説明

ウレア樹脂組成物

【解決手段】分子量1000〜4000の2官能ポリオール60〜90重量部と分子量500〜3000の3官能ポリオールを40〜10重量部混合したポリオールとイソシアネート化合物からなる末端イソシアネートプレポリマーと、芳香族アミンとを含むことを特徴とするウレア樹脂組成物とすること。
【効果】手塗りが可能なもので、ウレア樹脂組成硬化物は常態強度を有し、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性がよく、機械強度保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手塗ができ、耐水性が良好で剥落防止塗材に適応できるウレア樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の剥落防止工法におけるウレア樹脂及びウレアウレタン樹脂は、分子量が小さいアミン化合物とポリイソシアネートの反応で得られ、反応速度が速く、機械強度の発現が速い、塗布厚を厚くし易く、エポキシ樹脂を用いた剥落防止の工法と違い、シートを使用しないなどの利点があった。
剥落防止工法に適用するには、風雨や日光にさらされ、水の影響、酸性雨などの酸性、下地のコンクリートのアルカリ性、直射日光の影響による熱など、これらの環境に耐えるため、耐酸、耐アルカリ、耐水性は必須条件である。
従来のウレア樹脂系剥落防止工法は反応速度の速さから、衝突混合型の機械吹付けでの作業が一般的であり、前記耐水性等は難しい課題ではなかった。一方、機械で施工できない等により手作業で塗布するには芳香族アミンを用いたウレア樹脂があるが、反応速度の遅さから耐水性、強度の発現が遅く、または発現しないという問題があった。
【0003】
コンクリート構造物表層に、シランカップリング剤配合のエポキシ樹脂プライマーの層を設け、その上に引張強度が7N/mm以上、引張破断伸びが50〜800%のポリウレタン又はポリウレアからなる0.8〜4mmの層を設けることで湿潤状態においても施工が可能で、短時間の施工で、しかも繊維シートを用いることなく形成することができる剥落防止用の表面構造体及びその構築方法が開示されている。(特許文献1)
【0004】
ポリアルキレンエーテルアミノベンゾエートの一部であるポリアルキレン基がテトラヒドロフランと3メチルテトラヒドロフランのランダム共重合体から得られるポリアルキレンエーテルポリアミンであり、ポリイソシアネート化合物、又は、末端イソシアネートプレポリマーと反応させ、ポリウレア又はポリウレタンウレア樹脂を製造とし、これらは低温液状性を有する、ポリアルキレンエーテルポリアミンを使用することにより、低温混合、常温硬化を可能とし、作業性及び樹脂の物性が改良されたポリウレア、あるいはポリウレタンウレアのエラストマーの製造方法が開示されている。(特許文献2)
【特許文献1】特開2005−213842号公報
【特許文献2】特開平6−271640号公報
【特許文献3】特開昭63−202612公報
【特許文献4】特開平1−121380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、手塗用ウレア樹脂組成物において、硬化物の耐水性、耐酸性、耐アルカリ性を有するウレア樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、分子量1000〜4000の2官能ポリオール60〜90重量部と分子量500〜3000の3官能ポリオールを40〜10重量部混合したポリオールとイソシアネート化合物からなる末端イソシアネートプレポリマーと、芳香族アミンとを含むことを特徴とするウレア樹脂組成物であり、手塗することができ、硬化物の耐水性、耐酸性、耐アルカリ性がよい。
【0007】
請求項2の発明は、上記ウレア樹脂の硬化物が、50℃水浸漬30日後の強度保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載のウレア樹脂組成物であり、手塗することができ、耐水性がよい。
【0008】
請求項3の発明は、上記ウレア樹脂の硬化物が、40℃10%硫酸浸漬30日後の強度保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1或いは2いずれか一つに記載のウレア樹脂組成物であり、手塗することができ、硬化物の耐酸性がよい。
【0009】
請求項4の発明は、上記ウレア樹脂の硬化物が、40℃10%水酸化ナトリウム水溶液浸漬30日後の強度保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一つに記載のウレア樹脂組成物であり、手塗することができ、硬化物の耐アルカリ性がよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、分子量1000〜4000の2官能ポリオール60〜90重量部と分子量500〜3000の3官能ポリオールを10〜40重量部混合したポリオールとイソシアネート化合物からなる末端イソシアネートプレポリマーと、芳香族アミンとを含むことを特徴とするウレア樹脂組成物とすることで、手塗りが可能となり、硬化物の耐水性、耐酸性、耐アルカリ性がよく、機械強度保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は手塗り可能なウレア樹脂組成物で、剥落防止等に適応できる初期強度とその経時劣化を防ぐ、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性を有するものである。
【0012】
ウレア樹脂
本発明のウレア樹脂は下記末端イソシアネートプレポリマーと芳香族アミンを当量比で アミン:イソシアネート=0.5〜0.99:1.0の範囲で混合することで得られる。好ましくは0.6〜0.8:1.0が良好な機械強度が得られる。
【0013】
末端イソシアネートプレポリマー
2官能、3官能のポリオールを混合したものと通常ポリウレタンエラストマー製造に使用されているポリイソシアネートとの反応によって得られる。
ポリオールの種類はポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ひまし油変性ポリオールなどが上げられ、いずれの種類のものでも範囲内の分子量のものであれば2種類以上混合して使用しても良い。
分子量1000〜4000、好ましくは分子量1500〜2500の2官能ポリオールと、分子量500〜3000好ましくは分子量700〜2000の3官能のポリオールを、2官能:3官能=60〜90:40〜10で混合し、2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と反応させ末端イソシアネートプレポリマーとする。前記ポリオールは2官能、3官能とも所定の分子量より小さいと増粘し、手塗作業を難しくし、また大きいと硬化までの時間を要することとなる。
【0014】
前記末端イソシアネートプレポリマーに用いるイソシアネート化合物は通常ポリウレタンエラストマー製造に使用されているイソシアネート化合物でよく、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、トリス(6−イソシアネートヘキシル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの付加体、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)及びこれら2,4−TDIと2,6−TDIの混合物、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、キシレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジトルエン−4,4′−ジイソシアネート(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(TTI)等があげられる。
【0015】
芳香族アミン
本発明に用いる芳香族アミンは、分子内に芳香環を有することを特徴とし、特に芳香環とアミノ基が直接結合しているアミンが可使時間を長くできるもので、特許文献3に記載されるジアミノジフェニルエーテル系芳香族ポリアミンがあげられる。市販品にエラストマー1000P(イハラケミカル(株)、商品名)、VERSALINKP−1000(エアプロダクツジャパン(株)、商品名)、ポレアSL100A(イハラケミカル(株)、商品名)等がある。さらに特許文献4に示すものは結晶化し難く作業上好ましい。
【0016】
希釈剤
希釈剤は作業性の改善のために使用される場合がある。
希釈剤としては、ベンジルアルコール、ジオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
【0017】
充填剤等
物性向上と作業性調整、接着剤の粘度調整、揺変性付与等のために充填剤を使用することがある。重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、珪酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、微粉末チタン、硅砂、クレー、タルク、微粉末シリカなどが例として挙げられる。
また、一般に用いられている消泡剤、接着助剤、老化防止剤、安定剤などの添加剤を必要に応じて含有使用することができる。
次に、実施例、比較例をあげ、詳細を示す。
【0018】
以下に末端イソシアネートプレポリマーの合成例と実施例比較例をまた表1に結果を記載する。
以下 末端イソシアネートプレポリマーをプレポリマーとする。
【0019】
プレポリマー1
エクセノール2020(旭硝子(株)、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量2000、2官能、水酸基価56)を50重量部、エクセノール903(旭硝子(株)、商品名、グリセリン系ポリオール、分子量1500、3官能、水酸基価109)を10重量部混合し、ミリオネートMT(日本ポリウレタン(株)、商品名、4,4′−MDI、NCO含有率は33.6%)を40部加え、60℃で3時間混合攪拌し、プレポリマー1を合成した。
【0020】
プレポリマー2
プレミノールPML−4002(旭硝子(株)、商品名、ポリエーテル系ポリオール、分子量4000、2官能、水酸基価45)52重量部、アデカポリエーテルG1500((株)ADEKA、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量1500、3官能、水酸基価109)を13重量部混合し、ミリオネートMTを35部加え60℃で3時間混合攪拌し、プレポリマー2を合成した。
【0021】
プレポリマー3
アデカポリエーテルP1000((株)ADEKA、商品名、ポリプロピレンポリオール、分子量1000、2官能、水酸基価110)を36重量部、アデカポリエーテルG3000B((株)ADEKA、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量3000、3官能、水酸基価56)を24重量部混合し、ミリオネートMTを40部加え60℃で3時間混合攪拌し、プレポリマー3を合成した。
【0022】
プレポリマー4
アデカポリエーテルP2000((株)ADEKA、商品名、分子量2000、2官能、水酸基価56)を55重量部、アデカポリエーテルG700((株)ADEKA、商品名、分子量700、3官能、水酸基価225)を5重量部混合し、ミリオネートMTを40部加え60℃で3時間混合攪拌し、プレポリマー4を合成した。
【0023】
プレポリマー5
クラレポリオールP1010((株)クラレ、商品名、ポリエステルポリオール、分子量1000、2官能、水酸基価110)44重量部、URIC H−30(伊藤製油(株)、商品名、ひまし油変性ポリオール、分子量約500、2.7官能、水酸基価161)を11重量部、ミリオネートMTを45部加え60℃で3時間混合攪拌し、プレポリマー5を合成した。
【0024】
プレポリマー6
アデカポリエーテルP2000を60重量部とミリオネートMTを40部加え、60℃で3時間混合攪拌し、プレポリマー6を合成した。
【0025】
プレポリマー7
エクセノール4030(旭硝子(株)、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量4000、3官能、水酸基価42)を65重量部とミリオネートMTを35部加え60℃で3時間混合攪拌し、プレポリマー7を合成した。
【0026】
プレポリマー8
アデカポリエーテルP2000を30重量部とクラレポリオールP2010((株)クラレ、商品名、ポリエステルポリオール、2官能、水酸基価56)30重量部を混合し、ミリオネートMTを40部加え60℃で3時間混合攪拌し、プレポリマー8を合成した。
【実施例1】
【0027】
プレポリマー1を50重量部と、エラストマー1000P(イハラケミカル(株)、商品名、アミン価90.6)を50重量部を混合し実施例1のウレア樹脂組成物とした。
【実施例2】
【0028】
プレポリマー2を50重量部と、VERSALINKP−1000(エアプロダクツジャパン(株)、商品名、アミン価90.6)50重量部を混合し反応させたものを実施例2のウレア樹脂組成物とした。
【実施例3】
【0029】
プレポリマー3を50重量部とポレアSL100A(イハラケミカル(株)、商品名、アミン価90.6)を50重量部を混合し反応させたものを実施例3のウレア樹脂組成物とした。
【実施例4】
【0030】
プレポリマー1をプレポリマー4に変えた以外は実施例1と同じくし、それを実施例4のウレア樹脂組成物とした。
【実施例5】
【0031】
プレポリマー1をプレポリマー5に変えた以外は実施例1と同じくし、それを実施例5のウレア樹脂組成物とした。
【0032】
比較例1
プレポリマー1をプレポリマー6をに変えた以外は実施例1と同じくし、比較例1のウレア樹脂組成物とした。
【0033】
比較例2
プレポリマー1をプレポリマー7に変えた以外実施例1と同じくし、比較例2のウレア樹脂組成物とした。
比較例3
【0034】
プレポリマー1をプレポリマー8に変えた以外実施例1と同じくし、比較例3のウレア樹脂組成物とした。
比較例4
【0035】
TLM(豊国製油(株)、商品名、ひまし油ポリオール、3官能)60重量部にミリオネートMTを40重量部加え60℃で3時間混合攪拌を行ったところ、反応容器内でゲル化してしまい使用不可能であった。
比較例5
【0036】
JUX−33(アイカ工業(株)、吹付け用機械塗布用ウレア樹脂)を試験体とし比較例5とした。
【0037】
【表1】

【0038】
常態強度評価
実施例・比較例のウレア樹脂組成物は、1日後2号ダンベル型の引張試験体を作製し、23℃7日静置後万能物性試験機を用いてJISK6251に準じて引張試験を行った。5MPa以上、200%の伸びを持つものを○、それ以下なら×とした。
【0039】
温水評価、アルカリ評価、酸評価
実施例・比較例のウレア樹脂組成物、1日後2号ダンベル型の引張試験体を作製し、23℃7日静置後、それざれ、試験体を23℃50%RHで7日硬化養生した後、50℃温水、40℃10%硫酸溶液、40℃10%水酸化ナトリウム水溶液の各々の溶液に浸漬し、30日後に取り出し、万能物性試験機を用いてJISK6251に準じて引張試験を行った。
浸漬試験開始前の常態強度を比較し、各条件で80%以上強度を保持しているものについては○、それ以外は×とした。
【0040】
可使時間
初期粘度から2倍に増粘する時間を可使時間とし、可使時間が15分以上なら○、それ以下なら×とした。
【0041】
最終評価
上記、評価のすべて○のものを○、一項目でも×があるものを×とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量1000〜4000の2官能ポリオール60〜90重量部と分子量500〜3000の3官能ポリオールを40〜10重量部混合したポリオールとイソシアネート化合物からなる末端イソシアネートプレポリマーと、芳香族アミンとを含むことを特徴とするウレア樹脂組成物
【請求項2】
上記ウレア樹脂の硬化物が、50℃水浸漬30日後の強度保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1記載のウレア樹脂組成物
【請求項3】
上記ウレア樹脂の硬化物が、40℃10%硫酸浸漬30日後の強度保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1或いは2いずれか一つに記載のウレア樹脂組成物
【請求項4】
上記ウレア樹脂の硬化物が、40℃10%水酸化ナトリウム水溶液浸漬30日後の強度保持率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一つに記載のウレア樹脂組成物

【公開番号】特開2009−91414(P2009−91414A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261774(P2007−261774)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】