説明

ウェブ押上げ装置

【課題】T形鋼のウェブをウェブ押上げローラにより上方に押上げてT形鋼の曲がりを矯正するときにウェブ押上げローラとの擦れ合いによる擦り疵がT形鋼のウェブに発生することを防止することのできるウェブ押上げ装置を提供する。
【解決手段】ウェブ押上げ装置20は、T形鋼11のウェブ111を上方に押上げるウェブ押上げローラ21と、ウェブ押上げローラ21を回転自在に支承するローラ支承軸22と、ローラ支承軸22を介してウェブ押上げローラ21を水平に支持するローラ支持架台23と、ローラ支持架台23を介してウェブ押上げローラ21を昇降駆動するローラ昇降機構24とを備えている。ウェブ押上げローラ21はローラ支承軸22の軸方向に移動可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T形鋼のウェブを水平姿勢に押上げるウェブ押上げ装置に関し、特に、熱間圧延により製造されたT形鋼の曲がりを矯正するときに用いて好適なウェブ押上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、T形鋼を熱間圧延により製造すると、図4(a)及び図4(b)に示すような曲りがT形鋼11に発生することがある。このような曲がりはT形鋼の製品品質を低下させるため、従来では、例えば図5に示すように、T形鋼搬送用ローラテーブル12の上に載置されたT形鋼11のウェブ111をウェブ押上げローラ21によりT形鋼11のフランジ112が垂直姿勢になるまで上方に押上げ、T形鋼11の曲りがウェブ側に湾曲する曲がりである場合は、図5(c)に示すように、T形鋼11のウェブ111を押し金具13,14によりT形鋼11のフランジ側に押圧し、T形鋼11のフランジ112を受け金具15に押し当ててT形鋼11の曲がりを矯正するようにしている。
【0003】
また、T形鋼11の曲りがフランジ側に湾曲する曲がりである場合は、図5(d)に示すように、図5(c)では上方などに退避させていた押し金具16をT形鋼11のウェブ111の先端に対向するように位置させるとともに受け金具15は上方などに退避させておき、T形鋼11のウェブ111をウェブ押上げローラ21によりT形鋼11のフランジ112が垂直姿勢になるまで上方に押上げた後、T形鋼11のウェブ111を押し金具16によりT形鋼11のフランジ側に押圧し、T形鋼11のフランジ112を受け金具17,18に押し当ててT形鋼11の曲がりを矯正するようにしている。
しかし、このような方法は、T形鋼11のウェブ111が押し金具13,14または押し金具16により押圧されたときにウェブ111がウェブ押上げローラ21の周面部を摺動するため、ウェブ押上げローラ21との擦れ合いによる擦り疵がウェブ111の下面に発生しやすいという問題点がある。
【0004】
そこで、T形鋼のウェブを押上げるウェブ押上げローラとして、特許文献1に開示されている球状のウェブ支承ローラを用いてT形鋼のウェブを上方に押上げることも考えられるが、特許文献1に開示のウェブ支承ローラは、市販のボールキャスターと同様に、耐荷重が最大で0.1トン程度であるため、例えば1.35トンのT形鋼を支えるためには14個のウェブ支承ローラを必要とし、ウェブ支承ローラを設置するのに大きなスペースを確保しなければならないという欠点がある。また、ウェブ支承ローラを昇降駆動する昇降機構の設置台数も14台となるため、T形鋼の曲がりを矯正する設備が大掛かりなものとなってしまうという欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−126259号公報(0034、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、T形鋼のウェブをウェブ押上げローラにより上方に押上げてT形鋼の曲がりを矯正するときにウェブ押上げローラとの擦れ合いによる擦り疵がT形鋼のウェブに発生することを防止することのできるウェブ押上げ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、T形鋼の曲がりを矯正するときに用いられるウェブ押上げ装置であって、前記T形鋼のウェブを上方に押上げるウェブ押上げローラと、該ウェブ押上げローラを回転自在に支承するローラ支承軸と、該ローラ支承軸を介して前記ウェブ押上げローラを水平に支持するローラ支持架台と、該ローラ支持架台を介して前記ウェブ押上げローラを昇降駆動するローラ昇降機構とを備えてなり、前記ウェブ押上げローラが前記ローラ支承軸の軸方向に移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載のウェブ押上げ装置において、前記押上げローラの両側または片側に、前記ウェブ押上げローラを前記ローラ支承軸の軸方向に付勢して定位置に戻すローラ戻しバネが設けられていることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のウェブ押上げ装置において、前記ローラ昇降機構を、前記ローラ支持架台を上下方向にガイドする複数本のガイドロッドと、該ガイドロッドと平行に前記ウェブ押上げローラの下方に設けられたスクリュージャッキと、該スクリュージャッキのボールねじ軸を駆動する駆動モータとから構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、T形鋼のウェブをウェブ押上げローラにより上方に押上げてT形鋼の曲がりを矯正するときにウェブ押上げローラがウェブと共にローラ支承軸の軸方向に移動し、ウェブがウェブ押上げローラと擦れ合うことがないので、ウェブ押上げローラと擦れ合いによる擦り疵がT形鋼のウェブに発生することを防止することができる。
請求項2に係る発明によれば、T形鋼のウェブと共にローラ支承軸の軸方向に移動したウェブ押上げローラを移動前の位置に戻すことができる。
請求項3に係る発明によれば、T形鋼の曲がりを矯正するときにT形鋼のウェブを所定の位置まで正確に押上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るウェブ押上げ装置の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るウェブ押上げ装置の要部を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るウェブ押上げ装置の作用を説明するための図である。
【図4】T形鋼に発生する曲がりを説明するための図である。
【図5】従来のウェブ押上げ装置を用いてT形鋼の曲がりを矯正する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図3を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図中符号20は本発明の一実施形態に係るウェブ押上げ装置であって、このウェブ押上げ装置20はウェブ押上げローラ21、ローラ支承軸22、ローラ支持架台23、ローラ昇降機構24およびローラ戻しバネ25,26を備えて構成されている。
ウェブ押上げローラ21はT形鋼搬送用ローラテーブル12の上に載置されたT形鋼11のウェブ111を上方に押上げるものであって、ローラ支承軸22の軸方向に移動可能に設けられている。また、ウェブ押上げローラ21はローラ支承軸22と摺動自在に嵌合する円筒状のブッシュ27を有し、このブッシュ27を介してローラ支承軸22の軸方向に移動可能となっている。
【0012】
ローラ支承軸22はウェブ押上げローラ21を回転自在に支承するものであって、ブッシュ27の内周面と摺動自在に係合している。
ローラ支持架台23はローラ支承軸22を介してウェブ押上げローラ21を水平に支持するものであって、このローラ支持架台23を介してウェブ押上げローラ21がローラ昇降機構24により昇降駆動されるようになっている。
【0013】
ローラ昇降機構24は、ローラ支持架台23を上下方向にガイドする複数本のガイドロッド28を有している。また、ローラ昇降機構24はガイドロッド28と平行にウェブ押上げローラ21の下方に設けられたスクリュージャッキ29を有し、このスクリュージャッキ29のボールねじ軸を図示しない駆動モータにより駆動してウェブ押上げローラ21を昇降駆動するように構成されている。
ローラ戻しバネ25,26はウェブ押上げローラ21をローラ支承軸22の軸方向に付勢して定位置に戻すものであって、ウェブ押上げローラ21の両側に設けられている。また、これらのローラ戻しバネ25,26はローラ支承軸22の直径より大きい内径でコイル状に形成されている。
【0014】
上述したウェブ押上げ装置20を使用してT形鋼11の曲がりを矯正する場合は、ウェブ押上げ装置20のローラ昇降機構24を作動させ、図3(a)に示すように、T形鋼11のウェブ111が水平姿勢となるまでT形鋼11のウェブ111をウェブ押上げローラ21により上方に押上げる。次に、例えばT形鋼11の曲りがウェブ側に湾曲する曲がりである場合は、この状態でT形鋼11のウェブ111を図5(c)に示す押し金具13,14によりT形鋼11のフランジ側に押圧し、T形鋼11のフランジ112を受け金具15に押し当ててT形鋼11の曲がりを矯正する。このとき、ウェブ押上げローラ21は、図3(b)に示すように、ウェブ111と共にローラ支承軸22の軸方向に移動する。
【0015】
上述した本発明の一実施形態のように、ウェブ押上げローラ21をローラ支承軸22の軸方向に移動自在に設けたことで、T形鋼11のウェブ111をウェブ押上げローラ21により上方に押上げてT形鋼11の曲がりを矯正するときにウェブ押上げローラ21がウェブ111と共にローラ支承軸22の軸方向に移動し、ウェブ111がウェブ押上げローラ21と擦れ合うことがない。従って、ウェブ押上げローラ21と擦れ合いによる擦り疵がT形鋼11のウェブ111に発生することを防止することができる。
【0016】
また、ウェブ押上げローラ21をローラ支承軸22の軸方向に付勢して定位置に戻すローラ戻しバネ25,26をウェブ押上げローラ21の両側に設けたことで、ウェブ111と共にローラ支承軸22の軸方向に移動したウェブ押上げローラ21を移動前の定位置に戻すことができ、これにより、T形鋼11の曲がりがフランジ側に湾曲する曲がり(図4(a)参照)やウェブ側に湾曲する曲がり(図4(b)参照)のいずれであっても、図5(c)及び図5(d)のようにT形鋼11の曲がりを矯正することができる。
【0017】
さらに、ローラ支持架台23を上下方向にガイドする複数本のガイドロッド28と、これらのガイドロッド28と平行にウェブ押上げローラ21の下方に設けられたスクリュージャッキ29と、このスクリュージャッキ29のボールねじ軸を駆動する駆動モータ(図示せず)とからローラ昇降機構24を構成したことで、T形鋼11の曲がりを矯正するときにT形鋼11のウェブ111を所定の位置まで正確に押上げることができる。
【0018】
また、T形鋼11のウェブ111を上方に押し上げるローラとして、特許文献1に開示されているような球状のローラを用いる必要がないので、押し金具13,14の近傍に2台のウェブ押上げ装置20を設置するだけでウェブ111を支えることができ、T形鋼11の曲がりを矯正することができる。
なお、上述した本発明の一実施形態ではローラ戻しバネをウェブ押上げローラの両側に設けたものを例示したが、ローラ戻しバネをウェブ押上げローラの片側のみに設けてもよい。
【符号の説明】
【0019】
11…T形鋼
111…ウェブ
112…フランジ
12…T形鋼搬送用ローラテーブル
13,14,16…押し金具
15,17,18…受け金具
20…ウェブ押上げ装置
21…ウェブ押上げローラ
22…ローラ支承軸
23…ローラ支持架台
24…ローラ昇降機構
25,26…ローラ戻しバネ
27…ブッシュ
28…ガイドロッド
29…スクリュージャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T形鋼の曲がりを矯正するときに用いられるウェブ押上げ装置であって、前記T形鋼のウェブを上方に押上げるウェブ押上げローラと、該ウェブ押上げローラを回転自在に支承するローラ支承軸と、該ローラ支承軸を介して前記ウェブ押上げローラを水平に支持するローラ支持架台と、該ローラ支持架台を介して前記ウェブ押上げローラを昇降駆動するローラ昇降機構とを備えてなり、前記ウェブ押上げローラが前記ローラ支承軸の軸方向に移動可能に設けられていることを特徴とするウェブ押上げ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウェブ押上げ装置において、前記押上げローラの両側または片側に、前記ウェブ押上げローラを前記ローラ支承軸の軸方向に付勢して定位置に戻すローラ戻しバネが設けられていることを特徴とするウェブ押上げ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のウェブ押上げ装置において、前記ローラ昇降機構を、前記ローラ支持架台を上下方向にガイドする複数本のガイドロッドと、該ガイドロッドと平行に前記ウェブ押上げローラの下方に設けられたスクリュージャッキと、該スクリュージャッキのボールねじ軸を駆動する駆動モータとから構成したことを特徴とするウェブ押上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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