれ対向して配置されている。各第2レンズ要素L2は、光透過性を有し、第2レンズ本体2aと第2フランジ部2bとを備え、第2レンズ要素L2の表面は、転写によって成形される第2被転写面(成形面)13aとなっている。第2レンズ本体2aは、図1(B)にも示すように、例えば凹形状の非球面型又は球面型のレンズ部であり、第2光学面OS2を有している。周囲の第2フランジ部2bは、第2光学面OS2の周囲に広がる平坦な第2フランジ面FP2を有し、この第2フランジ面FP2は、光軸OAに垂直なXY面に対して平行に延びている。
【0025】
第2レンズ樹脂層13を構成する樹脂は、第1レンズ樹脂層12に用いられるものと同様の光硬化性樹脂である。ただし、両レンズ樹脂層12,13を同一の光硬化性樹脂で形成する必要はなく、別の光硬化性樹脂で形成することができる。
【0026】
図1(A)では、簡単のため、5組のレンズ要素L1,L2のみを図示しているが、実際は、XYの各方向に数10個以上のレンズ要素L1,L2が等間隔で配列されて、全体としては多数のレンズ要素L1,L2が2次元的に一様に配列されている。つまり、レンズ要素L1,L2は、等間隔の格子点上に多数個配置されている。ただし、レンズ要素の配置は、このような等間隔に限られるものではない。
【0027】
なお、第1レンズ樹脂層12と第2レンズ樹脂層13とについては、これらの一方を省略することができる。つまり、基板11の一方の面11a又は他方の面11bにのみレンズ樹脂層を設けてもよい。
【0028】
図1(B)に示すように、第1レンズ樹脂層12のうちいずれか1つの第1レンズ要素L1と、第2レンズ樹脂層13のうち上記第1レンズ要素L1に対向する1つの第2レンズ要素L2と、これらのレンズ要素L1,L2間に挟まれた基板11の部分11pとは、1つの光学レンズ4に相当する。光学レンズ4は、ウェハレンズ10を各レンズ要素L1,L2の中間位置でダイシングすることによって個片化されたものであり、平面視正方形の複合レンズとなっている。
【0029】
B)形状転写用の成形型の構造
図2に示すマスター型30は、ブロック状の部材であり、この場合、図1(A)に示すウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12を作製するため繰返し使用される。マスター型30は、図1(A)のウェハレンズ10に設けた多数の第1レンズ樹脂層12の第1被転写面12aを一括して形成するための成形面31を有している。マスター型30の成形面31は、第1被転写面12aのうち第1光学面OS1を形成するための第1光学転写面31aと、第1フランジ面FP1を形成するための平坦な第1フランジ転写面31bとを含む。第1光学転写面31aは、等間隔の格子点上に多数個配置されており、各々が最終的に得られる光学レンズに対応する形状、ここでは、略半球の凹形状に形成されている。
【0030】
マスター型30は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば鉄−ニッケル系合金その他の鋼材が挙げられる。具体的にはSUS304、SUS420J2、STAVAX(ウッデホルム社)、ステンレスインバー、パーマロイなどがある。マスター型30は、上記のような金属材料でできた基材上に別の金属等を被覆したものとでき、無電解ニッケルリンメッキや銅メッキを施すことで光学面仕上げ加工を容易にしている。なお、マスター型30又はその基材は、金属材料に限らず、ガラス、金属ガラス等の材料で形成されてもよい。ただし、高精度の成形面31を設ける観点で、一般的には金属材料でマスター型30を形成することが望ましい。
【0031】
マスター型30又はその基材の材料は、ウェハレンズ10の基板11の材料を考慮して選択される。つまり、マスター型30の材料は、マスター型30の平均線膨張係数が基板11の平均線膨張係数と略等しくなるように選択される。ここで、平均線膨張係数は、マスター型30が使用される温度範囲内での線膨張係数の平均値を意味する。具体的には、マスター型30によって第1レンズ樹脂層12を形成する際の温度範囲が例えば20℃〜40℃である場合、マスター型30の材料と基板11の材料とを選択する基準として、20℃〜40℃の範囲における線膨張係数の平均値が参酌される。
【0032】
図3に示すマスター型130は、図1(A)に示すウェハレンズ10の第2レンズ樹脂層13を作製するため繰返し使用される。このマスター型130も、図2に示すマスター型30と同様に成形面131を有しており、この成形面131は、第2被転写面13aのうち第1光学面OS2を形成するための第2光学転写面32aと、第2フランジ面FP2を形成するための平坦な第2フランジ転写面32bとを含む。マスター型130又はその基材を形成する材料は、金属、ガラス、金属ガラス等であり、マスター型130の平均線膨張係数が基板11の平均線膨張係数と略等しくなるように選択される。結果的に、両マスター型30,130の平均線膨張係数は比較的近いものとなる。
【0033】
図4は、基板11とマスター型30との温度変化による膨張量を概念的に示すグラフである。ここで、横軸上の温度TAは、マスター型30等が使用される最低温度を意味し、温度TBは、マスター型30等が使用される最高温度を意味するものとする。グラフ中で、点線で示す曲線は、マスター型30や基板11の膨張量を示しており、一点鎖線で示す曲線は、基板11の膨張量を示している。マスター型30や基板11の膨張量は、温度上昇に応じて増加しているが完全に線形ではない。つまり、膨張量の増減曲線の傾きは、マスター型30や基板11の線膨張係数に相当するが、温度とともに変化している。ここで、温度範囲TA〜TB〔℃〕における平均の線膨張係数αは、この温度範囲TA〜TBにおける膨張量E〔m〕を単位長U〔m〕で割ったものであり、以下の式
α=E/(U×(TB−TA))
で表される。よって、基板11の平均線膨張係数α1〔1/℃〕とマスター型30の平均線膨張係数α2〔1/℃〕との差分Δα〔1/℃〕は、基板11の膨張量をE1とし、マスター型30の膨張量をE2とし、膨張差がΔE=|E2−E1|であるとして、
Δα=ΔE/(U×(TB−TA))
となる。
【0034】
本実施形態では、基板11の膨張量E1がゼロでないことを前提として、マスター型30の膨張量E2を基板11の膨張量E1と略等しくする。これにより、マスター型30を利用して基板11上に第1レンズ樹脂層12を形成する際に、最低温度TAと最大温度TBとの間で、マスター型30の寸法と基板11の寸法とに差が生じることを防止できる。つまり、後述するが、光照射によって硬化させた第1レンズ樹脂層12を加熱処理によって完全硬化させる場合に、基板11や第1レンズ樹脂層12を室温に戻しても、第1レンズ樹脂層12を構成する多数の第1レンズ要素L1の間隔(ピッチ)は、マスター型30に設けた多数の第1光学転写面31aの間隔(ピッチ)と同一に保たれるので、室温のマスター型30の寸法を精密に転写した第1レンズ樹脂層12を得ることができる。
【0035】
実際の作製例では、用途や基板11のサイズにもよるが、基板11の平均線膨張係数α1とマスター型30の平均線膨張係数α2との差Δαが1ppm/℃以下となるようにし、より好ましくは0.5ppm/℃以下となるようにした。Δαが1ppm/℃以下である場合、加熱による温度上昇(TB−TA)が20℃で、ウェハレンズ10の直径が200mmであるとすると、周辺での第1レンズ要素L1の光学面OS1の位置ズレを±2μm以下とできる。また、Δαが0.5ppm/℃以下である場合、加熱による温度上昇(TB−TA)が20℃で、ウェハレンズ10の直径が200mmであるとすると、周辺での第1レンズ要素L1の光学面OS1の位置ズレを±1μm以下とできる。具体的には、基板11の材料として、平均線膨張係数α1が3.8ppm/℃程度のABC(日本電気硝子社)、平均線膨張係数α1が3.3ppm/℃程度のTEMPAX(ショット社)を用い、マスター型30の材料(基材)として、平均線膨張係数α2が3ppm/℃程度のインバー材を用いた。また、基板11の材料として、平均線膨張係数α1が7ppm/℃程度のD263T(ショット社)を用い、マスター型30の材料(基材)として、平均線膨張係数α2が7ppm/℃程度のインバー材を用いた。さらに、基板11とマスター型30の基材とを同一の材料、例えば平均線膨張係数α1,α2が3.8ppm/℃程度のABCで形成した。その他、基板11の材料として、平均線膨張係数α1が3.8ppm/℃のOA−10(日本電気硝子社)、平均線膨張係数α1が3.18ppm/℃のEAGLE2000(コーニング社)、平均線膨張係数α1が3.17ppm/℃のEAGLE XG(コーニング社)、平均線膨張係数α1が3.25ppm/℃のPYREX(登録商標:コーニング社)、平均線膨張係数α1が3.2ppm/℃のAF32(ショット社)、平均線膨張係数α1が4.5ppm/℃のAF45(ショット社)等を用いることができる。また、マスター型30の材料(基材)として、平均線膨張係数α2が0〜7ppm/℃のステンレスインバー、平均線膨張係数α2が約5ppm/℃の超硬合金、アルミナ(セラミック)等を使用することができる。ステンレスインバー、超硬合金、アルミナ等については、めっき処理を施してもよい。
【0036】
なお、以上では、基板11の平均線膨張係数α1とマスター型30の平均線膨張係数α2とを基準として考えたが、マスター型30の室温における線膨張係数と基板11の室温における線膨張係数との差が1ppm/℃以下(好ましくは0.5ppm/℃以下)となるようにしても、近似的にマスター型30と基板11との間に寸法差が生じることを抑制でき、ウェハレンズ10の周辺での第1レンズ要素L1の光学面OS1の位置ズレを低減することができる。つまり、マスター型30の室温における線膨張係数と基板11の室温における線膨張係数との差が1ppm/℃以下の場合、基板11の平均線膨張係数α1とマスター型30の平均線膨張係数α2とは、実質的に等しいと考えることができる。
【0037】
以上では、基板11の線膨張係数と一方のマスター型30の線膨張係数との関係について考えたが、基板11の線膨張係数と他方のマスター型130の線膨張係数との関係も同様である。つまり、基板11の平均線膨張係数α1とマスター型130の平均線膨張係数α2とを基準との差Δαが1ppm/℃以下となるようにすることで、室温のマスター型130の寸法を精密に転写した第2レンズ樹脂層13を得ることができ、ウェハレンズ10の周辺での第2レンズ要素L2の光学面OS2の位置ズレを低減することができる。なお、近似的には、室温におけるマスター型130の線膨張係数と室温における基板11の線膨張係数との差が1ppm/℃以下となるようにしても、室温のマスター型130の寸法を比較的精密に転写した第2レンズ樹脂層13を得ることができ、ウェハレンズ10の周辺での第2レンズ要素L2の光学面OS2の位置ズレを低減することができる。
【0038】
C)ウェハレンズの製造工程
まず、研削加工等によって、ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12のネガ型に対応するマスター型30と、第2レンズ樹脂層13のネガ型に対応するマスター型130とを作製する。この際、これらマスター型30,130の材料は、マスター型30,130の平均線膨張係数が基板11の平均線膨張係数と略等しくなるように選択される。
【0039】
次に、作製された一方のマスター型30を用いて、基板11上に第1レンズ樹脂層12を形成する。
【0040】
具体的には、図5(A)に示すように、マスター型30の成形面31上方に、光硬化性の樹脂として第1の樹脂材料41aを配置する。この際、第1光学転写面31a毎に独立して第1の樹脂材料41aを配置する。第1の樹脂材料41aは、その粘度及び表面張力によって窪んだ第1光学転写面31aから突起する。
【0041】
その後、図5(B)に示すように、マスター型30の成形面31が基板11の一方の面11aの下方に位置するように基板11等をアライメントして配置し、基板11の下方からマスター型30を押圧して、マスター型30の成形面31と基板11の面11aとが適当な間隔となるまで近接させる。ここで、第1の樹脂材料41aはマスター型30によって押圧され、第1フランジ転写面31bの位置まで十分な厚みで押し広げられる。
【0042】
次に、図5(C)に示すように、不図示の光源によりUV光その他の所定波長の硬化光を照射し、マスター型30と基板11との間に挟まれた第1の樹脂材料41aを硬化させる。結果的に、マスター型30の成形面31が転写されかつ硬化した樹脂によって構成される第1レンズ樹脂層12が形成される。
【0043】
次に、基板11とマスター型30とを貼り合わせた状態で加熱処理を行う。具体的には、仕上げの硬化処理として、マスター型30を基板11とともに40℃〜70℃程度で所定時間加熱する。これに伴って第1レンズ樹脂層12が加熱され、第1レンズ樹脂層12(すなわち、これを構成するレンズ要素L1)が完全に硬化する。第1レンズ樹脂層12を形成するための第1の樹脂材料41aは、硬化光によって硬化するが、光だけでは必ずしも硬化が十分でなく、マスター型30の離型時等に作用する力によって変形する可能性がある。このため、光硬化させた第1レンズ樹脂層12を加熱することで、これを構成するレンズ要素L1の形状劣化を確実に防止することができる。この際、加熱によって基板11が膨張するが、マスター型30も基板11と同様に膨張するので、第1レンズ樹脂層12を構成するレンズ要素L1の配置間隔がずれることを防止できる。
【0044】
次に、図5(D)に示すように、マスター型30から第1レンズ樹脂層12と基板11とを一体として離型する。これにより、基板11の片側に第1レンズ樹脂層12を形成した半製品を得ることができる。なお、基板11の平均線膨張係数とマスター型30の平均線膨張係数とが略等しいことから、これらを室温に戻しても、第1レンズ樹脂層12を構成する多数の第1レンズ要素L1のピッチと、マスター型30に設けた多数の第1光学転写面31aのピッチとは、同一に保たれる。つまり、室温のマスター型30の寸法を精密に転写した第1レンズ樹脂層12を得ることができる。なお、マスター型30の平均線膨張係数が基板11の平均線膨張係数と異なる場合、マスター型30等を加熱した状態で第1レンズ樹脂層12の形状が略確定することから、マスター型30等を室温に戻すと、マスター型30から第1レンズ樹脂層12を離型することが容易でなくなり、離型時に第1レンズ樹脂層12に変形又は傷が生じやすくなる。
【0045】
次に、他方のマスター型130を用いて、基板11上に第1レンズ樹脂層13を形成する。
【0046】
具体的には、図5(E)に示すように、マスター型130の第2成形面131上に、光硬化性樹脂として第2の樹脂材料41bを配置する。この際、第2光学転写面32a毎に独立して第2の樹脂材料41bを配置する。第2の樹脂材料41bは、その粘度及び表面張力によって窪んだ第2光学転写面32aから突起する。
【0047】
その後、図5(F)に示すように、基板11の上下を反転させ、マスター型130の第2成形面131が基板11の下側の面11bの下方に位置するように基板11等をアライメントして配置し、基板11の下方からマスター型130を押圧して、第2成形面131と面11bとが適当な間隔となるまで近接させる。ここで、第2の樹脂材料41bはマスター型130によって押圧され、第2フランジ転写面32bの位置まで十分な厚みで押し広げられる。
【0048】
次に、図5(G)に示すように、不図示の光源によりUV光その他の所定波長の硬化光を照射し、マスター型130と基板11との間に挟まれた第2の樹脂材料41bを硬化させる。結果的に、マスター型130の第2成形面131が転写されかつ硬化した樹脂によって構成される第2レンズ樹脂層13が形成される。
【0049】
次に、基板11とマスター型130とを貼り合わせた状態で加熱処理を行う。具体的には、マスター型130を基板11とともに40℃〜70℃程度で所定時間加熱する。これに伴って第2レンズ樹脂層13が加熱され、第2レンズ樹脂層13(すなわち、これを構成するレンズ要素L2)が完全に硬化する。つまり、第2レンズ樹脂層13に対して仕上げの硬化処理が実施される。
【0050】
次に、図5(H)に示すように、マスター型130から第2レンズ樹脂層13と基板11と第1レンズ樹脂層12とを一体として離型する。これにより、基板11の両側に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成したウェハレンズ10を得ることができる。なお、基板11の平均線膨張係数とマスター型130の平均線膨張係数とが略等しいことから、これらを室温に戻しても、第2レンズ樹脂層13を構成する多数の第2レンズ要素L2のピッチと、マスター型130に設けた多数の第2光学転写面32aのピッチとは、同一に保たれる。つまり、室温のマスター型130の寸法を精密に転写した第2レンズ樹脂層13を得ることができ、高い形状精度の第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成したウェハレンズ10を得ることができる。
【0051】
以上の説明では、マスター型30,130を直接転写して基板11上に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成しているが、マスター型30,130を間接的に転写して基板11上に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成することもできる。この場合、図6に示すように、不図示のマスター型(図2等に示すマスター型30,130のネガ型)を転写したサブマスター型330を一旦形成し、このようにして得たサブマスター型330を転写して基板11上に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成することができる。あるいは、図6に示すように、不図示のマスター型(図2等に示すマスター型30,130のポジ型)転写したサブマスター型を形成するとともに、このサブマスター型の型面を再転写したサブサブマスター型430を形成し、このようにして得たサブサブマスター型430を転写して基板11上に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成することができる。以上において、サブマスター型330やサブサブマスター型430は、平板状の型基板30a上に転写面を有する樹脂転写層30bを形成したものとすることができ、この場合、マスター型30,130の平均線膨張係数と、平板状の型基板30aの平均線膨張係数と、基板11の平均線膨張係数とを全て一致させることが望ましく、これにより、高い形状精度のウェハレンズ10を得ることができる。
【0052】
また、図5(C)のようにUV光その他の所定波長の硬化光を照射し、マスター型30と基板11との間に挟まれた第1の樹脂材料41aを硬化させた後、図5(D)のようにマスター型30から第1レンズ樹脂層12と基板11とを一体として離型を行わず、そのまま基板11の上下を反転させ、第2成形面131させてもよい。
【0053】
図7(A)〜7(H)は、図5(A)〜5(H)の変形例を具体的に説明した図である。図7(D)等に示すように、マスター型30を第1レンズ樹脂層12を介して基板11に貼り付けたままとしておく。さらに、図7(G)に示すように、硬化光を照射するとともに加熱処理を行なって、マスター型130と基板11との間に挟まれた第2の樹脂材料41bを硬化させる。なお、基板11等を両側から挟むマスター型30,130が光を透過させないものである場合、硬化光の照射処理を省略して加熱処理のみを行なうこともできる。その後は、図7(H)に示すように、マスター型30,130を離間させることによって、基板11の両側に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成したウェハレンズ10を得ることができる。
【0054】
図8(A)〜8(H)は、図5(A)〜5(H)の別の変形例を具体的に説明した図である。図8(A)及び8(E)に示すように、転写型530,630は、型基板30a上に転写面を有する樹脂転写層30bを形成したものとなっている。この場合も、図8(D)等に示すように、転写型530を第1レンズ樹脂層12を介して基板11に貼り付けたままとしておく。さらに、図8(G)に示すように、硬化光を照射するとともに加熱処理を行なって、転写型630と基板11との間に挟まれた第2の樹脂材料41bを硬化させる。なお、基板11等を両側から挟む転写型530,630は、光を透過させるものとなっている。その後は、図8(H)に示すように、転写型530,630を離間させることによって、基板11の両側に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成したウェハレンズ10を得ることができる。
【0055】
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、マスター型30,130の平均線膨張係数と基板11の平均線膨張係数とが略等しいので、マスター型30,130と基板11との間に樹脂材料41a,41bを挟んで転写によってレンズ樹脂層12,13を形成する際に、マスター型30,130と基板11とを加熱して硬化させても、基板11やレンズ樹脂層12,13を元の温度に戻せば、レンズ樹脂層12,13を構成するレンズ要素L1,L2の光学面OS1,OS2の間隔は、元の温度におけるマスター型30,130の光学転写面31a,32aに対応するものとなる。これにより、レンズ要素L1,L2又は光学面OS1,OS2の位置ズレを低減したウェハレンズ100を得ることができる。
【0056】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係るウェハレンズの製造方法等について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態のウェハレンズの製造方法等を部分的に変更したものであり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
【0057】
第2実施形態の製造方法は、図5(A)〜5(H)に示す第1実施形態の製造方法を部分的に変更したものである。
【0058】
まず、一方のマスター型30を用いて、基板11上に全体に亘って広がる第1レンズ樹脂層12を形成する。
【0059】
具体的には、図9(A)に示すように、マスター型30の成形面31上方に、光硬化性の樹脂として第1の樹脂材料241aを配置する。この際、第1光学転写面31a毎ではなく、成形面31全体に広がるように第1の樹脂材料241aを配置する。
【0060】
その後、図9(B)に示すように、マスター型30の成形面31が基板11の一方の面11aの下方に位置するように基板11等をアライメントして配置し、基板11の下方からマスター型30を押圧して、マスター型30の成形面31と基板11の面11aとが適当な間隔となるまで近接させる。ここで、第1の樹脂材料241aはマスター型30によって押圧され、成形面31と面11aとの間に薄く一様に広がる。
【0061】
次に、図9(C)に示すように、不図示の光源によりUV光その他の所定波長の硬化光を照射し、マスター型30と基板11との間に挟まれた第1の樹脂材料241aを硬化させる。結果的に、マスター型30の成形面31が転写されかつ硬化した樹脂によって構成される第1レンズ樹脂層12が形成される。
【0062】
次に、基板11とマスター型30とを貼り合わせた状態で加熱処理を行う。具体的には、マスター型30を基板11とともに40℃〜70℃程度で所定時間加熱する。これに伴って第1レンズ樹脂層12が加熱され、第1レンズ樹脂層12(すなわち、これを構成するレンズ要素L1)が完全に硬化する。つまり、第1レンズ樹脂層12に対して仕上げの硬化処理が実施される。
【0063】
次に、図9(D)に示すように、マスター型30から第1レンズ樹脂層12と基板11とを一体として離型する。これにより、基板11の片側に第1レンズ樹脂層12を形成した半製品を得ることができる。なお、基板11の平均線膨張係数とマスター型30の平均線膨張係数とが略等しいことから、これらを室温に戻しても、第1レンズ樹脂層12を構成する多数の第1レンズ要素L1のピッチと、マスター型30に設けた多数の第1光学転写面31aのピッチとは、同一に保たれる。つまり、室温のマスター型30の寸法を精密に転写した第1レンズ樹脂層12を得ることができる。
【0064】
次に、他方のマスター型130を用いて、基板11上に第1レンズ樹脂層13を形成する。
【0065】
具体的には、図9(E)に示すように、マスター型130の転写面131上に、光硬化性樹脂として第2の樹脂材料241bを配置する。この際、第2光学転写面32a毎ではなく、転写面131全体に広がるように第2の樹脂材料241bを配置する。
【0066】
その後、図9(F)に示すように、基板11の上下を反転させ、マスター型130の転写面131が基板11の下側の面11bの下方に位置するように基板11等をアライメントして配置し、基板11の下方からマスター型130を押圧して、転写面131と面11bとが適当な間隔となるまで近接させる。ここで、第2の樹脂材料241bはマスター型130によって押圧され、転写面131と面11bとの間に薄く一様に広がる。
【0067】
次に、図9(G)に示すように、不図示の光源によりUV光その他の所定波長の硬化光を照射し、マスター型130と基板11との間に挟まれた第2の樹脂材料241bを硬化させる。結果的に、マスター型130の転写面131が転写されかつ硬化した樹脂によって構成される第2レンズ樹脂層13が形成される。
【0068】
次に、基板11とマスター型130とを貼り合わせた状態で加熱処理を行う。具体的には、マスター型130を基板11とともに40℃〜70℃程度で所定時間加熱する。これに伴って第2レンズ樹脂層13が加熱され、第2レンズ樹脂層13(すなわち、これを構成するレンズ要素L2)が完全に硬化する。つまり、第2レンズ樹脂層13に対して仕上げの硬化処理が実施される。
【0069】
次に、図9(H)に示すように、マスター型130から第2レンズ樹脂層13と基板11と第1レンズ樹脂層12とを一体として離型する。これにより、基板11の両側に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成したウェハレンズ10を得ることができる。なお、基板11の平均線膨張係数とマスター型130の平均線膨張係数とが略等しいことから、これらを室温に戻しても、第2レンズ樹脂層13を構成する多数の第2レンズ要素L2のピッチと、マスター型130に設けた多数の第2光学転写面32aのピッチとは、同一に保たれる。つまり、室温のマスター型130の寸法を精密に転写した第2レンズ樹脂層13を得ることができ、高い形状精度の第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成したウェハレンズ10を得ることができる。
【0070】
以上の説明では、マスター型30,130を直接転写して基板11上に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成しているが、第1実施形態の場合と同様に、サブマスター型やサブサブマスター型を介して、マスター型30,130を間接的に転写することにより、基板11上に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成することもできる。
【0071】
図10(A)〜10(H)は、図9(A)〜9(H)の変形例を説明した図である。なお、特に説明しない事項は、図9(A)〜9(H)に示す第2実施形態と同様であるものとする。
【0072】
図10(D)等に示すように、マスター型30を第1レンズ樹脂層12を介して基板11に貼り付けたままとしておく。さらに、図10(G)に示すように、硬化光を照射するとともに加熱処理を行なって、マスター型130と基板11との間に挟まれた第2の樹脂材料241bを硬化させる。なお、基板11等を両側から挟むマスター型30,130が光を透過させないものである場合、硬化光の照射処理を省略して加熱処理のみを行なうこともできる。その後は、図10(H)に示すように、マスター型30,130を離間させることによって、基板11の両側に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成したウェハレンズ10を得ることができる。
【0073】
図11(A)〜11(H)は、図9(A)〜9(H)の別の変形例を説明した図である。図11(A)及び11(E)に示すように、転写型530,630は、型基板30a上に転写面を有する樹脂転写層30bを形成したものとなっている。この場合も、図11(D)等に示すように、転写型530を第1レンズ樹脂層12を介して基板11に貼り付けたままとしておく。さらに、図11(G)に示すように、硬化光を照射するとともに加熱処理を行なって、転写型630と基板11との間に挟まれた第2の樹脂材料241bを硬化させる。なお、基板11等を両側から挟む転写型530,630は、光を透過させるものとなっている。その後は、図11(H)に示すように、転写型530,630を離間させることによって、基板11の両側に第1及び第2レンズ樹脂層12,13を形成したウェハレンズ10を得ることができる。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態においては、レンズ樹脂層12,13が光硬化性樹脂で形成されるものとし、光照射で樹脂材料を硬化させたが、光硬化性樹脂に代えて、熱硬化性樹脂等の他のエネルギー硬化性樹脂でレンズ樹脂層12,13を形成することもできる。
【0076】
上記実施形態においては、基板11がガラスで形成されるとしたが、基板11を、光透過性を示す樹脂材料で形成することもできる。
【0077】
上記実施形態において図示した光学転写面31a,32a等の形状は単なる例示であり、光学レンズ4の用途に応じて様々な形状とすることができる。
【0078】
上記実施形態では、基板11に対して硬化用の光照射処理と加熱処理とを行なっていたが、例えば光照射処理のみで樹脂材料を十分に硬化させることができる場合、加熱処理を省略することができる。この場合も、光照射処理によって基板11やマスター型30,130等が温度上昇することがあり、マスター型30,130の平均線膨張係数と基板11の平均線膨張係数とを一致させる意味がある。
【符号の説明】
【0079】
4…光学レンズ、 10…ウェハレンズ、 11…基板、 11a,11b…面、 12,13…レンズ樹脂層、 12a,13a…被転写面、 30,130…マスター型、 31,131…成形面、 31a,32a…光学転写面、 31b,32b…フランジ転写面、 41a,41b…樹脂材料、 100…ウェハレンズ、 L1,L2…レンズ要素、 OA…光軸、 OS1,OS2…光学面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の一方の基板面上に形成され複数の光学面を含む成形面を有する樹脂層と、を備えるウェハレンズの製造方法であって、
前記成形面は、当該成形面に対応する転写面を有するマスター型を利用した1回以上の熱変化を伴う転写によって形成され、
前記マスター型の平均線膨張係数と前記基板の平均線膨張係数とは、略等しいことを特徴とするウェハレンズの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層は、複数の樹脂層部分を含むことを特徴とする請求項1に記載のウェハレンズの製造方法。
【請求項3】
前記熱変化は、加熱することを特徴とする請求項1及び2のいずれか一項に記載のウェハレンズの製造方法。
【請求項4】
前記マスター型の平均線膨張係数と前記基板の平均線膨張係数との差は、1ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1から2までのいずれか一項に記載のウェハレンズの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層は、光硬化性の樹脂であり、加熱処理によって仕上げの硬化が行われることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のウェハレンズの製造方法。
【請求項6】
前記マスター型は、金属材料を含んで形成され、前記基板は、ガラス材料で形成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のウェハレンズの製造方法。
【請求項7】
前記マスター型は、インバー材で形成されていることを特徴とする請求項6に記載のウェハレンズの製造方法。
【請求項8】
前記マスター型と前記基板とは、同一の材料で形成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のウェハレンズの製造方法。
【請求項9】
前記成形面は、前記マスター型の転写によって形成されることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載のウェハレンズの製造方法。
【請求項10】
前記成形面は、前記マスター型から1回の転写で得たサブマスター型の転写と、前記マスター型から2回の転写で得たサブサブマスター型の転写とのいずれかによって形成されることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載のウェハレンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−252113(P2012−252113A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123842(P2011−123842)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】