説明

ウェブの搬送装置、重合体膜の形成方法及び積層ウェブの製造方法

【課題】支持フィルム及びこれを搬送する巻き掛けローラの間への同伴風の流入を防ぐ。
【解決手段】支持フィルム33は重合性膜12を表面33aに有する。巻き掛けローラ61は支持フィルム33を巻き掛けて搬送する。支持フィルム33のうち巻き掛けローラ61に巻きかけられている部分では、重合工程が行われる。重合工程により、重合性膜12は重合体膜18となる。支持フィルム33の移動に伴って、支持フィルム33の近傍に同伴風400aが発生する。巻き掛けローラ61の回動により、周面61aの近傍に同伴風400bが発生する。各同伴風400a、400bは、支持フィルム33及び巻き掛けローラ61の間へ向かって流れる。巻き掛けローラ61よりも搬送方向上流側には、遮風ローラ68が設けられる。遮風ローラ68は、裏面33bと接触し、周面61aと近接するように配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの搬送装置、重合体膜の形成方法及び積層ウェブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルムのうちセルロースアシレートフィルム等は、その優れた透明性、柔軟性などの特長を有する。このようなポリマーフィルムの用途は、窓ガラスに貼り付けるための窓貼り用フィルム、タッチパネル用フィルム、ITO基盤用フィルム、メンブレンスイッチ用フィルム、三次元加飾用フィルム、フラットパネルディスプレイ用の光学機能性フィルム等、多岐にわたる。
【0003】
上述したような用途のうち、ポリマーフィルムの表面を手、布、タッチペン等で接触する、又は擦るケースが想定される。かかる場合には、ポリマーフィルムの表面に傷がつくことを防ぐために、ポリマーフィルムよりも硬質なハードコート層をポリマーフィルムの表面に設ける。
【0004】
ハードコート層を表面に有するポリマーフィルムの製造方法の一例を説明する。まず、ポリマーフィルムの表面に、溶剤及び紫外線硬化剤を含む膜(以下、紫外線硬化性膜と称する)を形成する(膜形成工程と称する)。次に、紫外線硬化性膜から溶剤を蒸発させる(乾燥工程と称する)。第3に、紫外線の照射により、紫外線硬化性膜に含まれる紫外線硬化剤の重合を行う(重合工程と称する)。この重合工程により、紫外線硬化性膜から、紫外線硬化剤の重合体を含む膜(以下、重合体膜と称する)を得ることができる。こうして、ポリマーフィルムからなる支持層と、重合体膜からなるハードコート層とを有する積層フィルムを製造することができる。
【0005】
更に、帯状のポリマーフィルムを長手方向に搬送し、膜形成工程を行う膜形成装置、乾燥工程を行う乾燥装置、及び重合工程を行う重合装置へと順次導入することにより、積層フィルムの大量生産が可能になる。
【0006】
この重合工程におけるポリマーフィルムの搬送手段として、複数の支持ローラを用いるものが一般的であった。ところが、ポリマーフィルムに搬送テンションを付与すると、ポリマーフィルムのうち支持ローラと接触しない部分にはツレシワが生じてしまう。ポリマーフィルムにツレシワが生じた状態のまま重合工程を行うと、最終的には、ツレシワの跡がスジ状に残ってしまう(以下、スジ故障と称する)。
【0007】
このスジ故障の対策のため、重合工程におけるポリマーフィルムの搬送形態として、支持ローラに巻きかけてポリマーフィルムを搬送する形態(例えば、特許文献1)を採用している。特許文献1の方法によれば、ポリマーフィルムのうち、支持ローラの周面により支持された部分について重合工程を行うことができるため、スジ故障を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−247530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、ポリマーフィルムの近傍では、搬送されるポリマーフィルムや支持ローラに追従して流れる同伴風が発生する。この同伴風が支持ローラとポリマーフィルムとの間に入ってしまうと、支持ローラとポリマーフィルムの間にエアーが残ってしまう。そして、このような状態のポリマーフィルムに重合工程を行えば、エアーの跡がハードコート層にスジ状に残ってしまう(以下、エアー跡故障と称する)。このため、エアー跡故障は、平面性の低下を誘発する。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、ウェブの搬送装置、重合体膜の形成方法及び積層ウェブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、重合性材料を含む重合性膜が表面に設けられたウェブであって、前記ウェブの裏面を支持する支持手段が前記ウェブの搬送路に設けられ、前記支持手段は、前記ウェブの裏面を支持し、移動可能な支持面を備えるウェブの搬送装置において、前記ウェブのうち前記支持面により支持された部分について、前記重合性材料を重合し、前記重合性膜から重合体膜を得る重合手段と、前記支持手段よりも搬送方向上流側に配され、前記ウェブ及び前記支持面の間へ向かって流れる同伴風を遮る遮風手段とを有することを特徴とする。
【0012】
前記遮風手段は、遮風ローラを備え、この遮風ローラの周面は、前記支持手段よりも搬送方向上流側の前記裏面と、前記裏面を支持する位置よりも前記移動方向上流側の前記支持面とのうち少なくとも一方と接触することが好ましい。また、前記遮風手段は、前記支持手段よりも搬送方向上流側の前記裏面と、前記裏面を支持する位置よりも前記移動方向上流側の前記支持面とのうち少なくとも一方と近接することが好ましい。更に、前記支持手段よりも搬送方向上流側の前記裏面と近接する前記遮風手段は、前記支持手段よりも搬送方向下流側にある前記ウェブを搬送する下流側ローラであることが好ましい。
【0013】
前記遮風部材は、前記支持手段よりも搬送方向上流側にある前記ウェブの移動に伴って発生したウェブ同伴風と、前記支持面の移動に伴って発生した支持面同伴風とを合流させる合流部を有することが好ましい。
【0014】
本発明の重合体膜の形成方法は、重合性材料を含む重合性膜を表面に有するウェブであって、支持手段に設けられた移動可能な支持面を用いて、前記ウェブの裏面を支持しながら、前記ウェブを搬送する搬送工程を行い、前記搬送工程は、前記ウェブのうち前記支持手段により支持された部分について、前記重合成材料の重合を行ない、前記重合性膜から重合体膜を得る重合工程と、この重合工程の前に行われ、前記ウェブ及び前記支持面の間へ向かって流れる同伴風を遮る遮風工程とを有することを特徴とする。
【0015】
前記同伴風は、前記支持手段よりも搬送方向上流側における前記ウェブの搬送に伴って発生し、前記ウェブの近傍を流れるウェブ同伴風であることが好ましい。また、前記遮風工程では、前記重合工程を経た前記ウェブを用いて、前記ウェブ同伴風を遮ることが好ましい。更に、前記支持手段よりも搬送方向下流側における前記ウェブの搬送は、前記支持手段よりも搬送方向上流側を搬送される前記ウェブとすれ違うように行われ、前記遮風工程では、前記支持手段よりも搬送方向上流側にある前記ウェブの移動に伴って発生した上流側ウェブ同伴風と、前記支持手段よりも搬送方向下流側にある前記ウェブの移動に伴って発生した下流側ウェブ同伴風とを合流させることが好ましい。
【0016】
前記同伴風は、前記支持面の移動に伴って発生し、前記支持面の近傍を流れる支持面同伴風であることが好ましい。また、前記遮風工程では、前記支持手段よりも搬送方向上流側にある前記ウェブの移動に伴って発生した上流側ウェブ同伴風と、前記支持面の移動に伴って発生した支持面同伴風とを合流させる合流部を有することが好ましい。
【0017】
本発明は、前記ウェブと前記重合体膜とを有する積層ウェブの製造方法において、前記ウェブの一方の表面上に前記重合性材料及び溶剤を含む塗布液を塗布して、前記重合性膜を形成する膜形成工程と、前記重合性膜から前記溶剤を蒸発させる乾燥工程とを有し、上記の重合体膜の形成方法を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ウェブの搬送によって発生する同伴風を、重合工程が行われる部分よりも搬送方向上流側において遮るため、エアー跡故障を防ぐことができる。したがって、本発明によれば、エアー跡故障に起因する積層フィルムの平面性の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】重合体膜形成方法の概要を示すフローチャートである。
【図2】第1の重合体膜形成ユニットを有する積層フィルム製造設備の概要を示す説明図である。
【図3】第2の重合体膜形成ユニットの概要を示す説明図である。
【図4】第3の重合体膜形成ユニットの概要を示す説明図である。
【図5】第4の重合体膜形成ユニットの概要を示す説明図である。
【図6】第5の重合体膜形成ユニットの概要を示す説明図である。
【図7】第6の重合体膜形成ユニットの概要を示す説明図である。
【図8】積層フィルムの概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
重合体膜形成方法10は、図1に示すように、重合性材料及び溶剤を含む塗布液11をウェブに塗布して、ウェブ上に重合性膜12を形成する膜形成工程13と、重合性膜12から溶剤を蒸発させる乾燥工程15と、後述する同伴風を遮る遮風工程17と、重合性膜12から重合性材料の重合体を含む重合体膜18を得る重合工程19とを有する。
【0021】
そして、重合体膜18をウェブから剥がすことにより、重合体フィルムとして用いることができる。また、重合体膜18をウェブから剥がさずに、ウェブ(第1層)と重合体膜18(第2層)とを有する積層フィルムとして用いることができる。
【0022】
次に、本発明の積層フィルムの製造方法を説明する。
【0023】
積層フィルム25を製造する積層フィルム製造設備30は、図2に示すように、ロール状の支持フィルム(以下、支持フィルムロールと称する)31を収納する収納部32と、支持フィルムロール31から支持フィルム33を引き出す引出部34とを有する。引出部34は、巻き芯37と、巻き芯37を駆動する駆動部38とを備える。
【0024】
また、収納部32から引出部34に向かって、複数の搬送ローラ39が並べられる。これらの搬送ローラ39によって、支持フィルム33の搬送路41が設けられる。この搬送路41には、重合体膜形成方法10(図1参照)を行い、支持フィルム33に重合体膜18を形成する重合体膜形成ユニット44が設けられる。引出部34は、所定の張力で支持フィルム33を引き出し、重合体膜18を有するものとなった支持フィルム33を、積層フィルム25として、巻き芯37に巻き取る。なお、複数の搬送ローラ39の全てがフリーローラでもよいし、複数の搬送ローラ39にドライブローラが含まれていてもよい。
【0025】
(支持フィルム)
支持フィルム33の形成材料は、光透過性を有するもののであれば特に限定されないが、ポリマーであることが好ましく、例えば、セルロースアシレート、環状ポリオレフィン、ラクトン環含有重合体、環状ポリオレフィン、ポリカーボネイト等があげられる。なお、セルロースアシレートの詳細については後述する。
【0026】
重合体膜形成ユニット44は、膜形成工程13(図1参照)を行う膜形成装置47と、乾燥工程15(図1参照)を行う乾燥装置48と、遮風工程17(図1参照)及び重合工程19(図1参照)を行う重合ケーシング49とを有する。
【0027】
膜形成装置47は、紫外線硬化剤と溶剤と含む塗布液11を、支持フィルム33の表面33aに塗布するダイ51を有する。塗布液11の塗布により、支持フィルム33の表面33aには、塗布液11からなる重合性膜12が形成される。塗布液は、紫外線硬化剤を適当な溶剤に溶解若しくはコロイド状分散して作製される。この際、紫外線硬化剤の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが、一般的には、10質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0028】
(紫外線硬化剤)
紫外線硬化剤としては、例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを用いることが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0029】
(溶剤)
溶剤としては、支持フィルム33をなす物質を溶解させない化合物であることが好ましい。また、積層フィルム25における支持フィルム33と重合体膜18との密着性を向上させるために、支持フィルム33をなす物質を膨潤させる化合物であることが好ましい。更に、溶剤としては、紫外線硬化剤が沈殿を生じることなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく、2種類以上の溶剤を併用することもできる。
【0030】
溶剤の好ましい例としては、分散媒体としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。具体的には、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、シクロヘキサン、ハロゲン化炭化水素(例えばメチレンクロライド、メチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン等)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えばジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報段落番号[0020]、同11−60807号公報段落番号[0037]等に記載の化合物) が挙げられる。
【0031】
これらの溶剤は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、イソプロパノール、ブタノールが挙げられる。また、ケトン溶剤(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶剤系も好ましく用いられ、ケトン系溶剤の含有量が硬化性組成物に含まれる全溶剤の10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは30質量%以上である。
【0032】
乾燥装置48は、重合性膜12に乾燥風54をあてる乾燥風供給機55を有する。重合性膜12に乾燥風54をあてることで、重合性膜12から溶剤を蒸発させることができる。
【0033】
重合ケーシング49における搬送路41には、搬送ローラ39に加え、支持フィルム33を巻き掛けて搬送する巻き掛けローラ61と、搬送路41のうち巻き掛けローラ61によって形成される部分を覆うハウジング62と、ハウジング62の内部に不活性ガス(窒素や希ガス等)を供給するガス供給機63とが設けられる。
【0034】
巻き掛けローラ61の形成材料として、ステンレスやセラミックスなどを用いることができる。巻き掛けローラ61の半径は300mm〜1000mmであることが好ましい。
【0035】
ハウジング62は、搬送路41を搬送される支持フィルム33及び重合性膜12と近接するように設けられる。ガス供給機63は、ハウジング62内を不活性ガスで充満させるために、ハウジング62内へ不活性ガスを供給する。
【0036】
ハウジング62には、紫外線ランプを有する重合装置65が設けられる。重合装置65は、巻き掛けローラ61に巻き掛けられた支持フィルム33上の重合性膜12へ紫外線を照射する。紫外線の照射により、重合性膜12は、紫外線硬化剤の重合体を含む重合体膜18となる。
【0037】
巻き掛けローラ61よりも搬送方向上流側には、支持フィルム33の裏面33bを支持する遮風ローラ68が設けられる。また、遮風ローラ68と巻き掛けローラ61とは、近接して設けられることが好ましい。
【0038】
支持フィルム33が遮風ローラ68から離れる位置、及び支持フィルム33と巻き掛けローラ61との接触が開始する位置の間隔CL1は、遮風ローラ68と巻き掛けローラ61とが接触しない範囲であれば、小さいほうが好ましい。また、遮風ローラ68と巻き掛けローラ61との間隔CL2は、できるだけ小さいほうが好ましい。例えば、間隔CL1は、50mm以上300mm以下であることが好ましい。また、間隔CL2は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0039】
遮風ローラ68の形成材料として、ステンレスやセラミックスなどを用いることができる。遮風ローラ68の半径は、遮風効果が得られる程度のものであれば特に限定されないが、例えば、200mm以下であることが好ましく、150mm以下であることがより好ましい。
【0040】
遮風ローラ68及び巻き掛けローラ61には、ローラ温調機71が接続される。ローラ温調機71は、伝熱媒体の温度を調節する温度調節部を内蔵する。ローラ温調機71は、温度調節部及び遮風ローラ68内に設けられる流路との間で、所望の温度に調節された伝熱媒体をそれぞれ循環させる。ローラ温調機71は、同様にして、並びに温度調節部及び巻き掛けローラ61内に設けられる流路との間で、所望の温度に調節された伝熱媒体をそれぞれ循環させる。この伝熱媒体の循環により、遮風ローラ68及び巻き掛けローラ61の温度を、それぞれ所望の温度に保つことができる。
【0041】
本発明の作用について説明する。図2に示すように、引出部34は、収納部32から支持フィルム33を所定の張力で引き出す。支持フィルム33は、重合体膜形成ユニット41を所定の移動速度で通過する。重合体膜形成ユニット41から送り出された支持フィルム33は、積層フィルム25となる。積層フィルム25は、引出部34にて巻き芯37に巻き取られる。
【0042】
次に、膜形成装置47は、支持フィルム33の表面33aに塗布液11を塗布する。塗布液11の塗布により、表面33aには重合性膜12が形成される。
【0043】
乾燥装置48は、支持フィルム33上の重合性膜12に乾燥風54をあてて、重合性膜12から溶剤を蒸発させる。乾燥風54の温度は、10℃以上150℃以下であることが好ましく、20℃以上120℃以下であることがより好ましい。重合性膜12からの溶剤の蒸発は、重合性膜12における残留溶剤量が0.5質量%以下なるまで行うことが好ましい。
【0044】
乾燥工程を経た重合性膜12の厚みの下限は、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、重合性膜12の厚みの上限は、30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
【0045】
乾燥装置48を通過した支持フィルム33は、重合ケーシング49に導入される。重合ケーシング49に導入された支持フィルム33は、搬送ローラ39等によって搬送される。また、支持フィルム33が巻き掛けられた巻き掛けローラ61は、支持フィルム33の搬送に従って回動する。搬送状態の支持フィルム33のうち、巻き掛けローラ61に巻き掛けられる部分には、重合工程19(図1参照)が行われる。この重合工程19(図1参照)により、重合性膜12を有する支持フィルム33は、積層フィルム25となる。
【0046】
支持フィルム33が所定の移動速度で搬送されると、支持フィルム33の近傍には、フィルム同伴風400aが発生する。また、巻き掛けローラ61の回動により、巻き掛けローラ61の周面61a近傍には、周面同伴風400bが発生する。このフィルム同伴風400aや周面同伴風400bは、支持フィルム33と巻き掛けローラ61との間に向かって流れる。
【0047】
本発明では、所定の位置に遮風ローラ68を設けたため、各同伴風400a、400bが支持フィルム33及び巻き掛けローラ61の間に入り込むことを防ぐことができる。したがって、本発明によれば、エアー跡故障を防ぎつつ、積層フィルムを大量製造することが可能となる。
【0048】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。以下において、上記実施形態と同一の部品等には同一の符号を付し、その詳細の説明は省略し、異なるものについてのみ説明する。
【0049】
上記実施形態では、支持フィルム33の裏面33bと接触しつつ、巻き掛けローラ61の周面61aに近接する位置に、遮風ローラ68を設けたが、本発明はこれに限られない。例えば、図3に示すように、巻き掛けローラ61の周面61aと接触する位置に、遮風ローラ78を設けても良い。更に、遮風ローラ78を、支持フィルム33の裏面33bに近接するように設けても良い。図3では、遮風ローラ68及び遮風ローラ78を用いた形態を示しているが、遮風ローラ68を省略しても良い。遮風ローラ68を省略する場合、支持フィルム33の裏面33bと接触するように遮風ローラ78を設けても良い。なお、遮風ローラ78の形成材料は、巻き掛けローラ61の周面61aを傷つけないものであれば特に限定されず、例えば、テフロン(登録商標)やポリエチレン等の合成樹脂を用いることができる。
【0050】
上記実施形態では、各同伴風400a、400bを遮る遮風部材として、ローラを用いたが、本発明はこれに限られず、板状やブロック状の遮風部材を用いても良い。図4には、裏面33bに起立する姿勢で配された遮風板88、及び周面61aに起立する姿勢で配された遮風板89を設けた例を示す。遮風板88は、裏面33bに近接して設けられることが好ましい。遮風板89は、周面61aに近接して設けられることが好ましい。遮風板88、89のうちいずれか一方を省略しても良い。また、図5には、裏面33b及び周面61aの間に遮風ブロック90を設けた例を示す。なお、裏面33bや周面61aに近接する遮風ブロックや遮風板とともに、裏面33bや周面61aに接触する各遮風ローラを併用してもよい。遮風ブロック90は、裏面33b及び周面61aに近接するように設けられることが好ましい。各遮風部材88〜90の形成材料は、遮風ローラ68や遮風ローラ78のものと同様である。
【0051】
また、遮風部材90に、各同伴風400a、400bの風向きを変えるガイド面90aを設けても良い。ガイド面90aは、例えば、図6に示すように、各同伴風400a、400bが合流するように形成されることが好ましい。
【0052】
なお、上記実施形態では、遮風部材として、遮風ローラや、板状、ブロック状のものを用いたが、本発明はこれに限られず、積層フィルム25を遮風部材として用いても良い。図7に示すように、巻き掛けローラ61よりも搬送方向上流側にて、裏面33bと近接するように配された遮風ローラ95a、95bを用いて、積層フィルム25を搬送してもよい。これにより、遮風ローラ95a、95bによって搬送される積層フィルム25が、各同伴風400a、400bの遮風部材として機能する。また、遮風ローラ95a、95bによる積層フィルム25の搬送により、別の同伴風が発生する場合であっても、遮風ローラ95a、95bによって搬送される積層フィルム25は、巻き掛けローラ61よりも搬送方向上流側における積層フィルム25とすれ違うため、両積層フィルムの搬送に起因して発生した同伴風が合流する結果、巻き掛けローラ61と積層フィルム25との間への同伴風の流入を阻止することができる。なお、図7では、遮風ローラ95a、95bの両方を用いたが、本発明はこれに限られず、遮風ローラ95a、95bのいずれか一方を省略しても良い。
【0053】
上記実施形態では、巻き掛けローラ61を用いたが、本発明はこれに限られず、巻き掛けローラ61の代わりに、支持ベルトを用いても良い。支持ベルトは、複数のローラに巻きかけられるように配される。支持ベルトの長手方向の両端は連結する。このため、支持ベルトは環状となっている。複数のローラのうちいずれか1つを駆動することにより、支持ベルトは、所定の方向へ環状に移動する。このような支持ベルトの表面を用いて、重合性膜12を有する支持フィルム33を搬送しても良い。
【0054】
積層フィルム25の搬送速度は、20m/分以上であることが好ましく、30m/分以上であることがより好ましい。積層フィルム25の搬送速度の上限は、搬送速度の増大に起因する問題が生じない限り、特に限定されないが、例えば、70m/分以下であることが好ましい。
【0055】
(積層フィルム)
積層フィルム25は、図8に示すように、支持フィルム33からなる支持層25aと、重合体膜18からなり、支持層25aよりも硬いハードコート層25bとを有する。積層フィルム25の厚さdは、特に限定されないが、5μm以上120μm以下であることが好ましく、40μm以上80μm以下であることがより好ましい。また、支持層25aの厚さdsとハードコート層25bの厚さdhとの比dh/dsは、例えば、0.04以上0.50以下であることが好ましく、0.10以上0.40以下であることがより好ましい。
【0056】
本発明におけるハードコート層25bの屈折率は、積層フィルム25に反射防止性を付与するために、1.45〜2.00の範囲にあることが好ましく、1.45〜1.55の範囲にあることがより好ましく、さらに好ましくは1.48〜1.55であり、特に好ましくは1.49〜1.53である。ハードコート層25bの屈折率をこの範囲に制御することにより、反射色をニュートラルな範囲に抑えつつ、表面の反射率が十分低減された積層フィルムを得ることができる。更にハードコート層25bの屈折率をこの範囲に制御することで、干渉ムラと呼ばれる支持層25aとハードコート層25bの屈折率差に起因する故障を低減することができる。
【0057】
ハードコート層25bの強度は、鉛筆硬度試験で、2H以上であることが好ましく、3H以上であることがさらに好ましく、4H以上であることが最も好ましい。さらに、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0058】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0059】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
【0060】
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
【0061】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶剤において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
【0062】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
【0063】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【0064】
上記実施形態では、支持層25aとなる支持フィルム33に、ハードコート層25bとなる重合体膜18を設けたが、本発明はこれに限られず、支持フィルム33に、他の機能層を設けても良い。
【0065】
上記実施形態では、ウェブとして、ポリマー製の支持フィルム33を用いたが、本発明はこれに限られず、金属などのウェブにも適用できる。なお、重合体膜18を剥ぎ取って、単体で用いる場合には、重合体膜18との剥離性がよいものを用いることが好ましい。
【0066】
重合工程19では、重合性膜12に紫外線を照射して、紫外線硬化剤の重合を行ったが、本発明はこれに限られず、公知の重合性材料を用いて、当該重合性材料に応じた重合を行っても良い。
【符号の説明】
【0067】
10 重合体膜形成方法
12 重合性膜
17 遮風工程
18 重合体膜
19 重合工程
25 積層フィルム
33 支持フィルム
61 巻き掛けローラ
68、78、78a〜78b 遮風ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性材料を含む重合性膜が表面に設けられたウェブであって、前記ウェブの裏面を支持する支持手段が前記ウェブの搬送路に設けられ、前記支持手段は、前記ウェブの裏面を支持し、移動可能な支持面を備えるウェブの搬送装置において、
前記ウェブのうち前記支持面により支持された部分について、前記重合性材料を重合し、前記重合性膜から重合体膜を得る重合手段と、
前記支持手段よりも搬送方向上流側に配され、前記ウェブ及び前記支持面の間へ向かって流れる同伴風を遮る遮風手段とを有することを特徴とするウェブの搬送装置。
【請求項2】
前記遮風手段は、遮風ローラを備え、
この遮風ローラの周面は、前記支持手段よりも搬送方向上流側の前記裏面と、前記裏面を支持する位置よりも前記移動方向上流側の前記支持面とのうち少なくとも一方と接触することを特徴とする請求項1記載のウェブの搬送装置。
【請求項3】
前記遮風手段は、前記支持手段よりも搬送方向上流側の前記裏面と、前記裏面を支持する位置よりも前記移動方向上流側の前記支持面とのうち少なくとも一方と近接することを特徴とする請求項1または2記載のウェブの搬送装置。
【請求項4】
前記支持手段よりも搬送方向上流側の前記裏面と近接する前記遮風手段は、前記支持手段よりも搬送方向下流側にある前記ウェブを搬送する下流側ローラであることを特徴とする請求項3記載のウェブの搬送装置。
【請求項5】
前記遮風部材は、前記支持手段よりも搬送方向上流側にある前記ウェブの移動に伴って発生したウェブ同伴風と、前記支持面の移動に伴って発生した支持面同伴風とを合流させる合流部を有することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のウェブの搬送装置。
【請求項6】
重合性材料を含む重合性膜を表面に有するウェブであって、支持手段に設けられた移動可能な支持面を用いて、前記ウェブの裏面を支持しながら、前記ウェブを搬送する搬送工程を行い、
前記搬送工程は、
前記ウェブのうち前記支持手段により支持された部分について、前記重合成材料の重合を行ない、前記重合性膜から重合体膜を得る重合工程と、
この重合工程の前に行われ、前記ウェブ及び前記支持面の間へ向かって流れる同伴風を遮る遮風工程とを有することを特徴とする重合体膜の形成方法。
【請求項7】
前記同伴風は、前記支持手段よりも搬送方向上流側における前記ウェブの搬送に伴って発生し、前記ウェブの近傍を流れるウェブ同伴風であることを特徴とする請求項6記載の重合体膜の形成方法。
【請求項8】
前記遮風工程では、前記重合工程を経た前記ウェブを用いて、前記ウェブ同伴風を遮ることを特徴とする請求項7記載の重合体膜の形成方法。
【請求項9】
前記支持手段よりも搬送方向下流側における前記ウェブの搬送は、前記支持手段よりも搬送方向上流側を搬送される前記ウェブとすれ違うように行われ、
前記遮風工程では、前記支持手段よりも搬送方向上流側にある前記ウェブの移動に伴って発生した上流側ウェブ同伴風と、前記支持手段よりも搬送方向下流側にある前記ウェブの移動に伴って発生した下流側ウェブ同伴風とを合流させることを特徴とする請求項7または8記載の重合体膜の形成方法。
【請求項10】
前記同伴風は、前記支持面の移動に伴って発生し、前記支持面の近傍を流れる支持面同伴風であることを特徴とする請求項6ないし9のうちいずれか1項記載の重合体膜の形成方法。
【請求項11】
前記遮風工程では、前記支持手段よりも搬送方向上流側にある前記ウェブの移動に伴って発生した上流側ウェブ同伴風と、前記支持面の移動に伴って発生した支持面同伴風とを合流させる合流部を有することを特徴とする請求項10記載の重合体膜の形成方法。
【請求項12】
前記ウェブと前記重合体膜とを有する積層ウェブの製造方法において、
前記ウェブの一方の表面上に前記重合性材料及び溶剤を含む塗布液を塗布して、前記重合性膜を形成する膜形成工程と、
前記重合性膜から前記溶剤を蒸発させる乾燥工程とを有し、
請求項6ないし11のうちいずれか1項記載の重合体膜の形成方法を行うことを特徴とする積層ウェブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−178492(P2011−178492A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42740(P2010−42740)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】