説明

ウキクサ中でのプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンの発現

本発明は、ウキクサ発現系中で組換えプラスミノゲン、ミクロプラスミノゲン、及びそれらの断片を生成するための方法及び組成物を提供する。ウキクサ発現系を使用して高レベルのプラスミノゲン及びミクロプラスミノゲンを生成することができることは、本発明の新規な発見である。ウキクサにおいて生成したプラスミノゲン及びミクロプラスミノゲンを活性化させて、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドを生成することができる。したがって本発明は、プラスミノゲン、ミクロプラスミノゲン、及びその断片を発現させるための発現カセット、並びにプラスミノゲン、ミクロプラスミノゲン、及びその断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を用いて形質転換したウキクサ、ウキクサ植物中でプラスミノゲン、ミクロプラスミノゲン、及びその断片を発現させるための方法を含み、これらのヌクレオチド配列を修飾してウキクサ中でのそれらの発現を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えタンパク質生産系に関する。より詳細には本発明は、ウキクサ中で組換えプラスミノ−ゲン及び組換えミクロプラスミノ−ゲンを発現させる際に使用するための方法及び組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ウキクサは、単子葉植物科ウキクサ科(Lemnaceae)の唯一のメンバーである。5属及び38種はいずれも小さな、浮動性の、淡水植物であり、その地理的分布範囲は地球全体に広がっている(Landolt (1986) Biosystematic Investigation on the Family of Duckweeds : The Family of Lemnaceae-A Monograph Study Geobatanischen Institut ETH,Stiftung Rubel,Zurich)。知られている大部分の形態的に縮小された植物、大部分のウキクサ種はいずれも、根、茎、花、種及び葉を含めた、より大きな植物の組織及び器官を有する。ウキクサ種は広く研究されてきており、それらの生態、系統分類、ライフサイクル、代謝、疾患及び疫病感受性、それらの生殖生物学、遺伝的構造、及び細胞生物学を詳細に述べる相当数の文献が存在する(Hillman (1961) Bot.Review27 :221; Landolt (1986) Biosystematic Investigation on the Family of Duckweeds : The Family of Lemnaceae-A Monograph Study Geobatanischen Institut ETH,Stiftung Rubel,Zurich)。
【0003】
ウキクサの成長習性は、微生物の培養法には理想的である。酵母菌における無性生殖と類似した肉眼で見える形式の新葉の無性出芽によって、植物は急速に増殖する。この増殖は、分裂組織細胞からの無性出芽によって起こる。分裂組織領域は小さく、葉の腹部表面上で見られる。分裂組織細胞は2つのポケットに存在し、1つは葉の中静脈のそれぞれの側に存在する。小さな中静脈領域も、そこから根が生成し、それぞれの葉とその母葉を結ぶ茎が生じる部位である。分裂組織のポケットは組織弁によって保護されている。これらのポケットから葉が交互に出芽する。倍化時間は種によって変わり、20〜24時間ほどの長さである(Landolt(1957) Ber.Schweiz.Bot.Ges.67:271;Chang et al.(1977) Bull.Inst.Chem.Acad.Sin.24 :19;Datko and Mudd(1970) Plant Physiol.65:16; Venkataraman et al.(1970) Z.Pflanzenphysiol.62:316)。
【0004】
ウキクサを集中的に培養することによって、単位時間当たりで最高のバイオマス蓄積率がもたらされ(Landolt and Kandeler (1987) The Family of Lemnaceae-A Monographic Study Vol.2: Phytochemistry,Physiology,Application,Bibliography,Veroffentlichungen des Geobotanischen Institutes ETH,Stiftung Rubel,Zurich)、乾燥重量蓄積は新鮮重量の6〜15%の範囲である(Tillberg et al.(1979) Physiol.Plant.46:5; Landolt(1957) Ber.Schweiz.Bot.Ges.67:271; Stomp、非公開データ)。さまざまな条件下で成長する、いくつかのウキクサ種のタンパク質含有量は、15〜45%の乾燥重量の範囲であることが報告されてきている(Chang et al (1977) Bull.Inst.Chem.Acad.Sin.24 :19; Chang and Chui(1978) Z.Pflanzenphysiol.89:91; Porath et al.(1979) Aquatic Botany 7:272; Appenroth et al.(1982) Biochem.Physiol.Pflanz.177:251)。これらの値を使用すると、ウキクサの培地1リットル当たりのタンパク質生産のレベルは、酵母菌遺伝子の発現系と同程度である。
【0005】
ウキクサ植物又はウキクサ根粒の培養物は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)仲介遺伝子移入、衝撃照射(ballistic bombardment)、又はエレクトロポレーションを含めた幾つかの方法のいずれか1つによって、当該のヌクレオチド配列を含む発現カセットを用いて効率良く形質転換することができる。安定したウキクサの形質転換体は、当該のヌクレオチド配列と選択物質に対する耐性を与える遺伝子の両方を用いてウキクサ細胞を形質転換し、次にその選択物質を含む培地中で形質転換細胞を培養することによって単離することができる。Stomp et al.への米国特許第6,040,498号を参照のこと。
【0006】
ウキクサの遺伝子発現系は、幾つかの研究及び商業用途に有用であると思われる非常に重要な技術を与える。概して植物の分子生物学の研究に関しては、研究室の便利な酵母菌を用いて操作することができる分化した植物系は、単離した遺伝子の発生学的及び生理学的役割を分析するための非常に迅速な系を与える。価値あるポリペプチドを商業的に生産するために、ウキクサベースの系は既存の微生物又は細胞培養系に優る幾つかの利点を有する。植物は哺乳動物細胞と同様の翻訳後プロセシングを示し、生物学的活性がある哺乳動物ポリペプチドの微生物細胞による生産と関係がある1つの重大な問題を克服し、植物系はマルチサブユニットタンパク質を構築する能力、微生物系に欠けていることが多い能力を有することが、他者(Hiatt(1990) Nature334:469)によって示されてきている。組換えタンパク質の商業的生産に必要なレベルまでのウキクサのバイオマスの増強は、哺乳動物細胞の同様の増強より速くコスト効率がよく、他の示されている植物生産系、例えばダイズ及びタバコと異なり、完全に密封され制御されたバイオマス生産容器中でウキクサを増殖させることができ、既存のタンパク質生産の工業的基盤へのこの系の統合をさらに容易にする。
【0007】
したがって、ウキクサ中の当該のタンパク質を発現させるのに最適な、方法及び組成物に関する必要性が依然として存在する。
【特許文献1】米国特許第6,040,498号
【非特許文献1】Landolt (1986) Biosystematic Investigation on the Family of Duckweeds : The Family of Lemnaceae-A Monograph Study Geobatanischen Institut ETH,Stiftung Rubel,Zurich
【非特許文献2】Hillman (1961) Bot.Review27 :221
【非特許文献3】Landolt (1986) Biosystematic Investigation on the Family of Duckweeds : The Family of Lemnaceae-A Monograph Study Geobatanischen Institut ETH,Stiftung Rubel,Zurich
【非特許文献4】Landolt(1957) Ber.Schweiz.Bot.Ges.67:271
【非特許文献5】Chang et al.(1977) Bull.Inst.Chem.Acad.Sin.24 :19
【非特許文献6】Datko and Mudd(1970) Plant Physiol.65:16
【非特許文献7】Venkataraman et al.(1970) Z.Pflanzenphysiol.62:316
【非特許文献8】Landolt and Kandeler (1987) The Family of Lemnaceae-A Monographic Study Vol.2: Phytochemistry,Physiology,Application,Bibliography,Veroffentlichungen des Geobotanischen Institutes ETH,Stiftung Rubel,Zurich
【非特許文献9】Tillberg et al.(1979) Physiol.Plant.46:5; Landolt(1957) Ber.Schweiz.Bot.Ges.67:271
【非特許文献10】Chang and Chui(1978) Z.Pflanzenphysiol.89:91
【非特許文献11】Porath et al.(1979) Aquatic Botany 7:272
【非特許文献12】Appenroth et al.(1982) Biochem.Physiol.Pflanz.177:251
【非特許文献13】Hiatt(1990) Nature334:469
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ウキクサ発現系中で組換えプラスミノ−ゲン、ミクロプラスミノ−ゲン、及びそれらの断片を生産するための方法及び組成物を提供する。本発明のウキクサ発現系を最適化して、高レベルのプラスミノ−ゲン、ミクロプラスミノ−ゲン、及びそれらの断片を生成させる。ウキクサにおいて生成したプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンを活性化させて、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドを生産することができる。したがって本発明は、プラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲン、並びにプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を発現させるための発現カセットを用いて形質転換したウキクサ、ウキクサ植物中でプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンを発現させるための方法を含み、これらのヌクレオチド配列を修飾してウキクサ中でのそれらの発現を増強させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
したがって、一実施形態では本発明は、ウキクサ中でプラスミノ−ゲンを生産するための方法であって、ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞を培養するステップであって、ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞を、プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を用いて安定に形質転換するステップ、及び前記ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞からプラスミノ−ゲンを回収するステップを含む方法を提供する。幾つかの実施形態では、プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列と動作可能に連結している。
【0010】
他の実施形態では本発明は、ウキクサ中でミクロプラスミノ−ゲンを生産するための方法であって、ウキクサ培養培地内でウキクサ植物の培養物又はウキクサの根粒培養物を培養するステップであって、ウキクサ植物の培養物又はウキクサの根粒培養物を、ミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列、及び培養培地中へのミクロプラスミノ−ゲンの分泌を誘導するシグナルペプチドの動作可能に連結したコード配列を含む核酸分子を用いて安定に形質転換するステップ、及びウキクサ培養培地からミクロプラスミノ−ゲンを回収するステップを含む方法を提供する。
【0011】
本発明は、ウキクサ中でプラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンを発現させることができる発現カセットを用いて形質転換したウキクサ植物、ウキクサ根粒、及びウキクサ植物の細胞も含む。プラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、ヌクレオチド配列がウキクサ最適化コドンを含む核酸分子も提供する。
【0012】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下に与える本発明の記載中にさらに詳細に開示する。
【0013】
本発明は、ウキクサ発現系中で組換えプラスミノ−ゲン、ミクロプラスミノ−ゲン、及びそれらの断片を生産するための方法及び組成物を対象とする。ウキクサ発現系を使用して高レベルのプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンを生産することができることは、本発明の新規な発見である。ウキクサにおいて生成したプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンを活性化させて、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドを生産することができる。
【0014】
プラスミノ−ゲンは、哺乳動物中の主要な繊維素溶解酵素であるプラスミンの、不活性な前駆体形である。プラスミンは細胞移動、組織再構築、及び細菌侵入においても重要な役割を果たす。プラスミンは、トリプシンより高い選択性でLys−|−Xaa及びArg−|−Xaa結合を優先的に切断するセリンプロテアーゼである。組織プラスミノ−ゲン活性化因子(tPA)又はウロキナーゼ切断ヒトプラスミノ−ゲン分子などのプラスミノ−ゲン活性化因子は、Arg560−Val561において結合して活性プラスミンを生産する。プラスミンの2本の生成鎖は、2つの鎖間ジスルフィド結合によって1つに保たれる。軽鎖(25kDa)は(触媒3残基を含む)触媒中心を有し、トリプシン及び他のセリンプロテアーゼと配列類似性を共有する。重鎖(60kDa)は、クリングルと呼ばれる5つの非常に類似した3ループ構造からなる。幾つかのクリングルは、フィブリンとプラスミノ−ゲン/プラスミンの相互作用を仲介するリシン結合部位を含む。プラスミンは、ペプチダーゼファミリーS1に属する。
【0015】
ミクロプラスミノ−ゲンは、そのN末端に結合したクリングル5の数個の残基とペプチドを結ぶ伸張部分を有する、プラスミノ−ゲンの前酵素ドメインからなる。それはプラスミノ−ゲンに対するプラスミンの作用によって生産される。例えば、Shi et al (1980) J.Biol.Chem.263 : 17071−5を参照のこと。プラスミノ−ゲンと同様に、ミクロプラスミノ−ゲンはtPA及びウロキナーゼにより活性化されて、タンパク質分解活性分子を形成する。ヒトミクロプラスミンは約29kDaの分子量を有し、プラスミンと比較するとフィブリンに関して低い親和性を有する。
【0016】
プラスミン及びミクロプラスミンは、心筋梗塞、閉塞性卒中、深部静脈血栓、及び末梢動脈疾患の治療を含めた幾つかの用途の血栓溶解療法における使用に関して考えられている。例えば、そのそれぞれが参照により本明細書にその全容が組み込まれている、米国特許第5,407,673号、米国特許第6,355,243号、米国特許出願No.20030175264、Lapchak et al (2002) Stroke33 : 2279−2284、及びNagai et al (2003) J.Thromb.Haemost.1: 307−13を参照のこと。このような療法においてプラスミン及びミクロプラスミンを使用する1つの目的は、tPA、ウロキナーゼ、及びストレプトキナーゼなどのプラスミノ−ゲン活性化因子を使用する療法の副作用を回避することである。このような副作用には、胃腸及び頭蓋出血がある。しかしながら、療法剤としてのプラスミン及びミクロプラスミンの使用は、多量の安定したプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲン前駆体タンパク質を生産することの難点によって、部分的に制限されてきている。
【0017】
組換え系中での多量のプラスミノ−ゲンの発現は、血栓溶解療法において使用するためのプラスミノ−ゲンを得るのに好都合な方法であるが、哺乳動物細胞型では細胞内プラスミノ−ゲン活性化因子がほぼ至る所に存在するために、発現系での完全ヒトプラスミノ−ゲンの発現における大きな難点がこれまで存在している。これらの活性化因子の存在は、生成するプラスミノ−ゲンの分解をもたらす。例えば、Busy et al (1988) Fibrinolysis 2 : 64を参照のこと。
【0018】
高レベルの安定したプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンを発現させることができる発現系を提供することによって、本発明はこの問題を解決する。したがって、一実施形態では本発明は、ウキクサ中でプラスミノ−ゲンを生産するための方法であって、ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞を培養するステップであって、ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞を、プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を用いて安定に形質転換するステップ、及び前記ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞からプラスミノ−ゲンを回収するステップを含む方法を提供する。プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列と動作可能に連結することができる。
【0019】
本発明の方法を使用して、ウキクサ中で高レベルのプラスミノ−ゲンを発現させることができる。したがって、本発明の方法の幾つかの実施形態では、ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞中の少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、又は少なくとも約8%の可溶性タンパク質がプラスミノ−ゲンである。
【0020】
本発明は、ウキクサ中でプラスミノ−ゲンを生産することを含む、ウキクサ中において安定したプラスミノ−ゲンを生産する方法の改良も提供する。アオウキクサが生産するプラスミノ−ゲンは安定性があり、アオウキクサ組織抽出物中で一晩保存するとその活性の10%未満を失う。アオウキクサが生産するプラスミノ−ゲンはさらに、凍結−解凍サイクルの後にLアオウキクサ組織抽出物中において10%未満の分解を経る。
【0021】
他の実施形態では本発明は、ウキクサ中でミクロプラスミノ−ゲンを生産するための方法であって、ウキクサ培養培地内でウキクサ植物の培養物又はウキクサの根粒培養物を培養するステップであって、ウキクサ植物の培養物又はウキクサの根粒培養物を、ミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列、及び培養培地中へのミクロプラスミノ−ゲンの分泌を誘導するシグナルペプチドの動作可能に連結したコード配列を含む核酸分子を用いて安定に形質転換するステップ、及びウキクサ培養培地からミクロプラスミノ−ゲンを回収するステップを含む方法を提供する。
【0022】
本発明の方法を使用して、ウキクサ中で高レベルのミクロプラスミノ−ゲンを発現させることができる。したがって、本発明の方法の幾つかの実施形態では、ウキクサ培養培地は、定量ウエスタンブロッティングにより測定して少なくとも約1mg/L、少なくとも約2mg/L、少なくとも約5mg/Lのミクロプラスミノ−ゲン、少なくとも約10mg/Lのミクロプラスミノ−ゲン、少なくとも約15mg/Lのミクロプラスミノ−ゲン、又は少なくとも約20mg/Lのミクロプラスミノ−ゲンを含む。
【0023】
本発明は、ウキクサ中でプラスミノ−ゲン断片を生産する方法であって、ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞を培養するステップであって、ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞を、プラスミノ−ゲン断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を用いて安定に形質転換するステップ、及びウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサ培養培地からプラスミノ−ゲン断片を回収するステップを含む方法を提供する。プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列と動作可能に連結させることができる。
【0024】
本発明の方法の幾つかの実施形態では、プラスミノ−ゲン、ミクロプラスミノ−ゲン、又はそれらの断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を修飾して、ウキクサ中でのその発現を増強させる。このような修飾の例には、プラスミノ−ゲン、ミクロプラスミノ−ゲンに関するコード配列中のウキクサ選択コドンの使用、コード配列の上流に挿入された植物のイントロンを含む動作可能に連結したヌクレオチド配列の使用、及びプラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列の翻訳を増強させるリーダー配列の使用がある。幾つかの実施形態では、2つ以上のこれらの修飾を組合せて使用する。プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列がシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列と動作可能に連結する場合、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列はウキクサ選択コドンも含み得る。
【0025】
本発明は、ウキクサ中でプラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンを発現させることができる発現カセットを用いて形質転換したウキクサ植物、ウキクサ根粒、及びウキクサ植物の細胞も含む。プラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、ヌクレオチド配列がウキクサ最適化コドンを含む核酸分子も提供する。
【0026】
定義
「ポリペプチド」は、任意のモノマー又はマルチマータンパク質又はペプチドを指す。
【0027】
「生物学的活性があるポリペプチド」は、生物学的背景では通常ポリペプチドに起因する1つ又は複数の生物学的機能或いは一組の活性を実施する能力を有するポリペプチドを指す。プラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンなどのプロテアーゼ前駆体の背景内では、生物学的活性は、活性化されてタンパク質分解活性分子を生産するポリペプチドの能力を含む。活性化後のプラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンのタンパク質分解活性は、本明細書の他の箇所に記載する色素澱粉法の使用に基づくアッセイを含めた、当技術分野で知られている任意のアッセイによって測定することができる。
【0028】
用語「発現」又は「生産」は、前記遺伝子産物の転写、翻訳、及び構築を含めた遺伝子産物の生合成を指す。
【0029】
用語「ウキクサ(duckweed)」は、ウキクサ(Lemnaceae)科のメンバーを指す。この科は現在、以下のように5属及び38種のウキクサに分けられている:アオウキクサ(Lemna)属(ナンゴクウアオウキクサ(L.aequinoctialis)、レムナサエ・ディスペルマ(L.disperma)、レムナサエ・エクアドリエンシス(L.ecuadoriensi)、イボウキクサ(L.gibba)、レムナサエ・ジャポニカ(L.japonica)、コウキクサ(L.minor)、レムナサエ・ミニスクラ(L.miniscula)、レムナサエ・オブスクラ(L.obscura)、レムナサエ・ペルプシラ(L.perpusilla)、レムナサエ・テネラ(L.tenera)、ヒンジモ(L.trisulca)、レムナサエ・ツリオニフェラ(L.turionifera)、チリウキクサ(L.valdiviana));ウキクサ(Spirodela)属(スピロデラ・インテルメディア(S.intermedia)、スピロデラ・ポリリザ(S.polyrrhiza)、スピロデラ・ポンクタタ(S.punctata));ミジンコウキクサ(Wolffia)属(ウォルフィア・アングスタ(Wa.angusta)、ウォルフィア・アリザ(Wa.arrhiza)、ウォルフィア・オーストラリナ(Wa.australina)、ウォルフィア・ボレアリス(Wa.borealis)、ウォルフィア・ブラジリエンシス(Wa.brasiliensis)、ウォルフィア・コロンビアナ(Wa.columbiana)、ウォルフィア・エロンガタ(Wa.elongata)、ウォルフィア・グロバサ(Wa.globosa)、ウォルフィア・ミクロスコピア(Wa.microscopica)、ウォルフィア・ネグレクタ(Wa.neglecta)); ウォルフィエラ(Wolfiella)属(ウォルフィエラ・カウダタ(Wl.caudata)、ウォルフィエラ・デンティクラタ(Wl.denticulata)、ウォルフィエラ・グラディアタ(Wl.gladiata)、ウォルフィエラ・ヒアリナ(Wl.hyalina)、ウォルフィエラ・リングラタ(Wl.lingulata)、ウォルフィエラ・レプンダ(Wl.repunda)、ウォルフィエラ・ロタンダ(Wl.rotunda)、及びウォルフィエラ・ネオトロピカ(Wl.neotropica))及びランドルティア(Landoltia)属(ランドルティア・ポンクタタ(L.punctata)。それらが存在する場合、ウキクサ科の任意の他の属又は種も本発明の態様である。Landolt (1986) Biosystematic Investigation on the Family of Duckweeds : The family of Lemnaceae-A Monograph Study Geobatanischen Institut ETH,Stiftung Rubel,Zurichによって記載された分類図式を使用して、アオウキクサ種を分類することができる。
【0030】
本明細書で使用する用語「ウキクサの根粒培養物(duckweed nodule culture)」は、ウキクサ細胞を含む培養物であって、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の細胞が分化細胞である培養物を指す。本明細書で使用する用語「分化細胞」は、未分化細胞又は他の組織型中で見られる細胞と分化細胞を区別する、少なくとも1つの表現型特性(例えば、特徴的な細胞形態、或いはマーカー核酸又はタンパク質の発現)を有する細胞である。本明細書に記載するウキクサの根粒培養物の分化細胞は、組織中に広がる葉の原基に構造化し始めた根粒とそれらの隣接細胞壁において融合した相互連結細胞の、タイル状の滑らかな表面を形成する。根粒培養物の組織の表面は、原形質連絡によって互いに結び付いた表皮細胞を有する。
【0031】
本明細書で使用する「ウキクサ選択コドン(duckweed-preferred codon)」は、ウキクサ中で17%を超えるコドン使用頻度を有するコドンを指す。
【0032】
本明細書で使用する「アオウキクサ選択コドン(Lemna-preferred codon)」は、アオウキクサ属中で17%を超えるコドン使用頻度を有するコドンを指す。
【0033】
本明細書で使用する「イボウキクサ選択コドン(Lemna gibba-preferred codon)」は、イボウキクサ中で17%を超えるコドン使用頻度を有するコドンを指す。
【0034】
「翻訳開始コドン」は、当該のヌクレオチド配列から転写されたmRNAの翻訳を開始するコドンを指す。
【0035】
本明細書で使用する「翻訳開始状態ヌクレオチド配列(translation initiation context nucleotide sequence)」は、翻訳開始コドンの5末端の3つのヌクレオチドの同一性を指す。
【0036】
本明細書で使用する「分泌」は、宿主植物細胞の原形質膜を越えるポリペプチドの移動を指す。本発明の幾つかの実施形態では、原形質膜と細胞壁の間の領域であるアポプラスト内に、ポリペプチドが保持される。他の実施形態では、植物宿主細胞の細胞壁を越えてポリペプチドを移動させる。
【0037】
ヌクレオチド配列に関して本明細書で使用する「動作可能に連結した(operably linked)」は、互いに機能的に関係がある位置にある多数のヌクレオチド配列を指す。一般に、動作可能に連結したDNA配列は隣接しており、必要な場合はリーディングフレーム中の2つのタンパク質コード領域と接合する。
【0038】
A.発現カセット
本発明によれば、安定に形質転換されたウキクサは、プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列又はミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを用いた形質転換によって得られる。発現カセットは、当該の核酸又は遺伝子と連結した転写開始領域を含む。このような発現カセットは、制御領域の転写制御下にある当該のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を挿入するための複数の制限部位を備える。発現カセットは、当該の1つの遺伝子をコードすることができる。本発明の特定の実施形態では、移動する核酸は2つ以上の発現カセットを含み、そのそれぞれが少なくとも1つの当該の遺伝子をコードする。
【0039】
転写開始領域(例えばプロモーター)は未変性(native)、或いは宿主に対して同型又は外来性又は異型であってよく、或いは天然配列又は合成配列であってもよい。外来性によって、転写開始領域が導入される野生型宿主中に、その転写開始領域が見られないことが考えられる。本明細書で使用するキメラ遺伝子は、コード配列に対して異型である転写開始領域と動作可能に連結したコード配列を含む。
【0040】
(細菌、酵母菌、真菌、昆虫、哺乳動物、及び植物プロモーターを含めた)当技術分野で知られている任意の適切なプロモーターを、本発明に従い使用することができる。例えば、ウキクサプロモーターを含めた植物プロモーターを使用することができる。代表的なプロモーターには、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、オピン合成酵素プロモーター(例えばnos、mas、ocsなど)、ユビキチンプロモーター、アクチンプロモーター、リブロース2リン酸(RubP)カルボキシラーゼの小サブユニットのプロモーター、及びアルコール脱水素酵素のプロモーターがあるが、これらだけには限られない。ウキクサRubPカルボキシラーゼの小サブユニットのプロモーターは当技術分野で知られている(Silverthorne et al (1990) Plant Mol.Biol.15:49)。タロイモモザイクウイルス、クロレラウイルス(例えば、クロレラウイルスアデニンメチルトランスフェラーゼのプロモーター;Mitra et al.(1994) Plant Mol.Biol.26:85)、トマトスポッテドウイルトウイルス、タバコラットルウイルス、タバコ壊死ウイルス、タバコ輪点ウイルス、トマト輪点ウイルス、キュウリモザイクウイルス、ピーナッツスタントウイルス、アルファルファモザイクウイルス、サトウキビ桿状バドナウイルスなどから単離されたプロモーターだけには限られないがこれらを含めた、植物、好ましくはウキクサに感染するウイルス由来の他のプロモーターも適切である。
【0041】
最終的には、プロモーターを選択して所望の制御レベルを与えることができる。例えば幾つかの場合、構成的発現を与えるプロモーター(例えば、アグロバクテリウム・トゥメファシエンス由来のマンノピン合成酵素プロモーター)を使用することが有利である可能性がある。或いは他の状況では、特定の環境刺激(例えば熱ショック遺伝子プロモーター、乾燥誘導性遺伝子プロモーター、病原体誘導性遺伝子プロモーター、障害誘導性遺伝子プロモーター、及び光/暗周期誘導性遺伝子プロモーター)、又は植物成長制御物質(例えば、アブサイシン酸、オーキシン、サイトカイニン、及びジベレリン酸によって誘導される遺伝子由来のプロモーター)、或いはエタノール又はエチレンなどの他の化合物に応答して活性化されるプロモーターを使用することが有利である可能性がある。他の代替法として、組織特異的発現を与えるプロモーター(例えば根、葉、及び花特異的プロモーター)を選択することができる。
【0042】
所与のプロモーターの全体的な強度は、上流活性化配列などのシス作用性ヌクレオチド配列の組合せ及び空間的編成によって影響を受ける可能性がある。例えば、アグロバクテリウム・トゥメファシエンスオクトピン合成酵素遺伝子に由来する活性化ヌクレオチド配列は、アグロバクテリウム・トゥメファシエンスマンノピン合成酵素プロモーターからの転写を増強させることができる(Gelvin et alへの米国特許第5,955,646号を参照)。本発明では発現カセットは、当該のヌクレオチド配列の発現を増強させるためにプロモーター配列の上流に挿入された、活性化ヌクレオチド配列を含むことができる。一実施形態では発現カセットは、アグロバクテリウム・トゥメファシエンス合成酵素遺伝子由来のプロモーターと動作可能に連結した、アグロバクテリウム・トゥメファシエンスオクトピン合成酵素遺伝子に由来する3つの上流活性化配列を含む(参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,955,646号を参照)。
【0043】
転写カセットは転写の5’−3’方向に、植物中で機能的な転写及び翻訳開始領域、当該のヌクレオチド配列、並びに転写及び翻訳停止領域を含む。当技術分野で知られている任意の適切な停止配列を、本発明に従い使用することができる。停止領域は転写開始領域と同型であってよく、当該のヌクレオチド配列と同型であってよく、或いは他の源に由来するものであってよい。オクトピン合成酵素及びノパリン合成酵素停止領域などの好都合な停止領域が、アグロバクテリウム・トゥメファシエンスのTi-プラスミドから入手可能である。Guerineau et al.(1991) Mol.Gen.Genet.262:141; Proudfoot (1991) Cell64:671; Sanfacon et al.(1991) Genes Dev.5:141; Mogen et al.(1990) Plant Cell2:1261; Munroe et al.(1990) Gene91:151; Ballas et al.(1989) Nucleic Acid Res.17:7891;及びJoshi et al.(1987) Nucleic Acid Res.15:9627も参照のこと。他の例示的な停止配列は、peaRubPカルボキシラーゼの小サブユニットの停止配列、及びカリフラワーモザイクウイルス35Sの停止配列、及び多くの植物種由来のユビキチンターミネーターである。他の適切な停止配列は、当業者には明らかである。
【0044】
発現カセットは、形質転換する植物中に移動させそこで発現させるための、2つ以上の遺伝子又は核酸配列を含むことができる。したがって、それぞれの核酸配列は、5’及び3’制御配列と動作可能に連結する。或いは、多数の発現カセットを提供することができる。
【0045】
一般に発現カセットは、形質転換細胞又は組織の選択に関して選択可能な遺伝子マーカーを含む。選択可能なマーカー遺伝子には、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼIII及びヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)をコードする遺伝子などの抗生物質耐性をコードする遺伝子、並びに除草剤化合物に対する耐性を与える遺伝子がある。除草剤耐性遺伝子は一般に、除草剤に鈍感な修飾型標的タンパク質、或いはそれが働く可能性がある前に植物中の除草剤を分解又は解毒する酵素をコードする。DeBlock et al.(1987) EMBO J.6:2513; DeBlock et al.(1989) Plant Physiol.91:691; Fromm et al.(1990) BioTechnology8:833; Gordon-Kamm et al.(1990) Plant Cell2:603;及びFrisch et al.(1995) Plant Mol.Biol.27:405-9を参照のこと。例えば、グリホスフェート又はスルホニル尿素系除草剤に対する耐性は、突然変異標的酵素、5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素(EPSPS)及びアセト乳酸合成酵素(ALS)をコードする遺伝子を使用して得られている。グルホシネートアンモニウム、ブロモキシニル、及び2,4−ジクロロフェノキシアセテート(2,4−D)に対する耐性は、それぞれの除草剤を解毒するホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ、ニトラーゼ、又は2,4−ジクロロフェノキシアセテートモノオキシゲナーゼをコードする細菌遺伝子を使用することによって得られている。
【0046】
本発明の目的用の選択可能なマーカー遺伝子には、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(Fraley et al.(1986) CRC Critical Reviews in Plant Science4:1)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼIII(Frisch et al.(1995) Plant Mol.Biol.27:405-9)、シアナミドヒドラーゼ(Maier-Greiner et al.(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:4250)、アスパラギン酸キナーゼ;ジヒドロジピコリン酸合成酵素(Perl et al.(1993) BioTechnology11:715);bar遺伝子(Toki et al.(1992) Plant Physiol.100:1503; Meagher et al.(1996) Crop Sci.36:1367)、トリプトファン脱炭酸酵素(Goddijin et al.(1993) Plant Mol.Biol.22:907);ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NEO;Southern et al.(1982) J.Mol.Appl.Gen.1:327);ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT又はHYG; Shimizu et al.(1986) Mol.Cell.Biol.6:1074);ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR; Kwok et al.(1986) Proc.Natl.Acad.Sci.USA83:4552);ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(DeBlock et al.(1987) EMBO J.6:2513);2,2−ジクロロプロピオン酸デハロゲナーゼ(Buchanan-Wollatron et al.(1989) J.Cell.Biochem.13D:330);アセトヒドロキシ酸合成酵素(Anderson et alへの米国特許第4,761,373号; Haughn et al.(1988) Mol.Gen.Genet.221:266);5−エノールピルビルシキミ酸−リン酸合成酵素(aroA; Comai et al.(1985) Nature317:741);ハロアリールニトリラーゼ(Stalker et alへのWO87/04181);アセチル−補酵素Aカルボキシラーゼ(Parker et al.(1990) Plant Physiol.92:1220);ジヒドロプテロイン酸合成酵素(sulI; Guerineau et al.(1990) Plant Mol.Biol.15:127);及び32kDaの光化学系IIポリペプチド(psbA; Hirschberg et al.(1983)) Science222:1346(1983)をコードする遺伝子があるが、これらだけには限られない。
【0047】
ゲンタマイシン(例えばaacC1、Wohlleben et al.(1989) Mol.Gen.Genet.217:202-208);クロラムフェニコール(Herrera-Estrella et al.(1983) EMBO J.2:987);メトトレキセート(Herrera-Estrella et al. (1983) Nature303:209; Meijer et al.(1991) Plant Mol.Biol.16:807);ヒグロマイシン(Waldron et al.(1985) Plant Mol.Biol.5:103; Zhijian et al.(1995) Plant Science108:219; Meijer et al.(1991) Plant Mol.Bio.16:807);ストレプトマイシン(Jones et al.(1987) Mol.Gen.Genet.210:86);スペクチノマイシン(Bretagne-Sagnard et al.(1996) Transgenic Res.5:131);ベロマイシン(Hille et al.(1986) Plant Mol.Biol.7:171);スルホンアミド(Guerineau et al.(1990) Plant Mol.Bio.15:127);ブロモキシニル(Stalker et al.(1988) Science242:419);2,4−D(Streber et al.(1989) BioTechnology7:811);ホスフィノトリシン(DeBlock et al.(1987) EMBO J.6:2513);スペクチノマイシン(Bretagne-Sagnard and Chupeau,Transgenic Research5:131)に対する耐性をコードする遺伝子も含まれる。
【0048】
bar遺伝子は、ホスフィノトリシン(PPT)又はビアラホスなどの、グルホシネート型除草剤に対する除草剤耐性を与える。前述のように、ベクター構築体中で使用することができる他の選択可能なマーカーには、ビアラホス及びホスフィノトリシン耐性に関してさらにpat遺伝子、イミダゾリノン耐性に関してALS遺伝子、ヒグロマイシン耐性に関してHPH又はHYG遺伝子、グリホサート耐性に関してEPSP合成酵素遺伝子、Hc−毒素に対する耐性に関してHm1遺伝子、及び当業者に日常的に使用され知られている他の選択物質があるが、これらだけには限られない。Yarranton (1992) Curr.Opin.Biotech.3:506; Chistopherson et al.(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:6314; Yao et al.(1992) Cell71:63; Reznikoff (1992) Mol.Microbiol.6:2419; Barkley et al.(1980) The Operon 177-220; Hu et al.(1987) Cell48:555; Brown et al.(1987) Cell49:603; Figge et al.(1988) Cell52:713; Deuschle et al.(1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:5400; Fuerst et al.(1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:2549; Deuschle et al.(1990) Science248:480; Labow et al.(1990) Mol.Cell.Biol.10:3343; Zambretti et al.(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:3952; Baim et al.(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:5072; Wyborski et al.(1991) Nuc.Acids Res.19:4647; Hillenand-Wissman (1989) Topics in Mol.And Struc.Biol.10:143; Degenkolb et al.(1991) Antimicrob.Agents Chemother.35:1591; Kleinschnidt et al.(1988) Biochemistry27:1094; Gatz et al.(1992) Plant J.2:397; Gossen et al.(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:5547; Oliva et al.(1992) Antimicrob.Agents Chemother.36:913; Hlavka et al.(1985) Handbook of Experimental Pharmacology78;及びGill et al.(1988) Nature334:721を参照のこと。このような開示は参照により本明細書に組み込まれている。
【0049】
前述の選択可能なマーカー遺伝子の列挙は、制限することを意味するものではない。任意の致死性又は非致死性の選択可能なマーカー遺伝子を、本発明において使用することができる。
【0050】
B.プラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲン
本発明は、ウキクサ中でプラスミノ−ゲン、ミクロプラスミノ−ゲン、及びそれらの断片を発現させるための方法及び組成物を対象とする。ウキクサ中で発現されるプラスミノ−ゲンは、任意の哺乳動物源由来のものであってよい。幾つかの実施形態では、プラスミノ−ゲンはヒト又はブタ由来である。特定の実施形態ではプラスミノ−ゲンは、配列番号4で示すヒトプラスミノ−ゲンのアミノ酸配列を有する。他の実施形態ではプラスミノ−ゲンは、配列番号4で示すアミノ酸配列の生物学的に活性がある変異体である。
【0051】
同様に、ウキクサ中で発現されるミクロプラスミノ−ゲンは、任意の哺乳動物源由来のものであってよい。幾つかの実施形態では、ミクロプラスミノ−ゲンはヒト又はブタ由来である。特定の実施形態ではミクロプラスミノ−ゲンは、配列番号6で示すヒトミクロプラスミノ−ゲンのアミノ酸配列を有する。他の実施形態ではプラスミノ−ゲンは、配列番号6で示すアミノ酸配列の生物学的に活性がある変異体である。
【0052】
プラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンの断片は、本発明に従い生産することができる。このような断片は、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも101、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも377、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも550、少なくとも600、少なくとも650、少なくとも700、又は少なくとも750個のプラスミノ−ゲンタンパク質の隣接アミノ酸を含むことができる。本発明に従い生産することができる断片の例には、ミニプラスミノ−ゲン及びアンギオスタチンがある。プラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンの断片の非制限的な例は、そのそれぞれが参照により本明細書にその全容が組み込まれている、O'Reilly et al.(1994) Cell79:315-28; Sim et al.(1997) Cancer Res.57:1329-34;米国特許第5,972,896号、及び米国特許公開20020164717、20020037847、及び20010016644中に与えられている。幾つかの実施形態では断片は、プラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンの酵素活性、例えばプロテアーゼ活性を保持している。
【0053】
プラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンの「生物学的活性がある変異体」は、原型タンパク質のN末端及び/又はC末端への1つ又は複数のアミノ酸の付加又は欠失(いわゆる切断);タンパク質中の1箇所又は複数個所の部位における1つ又は複数のアミノ酸の欠失又は付加;或いはタンパク質中の1箇所又は複数個所の部位における1つ又は複数のアミノ酸の置換により、これらのポリペプチドに由来するポリペプチドである。本発明によって含まれる、生物学的活性がある変異体プラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンポリペプチドは生物学的に活性がある、即ちそれらを活性化して、プラスミンファミリーのプロテアーゼ(酵素群3.4.21.7)のプロテアーゼ活性を有するタンパク質を生産することができる。このような生物学的活性がある変異体は、例えば遺伝的多形性、又は人的操作に由来する可能性がある。本発明のプラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンの生物学的活性がある変異体は、配列番号4又は配列番号6で示すアミノ酸配列と、少なくとも約50%、60%、65%、70%、一般に少なくとも約75%、80%、85%、好ましくは少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、例えば少なくとも約98%、99%以上などの配列同一性を有する。したがって、本発明のプラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンの生物学的活性がある変異体は、わずか1〜15個のアミノ酸残基だけ、わずか1〜10個のアミノ酸残基、6〜10個のアミノ酸残基だけなど、5個のアミノ酸残基だけ、或いは4、3、2、又はさらに1個のアミノ酸残基だけ、配列番号4及び配列番号6で示すアミノ酸配列と異なる可能性がある。プラスミノ−ゲンの生物学的活性がある変異体の例は当技術分野で知られており、例えば米国特許第5,190,756号中に記載されている。生物学的活性を保つために、いずれの置換も天然では保存的であることが好ましく、切断及び置換は一般に、プロテアーゼ活性に必要とされない残基になされる。プラスミン/プラスミノ−ゲン及びミクロプラスミン/ミクロプラスミノ−ゲンの活性の原因である残基及びドメインは当技術分野で知られており、例えばそのそれぞれが参照により本明細書にその全容が組み込まれている、Kolev et al.(1997) J.Biol.Chem.272:13666-675; de los Santos et al.(1997) Ciba Found.Symp.212:66-76,Peisach et al.(1999) Biochemistry38:11180-11188、及びTurner et al.(2002) J.Biol.Chem.277:33-68-74)中に記載されている。
【0054】
2つの配列間の配列の比較、並びに同一率及び類似率の決定は、数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一率は、BLOSSUM62マトリクス又はPAM250マトリクス、並びに16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ加重値、及び1、2、3、4、5、又は6の長さ加重値を使用する、GCGソフトウェアパッケージ(www.accelrys.comで入手可能)中のGAPプログラムに組み込まれている、Needleman and Wunsch (1970) J.Mol.Biol.48:444-453のアルゴリズムを使用して決定する。さらに他の好ましい実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性の割合は、BLOSUM62スコアマトリクス(Henikoff et al.(1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:10915を参照のこと)、並びに40、50、60、70、又は80のギャップ加重値、及び1、2、3、4、5、又は6の長さ加重値を使用する、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを使用して決定する。特に好ましい一組のパラメータ(及び、どのパラメータを適用して分子が本発明の配列同一性の範囲内にあるかどうかを決定すべきかについて当業者が定かでない場合に、使用すべき一組のパラメータ)は、BLOSUM62スコアマトリクス、並びに60のギャップ加重値及び3の長さ加重値を使用することである。
【0055】
2つのアミノ酸配列間或いはヌクレオチド配列間の同一性の割合は、PAM120残基加重表、12のギャップ長さペナルティー及び4のギャップペナルティーを使用する、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、E.Meyers and W.Miller (1989) CABIOS4:11-17のアルゴリズムを使用して決定することもできる。
【0056】
C.ウキクサ中での発現を増強させるためのヌクレオチド配列の修飾
幾つかの実施形態では本発明は、発現させるヌクレオチド配列を修飾してウキクサ中でのその発現を増強させることを提供する。1つのこのような修飾は、植物選択コドンを使用する、プラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列の合成である。植物選択コドンを用いてヌクレオチド配列を合成するための方法が、当技術分野では利用可能である。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,380,831号及び第5,436,391号;Perlak et al.(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.USA15:3324;Iannacome et al.(1997) Plant Mol.Biol.34:485;及びMurray et al.(1989) Nucleic Acids.Res.17:477を参照のこと。ウキクサ中で発現するタンパク質中の最高頻度のコドンから、好ましいコドンを決定することができる。したがって、ウキクサ中の特定のコドンの使用頻度は、一群のウキクサのコード配列中のコドン使用を分析することにより決定することができる。幾つかのウキクサのコード配列は当業者に知られている;例えば、メリーランド州ベセスダに位置するNational Center for Biotechnology Information、National Library of Medicineの一部門のウェブサイトを介してアクセスすることができる、GenBank(登録商標)データベース中に含まれる配列を参照のこと。最新のGenBank(登録商標)リリース中に含まれる配列に基づくコドン使用の頻度を示す表は、日本国千葉のかずさDNA研究所のウェブサイト上で見ることができる;www.kazusa.or.jp/codon/を参照のこと。このデータベースは、Nakamura et al.(2000) Nucl.AcidsRes.28:292中に記載されている。
【0057】
ウキクサ及び他の単子葉植物中での発現用に最適化されている遺伝子を、本発明の方法中で使用することができることは理解される。例えば参照により本明細書に組み込まれている、EP0359472、EP0385962、WO91/16432;Perlak et al.(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:3342;Iannacome et al.(1997) Plant Mol.Biol.34:485;及びMurray et al.(1989) Nuc.Acids Res.17:477などを参照のこと。遺伝子配列全体又はいずれか一部分を、最適化又は合成することができることはさらに理解される。言い換えると、完全に最適化された配列又は部分的に最適化された配列を使用することもできる。例えば、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のコドンがウキクサ選択コドンであってよい。例えば幾つかの実施形態では、プラスミノ−ゲン又はミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列は、50%と100%の間のウキクサ選択コドン又は70%と100%の間のウキクサ選択コドンを含む。一実施形態では、90%と96%の間のコドンがウキクサ選択コドンである。当該のヌクレオチド配列のコード配列は、ウキクサ中において少なくとも17%の頻度で使用されるコドンを含むことができる。イボウキクサ(Lemna gibba)(表1)及びコウキクサ(Lemna minor)(表2)のコドンの使用は以下に示す。幾つかの実施形態では、表1又は表2を使用してウキクサ選択コドンを選択する。特定の実施形態では、プラスミノ−ゲンをコードするウキクサコドン最適化配列は配列番号3で示す配列であり、ミクロプラスミノ−ゲンをコードするウキクサコドン最適化配列は配列番号5で示すヌクレオチド配列である。
【0058】
表1:GenBank(登録商標)Release139*からのLemna gibbaコドンの使用
アミノ酸 コドン 数 /1000 分画

グリシン GGG 57.00 28.89 0.35
グリシン GGA 8.00 4.05 0.05
グリシン GGT 3.00 1.52 0.02
グリシン GGC 93.00 47.14 0.58

グルタミン酸 GAG 123.00 62.34 0.95
グルタミン酸 GAA 6.00 3.04 0.05
アスパラギン酸 GAT 6.00 3.04 0.08
アスパラギン酸 GAC 72.00 36.49 0.92

バリン GTG 62.00 31.42 0.47
バリン GTA 0.00 0.00 0.00
バリン GTT 18.00 9.12 0.14
バリン GTC 51.00 25.85 0.39

アラニン GCG 44.00 22.30 0.21
アラニン GCA 14.00 7.10 0.07
アラニン GCT 14.00 7.10 0.07
アラニン GCC 139.00 70.45 0.66

アルギニン AGG 16.00 8.11 0.15
アルギニン AGA 11.00 5.58 0.10
セリン AGT 1.00 0.51 0.01
セリン AGC 44.00 22.30 0.31

リシン AAG 116.00 58.79 1.00
リシン AAA 0.00 0.00 0.00
アスパラギン AAT 2.00 1.01 0.03
アスパラギン AAC 70.00 35.48 0.97

メチオニン ATG 67.00 33.96 1.00
イソロイシン ATA 4.00 2.03 0.06
イソロイシン ATT 0.00 0.00 0.00
イソロイシン ATC 63.00 31.93 0.94

スレオニン ACG 19.00 9.63 0.25
スレオニン ACA 1.00 0.51 0.01
スレオニン ACT 6.00 3.04 0.08
スレオニン ACC 50.00 25.34 0.66

トリプトファン TGG 45.00 22.81 1.00
終止 TGA 4.00 2.03 0.36
システイン TGT 0.00 0.00 0.00
システイン TGC 34.00 17.23 1.00

終止 TAG 0.00 0.00 0.00
終止 TAA 7.00 3.55 0.64
チロシン TAT 4.00 2.03 0.05
チロシン TAC 76.00 38.52 0.95

ロイシン TTG 5.00 2.53 0.04
ロイシン TTA 0.00 0.00 0.00
フェニルアラニン TTT 4.00 2.03 0.04
フェニルアラニン TTC 92.00 46.63 0.96

セリン TCG 34.00 17.23 0.24
セリン TCA 2.00 1.01 0.01
セリン TCT 1.00 0.51 0.01
セリン TCC 59.00 29.90 0.42

アルギニン CGG 23.00 11.66 0.22
アルギニン CGA 3.00 1.52 0.03
アルギニン CGT 2.00 1.01 0.02
アルギニン CGC 50.00 25.34 0.48

グルタミン CAG 59.00 29.90 0.86
グルタミン CAA 10.00 5.07 0.14
ヒスチジン CAT 5.00 2.53 0.26
ヒスチジン CAC 14.00 7.10 0.74

ロイシン CTG 43.00 21.79 0.35
ロイシン CTA 2.00 1.01 0.02
ロイシン CTT 1.00 0.51 0.01
ロイシン CTC 71.00 35.99 0.58

プロリン CCG 44.00 22.30 0.31
プロリン CCA 6.00 3.04 0.04
プロリン CCT 13.00 6.59 0.09
プロリン CCC 80.00 40.55 0.56
【0059】
表2:GenBank(登録商標)Release139*からのコウキクサコドンの使用
アミノ酸 コドン 数 /1000 分画

グリシン GGG 8.00 17.39 0.22
グリシン GGA 11.00 23.91 0.31
グリシン GGT 1.00 2.17 0.03
グリシン GGC 16.00 34.78 0.44

グルタミン酸 GAG 25.00 54.35 0.78
グルタミン酸 GAA 7.00 15.22 0.22
アスパラギン酸 GAT 8.00 17.39 0.33
アスパラギン酸 GAC 16.00 34.78 0.67

バリン GTG 21.00 45.65 0.53
バリン GTA 3.00 6.52 0.07
バリン GTT 6.00 13.04 0.15
バリン GTC 10.00 21.74 0.25

アラニン GCG 13.00 28.26 0.32
アラニン GCA 8.00 17.39 0.20
アラニン GCT 6.00 13.04 0.15
アラニン GCC 14.00 30.43 0.34

アルギニン AGG 9.00 19.57 0.24
アルギニン AGA 11.00 23.91 0.30
セリン AGT 2.00 4.35 0.05
セリン AGC 11.00 23.91 0.26

リシン AAG 13.00 28.26 0.68
リシン AAA 6.00 13.04 0.32
アスパラギン AAT 0.00 0.00 0.00
アスパラギン AAC 12.00 26.09 1.00

メチオニン ATG 9.00 19.57 1.00
イソロイシン ATA 1.00 2.17 0.08
イソロイシン ATT 2.00 4.35 0.15
イソロイシン ATC 10.00 21.74 0.77

スレオニン ACG 5.00 10.87 0.28
スレオニン ACA 2.00 4.35 0.11
スレオニン ACT 2.00 4.35 0.11
スレオニン ACC 9.00 19.57 0.50

トリプトファン TGG 8.00 17.39 1.00
終止 TGA 1.00 2.17 1.00
システイン TGT 1.00 2.17 0.12
システイン TGC 7.00 15.22 0.88

終止 TAG 0.00 0.00 0.00
終止 TAA 0.00 0.00 0.00
チロシン TAT 1.00 2.17 0.12
チロシン TAC 7.00 15.22 0.88

ロイシン TTG 3.00 6.52 0.08
ロイシン TTA 1.00 2.17 0.03
フェニルアラニン TTT 6.00 13.04 0.25
フェニルアラニン TTC 18.00 39.13 0.75

セリン TCG 11.00 23.91 0.26
セリン TCA 4.00 8.70 0.09
セリン TCT 6.00 13.04 0.14
セリン TCC 9.00 19.57 0.21

アルギニン CGG 4.00 8.70 0.11
アルギニン CGA 4.00 8.70 0.11
アルギニン CGT 0.00 0.00 0.00
アルギニン CGC 9.00 19.57 0.24

グルタミン CAG 11.00 23.91 0.73
グルタミン CAA 4.00 8.70 0.27
ヒスチジン CAT 0.00 0.00 0.00
ヒスチジン CAC 6.00 13.04 1.00

ロイシン CTG 9.00 19.57 0.24
ロイシン CTA 4.00 8.70 0.11
ロイシン CTT 4.00 8.70 0.11
ロイシン CTC 17.00 36.96 0.45

プロリン CCG 8.00 17.39 0.29
プロリン CCA 7.00 15.22 0.25
プロリン CCT 5.00 10.87 0.18
プロリン CCC 8.00 17.39 0.29
【0060】
他の修飾を当該のヌクレオチド配列に施して、ウキクサ中でのその発現を増強させることもできる。それらの修飾には、擬似ポリアデニル化シグナル、エクソン−イントロンスプライシング部位シグナル、トランスポゾン様反復配列、及び遺伝子発現に害を与える可能性がある、他のこのような充分特徴付けされた配列をコードする配列の除去があるが、これらだけには限られない。配列のG-C含量は、細胞宿主中で発現される既知の遺伝子を参照することによって計算した、所与の細胞宿主に平均的なレベルに調整することができる。可能なときは配列を修飾して、予想されるヘアピン二次mRNA構造を回避することができる。
【0061】
動物及び植物中の翻訳開始コドンの最適な翻訳開始状態ヌクレオチド配列間には知られている違いが存在し、これらの翻訳開始状態ヌクレオチド配列の組成は、翻訳開始の効率に影響を与える可能性がある。例えばLukaszewicz et al.(2000) Plant Science154:89-98;及びJoshi et al.(1997); Plant Mol.Biol.35:993-1001を参照のこと。本発明では、当該のヌクレオチド配列の翻訳開始コドンの翻訳開始状態ヌクレオチド配列を修飾して、ウキクサ中でのその発現を増強させることができる。一実施形態では、当該のヌクレオチド配列の翻訳開始コドンのすぐ上流の3個のヌクレオチドが「ACC」であるように、ヌクレオチド配列を修飾する。第二の実施形態では、これらのヌクレオチドは「ACA」である。
【0062】
ウキクサ中でのトランス遺伝子の発現は、5’リーダー配列を使用することによって増強させることもできる。このようなリーダー配列は、翻訳を増強させるために作用することができる。1つ又は複数のリーダー配列を組合せで使用して、標的ヌクレオチド配列の発現を増強させることができる。翻訳リーダー配列は当技術分野で知られており、ピコルナウイルスのリーダー配列、例えばEMCVリーダー配列(脳心筋炎ウイルスの5’非コード領域;Elroy-Stein et al.(1989) Proc.Natl.Acad.Sci USA86:6126);ポチウイルスのリーダー配列、例えばTEVのリーダー配列(タバコエッチウイルス;Allison et al.(1986) Virology154:9);ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP;Macajak and Sarnow(1991) Nature353:90);アルファルファモザイクウイルスのコートタンパク質mRNA由来の非翻訳リーダー配列(AMV RNA4;Jobling and Gehrke(1987) Nature325:622);タバコモザイクウイルスのリーダー配列(TMV; Gallie (1989) Molecular Biology of RNA,23:56);ジャガイモエッチウイルスのリーダー配列(Tomashevskaya et al.(1993) J.Gen.Virol.74:2717-2724);Fed−15’ 非翻訳領域(Dickey (1992) EMBO J.11:2311-2317);RbcS5’非翻訳領域(Silverthorne et al.(1990) J.plant.Mol.Biol.15:49-58);及びトウモロコシ白化モットルウイルスのリーダー配列(MCMV; Lommel et al.(1991) Virology81:382)があるが、これらだけには限られない。Della-Cioppa et al.(1987) Plant Physiology84:965も参照のこと。トウモロコシの脱水素酵素1の遺伝子、ヒマカタラーゼ遺伝子、又はArabidopsisトリプトファン経路の遺伝子PAT1由来のイントロン配列を含めた、植物のイントロン配列を含むリーダー配列も、植物における翻訳効率を増強させることが示されてきている(Callis et al.(1987) Genes Dev.1:1183-1200; Mascarenhas et al.(1990) Plant Mol.Biol.15:913-920)。本発明の一実施形態では、配列番号1で示す、トウモロコシのアルコール脱水素酵素1の遺伝子のヌクレオチド1222−1775に対応するヌクレオチド配列(GenBankアクセッション番号X04049)を、当該のヌクレオチド配列の上流に挿入してその翻訳効率を増強させる。他の実施形態では発現ベクターは、Lemna gibbaのリブロース−ビス−リン酸カルボキシラーゼの小サブユニットの5B遺伝子由来のリーダー配列を含む(Buzby et al.(1990) 90) Plant Cell2:805-814)。
【0063】
いずれか1つの修飾又はいずれかの考えられる修飾の組合せを含めた、前に記載したウキクサ中での発現を増強させるためのヌクレオチド配列の修飾のいずれかを、本発明で使用することができることは理解される。本明細書で使用するフレーズ「ウキクサ中での増強した発現のために修飾した」は、これらの修飾のいずれか1つ或いはいずれかの組合せを含むヌクレオチド配列を指す。
【0064】
D.シグナルペプチド
分泌されるタンパク質は通常は前駆体ポリペプチドから翻訳され、前駆体ポリペプチドは、小胞体(ER)の膜上の受容体タンパク質と相互作用して、細胞から分泌させるための膜を超えた小胞体への増強するポリペプチド鎖の移動を誘導する「シグナルペプチド」を含む。このシグナルペプチドはしばしば前駆体ポリペプチドから切断されて、シグナルペプチドを欠く「成熟」ポリペプチドが生成する。本発明の一実施形態では、生物学的活性があるポリペプチドが、培養培地中へのポリペプチドの分泌を誘導するシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列と動作可能に連結したヌクレオチド配列から、ウキクサ中で発現される。(細胞の外側へ分泌させるための)小胞体へのタンパク質移動を標的化する、植物のシグナルペプチドは当技術分野で知られている。例えば、Lee et alへの米国特許第6,020,169号を参照のこと。本発明では、任意の植物のシグナルペプチドを使用して、ERに対するポリペプチド発現を標的化することができる。幾つかの実施形態では、シグナルペプチドはArabidopsis thalianaの塩基性エンドキチナーゼシグナルペプチド、エクステンシンシグナルペプチド(Stiefel et al.(1990) Plant Cell2:785-793)、又はコメαアミラーゼシグナルペプチド(配列番号8;NCBIタンパク質アクセッション番号AAA33885のアミノ酸1−31)である。他の実施形態ではシグナルペプチドは、分泌されるウキクサのタンパク質のシグナルペプチドに対応する。
【0065】
或いは、哺乳動物のシグナルペプチドを使用して、分泌用に遺伝子工学処理したウキクサ中で発現される組換えポリペプチドを標的化することができる。植物細胞は小胞体を標的化する哺乳動物のシグナルペプチドを認識し、これらのシグナルペプチドは原形質膜を介してだけではなく植物細胞壁を介しても、ポリペプチドの分泌を誘導することができることが実証されてきている。Hiatt et alへの米国特許第5,202,422号及び第5,639,947号を参照のこと。
【0066】
幾つかの実施形態では、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を、前のセクションBで開示した当該のヌクレオチド配列に関する、いずれか1つの修飾又は修飾の組合せを使用して、ウキクサ中での増強した発現のために修飾する。例えば、コメのαアミラーゼ由来のシグナルペプチドをコードするウキクサの最適配列は配列番号7で示す。この配列は、約93%のウキクサ選択コドンを含む。
【0067】
分泌されたポリペプチドは、当技術分野で知られている任意の従来の手段によって培養培地から採取することができ、クロマトグラフィー、電気泳動、透析、溶媒−溶媒抽出などによって精製することができる。
【0068】
E.形質転換されたウキクサ植物及びウキクサ根粒の培養物
本発明を使用して安定に形質転換されるウキクサは、当技術分野で知られている任意の方法によって得ることができる。一実施形態では、安定に形質転換されたウキクサは、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,040,498号、或いは米国特許公開第20030115640号、20030033630号、又は20020088027号中に開示された遺伝子移動法の1つによって得る。これらの方法には、当該のヌクレオチド配列を含む核酸でコーティングされたマイクロ弾を用いた衝撃ボンバードメントによる遺伝子移動、エレクトロポレーションによる遺伝子移動、及び当該のヌクレオチド配列を含むベクターを含むアグロバクテリウムによって仲介される遺伝子移動がある。幾つかの実施形態では、安定に形質転換されたウキクサは、Stomp et alへの米国特許第6,040,498号中で開示されたアグロバクテリウム仲介の方法のいずれか1つによって得る。使用するアグロバクテリウムは、アグロバクテリウム・トゥメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)又はアグロバクテリム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)である。
【0069】
安定に形質転換されたウキクサ植物は、葉緑体の形質転換によって得ることもできる。例えば、「Chloroplast transformation of duckweed」という表題の2003年8月1日に出願された、米国仮特許出願第60/492,179号を参照のこと。安定に形質転換されたウキクサ系は、植物ウイルス発現ベクターを使用して生産することもできる。例えば、米国特許第6,632,980号及びKoprowski and Yusibov (2001) Vaccine19:2735-2741を参照のこと。
【0070】
これらの方法中で使用される安定に形質転換されたウキクサ植物は、正常な形態を示し有性生殖によって受精することが好ましい。本発明の形質転換植物は移入核酸の1つのコピーを含み、移入核酸はその中では顕著な再編成がないことが好ましい。少ないコピー数(即ち、形質転換細胞当たり12コピーを超えない、8コピーを超えない、5コピーを超えない、或いは3コピーを超えない、他の代替として3コピー未満の核酸)で移入核酸が存在する、ウキクサ植物がさらに好ましい。
【0071】
実験
以下の実施例は、例示を目的として示すものであり、これらに限定されない。
【0072】
ウキクサ中でプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンを生産するための発現構築体
本発明の実施例で使用する発現ベクターは、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,955,646号中に記載されたpBMSP-1の修飾型である。ベクターの転写カセットは、アグロバクテリウム・トゥメファシエンスオクトピン合成酵素由来の転写活性化ヌクレオチド配列、及びアグロバクテリウム・トゥメファシエンスマンノピン合成酵素遺伝子、アグロバクテリウム・トゥメファシエンスマンノピン合成酵素遺伝子由来のプロモーター領域、当該のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の挿入用のポリリンカー部位由来の他の転写活性化ヌクレオチド配列、及びアグロバクテリウム・トゥメファシエンスノパリン合成酵素遺伝子由来の停止配列の3つのコピーを含んでいた(それぞれ参照により本明細書に組み込まれている、van Engelen et al.(1995) 4:288-290;Ni et al.(1995) Plant J.7:661-76;及びLuehrsen et al.(1991) Mol.Gen.Genet.225:81-93を参照のこと)。
【0073】
発現ベクターは、選択可能なマーカーとしてゲンタマイシン耐性をコードするゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼ−3−I、aacC1、Wohlleben et al.(1989) Mol.Gen.Genet.217:202-208)をコードするヌクレオチド配列も含んでいた。選択可能なマーカー配列の転写は、アグロバクテリウム・トゥメファシエンスノパリン合成酵素II遺伝子由来のプロモーターによって誘導される。
【0074】
発現ベクターは、イボウキクサのリブロース−ビス−リン酸カルボキシラーゼの小サブユニットの5B遺伝子由来のリーダー配列(NCBIアクセッション番号S45167のヌクレオチド689−751、Buzby et al.(1990) Plant Cell2:805-814)、及びプロモーターとポリリンカーの間に挿入された、トウモロコシのアルコール脱水素酵素の遺伝子(GenBankアクセッション番号X04049)のヌクレオチド1222−1775に対応するヌクレオチド配列をさらに含む。このイントロン配列は配列番号1で示され、リーダー配列は配列番号2で示される。
【0075】
ウキクサの形質転換
(これらの実施例中ではコウキクサ系統8627に由来する)ウキクサの葉又はウキクサの根粒培養物を、アグロバクテリウム仲介の形質転換法を使用して前に記載した発現構築体を用いて形質転換した。アグロバクテリウム・トゥメファシエンス系統C58Z707、解除型広範囲の宿主C58系統(Hepburn et al.(1985) J.Gen.Microbiol.131:2961-2969)は、これらの実施例中では形質転換用に使用する。前に記載した発現構築体はエレクトロポレーションによって、或いは移動プラスミドpRK2013(Hoekema et al.(1983) Nature303:179-180; Ditta et al.(1980) Proc Natl.Acad.Sci.USA77:7347-7350)を含む大腸菌MM294を使用する3親交雑手順によってA.tumefaciensに移動させた。前に記載した発現構築体を含むC58Z707系統は、AB最小培地(Chilton et al.(1974) Proc Nat.Acad.Sci.USA71:3672-3676)上、或いは500mg/Lのストレプトマイシン、50mg/Lのスペクチノマイシン、及び50mg/Lの硫酸カナマイシンを含むYEB又はLB培地(1g/Lの酵母菌エキス、5g/Lのビーフエキス、5g/Lのペプトン、5g/Lのスクロース、0.5g/LのMgSO)中に画線培養し、28℃で一晩増殖させる。
【0076】
形質転換用のウキクサの根粒培養物は、以下のように生産した。ウキクサの葉を分離し、滅菌した外科用メスを用いて根を切断し、葉は腹面側を、5μMの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、0.5μMの1−フェニル−3(1,2,3−チアジアゾール−5−イル)尿素チジアズロン(Sigma社製P6186)、3%スクロース、0.4Difco Bacto-agar(Fisher Scientific社製)、及び0.15%Gelrite(Sigma社製)を補ったMurashige及びSkoog培地(カタログ番号M−5519;Sigma Chemical Corporation社製、St.Louis,MO)pH5.6に置く。葉は5〜6週間増殖させた。この時点で、根粒(小さな黄色っぽい細胞塊)が、腹面側の中心部から概して生じた。この根粒組織は母葉から脱着させ、3%スクロース、0.4%Difco Bacto-agar、0.15%Gelrite、1μMの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、及び2μMのベンジルアデニンを補ったMurashige及びSkoog培地中で培養した。
【0077】
ウキクサの根粒培養物は、以下のように形質転換した。適切なアグロバクテリウム・トゥメファシエンス系統を、ポテトデキストロース寒天又はYEB又はLB寒天上で、50mg/Lのカナマイシン及び100μMのアセトシリンゴンと共に増殖させ、0.6Mのマンニトール及び100μMのアセトシリンゴンを補ったMurashige及びSkoog培地中に再懸濁させた。根粒培養物の組織は、再懸濁させた細菌の溶液中に1〜2分間浸すことによって接種し、ブロッティングして過剰な流体を除去し、根粒の増殖を促進するように最適化したオーキシン及びサイトキニン並びに100μMのアセトシリンゴンを補ったMurashige及びSkoog培地からなる、同時培養用培地上に平板培養した。Yamamoto et al.(2001) In Vitro Cell dev.Biol.Plant37:349-353を参照のこと。
【0078】
選択用に、根粒培養物の組織は再生培地;1%スクロース、0.4%Difco Bacto-Agar、0.15%Gelrite、500mg/Lのセフォタキシム及び6mg/Lのゲネチシンを補った0.5×Schenk及びHildebrandt培地に移し、連続光(20〜40μM/m・sec)下において約6〜8週間培養した。根粒組織は、7日毎に新たな培養培地に移した。根粒組織が選択培地上で激しい増殖を示すとき、選択を終了する。
【0079】
以下の実施例は、ウキクサ中での生物学的活性があるプラスミノ−ゲン及びミクロプラスミノ−ゲンの発現を実証する。
【実施例1】
【0080】
プラスミノ−ゲンの生産
ヒトプラスミノ−ゲンをウキクサ中で以下のように発現させた。ヒトプラスミノ−ゲンをコードする合成ウキクサ−コドン最適化配列を、前に記載した発現ベクター中に挿入した。コードされたプラスミノ−ゲンのアミノ酸配列は配列番号4に示し、ウキクサ−最適化コード配列は配列番号3に示す。発現ベクターは、プラスミノ−ゲンコード配列の5’に挿入された、コメのαアミラーゼシグナルペプチドをコードするウキクサ最適化コード配列も含んでいた。シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、2つのコード配列が1つのタンパク質として翻訳されるように、ヒトプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列と動作可能に連結させた。コメのαアミラーゼシグナルペプチドをコードするウキクサ最適化コード配列は配列番号7に示し、コードされているペプチドは配列番号8に示す。このプラスミノ−ゲン発現ベクターは、この実施例中ではBAP01と呼ぶ。
【0081】
BAP01発現ベクターを用いて形質転換したウキクサ系は、前に記載したのと同様に作製した。プラスミノ−ゲンの大きな大きさのために、トランスジェニック系の一次スクリーニングには、培地及び組織ホモジェネートの分析を含めた。大部分の発現されたタンパク質は、組織中に保たれていた。合計81の系を作製し、(ELISAにより測定して)プラスミノ−ゲンは植物抽出物中の可溶性タンパク質全体の6%も占めた。図1は、56のトランスジェニック系において測定したプラスミノ−ゲンのレベルを表す。これらのレベルは、実験容器中で2週間成長させた植物から得た。市販のプラスミノ−ゲンは、このアッセイにおける標準として使用した。
【0082】
ウキクサ中で発現したプラスミノ−ゲンの活性は、7つの異なる独立したトランスジェニック系からの組織抽出物に関して測定した。ウキクサ中で発現したプラスミノ−ゲンはストレプトキナーゼにより活性化されて、活性複合体を生産した。ストレプトキナーゼによる活性化はプラスミンの形成とは関係ないが、ストレプトキナーゼ/プラスミノ−ゲン複合体の形成に起因する立体配座の変化によって起こる。次いで生産した複合体の活性を、405nmにおいて配列番号9で示す発色基質Glu−Phe−Lys−pNA(Chromgenix Instrumentation Laboratory SpA、ミラノ、イタリアから入手可能)(pNA=p−ニトロアニリド)の切断をアッセイすることによって測定した(Gram J.and Jespersen J.Thromb.Haemost.53,255-259(1985)及びRobbins,K.C.Semin.Thromb.Haemost.13(2),131-138 (1987))。試験した7つのトランスジェニック系のそれぞれに関して、活性レベルはELISAにより測定したタンパク質発現レベルと非常に関係があり、アオウキクサ中で生産したプラスミノ−ゲンは、市販の対照タンパク質のプラスミノ−ゲンと同等の特異的活性を有していたことが示された。
【0083】
プラスミノ−ゲンを過剰発現するように工学処理した多くのウキクサ系は、急速な老化期を経たことが示された。しかしながら、植物培養中に通気及び培地体積を増強させることによって、これらの系の老化期を短縮することができたことを測定した。さらに、接種密度を変えることも、植物の健康状態に影響を与える可能性がある。8個のトランスジェニックウキクサ系の培養の規模を増強させ、これらの系の1つであるBAP01-B1-95をさらなる分析用に選択した。バイオマスの蓄積、プラスミノ−ゲンの発現レベル(ELISAにより測定して粗製植物抽出物中の全可溶性タンパク質レベルの3.3%)、及び全体的な植物の健康状態に基づいて、この系を選択した。
【0084】
プラスミノ−ゲンはBAP01-B1-95系から以下のように採取した。かさの多いウキクサ組織を均質化し、遠心分離によって清澄化し、0.22μMフィルターを介して濾過し、Dowex社製イオン交換樹脂カラム(Dow Chemical,Midland,Michから入手可能)に通し、次いでリシンセファロースクロマトグラフィーによって親和性により精製した。結合した物質は、ε−アミノカプロン酸を用いて親和性カラムから溶出させた。これらの植物から得た粗製組織抽出物は、ELISAにより測定した3.3%の全可溶性タンパク質と同じプラスミノ−ゲンを含んでいた。
【0085】
tPAウロキナーゼ、及びストレプトキナーゼによる活性化の後に、ウキクサ中で生成したプラスミノ−ゲンの活性も測定した。tPA又はウロキナーゼを用いて活性化したプラスミノ−ゲンの活性によって、図2に示すように活性化プラスミンが生じた。ウエスタンブロッティング分析は、ウキクサ中で生成したプラスミノ−ゲンの活性化によって生じたプラスミンの重鎖と軽鎖の両方が、対照として使用した市販のプラスミンと共に移動したことを示した(図6)。ストレプトキナーゼを用いた活性化によっても、配列番号3で示す活性化プラスミノ−ゲンが生成した。このアッセイでは、プラスミノ−ゲンをストレプトキナーゼにより活性化させて、活性複合体を生成させ、次いでこれが発色基質を切断する(Coamatic(登録商標)ブランドのプラスミノ−ゲンキット、DiaPharma,West Chester,OH)。図3は、試験した系に関して、ELISAによる定量化とストレプトキナーゼ活性アッセイは比較可能な値を与え、アオウキクサが生成したプラスミノ−ゲンは、対照タンパク質と類似した特異的活性を有していたことが示されたことを示す。
【0086】
ウキクサ中で生成したプラスミノ−ゲンの大きさは、American Diagnostica,Inc.Greenwich,CTから入手可能な抗プラスミノ−ゲン抗体を使用してウエスタンブロッティングによって測定した。この分析は、ウキクサ中で生成したプラスミノ−ゲンの60%は完全長であったことを示し、ウキクサ中で生成したプラスミノ−ゲンのN末端塩基配列決定は、最初の74アミノ酸を欠くポリペプチドを生成した他のプロセシングを示した。ヒト血清では、非プロセシング状態の「グルタミン酸−プラスミノ−ゲン」と、69、77、又は78のN末端アミノ酸が除去されている「リシン−プラスミノ−ゲン」として定義される数個のプロセシング型の混合物としてプラスミノ−ゲンを単離する。このような切断は、活性に対して全く影響がない。
【0087】
従来技術中の参照文献は、組換え系において安定したプラスミノ−ゲンを生産する際の難点を報告しているので、アオウキクサ系において生成されるプラスミノ−ゲンの安定性を試験した。図4は、アオウキクサの組織抽出物に加えたヒトプラスミノ−ゲンの安定性を実証する。この図は、アオウキクサの抽出物中での一晩のインキュベーション後でさえも、ヒトプラスミノ−ゲンがその活性のほぼ全てを保持していたことを実証する。図5は、凍結−解凍サイクル後のアオウキクサの組織抽出物中での、アオウキクサが生産したプラスミノ−ゲンの安定性を実証する。この図は、アオウキクサが生産したタンパク質は凍結−解凍サイクル後に安定していることを実証する。
【実施例2】
【0088】
ウキクサ中でのミクロプラスミノ−ゲンの生産
ヒトミクロプラスミノ−ゲンをウキクサ中で以下のように発現させた。ヒトミクロプラスミノ−ゲンをコードする合成ウキクサ−コドン最適化配列を、前に記載した発現ベクター中に挿入した。コードされたミクロプラスミノ−ゲンのアミノ酸配列は配列番号6に示し、ウキクサ−最適化コード配列は配列番号5に示す。発現ベクターは、プラスミノ−ゲンコード配列の5’に挿入された、コメのαアミラーゼシグナルペプチドをコードするウキクサ最適化コード配列も含んでいた。シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、2つのコード配列が1つのタンパク質として翻訳されるように、ヒトミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列と動作可能に連結させた。コメのαアミラーゼシグナルペプチドをコードするウキクサ最適化コード配列は配列番号7で与え、コードされているペプチドは配列番号8に示す。このミクロプラスミノ−ゲン発現ベクターは、この実施例中ではBAMP01と呼ぶ。
【0089】
BAMP01発現ベクターを用いて形質転換したウキクサ系は、前に記載したのと同様に作製した。大部分の発現されたミクロプラスミノ−ゲンは、培養培地に分泌された。79のトランスジェニック系をスクリーニングして、ミクロプラスミノ−ゲンの発現レベルを測定した。図7は、これらの系において発現されたミクロプラスミノ−ゲンのレベルを示す。第一組の42系は7日間増殖させ、一方第二組の37系は6日間増殖させた。非常に低いタンパク質含量を有する非常に希釈された水性培地無機培地中でそれが増殖する点において、ウキクサは特有であり、発酵型系及び哺乳動物細胞系発現系と区別されることに留意すべきである。ウキクサ増殖培地は、典型的にはわずか30mg/Lの宿主植物タンパク質を含む。この低レベルの宿主植物タンパク質は、分泌されたタンパク質の下流精製に関する利点を与える。
【0090】
BAMP01を用いて形質転換したウキクサ系の1つ、BAMP01-B1-58を、さらなる試験用に選択した。ミクロプラスミノ−ゲンは、以下のようにBAMP01-B1-58系の培養培地から採取した。培養培地は限外濾過及びダイアフィルトレーションによって処理し、次いでDowex社製イオン交換樹脂カラム(Dow Chemical,Midland,Michから入手可能)に通して、低分子量の植物の代謝産物を除去した。粗製水性培地中のミクロプラスミノ−ゲンを濃縮する前の濃度は、定量ウエスタンブロッティングによって測定して約20mg/Lであった。
【0091】
ウキクサ中で生成したミクロプラスミノ−ゲンの大きさは、(American Diagnostica,Inc.Greenwich,CT)から入手可能な抗プラスミノ−ゲン抗体を使用してウエスタンブロッティングによって測定した。この分析は、ウキクサ中で生成したミクロプラスミノ−ゲンの大部分は完全長であったことを示した。完全なN末端もN末端塩基配列決定によって確認した。
【0092】
ウキクサ中で発現したミクロプラスミノ−ゲンの活性は、プラスミノ−ゲンに関して前に記載した活性複合体を生成するためのストレプトキナーゼによる活性化後に、BAMP01-B1-58トランスジェニック系に関して測定した。ウキクサ中で生成したミクロプラスミノ−ゲンは、ストレプトキナーゼの不在下である程度のレベルの活性、及びストレプトキナーゼによる活性化後に有意な活性の増強を示した。
【0093】
プラスミノ−ゲンと同様に、ミクロプラスミノ−ゲンはウロキナーゼ及びtPAにより活性化することができるが、しかしながらB−鎖のみが生成する。ウエスタンブロット分析によって、ウロキナーゼ又はtPAを用いたウキクサ中で生成したミクロプラスミノ−ゲンの活性化後に、プラスミンのB鎖の生成を確認した。
【0094】
アオウキクサが生産したミクロプラスミノ−ゲン由来のプラスミンの活性を確認するために、tPAによる活性化後の濃縮培地にゼラチンザイモグラムを施した。図8は、濃縮対照培地中には存在しない活性のあるタンパク質分解バンドの存在を示す。
【0095】
本明細書中で述べた全ての刊行物及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者の程度を示すものである。全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が具体的且つ個別に参照により組み込まれることを示すのと同程度で、参照により本明細書に組み込まれている。
【0096】
理解を明確にする目的で例示及び例によって、前述の本発明をある程度詳細に記載してきたが、ある程度の変更及び変更形態を、添付の実施形態の範囲内で実施することができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】プラスミノ−ゲン発現構築体BAP01を用いて形質転換した56のウキクサ系においてELISAによって測定した、組織ホモジェネート中のプラスミノ−ゲンのレベルを示す図である。プラスミノ−ゲンのレベルは、ホモジェネート中の合計可溶性タンパク質の割合として表す。他の詳細に関しては、実験項中の実施例1を参照のこと。
【図2】tPAを用いてウキクサ中で生成したプラスミノ−ゲンを活性化することによって生産した、プラスミンの活性を示す図である。他の詳細に関しては、実験項中の実施例1を参照のこと。
【図3】ストレプトキナーゼによる活性化後のプラスミン活性と比較した、ELISAによるプラスミノ−ゲンの定量化を示す図である。試験した系に関して、ELISAによる定量化とストレプトキナーゼ活性アッセイは比較可能な値を与え、アオウキクサが生産したプラスミノ−ゲンは、対照タンパク質と類似した特異的活性を有することが示された。他の詳細に関しては、実験項中の実施例1を参照のこと。
【図4】アオウキクサの組織抽出物に加えたヒトプラスミノ−ゲンの安定性を示す図である。他の詳細に関しては、実験項中の実施例1を参照のこと。
【図5】活性アッセイによって測定した凍結/解凍後の組織抽出物中の、アオウキクサプラスミノ−ゲンの安定性を示す図である。他の詳細に関しては、実験項中の実施例1を参照のこと。
【図6】アオウキクサが生産したプラスミノ−ゲンのウロキナーゼ又はtPAによる活性化後の、プラスミンの形成を示す図である。「BAP」はアオウキクサが生産したプラスミノ−ゲンを表す。左図は組織プラスミノ−ゲン活性化因子(tPA)を用いた活性化を示し、右図はウロキナーゼ(uK)を用いた活性化を示す。他の詳細に関しては、実験項中の実施例1を参照のこと。
【図7】ミクロプラスミノ−ゲンBAMP01発現構築体を用いて形質転換した79のウキクサ系由来の培地においてELISAにより測定した、ミクロプラスミノ−ゲンの濃度を示す図である。他の詳細に関しては、実験項中の実施例2を参照のこと。
【図8】tPAによる活性化後にアオウキクサが生産したミクロプラスミノ−ゲンのザイモグラム分析を示す図である。この図は、濃縮対照培地中には存在しない活性のあるタンパク質分解バンドの存在を示す。他の詳細に関しては、実験項中の実施例2を参照のこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウキクサ中でプラスミノ−ゲンを生産するための方法であって、
(a)ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞若しくは根粒を培養するステップであって、前記ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞若しくは根粒を、プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を用いて安定に形質転換するステップ、及び
(b)前記ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞若しくは根粒から前記プラスミノ−ゲンを回収するステップ
を含む方法。
【請求項2】
プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列が、培養培地中へのミクロプラスミノ−ゲンの分泌を誘導するシグナルペプチドのコード配列と動作可能に連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列が、
(a)前記プラスミノ−ゲンに関するコード配列中のウキクサ選択コドン、
(b)コード配列の上流に挿入された植物のイントロンを含む動作可能に連結したヌクレオチド配列、及び
(c)プラスミノ−ゲンをコードする前記ヌクレオチド配列の翻訳を増強させるリーダー配列を含む、動作可能に連結したヌクレオチド配列
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列が、70%〜100%のウキクサ選択コドンを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
植物のイントロンがトウモロコシのアルコール脱水素酵素1の遺伝子に由来する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
植物のイントロンが配列番号1に示される配列から本質的になる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
リーダー配列がイボウキクサのリブロース−ビス−リン酸カルボキシラーゼの小サブユニットの5B遺伝子に由来する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
リーダー配列が配列番号2に示されるヌクレオチド配列から本質的になる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列が配列番号3に示されるヌクレオチド配列である、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
プラスミノ−ゲンがヒトプラスミノ−ゲンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
プラスミノ−ゲンが、配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞中の少なくとも2%の可溶性タンパク質がプラスミノ−ゲンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞中の少なくとも3%の可溶性タンパク質がプラスミノ−ゲンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞中の少なくとも4%の可溶性タンパク質がプラスミノ−ゲンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ウキクサ中でミクロプラスミノ−ゲンを生産するための方法であって、
(a)ウキクサ培養培地内でウキクサ植物の培養物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサ根粒培養物を培養するステップ、或いは前記ウキクサ植物培養物、植物の細胞、又は根粒培養物を、ミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列と培養培地中へのミクロプラスミノ−ゲンの分泌を誘導するシグナルペプチドの動作可能に連結したコード配列とを含む核酸分子を用いて安定に形質転換するステップ、及び
(b)ウキクサ培養培地から前記ミクロプラスミノ−ゲンを回収するステップ
を含む方法。
【請求項16】
ミクロプラスミノ−ゲンをウキクサ培養培地中に分泌させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ウキクサ培養培地が、定量ウエスタンブロッティングにより測定して少なくとも1mg/Lのミクロプラスミノ−ゲンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ウキクサ培養培地が、定量ウエスタンブロッティングにより測定して少なくとも2mg/Lのミクロプラスミノ−ゲンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ウキクサ培養培地が、定量ウエスタンブロッティングにより測定して少なくとも5mg/Lのミクロプラスミノ−ゲンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ウキクサ培養培地が、定量ウエスタンブロッティングにより測定して少なくとも10mg/Lのミクロプラスミノ−ゲンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ミクロプラスミノ−ゲン及びシグナルペプチドの動作可能に連結したコード配列をコードするヌクレオチド配列が、
(a)前記ミクロプラスミノ−ゲンに関するコード配列中のウキクサ選択コドン、
(b)前記シグナルペプチドに関するコード配列中のウキクサ選択コドン、
(c)ミクロプラスミノ−ゲンに関するコード配列の上流に挿入された植物のイントロンを含む動作可能に連結したヌクレオチド配列、及び
(d)プラスミノ−ゲンをコードする前記ヌクレオチド配列の翻訳を増強させるリーダー配列を含む動作可能に連結したヌクレオチド配列
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列が、70%〜100%のウキクサ選択コドンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列が、70%〜100%のウキクサ選択コドンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
植物のイントロンがトウモロコシのアルコール脱水素酵素1の遺伝子に由来する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
植物のイントロンが配列番号1に示される配列から本質的になる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
リーダー配列がイボウキクサのリブロース−ビス−リン酸カルボキシラーゼの小サブユニットの5B遺伝子に由来する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
リーダー配列が配列番号2に示されるヌクレオチド配列から本質的になる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ミクロプラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列が配列番号5に示されるヌクレオチド配列である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
ミクロプラスミノ−ゲンがヒトミクロプラスミノ−ゲンである、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
ミクロプラスミノ−ゲンが、配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
シグナルペプチドがコメのαアミラーゼポリペプチドである、請求項15に記載の方法。
【請求項32】
シグナルペプチドのコード配列が配列番号7に示されるヌクレオチド配列を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
シグナルペプチド配列が配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項34】
ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞がウキクサ属、ミジンコウキウサ属、ウォルフィエラ属、ランドルティア属及びアオウキクサ属からなる群から選択される属に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞がウキクサ属、ミジンコウキウサ属、ウォルフィエラ属、ランドルティア属及びアオウキクサ属からなる群から選択される属に属する、請求項15に記載の方法。
【請求項36】
請求項1に記載の方法に従ってプラスミノ−ゲンを生産することを含む、安定したプラスミノ−ゲンを生産する改良された方法。
【請求項37】
ウキクサ中でプラスミノ−ゲン断片を生産するための方法であって、
(a)ウキクサ培養培地内でウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞若しくは根粒を培養するステップであって、前記ウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞若しくは根粒を、プラスミノ−ゲン断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を用いて安定に形質転換するステップ、及び
(b)前記ウキクサ植物、前記ウキクサ植物の細胞、前記ウキクサ植物の根粒、又は前記ウキクサ培養培地から選択される少なくとも1つの供給源から前記プラスミノ−ゲン断片を回収するステップ
を含む方法。
【請求項38】
プラスミノ−ゲン断片をコードするヌクレオチド配列が、培養培地中へのミクロプラスミノ−ゲンの分泌を誘導するシグナルペプチドのコード配列と動作可能に連結している、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
プラスミノ−ゲン断片をコードするヌクレオチド配列が、
(a)前記プラスミノ−ゲン断片に関するコード配列中のウキクサ選択コドン、
(b)コード配列の上流に挿入された植物のイントロンを含む、動作可能に連結したヌクレオチド配列、及び
(c)プラスミノ−ゲン断片をコードする前記ヌクレオチド配列の翻訳を増強させるリーダー配列を含む、動作可能に連結したヌクレオチド配列
からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
プラスミノ−ゲン断片をコードするヌクレオチド配列が、70%〜100%のウキクサ選択コドンを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
植物のイントロンがトウモロコシのアルコール脱水素酵素1の遺伝子に由来する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
プラスミノ−ゲン断片が成熟プラスミノ−ゲンアミノ酸配列の少なくとも80個の隣接アミノ酸を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
請求項1に記載の安定に形質転換されたウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又は根粒。
【請求項44】
ウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサの根粒がウキクサ属、ミジンコウキウサ属、ウォルフィエラ属、ランドルティア属及びアオウキクサ属からなる群から選択される属に由来する、請求項43に記載の安定に形質転換されたウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又は根粒。
【請求項45】
ウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサの根粒がコウキクサ、レムナサエ・ミニスクラ、ナンゴクウアオウキクサ、及びイボウキクサからなる群から選択される種のメンバーである、請求項44に記載の安定に形質転換されたウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサの根粒。
【請求項46】
請求項15に記載の安定に形質転換されたウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサの根粒。
【請求項47】
ウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサの根粒がウキクサ属、ミジンコウキクサ属、ウォルフィエラ属、ランドルティア属及びアオウキクサ属からなる群から選択される属に由来する、請求項46に記載の安定に形質転換されたウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサの根粒。
【請求項48】
ウキクサ植物又はウキクサの根粒がコウキクサ、レムナサエ・ミニスクラ、ナンゴクウアオウキクサ、及びイボウキクサからなる群から選択される種のメンバーである、請求項47に記載の安定に形質転換されたウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞。
【請求項49】
請求項37に記載の安定に形質転換されたウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサの根粒。
【請求項50】
ウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサの根粒がウキクサ属、ミジンコウキクサ属、ウォルフィエラ属、ランドルティア属及びアオウキクサ属からなる群から選択される属に由来する、請求項49に記載の安定に形質転換されたウキクサ植物、ウキクサ植物の細胞、又はウキクサの根粒。
【請求項51】
ウキクサ植物又はウキクサの根粒がコウキクサ、レムナサエ・ミニスクラ、ナンゴクウアオウキクサ、及びイボウキクサからなる群から選択される種のメンバーである、請求項50に記載の安定に形質転換されたウキクサ植物又はウキクサ植物の細胞。
【請求項52】
(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号4に示されるプラスミノ−ゲン配列の変異体のアミノ酸配列であって、前記変異体が配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号6に示されるアミノ酸配列、及び
(d)配列番号6に示されるミクロプラスミノ−ゲン配列の変異体のアミノ酸配列であって、前記変異体が配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列が70%〜100%のウキクサ選択コドンを含む、単離された核酸分子。
【請求項53】
(a)配列番号3に示されるヌクレオチド配列、及び
(b)配列番号5に示されるヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項49に記載の核酸分子。
【請求項54】
安定に形質転換されたウキクサ植物であって、前記ウキクサが以下の動作可能に連結した成分、リーダー配列、プロモーター配列、プラスミノ−ゲンをコードするヌクレオチド配列、及び転写停止配列を含むDNA構築体を含み、前記リーダー配列、前記プロモーター配列及び前記停止配列がいずれもウキクサ中で機能する、ウキクサ植物。
【請求項55】
リーダー配列が配列番号2に示される配列であり、プラスミノ−ゲンをコードする配列が配列番号3に示される配列である、請求項54に記載の植物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−521834(P2007−521834A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553230(P2006−553230)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/004245
【国際公開番号】WO2005/078109
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506005466)バイオレックス インク (5)
【Fターム(参考)】