説明

ウロニウムまたはチオウロニウムカチオンを有するイオン液体

本発明は、チオウロニウムまたはウロニウムカチオンを有する塩、それらの製造方法、およびそれらのイオン液体としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウロニウムまたはチオウロニウムカチオンおよび種々のアニオンを含む塩、これらの塩の製造方法、およびこれらのイオン液体としての使用に関する。
イオン液体または液体塩は、有機カチオンおよび一般に無機アニオンからなるイオン種である。これらは中性分子を含まず、一般に373K未満の融点を有する。イオン液体として用いられる多様な化合物が先行技術においてに知られている。このように、無溶媒のイオン液体は、HurleyおよびWierにより、一連の米国特許(US 2,446,331、US 2,446,339、US 2,446,350)において初めて開示された。これらの「室温溶融塩」は、AlClおよび多数のn−アルキルピリジニウムハライドに基づいていた。
【0002】
近年、この主題について幾つかの概説文献が刊行された(R. Sheldon「イオン液体における触媒反応(Catalytic reactions in ionic liquids)」Chem. Commun., 2001, 2399-2407;M.J. Earle, K.R. Seddon「イオン液体。未来のグリーン溶媒(Ionic liquids. Green solvent for the future)」Pure Appl. Chem.., 72 (2000), 1391-1398;P. Wasserscheid, W. Keim「イオン液体−遷移金属触媒作用のための新規な溶液(Ionische Fluessigkeiten - neue Loesungen fuer die Uebergangsmetallkatalyse [Ionic Liquids--Novel Solutions for Transition-Metal Catalysis])」Angew. Chem., 112 (2000), 3926-3945;T. Welton「室温イオン液体。合成と触媒用の溶媒(Room temperature ionic liquids. Solvents for synthesis and catalysis)」Chem. Rev., 92 (1999), 2071-2083;R. Hagiwara, Ya. Ito「アルキルイミダゾリウムカチオンとフルオロアニオンの室温イオン液体(Room temperature ionic liquids of alkylimidazolium cations and fluoroanions)」Journal of fluorine Chem., 105 (2000), 221-227)。
【0003】
イオン液体の特性、例えば融点、熱的および電気化学的安定性、粘性などはアニオンの性質に大きく影響される。対照的に、極性および親水性または親油性は、カチオン/アニオン対の好適な選択を通して変えることができる。従って、その使用に関する付加的な可能性を促進する、変化した特性を有する新規なイオン液体の需要が存在する。
本発明の目的は、イオン液体として使用可能な価値ある特性を有する、新規で安定な塩様の化合物、およびそれらの製造方法を提供することである。特に本発明の目的は、非常に安定なカチオンを有するイオン化合物を提供することである。
【0004】
この目的は、正の電荷が複数のヘテロ原子に非局在化されている、ウロニウムまたはチオウロニウムカチオンを有する塩であって、一般式(1):
【化1】

式中、
Xは、OまたはSを示し、
式中、置換基RおよびRは、各々が互いに独立して、
1〜20個のC原子を有する直鎖または分枝状のアルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝状のアルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝状のアルキニル、
3〜7個のC原子を有する、飽和、部分もしくは完全不飽和シクロアルキル、
の意味を有し、
これらは1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されてもよく、
そしてRはまた水素を示してもよく、
【0005】
ここで1個または2個以上の置換基RまたはRは、部分的もしくは完全にハロゲンによって置換されるか、または部分的にCNもしくはNOによって置換されてもよく、しかしここで、Rのα位でのハロゲン化は除外され、そして、
ハロゲンはF、Cl、BrまたはIを示し、
ここで置換基RおよびRは、単結合または二重結合によって対として互いに結合されてもよく、
そしてここで、1個または2個以上の置換基RまたはRの1個の炭素原子または2個の隣接していない炭素原子であって、ヘテロ原子に直接隣接していない前記炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SO−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR’−、−PR’−、−P(O)R’−、−P(O)R’−O−、−O−P(O)R’−O−、および−P(R’)=N−の群から選択される原子および/または原子群によって置き換えられてもよく、ここでR’は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化アルキル、3〜7個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換フェニル、または無置換もしくは置換複素環であり、
【0006】
そして、
は、以下からなる群:
【化2】

から選択され、
ここで置換基RおよびRF’は、各々が互いに独立して、
1〜20個のC原子を有する完全フッ素化および直鎖または分枝状のアルキルであって、ここでRF’に対してはトリフルオロメチル基は除外され、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する完全フッ素化および直鎖または分枝状のアルケニル、
完全フッ素化フェニルおよび、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分もしくは完全不飽和シクロアルキルであって、これらはペルフルオロアルキル基により置換されてもよい、
との意味を有し、
【0007】
ここで置換基RまたはRF’は、単結合または二重結合によって互いに対として結合されてもよく、そして、
ここで、置換基RまたはRF’の1個の炭素原子または2個の隣接していない炭素原子であって、ヘテロ原子に対してα位ではない前記炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、−SO−、−N=、−N=N−、−NR’−、−PR’−および−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子群により置き換えられてもよく、または末端基R’−O−SO−もしくはR’−O−C(O)−を有することができ、ここでR’は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化アルキル、3〜7個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換フェニル、または無置換もしくは置換複素環を示し、
【0008】
そして、
ここで、置換基Rは各々互いに独立して、
=[(CN)CRもしくは[(RO(O)C)CRおよびX=OもしくはSの場合は水素、または、
=[RCHOSO、X=SもしくはO、並びに置換基RおよびR=1〜20個のC原子を有するアルキル基、
1〜20個のC原子を有する直鎖または分枝状のアルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝状のアルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝状のアルキニル、
3〜7個のC原子を有する、飽和、部分もしくは完全不飽和シクロアルキルであって、
これらは1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されてもよい、
の場合は水素、
の意味を有し、
ここで置換基Rは、CN、NOまたはハロゲンによって部分的に置換されてもよく、そして、
【0009】
ハロゲンはF、Cl、BrまたはIを示し、
ここで置換基Rは、単結合または二重結合によって対として互いに結合されてもよく、
ここで、置換基Rの1個の炭素原子または2個の隣接していない炭素原子であって、ヘテロ原子に対してα位ではない前記炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SO−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR’−、−PR’−および−P(O)R’−、P(O)R’O−、OP(O)R’O−、−PR’=N−、−C(O)NH−、−C(O)NR’−、−SONH−または−SONR’−の群から選択される原子および/または原子群により置き換えられてもよく、ここでR’は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化アルキル、3〜7個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換フェニル、または無置換もしくは置換複素環を示し、
そして変数、
nは1〜20を示し、
mは0、1、2または3を示し、
yは0、1、2、3または4を示し、
zは0、1、2または3を示し、
【0010】
ただしここで、
X=S並びに、RおよびR=1〜20個のC原子を有するアルキル基に対しては、アニオンA=[BF、CFCOO、[B(Cまたは[CHSOが可能であり、
そして、
X=Oに対しては、アニオンA=CFCOOおよび[B(Cが可能であり、そして
X=OおよびR=エチルに対しては、アニオンA=CHCHOSOが除外される、
との条件下である、
で表される前記塩を提供することにより、達成される。
本発明の目的のために、完全不飽和置換基はまた、芳香族置換基も意味するものとする。
【0011】
本発明による化合物は、特に、非常に安定なカチオンを特徴とする。
本発明による化合物は従って、随意的に置換されたチオウロニウムまたはウロニウムカチオンを有する塩である。
水素以外の好適な置換基Rは、本発明によれば以下である:C〜C20、特にC〜C12アルキル基、C〜C20、特にC〜C12アルケニル基またはアルキニル基および、飽和または不飽和、すなわちまた芳香族のC〜Cシクロアルキル基であって、これらはC〜Cアルキル基特にフェニルにより置換されてもよい。
【0012】
本発明による塩の4個の置換基Rは、同一でも異なっていてもよい。
本発明により好適な置換基Rは、以下である:C〜C20、特にC〜C12アルキル基、C〜C20、特にC〜C12アルケニルまたはアルキニル基および、飽和または不飽和、すなわちまた芳香族のC〜Cシクロアルキル基であって、これらはC〜Cアルキル基特にフェニルにより置換されてもよい。
【0013】
〜C12アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イロプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ペプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルである。随意的に、部分的もしくは完全にFによって置換された、例えばジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、、ヘプタフルオロブチル、ノナフルオロブチルまたはノナフルオロヘキシルである。
好ましいアルキル基は、上記のように1〜6個のC原子を有する。
【0014】
3〜7個のC原子を有する、無置換の飽和または部分もしくは完全不飽和シクロアルキル基は、従って、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタ−1,3−ジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロヘキサ−1,4−ジエニル、フェニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、シクロヘプタ−1,4−ジエニルまたはシクロヘプタ−1,5−ジエニルであって、これらはC〜Cアルキル基によって置換されてもよく、ここで、シクロアルキル基またはC〜Cアルキル基によって置換されたシクロアルキル基は替わりにまた、F、Cl、BrもしくはI、特にFもしくはClなどのハロゲン原子、CNまたはNOによって置換されてもよい。
【0015】
置換基RおよびRは、ハロゲン原子、特にFおよび/またはClによって、部分的または完全に置換されてもよく、またはCNもしくはNOによって部分的に置換されてもよく、ここでRのα−CH基のハロゲン化は除外される。さらに、置換基RおよびRは、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SOO−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR’−、−PR’−、−P(O)R’−、−P(O)R’−O−、−O−P(O)R’−O−、−P(O)(NR’)−NR’−および−PR’=N−の群から選択される、1個または2個の互いに隣接しないヘテロ原子または原子群を含むことができ、ここでR’は、非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、無置換もしくは置換フェニル、または無置換もしくは置換複素環であることができる。
R’においては、C〜Cシクロアルキルは、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルである。
【0016】
R’においては、置換フェニルは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、Br、I、OH、C〜Cアルコキシ、CN、SCN、SCF、SOCF、C(O)O−C〜Cアルキル、NH、C〜Cアルキルアミノまたは、C〜Cジアルキルアミノ、COOH、C(O)NR”、SOOR”、SOX’、SONR”、SOHまたはNHC(O)R”により置換されたフェニルを示し、ここでX’はF、ClまたはBrを示し、R”は、R’について定義されたように、非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルを示し、例えばo−、m−もしくはp−メチルフェニル、o−、m−もしくはp−エチルフェニル、o−、m−もしくはp−プロピルフェニル、o−、m−もしくはp−イソプロピルフェニル、o−、m−もしくはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−もしくはp−アミノフェニル、o−、m−もしくはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−もしくはp−ニトロフェニル、o−、m−もしくはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−もしくはp−メトキシフェニル、o−、m−もしくはp−エトキシフェニル、o−、m−もしくはp−(トリフルオロメチル)フェニル、o−、m−もしくはp−(トリフルオロメトキシ)フェニル、o−、m−もしくはp−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル、o−、m−もしくはp−フルオロフェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、o−、m−もしくはp−ブロモフェニル、o−、m−もしくはp−ヨードフェニル、さらに好ましくは、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジヒドロキシフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメトキシフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2,4,5―トリメチルフェニルである。
【0017】
R’においては、複素環は、5〜13個の環メンバーを有する、飽和または不飽和の単環式または二環式複素環式基を意味し、ここで1、2もしくは3個のNおよび/または1もしくは2個のSまたはO原子が存在することができ、そして複素環式基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、Br、I、OH、C〜Cアルコキシ、CN、SCN、SCF、SOCF、C(O)O−C〜Cアルキル、NH、C〜Cアルキルアミノもしくは、C〜Cジアルキルアミノ、COOH、C(O)NR”、SOOR”、SOX’、SONR”、SOHまたはNHC(O)R”によって一置換もしくは多置換されてもよく、ここでX’およびR”は上記の意味を有する。
【0018】
複素環式基は好ましくは、置換または無置換の、2−もしくは3−フリル、2−もしくは3−チエニル、1−、2−もしくは3−ピロリル、1−、2−、4−もしくは5−イミダゾリル、3−、4−もしくは5−ピラゾリル、2−、4−もしくは5−オキサゾリル、3−、4−もしくは5−イソオキサゾリル、2−、4−もしくは5−チアゾリル、3−、4−もしくは5−イソチアゾリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−、4−、5−もしくは6−ピリミジニル、さらにまた好ましくは、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1−もしくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−もしくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−もしくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−もしくは−5−イル、2−、3−、4−、5−もしくは6−2H−チオピラニル、2−、3−もしくは4−4H−チオピラニル、3−もしくは4−ピリダジニル、ピラジニル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾフリル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチエニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−1H−インドリル、1−、2−、4−もしくは5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6もしくは7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズオキサゾリル、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソオキサゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−もしくは7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キノリニル、1−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−イソキノリニル、1−、2−、3−、4−もしくは9−カルバゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−もしくは9−アクリジニル、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キナゾリニルまたは1−、2−もしくは3−ピロリジニルである。
【0019】
一般性を限定することなく、チオウロニウムまたはウロニウムカチオンの置換基RおよびRの例は、
【化3】

である。
【0020】
4個までの置換基Rはまた、単環式、二環式または多環式カチオンが形成されるように対になって結合することができる。
一般性を限定することなく、かかるカチオンの例は、
【化4】

であって、式中、置換基RおよびRは、上に示された意味または特に好ましい意味を有することができる。上記のカチオンの炭素環または複素環は、随意的にまた、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、Br、I、OH、C〜Cアルコキシ、CN、SCN、SCF、SOCF、C(O)O−C〜Cアルキル、NH、C〜Cアルキルアミノもしくは、C〜Cジアルキルアミノ、COOH、C(O)NR”、SOOR”、SONR”、SOX’、SOHまたはNHC(O)R”、または置換もしくは無置換のフェニルまたは無置換もしくは置換複素環により、置換されてもよく、ここでX’およびR”は上記の意味を有する。
【0021】
本発明の塩のアニオンAは、
【化5】

から選択され、
【0022】
式中、置換基RおよびRF’は、各々互いに独立して、
1〜20個のC原子を有する完全フッ素化および直鎖または分枝状のアルキルであって、ここでRF’に対してはトリフルオロメチル基は除外され、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する完全フッ素化および直鎖または分枝状のアルケニル、
完全フッ素化フェニルおよび、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分もしくは完全不飽和シクロアルキルであって、これらはペルフルオロアルキル基により置換されてもよい、
との意味を有し、
ここで置換基RまたはRF’は、単結合または二重結合によって互いに対として結合されてもよく、そして、
ここで、置換基RまたはRF’の1個の炭素原子または2個の隣接していない炭素原子であって、ヘテロ原子に対してα位ではない前記炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、−SO−、−N=、−N=N−、−NR’−、−PR’−および−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子群により置き換えられてもよく、または末端基R’−O−SO−もしくはR’−O−C(O)−を有することができ、ここでR’は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化アルキル、3〜7個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換フェニル、または無置換もしくは置換複素環を示し、
【0023】
そして、
ここで、置換基Rは各々互いに独立して、
=[(CN)CRもしくは[(RO(O)C)CRおよびX=OもしくはSの場合は水素、または、
=[RCHOSO、X=SもしくはO、並びに置換基RおよびR=1〜20個のC原子を有するアルキル基、
1〜20個のC原子を有する直鎖または分枝状のアルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝状のアルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝状のアルキニル、
3〜7個のC原子を有する、飽和、部分もしくは完全不飽和シクロアルキルであって、
これらは1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されてもよい、
の場合は水素、
の意味を有し、
ここで置換基Rは、CN、NOまたはハロゲンによって部分的に置換されてもよく、そして、
【0024】
ハロゲンはF、Cl、BrまたはIを示し、
ここで置換基Rは、単結合または二重結合によって対として互いに結合されてもよく、
ここで、置換基Rの1個の炭素原子または2個の隣接していない炭素原子であって、ヘテロ原子に対してα位ではない前記炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SO−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR’−、−PR’−および−P(O)R’−、P(O)R’O−、OP(O)R’O−、−PR’=N−、−C(O)NH−、−C(O)NR’−、−SONH−または−SONR’−の群から選択される原子および/または原子群により置き換えられてもよく、ここでR’は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化アルキル、3〜7個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換フェニル、または無置換もしくは置換複素環を示し、
そして変数、
nは1〜20を示し、
mは0、1、2または3を示し、
yは0、1、2、3または4を示し、
zは0、1、2または3を示し、
【0025】
ただしここで、
X=S並びに、RおよびR=1〜20個のC原子を有するアルキル基に対しては、アニオンA=[BF、CFCOO、[B(Cまたは[CHSOが可能であり、
そして、
X=Oに対しては、アニオンA=CFCOOおよび[B(Cが可能であり、そして
X=OおよびR=エチルに対しては、アニオンA=CHCHOSOが除外される、
との条件下である。
【0026】
2〜20個のC原子を有する直鎖または分枝状のアルケニルであって、複数の二重結合もまた存在するものは、例えば、アリル、2−もしくは3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらにまた4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C17−、−C1019〜−C2039であり;好ましくは、アリル、2−もしくは3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニルであり、さらに選好されるのは4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
2〜20個のC原子を有する直鎖または分枝状のアルキニルであって、複数の三重結合もまた存在するものは、例えば、エチニル、1−もしくは2−プロピニル、2−もしくは3−ブチニル、さらに4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C15−、−C1017〜−C2037であり;好ましくはエチニル、1−もしくは2−プロピニル、2−もしくは3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルまたはヘキシニルである。
【0027】
1個のアニオン中に複数のRまたはRF’が存在する場合、これらはまた、二環式または多環式アニオンが形成されるよう、対になって単結合または二重結合により結合することもできる。
さらに、置換基RまたはRF’は、1個もしくは2個の互いに隣接しない原子または原子群を、ヘテロ原子に対してα位ではない位置に、−O−、−SO−および−NR’−の基、または末端基−SOX’から選択して含むことができ、ここでR’は、=非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、無置換もしくは置換フェニルであって−Cを含むか、または無置換もしくは置換複素環であることができ、そしてX’=F、ClまたはBrである。
【0028】
一般性を限定することなく、アニオンの置換基RまたはRF’の例は:
【化6】

である。
F’は、好ましくはペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルまたはノナフルオロブチルである。
は、好ましくはトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルまたはノナフルオロブチルである。
【0029】
請求項1のディスクレーマーの限定による、本発明によるアニオンの幾つかの例を以下に示す。
【化7】

【0030】
ディスクレーマーを考慮したこの群の特に好適なアニオンは、[RSO、[P(C2n+1−m6−y、[RP(O)O]、[BF4−zまたは[BF(CN)4−zであって、式中、n、m、yおよびzは上記の意味の1つを有し、例えば、[B(CN)、[(CPF、[(CPF、[(CPF、[(CPF、[B(C)F、[(CFP(O)O]、[(CP(O)O]または[B(CFである。ディスクレーマーを考慮したこの群の非常に特に好ましいアニオンは、[BF、[(CPF、[(CP(O)O]または[CFSOである。
【0031】
特に好ましいアニオンのうち、式[P(C2n+1−m6−yのリン酸塩は、このアニオンの選択が特に低い粘性を有する式(1)で表される塩をもたらすために、特別の意味を有する。本発明に従って好ましいのは、式(1)で表される塩の群であって、式中、カチオンの置換基Rが、水素または、1〜12個のC原子、特に1〜6個のC原子を有する直鎖もしくは分枝状のアルキル基を示し、そしてAが、式(1)で示される意味または、好ましいかもしくは特に好ましいとされる意味を有するものである。
【0032】
本発明に従って好ましいのは、式(1)で表される塩の群であって、式中、カチオンの置換基Rがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、フェニルおよびシクロヘキシルから選択され、そしてAが、式(1)で示される意味または、好ましいかもしくは特に好ましいとされる意味を有するものである。
本発明に従って好ましいのは、式(1)で表される塩の群であって、式中、Xがイオウを示し、そしてAが、式(1)で示される意味または、好ましいかもしくは特に好ましいとされる意味を有するものである。
【0033】
本発明に従って好ましいのは、式(1)で表される塩の群であって、式中、Xが酸素を示し、そしてAが、式(1)で示される意味または、好ましいかもしくは特に好ましいとされる意味を有するものである。
本発明に従って好ましいのは、式(1)で表される塩の群であって、式中、Rが1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分枝状のアルキル基を示し、これらは部分的もしくは完全にフッ素化されてもよく、しかしRのα−CH基のフッ素化は除外され、そしてXがイオウを示すもの、または、Rが1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分枝状のアルキル基を示し、Xが酸素を示し、そしてAが式(1)で示される意味または、好ましいかもしくは特に好ましいとされる意味を有するものである。
【0034】
本発明に従って好ましいのは、式(1)で表される塩の群であって、式中、Rが1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分枝状のアルキル基を示し、これらは部分的もしくは完全にフッ素化されてもよく、X=S、および置換基Rが、各々が互いに独立して、1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分枝状のアルキル基を示し、そしてAが、式(1)で示される意味または、好ましいかもしくは特に好ましいとされる意味を有するものである。
【0035】
本発明に従って好ましいのは、式(1)で表される塩の群であって、式中、Rが1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分枝状のアルキル基を示し、X=O、および置換基Rが、各々が互いに独立して、1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分枝状のアルキル基を示し、そしてAが、式(1)で示される意味または、好ましいかもしくは特に好ましいとされる意味を有するものである。
本発明は、第二に、本発明による一般式(1)で表されるチオウロニウムまたはウロニウムカチオンを有する塩の、製造方法に関する。この目的のために、チオ尿素C(S)(NRまたは尿素C(O)(NRを、エステルARを用いて、またはオキソニウム塩(R-を用いてアルキル化する。
【0036】
ここでの基ならびに置換基RおよびRは、一般式(1)におけるそれらと同様に定義されるか、または特に指定された意味を有する。Aは、エステルとの反応の場合は、[RCHOSO]、[RSO]、[RSO]、[RC(O)O]および[CClC(O)O]の群から選択することができ、そしてAは、オキソニウム塩との反応の場合は、[(FSOC]および[BFの群から選択することができる。
反応は、少なくとも1つの成分が液体である温度において実施するのが好ましい。反応は、反応混合物が液体である温度範囲において実施するのが特に好ましい。
【0037】
チオ尿素または尿素と、エステルまたはオキソニウム塩との反応は、例えば1,2−ジクロロエタンもしくはジクロロメタンなどの極性有機溶媒中で、例えばヘキサンもしくはペンタンなどの非極性有機溶媒中で、または溶媒なしで例えば融解塩中で、行うことができる。本発明に従って、溶媒混合物も純粋溶媒の替わりに用いることができる。
【0038】
本発明に従って、試薬は、反応物の1つに対し5倍までの過剰の混合比で反応させることができる。しかし反応物は、等モル量で用いるのが好ましい。
本発明による塩は、非常に良好な収率で、通常80%を超える、好ましくは90%を超える収率で単離することができる。
【0039】
本発明はさらに、塩交換(salt exchange)による、本発明の塩の代替的な製造方法に関する。ここでは、一般式(1)で表されるチオウロニウムまたはウロニウムカチオンを有する塩と、[BF、Br、Cl、Iまたは[ClOの群から選択されるアニオンAを、塩Ktまたは酸AHと反応させ、ここでKtはアルカリもしくはアルカリ土類金属であり、Aは、一般式(1)による定義の通りである。
反応は、少なくとも1つの成分が液体である温度において実施されるのが好ましい。反応は、反応混合物が液体である温度範囲において実施されるのが特に好ましい。
【0040】
チオウロニウムまたはウロニウム塩の塩交換は、例えば水、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、メタノールもしくはプロピオニトリルなどの極性溶媒中、例えばジクロロメタンなどの非極性有機溶媒中、または溶媒なしで例えば溶融塩中で、行うことができる。本発明に従って、溶媒混合物を純粋溶媒の替わりに用いることもできる。
【0041】
本発明に従って、試薬は、反応物の1つに対し10%までの過剰の混合比で反応させることができる。しかし反応物は、等モル量で用いるのが好ましい。
本発明による式(1)の塩であって、式中アニオンA=[RP(O)O]のものは、代替的に、トリス(ペルフルオロアルキル)ホスフィンオキシドを、アルコールおよびチオ尿素C(S)(NRもしくは尿素C(O)(NRと反応させることにより製造することができ、ここで式中基Rは上記定義の通りであり、アルコールより強いアルカリ性である。
【0042】
好適なアルコールは、用いた塩基のアルキル化の後に所望のカチオンが形成されるように選択する。
用いるトリス(ペルフルオロアルキル)ホスフィンオキシドは、当業者に知られている従来の方法によって製造することができる。これらの化合物は、好ましくは、ヘキサメチルジシロキサンとの反応により製造する(V. Ya Sememii et al., J. Gen. Chem. USSR (Engl. Trans.) 55, No. 12 (1985), 2415-2417)。
本発明による全ての化合物は、塩様の性質である比較的低い融点(通常100℃未満)を有し、イオン液体として用いることができる。
【0043】
本発明による塩は、多くの合成または触媒反応のための溶媒として用いることができ、例としては、フリーデルクラフトアシル化およびアルキル化、ディールスオルダー付加環化(Diels-Alder cycloaddition)、水素化および酸化反応、ヘック反応などである。さらに、例えばフッ素化溶媒を二次および一次電池のために合成することも可能である。
本発明による化合物を、非水性電解質として、必要な場合は当業者に知られている他の電解質と組み合わせて、用いることもできる。
【0044】
さらに、本発明による塩は非水性極性物質として、好適な反応において、相間移動触媒として、界面活性剤(表面活性剤)として、または均一触媒の異物化(heterogenisation)のための媒体として用いることができる。
本明細書中に引用された全ての明細書、特許、および刊行物の完全な開示内容は、本明細書に参照として組み込まれる。
【0045】
さらなるコメントなしでも、当業者は上の記述を最も広い範囲において利用できると考えられる。好ましい態様および例は、従って、決して限定的でない説明的な開示とみなされる。
NMRスペクトルは、重水素化溶媒中の溶液上、20℃にて、Bruker Avance DRX分光計上で5mmのH/BB広帯域ヘッドおよび重水素ロックで測定した。種々の核の測定周波数は以下である:H:300.13MHz、11B:96.92MHz、19F:282.41MHzおよび31P:121.49MHz。参照方法は、各データセットまたは各スペクトル毎に示される。
【0046】
例1:N,N,N’,N’−テトラメチル−S−エチルイソチオウロニウムトリフレート
【化8】

N,N,N’,N’−テトラメチルチオウレア15.0g(113.4mmol)を、ジクロロメタン50cmに溶解し、エチルトリフレート、CFSOOC、20.6g(115.6mmol)を、アイスバスを用いて冷却しつつ30分かけてゆっくり(1滴ずつ)加え、その間反応混合物は、磁気攪拌器で激しく攪拌する。反応混合物を、室温でさらに10分間攪拌する。溶媒を減圧下で除去する。残留物を3回、ペンタン30cmで洗浄し、40〜50℃、7.0Paの真空下で1時間乾燥させて、容易に溶解する結晶性物質35.0gを得る。N,N,N’,N’−テトラメチル−N”−エチルイソチオウロニウムトリフレートの収率は、N,N,N’,N’−テトラメチルチオウレアに基づき99.5%である。
【0047】
19F NMR(参照:CClF−内部標準;溶媒:CDCN):−77.84s(CF
H NMR(参照:TMS;溶媒:CDCN):1.30t(CH);3.02q(CH);3.25s(4CH);H,H=7.4Hz。
元素分析
実測値、%: C30.82 H5.49 N9.07
17に対する計算値、%: C30.96 H5.52 N9.03
【0048】
例2:N,N,N’,N’−テトラメチル−S−エチルイソチオウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート
【化9】

N,N,N’,N’−テトラメチル−S−エチルイソチオウロニウムトリフレート17.1g(55.1mmol)を水70cmに溶解し、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸五水和物31.0g(57.8mmol)を室温で添加し、その間反応混合物は磁気攪拌器で激しく攪拌する。低液相を分離し、水30cmで4回洗浄する。残留物を3時間、60℃のオイルバスにて7.0Paの真空下で乾燥させて、液体物質30.0gを得る。N,N,N’,N’−テトラメチル−S−エチルイソチオウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートの収率は、N,N,N’,N’−テトラメチル−S−エチルイソチオウロニウムトリフレートに基づき89.8%である。
【0049】
19F NMR(参照:CClF−内部標準;溶媒:CDCN):−43.56dm(PF);−79.58m(CF);−81.27m(2CF);−86.92dm(PF);−114.93m(CF);−115.52m(2CF);P,F=890Hz;P,F=904Hz;P,F=86Hz;P,F=97Hz。
H NMR(参照:TMS;溶媒:CDCN):1.34t(CH);3.03q(CH);3.25s(4CH);H,H=7.4Hz。
31P NMR(参照:85%HPO;溶媒:CDCN):−148.55dtm;
P,F=890Hz;P,F=902Hz。
元素分析
実測値、%: C25.63 H2.87 N4.59
131718PSに対する計算値、%: C25.75 H2.83 N4.62
【0050】
例3:N,N,N’,N’−テトラメチル−S−(2,2,2−トリフルオロエチル)イソチオウロニウムトリフレート
【化10】

N,N,N’,N’−テトラメチルチオウレア1.0g(7.56mmol)を、ヘキサン20cmに溶解し、2,2,2−トリフルオロエチルトリフレート、CFSOOCHCF、1.84g(7.93mmol)をゆっくりと(1滴ずつ)室温で添加し、その間反応混合物は磁気攪拌器で激しく攪拌する。反応混合物を室温でさらに6時間攪拌する。低相をヘキサンから分離し、ヘキサン10cmで2回洗浄する。残留物を2時間、50℃、1.3Paの真空下で乾燥させて、油状物質2.74gを得る(m.p.69〜70℃)。N,N,N’,N’−テトラメチル−S−(2,2,2−トリフルオロエチル)イソチオウロニウムトリフレートの収率は、N,N,N’,N’−テトラメチルチオウレアに基づき99.4%である。
【0051】
19F NMR(参照:CClF−内部標準;溶媒:CDCN):−65.98t(CF);−77.92t(CF);H,F=9.6Hz。
H NMR(参照:TMS;溶媒:CDCN):3.30s(4CH);3.75q(CH);H,F=9.6Hz。
【0052】
例4:N,N,N’,N’−テトラメチル−S−エチルイソチオウロニウムテトラフルオロボレート
【化11】

ジクロロメタン中のトリエチルオキソニウムテトラフルオロボレートの1M溶液70cm(69.9mmol)を、N,N,N’,N’−テトラメチルチオウレア4.6g(34.8mmol)に加え、その間反応混合物はアイスバスで冷却しつつ磁気攪拌器で激しく攪拌する。反応混合物を室温で6時間攪拌し、全ての揮発性成分を減圧下で除去する。残留物を3回、熱い(60℃)ヘキサンで洗浄し、室温で1時間、1.3Paの真空下で乾燥させて、固形物6.8gを得る。N,N,N’,N’−テトラメチル−S−エチルイソチオウロニウムテトラフルオロボレートの収率は、N,N,N’,N’−テトラメチルチオウレアに基づき78.8%である。
【0053】
19F NMR(参照:CClF−内部標準;溶媒:CDCN):−150.34s;−150.40s(BF)。
H NMR(参照:TMS;溶媒:CDCN):1.29t(CH);2.99q(CH);3.22s(4CH);H,H=7.4Hz。
【0054】
例5:N,N,N’,N’−テトラメチル−O−メチルイソウロニウムトリフレート
【化12】

N,N,N’,N’−テトラメチルウレア30.0g(258.3mmol)をペンタン150cmに溶解し、メチルトリフレート、CFSOOCH、43.2g(263.3mmol)を30分かけてゆっくり(1滴ずつ)加え、その間反応混合物はアイスバスを用いて冷却し、磁気攪拌器で激しく攪拌する。反応混合物を室温でさらに10分間攪拌する。低液相を分離し、ペンタン50cmで2回洗浄する。残留物を1時間、60℃、7.0Paの真空下で乾燥させて、液体物質71.0gを得る。N,N,N’,N’−テトラメチル−O−メチルイソウロニウムトリフレートの収率は、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアに基づき98.1%である。
19F NMR(参照:CClF−内部標準;溶媒:CDCN):−77.88s(CF
H NMR(参照:TMS;溶媒:CDCN):3.05s(4CH);4.04s(CH)。
【0055】
例6:N,N,N’,N’−テトラメチル−O−メチルイソウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート
【化13】

N,N,N’,N’−テトラメチル−O−メチルイソウロニウムトリフレート31.5g(112.4mmol)を水300cmに溶解し、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸五水和物63.3g(118.7mmol)を室温で添加し、その間反応混合物は磁気攪拌器で激しく攪拌する。析出物をろ過して分離し、水30cmで3回洗浄する。残留物を3時間、50〜60℃のオイルバスにて7.0Paの真空下で乾燥させて、白色固形物62.7gを得る(m.p.69〜70℃)。N,N,N’,N’−テトラメチル−O−メチルイソウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートの収率は、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−メチルイソウロニウムトリフレートに基づき96.8%である。
【0056】
19F NMR(参照:CClF−内部標準;溶媒:CDCN):−43.51dm(PF);−79.54m(CF);−81.23m(2CF);−86.90dm(PF);−114.90m(CF);−115.48m(2CF);P,F=889Hz;P,F=901Hz;P,F=86Hz;P,F=98Hz。
H NMR(参照:TMS;溶媒:CDCN):3.05s(4CH);4.04s(CH)。
31P NMR(参照:85%HPO;溶媒:CDCN):−148.57dtm;
P,F=890Hz;P,F=902Hz。
元素分析
実測値、%: C24.94 H2.64 N4.89
121518OPに対する計算値、%: C25.01 H2.62 N4.86
【0057】
例7:N,N,N’,N’−テトラメチル−O−エチルイソウロニウムトリフレート
【化14】

N,N,N’,N’−テトラメチルチオウレア15.0g(129.1mmol)をペンタン70cmに溶解し、エチルトリフレート、CFSOOC、23.5g(131.9mmol)を30分かけてゆっくり(1滴ずつ)加え、その間反応混合物はアイスバスを用いて冷却し、磁気攪拌器で激しく攪拌する。反応混合物を室温でさらに10分間攪拌する。低液相を分離し、ペンタン30cmで3回洗浄する。残留物を1時間、50℃、7.0Paの真空下で乾燥させて、液体物質37.9gを得る。N,N,N’,N’−テトラメチル−O−エチルイソウロニウムトリフレートの収率は、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアに基づき99.8%である。
【0058】
19F NMR(参照:CClF−内部標準;溶媒:CDCN):−77.86s(CF
H NMR(参照:TMS;溶媒:CDCN):1.40t(CH);3.05s(4CH);4.38q(CH);H,H=7.1Hz。
【0059】
例8:N,N,N’,N’−テトラメチル−O−エチルイソウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート
【化15】

N,N,N’,N’−テトラメチル−O−エチルイソウロニウムトリフレート18.8g(63.9mmol)を水70cmに溶解し、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸五水和物36.0g(67.2mmol)を室温で添加し、その間反応混合物は磁気攪拌器で激しく攪拌する。析出物をろ過して分離し、水30cmで4回洗浄する。残留物を3時間、60℃のオイルバスにて7.0Paの真空下で乾燥させて、白色固形物36.7gを得る(m.p.32〜34℃)。N,N,N’,N’−テトラメチル−O−エチルイソウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートの収率は、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−エチルイソウロニウムトリフレートに基づき97.3%である。
【0060】
19F NMR(参照:CClF−内部標準;溶媒:CDCN):−43.50dm(PF);−79.52m(CF);−81.21m(2CF);−86.88dm(PF);−114.90m(CF);−115.48m(2CF);P,F=889Hz;P,F=900Hz;P,F=84Hz;P,F=98Hz。
H NMR(参照:TMS;溶媒:CDCN):1.42t(CH);3.05s(4CH);4.37q(CH);H,H=7.0Hz。
31P NMR(参照:85%HPO;溶媒:CDCN):−148.60dtm;
P,F=888Hz;P,F=902Hz。
元素分析
実測値、%: C26.50 H2.95 N4.78
131718OPに対する計算値、%: C26.45 H2.90 N4.75
【0061】
例9:2−メチル−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィナート
【化16】

トリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィンオキシド、(CP=O、6.72g(16.6mmol)を、還流凝縮器を備えた25mlのフラスコ中のジメトキシエタン15cmおよびテトラメチルウレア1.93g(16.6mmol)と混合する。この混合物にメタノール0.532g(16.6mmol)を加え、その間反応混合物は磁気攪拌器で激しく攪拌する。反応混合物を5時間沸騰させ、全ての揮発性産物を50℃の高真空化(1.4Pa)で除去して、粘性液体6.59gを得る。2−メチル−1,1,3,3−テトラメチルイソウロニウムビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィナートの収率は91.9%である。
【0062】
19F NMR(参照:CClF−内部標準;溶媒:CDCN):−80.21m(2CF);−124.91dm(2CF);P,F=67Hz。
H NMR(参照:TMS;溶媒:CDCN):3.05s(4CH);4.05s(OCH)。
31P NMR(参照:85%HPO;溶媒:CDCN):−2.12quin.;
P,F=67Hz。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

式中、
Xは、OまたはSを示し、
式中、置換基RおよびRは、各々が互いに独立して、
1〜20個のC原子を有する直鎖または分枝状のアルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝状のアルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝状のアルキニル、
3〜7個のC原子を有する、飽和、部分もしくは完全不飽和シクロアルキル、
の意味を有し、
これらは1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されてもよく、
そしてRはまた水素を示してもよく、
ここで1個または2個以上の置換基RまたはRは、部分的もしくは完全にハロゲンによって置換されるか、または部分的にCNもしくはNOによって置換されてもよく、しかしここで、Rのα位でのハロゲン化は除外され、そして、
ハロゲンはF、Cl、BrまたはIを示し、
ここで置換基RおよびRは、単結合または二重結合によって対として互いに結合されてもよく、
そしてここで、1個または2個以上の置換基RまたはRの1個の炭素原子または2個の隣接していない炭素原子であって、ヘテロ原子に直接隣接していない前記炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SO−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR’−、−PR’−、−P(O)R’−、−P(O)R’−O−、−O−P(O)R’−O−、および−P(R’)=N−の群から選択される原子および/または原子群によって置き換えられてもよく、ここでR’は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化アルキル、3〜7個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換フェニル、または無置換もしくは置換複素環であり、
そして、
は、以下からなる群:
【化2】

から選択され、
ここで置換基RおよびRF’は、各々が互いに独立して、
1〜20個のC原子を有する完全フッ素化および直鎖または分枝状のアルキルであって、ここでRF’に対してはトリフルオロメチル基は除外され、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する完全フッ素化および直鎖または分枝状のアルケニル、
完全フッ素化フェニルおよび、3〜7個のC原子を有する、飽和、部分もしくは完全不飽和シクロアルキルであって、これらはペルフルオロアルキル基により置換されてもよい、
との意味を有し、
ここで置換基RまたはRF’は、単結合または二重結合によって互いに対として結合されてもよく、そして、
ここで、置換基RまたはRF’の1個の炭素原子または2個の隣接していない炭素原子であって、ヘテロ原子に対してα位ではない前記炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、−SO−、−N=、−N=N−、−NR’−、−PR’−および−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子群により置き換えられてもよく、または末端基R’−O−SO−もしくはR’−O−C(O)−を有することができ、ここでR’は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化アルキル、3〜7個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換フェニル、または無置換もしくは置換複素環を示し、
そして、
ここで、置換基Rは各々互いに独立して、
=[(CN)CRもしくは[(RO(O)C)CRおよびX=OもしくはSの場合は水素、または、
=[RCHOSO、X=SもしくはO、並びに置換基RおよびR=1〜20個のC原子を有するアルキル基、
1〜20個のC原子を有する直鎖または分枝状のアルキル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の二重結合を有する直鎖または分枝状のアルケニル、
2〜20個のC原子および1個または2個以上の三重結合を有する直鎖または分枝状のアルキニル、
3〜7個のC原子を有する、飽和、部分もしくは完全不飽和シクロアルキルであって、
これらは1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されてもよい、
の場合は水素、
の意味を有し、
ここで置換基Rは、CN、NOまたはハロゲンによって部分的に置換されてもよく、そして、
ハロゲンはF、Cl、BrまたはIを示し、
ここで置換基Rは、単結合または二重結合によって対として互いに結合されてもよく、
ここで、置換基Rの1個の炭素原子または2個の隣接していない炭素原子であって、ヘテロ原子に対してα位ではない前記炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SO−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR’−、−PR’−および−P(O)R’−、P(O)R’O−、OP(O)R’O−、−PR’=N−、−C(O)NH−、−C(O)NR’−、−SONH−または−SONR’−の群から選択される原子および/または原子群により置き換えられてもよく、ここでR’は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは完全フッ素化アルキル、3〜7個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換フェニル、または無置換もしくは置換複素環を示し、
そして変数、
nは1〜20を示し、
mは0、1、2または3を示し、
yは0、1、2、3または4を示し、
zは0、1、2または3を示し、
ただしここで、
X=S並びに、RおよびR=1〜20個のC原子を有するアルキル基に対しては、アニオンA=[BF、CFCOO、[B(Cまたは[CHSOが可能であり、
そして、
X=Oに対しては、アニオンA=CFCOOおよび[B(Cが可能であり、
そして、
X=OおよびR=エチルに対しては、アニオンA=CHCHOSOが除外される、
との条件下である、
で表される、チオウロニウムまたはウロニウム塩。
【請求項2】
Rが、水素、および/または、1〜12個のC原子を有する直鎖もしくは分枝状のアルキルであることを特徴とする、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
Rが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、フェニルおよびシクロヘキシルの群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の塩。
【請求項4】
X=Sであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の塩。
【請求項5】
が1〜12個のC原子を有する直鎖または分枝状のアルキルを示し、これは部分的または完全にFによって置換されてもよく、しかしここでRのα−CH基のフッ素化は除外され、そしてX=Sであること、を特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の塩。
【請求項6】
X=Oであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の塩。
【請求項7】
が1〜12個のC原子を有する直鎖もしくは分枝状のアルキルを示し、そしてX=Oであることを特徴とする、請求項1〜3または6のいずれかに記載の塩。
【請求項8】
アニオンが、
【化3】

の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の塩。
【請求項9】
式中の基Rが、請求項1〜8のいずれかに定義の通りであるチオ尿素C(S)(NRまたは尿素C(O)(NRが、エステルARであって、式中の基Rは、請求項1〜8のいずれかに定義の通りであり、Aは、[RCHOSO]、[RSO]、[RSO]、[RC(O)O]および[CClC(O)O]の群から選択される前記エステルを用いて、または、オキソニウム塩(Rであって、式中の基RまたはRは、請求項1〜8のいずれかに定義の通りであり、そしてAは、[(FSOC]および[BFの群から選択される前記オキソニウム塩を用いて、アルキル化されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の塩の製造方法。
【請求項10】
反応が、少なくとも1つの成分が液体である温度で行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
一般式(1):
【化4】

式中、基RおよびRは、請求項1〜8のいずれかに定義の通りであり、アニオンAは、[BF、Br、Cl、Iまたは[ClOの群から選択される、
で表される塩を、塩Ktまたは酸AHと反応させることを特徴とし、ここで式中、Ktはアルカリまたはアルカリ土類金属であり、Aは請求項1〜8のいずれかに定義の通りである、請求項1〜8のいずれかに記載の塩の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに定義の式(1)で表される塩の、イオン液体としての使用。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに定義の式(1)で表される塩の、非水性電解質としての使用。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかに定義の式(1)で表される塩の、相間移動触媒としての使用。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに定義の式(1)で表される塩の、表面活性物質としての使用。

【公表番号】特表2006−526584(P2006−526584A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508218(P2006−508218)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005772
【国際公開番号】WO2004/106287
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】