説明

ウェーハの加工方法

【課題】マーク部分に形成されるシャープエッジに起因してウェーハが破損するおそれを防止するウェーハの加工方法を提供する。
【解決手段】ウェーハ11の表面から外周縁に沿って切削ブレードを切り込ませ、ウェーハ11の表面から少なくとも仕上げ厚みt1に至る深さの面取り部23cを除去する面取り部除去ステップと、面取り部除去ステップを実施する前または後に、マークに隣接するとともにウェーハ11の表面から少なくとも仕上げ厚みt1に至る深さの直線溝25を形成してマークに代わって結晶方位を示す代替マークとする溝形成ステップと、溝形成ステップを実施した後、ウェーハ11の表面に保護部材33を配設する保護部材配設ステップと、保護部材配設ステップを実施した後、ウェーハ11の裏面を研削して仕上げ厚みt1へと薄化するとともに直線溝25をウェーハ11の裏面に露出させる研削ステップと、を備えるウェーハ11の加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に表面から裏面に至る面取り部を有するとともに外周縁に結晶方位を示すマークが形成されたウェーハの裏面を研削して仕上げ厚みへと薄化するウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、シリコンや化合物半導体からなるウェーハの表面にストリートと呼ばれる格子状の分割予定ラインが形成され、分割予定ラインによって区画される各領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。これらのウェーハは裏面が研削されて所定の厚みへと薄化された後、ストリートに沿って切削装置等によって分割されることで個々の半導体デバイスが製造される。
【0003】
ウェーハの外周側面には、表面から裏面に至る面取り部が形成されているため、ウェーハを半分の厚み以下へと薄化すると、外周側面に所謂シャープエッジが形成され、破損のおそれがあることが知られている。このため、特許文献1では、ウェーハの研削に先立ってウェーハ外周の面取り部を除去(トリミング)しておく技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−173961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、ウェーハの外周縁には、ノッチやオリエンテーションフラットと呼ばれるウェーハの一部を切り欠いた切り欠け部位が結晶方位を示すマークとして形成されている。これらのマークが形成される箇所であるマーク部分にも、上述した面取り部は僅かに形成されているため、特許文献1に開示されるように、ウェーハ外周に沿って面取り部の除去を実施しただけでは、当該面取り部が届かない箇所に形成されるマーク部分(切り欠け部)の面取り部は除去できない。
【0006】
従って、ウェーハの厚みを半分以下へと薄化すると、マーク部分にシャープエッジが形成されてしまい、このシャープエッジに起因してウェーハが破損するおそれがある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、マーク部分に形成されるシャープエッジに起因してウェーハが破損するおそれを防止するウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、外周に表面から裏面に至る面取り部を有するとともに外周縁に結晶方位を示すマークが形成されたウェーハの裏面を研削して仕上げ厚みへと薄化するウェーハの加工方法であって、ウェーハの表面からウェーハの外周縁に沿って切削ブレードを切り込ませ、ウェーハの表面から少なくとも仕上げ厚みに至る深さの面取り部を除去する面取り部除去ステップと、面取り部除去ステップを実施する前または後に、マークに隣接するとともにウェーハの表面から少なくとも仕上げ厚みに至る深さの直線溝を形成してマークに代わってウェーハの結晶方位を示す代替マークとする溝形成ステップと、溝形成ステップを実施した後、ウェーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設ステップと、保護部材配設ステップを実施した後、ウェーハの裏面を研削して仕上げ厚みへと薄化するとともに直線溝をウェーハの裏面に露出させる研削ステップと、を備えるウェーハの加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウェーハの加工方法では、ウェーハを薄化するに先立って、ウェーハの本体とマークが形成された外周縁との間に直線溝を形成しておく。ウェーハを研削するとともに直線溝をウェーハ裏面側に露出させることで、ウェーハの本体とマークが形成された外周縁(外周余剰領域)が分断される。これにより、ウェーハの薄化に伴ってマーク部分にシャープエッジが形成されてマーク部分を起点にクラックや割れが発生しても、クラックや割れの進行は分断溝として機能する直線溝で遮断されるため、ウェーハ本体の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の加工方法で研削するのに適した半導体ウェーハの斜視図である。
【図2】本発明の加工方法で研削するのに適した他の形態の半導体ウェーハの斜視図である。
【図3】面取り部除去ステップの実施形態を示す側面図である。
【図4】溝形成ステップの実施形態を示す斜視図である。
【図5】溝形成ステップにより代替マークが形成された半導体ウェーハについて示す斜視図である。
【図6】溝形成ステップの他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】保護部材配設ステップの実施形態を示す側面図である。
【図8】本発明の加工方法を実施するのに適した研削装置の斜視図である。
【図9】研削ステップにてチャックテーブルで保持するウェーハなどについて示す側面図である。
【図10】研削ステップの実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の研削方法により研削するのに適した半導体ウェーハ11(以下、単に、「ウェーハ11」と表記される場合もある)の斜視図が示されている。半導体ウェーハ11は表面11a及び裏面11bを有しており、表面11aには複数のストリート(分割予定ライン)13が直交して形成されており、ストリート13によって区画された各領域にそれぞれデバイス15が形成されている。半導体ウェーハ11の厚みは例えば700μmである。
【0012】
半導体ウェーハ11の表面11aにおいて、デバイス15が形成される領域はデバイス領域19とされ、このデバイス領域19を囲繞するように外周余剰領域21が形成されている。
【0013】
外周余剰領域21における外周縁には、ウェーハの結晶方位を示すマークとして機能する、V字状切欠きにて構成されるノッチ23が形成されている。このノッチ23はフォトリソグラフィでデバイスを形成する際に露光パターンの位置決め等のために用いられる。
【0014】
なお、本発明の加工方法において加工対象となる半導体ウェーハ11は、図2に示すように、外周余剰領域21を直線状に切り欠くことで構成されるオリエンテーションフラット24と呼ばれる切り欠け部位を有するものも想定される。このオリエンテーションフラット24も、ウェーハの結晶方位を示すマークとして機能する。
【0015】
このように構成された半導体ウェーハ11について、本発明では、まず、図3に示すように、ウェーハ11の表面からウェーハ11の外周縁に沿って切削ブレード14を切り込ませ、ウェーハ11の表面から少なくとも仕上げ厚みt1に至る深さの面取り部11cを除去する面取り部除去ステップが実施される。この面取り部除去ステップは、回転駆動されるチャックテーブル17と、切削ブレード14を備える周知の切削装置を用いることで実施することができる。
【0016】
次いで、図4及び図5に示すように、面取り部除去ステップを実施する前または後に、マークとしてのノッチ23に隣接するとともにウェーハの表面から少なくとも仕上げ厚みt1に至る深さの直線溝25を形成してノッチ23に代わってウェーハの結晶方位を示す代替マークMとする溝形成ステップが実施される。
【0017】
この溝形成ステップは、上述の面取り部除去ステップと同様に周知の切削装置を用いることができ、図4では、モータにより高速回転されるスピンドル12と、スピンドル12の先端部に装着された切削ブレード14とを備えてなる切削ユニット10による切削加工の様子が示されている。
【0018】
高速回転する切削ブレード14は、ノッチ23を有する外周余剰領域21に切り込み、ウェーハ11を保持した切削装置の図示しないチャックテーブルを矢印X1方向に加工送りすることで、図5に示すようなウェーハの仕上げ厚みに至る深さ(例えば120μm)の直線溝25が形成される。
【0019】
なお、図6に示すように、溝形成ステップにおいては、レーザ加工装置のレーザビームの照射ユニット16を用い、ウェーハ11に対して吸収性を有する波長(例えば355nm)のレーザビームをノッチ23を含む外周余剰領域21に照射して、ウェーハ11の表面11aからウェーハ11の仕上げ厚みに至る深さのレーザ加工溝26を形成し、このレーザ加工溝26によって、図5に示される代替マークMと同様の溝を構成することとしてもよい。
【0020】
さらに、レーザ加工装置を用いる他にも、エッチングにより、図5に示される代替マークMと同様の溝を構成することとしてもよい。
【0021】
次いで、図7に示すように、溝形成ステップを実施した後、ウェーハ11の表面11aに保護部材を配設する保護部材配設ステップが実施される。保護部材としては、例えば、厚さが100μmのポリ塩化ビニル(PVC)のシート基材の表面にアクリル樹脂系の糊が厚さ40μm程度塗布されてなる保護テープ33が採用され、この保護テープ33がウェーハ11の表面11aに貼着される。
【0022】
なお、保護部材としては、保護テープ33を使用するほか、UV硬化樹脂からなるプレートや、剛性の高いガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)等からなるハードプレートなど用いることが考えられる。
【0023】
次いで、保護部材配設ステップを実施した後、図8に示すような研削装置42を使用して、ウェーハの裏面を研削して仕上げ厚み(例えば100μm)へと薄化するとともに直線溝をウェーハの裏面に露出させる研削ステップが実施される。
【0024】
図8において、44は研削装置42のベースであり、ベース44の後方にはコラム46が立設されている。コラム46には、上下方向に伸びる一対のガイドレール48が固定されている。
【0025】
この一対のガイドレール48に沿って研削ユニット(研削手段)50が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット50は、スピンドルハウジング52と、スピンドルハウジング52を保持する支持部54を有しており、支持部54が一対のガイドレール48に沿って上下方向に移動する移動基台56に取り付けられている。
【0026】
研削ユニット50は、スピンドルハウジング52中に回転可能に収容されたスピンドル58と、スピンドル58を回転駆動するモータ60と、スピンドル58の先端に固定されたホイールマウント62と、ホイールマウント62に着脱可能に装着された研削ホイール64とを含んでいる。
【0027】
研削装置42は、研削ユニット50を一対のガイドレール48に沿って上下方向に移動するボールねじ70とパルスモータ72とから構成される研削ユニット送り機構74を備えている。パルスモータ72を駆動すると、ボールねじ70が回転し、移動基台56が上下方向に移動される。
【0028】
ベース44の上面には凹部44aが形成されており、この凹部44aにチャックテーブル機構76が配設されている。チャックテーブル機構76はチャックテーブル78を有し、図示しない移動機構によりウェーハ着脱位置Aと、研削ユニット50に対向する研削位置Bとの間でY軸方向に移動される。80,82は蛇腹である。ベース44の前方側には、研削装置42のオペレータが研削条件等を入力する操作パネル84が配設されている。
【0029】
図10に示すように、研削ユニット50のスピンドル58の先端に固定されたホイールマウント62には、研削ホイール64が図示しないねじにより着脱可能に装着されている。研削ホイール64は、ホイール基台66の自由端部(下端部)に複数の研削砥石68を環状に配設して構成されている。
【0030】
そして、以上のように構成する研削装置42を用い、研削ステップにおいては、まず図9に示すように、表面11aに保護テープ33が貼着されたウェーハ11が、ウェーハ11の裏面11bを露出させるようにしてチャックテーブル78に吸引保持される。
【0031】
図9に示す吹き出し部分に示された拡大断面図において、23aはノッチ23の頂点の位置を示しており、25は直線溝、t1はウェーハの仕上げ厚みをそれぞれ示している。ここで、ノッチ23においては、上述の面取り部除去ステップにより面取り除去部23bが形成されているが、ノッチ23の頂点23aに予め形成された面取り部23cは除去されないままに残ってしまっている。
【0032】
次いで、図10に示すように、チャックテーブル78を矢印aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール64を矢印bで示す方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、研削ユニット送り機構74を駆動して研削ホイール64の研削砥石68をウェーハ11の裏面11bに接触させる。
【0033】
そして、研削ホイール64を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。接触式又は非接触式の厚み測定ゲージでウェーハ11の厚さを測定しながら、ウェーハ11を仕上げ厚みt1(例えば100μmの厚み)に研削する。
【0034】
ここで、上述のようにノッチ23の頂点23aに予め形成された面取り部23cは残ってしまっているため、この面取り部23cのカーブによって図10に示すようにシャープエッジ23dが形成されてしまうことになる。しかしながら、直線溝25が存在するため、このシャープエッジ23dの形成に伴うクラック35が発生した場合でも、クラック35の進行を防ぐことができる。
【0035】
即ち、直線溝25はウェーハ11の仕上げ厚みに至る深さ(例えば120μmの深さ)を有しているため、ウェーハ11を仕上げ厚み100μmに研削すると、外周余剰領域21において、ノッチ23を含む直線溝25よりも外側の部位21aが分離される。よって、シャープエッジ23dによりノッチ23の部位に発生したクラック35は直線溝25によって遮断され、クラック35がデバイス領域19に到達することが防止される。
【0036】
なお、図6に示すように、レーザ加工溝26を構成した場合においても同様に、ウェーハ11の裏面11bを研削してウェーハ11を仕上げ厚みである100μmに薄化すると、ノッチの頂点から発生したクラックはレーザ加工溝26によって遮断され、クラックがデバイス領域に到達することが防止される。
【0037】
以上のように、本発明のウェーハの加工方法では、ウェーハ11を薄化するに先立って、ウェーハ11の本体とノッチ23などのマーク部分が形成された外周縁との間に直線溝25を形成しておく。ウェーハ11を研削するとともに直線溝25をウェーハ11の裏面側に露出させることで、ウェーハ11の本体とマークが形成された外周縁(外周余剰領域21)が分断される。これにより、ウェーハ11の薄化に伴ってマーク部分にシャープエッジ23dが形成されてマーク部分を起点にクラック33や割れが発生しても、クラックや割れの進行は分断溝として機能する直線溝25で遮断されるため、ウェーハ11の本体の破損を防ぐことができる。
【0038】
また、ウェーハ11を仕上げ厚みに研削し、外周余剰領域21において、ノッチ23を含む直線溝25よりも外側の部位21aが分離された後は、直線溝25はウェーハの結晶方位を示す代替マークMとして利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
11 半導体ウェーハ
19 デバイス領域
21 外周余剰領域
23 ノッチ
23a 頂点
25 直線溝
33 保護テープ
35 クラック
M 代替マーク
t1 仕上げ厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に表面から裏面に至る面取り部を有するとともに外周縁に結晶方位を示すマークが形成されたウェーハの裏面を研削して仕上げ厚みへと薄化するウェーハの加工方法であって、
該ウェーハの表面から該ウェーハの外周縁に沿って切削ブレードを切り込ませ、該ウェーハの表面から少なくとも該仕上げ厚みに至る深さの該面取り部を除去する面取り部除去ステップと、
該面取り部除去ステップを実施する前または後に、該マークに隣接するとともに該ウェーハの表面から少なくとも該仕上げ厚みに至る深さの直線溝を形成して該マークに代わってウェーハの結晶方位を示す代替マークとする溝形成ステップと、
該溝形成ステップを実施した後、該ウェーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設ステップと、
該保護部材配設ステップを実施した後、該ウェーハの裏面を研削して該仕上げ厚みへと薄化するとともに該直線溝をウェーハの裏面に露出させる研削ステップと、
を備えるウェーハの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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