説明

ウレタン樹脂組成物

【課題】耐候性を低下させることなく硬化反応物の接着性および耐加水分解性を向上させたウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
(A)ポリオール、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の3成分及び/または(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の2成分を必須成分として反応させて得られるポリエステルポリオールと(D)イソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂組成物である。
ここで、湿気硬化型のウレタン樹脂組成物とするためには、(A)ポリオール、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の3成分及び/または(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の2成分を必須成分として反応させて得られるポリエステルポリオールと(D)イソシアネート化合物の反応割合が、ポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が1.1〜5.0倍モルであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウレタン樹脂組成物に関する発明である。詳しくは、接着性や耐加水分解性、耐候性に優れたウレタン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウレタン樹脂は、高活性、高反応性の原料からなり、この原料組成を変えることにより比較的容易に、硬軟剛柔等の幅広い性能を出すことができるポリマー材料であることから、フォーム、エラストマー、成型物、塗料、インキ、コーティング材料、粘接着剤、シーリング材やバインダー等の広範な用途に使用されている。特に近年、各材料に対する要求性能が高まる中、ポリエステルポリオールをはじめとするポリオールおよびイソシアネート化合物が多種多様であることから、分子設計の選択性が広いポリウレタンの利用が増加している。
【0003】
ウレタン樹脂組成物の欠点として、ウレタン結合、ポリエステルポリオールを用いた場合はエステル結合の加水分解による分子量の低下に起因するウレタン製品の強度低下や、ウレタン系接着剤等の接着力の低下がある。この加水分解を防ぐために、ポリオール、イソシアネート化合物に芳香環を導入する方法があるが、この場合、耐候性、耐熱変色が大幅に低下する問題があった。
【0004】
また、ウレタン樹脂組成物を用いたウレタン系接着剤をはじめ、粘着剤、塗料、インキ、コーティング、バインダーなどにおいて、各種被着体、特にポリオレフィンなどの低表面エネルギーの被着体に対する接着性が不十分である。この接着性を改良するために粘着付与樹脂を添加する方法が知られているが、この場合、高極性の粘着付与樹脂でなければ相溶しないため、添加できる粘着付与樹脂はロジンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂などに限定される。しかし、いずれも淡黄色を有しており、使用環境によっては変色する場合があるため、色相が重要視される用途には不適である。(特許文献1)
【特許文献1】特開平11−45158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたもので、ウレタン樹脂組成物において、耐候性を低下させることなく硬化反応物の接着性および耐加水分解性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、(C)核水添テルペンフェノール樹脂を構造中に含むことを特徴とするウレタン樹脂組成物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、(A)ポリオール、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の3成分及び/または(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の2成分を必須成分として反応させて得られるポリエステルポリオールと(D)イソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂組成物である。
ここで、湿気硬化型のウレタン樹脂組成物とするためには、(A)ポリオール、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の3成分及び/または(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の2成分を必須成分として反応させて得られるポリエステルポリオールと(D)イソシアネート化合物の反応割合が、1.1〜5.0倍モルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のウレタン樹脂組成物は、耐候性、接着性が高く、耐加水分解性も良好であることからウレタン系接着剤として好適である。さらに接着剤の他、塗料、インキ、コーティング材料、シーリング材やバインダー等としても、接着性、耐加水分解性および耐候性などの性能を活かして用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ここで、本発明を詳細に説明する。
本発明の(C)核水添テルペンフェノール樹脂について説明する。
本発明で用いられる(C)核水添テルペンフェノール樹脂とは一般的にテルペンフェノール樹脂を触媒の存在下、水素と反応させたものである。
【0009】
本発明の(C)核水添テルペンフェノール樹脂は、耐候性や、カルボン酸、カルボン酸エステル、イソシアネート基との反応性を考慮した場合、テルペン、及びフェノール由来の二重結合を全て水添した核水添テルペンフェノール樹脂が最も適しているが、耐候性を重要視しない場合は、カルボン酸、カルボン酸エステル、イソシアネート化合物との反応性のみを考慮し、樹脂中の一部のフェノール基を核水添した樹脂でも構わない。
【0010】
テルペンフェノール樹脂は、環状テルペンモノマーとフェノール類とをフリーデルクラフト触媒の存在下で反応させたものである。
【0011】
テルペンフェノール樹脂の原料のテルペンモノマーは、単環のテルペンモノマーであってもよいし、双環のテルペンモノマーであってもよい。原料である環状テルペンモノマーの具体例としては、リモネン、ジペンテン(リモネンの光学異性体)、テルピノーレン、α−ピネン、β−ピネン、テルピネン、メンタジエンなどが挙げられる。
【0012】
テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール類の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどがあげられる。
【0013】
テルペンフェノール樹脂は、例えば、テルペンモノマー1モルとフェノール類0.1〜50モルをフリーデルクラフト触媒のもとで、−10〜120℃の温度で0.5〜20時間、カチオン重合反応させて製造することが出来る。
【0014】
反応溶媒は使用しなくてもよいが、通常、芳香族系炭化水素類、アルコール類、エーテル類などの溶媒を使用してもよい。
【0015】
このようにして製造されるテルペンフェノール樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル(株)製YSポリスターS145などがあげられる。
【0016】
(C)水添テルペンフェノール樹脂は、上記テルペンフェノール樹脂を水添することにより得られる。
水添する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属またはそれらを活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの坦体上に担持したものを触媒として使用して行う方法が挙げられる。
この時、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式にすることも、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式にすることも可能であり、反応形式に特に制限はない。
【0017】
触媒の使用量は、反応がバッチ方式の場合、原料であるテルペンフェノール樹脂に対し0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜20重量%である。触媒量が0.1重量%未満では、水素化反応速度が遅くなり、一方、50重量%を超えても経済的に不適であり好ましくない。
【0018】
水添の際、反応溶媒は用いなくてもよいが、通常、アルコール類、エーテル類、エステル類、飽和炭化水素類を使用してもよい。
【0019】
水添の際の反応温度は、通常20〜300℃、好ましくは、50〜250℃である。反応温度が20℃未満であると、水素化速度が遅くなり、一方、300℃を超えると、水添物の分解が多くなり、分子量の低下、回収率の低下を招くため好ましくない。
【0020】
水添の際の水素圧は、通常5〜300kg/cm2(0.49〜29.40MPa)である。好ましくは、50〜250kg/cm2である。さらに好ましくは80〜240kg/cm2である。5kg/cm2未満であると、水素化速度が遅くなり、一方、300kg/cm2を超えると、水添物の分解が多くなるためこのましくない。
【0021】
本発明の(C)核水添テルペンフェノール樹脂の水酸基価は、10〜350mgKOH/gが好ましい。水酸基価が10mgKOH/g未満であると、イソシアネートと反応部位が少なく、耐熱性が低下するばかりか、経時のブリードアウトによる性能の低下が起こるため好ましくない。一方、350mgKOH/gを超える樹脂においては、核水添テルペンフェノール樹脂中の水酸基の数が多くなり、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、またはイソシアネートと反応させた場合、3次元的に反応するため、ゲル化、固化が起こりハンドリングの低下が起こるため好ましくない。
【0022】
本発明に用いるポリエステルポリオールは、(A)ポリオール、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の3成分及び/または(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の2成分を必須成分として、脱水縮合反応させて得る方法の他、(B)ジカルボン酸に変えて、(b)ジカルボン酸エステルを用いることにより、(A)ポリオール、(C)核水添テルペンフェノール樹脂とをエステル交換させて得てもよい。
ここで、上記脱水縮合反応およびエステル交換反応は通常の、脱水縮合反応およびエステル交換反応を使用すればよい。
また、(A)ポリオール、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の3成分の配合比率、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の2成分の配合比率は、((A)+(C)):(B)=4.0〜0.8:1.0(モル比)、あるいは(C):(B)=4.0〜0.8:1.0(モル比)が好ましい。
(A)+(C)、あるいは(C)の配合量が、(B)に対して0.8倍モル未満では、末端がカルボン酸の分子が多くなり、イソシアネート化合物との反応性が低下するため、ウレタン樹脂の分子量が上昇しないため好ましくない。また、4.0倍モルを超えると、ポリエステルポリオールの分子量が上昇しないため好ましくない。
また、(B)ジカルボン酸の代わりに(b)ジカルボン酸エステルを使用した場合も、 同様である。
【0023】
本発明の(A)ポリオールは、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(1,6−ヘキサンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)、ポリカーボネートポリオール等のポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイド共重合体、アミン変性ポリオール等のポリエーテルポリオール、その他としてアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、フェノーリックポリオール、エポキシポリオール、難燃ポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのヒドロキシ成分は単独で用いることもできるし2種以上を併用して用いることもできる。
【0024】
本発明の(B)ジカルボン酸は、または(b)ジカルボン酸エステルは特に限定されないが、(B)ジカルボン酸であれば、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4′−ジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸等、また、(b)ジカルボン酸エステルであれば、上記のジカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、ジブチルエステル、ジシクロヘキシルエステル、ジフェニルエステル、ジ(メチルフェニル)エステルが挙げられる。
これらは単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明に用いられる(D)イソシアネート化合物としては通常ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物など種々のインシアネート化合物が用いられるが、耐候性が求められる用途に適したイソシアネート化合物としては、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添MDI、水添XDI、また、これらイソシアネート化合物の誘導体が挙げられる。一方、初期の色相、光、熱による変色が問題視されない用途にはこの限りでなく、一般的に用いられているイソシアネート化合物、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、リジンジイソシアネート、ポリメリックMDI、また、これらのイソシアネート化合物の誘導体が挙げられるが特に限定されない。
【0026】
(D)イソシアネート化合物としては、その誘導体として、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネートをポリエーテルポリオール類やポリエステルポリオール類で変性したウレタン変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を使用してもよいがこれらに限定されない。
【0027】
本発明において、これらの(D)イソシアネート化合物は単独で用いることもできるし、2種以上を併用して用いることもできる。
また、本発明では、本発明の効果が現れる限りにおいて、他のポリオールを配合して使用しても良い。
他のポリオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(1,6−ヘキサンアジペート)、ポリ(プロピレンアジペート)、ポリ(メチルペンチレンアジペート):(商品名:クラレポリオールP3050、クラレ製)ポリカーボネートポリオール等のポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンオキサイド/ポリプロピレンオキサイド共重合体、アミン変性ポリオール等のポリエーテルポリオール、その他としてアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、フェノーリックポリオール、エポキシポリオール、難燃ポリオール等などがある。
(A)ポリオール、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の3成分あるいは、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の2成分を必須成分として反応させて得られるポリエステルポリオールと(D)イソシアネート化合物の反応割合は、ポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が0.8〜5.0倍モルが好ましい。
(D)の配合量が、0.8倍モル未満では、ウレタン樹脂組成物の分子量が上昇しないため、強度低下、接着力低下を引き起こすため好ましくない。また、5.0倍を超えると、未反応のイソシアネート化合物が多く残存し、接着力の低下を引き起こすため好ましくない。
特に、湿気硬化型である請求項1記載のウレタン樹脂組成物の場合、ポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が1.1〜5.0倍モルが好ましい。
【0028】
(C)核水添テルペンフェノール樹脂は、耐候性が優れ、分子中に疎水性が高いテルペン骨格を有しているため、ウレタン樹脂組成物に単独で用いることやポリエステルポリオールの原料として用いることにより、ウレタン樹脂組成物の耐候性が低下すること無く、耐加水分解性の付与が可能であり、さらに各種被着体に対する接着性が向上する。
【0029】
本発明のウレタン樹脂組成物は特に限定されないが、熱可塑性ウレタン樹脂、湿気硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型のウレタン樹脂として用いことが可能である。
【0030】
本発明のウレタン樹脂組成物には必要に応じて、反応を促進させるために、3級アミン系触媒や有機金属系触媒を用いることができる。3級アミン系触媒としては例えば、トリエチレンジアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、エチルモルホリン等が挙げられるがこれらに限定されない。また、有機金属系触媒としては例えば、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレエート、重炭酸ソーダ等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
本発明のウレタン樹脂組成物は接着剤の他、粘着剤、塗料、インキ、コーティング剤、粘着剤、シーリング材、バインダーなど接着性を必要とする用途はもちろん、優れた耐候性や耐加水分解性といった特徴を活かし、液晶表示素子用基板、カラーフィルター用基板などの光学シート、ディスプレー用緩衝材などとしても使用できる。
【0032】
本発明のウレタン樹脂組成物には必要に応じて架橋剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防ばい剤、加水分解防止剤を使用することができる。
【0033】
また、本発明のウレタン樹脂組成物を実施する際には、必要に応じて顔料や染料の着色剤、無機充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、粘着付与樹脂、可塑剤、溶剤、貯蔵安定剤、水等の成分を添加することができる。
【0034】
本発明のウレタン樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、ポリエステルポリオール、(D)イソシアネート化合物、および所望により加えられる各種添加剤を、撹拌機付きの容器、その他、ロール、ニーダー、押出し機により混合する方法が挙げられる。
また、本発明のウレタン樹脂組成物は、一液として用いる場合は空気中の水と遮断して貯蔵される場合もある。また、二液タイプとして用いてもよく、その場合は、通常イソシアネート化合物からなる組成物とヒドロキシ化合物からなる組成物との二液からなり、使用時にこの二液を混合して用いる。
【0035】
また、本発明のポリエステルポリオールは、ウレタン樹脂組成物のポリオール成分の他、ポリエステル、エポキシ樹脂の原料、その他ポリマーの改質剤としても用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0037】
(C)核水添テルペンフェノール樹脂の合成例を下記に示す。
合成例1
(テルペンフェノール樹脂B(化合物B)の合成)
温度計、撹拌装置、滴下ロートおよび冷却管を備えた内容積2リットルの4つ口フラスコを使用して、トルエン580g、触媒として塩化アルミニウム15gを仕込んだのち、75℃の温度に保持しながら攪拌し、α−ピネン(ヤスハラケミカル(株)製α−ピネン、純度95%)400g(約3モル相当)とフェノール(関東化学(株)製フェノール、純度99%)180g(約2モル相当)を2時間かけて滴下し、その後、4時間撹拌して反応させた。
次いで、該混合液を水洗し、触媒を除いた後、5mmHgの減圧条件下、最高到達温度250℃でトルエン、および未反応モノマー、低分子量化合物を蒸留により留去し、淡黄色樹脂状物のテルペンフェノール樹脂B、560gを得た。このテルペンフェノール樹脂Bの軟化点は125℃、OH価は91mgKOH/g、GPCによる数平均重量分子量は610、重量平均分子量は800、Z平均重量分子量は1020であった。
【0038】
合成例2
(核水添テルペンフェノール樹脂Aの合成)
合成例1で得られたテルペンフェノール樹脂Bを100g、シクロヘキサンを400g、および粉末状の5%パラジウム担持アルミナ触媒2.0gを仕込み、次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス10kg/cm2の圧力をかけながら導入した。そして攪拌しながら加熱し150℃となったところで、水素の圧力を80kg/cm2とし、吸収された水素を補うことで圧力を80kg/cm2に保ちながら14時間反応させ、本発明の核水添テルペンフェノール樹脂Aを100g得た。
この核水添テルペンフェノール樹脂Aの軟化点は120℃、OH価は90mgKOH/g、GPCによる数平均重量分子量は620、重量平均分子量は800、Z平均重量分子量は1000であった。また、IR分析を行ったところ(パーキンエルマー社製Spectrum One システムB型)、フェノール由来の芳香環のピークが消失していたことが確認された。
【0039】
合成例3
(ポリエステルポリオールAの合成)
エチレングリコール20gと核水添テルペンフェノール樹脂A(合成例2)80gの水酸基/アジピン酸のカルボキシル基=1/0.8(モル比)になるようにアジピン酸45gを四つ口フラスコに仕込み、減圧状態を維持しながら、最高温度250℃まで昇温し、脱水縮合反応を行った。
得られたポリエステルポリオールは重量平均分子量5,000、アセチル化法にて測定したOH価は57mgKOH/gであった。
【0040】
実施例1(湿気硬化型ウレタン樹脂組成物)
上記合成例3で得られたポリエステルポリオールAを使用して、このポリエステルポリオールAを100gとイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネート12g(イソシアネート基/水酸基のモル比率[NCO]/[OH]比が1.3となる量)を四つ口フラスコにて窒素気流下、80℃で3時間反応させウレタン樹脂組成物を得た。
このウレタン樹脂組成物を下記に示す方法で物性を評価した。
【0041】
〔接着強度〕アルミニウム板とSUS316板、またはポリプロピレンの板との間に、厚みが120μmになるように塗布し、60℃、80%RHの条件下、24時間放置後、ASTM D1002に準じて引張せん断強度を測定した。
【0042】
〔耐加水分解性〕SUS316板とアルミニウム板の間に、厚みが120μmになるように塗布し、60℃、24時間放置後、80℃の水中に7日間浸漬した。その後試験片をASTM D1002に準じて引っ張りせん断強度を測定した。
【0043】
〔耐候性〕得られた試験片をスガ試験機製キセノンウエザーメーターX75にて照射し、初期と3100時間後のイエローインデックス(YI)値を日本電色工業製COH−300Aを用いて、JIS規格のK3761に準拠して行い、YI値の差を求めた。
結果を表1に記載する。
【0044】
実施例2
上記合成例3で得られたポリエステルポリオールAを使用して、ポリエステルポリオールAを100gにヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(3量体変性タイプ)18g(イソシアネート基/水酸基のモル比率[NCO]/[OH]比が1.0となる量)を四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、30℃で混合し、硬化条件の85%RHを25%RHとした以外は実施例1と同方法にて物性を評価した。結果を表1に記載する。
【0045】
比較例1(湿気硬化型ウレタン樹脂組成物)
実施例1において使用したポリエステルポリオールAに変えてポリエステルポリオールB:平均分子量3000のポリエステルポリオール(ポリメチルペンタンチレンアジペート。クラレ製クラレポリオールP3050)を使用する以外は実施例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。得られた組成物は実施例1と同様にして物性を評価した。
結果を表1に記載する。
【0046】
比較例2
実施例2において使用したポリエステルポリオールAに変えてポリエステルポリオールBを使用する以外は実施例2と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。得られた組成物は実施例1と同様にして物性を評価した。結果を表1に記載する。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のウレタン樹脂組成物は、耐候性に優れ、接着性が高く、耐加水分解性も良好であることからウレタン系接着剤として好適である。さらに接着剤の他、粘着剤、塗料、インキ、コーティング材料、シーリング材やバインダー等としても接着性、耐加水分解性および耐候性などの性能を活かして用いることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオール、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の3成分及び/または(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の2成分を必須成分として反応させて得られるポリエステルポリオールと(D)イソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリオール、(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の3成分及び/または(B)ジカルボン酸、(C)核水添テルペンフェノール樹脂の2成分を必須成分として反応させて得られるポリエステルポリオールをと(D)イソシアネート化合物の反応割合が、1.1〜5.0倍モルである湿気硬化型の請求項1記載のウレタン樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−115348(P2008−115348A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322563(P2006−322563)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】