説明

ウド抽出物を主要成分とする動脈硬化予防及び治療用組成物

【課題】動脈硬化予防及び治療用組成物を提供する。
【解決手段】伝統韓房薬剤として用いられてきたウド抽出物を主要成分とする動脈硬化予防及び治療用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈硬化、高脂血症予防及び治療用組成物に係り、さらに詳細には、伝統韓房薬剤として用いられてきたウド抽出物を主要成分とする動脈硬化または高脂血症予防及び治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の殆どの国において心血管疾患は、主要疾患及び死亡の主原因の一つとされてきている。60歳以前では、男性の略1/3に主要心血管疾患が発病し、女性は男性よりは低い略1/10が発病する。かかる心血管疾患は、年齢の増加に伴い(65歳以後では、女性も男性に略等しい心血管疾患率を見せる。)、はるかに増加する。冠状疾患のような血管疾患、卒中、再発狭窄症及び末梢血管疾患は、全世界的に死亡及び障害の主原因とされている。ダイエット及び生活方式が心血管疾患の発生を加速化する面もあるが、異常脂血症になりやすい遺伝的体質が、心血管疾患及びそれによる死亡の最も大きい要因とされている。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は主として、血しょう内のリポタンパク質が非正常的なレベルである異常脂血症と関連して発生するものと考えられている。アテローム性動脈硬化症の発病を説明するための概念は主として、コレステロールの代謝及びトリグリセリドの代謝に焦点を当てている。
【0004】
動脈硬化症は、動脈血管自体の弱化や感染による損傷、リポタンパク(lipoprotein)によるコレステロールの蓄積など様々な内因・外因によるものと知られている。動脈壁の損傷と変性を引き起こす複合的な要因が相互働いて動脈硬化の形成を促して発病させるが、危険要因のうちの高血圧、高脂血症、喫煙は独立して動脈硬化を発病させる。特に、動物性脂肪の過剰摂取によって血液中のコレステロール数値が高い高脂血症では、動脈内膜と筋肉層との間に位置する食細胞がより多くの油分を細胞質中に取り込むことから、動脈壁に脂肪が蓄積される。
【0005】
糖尿病やその他の高コレステロール血症患者では、低密度リポタンパク(LDL)が酸化して動脈血管壁の内皮細胞を損傷させ、血小板などが内壁にくっついて動脈硬化症を誘発するという、自由ラジカルと脂質過酸化物(lipid peroxide)による組織の傷害説が注目されており、このような酸化的ストレスの増加による組織の損傷が慢性合併症を誘発する主な原因とされている。
【0006】
また、Mantha等とDel Boccioの研究で、高脂肪食餌や高コレステロール食餌のような高熱量の食餌脂肪やコレステロールの摂取は、体内組織の酸化的損傷を招くと報告された。
【0007】
高脂血症(Hyperlipidemia)とは、血液中に遊離コレステロール、コレステロールエステル、リン脂質、中性脂肪などの脂肪質が異常的に増加した状態のことをいう。高脂血症はたいていそれ自体が症状を表すことはないが、血液中に脂肪成分が多いと血管壁にくっついて動脈硬化を招き、結果として冠状動脈心臓疾患や脳血管疾患、末梢血管閉鎖などにつながることがある。さらに、過度な脂肪成分は肝組織に積もって脂肪肝を誘発することもある。
【0008】
血中脂質濃度を低下させる方法としては、高脂肪食餌を抑制する食餌療法、運動療法及び薬物療法などが推奨されている。しかしながら、食餌療法や運動療法は厳格な管理及び実施が難しいことから、その効果に限界がある場合が多い。薬物療法の場合、現在まで開発された脂質濃度減少剤として胆汁酸結合樹脂、HMG−CoA還元酵素抑制剤、ネオマイシン等のようなコレステロール含量を低下させる薬剤、及びフィブリン酸誘導体、ニコチン酸及び漁油など中性脂肪含量を下げる薬剤が使用されている。しかしながら、これらの薬剤は、肝毒性、胃腸障害及び癌の発生といった副作用につながるおそれがある。
【0009】
そこで、人体に安全で且つ副作用のない動脈硬化治療剤として使用可能な天然物に対する多くの研究が行われてきた。例えば、組織培養した山参抽出物が総コレステロールなどを下げる活性があること(E.J.Lee et al.,Kor.J.Pharmacogn.,34:179−184,2003)、椎茸粉末などのコレステロール低下効果が公知された(B.K.Kim et al.,J.Korean Soc.Food Sci.Nutr.,30:510−515,2001)。
【0010】
本発明に使用された植物ウド(Aralia Continentalis)は、ウゴキ科に属する多年草で、「独活(トッカツ)」や「和羌活(ワキョウカツ)」とも呼ばれる。ウドの新芽は食用にされ、根は薬用にされている。特に、ウドの根は、解熱、強壮、頭痛、歯痛、神経痛、関節通等に効能がある。根には脂溶性成分としてジテルペン(diterpene)のピマル酸(pimaric acid)誘導体が多量含有されており、水溶性成分には、オレアノール酸(oleanoic acid)またはヘデラゲニンサポニンであるアラロシド(araloside)が含有されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、現在までウド抽出物による血中コレステロール低下及び動脈硬化予防、治療活性は報告されていない状況である。
【0012】
そこで、本発明者らは、副作用無しに動脈硬化の治療及び予防に効果を持つ天然物に対して鋭意研究したところ、ウド抽出物が血中コレステロール濃度を顕著に下げ、動脈硬化指数を顕著に下げる活性があることを見つけ、本発明を完成するに至った。
【0013】
したがって、本発明の目的は、副作用のない動脈硬化及び高脂血症予防または治療用の薬学組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、動脈硬化及び高脂血症の予防と緩和のための食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ウド抽出物を有効成分として含有する動脈硬化予防及び治療用組成物を提供する。
【0016】
本発明は、ウド抽出物を有効成分として含有するコレステロール低下組成物を提供する。
【0017】
本発明の組成物は、動脈硬化予防及び治療用の薬学組成物及び健康食品組成物を含む。
【0018】
本発明のウド抽出物は、血清中の総コレステロール数値を20%以上も減少させる効果を呈した。また、本発明のウド抽出物は、血清中の高密度リポタンパクコレステロール数値を50%以上増加させたし、血清中の中性脂肪数値を20%以上減少させた。また、本発明のウド抽出物は、血清中の低密度コレステロール数値を70%以上減少させた。なお、本発明のウド抽出物は、投与群の血清中のコレステロールの動脈硬化指数を50%以上低下させた。また、ウド投与群は、コレステロール食餌ラットにおいて肉眼で確認できる程度にコレステロール蓄積抑制効果が顕著だったし、血管壁内皮細胞と平滑筋細胞の内膜肥厚(intimal thickening)に対する抑制効果を表した。したがって、本発明のウド抽出物は、動脈硬化の予防及び治療のための医薬品または健康食品に有用に使われることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のウド抽出物は、高コレステロール食餌による動脈硬化の予防及び治療剤、高脂血症予防及び治療剤に有用である。
【0020】
なお、ウド抽出物は、動脈硬化、高脂血症を予防及び改善する食品組成物の有効成分として含有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明のウド抽出物は、ウドの葉、茎または根を、水、アルコールまたは水とアルコールとの混合溶媒で抽出する。ここで、アルコールはエタノールが好ましく、抽出方法は、当該溶媒を用いた冷浸、温浸、加熱、分画法等の通常の抽出方法とすれば良い。本発明の実施例では、熱水抽出方法で得た抽出物を使用した。
【0023】
血清中には遊離型及びエステル型のコレステロールが存在する。エステル型コレステロールにコレステロールエステルヒドロラーゼ(cholesterolester hydrolase)を反応させると、遊離型と脂肪酸とに分解され、遊離型コレステロールにコレステロール酸化酵素を反応させると、Hと4−δ−コレステノン(Cholestenone)が生成される。生成されたHペルオキシダーゼと4−アミノアンチピリン及びフェノールを同時に反応させると、酸化的縮合反応によってキノンが生成され、これを比色して血清中のコレステロールを定量した。血清中の総コレステロール数値は、正常群が65.4±23.3mg/dl、高コレステロール食餌摂取群が167.3±35.3mg/dl、ウド熱水抽出濃縮液投与群が142.1±19.5mg/dlだった(図1)。ウド熱水抽出濃縮液投与群の血清中の総コレステロール数値は、高コレステロール食餌摂取群よりも略21.6%有意に減少した。
【0024】
高密度リポタンパクコレステロール(HDL−cholesterol)は、血液中のコレステロールを肝に運搬して、血液中のコレステロール数値を下げる作用を果たす。男子のHDL−コレステロール正常範囲は、26〜66mg/dl(0.68〜1.72mM/l)であり、女のそれは30〜75mg/dl(0.78〜1.95mM/l)である。本発明者らは、硫酸デキストラン(Dextran Sulfate)と硫酸マグネシウム(Magnesuim Sulfate)を用いてLDLとVLDLリポタンパクを沈殿した後、上層に残っているHDL層のコレステロールを測定した。血清中のHDL−コレステロール数値は、正常群が39.7±8.7mg/dl、高コレステロール食餌摂取群が22.5±1.6mg/dl、ここにウド熱水抽出濃縮液を投与した群が40.7±1.5mg/dlだった(図2)。ウド熱水抽出濃縮液投与群の血清中のHDL−コレステロール数値は、高コレステロール食餌摂取群よりは略54.2%の有意な増加を見せた。
【0025】
血清中の中性脂肪であるトリグリセリド数値は、正常群が29.1±3.2mg/dl、高コレステロール食餌摂取群が46.7±3.7mg/dl、高コレステロール群にウド熱水抽出濃縮液を投与した群が29.3±5.2mg/dlだった(図3)。ウド熱水抽出濃縮液投与群の血清中のトリグリセリド数値は、高コレステロール食餌摂取群に比べて略20%有意に減少した。
【0026】
Friede−wald公式によって、血清中のLDL−コレステロール数値を求めた。血清中のLDL−コレステロール数値は、正常群17.8mg/dl、高コレステロール食餌摂取群91.5mg/dl、ウド熱水抽出濃縮液投与群23.5mg/dlであって、ウド熱水抽出濃縮液投与群は高コレステロール食餌摂取群よりも略76.2%有意に減少した(図4)。
【0027】
血清中のコレステロールの動脈硬化指数(Al:Atherosclerotic Index)を求める公式によって、各実験群の動脈硬化指数を算出した。血清中のコレステロールの動脈硬化指数は、正常群0.61、高コレステロール食餌摂取群1.54、ウド熱水抽出濃縮液投与群0.73だった(図5)。ウド熱水抽出濃縮液投与群が、高コレステロール食餌摂取群よりも動脈硬化指数が略55%有意に減少した。
【0028】
ウド熱水抽出液投与群のコレステロール食餌ラットに対するコレステロール蓄積抑制効果を解剖学的に検討した結果、血清中のコレステロールの蓄積程度は、高コレステロール食餌摂取群において多くのコレステロール蓄積が肉眼で観察された。しかしながら、高コレステロール食餌摂取群にウド熱水抽出濃縮液を投与したラットでは、正常群に近似する程度とコレステロール蓄積が顕著に抑制された(図6)。これは、ウド熱水抽出濃縮液投与が、高コレステロール食餌摂取群に対するコレステロール合成を抑制し且つ蓄積を防止する薬理活性に優れていることを示唆する。
【0029】
血管狭窄を誘発した白ねずみに対して狭窄誘発手術後1、2、4、8、12週までの狭窄程度の評価において、時間の経過とともに血腔面積の減少と内膜面積の増加が明確に確認され、8週目では血腔の面積が正常血管に比べて1/2程度となったことが確認されたし、雄性Wistar系ラットを、各群9匹を基準にしてグルーピング(grouping)を実施し、1週間の適応飼育後に実験に用いた。実験群は、正常群、対照群、ウド200mg/kg/day、400mg/kg/day、800mg/kg/dayの5グループに分けて経口投与を実施し、画像解析によって動脈区画の面積を算出した。ウド投与量の増加にしたがって血管狭窄は減少する傾向を見せ、ウド800mg/kg/day群においては対照群と比較して有意に抑制された結果が現れた(図7)。
【0030】
本発明の血清中の総コレステロールと中性脂肪含量測定結果、高コレステロール食餌摂取群よりもウド抽出液投与群において有意な減少傾向を見せた。また、血清中のLDL−コレステロール含量は、高コレステロール食餌摂取群と比較する時、ウド抽出液投与群がLDL−コレステロール含量を有意に下げる傾向があった。したがって、ウド抽出液は、高コレステロール血清脂質水準を下げるので、体内脂質代謝を改善させて体脂肪含量を下げるのに効果的であり、さらには、心血管系疾患予防に効果があると考えられる。
【0031】
また、血清中のHDL−コレステロール含量は、ウド抽出液投与群において高コレステロール食餌摂取群よりも有意に高い含量を見せた。このような血清中のHDL−コレステロール含量の増加が動脈硬化の進行を抑制または軽減する作用をし、ウド抽出液投与群の動脈硬化指数を減少させたものと見られる。
【0032】
本発明の組成物は、上記ウド抽出物に、同一または類似な機能を表す有効成分を1種以上さらに含有することができる。
【0033】
本発明の組成物は、上記ウド抽出物に、異なる機能を表す有効成分を1種以上さらに含有することができる。
【0034】
本発明の組成物は、投与のために、上述した有効成分の外に、薬剤学的に許容可能な担体を1種以上さらに含んで製造できる。薬剤学的に許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストローズ溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分のうちの1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加しても良い。また、希薄剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤をさらに添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒剤または錠剤の形に製剤化できる。さらには、当分野における適正な方法でまたはRemington’s Pharmaceutical Science(最近版)、Mack Publishing Company、Easton PAに開示されている方法を用いて、各疾患に応じてまたは成分に応じて好ましく製剤化可能である。
【0035】
本発明の組成物は、目的とする方法によって、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)したり経口投与でき、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排せつ率及び疾患の重症度等によってその範囲を様々にすることができる。一日投与量は、本発明のウド抽出物が0.1〜10mg/kgであり、好ましくは0.1〜3mg/kgであり、一日1回ないし数回に分けて投与することがより好ましい。
【0036】
本発明のウド抽出物をマウスに経口投与し、毒性実験を行った結果、経口毒性試験による50%致死量(LD50)は少なくとも2g/kg以上と現れ、安全な物質として判明された。
【0037】
本発明の組成物は、動脈硬化の予防及び治療のために単独で、または、手術、化学治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法等と併用することができる。
【0038】
本発明の組成物は、動脈硬化の改善を目的に、健康食品に添加されても良い。本発明のウド抽出物を食品添加物とする場合、当該ウド抽出物をそのまま添加する、または、他の食品または食品成分と共に使用でき、通常の方法によって適宜使用すれば良い。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)に応じて適宜決定すれば良い。一般に、食品または飲料を製造する場合には、本発明のウド抽出物が原料に対して100重量%以下、好ましくは、50重量%以下の量で添加される。一方、健康及び衛生を目的とする、または、健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、上記の場合よりも低い混合量の範囲にすれば良いが、安全性面で何らの問題もないので、有効成分は上記範囲以上の量にしても構わない。
【0039】
本発明のウド抽出物が添加される上記食品の種類には特に制限はなく、例えば、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック菓子、その他菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含めた酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常的な意味における健康食品を全て含む。
【0040】
本発明の健康飲料組成物は、通常の飲料と同様に、様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分とすることができる。ここで、天然炭水化物は、ぶどう類、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、シュークロースのようなジサッカライド、及びデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルタムのような合成甘味剤などを使用することができる。天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mlにつき通常、約0.1〜20g、好ましくは、約1〜10gとする。
【0041】
それ以外にも、本発明の組成物は、様々な営養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含有できる。その他に本発明の組成物は天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有できる。
【0042】
このような成分は独立または組み合わせで使用することができる。このような添加剤の割合は具体的に制限されないが、本発明の組成物100重量部につき0.05〜50重量部の範囲で選ばれるのが一般的である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の構成を実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、本発明の範囲が下記の実施例に記載された範囲内に限定されることはないということは、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者にとって自明である。
【0044】
ウド熱水抽出液の製造
ウドは韓国慶州の薬剤屋で購入した。ウドの茎を小切りし88gを1lの水に入れたのち、加熱マントルで3時間振盪して1mmフィルターでろ過して、水に溶けない不溶性物質は除去した。上澄み液は回転式減圧濃縮器(Rotary vacuum Evaporator)で約50%に減圧濃縮した。このようにして得られた試料を下の実験例に使用した。
【0045】
また、試験管内において、ウドの活性測定用としては、ウド熱水抽出濃縮液100mlを凍結乾燥してウド凍結乾燥粉末を得た(収率15%)。
【0046】
試薬及び機器
血清脂質含量測定には、エョンドン製薬(Yeong. Dong Pharmaceutical Corp.,韓国)キット製品を、コレステロールはデォクサン社(Deogsan、韓国)、還元型L−グルタチオン、グルタチオン還元酵素(glutathione reductase)、NADPH(β−Nicotinamide adenindin ucleotide phosphate)、キサンチン(Xanthine)、キサンチン酸化酵素(Xanthine Oxidase)などはシグマ社(Sigma、USA)の製品を使用したし、その他の一般試薬は特級品を使用した。
【0047】
実験機器は、ホモゲナイザー(homogenizer)、UV吸光器(spectrophotometer)、遠心分離器(centrifuge)、真空蒸発器(Potaryvaccum Evaporator)、インキュベーター及び実験室で使用する一般機器を使用した。
【0048】
実験例1:実験動物処置
実験動物は、3週齢の体重50〜70gの外見上健康なSprague−Dawley雌ラットをヒョチャンサイエンス(Hyochang Science、韓国)から購入後、飼育室(温度25℃、相対湿度60%)に1週間適応させて実験に使用した。各実験群は、正常対照群(normal)、食餌高コレステロール投与による動脈硬化誘発群(cholesterol)、食餌高コレステロール投与による動脈硬化誘発後のウド熱水抽出濃縮液投与群(Aralia Continentalis)に分け、それぞれ3匹ずつ分離収容した。
【0049】
実験期間の間に水と飼料(ヒョチャンサイエンス、韓国)の量は無制限に供給した。食餌コレステロールは、オリーブ油と4:1の割合で混合液を作って8週間投与することで動脈硬化症を誘導した。
【0050】
ウド熱水抽出濃縮液投与群は、食餌高コレステロール摂取群のような方法で食餌高コレステロールを投与して動脈硬化症を誘導した後、ウド熱水抽出濃縮液と水を3:7の割合で希薄して4週間投与した。全ての実験群に対して処置24時間前から水のみを供給し、禁食にした。
【0051】
動物の処置は、エーテル麻酔の下に改服した後、腹部大動脈から採血して失血死させ、一定量の腹部大動脈血管組織を摘出した。4℃状態の生理食塩水で肝門脈を通して肝を貫流して組織内の残っている血液を除去した後、肝を摘出した。摘出した肝と腹部大動脈血管組織は、生理食塩水で洗ったのちろ過紙で圧力を加えることで臓器内に残っている生理食塩水を除去したのち重さを測定し、抗酸化及び酸化的ストレス関連実験測定用試料とするために−80℃で冷凍保管した。採取した血液は、室温で30分間放置した後、3,000rpmで15分間遠心分離して血清を得、血清中の脂質含量測定用試料として使用した。
【0052】
実験例2:酵素試料の調製
肝組織の一定量を、4倍量の0.1Mりん酸カリウム緩衝液(pH 7.4)溶液を入れてホモゲナイザーを用いて磨砕均質液を製造した。この均質液を600×gで10分間遠心分離し、核及び磨砕されていない部分を除去した上澄み液を10,000×gで20分間遠心分離して上澄み液を得て−80℃で冷凍保管した。
【0053】
腹部大動脈血管組織磨砕均質液に対しても上記の方法を施した。肝組織及び腹部大動脈血管組織磨砕均質液は、脂質過酸化及びキサンチン酸化酵素、スーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼの活性度測定用試料として使用した。
【0054】
実験例3:総コレステロール含量の測定
血清中の総コレステロールは、エョンドン製薬のキットを用いて血清0.02mlに酵素溶液3mlを混合し、37℃ウォーターバスで5分間反応させた後、蒸溜水をブランク(Blank)として波長500nmで吸光度を測定した。
【0055】
血清中の総コレステロール数値は、正常群65.4±23.3mg/dl、高コレステロール食餌摂取群167.3±35.3mg/dl、ウド熱水抽出濃縮液投与群142.1±19.5mg/dlだった(図1)。ウド熱水抽出濃縮液投与群の血清中の総コレステロール数値は、高コレステロール食餌摂取群よりも略21.6%有意に減少した。
【0056】
実験例4:高密度リポタンパクコレステロール含量の測定
血清中のHDL−コレステロールは、エョンドン製薬のキットを用いて血清1mlを遠心分離用試験管に入れ、ここに沈殿試薬0.1mlを入れて混合した後、室温で5分間放置したのち10分間遠心分離して上澄み液を新しい試験管に移した。上澄み液0.02mlと酵素溶液3mlを混合した後、37℃ウォーターバスで15分間反応させた。反応が終わった後、蒸溜水をブランク(Blank)として波長500nmで吸光度を測定した。
【0057】
血清中のHDL−コレステロール数値は、正常群39.7±8.7mg/dl、高コレステロール食餌摂取群22.5±1.6mg/dl、ここにウド熱水抽出濃縮液を投与した群は40.7±1.5mg/dlだった(図2)。ウド熱水抽出濃縮液投与群の血清中のHDL−コレステロール数値は、高コレステロール食餌摂取群よりも略54.2%有意に増加した。
【0058】
実験例5:中性脂肪含量の測定
血清中のトリグリセリドは、エョンドン製薬のキットを用いて血清0.02mlと使用試薬3mlを試験管に入れて混合した後、37℃ウォーターバスで5分間反応させた。反応が終わった後、使用試薬をブランク(Blank)として波長546nmで吸光度を測定した。
【0059】
血清中のトリグリセリド数値は、正常群29.1±3.2mg/dl、高コレステロール食餌摂取群46.7±3.7mg/dl、高コレステロール群にウド熱水抽出濃縮液を投与した群は29.3±5.2mg/dlだった(図3)。ウド熱水抽出濃縮液投与群の血清中のトリグリセリド数値は、高コレステロール食餌摂取群よりも略20%有意に減少した。
【0060】
実験例6:低密度リポタンパクコレステロール含量の測定
LDL−コレステロールの濃度は、総コレステロール、HDL−コレステロール、トリグリセリド測定値からFriede−wald方式を用いて算出した。
【0061】
LDL−コレステロール=〔総コレステロール−(HDL−コレステロール+(トリグリセリド/5))〕
血清中のLDL−コレステロール数値は、正常群17.8mg/dl、高コレステロール食餌摂取群91.5mg/dl、ウド熱水抽出濃縮液投与群23.5mg/dlであって、ウド熱水抽出濃縮液投与群は高コレステロール食餌摂取群よりも略76.2%有意に減少した(図4)。
【0062】
実験例7:動脈硬化指数の測定
動脈硬化指数(Atherosclerotic Index:Al)は、LDL−コレステロール、HDL−コレステロール測定値から動脈硬化指数を算出する方式を用いて計算した。
【0063】
Al=△(LDL−コレステロール−HDL−コレステロール)/HDL−コレステロール
血清中のコレステロールの動脈硬化指数は、正常群0.61、高コレステロール食餌摂取群1.54、ウド熱水抽出濃縮液投与群0.73だった(図5)。すなわち、ウド熱水抽出濃縮液投与群が高コレステロール食餌摂取群に比べて動脈硬化指数が略55%有意に減少した。
【0064】
実験例8:ウド熱水抽出液投与群のコレステロール食餌ラットに対するコレステロール蓄積抑制効果
血管組織を解剖して肉眼で観察した。
【0065】
ウド熱水抽出液投与群のコレステロール食餌ラットに対するコレステロール蓄積抑制効果を解剖学的に検討した結果、血清中のコレステロールの蓄積程度は、高コレステロール食餌摂取群において多くのコレステロール蓄積が肉眼で観察された。しかし、高コレステロール食餌摂取群にウド熱水抽出濃縮液を投与したラットでは、正常群に近似する程度とコレステロール蓄積が顕著に抑制された(図6)。これは、ウド熱水抽出濃縮液投与が高コレステロール食餌摂取群に対するコレステロール合成を抑制し蓄積を防止する薬理活性に優れていることを示唆する。
【0066】
実験例9:ウド熱水抽出液投与群のコレステロール食餌ラットに対する血管狭窄抑制
血管組織を解剖して、血管内皮細胞及び血管平滑筋細胞をエオシン(Eosin)染色した。ラット13週齢(350g)の左側腸骨動脈部位を切開して腸骨動脈を1/3程度切った後、風船カテーテル(balloon catheter;2F size、Baxter Co.)を挿入して上部に約15〜20cm前進させて右側頚動脈部位まで挿入した。生理食塩水約0.2mlを注入してカテーテルの風船を膨らませた後、カテーテルを1〜2cm程度後退させて内皮細胞を脱離(endothelial denudation)させた。この動作を2〜3回繰り返した後、カテーテルを除去し、左側動脈を結索して血管狭窄を誘発した。一定期間生育後、動脈摘出1時間前に尾静脈にエバンスブルー(evans blue)を注入した。動脈摘出の前に、左心室にシリンジ(syringe)を挿入した後1分当り10mlの容量でPBSを100ml注入して血液中の成分をかん流(perfusion)した後、10%ホルマリン溶液100mlを注入して動脈組織をかん流固定した後、動脈を摘出して沈積固定した。摘出した動脈は3um切片を作製した後、ヘマトキシリン−エオシン(hematoxylin−eosin)液で染色し、NIHイメージ分析1.62ver.の画像解析プログラムで内膜(intima)、中膜(media)、血腔(lumen)の面積、Intima/Media ratioを各々算出して狭窄の度合を評価した。手術後1、2、4、8、12週までの狭窄度合の評価において、時間の経過とともに血腔面積の減少と内膜面積の増加が明確に確認され、8週目では血腔の面積が正常血管よりも1/2程度であることが確認された(図7)。
【0067】
統計分析
全ての実験結果は、平均±標準偏差を計算したし、各実験群間、すなわち、正常群、食餌コレステロール摂取群、食餌コレステロール摂取後ウド熱水抽出濃縮液投与群による効果の有意性は、ANOVA(one−way analysis of variance)を実施して検証したし、p<0.05水準で有意性が観察された場合、各実験群間の平均値の差に対する有意性は、Duncan’s multiple range testを用いてp<0.05水準で評価した。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ラットの血清中の総コレステロールに及ぶウド熱水抽出物の抑制効果を表すグラフ: 実験群は、Sprague−Dawley雌ラットを各5匹ずつ、正常群、動脈硬化誘導のための高コレステロール食餌摂取群、高濃度のコレステロールを摂取させて動脈硬化誘導後にウド熱水抽出濃縮液を投与した群に分けて処理した。各数値は、5匹ラットに対する平均値±標準偏差を表す。##、正常群と顕著に異なるもの(p<0.01)を表す;*、コレステロール食餌摂取群と顕著に異なるもの(p<0.05)を表す。
【図2】ラットにおいて血清HDL−コレステロール水準に及ぶウド熱水抽出物の効果を示すグラフである。
【0069】
実験群は、Sprague−Dawley雌ラットを各3匹ずつ、正常群、動脈硬化誘導のための高コレステロール食餌摂取群、高濃度のコレステロールを摂取させて動脈硬化誘導後にウド熱水抽出濃縮液を投与した群に分けて処理した。各数値は、5匹ラットに対する平均値±標準偏差を表す。#、正常群と顕著に異なるもの(p<0.05)を表す;*、コレステロール食餌摂取群と顕著に異なるもの(p<0.05)を表す。
【図3】ラットの血清トリグリセリド水準に対するウド熱水抽出物の抑制効果を示すグラフである。
【0070】
実験群は、Sprague−Dawley雌ラットを各5匹ずつ、正常群、動脈硬化誘導のための高コレステロール食餌摂取群、高コレステロール摂取後(動脈硬化誘導後)にウド熱水抽出濃縮液を投与した群に分けて処理した。各数値は、5匹ラットに対する平均値±標準偏差を表す。#、正常群と顕著に異なるもの(p<0.05)を表す;*、コレステロール食餌摂取群と顕著に異なるもの(p<0.05)を表す。
【図4】ラット血清LDL−コレステロール水準に対するウド熱水抽出物の抑制効果を示すグラフである。
【0071】
実験群は、Sprague−Dawley雌ラットを各3匹ずつ、正常群、動脈硬化誘導のための高コレステロール食餌摂取群、高コレステロールを摂取させて動脈硬化誘導後にウド熱水抽出濃縮液を投与した群に分けて処理した。各数値は、5匹ラットに対する平均値±標準偏差を表す。##、正常群と顕著に異なるもの(p<0.05)を表す;**、コレステロール食餌摂取群と顕著に異なるもの(p<0.01)を表す。
【図5】ラット動脈硬化指標水準に対するウド熱水抽出物の効果を示すグラフである。
【0072】
実験群は、Sprague−Dawley雌ラットを各3匹ずつ、正常群、動脈硬化誘導のための高コレステロール食餌摂取群、高コレステロールを摂取させて動脈硬化誘導後にウド熱水抽出濃縮液を投与した群に分けて処理した。各数値は、5匹ラットに対する平均値±標準偏差を表す。##、正常群と顕著に異なるもの(p<0.05)を表す;*、コレステロール食餌摂取群と顕著に異なるもの(p<0.05)を表す。
【図6】高コレステロール食餌ラットの体内解剖学的コレステロール蓄積に対するウド抽出液の効果を示す写真である。
【図7】バルーン施術後に一般頚動脈を切断して血管内膜が厚くなることに対するウドの効果を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウド抽出物を有効成分として含有する動脈硬化予防及び治療用薬学組成物。
【請求項2】
ウド抽出物を有効成分として含有する高脂血症予防及び治療用薬学組成物。
【請求項3】
ウド抽出物を有効成分として含有する動脈硬化予防及び改善用食品組成物。
【請求項4】
ウド抽出物を有効成分として含有する高脂血症予防及び改善用食品組成物。
【請求項5】
前記ウド抽出物は、熱水抽出物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−512501(P2008−512501A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501799(P2008−501799)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000574
【国際公開番号】WO2007/097478
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(308004870)ドングック ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コオペレーション ファンデーション (1)
【Fターム(参考)】