説明

エアクリーナおよびそれを備えたエンジン

【課題】エンジンのエアクリーナにおいて、エレメントに付着するダストの低減を図る。
【解決手段】筒状通路4は、吸入口2からダーティサイド1dに向かって流れる空気の経路上の一部に設けられ、吸入口2の断面積よりも小さい断面積を有する。ダスト排出孔5aは、筒状通路4の出口から流出した空気がダーティサイド1dに至る経路途中に存在する壁部に設けられ、この壁部のエアクリーナ1の内外を貫通している。ダスト排出孔5aからの空気の噴出によって、エアクリーナ1内のダストが外部に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナおよびそれを備えたエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エアクリーナは、エンジンに供給する空気を濾過・清浄するための部材であり、その供給経路の途中に取り付けられる。特許文献1には、エレメント(フィルタ)に到達するダスト(粉塵や水滴等)を減少させるために、吸入口の近くに邪魔板を取り付けたエアクリーナが開示されている。また、特許文献2には、吸入口から想定外のものを吸入することを防ぐため、吸入口の周囲に突起を取り付けたエアクリーナが開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開平6−40350号公報
【特許文献2】実公平1−40350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術を含めて、一般的なエアクリーナは、高い密閉性を前提としており、吸入口より吸入された空気がエアクリーナ内のエレメントに至る経路途中で外部に漏れないように設計されている。そのため、吸入された空気の全てがエレメントに到達するので、エレメントにダストが付着しやすく、その結果、頻繁なエレメントの清掃・交換が余儀なくされる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアクリーナにおいて、エレメントに付着するダストの低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために、第1の発明は、エアクリーナ内をエレメントによってダーティサイドとクリーンサイドに区画し、ダーティサイドに流入した外部の空気中のダストをエレメントにより濾過し、浄化した空気をクリーンサイドに流入させるエアクリーナを提供する。このエアクリーナは、吸入口と、筒状通路と、ダスト排出孔と、排出口とを有する。吸入口は、外部の空気を吸入する。筒状通路は、吸入口からダーティサイドに向かって流入する空気の経路上の一部に設けられ、吸入口の断面積よりも小さい断面積を有する。ダスト排出孔は、筒状通路を通過し流入した空気が、ダーティサイドに至る経路途中に形成され、エアクリーナの内外に貫通する。排出口は、クリーンサイドと連通し、浄化した空気を外部に排出する。このとき、ダスト排出孔からの空気の噴出により、エアクリーナ内のダストが外部に排出される。
【0007】
ここで、第1の発明において、吸入口は、排出口よりも高い位置に設けられていることが好ましく、筒状通路は、上方から下方に向かって直線状に延伸していることが好ましい。
【0008】
また、第1の発明において、筒状通路の出口から流出した空気がダーティサイドに至る経路途中に、空気を一時的に滞留させる粉塵室をさらに有し、ダスト排出孔は、粉塵室の下底部に設けられていることが好ましい。
【0009】
さらに、第1の発明において、エアクリーナは、本体部とカバー部とを一体化することによって形成され、エレメントは、本体部とカバー部とにより挟持され、ダスト排出孔は、本体部とカバー部との間に形成された隙間であることが好ましい。
【0010】
第2の発明は、エンジンに搭載されるエアクリーナの内部をエレメントによってダーティサイドとクリーンサイドに区画し、ダーティサイドに流入した外部の空気中のダストをエレメントにより濾過し、浄化した空気をクリーンサイドに流入させるエアクリーナを備えたエンジンを提供する。このエアクリーナを備えたエンジンは、このエアクリーナは、吸入口と、筒状通路と、ダスト排出孔と、排出口とを有する。吸入口は、外部の空気を吸入する。筒状通路と、吸入口からダーティサイドに向かって流入する空気の経路上の一部に設けられ、吸入口の断面積よりも小さい断面積を有する。ダスト排出孔と、筒状通路を通過し流入した空気が、ダーティサイドに至る経路途中に形成され、エアクリーナの内外に貫通する。排出口は、クリーンサイドと連通し、浄化した空気をエンジンの吸気側に排出する。このとき、ダスト排出孔からの空気の噴出により、エアクリーナ内のダストが外部に排出される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外部から吸入された空気は、吸入口の断面積よりも小さい断面積を有する筒状通路を通過することによって加速する。加速した空気の一部は、ダーティサイドに至る経路途中に設けられたダスト排出孔より噴出し、これによって、ダーティサイド内のダストが外部に排出される。したがって、エレメントに付着するダストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、エアクリーナ1が搭載された汎用エンジン10の外観斜視図である。汎用エンジン10は、一般的な汎用エンジンと同様、エンジン本体20と、燃料タンク30と、スタータ40とを一体化した構成を有する。燃料タンク30は、エンジン本体20の上部に取り付けられており、燃料を保持する。スタータ40は、エンジン本体20の側部に取り付けられており、エンジン本体20を起動する際、その駆動力を与える。また、汎用エンジン10には、エンジン本体20の吸気側を塞ぐようにエアクリーナ1が備えられており、エンジン本体20の吸気側に供給する空気を濾過・浄化する。
【0013】
図2は、エアクリーナ1の展開斜視図であり、図3は、エアクリーナ1の縦断面図である。エアクリーナ1は、本体部1a、カバー部1bおよびエレメント1cの3つの部材で構成されている。本体部1aおよびカバー部1bは、それぞれの対向面を付き合わせることによって一体化される。本体部1aおよびカバー部1bを一体化させた状態において、エレメント1cは、本体部1aおよびカバー部1bのそれぞれに形成された保持部位によって挟持され、これによって固定される。
【0014】
本体部1aには、外部からの空気を吸入するための吸入口2と、汎用エンジン10に取り付けた際に汎用エンジン10の吸気側に連通する排出口3とが一体形成されている。なお、吸入口2は、エアクリーナ1の上部側にあって、排出口3より高い位置に配置されている。暖かい空気をエンジン本体20に供給することで、汎用エンジン10の駆動効率を高めるためである。カバー部1bには、エアクリーナ1の上部側から下部側に向かって(具体的には、上下方向または鉛直方向に)延出する筒形状の筒状通路4が一体形成されている。エレメント1cは、吸入口2より吸入されたダストを含む空気を濾過・浄化するフィルタであり、排出口3全体を覆うように取り付けられる。また、エレメント1cにより、エアクリーナ1の内部はダーティサイド1dとクリーンサイド1eとに区画される。ダーティサイド1dとは、エレメント1cによる空気の濾過がされていない側の区画であり、クリーンサイド1eとはエレメント1cによる空気の濾過がされた側の区画である。
【0015】
図3に示すように、エアクリーナ1内には水平方向に延在し、一端が吸入口2と連通し、他端が筒状通路4と連通する吸気通路2aが形成されている。この吸気通路2aの本体部1a側の床面は、階段状に形成されており、吸入口から離れるほど段階的に高くなっている。階段状の床面には、2段階の返し壁2bが設けられている。返し壁2bのそれぞれは、床面に対して一定の高さをもってオーバラップするように突設されている。これにより、外部の空気とともに、床面を這ってエアクリーナ1に雨水等が流入することを阻止する。
【0016】
筒状通路4は、吸入口2からダーティサイド1dに向かって流れる空気の経路上の一部に設けられている。筒状通路4は、吸入口2と連通する吸気通路2aのカバー部1bとの突き当たり近傍に一端が開口し、下方に向かって直線状に延在している。吸入口2から吸入された空気は、吸気通路2aを経て筒状通路4の開口(入口)へ流入する。
【0017】
筒状通路4の断面積は、吸入口2のそれよりも小さい。そのため、筒状通路4上を流れる空気にかかる圧力は、吸入口2におけるそれよりも大きくなり、筒状通路4上を流れるの空気の流入速度は、吸入口2におけるそれよりも速くなる。これによって、吸入口2に流入する空気の流入速度は相対的に遅くなるため、吸入口2の外部からダスト(粉塵や水滴等)を吸入する可能性を低減することができる。一例として、吸入口2の面積は筒状通路4のそれの3倍以上に設定されている。なお、ダーティサイド1dに達する空気は、吸入口2から吸入された空気のうち、少なくとも吸気通路2aおよび筒状通路4を通過したものである。
【0018】
図4は、図3の排出口3がある位置(線分A−A’間)におけるエアクリーナ1の横断面図である。筒状通路4は、吸入口2からみて吸気通路2aの突きあたりの近傍から、上下方向(鉛直方向)に複数本(本実施形態では、2本)設けられている。そして、筒状通路4は一定の長さ(例として130mm程度)を有している。これにより、吸気音圧エネルギーが速度エネルギーに変換され、吸気騒音の低減が図られる。
【0019】
筒状通路4を挟んだ吸気通路2aの反対(出口)側、すなわち、エアクリーナ1の下部側には、粉塵室5が設けられている。粉塵室5は、本体部1aとカバー部1bとを重ね合わせることで形成される。また、粉塵室5は、筒状通路4の出口から流出した空気がダーティサイド1dに至る経路途中に設けられ、空気を一時的に滞留させる。なお、粉塵室5は、筒状通路4と、空間的に直接接続されている必要はない。
【0020】
図5は、図3の粉塵室5がある位置(線分B−B’間)におけるエアクリーナ1の横断面図である。粉塵室5の下底部には、ダスト排出孔5aが設けられている。ダスト排出孔5aは、筒状通路4の出口から流出した空気がダーティサイド1dに至る経路途中に存在する壁部に設けられ、エアクリーナ1の壁部の内外を貫通している。筒状通路4により加速された空気によって、ダスト排出孔5aから空気が噴出する。このとき、この空気の噴出とともに、エアクリーナ1内のダストが外部に排出される。本実施形態において、ダスト排出孔5aは、本体部1aとカバー部1bとを挟むことで形成される隙間に相当する。これにより、本体部1aまたはカバー部1bに貫通孔を設けなくとも容易にダスト排出孔5aを形成することができる。
【0021】
汎用エンジン10を駆動すると、ダストを含む外部の空気は、吸入口2から吸入し、吸気通路2aを経由して筒状通路4内へ流入する。そして、筒状通路4を通過した空気は、ダーティサイド1dに達する。その後、エレメント1cを介して濾過された空気は、クリーンサイド1eから排出口3を通って外部(汎用エンジンの吸気側)へ排出される。このとき、エアクリーナ1の空気には、周期的な汎用エンジン10の吸気により生ずる脈動流の圧力がかるため加速する。これにより、筒状通路4の出口から排出した空気の全てが直接ダーティサイド1dへ流入せず、一部筒状通路4の出口の開口方向にある粉塵室5にも流入する。すなわち、筒状通路4の出口から排出した空気の経路は二手に分かれる。なお、空気を脈動流によって効率よく加速させるためには、筒状通路4は直線状であることが好ましい。
【0022】
粉塵室5に流入された空気は、粉塵室5の壁面に沿って導かれ(折り返されて)、脈動流によって再び筒状通路4の出口側へと流れ出て、ダーティサイド1dに達する。上述したように、粉塵室5の壁部には、ダスト排出孔5aが設けられている。そのため、筒状通路4によって加速した空気の一部は、ダスト排出孔5aが存在する粉塵室5内の壁部に衝突し、ダスト排出孔5aを介して外部に噴出する。これによって、エアクリーナ1内にあるダストが空気とともに外部に排出される。
【0023】
ダスト排出孔5aは、自重による落下等によって粉塵室5に堆積したダストも併せて排出する。なお、筒状通路4からの圧力が高いため、ダスト排出孔5aから外部の空気が吸入されることはない。
【0024】
本実施形態によれば、吸入口2から吸入された空気は筒状通路4を通過する。筒状通路4は吸入口2の断面積よりも小さいため、外部から吸入された空気は加速される。この空気の加速により、筒状通路4の出口から、直接ダーティサイド1dに向かう空気の経路とは別の空気の経路が形成されるので、この経路を通る空気の圧力によりエアクリーナ1内のダストを外部に排出できる。したがって、エレメント1cに付着するダストを減少でき、エレメント1cの交換(メンテナンス)サイクルを長くすることができる。また、型構造的にも簡素な本体部1a、カバー部1bおよびエレメント1cの3部材のみで構成されるため、低コストで実現できるという効果もある。
【0025】
なお、ダスト排出孔5aの形態や形成位置については、図6乃至図8に示す構成を含めて、様々なバリエーションが考えられる。図6の構成では、粉塵室5を形成する本体部1a(またはカバー部1b)の壁部自体にダスト排出孔5aが直接形成されている。この場合、ダスト排出孔5aの位置は、筒状通路4の直下であることが好ましいが、筒状通路4によって加速された空気の経路途中であれば、どこであってもよい。加速された空気の経路途中である限り、ダストの排出に加速空気の噴出圧を有効に利用できるからである。
【0026】
また、図7の構成では、筒状通路4がエアクリーナ1の鉛直(上下)方向ではなく水平(左右)方向延在しており、その出口の延長線上に粉塵室5が設けられている。そして、ダストが堆積し易い粉塵室5の底部にダスト排出孔5aが形成されている。
【0027】
さらに、図8の構成では、粉塵室5ではなく、筒状通路4の出口から流出した空気がダーティサイド1dに至る経路途中に存在するエアクリーナ1の壁部そのものにダスト排出孔5aが形成されている。このとき、筒状通路4から流出する空気の全てがダスト排出孔5aが形成された通路を通過することになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】汎用エンジンの外観斜視図
【図2】エアクリーナの展開斜視図
【図3】エアクリーナの縦断面図
【図4】エアクリーナの横断面図
【図5】エアクリーナの横断面図
【図6】粉塵室のバリエーションを示す図
【図7】粉塵室のバリエーションを示す図
【図8】粉塵室のバリエーションを示す図
【符号の説明】
【0029】
1 エアクリーナ
1a 本体部
1b カバー部
1c エレメント
1d ダーティサイド
1e クリーンサイド
2 吸入口
2a 吸気通路
2b 返し壁
3 排出口
4 筒状通路
5 粉塵室
5a ダスト排出孔
10 汎用エンジン
20 エンジン本体
30 燃料タンク
40 スタータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナ内をエレメントによってダーティサイドとクリーンサイドに区画し、前記ダーティサイドに流入した外部の空気中のダストを前記エレメントにより濾過し、浄化した空気を前記クリーンサイドに流入させるエアクリーナにおいて、
外部の空気を吸入する吸入口と、
前記吸入口から前記ダーティサイドに向かって流入する空気の経路上の一部に設けられ、前記吸入口の断面積よりも小さい断面積を有する筒状通路と、
前記筒状通路を通過し流入した空気が、前記ダーティサイドに至る経路途中に形成され、前記エアクリーナの内外に貫通するダスト排出孔と、
前記クリーンサイドと連通し、浄化した空気を外部に排出する排出口とを有し、
前記ダスト排出孔からの空気の噴出により、エアクリーナ内のダストが外部に排出されることを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
前記吸入口は、前記排出口よりも高い位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載されたエアクリーナ。
【請求項3】
前記筒状通路は、上方から下方に向かって直線状に延伸していることを特徴とする請求項1または2に記載されたエアクリーナ。
【請求項4】
前記筒状通路の出口から流出した空気が前記ダーティサイドに至る経路途中に、空気を一時的に滞留させる粉塵室をさらに有し、
前記ダスト排出孔は、前記粉塵室の下底部に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載されたエアクリーナ。
【請求項5】
前記エアクリーナは、本体部とカバー部とを一体化することによって形成され、
前記エレメントは、前記本体部と前記カバー部とにより挟持され、
前記ダスト排出孔は、前記本体部と前記カバー部との間に形成された隙間であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載されたエアクリーナ。
【請求項6】
エンジンに搭載されるエアクリーナの内部をエレメントによってダーティサイドとクリーンサイドに区画し、前記ダーティサイドに流入した外部の空気中のダストを前記エレメントにより濾過し、浄化した空気を前記クリーンサイドに流入させるエアクリーナを備えたエンジンにおいて、
外部の空気を吸入する吸入口と、
前記吸入口から前記ダーティサイドに向かって流入する空気の経路上の一部に設けられ、前記吸入口の断面積よりも小さい断面積を有する筒状通路と、
前記筒状通路を通過し流入した空気が、前記ダーティサイドに至る経路途中に形成され、前記エアクリーナの内外に貫通するダスト排出孔と、
前記クリーンサイドと連通し、浄化した空気を前記エンジンの吸気側に排出する排出口とを有し、
前記ダスト排出孔からの空気の噴出により、エアクリーナ内のダストが外部に排出されることを特徴とするエアクリーナを備えたエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−150240(P2009−150240A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326668(P2007−326668)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】