説明

ウレタン系塗料組成物

【課題】架橋性、乾燥性に優れ、かつ、塗料用硬化剤として使用した場合に充分なポットライフを有するポリイソシアネート組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも下記(1)及び(2)の2成分を含有することを特徴とする塗料組成物。
(1)水酸基価30〜200mgKOH/g、酸価0〜30mgKOH/gであるポリオール。
(2)特定の構造式(1)で表され、ポリイソシアネート骨格におけるポリオール成分濃度が1〜30質量%、脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=90/10〜60/40(質量比)であり、粘度が5〜150Pa・s/25℃、数平均分子量600〜1200、かつ、遊離のジイソシアネート濃度3質量%以下であるポリイソシアネート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性と乾燥性に優れ、かつ塗料用硬化剤として使用した場合に充分なポットライフを有するウレタン系塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートを硬化剤とするウレタン系塗料組成物は、その塗膜の耐薬品性、可とう性などが優れている。特に、脂肪族、脂環族ジイソシアネートから得られるポリイソシアネートを使用した場合、更に耐候性に優れるため、その使用は常温硬化性の2液ウレタン塗料、熱硬化性の1液ウレタン塗料および2液ウレタン塗料の形態で、自動車、建築、家電等の塗料として広く用いられている。しかし、作業時間短縮のため、架橋性、乾燥性の向上が望まれていた。
その解決のため、いくつかのポリイソシアネートが提案されている。通常、脂肪族ジイソシアネート或いは脂環族ジイソシアネートから得られる硬化剤のイソシアネート基平均数は約3であり、イソシアネート基平均数をより高めて、架橋性の向上を図る技術が特許文献1、2に開示されている。特許文献1に開示の技術は、架橋性は向上するが、乾燥性が不足する場合があった。また、特許文献2に開示の技術は架橋性、乾燥性はともに優れるが、塗料用硬化剤として使用した場合に塗料のポットライフが短くなる場合があった。
【0003】
また、性質の異なる2種のプレポリマーを混合するものとして、ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマーとイソホロンジイソシアネートプレポリマーを混合したポリイソシアネート組成物が特許文献3、4などに開示されている。これらは、一般的に硬化初期の塗膜硬度には効果があるが、架橋性に劣る場合があった。
また、上記以外の2種のプレポリマーを混合するものとして、低粘度ポリイソシアネートと高粘度ポリイソシアネートを混合したポリイソシアネート組成物が特許文献5に開示されている。これは、低粘度ポリイソシアネートを混合することにより、低粘度化が達成されるが、その割合が多い場合は、架橋性あるいは乾燥性に劣り、少ない場合には、塗料用硬化剤として使用した場合に塗料のポットライフが短くなる場合があった。
そのため、架橋性、乾燥性に優れ、かつ、塗料用硬化剤として使用した場合に充分なポットライフを満足するポリイソシアネートが望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開平06−312969号公報
【特許文献2】国際公開第05/82966号パンフレット
【特許文献3】特表平06−510087号公報
【特許文献4】特開2002−293873号公報
【特許文献5】特願2005−342329号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、架橋性、乾燥性に優れ、かつ、塗料用硬化剤として使用した場合に充分なポットライフを有するポリイソシアネート組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群、ポリオール群の各群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物から誘導されたポリイソシアネート組成物であって、その各群の質量比を特定割合とし、特定の構造を有するポリオール群から得られるポリイソシアネート組成物を硬化剤とした塗料組成物が上記目的を達成することを見出し、この知見に基づき本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、下記の通りである。
1.少なくとも下記(1)及び(2)の2成分を含有することを特徴とする塗料組成物。
(1)水酸基価30〜200mgKOH/g、酸価0〜30mgKOH/gであるポリオール。
(2)下記構造式(1)で表され、ポリイソシアネート骨格におけるポリオール成分濃度が1〜30質量%、脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=90/10〜60/40(質量比)であり、粘度が5〜150Pa・s/25℃、数平均分子量600〜1200、かつ、遊離のジイソシアネート濃度3質量%以下であるポリイソシアネート組成物。
R−(NCO)n ・・・式(1)
(式中、Rは、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群のそれぞれの群から選ばれた合計2種以上のジイソシアネートと1種以上のポリオールから誘導されたポリイソシアネートにおけるイソシアネート基を除く残基であり、ジイソシアネートとポリオールとがアロファネート結合及び/又はウレタン結合を介して結合されている基であり、nは3〜6である。)
【0007】
2.ポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート骨格におけるポリオール成分濃度が1〜20質量%であることを特徴とする上記1.に記載の塗料組成物。
3.ポリイソシアネート組成物のポリオール群が数平均分子量150〜500であることを特徴とする上記1.又は2.に記載の塗料組成物。
4.式(1)のイソシアネート基平均数nが3.3〜5であることを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載の塗料組成物。
5.ポリイソシアネート組成物の数平均分子量が600〜1000であることを特徴とする上記1.〜4.のいずれかに記載の塗料組成物。
6.ポリイソシアネート組成物のポリオール群がポリエステルポリオールであることを特徴とする上記1.〜5.のいずれかに記載の塗料組成物。
7.ポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート骨格における脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=80/20〜60/40(質量比)であることを特徴とする上記1.〜6.のいずれかに記載の塗料組成物。
8.ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基がブロック剤で封鎖されたことを特徴とする上記1.〜6.のいずれかに記載の塗料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のウレタン系塗料組成物は、架橋性、乾燥性に優れ、かつ、充分なポットライフを有し、高塗膜硬度を有するウレタン塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について、その好ましい形態を中心に、詳細にの述べる。
本発明のポリイソシアネート組成物に用いる脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4〜30のものが好ましく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと記載する。)、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアネートヘキサン、リジンイソシアネートなどが挙げられ、中でも、工業的入手のしやすさからHDIが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
本発明のポリイソシアネート組成物に用いる脂環族ジイソシアネートとしては、炭素数8〜30のものが好ましく、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと記載する。)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられ、中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、IPDIが好ましい。脂環族ジイソシアネートは単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0010】
本発明に使用するポリオールとしては、分子量500未満の低分子ポリオールと分子量500以上の高分子ポリオールがある。低分子ポリオールとしては、ジオール類、トリオール類、テトラオール類などがある。ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられ、トリオール類としては、例えば、グルセリン、トリメチロールプロパンなどがあり、テトラオール類としては、例えばペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0011】
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの群から選ばれた多価アルコールの単独または混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール、及び例えば、ε−カプロラクトンを多価アルコールに開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
【0012】
アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル等、またはグリセリンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル等の群から選ばれた単独または混合物とメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル等の群から選ばれた単独または混合物とを必須成分とし、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル等、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル等、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独または混合物の存在下、あるいは非存在下において重合させて得られるアクリルポリオールが挙げられる。
【0013】
ポリエーテルポリオール類としては、多価ヒドロキシ化合物の単独または混合物に、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、更にエチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類及び、これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が挙げられる。
【0014】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、
(1)例えば、ジクリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなど、
(2)例えば、エリスリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等糖アルコール系化合物など、
(3)例えば、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類など、
(4)例えば、トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース
、ラクトース、メリビオース等の二糖類など、
(5)例えば、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類など、
(6)例えば、スタキオース等の四糖類など、
等が挙げられる。
【0015】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
ポリオールの統計的1分子が持つ水酸基数(以下、水酸基平均数という。)は2〜8であることが好ましい。水酸基平均数が2未満であると、本発明の式(1)中のnの範囲が得られず、硬化性が低下する。また、8を超えると、得られたポリイソシアネート組成物の粘度が非常に高くなるか、この粘度を低下させるためにポリオールの分子量を大きくすると、これで得られたポリイソシアネート組成物を用いて形成した塗膜の硬度の低下を招く場合がある。好ましい水酸基平均数は、3である。
好ましいポリオールの例としては、前記の低分子量ポリオール及びポリエステルポリオールであり、さらに好ましくは、ポリエステルポリオールであり、その中でも最も好ましくは、低分子量ポリオールにε−カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオールである。
【0016】
また、ポリオールの数平均分子量は、100〜1000が好ましく、より好ましくは100〜800であり、さらに好ましくは、150〜500である。数平均分子量が100未満と小さい場合は、水酸基平均数が小さくなるため、本発明の式(1)中のnの範囲が得られにくく、及び/又は形成した塗膜の可とう性が不足する場合があり、ポリオールの数平均分子量が1000を超えた場合、形成した塗膜の硬度の低下を招く場合がある。
本発明のポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群のそれぞれの群から選ばれた合計2種以上のジイソシアネートと1種以上のポリオールから誘導される。
【0017】
本発明のポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート骨格を構成する脂肪族ジイソシアネート成分と脂環族ジイソシアネート成分の質量比率は90:10〜60:40であることが好ましく、より好ましくは80:20〜60:40である。前記比が90:10未満であると、これにより得られる塗膜の硬度が得られにくくなる場合があり、60:40を超えると、ポリイソシアネート組成物の粘度が高くなる場合がある。
本発明のポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート骨格を構成するとは、単にポリイソシアネート組成物中に存在するという意味ではなく、ポリイソシアネート構造中に組み込まれていることを示す。
本発明のポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート骨格を構成するポリオール成分濃度は1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。1質量%未満であると、イソシアネート基平均数が低下しやすく、30質量%を超えると、イソシアネート基濃度が低下しやすい。
【0018】
本発明のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数nは3〜6であることが好ましく、より好ましくは3.3〜5である。3未満の場合は、ポリイソシアネート組成物の架橋性が低下する場合があり、6を超えると、塗料用硬化剤として使用した場合に塗料のポットライフが短くなる場合がある。
イソシアネート基平均数は以下の式(2)による求められる。
【数1】

【0019】
本発明のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度は3〜22質量%が好ましい。3質量%未満の場合は、形成された塗膜中のウレタン結合濃度が低下しやすく、可とう性が低下する場合があり、22質量%を越える場合は、イソシアネート基平均数の増加がし難く、硬化性が劣る場合がある。
本発明のポリイソシアネート組成物の数平均分子量は600〜1200が好ましく、より好ましくは600〜1000である。600未満ではイソシアネート基平均数が低下しやすく、1200を越えるとポリイソシアネート組成物の粘度が高くなる場合がある。
本発明のポリイソシアネート組成物の25℃における粘度は5〜150Pa・sであることが好ましく、より好ましくは10〜120Pa・sであり、さらに好ましくは10〜100Pa・sである。5Pa・s未満の場合は、結果的にイソシアネート基平均数が低下しやすく、150Pa・sを超える場合、作業性が低下する場合がある。
本発明のポリイソシアネート組成物中の未反応ジイソシアネートモノマー濃度は3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。未反応ジイソシアネート濃度が3質量%を越えると、ポリイソシアネート組成物の硬化性が低下する場合がある。
【0020】
本発明のポリイソシアネート組成物の製造方法について説明する。
本発明のポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群のそれぞれの群から選ばれた2種以上のジイソシアネートと1種以上のポリオールを反応させることを特徴として誘導される。ジイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基のウレタン化反応及び、イソシアヌレート化反応の両者を併用することが好ましい。イソシアヌレート化反応後、前記ポリオールを添加し、ウレタン化反応を行うことができるが、好ましくはウレタン化反応後、イソシアヌレート化反応を行うことが、イソシアネート基平均数を高めるために好ましい。
イソシアヌレート化反応により、その前に形成されたウレタン基の一部またはすべてはアロファネート基となる。
【0021】
前記のジイソシアネートとポリオールを反応させる場合のジイソシアネートとポリオールの比率は、好ましくはイソシアネート基/水酸基の当量比が10〜100であり、より好ましくは15〜80であり、さらに好ましくは20〜60である。10未満であると、得られるポリイソシアネート組成物の粘度が高くなり、100を超えると、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基平均数の増加が難しい場合がある。反応温度は、好ましくは50〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。50℃未満では反応が進みにくく、200℃を超えると製品の着色など好ましくない副反応が生じる場合がある。
水酸基の一部またはすべてが反応した後または反応と同時に、イソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応を行うことが好ましい。
【0022】
本発明のポリイソシアネート組成物は上記のイソシアヌレート化反応によるイソシアヌレート基を有することが好ましく、より好ましくは、イソシアヌレート3量体濃度が20質量%以上であり、さらに好ましくは、イソシアヌレート3量体濃度が30質量%以上である。イソシアヌレート基を有しない場合、これにより得られたポリイソシアネートを使用して得られる塗膜の硬度が低下しやすく、さらにイソシアヌレート3量体濃度が20質量%未満の場合、ポリイソシアネート組成物の粘度が高くなりやすい。
イソシアヌレート化反応の反応温度は、50〜200℃、好ましくは50〜150℃である。50℃未満では、反応が進みにくく、200℃を超えると製品の着色など好ましくない副反応が生じる場合がある。
【0023】
この際に使用するイソシアヌレート化触媒としては、例えば一般に塩基性を有するものが好ましく、(1)例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、(2)例えばトリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、(3)酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の例えば錫、亜鉛、鉛等のアルカリ金属塩、(4)例えばナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、(5)例えばヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、(6)マンニッヒ塩基類、(7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、(8)例えばトリブチルホスフィン等の燐系化合物等が挙げられる。
この中で4級アンモニウムの有機弱酸塩が好ましく、さらにテトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩がさらに好ましい。
これらは反応終了させるために、触媒を中和する例えばリン酸、リン酸エステルなどの酸性物質、熱分解、化学分解等により不活性化することができる。
【0024】
ポリイソシアネート組成物の収率は10〜70質量%の範囲から選択される。高い収率で得られるポリイソシアネート組成物の粘度は高くなる。
これらの反応は溶媒を用いても、用いなくても良い。溶媒を用いる場合は、イソシアネート基に対して不活性な溶媒を用いるべきである。
反応終了後、未反応ジイソシアネートモノマーは、薄膜蒸発缶、抽出などにより除去される。
本発明のポリイソシアネート組成物は、単独の場合だけでなく、2種以上のポリイソシアネート組成物を混合した場合にも適用される。
架橋性に優れる硬化剤を用いたウレタン塗料系組成物は、その硬化剤の反応性ゆえに、塗料のポットライフが短くなるのが一般的である。本発明のウレタン塗料系組成物は、架橋性、乾燥性に優れるにもかかわらず、充分なポットライフを有することは驚くべきことであった。
【0025】
本発明のポリイソシアネート組成物はそのイソシアネート基の一部を活性水素含有化合物で後変性反応させたポリイソシアネート組成物として使用することもできる。ここで記載する後変性反応とは、ポリイソシアネート組成物を得た後に、そのポリイソシアネート組成物の性能を付与させるため、そのイソシアネート基の一部を活性水素含有化合物と反応させることをいう。活性水素含有化合物は、単独で用いても良いし、2種以上を併用して用いてもよい。この場合、使用する活性水素含有化合物によっては主剤であるポリオールとの相溶性が向上する場合がある。
活性水素含有化合物で後変性反応させる場合の後変性率は、ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の5〜30%であることが好ましく、更に好ましくは5〜20%である。5%未満であるとポリオールとの相溶性が良好とならない場合があり、30%を越える場合、塗膜の硬化性が充分でない場合が生じる。
【0026】
活性水素含有化合物としては、モノアルコール、モノカルボン酸が用いられる。モノアルコールの具体例としては、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、n−ヘキサノール、2−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,3,5−トリメチルヘキサノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、nートリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノール、n−ヘキサデカノール、n−ヘプタデカノール、n−オクタデカノール、n−ノニルデカノール、エイコサノール、5−エチル−2−ノニルアルコール、トリメチルノニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、3,9−ジエチル−6−トリデカノール、2−イソヘプチルイソウンデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノールなどの脂肪族アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール、ノルボルニルアルコールなどの脂環族アルコール、あるいはフェノール性の芳香族アルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0027】
また、2−ブトキシエタノールなどのエーテル基含有アルコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレートなどのエステル基含有アルコールなども挙げられる。モノカルボン酸としては、吉草酸、、トリメチル酢酸、2−メチルブタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族カルボン酸、安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸などの芳香族カルボン酸が挙げられる。好ましくは、モノアルコールであることが好ましく、イソブタノール、イソペンタノール、2−エチルヘキサノール、3,3,5−トリメチルヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール、ノルボルニルアルコールなどの分岐アルコールがより好ましく、更に好ましくは、イソブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノールである。
この反応は溶媒を用いても、用いなくてもよい。溶媒を用いる場合は、イソシアネート基に対して不活性な溶媒を用いるべきである。反応温度は通常20〜160℃、好ましくは40〜130℃である。
この反応は、触媒を用いても用いなくても良く、用いる場合の触媒として錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩及び3級アミン等が挙げられる。
【0028】
本発明のポリイソシアネート組成物はそのイソシアネート基の一部または全てをブロック剤で封鎖し、ブロックポリイソシアネートとしても使用できる。
この場合に使用されるブロック剤としては、活性水素を分子内に1個有する化合物が好ましく、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等がある。より具体的なブロック化剤の例を下記に示す。
(1)メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのアルコール類。
(2)アルキルフェノール系;炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノおよびジアルキルフェノール類であって、例えば、n−プロピルフェノール、i−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
【0029】
(3)フェノール系;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
(4)活性メチレン系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等。
(5)メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
(6)酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等。
(7)酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
(8)イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等。
(9)尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
(10)オキシム系;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
(11)アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
(13)ピラゾール系;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等。
【0030】
好ましいブロック剤は、アルコール系、オキシム系、酸アミド系、活性メチレン系、ピラゾール系から選ばれる少なくとも1種である。
ポリイソシアネート組成物とブロック剤とのブロック化反応は溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いる必要がある。
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩及び3級アミン系化合物、ナトリウムなどのアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
反応は、−20〜150℃で行うことが好ましく、より好ましくは30〜100℃である。150℃を越える温度では副反応を起こす可能性があり、他方、−20℃未満になると反応速度が小さくなりやすい。
【0031】
本発明の塗料組成物は、前記ポリイソシアネート組成物に加えて、イソシアネート基と反応性を有する活性水素を分子内に2個以上有するポリオールとが混合され、本発明のウレタン系塗料組成物を構成する。ポリイソシアネート組成物はこのポリオールと反応して、架橋塗膜を形成することができる。ポリオール以外に、ポリアミン、ポリチオールなども使用することができる。このポリオールの例としては、前記の高分子ポリオールの以外に、フッ素ポリオールなどが挙げられる。フッ素ポリオールは分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば、特開昭57−34107号公報、特開昭61−275311号公報で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体が挙げられる。前記ポリオールの水酸基価は30〜200mgKOH/g、酸価0〜30mgKOH/gの中から選択される。好ましいポリオールはアクリルポリオール、ポリエステルポリオールである。
必要に応じて、完全アルキル型、メチロール基型アルキル、イミノ基型アルキル等のメラミン系硬化剤を添加することができる。
【0032】
また、用途、目的に応じて各種溶剤、添加剤を用いることができる。溶剤としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル類、ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、などの群から目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて、酸化防止剤例えば、ヒンダードフェノール等、紫外線吸収剤例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等、顔料例えば、酸化チタン、カーボンブラック、インジゴ、キナクリドン、パールマイカ等、金属粉顔料例えば、アルミ等、レオロジーコントロール剤例えばヒドロキシエチルセルロース、尿素化合物、マイクロゲル等、硬化促進剤例えば、錫化合物、亜鉛化合物、アミン化合物等を添加してもよい。
この様に調整された塗料組成物はロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装などにより、鋼板、表面処理鋼板などの金属及びプラスチック、無機材料などの素材にプライマーまたは上中塗りとして有用であり、更に防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装、プラスチック塗装などに美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性などを付与するために有用である。また、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤などのウレタン原料としても有用である。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例などに基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は、下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCという)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)HLC−8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)TSKgel SuperH1000(商品名)×1本
TSKgel SuperH2000(商品名)×1本
TSKgel SuperH3000(商品名)×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0034】
(残存ジイソシアネートモノマー濃度)
前記GPC測定で得られる未反応ジイソシアネート相当の分子量(例えば、HDIであれば168)のピーク面積%をその質量濃度として表した。
(イソシアヌレート3量体濃度)
前記GPC測定で得られるイソシアヌレート3量体相当の分子量(例えば、IPDIであれば667)のピーク面積%をその濃度として表した。
(アロファネート基、イソシアヌレート基)
以下の装置を用いた 1H−NMR測定から、アロファネート基とイソシアヌレート基の存在を確認した。
装置:日本電子社製、JNM−LA400(商品名)
溶剤:重クロロホルム
【0035】
(粘度の測定)
E型粘度計(トキメック社製、VISCONIC;ED型(商品名))を用いて、25℃で測定した。
(ゲル分率)
硬化塗膜を、アセトン中に20℃、24時間浸漬後、未溶解部質量の浸漬前質量に対する値を計算し、90質量%未満の場合は×、90質量%以上の場合は○で表した。
(塗膜硬度)
ケーニッヒ硬度計(BYK・Gardner社のPendulum,hardness,tester(商品名))を用いて、測定温度23℃、塗膜膜厚40μmで測定した。ケーニッヒ硬度が100未満の場合は×、100以上の場合は○で表した。
【0036】
(ポットライフ)
アクリルポリオール(アクゾノーベル社の商品名「SETALUX1903」、樹脂固形分75%、水酸基価:150mgKOH/樹脂g)とポリイソシアネート組成物を水酸基とイソシアネート基の当量比が1.0になるように混合し、更にSTANN・BL(三共有機合成社の商品名)を塗料固形分に対して100ppmを混合し、シンナーとして酢酸ブチルでフォードカップNo.4で測定した粘度が15秒になるように希釈した。
上記塗料組成物の粘度を23℃で測定した場合に、6hr後に25秒未満の場合を○、25秒以上になる場合を×として表した。
【0037】
(製造例1)(ポリイソシアネート組成物の製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:700部、IPDI:300部、3価アルコールであるポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール「プラクセル303」(ダイセル化学の商品名;分子量300)32部を仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃、1時間保持しウレタン化を行った。その後反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が32%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDI、IPDIを薄膜蒸留装置により除去した。
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は19000mPa・s、イソシアネート基基含有量は19.0質量%、ジイソシアネートモノマー濃度は0.3質量%、数平均分子量は900、イソシアネート基平均数は4.1、HDI成分/IPDI成分の質量比は77/23、ポリオール成分濃度は9.7質量%であった。アロファネート基、イソシアヌレート基の存在を確認した。結果は表1に記載した。
【0038】
(製造例2、3)(ポリイソシアネート組成物の製造)
表1に示す以外は製造例1と同様に行った。結果を表1に示す。
(製造例4)(ポリイソシアネート組成物の製造)
吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、製造例2で得られたのポリイソシアネート組成物500部、酢酸ブチル130部、シクロヘキサノール22部を仕込み、攪拌下反応器内温度を70℃に保持し2時間ウレタン化反応を行い、イソシアネート濃度が13.0質量%になった時点で、温度を下げ、反応を終了とした。得られたポリイソシアネート溶液の25℃の粘度は、520mPa・s、数平均分子量は910、イソシアネート基平均数は3.5であった。
その後、エバポレーターで酢酸ブチルを減圧留去し、100質量%を得た。この時の25℃における粘度は98000mPa・sであった。結果は表2に記載した。
【0039】
(製造例5)(ポリイソシアネート組成物の製造)
表2に示す以外は製造例4と同様に行った。結果を表2に示す。
(比較製造例1、2)(ポリイソシアネート組成物の製造)
表1に示す以外は製造例1と同様に行った。結果を表1に示す。
(比較製造例3)(ポリイソシアネート組成物の製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:700部、IPDI:300部を仕込み、80℃、2時間保持した。その後、イソシアヌレート化触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエートを加え、イソシアヌレート化反応を行い、転化率が37質量%になった時点で2時間後、リン酸を添加して反応を停止した。
その後、反応液を濾過した後、未反応のHDI、IPDIを薄膜蒸留装置により除去した。得られたポリイソシアネートの物性を表1に示す。
【0040】
(比較製造例4)(ポリイソシアネート組成物の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000部、イソブタノール1.0部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃、2時間保持した。その後、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、イソシアヌレート化反応を行い、HDIモノマーの転化率が18%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液を更に160℃、1時間保持した。この加熱によりウレトジオン基含有ポリイソシアネートが生成した。反応液を冷却後、ろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。ウレトジオン基を含有した後の収率は20%となった。得られたポリイソシアネートの特性を表1に示す。
【0041】
(比較製造例5)(ポリイソシアネート組成物の製造)
比較製造例2で得られたポリイソシアネート組成物と比較製造例4で得られたポリイソシアネート組成物を1/1(質量比)で混合させた。得られたポリイソシアネートの特性を表3に示す。
(実施例1〜5、比較例1〜5)(塗料組成物の製造、ゲル分率、塗膜硬度評価)
アクリルポリオール(アクゾノーベル社の商品名「SETALUX1903」、樹脂分濃度75質量%、水酸基価150mgKOH/樹脂g)と製造例1〜5、比較製造例1〜5で得られたポリイソシアネート組成物を用いて、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で塗料配合し、酢酸ブチルで塗料粘度がフォードカップNo.4で15秒になるように調整した。作成した塗料溶液をガラス板に乾燥後膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装し、90℃、30分パスで硬化し、ゲル分率、塗膜硬度を評価した。結果を表4に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明による塗料用組成物は、硬化性と乾燥性に優れ、かつ塗料用硬化剤として使用した場合に充分なポットライフを有し、自動車、建築、家電等分野の塗料として広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記(1)及び(2)の2成分を含有することを特徴とする塗料組成物。
(1)水酸基価30〜200mgKOH/g、酸価0〜30mgKOH/gであるポリオール。
(2)下記構造式(1)で表され、ポリイソシアネート骨格におけるポリオール成分濃度が1〜30質量%、脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=90/10〜60/40(質量比)であり、粘度が5〜150Pa・s/25℃、数平均分子量600〜1200、かつ、遊離のジイソシアネート濃度3質量%以下であるポリイソシアネート組成物。
R−(NCO)n ・・・式(1)
(式中、Rは、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシアネート群のそれぞれの群から選ばれた合計2種以上のジイソシアネートと1種以上のポリオールから誘導されたポリイソシアネートにおけるイソシアネート基を除く残基であり、ジイソシアネートとポリオールとがアロファネート結合及び/又はウレタン結合を介して結合されている基であり、nは3〜6である。)
【請求項2】
ポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート骨格におけるポリオール成分濃度が1〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネート組成物のポリオール群が数平均分子量150〜500であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
式(1)のイソシアネート基平均数nが3.3〜5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
ポリイソシアネート組成物の数平均分子量が600〜1000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
ポリイソシアネート組成物のポリオール群がポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
ポリイソシアネート組成物のポリイソシアネート骨格における脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=80/20〜60/40(質量比)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基がブロック剤で封鎖されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗料組成物。

【公開番号】特開2008−156451(P2008−156451A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345873(P2006−345873)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】