説明

ウレタン硬化性組成物、その硬化体、キットおよび硬化体の製造方法

【課題】
安全性および対環境性に優れると共に、ウレタン硬化性組成物の硬化速度をより大きくすること。
【解決手段】
(A)イソシアネート基含有化合物および(B)ポリオール、さらに、硬化触媒として、(C)チタニウムアルコキシド、(D)α−ヒドロキシカルボン酸エステルまたはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルを含むウレタン硬化性組成物、その硬化体およびキットとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン硬化性組成物、その硬化体、キットおよび硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基含有化合物と、ポリオールを反応させて合成される。ポリウレタン樹脂は、様々な分野で用いられており、たとえば、自動車、建築、家電を対象とした重防食、塗料、接着剤、シーリング材等として用いられている。
【0003】
ポリウレタン樹脂を製造する場合、生産性の向上や特性の向上を目的として、ポリオールとイソシアネート基含有化合物との反応を促進する硬化触媒を用いることが多い。硬化触媒としては、第3級アミン触媒、あるいは金属系触媒(水銀系触媒、鉛系触媒、亜鉛系触媒および錫系触媒等)が知られており、特に、有機錫系触媒の1つであるジラウリン酸ジブチル錫が高活性のため多用されている。
【0004】
しかし、上記の触媒は、人体への安全性や環境への負荷が大きい点で問題視されており、これに代わる触媒が要望されている。代替触媒としては、たとえば、チタニウムアルコキシド系触媒が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−333510号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チタニウムアルコキシドは、硬化触媒としての機能を有する金属アルコキシドとして既に知られている。チタニウムアルコキシドの通常環境下での最終分解生成物は、二酸化チタニウムである。二酸化チタニウムは、食品添加物や、化粧品にも使用される安全性の高い化合物である。しかし、チタニウムアルコキシド系触媒を用いると、錫系触媒を用いた場合と比べて、硬化速度が小さくなるため、硬化速度のより大きな触媒を含有するウレタン硬化性組成物が求められている。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、安全性および対環境性に優れると共に、ウレタン硬化性組成物の硬化速度をより大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者らは、チタニウムアルコキシドを硬化触媒のベースとして鋭意研究を重ねた結果、イソシアネート基含有化合物と、ポリオールに、硬化触媒としてチタニウムアルコキシドおよびα−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルを混合することにより、組成物の硬化時間を短縮することに成功した。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)イソシアネート基含有化合物、(B)ポリオール、さらに、硬化触媒として(C)チタニウムアルコキシド、および(D)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルを含むウレタン硬化性組成物である。
【0010】
さらに、(D)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルは、クエン酸エステルであり得る。
【0011】
さらに、(C)チタニウムアルコキシドは、チタニウムテトラオルソエトキシドであり得る。
【0012】
また、別の本発明は、上述のウレタン硬化性組成物を硬化して成る硬化体である。
【0013】
また、別の本発明は、(A)イソシアネート基含有化合物、(B)ポリオール、さらに、硬化触媒として、(C)チタニウムアルコキシドおよび(D)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステル、を含むキットであって、(A)イソシアネート基含有化合物と、(B)ポリオールとを分離し、(C)チタニウムアルコキシドが(D)ヒドロキシカルボン酸エステルと共に(A)および(B)の少なくとも一方に含まれる、または、(C)チタニウムアルコキシドが、(A)および(B)とは分離されているキットとしている。
【0014】
また、別の本発明は、イソシアネート基含有化合物にチタニウムアルコキシドおよびα−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルを混合する第1の混合ステップと、第1の混合ステップで得られた混合溶液中にポリオールを混合する第2の混合ステップと、第2の混合ステップで得られた組成物を硬化させる硬化ステップと、を有する硬化体の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安全性および対環境性に優れると共に、ウレタン硬化性組成物の硬化速度をより大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係るウレタン硬化性組成物の調製方法の流れを示すフローチャートである。
【図2】実施例1〜9,比較例1および比較例2の条件にて得られた各ウレタン硬化性組成物が硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図3】実施例10〜14,比較例3の条件にて得られた各ウレタン硬化性組成物が硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図4】実施例1〜4,比較例1の条件にて得られた各硬化体の引張強さを示すグラフである。
【図5】実施例6〜9,比較例2の条件にて得られた各硬化体の引張強さを示すグラフである。
【図6】実施例1〜4,比較例1の条件にて得られた各硬化体の伸びを示すグラフである。
【図7】実施例6〜9,比較例2の条件にて得られた各硬化体の伸びを示すグラフである。
【図8】実施例22,比較例11,12の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を所定時間保存し、ポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図9】実施例23,比較例13,14の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を所定時間保存し、ポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図10】実施例24,比較例15,16の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を所定時間保存し、ポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図11】実施例25,比較例17,18の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を所定時間保存し、ポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図12】実施例26,比較例19,20の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を所定時間保存し、ポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図13】実施例27,比較例21,22の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を所定時間保存し、ポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図14】実施例28,比較例23,24の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を所定時間保存し、ポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図15】実施例29,比較例25,26の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を所定時間保存し、ポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図16】実施例30〜33,比較例27の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液にポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【図17】実施例34〜38,比較例28の条件にて得られた硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液にポリオールを混合してから硬化するまでに要した時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明のウレタン硬化性組成物、その硬化体、キットおよび硬化体の製造方法の好適な実施の形態について説明する。
【0018】
1.ウレタン硬化性組成物
本実施の形態に係る硬化性組成物は、以下の(A)、(B)、(C)および(D)を主に含む。
(A)イソシアネート基含有化合物
(B)ポリオール
(C)チタニウムアルコキシド
(D)ヒドロキシカルボン酸エステル
以下、上記(A)〜(D)についてそれぞれ説明する。
【0019】
(A)イソシアネート基含有化合物
この実施の形態で使用可能なイソシアネート基含有化合物としては、ポリウレタンを合成可能な公知の化合物を用いることができる。特に、ポリオールと相溶性が良く、常温で硬化可能なイソシアネート基含有化合物が好適に用いられる。また、イソシアネート基含有化合物は、分子内にNCO基を2個以上有するポリイソシアネート基含有化合物であれば特に好適に用いることができる。たとえば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;上記各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
これらのうち、イソシアネート基含有化合物として、XDI、TDI、MDI、TMHDI、NDI、HXDI、H12MDI、TMXDI、HDI、IPDIおよびNBDIは、入手が容易であるため好適に用いられる。その中でも、XDI、TDI、MDI、TMXDIおよびHDIは、比較的安価であるためより好ましい。また、XDI、TDIおよびMDIは、反応性が高いため好ましい。本発明においては、このような理由から好適に例示される各種ポリイソシアネート基含有化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
硬化性組成物中のポリオールとイソシアネート基含有化合物の配合量は、特に限定するものではないが、イソシアネートインデックス(イソシアネートインデックスは、[ポリオールが有する(−OH)基の数]/[イソシアネート基含有化合物中のイソシアネート基(−NCO)の数]である。)は、通常、0.5〜2.5の範囲であり、さらに好ましくは、0.7〜1.5の範囲である。イソシアネートインデックスが0.7以上の場合には、架橋密度が大きくなり、樹脂強度が高くなる。イソシアネートインデックスが1.5以下の場合には、未反応のイソシアネート基が残存しにくくなるため、硬化体の物性が変化しにくい。
【0022】
(B)ポリオール
この実施の形態で用いるポリオールとしては、2つの水酸基を含有するジオール、若しくは3以上の水酸基を含有するポリオールであれば特に限定されずに用いることができる。たとえば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、アクリル系、ポリブタジエン系若しくはポリオレフィン系等のポリオール、カプロラクトン変性ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、エポキシ変性ポリオール、アルキド変性ポリオール、ひまし油、フッ素含有ポリオール等のポリオールを単独で用いてもよいし、これらを併用しても良い。ポリオールの平均分子量は、200〜10000の範囲のものが好ましい。ポリオールの平均分子量が200以上では、硬化体の柔軟性を高くすることができる。ポリオールの平均分子量が10000以下の場合には、硬化体の硬度を高くすることができる。
【0023】
ここで、ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチレングルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール類、エチレンジアミン等の脂肪族アミン化合物類、トルエンジアミン、ジフェニルメタンー4,4−ジアミン等の芳香族アミン化合物、エタノールアミンおよびジエタノールアミン等のようなアルカノールアミン類のような少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド若しくはポリオキシテトラメチレンオキサイドに代表されるアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
【0024】
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンおよびその他の低分子ポリオールなどから選ばれる少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の低分子脂肪族カルボン酸およびオリゴマー酸などから選ばれる少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトンまたはバレロラクトン等の開環重合体;等が挙げられる。
【0025】
その他のポリオールとしては、たとえば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオールが挙げられる。
【0026】
(C)チタニウムアルコキシド
チタニウムアルコキシドは、いわゆる硬化触媒の1つである。チタニウムアルコキシドとしては、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラアリルオキシド、チタニウムテトラn−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウムテトラsec−ブトキシド、チタニウムテトラt−ブトキシド、チタニウムテトラn−ペンチルオキシド、チタニウムテトラシクロペンチルオキシド、チタニウムテトラヘキシルオキシド、チタニウムテトラシクロヘキシルオキシド、チタニウムテトラベンジルオキシド、チタニウムテトラオクチルオキシド、チタニウムテトラキス(2−エチルヘキシルオキシド)、チタニウムテトラデシルオキシド、チタニウムテトラドデシルオキシド、チタニウムテトラステアリルオキシド、チタニウムテトラブトキシドダイマー、チタニウムテトラキス(8−ヒドロキシオクチルオキシド)、チタニウムジイソプロポキシドビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)、チタニウムビス(2−エチルヘキシルオキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)、チタニウムテトラキス(2−クロロエトキシド)、チタニウムテトラキス(2−ブロモエトキシド)、チタニウムテトラキス(2−メトキシエトキシド)、チタニウムテトラキス(2−エトキシエトキシド)、チタニウムブトキシドトリメトキシド、チタニウムジブトキシドジメトキシド、チタニウムブトキシドトリエトキシド、チタニウムジブトキシドジエトキシド、チタニウムブトキシドトリイソプロポキシド、チタニウムジブトキシドジイソプロポキシド、チタニウムテトラフェノキシド、チタニウムテトラキス(o−クロロフェノキシド)、チタニウムテトラキス(m−ニトロフェノキシド)、チタニウムテトラキス(p−メチルフェノキシド)、チタニウムテトラキス(トリメチルシリルオキシド)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数を用いても構わない。これらの中でも、炭素数1〜12のアルコキシド基を含むチタニウムアルコキシドが好ましく、炭素数1〜6のアルコキシド基を含むチタニウムアルコキシドがより好ましい。また、これらのオリゴマーも使用することができる。チタニウムアルコキシドの好ましい例は、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラオルソエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、またはチタニウムテトラブトキシドであり、その中でもチタニウムテトラエトキシドが好ましい。取り扱い容易さ、入手容易さおよび硬化性の観点からは、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、チタニウムテトラt−ブトキシドが好ましい。
【0027】
チタニウムアルコキシドは、ポリオール100質量部に対して、0.005〜5質量部、好ましくは0.01〜2質量部、さらに好ましくは、0.01〜1質量部の範囲で組成物中に含まれるのが好ましい。なお、ウレタン硬化性組成物は、混合されるポリオールとジイソシアネート基含有化合物との組み合わせにより硬化速度に著しい差があるため、チタニウムアルコキシドの必要量は、ウレタン硬化性組成物の組成比により異なる。チタニウムアルコキシドが少なすぎると、硬化性組成物が硬化しにくくなる。一方、チタニウムアルコキシドが多すぎると、硬化速度が速すぎて混合中に硬化が生じるため、硬化反応の制御およびハンドリングが難しい、あるいは硬化体の物性が低下するなどの不都合が起こる。
【0028】
(D)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステル
α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルは、炭素数3〜6のヒドロキシカルボン酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル反応による生成物である。また、α−ヒドロキシカルボン酸エステルとは、エステル基が結合している炭素原子に水酸基が結合しているヒドロキシカルボン酸エステルを指す。β−ヒドロキシカルボン酸エステルとは、エステル基が結合している炭素原子に結合する炭素原子に水酸基が結合しているヒドロキシカルボン酸エステルを指す。以下、本明細書においては、α−ヒドロキシカルボン酸エステルおよびβ−ヒドロキシカルボン酸エステルの少なくとも一方を指す場合には、単に、「ヒドロキシカルボン酸エステル」という。ヒドロキシカルボン酸としては、たとえば、乳酸、グリセリン酸等のモノカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸およびクエン酸等のトリカルボン酸を用いることができる。アルコールとしては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、ter−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコールおよびステアリルアルコール等の脂肪族飽和アルコールを用いることができる。ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、たとえば、脂肪族系のα−ヒドロキシカルボン酸エステル、芳香族系のα−ヒドロキシカルボン酸エステルが挙げられる。脂肪族系のα−ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、ヒドロキシ酢酸アルキルエステル類、ヒドロキシ酢酸アリールエステル類、乳酸アルキルエステル類、乳酸アリールエステル類、2−ヒドロキシル酪酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシル酪酸アリールエステル類、2−ヒドロキシ吉草酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシ吉草酸アリールエステル類、3−メチル−2ヒドロキシ吉草酸アルキルエステル類、3−メチル−2−ヒドロキシ吉草酸アリールエステル類、2−ヒドロキシヘキシル酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシヘキシル酸アリールエステル類、ロイシン酸アルキルエステル類、ロイシン酸アリールエステル類、リンゴ酸ジアルキルエステル類、リンゴ酸アリールエステル類、クエン酸トリアルキルエステル類、クエン酸トリアリールエステル類、イソクエン酸トリアルキルエステル類、イソクエン酸トリアリールエステル類、酒石酸ジアルキルエステル類、酒石酸ジアリールエステル類等が挙げられる。脂肪族系のβ−ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、3−ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル類、3−ヒドロキシプロピオン酸アリールエステル類、3−ヒドロキシ酪酸アルキルエステル類、3−ヒドロキシ酪酸アリールエステル類、3−ヒドロキシ吉草酸アルキルエステル類、3−ヒドロキシ吉草酸アリールエステル類、3−ヒドロキシヘキサン酸アルキルエステル類、3−ヒドロキシヘキサン酸アリールエステル類、3−ヒドロキシイソ吉草酸アルキルエステル類、3−ヒドロキシイソ吉草酸アリールエステル類、3−ヒドロキシオクチル酸アルキルエステル類、3−ヒドロキシオクチル酸アリールエステル類、3−ヒドロキシ2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルエステル類、あるいは3−ヒドロキシ2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アリールエステル類等が挙げられる。
【0029】
上記脂肪族系のヒドロキシカルボン酸エステルとしては、より好適に、リンゴ酸エステル、クエン酸エステル、乳酸エステル、酒石酸エステル、グリコールモノエステル、グリセリンモノエステル、グリセリンジエステルおよびリシノール酸エステル等を用いることができる。特に、リンゴ酸エステル、クエン酸エステル、乳酸エステルあるいは酒石酸エステルを用いるのが好ましく、その中でもさらに、クエン酸エステルを用いるのが好ましい。
【0030】
クエン酸エステルを用いる場合には、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリ2−エチルヘキシル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリプロピル、クエン酸アセチルトリブチルおよびクエン酸アセチルトリ2−エチルヘキシルを好適に用いることができる。その中でも特に、クエン酸トリブチルまたはクエン酸トリエチルを用いるのが好ましい。
【0031】
また、リンゴ酸エステルを用いる場合には、特に、リンゴ酸ジアルキルエステルを用いるのが好ましい。リンゴ酸ジアルキルエステルとしては、リンゴ酸ジメチルエステル、リンゴ酸ジエチルエステル、リンゴ酸ジプロピルエステル、リンゴ酸ジブチルエステル、リンゴ酸ジヘキシルエステル、アセチルリンゴ酸ジオクチルエステルおよびリンゴ酸モノエチルモノオクチルエステル等を好適に用いることができ、その中でも、特に、リンゴ酸ジエチルエステルおよびリンゴ酸ジブチルエステルを用いるのが好ましい。
【0032】
一方、芳香族系のα−ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、ヒドロキシ安息香酸エステル、ヒドロキシフェニル酢酸エステル、ヒドロキシ桂皮酸エステルおよびベンジル酸エステル等を好適に用いることができる。
【0033】
ヒドロキシカルボン酸エステルの含有率は、ポリオール100質量部に対して0.005〜5質量部、好ましくは0.01〜2質量部、さらに好ましくは、0.01〜1質量部の範囲で組成物中に含まれるのが好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸エステルは、チタニウムアルコキシド1モルに対して0.25〜2モル以下の範囲、より好ましくは0.5〜1.5モルの範囲で、組成物中に含まれるのが好ましい。チタニウムアルコキシドとヒドロキシカルボン酸エステルとの総量は、ポリオール100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは、0.02〜4質量部、より好ましくは、0.02〜2.0質量部の範囲で含まれる。
【0034】
上述の組成のウレタン硬化性組成物は、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方を混合することで、チタニウムアルコキシドのみを混合した場合よりも、イソシアネート基含有化合物とポリオールとを短時間で硬化できる。
【0035】
2.キット
本実施の形態に係るキットは、以下の(A)〜(D)を含む。
(A)イソシアネート基含有化合物
(B)ポリオール(前記(A)と別に保存されている。)
(C)チタニウムアルコキシド
(D)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステル
また、(C)チタニウムアルコキシドは、上記(D)と共に上記(A)および上記(B)の少なくとも一方に含まれてもよいし、または、(C)チタニウムアルコキシドが、上記(A)および(B)と別に保存されていてもよい。
【0036】
キットは、イソシアネート基含有化合物と、ポリオールとは、使用時まで混合されないように別々に保存される。チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方が、イソシアネート基含有化合物側またはポリオール側のどちらか一方に含有されていてもよいし、両方に含有されていてもよい。また、ヒドロキシカルボン酸エステルのみがイソシアネート基含有化合物およびポリオールの少なくとも一方に含有され、チタニウムアルコキシドは、イソシアネート基含有化合物およびポリオールと別に保存されていてもよい。また、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルは、イソシアネート基含有化合物およびポリオールとは別に保存されていてもよい。
【0037】
チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方をイソシアネート基含有化合物中に混合した溶液は、チタニウムアルコキシドを単独でイソシアネート基含有化合物に混合した溶液よりも保存安定性に優れている。イソシアネート基含有化合物は、ポリオールよりも反応性が高く、イソシアネート基含有化合物に硬化触媒を溶解させておくと、この硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液は、変質することがある。しかし、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方を混合した場合には、イソシアネート基含有化合物が硬化したり沈殿生成することなく硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を一定期間保管できる。さらに、イソシアネート基含有化合物にチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルを溶解させた溶液を所定時間放置した後、ポリオールと混合したウレタン硬化性組成物は、イソシアネート基含有化合物にチタニウムアルコキシドのみを含有させて所定時間放置したものにポリオールを混合したウレタン硬化性組成物と比較して、硬化時間が短い。すなわち、イソシアネート基含有化合物にチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルを混合して一定時間保存した後であっても、硬化触媒能が変化しにくい。特に、ヒドロキシカルボン酸エステルとしてクエン酸トリブチルを用いた場合には、硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液の保存安定性により優れている。
【0038】
3.ウレタン硬化性組成物の硬化体および当該硬化体の製造方法
次に、実施の形態に係る硬化性組成物の硬化体およびその製造方法について説明する。図1は、硬化体の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【0039】
まず、チタニウムアルコキシド、およびヒドロキシカルボン酸エステルを混合した溶液を調製する(ステップS101)。
【0040】
ステップS101にて調製した混合溶液を、ポリオールに混合する(ステップS102)。チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルは、それぞれポリオール100質量部に対して0.1〜2質量部含有するように混合するのがより好ましい。次に、ステップS102にて調製した混合溶液に、イソシアネート基含有化合物を混合する(ステップS103)。イソシアネート基含有化合物は、イソシアネートインデックスが0.7〜1.5の範囲となるように配合するのが好ましい。このようにして、ウレタン硬化性組成物を得ることができる。なお、各ステップは必要に応じて加温状態で行うこともできる。本実施の形態の硬化性組成物は、チタニウムアルコキシドのみを混合した硬化性組成物と比較して、より早く硬化するという利点を有する。
【0041】
なお、本実施の形態では、チタニウムアルコキシド、およびヒドロキシカルボン酸エステルを混合した溶液を調製した後、ポリオールを混合しているが、このような形態に限らない。チタニウムアルコキシド、およびヒドロキシカルボン酸エステルを混合した溶液を調製した後、これを、イソシアネート基含有化合物に混合し(第1の混合ステップ)、続いて、ポリオールを混合(第2の混合ステップ)し、得られた組成物を硬化(硬化ステップ)としてもよい。また、ポリオールにチタニウムアルコキシドまたはヒドロキシカルボン酸のいずれか一方を混合した溶液を用意し、他方をイソシアネート基含有化合物に混合させ、それらの溶液を混合するような形態としてもよい。チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルを、ポリオールに混合する前に、イソシアネート基含有化合物に混合する場合、チタニウムアルコキシドのみをイソシアネート基含有化合物に混合した場合と比較して、イソシアネート基含有化合物の保存安定性に優れていると共に、硬化触媒能の経時変化が小さいという利点を有する。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0043】
まず、実施例および比較例で使用した化合物とその略称および各試料の調製方法について説明する。
【0044】
(1)使用した化合物とその略称
[チタニウムアルコキシド]
「TTE」:チタニウムテトラオルソエトキシド(メルク株式会社製)
「TTIP」:チタニウムテトライソプロポキシド(関東化学株式会社製)
【0045】
[ヒドロキシカルボン酸エステル]
「MADB」:リンゴ酸ジブチル(化1の構造式)(東京化成工業株式会社製)
「TBC」:クエン酸トリブチル(化2の構造式)(東京化成工業株式会社製)
「TEC」:クエン酸トリエチル(化3の構造式)(東京化成工業株式会社製)
「EL」:乳酸エチル(化4の構造式)(和光純薬工業株式会社製)
「EHB」:DL−3−ヒドロキシ酪酸エチル(化5の構造式)(東京化成工業株式会社製)
「EHS」:サリチル酸2−エチルヘキシル(化6の構造式)(東京化成工業株式会社製)
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
[イソシアネート基含有化合物]
「HDI」:ヘキサメチレンジイソシアネート(化7の構造式)(東京化成工業株式会社製)
「TDI」:トリレンジイソシアネート(TDI−80、日本ポリウレタン工業製、2,4−トリレンジイソシアネートを80%(化8の構造式)および2,6−トリレンジイソシアネートを20%(化9の構造式)含む混合物である。)
「IPDI」:イソホロンジイソシアネート(化10の構造式)(住化バイエルウレタン株式会社製)
【0053】
【化7】

【0054】
【化8】

【0055】
【化9】

【0056】
【化10】

【0057】
[ポリオール]
「H−102」:ひまし油系ポリオール(5官能、分子量900、伊藤製油株式会社製)
「G−1000」:グリセリン・ポリエーテル系ポリオール(3官能、分子量1000、株式会社ADEKA製)
「G−400」:グリセリン・ポリエーテル系ポリオール(3官能、分子量400、株式会社ADEKA製)
「F−2010」:アジペート系ポリエステルポリオール(3官能、分子量2000、株式会社クラレ製)
【0058】
次に、ウレタン硬化性組成物の調製方法ならびに硬化体の作製方法、そして、ウレタン硬化性組成物ならびに硬化体の各特性評価について説明する。
【0059】
(2)ウレタン硬化性組成物の調製方法
ポリオールとしてH−102を15g、およびイソシアネート基含有化合物としてHDIを7.5g(イソシアネートインデックスが1.05に相当する量)用意した。さらに、表1に記載の組成で、ポリオール100質量部に対して0.15質量部のチタニウムアルコキシド、およびチタニウムアルコキシドに対してモル比で1:1のヒドロキシカルボン酸エステルを用意した。まず、ヒドロキシカルボン酸エステルをチタニウムアルコキシドに混合した。得られたチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの混合溶液を、ポリオールに混合し、硬化触媒−ポリオール溶液を調製した。そして、硬化触媒−ポリオール溶液に、イソシアネート基含有化合物を混合し、各ウレタン硬化性組成物を作製した。また、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの混合溶液をHDIに混合し、硬化触媒−HDI溶液を調製した後、ポリオールに混合することにより、混合の順番を変えて作製したウレタン硬化性組成物も用意した。
【0060】
【表1】

【0061】
(3)ウレタン硬化性組成物の硬化時間測定方法
前述のポリオール、イソシアネート基含有化合物、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルを混合した混合溶液のうち14gを直径10cmのシャーレに流しこみ、後述する硬化体の機械的特性の測定試料とした。その残りの溶液について、硬化に必要な時間を測定した。本実施例において「硬化時間」とは、硬化触媒−ポリオール溶液にイソシアネート基含有化合物を混合した直後から、タックフリー(触れても付着しなくなるまで)の所要時間とした。硬化までの測定間隔は、硬化開始から1.5時間までは1〜5分毎、1.5時間以上では30分〜1時間毎とした。また、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルをポリオールに混合した後、イソシアネート基含有化合物を混合した各ウレタン硬化性組成物が硬化するまでの硬化時間を測定した結果を図2に示す。一方、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルをイソシアネート基含有化合物に混合した後、ポリオールを混合した各ウレタン硬化性組成物が硬化するまでの硬化時間を測定した結果を図3に示す。
【0062】
(4)硬化体の機械的特性測定方法
前述のポリオール、イソシアネート基含有化合物、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルを混合した混合溶液のうち、直径10cmのシャーレに流し込んだ混合溶液14gを、イソシアネート基含有化合物の混合時から7日間保存し、ウレタン硬化性組成物を硬化させた。これにより、厚さが約2mmであるシート状の硬化体を得た。シート状硬化体は、6号ダンベル形状に打ち抜き、機械的特性測定用の試験片とした。
【0063】
ダンベル状の試験片をオートグラフ(AGS−J、株式会社島津製作所製)を用いて、JIS K6251に準じて、クロスヘッドスピード500mm/minにて引張試験を行った。引張試験により、機械的特性として、引張強さおよび伸びをそれぞれ求めた。引張強さは、硬化体が破断した際の引張応力から求めた。伸びは、引張試験前に対する、硬化体が破断した際の引張方向の伸び率を測定した。各引張試験は、各実施例あるいは各比較例につき、各種試験片3本についてそれぞれ測定した。その3回の測定結果の平均値を、該当する実施例若しくは比較例の測定値とした。その結果を図4〜7に示す。
【0064】
(5)ウレタン硬化性組成物の硬化時間測定結果
実施例1〜14および比較例1〜3の各ウレタン硬化性組成物の硬化時間測定結果を図2および図3に示す。
【0065】
実施例1〜5,比較例1
実施例1〜5および比較例1では、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルをポリオールに混合した後、イソシアネート基含有化合物を混合した。また、実施例1〜5では、チタニウムアルコキシドとしてTTEを用いると共に、ヒドロキシカルボン酸エステルの種類を変えた各ウレタン硬化性組成物において、硬化時間を測定した。比較例1は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えずに、チタニウムアルコキシドとしてTTEのみを混合した点で実施例1〜5と異なる。図2に示すように、実施例1〜5の全てのウレタン硬化性組成物は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えていない比較例1のウレタン硬化性組成物よりも短時間で硬化した。
【0066】
実施例6〜9,比較例2
実施例6〜9および比較例2では、チタニウムアルコキシドとしてTTIPを用いると共に、ヒドロキシカルボン酸エステルの種類を変え、実施例1〜5および比較例1と同様の混合方法にて各ウレタン硬化性組成物を用意して、硬化時間を測定した。比較例2は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えずに、チタニウムアルコキシドとしてTTIPのみを混合した点で実施例6〜9と異なる。図2に示すように、実施例6〜9の全てのウレタン硬化性組成物は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えていない比較例2のウレタン硬化性組成物よりも短時間で硬化した。
【0067】
実施例10〜14,比較例3
実施例10〜14および比較例3では、実施例1〜5および比較例1とそれぞれ同じ組成であるが、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルをイソシアネート基含有化合物に混合した硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を調製した後、そこへポリオールを混合する混合方法を用いた点が異なる。図3に示すように、実施例10〜14の全てのウレタン硬化性組成物は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えていない比較例3のウレタン硬化性組成物よりも短時間で硬化した。図2に示す実施例1〜5と比較すると、実施例1〜5の各試料よりも、実施例10〜14の各試料の方が、硬化時間が短くなった。
【0068】
(6)硬化体の引張強さ測定結果
実施例1〜4および比較例1の硬化物について引張試験を行い、得られた引張強さを図4に示す。また、実施例6〜9および比較例2の硬化物について引張試験を行い、得られた引張強さを図5に示す。
【0069】
実施例1〜4,比較例1
図4に示すように、実施例1〜4のすべての硬化体は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えていない比較例1の硬化体と同等あるいはそれ以上の高い引張強さを有していた。
【0070】
実施例6〜9,比較例2
図5に示すように、ヒドロキシカルボン酸エステルとしてMADBを用いた実施例6およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを用いた実施例7の各ウレタン硬化性組成物を硬化させた硬化体は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えていない比較例2の硬化体よりも高い引張強さを有していた。一方、ヒドロキシカルボン酸エステルとしてTECを用いた実施例8およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてELを用いた実施例9の各ウレタン硬化性組成物を硬化させた硬化体は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えていない比較例2の硬化体よりも低い引張強さを有していた。
【0071】
(7)硬化体の伸び測定結果
実施例1〜4および比較例1の硬化物について引張試験を行い、得られた伸びを図6に示す。また、実施例6〜9および比較例2の硬化物について引張試験を行い、得られた伸びを図7に示す。
【0072】
実施例1〜4,比較例1
図6に示されるように、実施例1,2,4の各ウレタン硬化性組成物を硬化させた硬化体は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えていない比較例1の硬化体よりも大きい伸びを示した。一方、ヒドロキシカルボン酸エステルとしてTECを加えた実施例3の硬化体は、わずかに比較例1の硬化体よりも大きく伸びなかった。
【0073】
実施例6〜9,比較例2
図7に示されるように、実施例6,7,9の各ウレタン硬化性組成物を硬化させた硬化体は、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えていない比較例2のウレタン硬化性組成物を硬化させた硬化体よりも大きい伸びを示した。一方、ヒドロキシカルボン酸エステルとしてTECを加えた実施例8のウレタン硬化性組成物を硬化させた硬化体は、比較例2の硬化体よりも大きい伸びを示さなかった。
【0074】
以上をまとめると、硬化時間、引張強さおよび伸びを測定した結果、チタニウムアルコキシドと共にヒドロキシカルボン酸エステルを加えた場合には、チタニウムアルコキシドのみを加えた場合と比較して、実施例1〜14の全てのウレタン硬化性組成物について硬化時間が短縮された。特に、ヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを加えた場合には、硬化時間が大きく短縮されたことに加えて、引張強さおよび伸びが向上した。
【0075】
(8)硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液の保存安定性測定方法および結果
窒素置換グローブボックス内で、容量が13.5mlのスクリュー管内に、表2〜4に示す組成でイソシアネート基含有化合物に硬化触媒を加え、硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を調製した。イソシアネート基含有化合物に対する硬化触媒の混合量はポリウレタン製造で使用される予想濃度範囲とし、ヒドロキシカルボン酸エステルは、TTEに対し、モル比で1:1の量とした。続いて、シール用フィルムで開口部をシールして25℃にて保存した。目視による溶液の状態観察を行い、固化物の生成時期を記録した。得られた結果を表2〜4に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
実施例15〜18
表2に示すように、実施例15〜18では、チタニウムアルコキシドとして、HDI100質量部に対し0.2質量部のTTEとヒドロキシカルボン酸エステルとを用いた。実施例18では、実施例15に対して、チタニウムアルコキシドとヒドロキシカルボン酸エステルの量を変えた。実施例15〜18の全ての溶液は、1日未満では固化物は生成しなかった。また、ヒドロキシカルボン酸エステルの種類を変えた実施例15〜17において比較すると、ヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを用いた実施例15が最も長期間(7日間)固化物は生成しなかった。また、表2に示すように、実施例15よりもチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの量が少ない実施例18では、2週間たっても固化物は生成しなかった。
【0080】
比較例4,5
比較例4は、チタニウムアルコキシドのみを硬化触媒として混合し、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えなかった点で実施例15と異なる。比較例4の試料は、1日で固化物が生成した。比較例5では、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの代わりに、有機チタニウムとしてチタニウムイソプロプロポキシビスエチルアセトアセテートを主に含む市販のチタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)を硬化触媒として用いた。表2に示すように、比較例5の試料も1日で固化物が生成した。
【0081】
比較例6
比較例6では、チタニウムアルコキシドを混合せずヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCのみを混合した点で実施例15と異なる。表2に示すように、比較例6の試料は、ヒドロキシカルボン酸エステルのみしか含まないため、7日経過しても固化物は生成しなかった。
【0082】
実施例15〜18および比較例4〜6により、HDIにチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方を加えた実施例15〜18は、チタニウムアルコキシドのみを加えた比較例4や、有機チタニウムを加えた比較例5よりも硬化触媒−HDI溶液の保存安定性が高いことが示された。特に、チタニウムアルコキシドとしてTTEを用いて、ヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを用いた場合(実施例15,18)には、硬化触媒−HDI溶液の安定性が高いことが示された。
【0083】
実施例19
実施例19では、イソシアネート基含有化合物としてTDIを用いた。また、実施例19では、チタニウムアルコキシドとしてTDI100質量部に対し0.2質量部のTTEとヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCとを用いた。表3に示すように、実施例19の試料は、硬化触媒−TDI溶液を調製してから2週間後にわずかに沈殿物の生成が認められた。
【0084】
比較例7,8
比較例7では、TDI100質量部に対し0.2質量部のチタニウムアルコキシドのみを混合し、TBCを加えなかった点で、実施例19と異なる。表3に示すように、比較例7は、硬化触媒−TDI溶液を調製してから6日経過後に固化物が生成した。比較例8では、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルを用いずに、TDI100質量部に対し0.2質量部の有機チタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)を用いた点で実施例19と異なる。表3に示すように、比較例8は、硬化触媒−TDI溶液を調製してから6日経過後に固化物が生成した。
【0085】
実施例19および比較例7,8より、TDIにチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方を加えた実施例19は、チタニウムアルコキシドのみを加えた比較例7や、有機チタニウムを加えた比較例8よりも硬化触媒−TDI溶液の安定性が高いことが示された。
【0086】
実施例20,21
実施例20,21では、イソシアネート基含有化合物としてIPDIを用いた。また、実施例20,21では、硬化触媒として、チタニウムアルコキシドとしてIPDIの100質量部に対し0.4質量部のTTEと、ヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCおよびEHBとを用いた。実施例20,21では、硬化触媒−IPDI溶液を調製してから2週間経過後も固化物は生成しなかった。
【0087】
比較例9,10
比較例9は、IPDI100質量部に対し0.4質量部のTTEみを混合し、ヒドロキシカルボン酸エステルを加えなかった点で実施例20,21と異なる。比較例10は、IPDI100質量部に対し0.4質量部の有機チタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)を用いた点で実施例20,21と異なる。比較例9,10では、硬化触媒−IPDI溶液を調製してから2週間経過後も固化物は生成しなかった。
【0088】
以上より、硬化触媒としてチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方を加えた場合には、チタニウムアルコキシドのみを加えた場合と比較して、硬化触媒−HDI溶液および硬化触媒−TDI溶液の硬化が遅かった。すなわち、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方を加えた場合には、チタニウムアルコキシドのみを加えた場合よりもイソシアネート基含有化合物の保存安定性に優れる傾向がみられた。
【0089】
(9)硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液の保存期間による硬化時間変化の測定方法および結果
窒素置換グローブボックス内で、容量35mlのスクリュー管内で、表5に示す組成でイソシアネート基含有化合物にチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステル混合物を加え、硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を調製した。チタニウムアルコキシドとヒドロキシカルボン酸エステルとのモル比は、1:1とした。硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液が入ったスクリュー管の開口部を密封し、25℃にて規定時間保存した。各規定時間後に硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液にポリオールを混合し、その混合から硬化までの硬化時間を測定した。その結果を図8〜15に示す。
【0090】
【表5】

【0091】
実施例22
実施例22では、イソシアネート基含有化合物としてHDI、チタニウムアルコキシドとしてポリオール100質量部に対し0.02質量部のTTE、およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを混合した硬化触媒−HDI溶液を調製した。硬化触媒−HDI溶液を調製してから30分経過後および6日経過後に、硬化触媒−HDI溶液をイソシアネートインデックスが1.05になるようにポリオール(G−1000)に混合し、混合直後から固化するまでの時間を測定した。実施例22では、30分経過後と6日経過後とでは、硬化時間の違いは、3分だった。図8に示すように、チタニウムアルコキシドとヒドロキシカルボン酸エステルとを両方加えた場合には、イソシアネート基含有化合物中で十分な硬化触媒能を維持することがわかった。
【0092】
比較例11,12
比較例11では、有機チタニウムとしてチタニウムイソプロプロポキシビスエチルアセトアセテートを主に含む市販のチタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)を、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの代わりに、ポリオール100質量部に対し0.02質量部用いた点で実施例22と異なる。比較例12では、ポリオール100質量部に対し0.02質量部のチタニウムアルコキシドのみを混合し、ヒドロキシカルボン酸エステルを混合しなかった点で実施例22と異なる。比較例12の硬化触媒−HDI溶液は、溶液調製後2日でゲル化したため、溶液調製から6日経過後のデータが得られなかった。比較例11の硬化触媒−HDI溶液は、溶液調製から5日後にゲル化したため、溶液調製から6日経過後のデータが得られなかった。
【0093】
実施例23
実施例23では、イソシアネート基含有化合物としてTDI、チタニウムアルコキシドとしてポリオール100質量部に対し0.05質量部のTTE、およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを混合した硬化触媒−TDI溶液を調製した。硬化触媒−TDI溶液を調製してから、30分後経過後、5日経過後、および12日経過後に、それぞれポリエーテル系ポリオール(G−1000)にイソシアネートインデックスが1.05になるように混合し、ポリオール混合直後から固化するまでの時間を測定した。図9に示すように、実施例23では、硬化触媒−TDI溶液調製から30分経過後、5日経過後および12日経過後のいずれにおいても硬化時間は4分で、硬化時間の違いはなかった。
【0094】
比較例13,14
比較例13では、ポリオール100質量部に対し0.05質量部の有機チタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)を、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの代わりに用いた点で実施例23と異なる。比較例14では、硬化触媒としてチタニウムアルコキシドのみをポリオール100質量部に対し0.05質量部混合し、ヒドロキシカルボン酸エステルを混合しなかった点で実施例23と異なる。比較例13は、硬化触媒−TDI溶液調製から30分経過後、5日経過後および12日経過後において、ポリオール混合から硬化するまでの時間は、それぞれ7分、9分、10分だった。しかし、比較例13では、硬化触媒−TDI溶液調製から10日経過後に沈殿を生じていた。比較例13では、硬化触媒−TDI溶液調製から30分経過後、5日経過後、および12日経過後において、ポリオール混合から硬化するまでの時間は、それぞれ5分、8分および8分だった。しかし、比較例14では、硬化触媒−TDI溶液調製から5日経過後に沈殿を生じていた。
【0095】
図9から、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方をイソシアネート基含有化合物中で保存した場合、チタニウムアルコキシドのみを用いた場合や、有機チタニウム系硬化触媒を用いた場合と比較して、硬化触媒能の保存安定性に優れていることがわかった。
【0096】
実施例24
実施例24では、イソシアネート基含有化合物としてIPDI、チタニウムアルコキシドとしてポリオール100質量部に対し0.1質量部のTTE、およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを用いて硬化触媒−IPDI溶液を調製した。硬化触媒−IPDI溶液調製から30分後経過後、6日経過後、および12日経過後の各試料に、それぞれグリセリン・ポリエーテル系ポリオール(G−400)にイソシアネートインデックスが1.05になるように混合し、混合直後からポリオール混合後、固化するまでに要した時間を測定した。図10に示すように、実施例24では、硬化触媒−IPDI溶液調製から30分経過後、6日経過後および12日経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、それぞれ3分、5分、および6分だった。
【0097】
比較例15,16
比較例15では、ポリオール100質量部に対し0.1質量部の有機チタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)を、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの代わりに用いた点で、実施例24と異なる。比較例16では、ポリオール100質量部に対し0.1質量部のチタニウムアルコキシドのみを用いて、ヒドロキシカルボン酸エステルを混合しなかった点で実施例24と異なる。比較例15は、硬化触媒−IPDI溶液調製から30分経過後、6日経過後、および12日経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、それぞれ15分、58分、および180分だった。比較例16は、硬化触媒−IPDI溶液調製から30分経過後、6日経過後、および12日経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、それぞれ4分、7分および6分だった。
【0098】
図10より、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方をイソシアネート基含有化合物中で保存した場合、チタニウムアルコキシドのみを用いた場合と比較して、硬化触媒能が良好または同等な状態を保ち、有機チタニウム系硬化触媒を用いた場合と比較すると、硬化触媒能の保存安定性に優れていることがわかった。
【0099】
実施例25
実施例25では、イソシアネート基含有化合物としてHDI、チタニウムアルコキシドとしてポリオール100質量部に対し0.2質量部のTTE、およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを混合した硬化触媒−HDI溶液を調製した。硬化触媒−HDI溶液を調製してから30分経過後、5時間経過後、および20時間経過後に、ポリオール(F−2010)にイソシアネートインデックスが1.05になるように混合した。図11に示すように、実施例25では、硬化触媒−HDI溶液調製から30分経過後、5時間経過後、および20時間経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、それぞれ8分、10分、および11分だった。
【0100】
比較例17,18
比較例17では、ポリオール100質量部に対し0.2質量部の有機チタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)をチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの代わりに用いている点で、実施例25と異なる。比較例18では、ポリオール100質量部に対し0.2質量部のチタニウムアルコキシドのみを混合し、ヒドロキシカルボン酸エステルを混合しなかった点で実施例25と異なる。比較例17は、硬化触媒−HDI溶液調製から0.5時間経過後および5時間経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、18分および30分だった。比較例18は、硬化触媒−HDI溶液調製から5日経過後にゲル化したため、22時間経過後のデータが得られなかった。比較例18では、硬化触媒−HDI溶液調製から0.5時間経過後および5時間経過後の各試料において、ポリオールの混合直後から硬化までの時間は、それぞれ9分および28分だった。比較例18は、硬化触媒−HDI溶液調製から10時間以内にゲル化したため、22時間経過後のデータが得られなかった。
【0101】
図11より、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方をイソシアネート基含有化合物中で保存した場合、チタニウムアルコキシドのみを用いた場合、あるいは、有機チタニウム系硬化触媒を用いた場合と比較して、硬化触媒能の保存安定性に優れていることがわかった。
【0102】
実施例26
実施例26では、イソシアネート基含有化合物としてTDI、チタニウムアルコキシドとしてポリオール100質量部に対し0.2質量部のTTE、およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを混合した硬化触媒−TDI溶液を調製した。硬化触媒−TDI溶液調製から30分後経過後および20時間経過後の試料に、ポリオールとしてF−2010をイソシアネートインデックスが1.05になるように混合し、混合直後から固化するまでに要した時間を測定した。図12に示すように、実施例26では、硬化触媒−TDI溶液調製から30分経過後および20時間経過後の各試料において、ポリオールを混合してから硬化するまでの時間は、それぞれ8分および4分だった。
【0103】
比較例19,20
比較例19では、ポリオール100質量部に対し0.2質量部の有機チタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)をチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの代わりに用いている点で、実施例26と異なる。比較例20では、ポリオール100質量部に対し0.2質量部のチタニウムアルコキシドのみを混合し、ヒドロキシカルボン酸エステルを混合しなかった点で実施例26と異なる。比較例19は、硬化触媒−TDI溶液調製から0.5時間経過後および20時間経過後の各試料において、ポリオールを混合してから硬化するまでの時間は、それぞれ8分および6分だった。比較例20では、硬化触媒−TDI溶液調製から0.5時間経過後および5時間経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、それぞれ7分および5分だった。
【0104】
実施例27
実施例27では、イソシアネート基含有化合物としてHDI、チタニウムアルコキシドとしてポリオール100質量部に対し0.15質量部のTTE、およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを用いて硬化触媒−HDI溶液を調製した。硬化触媒−HDI溶液調製から0.5時間経過後、20時間経過後、および2日経過後に、ポリオールとして、ひまし油系ポリオール(H−102)にイソシアネートインデックスが1.05になるように混合し、混合直後から、固化するまでの時間を測定した。図13に示すように、実施例27では、硬化触媒−HDI溶液調製から0.5時間経過後、20時間経過後および2日経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、それぞれ20分、25分および34分だった。
【0105】
比較例21,22
比較例21では、ポリオール100質量部に対し0.15質量部の有機チタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)をチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの代わりに用いた点で実施例27と異なる。比較例22は、ポリオール100質量部に対し0.15質量部のチタニウムアルコキシドのみを混合し、ヒドロキシカルボン酸エステルを混合しなかった点で実施例27と異なる。比較例21,22では、硬化触媒−HDI溶液調製から20時間以内に溶液がゲル化したため、20時間経過後のデータが得られなかった。
【0106】
実施例28
実施例28では、イソシアネート基含有化合物としてTDI、チタニウムアルコキシドとしてポリオール100質量部に対し0.1質量部のTTE、およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを用いて、硬化触媒−TDI溶液を調製した。硬化触媒−TDI溶液調製から0.5時間経過後、20時間経過後、および7日経過後に、ポリオールとしてH−102にイソシアネートインデックスが1.05になるように混合し、混合直後から固化するまでの時間を測定した。図14に示すように、実施例28では、硬化触媒−TDI溶液調製から0.5時間経過後、20時間経過後および7日経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、それぞれ5分、4分および4分だった。また、実施例28の硬化触媒−TDI溶液は、硬化触媒−TDI溶液調製から30日経過した時点でも固化しなかった。実施例28の硬化触媒−TDI溶液を調製してから30日経過した後、H−102を加えたところ、H−102を混合してから5分で固化した。
【0107】
比較例23,24
比較例23は、ポリオール100質量部に対し0.1質量部の有機チタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)をチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの代わりに混合した点で、実施例28と異なる。比較例24は、ポリオール100質量部に対し0.1質量部のチタニウムアルコキシドのみを混合し、ヒドロキシカルボン酸エステルを混合しない点で、実施例28と異なる。比較例23では、硬化触媒−TDI溶液調製から0.5時間経過後、20時間経過後および7日経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、それぞれ15分、22分および21分だった。また、比較例23の硬化触媒−TDI溶液は、硬化触媒−TDI溶液調製から7日以内に沈殿を生じた。比較例24では、硬化触媒−TDI溶液調製から0.5時間経過後、20時間経過後および7日経過後のそれぞれの系における硬化時間は、5分、5分および5分だった。しかし、比較例24では、硬化触媒−TDI溶液調製から7日以内に沈殿を生じていた。
【0108】
図14より、チタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの両方をイソシアネート基含有化合物中で保存した場合、硬化触媒能がわずかに向上し、有機チタニウム系硬化触媒を用いた場合と比較すると、硬化触媒能の保存安定性に優れていることがわかった。
【0109】
実施例29
実施例29では、イソシアネート基含有化合物としてIPDI、チタニウムアルコキシドとしてポリオール100質量部に対し0.3質量部のTTE、およびヒドロキシカルボン酸エステルとしてTBCを用いて硬化触媒−IPDI溶液を調製した。硬化触媒−IPDI溶液調製から0.5時間経過後、6日経過後、および15日経過後に、ポリオールとしてひまし油系ポリオール(H−102)をイソシアネートインデックスが1.05になるように混合し、混合直後から固化するまでの時間を測定した。図15に示すように、実施例29では、硬化触媒−IPDI溶液調製から0.5時間経過後、6日経過後、および15日経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、それぞれ53分、120分および150分だった。
【0110】
比較例25,26
比較例25は、ポリオール100質量部に対し0.3質量部の有機チタニウム系硬化触媒(TC−750、マツモトファインケミカル株式会社製)をチタニウムアルコキシドおよびヒドロキシカルボン酸エステルの代わりに用いた点で実施例29と異なる。比較例26は、ポリオール100質量部に対し0.3質量部のチタニウムアルコキシドのみを混合し、ヒドロキシカルボン酸エステルを混合しなかった点で、実施例29と異なる。比較例25は、硬化触媒−IPDI溶液調製から0.5時間経過後、6日経過後、および15日経過後の各試料において、ポリオールを混合してから硬化するまでの時間は、いずれも300分だった。比較例26では、硬化触媒−IPDI溶液調製から0.5時間経過後、6日経過後および15日経過後の各試料において、ポリオール混合直後から硬化するまでの時間は、180分、150分および180分だった。
【0111】
次に、チタニウムアルコキシドとヒドロキシカルボン酸エステルとの配合割合による硬化触媒能の変化を測定した。具体的には、表6に記載のイソシアネート基含有化合物、ポリオール、および表6のようにTTEに対するモル比を変化させたTBCを用いて各種硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を調製した。硬化触媒−イソシアネート基含有化合物溶液を調製した後すぐに、表6のポリオールを混合し、固化するまでの時間を測定した。イソシアネート基含有化合物としてTDIを用いた場合の結果を図16に示す。イソシアネート基含有化合物としてIPDIを用いた場合の結果を図17に示す。
【0112】
【表6】

【0113】
実施例30〜33,比較例27
実施例30〜33および比較例27では、ポリオール(G−1000)をイソシアネートインデックスが1.05になるように混合した。TTEは、ポリオール100質量部に対して0.05質量部とした。図16に示すように、イソシアネート基含有化合物としてTDI、ポリオールとしてG−1000を用いた場合、チタニウムアルコキシドに対するヒドロキシカルボン酸エステルの割合が1:1付近で硬化時間が短くなった。
【0114】
実施例34〜38,比較例28
実施例34〜38,比較例28では、ポリオール(G−400)をイソシアネートインデックスが1.05になるように混合した。TTEは、ポリオール100質量部に対して0.01質量部とした。図17に示すように、イソシアネート基含有化合物としてIPDI、ポリオールとしてG−400を用いた場合、チタニウムアルコキシドに対するヒドロキシカルボン酸エステルのモル比が1の場合に、硬化時間が最も短くなった。また、チタニウムアルコキシドに対するヒドロキシカルボン酸エステルのモル比が0.5以下、1.5以上では、硬化時間が増加する傾向があり、特に、チタニウムアルコキシドに対するヒドロキシカルボン酸エステルのモル比が2になると、硬化時間が大幅に伸びた。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、例えば、塗料、接着剤あるいはシール材等に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソシアネート基含有化合物、
(B)ポリオール、
さらに、硬化触媒として、
(C)チタニウムアルコキシド、および
(D)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルを含むことを特徴とするウレタン硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のウレタン硬化性組成物において、
前記(D)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルは、クエン酸エステルであることを特徴とするウレタン硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のウレタン硬化性組成物において、
前記(C)チタニウムアルコキシドは、チタニウムテトラオルソエトキシドであることを特徴とするウレタン硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン硬化性組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化体。
【請求項5】
(A)イソシアネート基含有化合物、
(B)ポリオール、
さらに、硬化触媒として、
(C)チタニウムアルコキシドおよび
(D)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステル、
を含むキットであって、
上記(A)イソシアネート基含有化合物と、上記(B)ポリオールとを分離し、
上記(C)チタニウムアルコキシドが上記(D)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルと共に上記(A)および上記(B)の少なくとも一方に含まれる、または、上記(C)チタニウムアルコキシドが、上記(A)および(B)とは分離されていることを特徴とするキット。
【請求項6】
イソシアネート基含有化合物にチタニウムアルコキシドおよび)α−またはβ−ヒドロキシカルボン酸エステルを混合する第1の混合ステップと、
上記第1の混合ステップで得られた混合溶液中にポリオールを混合する第2の混合ステップと、
上記第2の混合ステップで得られた組成物を硬化させる硬化ステップと、
を有することを特徴とする硬化体の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−97192(P2012−97192A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245995(P2010−245995)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(599157996)ウレタン技研工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】