説明

ウシの乳房炎の予防・治療用組成物及びウシの乳房炎の予防・治療方法

【課題】天然物由来の有効成分を利用するウシの乳房炎の予防・治療用組成物であって、優れた効果を有するものを提供する。
【解決手段】ウシの乳房炎の予防・治療用組成物の有効成分として、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物を含有せしめる。また、ウシの乳房炎の予防・治療方法として、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物を摂取させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウシの乳房炎の予防・治療用組成物及びウシの乳房炎の予防・治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳牛の乳房炎は、生乳生産に直接関与する疾病であり、酪農家にとって、直接的に間接的に経済的損出をきたす問題である。また羅患により、乳量の減少、乳質の低下をきたすなど生乳の品質に大きな影響を与える。出荷において、バルク乳の体細胞数が所定の値を超えるとペナルティの対象となりの経済的負担がある。また、酪農家は、搾乳の手順や順番を変えたり、別搾りを行ったりと業務の煩雑化による労働負担の増加も発生する。出荷停止の場合は、停止による損出だけではなく、生乳の廃棄にかかるコストも加算される。
【0003】
治療した場合は、治療費の加算、さらに治療困難牛の場合は廃用費用などに、酪農家に最も大きな経済的被害を与える病気である。
【0004】
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所動物衛生研究成果情報 第6号(平成18年度)によると、北海道の酪農家での乳房炎による損出は年間100億円という試算も出ている。
【0005】
さらに、乳房炎羅患牛は、他の疾病に罹りやすいといったウシの健康被害という問題もある。実際に、乳房炎による死廃頭数は全死廃頭数の上位を占め、また乳牛の病傷事故原因でも乳房炎は全体の約30%を占めている。
【0006】
したがって、酪農家にとって乳牛の乳房炎の予防・治療対策は、極めて重要な問題となっている。
【0007】
治療方法としては、抗生剤による治療があるが、一度投与すれば抗生剤の体内残留という問題で生乳の出荷制限を受けるので、治療期間中は生乳の出荷ができない。また潜在的に罹患しているケースも多く、根本的な解決策となる治療方法は未だにない。
【0008】
そこで、抗生剤を利用しない天然物由来の組成物を利用して乳房炎の予防・治療を行う試みもされている。例えば、特許文献1には、パン酵母生菌又はその含有物を有効成分とすることを特徴とする家畜乳房炎予防治療組成物が開示されている。しかしながら、従来の天然物由来の有効成分を利用する乳房炎の予防・治療用組成物は、その有効性が十分とはいえなかったため、一般的にはほとんど普及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−224317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、安全かつ副作用がない状態で、乳房炎の指標の一つである体細胞数の改善(低下)をもたらすことにより乳房炎を予防し又は治療することができる、ウシの乳房炎の予防・治療用組成物並びにウシの乳房炎の予防・治療方法を提供することにある。そして、ウシにとっては、副作用がなく安全で健康被害をもたらさない、乳質の低下防止を目的とした、天然物由来の有効成分を利用する、ウシの乳房炎の予防・治療用組成物並びにウシの乳房炎の予防・治療方法を提供することにある。また、感染後の投与でも効果を発揮する、ウシの乳房炎の予防・治療用組成物並びにウシの乳房炎の予防・治療方法を提供することにある。また、安全かつ副作用がない状態で、更には抗生剤との併用でより効果の高い、ウシの乳房炎の予防・治療用組成物並びにウシの乳房炎の予防・治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物を有効成分として含有することを特徴とするウシの乳房炎の予防・治療用組成物。
[2]前記培養物は、前記微生物を培養する培地に乳酸菌もしくは死菌化された微生物を添加して前記微生物の栄養成分として資化されるように培養して得られた培養物である、上記[1]記載のウシの乳房炎の予防・治療用組成物。
[3]ウシの飼料に添加して使用される、上記[1]又は[2]記載のウシの乳房炎の予防・治療用組成物。
[4]アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物を摂取させることを特徴とするウシの乳房炎の予防・治療方法。
[5]前記培養物は、前記微生物を培養する培地に乳酸菌もしくは死菌化された微生物を添加して前記微生物の栄養成分として資化されるように培養して得られた培養物である、上記[4]記載のウシの乳房炎の予防・治療方法。
[6]アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物を添加した飼料を摂取させる、上記[4]又は[5]記載のウシの乳房炎の予防・治療方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウシの乳房炎の予防・治療用組成物、並びにウシの乳房炎の予防・治療方法によれば、ウシの乳房炎を効果的に予防し、又は治療することができる。その有効成分は、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物であるので、安全性が高く、投与しても出荷に影響を与えない。また、副作用のリスクがないためウシの健康管理の観点からも安心して使用することができる。何より、体細胞数の減少により乳房炎症状を緩和することで乳量や乳質の低下を防ぎ、生産性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】乳房炎を発症したホルスタイン種泌乳牛に対してアウレオバシジウム プルランスM-2の培養液を投与したときの乳汁中の体細胞数の変動(投与群1−6)及び乳房炎を発症していない健康なホルスタイン種泌乳牛の乳汁中の体細胞数の変動(非投与群1−13)を測定値で示す図表である。
【図2】投与群又は非投与群の各月の平均値を標準偏差とともに示す図表である。
【図3】投与群1−6の体細胞数の変動の結果を統計処理して比較した結果を示す図表である。
【図4】非投与群1−13の体細胞数の変動の結果を統計処理して比較した結果を示す図表である。
【図5】投与群1−6と非投与群1−13の体細胞数を、それぞれ8月の値を1とした時の増減値を統計処理して比較した結果を示す図表である。
【図6】投与群1−6の8月と11月の乳中の大腸菌を指数表示で示す図表である。
【図7】投与群1−6の乳中大腸菌数の変動の結果を統計処理して比較した結果を示す図表である。
【図8】投与群1−6の乳中の一般生菌数を指数表示で示す図表である。
【図9】投与群1−6の乳中の一般生菌数の変動の結果を統計処理して比較した結果を示す図表である。
【図10】投与群1−6の血中の白血球数の推移をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図11】投与群1−6の血中の桿状型好中球(St)数の推移を示す図表である。
【図12】投与群1−6の血中の桿状型好中球(St)数の変動を統計処理して比較した結果を示す図表である。
【図13】投与群1−6の血中のアルブミン量の変動をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図14】投与群1−6の血中のγGTP値の変動をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図15】投与群1−6の血中のAST/GOT値の変動をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図16】投与群1−6の血中のALT/GPT値の変動をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図17】投与群1−6の血中のクレアチニン量の変動をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図18】投与群1−6の血中の赤血球数の推移をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図19】投与群1−6の血中のヘモグロビン量の変動をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図20】投与群1−6の血中の好酸球数の推移をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図21】投与群1−6の血中の血糖値(グルコース量)の変動を示す図表である。
【図22】投与群1−6の血中の総コレステロール値の変動をその正常範囲(横軸の太線)とともに示す図表である。
【図23】投与群1−6の血中のLDLコレステロール値の変動を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のウシの乳房炎の予防・治療用組成物においては、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物(以下、「アウレオバシジウム由来培養組成物」という。)を有効成分として含有せしめる。また、本発明のウシの乳房炎の予防・治療方法においては、アウレオバシジウム由来培養組成物を、乳房炎に罹患したウシ、又はこれを予防しようとするウシに摂取させる。
【0015】
このアウレオバシジウム由来培養組成物としては、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属し、β−グルカン生産能を有する微生物(以下、「アウレオバシジウム微生物」という。)を培養した培養物そのもの、遠心分離等により菌体を分離除去した培養液、その培養液の濃縮液、その培養液の希釈液、あるいはその培養液から水分を除いた固形物等だけでなく、これらを脱塩等してβ−グルカンの含有量を高めたもの、あるいは、これらからβ−グルカンを精製したものも含まれる。また、分画していった各々の分画物を用いることもできる。
【0016】
本発明において用いられる上記アウレオバシジウム由来培養組成物は、上記アウレオバシジウム微生物を培養することにより生産されるβ−グルカンを、該培養物の質量100gに対する含有量に換算して、50〜3,000mg含有するものであることが好ましく、100〜2,000mg含有するものであることがより好ましい。
【0017】
なお、β−グルカンの含有量の決定は、例えば次のような方法で行うことができる。すなわち、培養液にアミラーゼ、アミログルコシダーゼ、プロテアーゼ等を用いて酵素処理を施し、蛋白質や、プルラン等のα−グルカンを除き、エタノール沈殿を行う。更に、ガラスフィルターでろ過し、高分子試料を得る。このとき、単糖を含む低分子物質を除くため、80%エタノールで充分に洗浄する。洗浄した高分子試料はアセトンで更に洗浄し、硫酸を加え、加水分解を行う。加水分解後、中和し、そのろ液を採取して、グルコースオキシダーゼ法によりブドウ糖を定量し、下記数式1に基づいて計算した値をβ−グルカン量とする。
数式1:β−グルカン(g/100g)=ブドウ糖(g/100g)×0.9
【0018】
また、β−グルカンの含有量の決定は、いわゆる糖鎖含有高分子物質(多糖)量として決定することもできる。この場合は、培養液にアミラーゼ、アミログルコシダーゼ、プロテアーゼ等を用いて酵素処理を施し、蛋白質や、プルラン等のα−グルカンを除き、エタノール沈殿を行う。更に、ガラスフィルターでろ過し、高分子試料を得る。このとき、単糖を含む低分子物質を除くため、80%エタノールで充分に洗浄する。洗浄した高分子試料はアセトンで更に洗浄したものの重量を測定することで糖鎖含有高分子物質(多糖)量とする。
【0019】
なお、このようにして定量されるβ−グルカンは、硫酸基、リン酸基等の官能基を有するものとして定量される。したがって、このように広義の糖鎖含有高分子物質(多糖)としてβ−グルカンを定量した場合には、上記アウレオバシジウム微生物を培養することにより生産されるβ−グルカンの含有量は、該培養物の質量100gに対する含有量に換算して、70〜5,000mg含有するものであることが好ましく、140〜3,000mg含有するものであることがより好ましい。
【0020】
本発明において用いられる上記アウレオバシジウム微生物としては、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属し、β−グルカン生産能を有する微生物であればよいが、例えば、アウレオバシジウム プルランスM−1(Aureobasidium pullulans M-1、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター受託番号FERM BP-08615)や、アウレオバシジウム プルランスM−2(Aureobasidium pullulans M-2、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター受託番号FERM BP-10014)が好適に用いられる。なお、これらの菌株が産生するβ−グルカンは、NMR測定(13CNMR :Varian社UNITY INOVA500型、1HNMR : Varian社UNITY INOVA600型)による構造解析で、グルコースがβ−1,3結合した主鎖からβ−1,6結合でグルコースが分岐した構造を有するβ−1,3−1,6−グルカンであることが明らかとなっている。
【0021】
上記アウレオバシジウム微生物の培養は、公知の方法(特開昭57−149301号公報等参照)に準じて行うことができる。すなわち、炭素源(ショ糖)0.5〜5.0質量%、N源0.1〜5.0質量%、その他微量物質(例えば、ビタミン類、無機質)を加えた培地(pH5.2〜6.0)に菌を接種し、温度20〜30℃で2〜14日間通気培養、好ましくは通気撹拌培養すればよい。β−グルカンが生成されるにしたがって培養液の粘度が上昇し、粘性の高いジェル状になる。このようにして得られる培養液には、通常、0.6〜10質量%の固形分が含まれており、該固形分中にはβ−グルカンが5〜80質量%含まれている。また、β−グルカン以外にも、例えば、リン、カリウム、マグネシウム、ビタミンC等の他の有用成分も含まれている。
【0022】
上記アウレオバシジウム微生物の培養は、また、それを培養する培養液中に死菌化された微生物をを加えて、栄養成分として資化させるようにして培養してもよい。この場合、その死菌体の培養液中への配合量は、用いる菌体の種類によっても異なるが、通常、100個/mL(培養液)〜100兆個/mL(培養液)程度であることが好ましい。微生物の死菌化は加熱殺菌等によって行うことができる。
【0023】
上記死菌化された微生物として用いる微生物としては、窒素源等のアウレオバシジウム微生物の栄養源を含むものであれば特に制限はないが、例えば乳酸菌や酵母などが挙げられる。乳酸菌としては、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシューム(E.fecium)ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidphilus)、ラクトバチルス・ガセリ(L.gasseri)、ラクトバチルス・マリ(L.mali)、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L.buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(L.casei)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L.johnsonii)、ラクトバチルス・ガリナラム(L.gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L.amylovorus)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L.rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L.kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L.crispatus)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptcoccus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)等のラクトコッカス属細菌、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(B.adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B.catenulatum)等のビフィドバクテリウム属細菌、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・コアグランス(B.coagulans)等のバチルス属細菌、クロストリジウム・ブチリカム(Clostoridium butilicum)等のクロストリジウム属細菌、などを用いることができる。
【0024】
酵母としては、不完全菌類も含み、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullans)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・インタメディウス(Saccharomyces intemedius)、サッカロマイセス・ヴァリドウスSaccharomyces validus)、サッカロマイセス・エリプソイデウス(Saccharomyces ellipsoideus)、サッカロマイセス・マリリスラー(マリーリスラー)(Saccharomyces mali risler)、サッカロマイセス・マンシュリカス(Saccharomyces mandschuricus)サッカロマイセス・フォルデルマニ(Saccharomyces Vordermannii )、サッカロマイセス・ペーカー(Saccharomyces Peka)、サッカロマイセス・シアシング(Saccharomyces shasshing)、サッカロマイセス・ピリフォルミス(Saccharomyces piriformis)、サッカロマイセス・アナメンシス(Saccharomyces anamensis)、サッカロマイセス・カルティラギノースス(Saccharomyces cartilaginosus)、サッカロマイセス・アワモリ(Saccharomyces Awamori)、サッカロマイセス・バタタエ(Saccharomyces Batatae)、サッカロマイセス・コレアヌス(Saccharomyces Coreanus)、サッカロマイセス・ロブストウス(Saccharomyces robustus)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces Carlsbergensis)、サッカロマイセス・モナセンシス(Saccharomyces Monacensis)、サッカロマイセス・マルキシアヌス(Saccharomyces Marxianus)、ザイゴサッカロマイセス(チゴサッカロマイセス)・マヨール(Zygosaccharomyces major)、サッカロマイセス・ラクティス(Saccharomyces lactis)、サッカロマイセス・ルクシー(Saccharomyces Rouxii)、ハンゼヌーラ・アノマーラ(Hansenula anomala)などを用いることができる。
【0025】
本発明においては、上記の培養によって得られる培養物をそのまま加熱又は加圧加熱殺菌して用いてもよく、遠心分離等により菌体を分離除去した後、この培養液を殺菌して用いてもよい。また、必要に応じて濃縮したもの、更には乾燥したものを用いることもできる。更に、β−グルカンのみを抽出して用いることもできる。また、分画していった各々の分画物を用いることもできる。なお、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物は、増粘安定剤等の食品添加物として使用されているものであり安全性が高い。
【0026】
本発明においては、乳房炎の症状を呈するウシがその適用の対象となる。乳房炎の原因には、ブドウ球菌、レンサ球菌、大腸菌などによる感染微生物や、周産期、乳期、ストレス、栄養、年齢などの影響による宿主防御機構の異常や、搾乳管理、個体管理、飼料、畜舎構造などの飼養環境要因などが挙げられ多岐にわたり、その症状の態様も、甚急性乳房炎、急性乳房炎、慢性乳房炎などが挙げられるが、本発明においてはいずれを原因又は症状とする乳房炎であっても、これに罹患したウシの症状を改善し又は治療することができる。また、本発明においては、乳房炎の症状がみられないウシであってもその適用の対象となる。すなわち、乳房炎の予防のためにも用いることができる。
【0027】
投与すべき量は、症状の強弱、ウシの体調、年齢、投与方法・投与回数・投与時期などによって適宜決定することができる。一般的な有効投与量を例示すれば、例えば、アウレオバシジウム由来培養組成物の内容物の一つであるβ−グルカンの量で換算すると、1日およそ0.02〜200mg/kg(体重)の量で摂取する。また長期間摂取させるようにし、効果を持続的に発揮させることが好ましい。更に抗生剤との併用など従来知られた乳房炎の処置方法と併用することもできる。
【0028】
本発明においては、その一形態として、上記アウレオバシジウム由来培養組成物をウシの飼料に添加して使用し、摂取させることもできる。これによれば、ウシに給与するための特別な作業時間を割くことなく、長期間継続的に使用し、摂取させる場合にも、作業性よく行うことができる。
【実施例】
【0029】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
[製造例1]
下記のようにしてアウレオバシジウム プルランス M-2(Aureobasidium pullulans M-2)(FERM BP-10014)の培養液を調製した。
前培養液を、ショ糖1%、アスコルビン酸0.1%、米糠0.1%を含む液体培地(pH5.3)に適量接種して、25℃、72〜96時間(製造バッチによって異なる)、通気撹拌培養を行った。培養終了後、この培養液を121℃、15分間殺菌した。得られた殺菌後の培養液は、固形分およそ1.2質量%を含み、該固形分100g中のβ−グルカン含量は32.5gであった。また、培養液そのものの質量100g中に含まれる含有量に換算して、0.39g/100g含有するものであった。この培養液を以下の試験に用いた。
【0031】
[実施例1]
乳汁中の白血球および脱落した乳腺上皮細胞を総称して体細胞というが、乳房炎の病原菌に侵されると体細胞数が増加する。通常、個体の体細胞数の目標値は30万個/mL以下、正常値は10万個/mL以下とされており、30万個/mL以上の場合には乳房炎に感染している可能性が高い。そこで、乳房炎のウシの体細胞数の数字が低くなると細菌汚染の状況が改善され乳房炎の症状が改善されたとみることができるので、アウレオバシジウム培養液の経口投与が、乳房炎のウシ乳汁中の体細胞数の改善に有効かどうかを調べた。
【0032】
そのために、飼養されているホルスタイン種泌乳牛中、牛群検定成績表の体細胞数成績が30万個/mL以上の個体、6頭を供試牛とした(投与群1−6)。製造例1で調製したアウレオバシジウム培養液300mLを、直接経口投与にて1日1回午前または午後に3ヶ月間与え続けた。なお、試験は2010年8月から11月にかけて実施した。試験開始時と、試験開始1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月後の乳汁を採取し、その体細胞数をフローサイトメトリ―を利用した自動分析装置(「フォソマチックFC(Fossomatic TM FC)」FOSS社)を用いて測定した。
【0033】
その結果を表1に示す。また、図1には、後述する比較例1の非投与群の値とともに表したグラフを示し、図2には、その各月の平均値を標準偏差とともに表したグラフを示す。図3では、投与群1−6の体細胞数の変動の結果を統計処理して比較した結果を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
その結果、表1及び図1,2に示されるように、これら投与群では乳汁中の体細胞数の減少傾向が認められた。すなわち、投与群6頭の平均で投与開始時は、1883×10個/mL、投与1ヶ月後には、747.2×10個/mL、投与2ヶ月後には、664.2×10個/mL、投与3ヶ月後には、471.8×10個/mLと、投与開始時の値と比較すると4分の1にまで減少していた。(表1)また個別にみると、投与群4は投与開始時には、5221×10個/mLあったものが1ヶ月後には、748×10個/mLと86%の減少を示した。(表1)
尚、図3に示されるように、投与群において投与開始時と3ヶ月後の体細胞数をT検定にかけるとP<0.05の棄権率で有意差が認められた。すなわち、投与群では、体細胞数の減少が、有意差をもって認められた。(図2)
これにより、農場ではバルク乳の体細胞数の平均値が30万個/mLの値を超え、ペナルティを毎月30万円程度支払っていたが、ペナルティの支払いがなくなった。
【0036】
[比較例1]
乳房炎を発症していない健康なホルスタイン種泌乳牛の乳汁中の体細胞数の変動を、アウレオバシジウム培養液を与えない供試牛13頭について(非投与群1−13)、実施例1と同様にして調べた。
【0037】
その結果を表2に示す。また、図1には、前述した比較例1の投与群の値とともに表したグラフを示し、図2には、その各月の平均値を標準偏差とともに表したグラフを示す。
図4では、非投与群1−13の体細胞数の変動の結果を統計処理して比較した結果を示す。図5では、投与群1−6と非投与群1−13の体細胞数を、それぞれ試験開始時の値を1とした時の増減値を統計処理して比較した結果を示す図表である。
【0038】
【表2】

【0039】
その結果、表2及び図1,2に示されるように、これら非投与群では乳汁中の体細胞数の増加傾向が認められた。すなわち、非投与群13頭の平均で試験開始時期には、平均値169×10個/mLだったものが、3ヶ月後には、557×10個/mLと増加している。個別にみても、非投与群4は、開始時の63×10個/mLが3ヶ月後には1048×10個/mLと16.6倍の増加。非投与群8は、開始時の329×10個/mLが1504×10個/mLと4.5倍の増加。非投与群10は開始時の34×10個/mLがの3ヶ月後には、1276×10個/mLと37.5倍の増加となった。(表2)
また、図4に示されるように、非投与群において試験開始時と3ヶ月後の試験終了時の体細胞数をT検定にかけるとP<0.01の棄権率で有意差が認められた。すなわち、非投与群では、体細胞数の増加が有意差を持って認められた。(図4)
図5では、投与群1−6と非投与群1−13の体細胞数について、それぞれ試験開始時の値を1とした時の増減値を、マンホイットニーのU検定を用いて、投与群と非投与群を比較している。その結果、P<0.05の棄権率で有意差が認められた。すなわち、非投与群の体細胞数の増加は、投与群と比較して有意に高いことがわかった。(図5)
一般的に、夏から秋にかけての環境の要因は、自然に改善され、体細胞数の改善がみられるが、ここではほぼ全てのウシで悪化する傾向にあり、当該比較例の試験期間の環境要因が非常に厳しいものであったことが推察された。
【0040】
[試験例1]
上記実施例1の投与群1−6について、投与開始前と投与3ヶ月後に、乳汁中の大腸菌数を食品衛生法指針に基づきEC培地発酵管法で測定した。その結果を、表3及び図6に示す。また、図7に投与群1−6の乳中大腸菌数の変動の結果を、統計処理を用いて比較した。
【0041】
【表3】

【0042】
その結果、投与開始時には6群の平均値は、781,476CFU/100mLであったが、3ヶ月後には、778CFU/100mLと減少していた。投与群1、投与群2、投与群4は、投与3ヶ月後の値が検出限界以下まで減少していた。(表3)
また、T検定の結果、投与群の投与3ヶ月後の大腸菌数は、開始時の大腸菌数と比較して、P<0.05の棄権率で有意差が認められた。すなわち、投与群において、大腸菌数は有意差をもって減少していた。(図7)
【0043】
[試験例2]
上記実施例1の投与群1−6について、投与開始前と投与3ヶ月後に、乳汁中の一般生菌数を食品衛生法指針に基づき標準寒天平板培養法で測定した。その結果を、表4及び図8に示す。また、図9に投与群1−6の乳中一般生菌数の変動の結果を、統計処理を用いて比較した。
【0044】
【表4】

【0045】
その結果、投与開始時には6群の平均値9,875,280CFU/mLだったものが、投与3ヶ月後には、330,650CFU/mLと減少していた。(表4)
また、T検定の結果、投与群の11月の一般生菌数は、8月の一般生菌数と比較して、P<0.05の棄権率で有意差が認められた。すなわち、投与群において、一般生菌数は有意差をもって減少していた。(図9)
【0046】
[試験例3]
上記実施例1の投与群1−6についてその試験期間中の1ヶ月ごとに、白血球数と、白血球のうち、炎症により数値が上昇するといわれている血中の桿状型好中球(St)を測定した。白血球数は、DC検出法にて測定した。その結果を表5と図10に示す。桿状型好中球(St)は、自動血球分類装置及び鏡検法により調べた。その結果を表6と図11に示す。
また、図12には、投与群1−6の血中の桿状型好中球(St)数の変動を統計処理して比較した結果を示す。
【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
表5、図10は、投与群1−6の白血球数の変動を示している。正常範囲は、5.87〜9.75×10/μLであり、各月の平均値は、投与開始時には7.2×10/μL、投与1ヶ月後は7.7×10/μL、投与2ヶ月後は7.1×10/μL、投与3ヶ月後は6.9×10/μLと正常範囲内で推移していた。(図10)
表6、図11に示されるように、炎症により数値が上昇するといわれている桿状型好中球(St)数は、投与開始時には、平均値558×10個/μLであったが、投与3ヶ月後には、平均値289×10個/mLに下がっていた。(表6)
また、T検定の結果、投与群の投与3ヶ月後での桿状型好中球(St)数は、投与開始時の値と比較して、P<0.05の棄権率で有意差が認められた。すなわち、投与群において、桿状型好中球(St)数は有意差をもって減少していた。(図12)
尚、図10に示されているように、白血球総数の減少は見られず、白血球の中でも、炎症の影響で数値が上昇する桿状型好中球(St)数が減少していた。(図10、図11)
【0050】
[試験例4]
上記実施例1の投与群1−6について、副作用の有無を確認するため、その試験期間中の1ヶ月ごとに、血液中の生化学検査項目について調べた。アルブミンはBCG法で測定した。γGTP、AST/GOT、ALT/GPTはJCCLS-SOP法で測定した。クレアチニンはJaffe変法及び酵素法で測定した。赤血球は電気抵抗検出法で測定した。ヘモグロビンはSLS−Hb法で測定した。好酸球はDC法で測定した。血糖価(グルコース量)は酵素法で測定した。総コレステロール、LDLコレステロールは酵素法で測定した。その結果を図13〜21に示す。各測定値の正常範囲は、「家畜共済における臨床病理検査要領」(農林水産省経営局)での値を参考にした。
【0051】
下記表7及び図13には、投与群1−6の血中のアルブミンの値を示す。
【0052】
【表7】

【0053】
下記表8及び図14には、投与群1−6の血中γGTPの値を示す。
【0054】
【表8】

【0055】
下記表9及び図15には、投与群1−6の血中AST/GOTの値を示す。
【0056】
【表9】

【0057】
下記表10及び図16には、投与群1−6の血中ALT/GPTの値を示す。
【0058】
【表10】

【0059】
下記表11及び図17には、投与群1−6の血中クレアチニンの値を示す。
【0060】
【表11】

【0061】
下記表12及び図18には、投与群1−6の血中赤血球の値を示す。
【0062】
【表12】

【0063】
下記表13及び図19には、投与群1−6の血中ヘモグロビンの値を示す。
【0064】
【表13】

【0065】
下記表14及び図20には、投与群1−6の血中好酸球の値を示す。
【0066】
【表14】

【0067】
下記表15及び図21には、投与群1−6の血中グルコースの値を示す。
【0068】
【表15】

【0069】
下記表16及び図22には、投与群1−6の総コレステロールの値を示す。
【0070】
【表16】

【0071】
下記表17及び図23には、投与群1−6のLDLコレステロールの値を示す。
【0072】
【表17】

【0073】
表7、表8、表9、表10、図13、図14、図15、図16では、それぞれ投与群1−6について、主に肝機能を反映しているアルブミン、γGTP、AST/GOT、ALT/GPT値の変動を示している。
【0074】
表7、図13は、投与群1−6のアルブミン量を示している。アルブミン量の正常値は3.2〜3.4g/dLである。投与群1−6のアルブミン量の平均値は、投与開始時には、3.7g/dL、投与1ヶ月後には、3.5g/dLと正常範囲より高い値であったが、投与2ヶ月後には3.4g/dL、3ヶ月後は3.2g/dLと正常範囲に変動している。(表7)
表8、図14は、投与群1−6のγGTPの値を示している。γGTPの正常値は、6.1〜17.4U/Lである。投与群1−6の平均値は、投与開始時は31.2IU/Lであり、投与1ヶ月後は27.7IU/L、投与2ヶ月後は27.0IU/L、投与3ヶ月後は29.0IU/Lであった。(表8)
表9、図15は、投与群1−6AST/GOTの値を示している。AST/GOTは、78〜132U/Lが正常範囲とされており、投与開始時には投与群6以外は正常範囲を下回わった。この時の投与群1−6の平均値は65.0IU/Lであった。また、投与1ヶ月後の平均値は67.3IU/L、投与2ヶ月後の平均値は69.8IU/L、投与3ヶ月後の平均値は68.3IU/Lであった。投与3ヶ月後の時点では、投与群4が正常範囲であった。(表9)
表10、図16では、ALT/GPTの値を示している。ALT/GPTは、正常範囲が14〜38IU/Lである。(図16)投与群1−6のALT/GPTの平均値は、投与開始時26.8IU/L、投与1ヶ月後は23.7IU/L、投与2ヶ月は22.2IU/L、投与3ヶ月後には、25.8IU/Lであり、開始から投与開始後のいずれも正常範囲であった。(表10)
表11、図17では、腎機能を反映しているクレアチニン値の変動を示している。表11、図17に示されるように、投与群1−6のクレアチニンの平均値は、投与開始時は0.88mg/dL、投与1ヶ月後は0.93mg/dL、投与2カ月後は0.93mg/dL、投与3ヵ月後は0.92mg/dLであった。(表11)
【0075】
表12、表13、表14、図18、図19、図20では、血液の主要成分である赤血球、ヘモグロビン、好酸球値の変動を示している。
【0076】
表12、図18では、投与群1-6の赤血球数が示されている。赤血球は、正常範囲が546〜674個×10/μLである。投与群1-6の赤血球の平均値は、投与開始時が540.2×10/μLと正常範囲を下回っていたが、投与1ヶ月後に546.3×10/μL、投与2ヵ月後には560.7×10/μL、投与3ヵ月後には573.2×10/μLと平均値では正常範囲内を推移した。(表12)
表13、図19では、投与群1-6のヘモグロビン量が示されている。ヘモグロビンの正常値は、8.0〜12.6g/dLである。投与群1-6のヘモグロビンの平均値は、投与開始時が9.1g/dL、投与1ヶ月後に9.3g/dL、投与2ヵ月後には9.4g/dL、投与3ヵ月後には9.5g/dLと正常範囲内を推移した。(表13)
表14、図20には、投与群1-6の好酸球数が示されている。好酸球数は、正常範囲が0〜2,400個/μLである。投与群1−6の好酸球数の平均値は、投与開始時には、1,000個/μLであり、投与1ヶ月後には、760個/μL、投与2ヶ月後には、608個/μL、投与3ヶ月後には538個/μLであった。いずれも正常範囲内で減少していた。(表14)
【0077】
表15、図21では、投与群1−6の血中のグルコース濃度(血糖値)が示されている。投与群1−6のグルコース濃度の平均値は、投与開始時には、60.8mg/dL、投与1ヶ月後には63.5mg/dL、投与2ヶ月後には62.0mg/dL、投与3ヶ月後には61.0mg/dLであった。(表15)
【0078】
表16、表17、図22、図23は脂質代謝を反映する総コレステロールとLDLコレステロールの値を示している。
【0079】
表16、図22では、投与群1−6の血中の総コレステロール値の変動を示している。正常範囲は、80〜300mg/dLであり、投与開始時の投与群1−6の平均値は139.0mg/dLであった。投与1ヶ月後には138.0mg/dL、投与2ヶ月後には150.8mg/dL、投与3ヶ月後には153.0mg/dLであった。いずれも正常範囲であった。(表16)
表17、図23では、投与群1−6の血中LDL-コレステロール値の変動を示している。LDL-コレステロールは、泌乳後期で高くなる傾向がある。投与開始時の投与群1−6の平均値は8.8mg/dLであった。投与1ヶ月後には7.5mg/dL、投与2ヶ月後には8.8mg/dL、投与3ヶ月後には9.7mg/dLであった。(表17)
【0080】
[結果のまとめ]
上記の試験環境をとりまく状況をいえば、試験期間である2010年の夏は猛暑であり、環境的にも厳しい状況であった。2010年9月3日に農林水産省がまとめた猛暑による全国の畜産被害状況(2010年7月〜8月)でも、熱中症で死亡、廃棄した家畜は乳牛で959頭に上る。同じ牛舎内では、体細胞数が正常範囲で推移していたにも関わらず、熱中症で倒れ、そのまま廃牛になったウシも1頭いた。また、廃牛にならないまでも、抗生剤治療を施す必要が出たウシもいた。このような環境の影響で、上記比較例1のように、乳房炎を発症していない健康なホルスタイン種泌乳牛の乳汁中の体細胞数が増加する傾向を示したものと考えられた。即ち、乳房炎に影響を与える環境要因が、季節の推移により改善されていないことが示唆された。
【0081】
一方、そのように環境的には厳しい状況であったにもかかわらず、アウレオバシジウム培養液投与群においては、上記実施例1で示されたように、乳汁中の体細胞数の改善がみられた。また、上記試験例1で示されたように、乳房炎のウシの乳汁中の大腸菌による汚染は、アウレオバシジウム培養液投与によって、減少する傾向が認められた。更に、上記試験例2で示されたように、乳房炎のウシの乳汁中の一般生菌による汚染も、アウレオバシジウム培養液投与によって、減少する傾向が認められた。即ち、何らかの炎症が改善され、乳房炎が改善されたことを示唆された。
【0082】
試験例3では、乳房炎のウシの血中白血球総数には、大きな変化がないにも関わらず、炎症により数値が上昇するといわれている桿状型好中球(St)数が、アウレオバシジウム培養液投与によって、減少する傾向が認められた。
【0083】
さらに、試験例4では、乳房炎のウシの血液成分を確認したところ、生化学検査の結果、肝機能に関与するアルブミン、γGTP、AST/GOT、ALT/GPT、腎臓機能を反映しているクレアチニン、血液の主用成分である赤血球、ヘモグロビン、好酸球、その他にも健康状態の指標となるグルコース(血糖値)、また脂質代謝の指標となる総コレステロール、LDL-コレステロールのいずれも、アウレオバシジウム培養液投与により正常範囲を大きく外れるものはなく、正常範囲に収束していくことが確認された。
【0084】
よって、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物のウシへの経口投与による副作用的な悪影響は少ないものと推察された。
【0085】
以上から、アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物が、ウシの乳房炎の予防・治療において、副作用をもたらすことなく改善効果を発揮することが明らかとなった。
【0086】
上記投与群はいずれも体細胞数30万個/mL以上のウシへの投与であり、羅患後の投与で効果を発揮することが解った。本発明は、ウシの乳房炎の予防・治療において有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物を有効成分として含有することを特徴とするウシの乳房炎の予防・治療用組成物。
【請求項2】
前記培養物は、前記微生物を培養する培地に乳酸菌もしくは死菌化された微生物を添加して前記微生物の栄養成分として資化されるように培養して得られた培養物である、請求項1記載のウシの乳房炎の予防・治療用組成物。
【請求項3】
ウシの飼料に添加して使用される、請求項1又は2記載のウシの乳房炎の予防・治療用組成物。
【請求項4】
アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物を摂取させることを特徴とするウシの乳房炎の予防・治療方法。
【請求項5】
前記培養物は、前記微生物を培養する培地に乳酸菌もしくは死菌化された微生物を添加して前記微生物の栄養成分として資化されるように培養して得られた培養物である、請求項4記載のウシの乳房炎の予防・治療方法。
【請求項6】
アウレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物の培養物から得られる培養組成物を添加した飼料を摂取させる、請求項4又は5記載のウシの乳房炎の予防・治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−126657(P2012−126657A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277261(P2010−277261)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(501257370)株式会社アウレオ (2)
【Fターム(参考)】