説明

エアコン制御装置

【課題】複数のセンサを備えることなく、エアコンの稼働率を下げることが可能なエアコン制御装置を提供する。
【解決手段】コンプレッサ21により圧縮されて液化された冷媒が供給されるエバポレータ26と、当該エバポレータ26の下流側に配設されるサーミスタ28と、を備えたエアコン制御装置100は、サーミスタ28により検出された温度が、第1閾値温度に達した場合にコンプレッサ21の動作を停止し、第2閾値温度に達した場合にコンプレッサ21の動作を再開するコンプレッサ運転制御部11と、コンプレッサ21の停止状態と動作状態との切替周期を演算する切替周期演算部15と、切替周期が判定周期よりも短いか否かを判定する切替周期判定部14と、切替周期が判定周期よりも短い場合に第2閾値温度を予め設定された時間が経過するまで一時的に高くする閾値温度変更部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサにより圧縮されて液化された冷媒が供給されるエバポレータと、当該エバポレータの下流側に配設されるサーミスタと、を備えたエアコン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の乗員に快適空間を提供するために、車両にはエアコン装置が備えられている。このようなエアコン装置には一般的にコンプレッサが利用され、当該コンプレッサが駆動されると燃料の消費量が多くなる。このような問題を改善する技術として、下記に出典を示す特許文献1や特許文献2に記載のものがある。特許文献1や特許文献2に記載の車両用空調装置では、車両の燃費向上を目的として、複数のセンサを用いてコンプレッサの動作状態と停止状態とを切り替える制御を行っている。しかしながら、複数のセンサを備えることはコストアップの要因となり、また、夫々のセンサを組み付ける組み付け工程を要することから生産性が悪くなる。
【0003】
また、エアコン装置には、エバポレータが備えられる。このようなエバポレータは、フロストの発生を防止するために、エバポレータの温度を検出するサーミスタが備えられる。上述のような複数のセンサを備えずにエアコン装置を制御する方法として、このサーミスタにより検出された温度を用いて制御することも考えられる。係る場合には、コンプレッサの動作状態と停止状態との切り替えを、フロストの防止のために設定した固定値で行われる。例えば冷房負荷が軽くなった場合にはエバポレータの冷えが早く、コンプレッサの動作状態と停止状態との切り替えの周期が短くなる。したがって、コンプレッサの起動と停止とが頻繁に繰り返し行われるので、燃料の消費量が増加する。また、コンプレッサの動作に合わせてラジエータファンも起動と停止とが頻繁に繰り返して行われるので、燃料の消費量が増加する。更に、コンプレッサの動作状態と停止状態との切り替えを行うクラッチ(マグネットクラッチ)の動作も頻繁に行われるので、その動作音が車両の乗員にとって耳障りなものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−345512号公報
【特許文献2】特開平8−192621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記問題に鑑み、複数のセンサを備えることなく、燃料の消費を低減することが可能なエアコン制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るエアコン制御装置の特徴は、コンプレッサにより圧縮されて液化された冷媒が供給されるエバポレータと、前記エバポレータの下流側に配設されるサーミスタと、を備え、前記サーミスタにより検出された温度が、予め設定された第1閾値温度に達した場合に前記コンプレッサの動作を停止し、前記第1閾値温度から当該第1閾値温度よりも高い第2閾値温度に達した場合に前記コンプレッサの動作を再開するコンプレッサ運転制御部と、前記コンプレッサの動作を停止する停止状態と前記コンプレッサの動作再開後の動作状態との切替周期を演算する切替周期演算部と、前記切替周期が予め設定されている判定周期よりも短いか否かを判定する切替周期判定部と、前記切替周期が前記判定周期よりも短い場合に、前記第2閾値温度を予め設定された時間が経過するまで一時的に高くする閾値温度変更部と、を備える点にある。
【0007】
このような構成とすれば、エバポレータのフロスト防止用に備えられる、当該エバポレータの温度検出用のサーミスタのみでコンプレッサの運転及び停止を効果的に制御することができる。このため、複数のセンサを用いることがないので、コスト及び生産性の面で有効である。
また、コンプレッサの停止状態と動作状態との切替周期が短くなった場合に、第2閾値温度を一時的に高くするので、軽くなりすぎた冷房負荷を重くすることができる。このため、コンプレッサの停止状態におけるエバポレータが冷えるまでの時間、及びコンプレッサの動作状態におけるエバポレータが暖まるまでの時間を長くすることができる。したがって、コンプレッサの停止状態と動作状態との切替周期が長くなるので、コンプレッサやラジエータファンが起動する回数を減らすことができる。これにより、エアコン使用時(特に、冷房負荷が軽い状態)における燃料の消費を低く抑えることが可能となる。
また、例えばコンプレッサの動力源をクラッチ(電磁クラッチ)で断接する形態とした場合には、当該クラッチの動作音も低減することができる。また、第2閾値温度を高くするのは予め設定された時間のみであり、当該時間が経過した後は第2閾値温度を元の温度に戻すので冷房性能は大きく悪化することがない。したがって、ユーザには継続して快適な空間を提供することができる。このような構成で実現されるエアコン制御装置によるエアコン制御は、安価なエアコン(例えばマニュアルエアコン)において特に有効なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エアコン制御装置の概略構成を模式的に示した図である。
【図2】エアコン制御装置の動作について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係るエアコン制御装置100が、車両に搭載される場合の例について説明する。図1には、このようなエアコン制御装置100の概略構成を模式的に示したブロック図が示される。
【0010】
1.エアコン制御装置
本エアコン制御装置100は車両に搭載され、当該車両の室内温度(以下「室内温度」とする)を制御する機能を有する。このようなエアコン制御装置100は、制御系統1と冷却系統2と駆動系統3との3つのブロックから構成される。制御系統1は冷却系統2の動作を制御する。冷却系統2は冷媒を用いて冷気を生成し、車室に冷風を送る。駆動系統3は、冷却系統2を駆動する駆動力を生成する。以下、ブロック毎に説明する。
【0011】
1−1.駆動系統
駆動系統3は、エンジン31、ベルト32を備えて構成される。エンジン31は、燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。エンジン31は、駆動すると回転力を出力する。この回転力が、車両を動かすための動力源として利用される。ベルト32は、エンジン31の回転軸に駆動連結され、エンジン31から出力される回転力を後述する冷却系統2にも伝達する。
【0012】
1−2.冷却系統
冷却系統2は、コンプレッサ21、コンデンサー22、コンデンサーファン23、レシーバー24、エキスパンションバルブ25、エバポレータ26、ブロワファン27、サーミスタ28を備えて構成される。
【0013】
コンプレッサ21は、後述するエバポレータ26により車室内の熱を奪って気化した低温低圧の冷媒ガスを吸入及び圧縮し、高温高圧のガスを生成する。コンプレッサ21により生成されたガスは、コンデンサー22に送出される。また、コンプレッサ21は、エンジン31からベルト32及びクラッチ21Aを介して駆動力(回転力)が伝達される。クラッチ21Aは、必要に応じてエンジン31からの回転力を断接し、コンプレッサ21を駆動させたり、停止させたりする。このようなクラッチ21Aの制御は、後述する制御系統1により行われる。
【0014】
コンデンサー22は、コンプレッサ21から送られてきた高温高圧の冷媒ガスを冷却して凝縮液化させる熱交換器として機能する。コンデンサー22は、チューブとフィンから構成され、コンデンサーファン23により冷却される。コンプレッサ21から吐出された冷媒ガスは、上述のように高温高圧の状態にあるが、このような冷媒がコンデンサー22が有するチューブ内を通る間に外気の風で冷却され液化される。ここで、コンデンサー22は、車両に備えられるラジエータと共用することも可能であり、係る場合にはコンデンサーファン23はラジエータファンと共用される。以下の説明では、コンデンサー22がラジエータと共用され、コンデンサーファン23がラジエータファンと共用されているとして説明する。したがって、ラジエータにも符号22を付して説明し、ラジエータファンにも符号23を付して説明する。
【0015】
レシーバー24は、コンデンサー22とエキスパンションバルブ25との間に備えられ、コンデンサー22で液化された冷媒を、冷房負荷に応じてエバポレータ26に供給できるよう一時的に冷媒を貯える。また、レシーバー24は、冷媒中のガスと液との分離も行う。コンデンサー22で冷却された冷媒は、外気の条件によっては全てが液化されていない場合がある。このようなガスがエキスパンションバルブ25に送出されると冷房能力が低下する。レシーバー24の内部では、液冷媒が下側、ガス冷媒が上側に溜まるため、レシーバー24の出口用パイプは底の方から液冷媒だけを取り出すように構成され、ガスと液の分離が行なわれる。また、レシーバー24は、冷却系統2内を循環する際に冷媒に混入される「ゴミ」や「水分」を取り除くフィルタ機能も有する。
【0016】
エキスパンションバルブ25は、低温低圧の霧状の冷媒を生成すると共に、エバポレータ26に供給する冷媒量を調節する。上述のように、レシーバー24からエキスパンションバルブ25には、高温高圧の液冷媒が供給される。エキスパンションバルブ25は、このような液冷媒を小さな孔から噴射させることにより急激に膨張させて、低温低圧の霧状の冷媒を生成する。ここで、エバポレータ26の効率を上げるためには、液冷媒が周囲の熱を奪って常にエバポレータ26の出口で蒸発が完了する状態に維持する必要がある。このため、室内温度(冷房負荷)の変動及びコンプレッサ21の回転速度の変動に応じて冷媒量を自動的に調節する。
【0017】
エバポレータ26は、コンデンサー22と同様にチューブとフィンとから構成される。このエバポレータ26には、コンプレッサ21により圧縮されて液化された冷媒が供給される。エキスパンションバルブ25で低温低圧にされた霧状冷媒は、エバポレータ26内で多量に気化することにより、エバポレータ26が低温状態になる。一方、車室内の暖かい空気はブロワファン27により、エバポレータ26を通過することにより冷却される。これにより、車室を冷房することが可能となる。また、暖かい空気がエバポレータ26のフィンに当り、露点温度以下に冷却されると、空気中の水分が凝縮しエバポレータ26のフィンに水滴が付着する。このような水滴はドレーンホース(図示しない)により車外に放出される。
【0018】
サーミスタ28は、エバポレータ26の下流側に配設され、エバポレータ26の温度(以下「エバポレータ温度」とする)を検出する。暖かい空気がエバポレータ26のフィンにあたり、当該暖かい空気が冷却されると空気中の水分が凝縮し、エバポレータ26のフィンに水滴が付着する。この際、フィンの温度が0℃以下に冷えている場合には、付着した水滴が氷結したり、霜になったりする。このような現象をフロストといい、フロストが発生すると、エバポレータ26での熱交換効率が低下し十分な冷房能力が得られなくなる。サーミスタ28は、例えば、負の温度係数を有し、温度が上がると抵抗値が下がるNTCサーミスタや、正の温度係数を有し、温度が上がると抵抗値が上がるPTCサーミスタがある。例えば、このようないずれかのサーミスタ28と温度係数の小さい抵抗器(図示せず)とを直列接続、或いは直並列接続したものに定電圧を印加し、サーミスタ28と抵抗器との間の中点の電圧を測定することによりサーミスタ28に作用する温度、すなわちサーミスタ28が配置される環境温度の変化を検出することが可能である。本実施形態では、サーミスタ28以外の上記抵抗器は制御系統1(サーミスタ28の検出結果が入力されるコンプレッサ運転制御部11)に設けられるとして説明する。このような構成とすることにより、サーミスタ28によりエバポレータ温度を検出することが可能となる。以上のように構成される冷却系統2を冷媒が循環され、車室を冷房することが可能となる。
【0019】
1−3.制御系統
制御系統1は、コンプレッサ運転制御部11、閾値温度記憶部12、閾値温度変更部13、切替周期判定部14、切替周期演算部15の各機能部を備えて構成される。このような制御系統1は、CPUを中核部材として冷却系統2の制御に関する種々の動作を行うための機能部をハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0020】
コンプレッサ運転制御部11は、サーミスタ28により検出された温度が、予め設定された第1閾値温度に達した場合にコンプレッサ21の動作を停止し、第1閾値温度から当該第1閾値温度よりも高い第2閾値温度に達した場合にコンプレッサ21の動作を再開する。上述したように、サーミスタ28はエバポレータ26の下流側に備えられ、エバポレータ温度を検出する。コンプレッサ運転制御部11は、コンプレッサ21の運転と停止とをエバポレータ26の温度に基づいて制御する。第1閾値温度は、駆動中のコンプレッサ21を停止する際のトリガーとなる温度に相当する。第2閾値温度は、停止中のコンプレッサ21を駆動する際のトリガーとなる温度に相当する。したがって、第2閾値温度は第1閾値温度よりも高い温度で設定される。コンプレッサ21の駆動に応じてエバポレータ26が冷えていく過程を考えた場合、ヒステリシスを有することとなる。このようなヒステリシスを有して構成されているので、第2閾値温度側から第1閾値温度側へエバポレータ26の温度が低下した場合には確実にコンプレッサ21を停止することができ、第1閾値温度側から第2閾値温度側へエバポレータ26の温度が上昇した場合には確実にコンプレッサ21を運転することができる。
【0021】
第1閾値温度はエバポレータ26にフロストが発生しないように設定された温度とすることが可能である。上述のようにフロストとは、エバポレータ26のフィンの温度が0℃以下に冷えている場合に氷結や霜が生じる現象である。したがって、フロストが発生しないように、第1閾値温度は例えば2〜3℃とすると好適である。このような第1閾値温度は、閾値温度記憶部12に記憶されている。第2閾値温度は、第1閾値温度よりも数度(例えば1〜3℃)高く設定すると好適である。第2閾値温度は、第1閾値温度と同様に、予め閾値温度記憶部12に記憶しておいても良いし、第1閾値温度から都度、演算して求めても良い。
【0022】
切替周期演算部15は、コンプレッサ21の動作を停止する停止状態とコンプレッサ21の動作再開後の動作状態との切替周期を演算する。ここで、上述のように、コンプレッサ21は、サーミスタ28により検出された温度が第1閾値温度に達した場合に動作が停止され、サーミスタ28により検出された温度が第2閾値温度に達した場合に動作が再開される。停止状態とはコンプレッサ21が動作を停止している状態が相当し、動作状態とはコンプレッサ21が動作を再開し動作している状態が相当する。切替周期演算部15は、このような停止状態と動作状態との切替周期を演算する。すなわち、切替周期演算部15は、コンプレッサ21の起動と停止との切替周期を演算する。切替周期は、コンプレッサ運転制御部11がクラッチ21Aを制御する制御信号に基づいて演算しても良いし、クラッチ21Aの状態を検出して演算しても良い。図1には、コンプレッサ運転制御部11からクラッチ21Aを制御する制御信号が伝達される形態で示している。切替周期演算部15により演算された切替周期は、後述する切替周期判定部14に伝達される。
【0023】
切替周期判定部14は、切替周期が予め設定されている判定周期よりも短いか否かを判定する。予め設定されている判定周期とは、車室の容積やコンプレッサ21の能力等により車両の固有値として予め設定される。切替周期判定部14は、切替周期演算部15により演算された切替周期が判定周期よりも短いか否かを判定し、判定結果を後述する閾値温度変更部13に伝達する。
【0024】
閾値温度変更部13は、切替周期が判定周期よりも短い場合に、第2閾値温度を予め設定された時間が経過するまで一時的に高くする。切替周期が判定周期よりも短いか否かの判定結果は、切替周期判定部14から伝達される。閾値温度変更部13は、切替周期判定部14から切替周期が判定周期よりも短いことを示す判定結果が伝達された場合に、第2閾値温度を一時的に高く変更する。この際の変更量は、予め一定値として設定しておいても良い。このような変更量としては、例えば10℃程度とすることが可能である。また、このような変更量は、エアコンの設定温度及び風量に基づいて設定しても良い。
【0025】
閾値温度変更部13が、第2閾値温度を高く変更するのは、予め設定された時間が経過するまでの一時的なものである。例えば、2〜3分程度とすると好適である。このような時間は閾値温度変更部13が有するタイマ機能により計数される。計数結果が予め設定された時間に達すると、閾値温度変更部13は、高く変更した第2閾値温度を元の温度に再度、変更する(変更前の第2閾値温度に戻す)。上述のように一時的に変更される時間(上記の場合にあっては「2〜3分程度」)は一例であり、例えば車種に応じて決定すること好適である。
【0026】
本実施形態では、閾値温度変更部13は、第2閾値温度と共に第1閾値温度も一時的に高くする。第1閾値温度を高く変更する変更量は、上述の第2閾値温度の変更量と同じにすることも可能であるし、別途定めることも可能である。また、係る場合には、第1閾値温度も第2閾値温度と同様に、一時的に変更される。したがって、閾値温度変更部13は、閾値温度変更部13が有するタイマ機能により計数し、計数結果が予め設定された時間に達すると、閾値温度変更部13は、高くした第2閾値温度を元の温度に再度、変更する。本エアコン制御装置100は、このような機能部を有して構成される。
【0027】
2.エアコン制御装置の動作
図2には、エアコン制御装置100の動作の概略を示したタイムチャートが示される。(a)には第1閾値温度の変化が示される。(b)には車室温度の変化が示される。(c)には冷房負荷の変化が示される。(d)にはエバポレータ温度の変化が示される。(e)にはラジエータファン23の動作状況が示される。(a)−(e)の横軸は時間軸とされ、時刻t0で本エアコン制御装置100によるエアコンの制御が開始されるとする。
【0028】
(a)に示される第1閾値温度は、閾値温度記憶部12に記憶されている。本実施形態における第1閾値温度は、時刻t0−時刻t9に示されるように、一定値で規定されている。コンプレッサ運転制御部11は、閾値温度記憶部12に記憶されている第1閾値温度を参照し、サーミスタ28の検出結果が当該第1閾値温度になるまでコンプレッサ21のクラッチ21Aを制御してコンプレッサ21を駆動状態にする。コンプレッサ運転制御部11により時刻t0でコンプレッサ21が駆動状態とされることから、(b)に示されるように時刻t0−時刻t3の間に車室温度が低下する。ここで、コンプレッサ21の駆動とラジエータファン23の動作(ON)とは連動し、コンプレッサ21の停止とラジエータファン23の動作(OFF)とは連動する。このため、コンプレッサ21の駆動及び停止に係るタイムチャートは図示しないが、(e)に示されるラジエータファン23の動作状況と同様である。
【0029】
ここで、(c)には冷房負荷が示される。冷房負荷とは、車室温度とエアコンの設定温度との差に比例する。すなわち、車室温度とエアコンの設定温度との差が大きい程、冷房負荷が重く、車室温度とエアコンの設定温度との差が小さくなるにつれて冷房負荷が軽くなる。このため、(b)に示される車室温度の低下に合わせて、(c)の時刻t0−時刻t3に示されるように冷房負荷が軽くなる。
【0030】
(d)に示されるように、コンプレッサ21の駆動に伴って、エバポレータ温度、すなわちサーミスタ28の検出結果も低下する。ここで、(d)には、理解を容易にするために、第1閾値温度が一点鎖線で示され、第1閾値温度から所定温度だけ高い第2閾値温度が二点鎖線で示される。エバポレータ温度が第1閾値温度に達すると、コンプレッサ運転制御部11は、クラッチ21Aを制御してコンプレッサ21を停止する(時刻t1)。コンプレッサ21が停止されると、エバポレータ26の温度が上昇する(時刻t1−時刻t2)。
【0031】
コンプレッサ運転制御部11は、エバポレータ温度が第2閾値温度に達すると、コンプレッサ21の駆動を再開する(時刻t2−時刻t3)。ここで、このような状態においては、(c)に示されるように冷房負荷が次第に軽くなるので、エバポレータ26が冷え易く、エバポレータ温度が第1閾値温度に達するのが早い。このため、コンプレッサ21の動作と停止とを繰り返す状態が継続する(時刻t3−時刻t9)。ここで、コンプレッサ21の燃料の消費量は、定常状態よりも起動時の方が増加する。このため、このような動作と停止とを繰り返す状態は、コンプレッサ21の燃料の消費量が多くなるので低燃費化に対して好ましいものではない。また、クラッチ21Aの動作音も乗員にとっては耳障りなものとなる。
【0032】
また、(e)に示されるラジエータファン23は、コンプレッサ21が駆動している間、動作するので、ラジエータファン23も動作と停止とが繰り返し行われる(時刻t1−時刻t9)。このため、コンプレッサ21と同様に燃料の消費量が多くなる。
【0033】
このようなコンプレッサ21の動作状態と停止状態と切替周期が、予め設定された判定周期よりも短くなると、(a)の時刻t9−時刻t14に示されるように、第2閾値温度が高い閾値温度に変更される。この変更は、所定時間経過した後(時刻t14に達した後)、元の第2閾値温度に戻される。また、第2温度閾値と共に、第1閾値温度も時刻t9−時刻t14の間、高く変更される。
【0034】
これにより、(d)に示されるように、時刻t9−時刻t14の間は、初期の第1閾値温度及び第2閾値温度よりも高い変更後の第1閾値温度及び第2閾値温度でコンプレッサ21の駆動が制御される。その結果、(b)に示されるように車室温度が上昇するので、(e)に示されるように冷房負荷も軽くなる。このため、コンプレッサ21の駆動中はエバポレータ26が冷え難く、また、コンプレッサ21の停止中は暖まりやすくなるのでコンプレッサ21の動作状態と停止状態との切替周期が長くなる。したがって、コンプレッサ21を起動する回数が減るので燃料の消費量を低減することが可能となる。また、クラッチ21Aの制御回数も減るので、乗員が耳障りであると感じることも少なくすることができる。更に、ラジエータファン23が起動する回数も減るので燃料の消費量を低減することが可能となる。
【0035】
このように本エアコン制御装置100によれば、エバポレータ26のフロスト防止用に備えられる、エバポレータ温度検出用のサーミスタ28のみでコンプレッサ21の運転及び停止を効果的に制御することができる。このため、複数のセンサを用いることがないので、コスト及び生産性の面で有効である。また、コンプレッサ21の停止状態と動作状態との切替周期が短くなった場合に、第2閾値温度を一時的に高くするので、軽くなりすぎた冷房負荷を重くすることができる。このため、コンプレッサ21の停止状態におけるエバポレータ26が冷えるまでの時間、及びコンプレッサ21の動作状態におけるエバポレータ26が暖まるまでの時間を長くすることができる。したがって、コンプレッサ21の停止状態と動作状態との切替周期が長くなるので、コンプレッサ21やラジエータファン23が起動する回数を減らすことができる。これにより、エアコン使用時(特に、冷房負荷が軽い状態)における燃料の消費を低く抑えることが可能となる。また、例えばコンプレッサ21の動力源をクラッチ21Aで断接する形態とした場合には、当該クラッチ21Aの動作音も低減することができる。また、第2閾値温度を高くするのは予め設定された時間のみであり、当該時間が経過した後は第2閾値温度を元の温度に戻すので冷房性能は大きく悪化することがない。したがって、ユーザには継続して快適な空間を提供することができる。このような本エアコン制御装置100によるエアコン制御は、安価なエアコン(例えばマニュアルエアコン)において特に有効なものとなる。
【0036】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、駆動系統3はエンジン31を備えて構成され、コンプレッサ21はエンジン31により駆動されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。駆動系統3がモータを備える構成とすることにより、コンプレッサ21をモータで駆動することも当然に可能である。したがって、ハイブリッド車両や電動自動車等でも本発明を適用することは可能である。
【0037】
上記実施形態では、第1閾値温度はエバポレータ26にフロストが発生しないように設定された温度であるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、第1閾値温度は、外気温や室温に基づいて設定しても良いし、最初にコンプレッサ21を駆動する前のサーミスタ28の検出結果に基づいて設定しても良い。更には、乗員により設定されるエアコンの設定温度及び風量に基づいて設定することも当然に可能である。
【0038】
上記実施形態では、閾値温度変更部13は、切替周期が判定閾値よりも短い場合に、第1閾値温度及び第2閾値温度を予め設定された時間が経過するまで一時的に高くするとして説明した。例えば、閾値温度変更部13が、切替周期が判定閾値よりも短い場合に、第2閾値温度のみを予め設定された時間が経過するまで一時的に高くすることも可能である。係る場合、第1閾値温度と第2閾値温度との温度差を変更前に比べて大きくすることができるので、コンプレッサ21の動作が停止されてから駆動するまでの時間、及びコンプレッサ21が駆動されてから停止するまでの時間を長くすることができる。したがって、コンプレッサ21の動作状態と停止状態との切替周期を長くできるので、燃料の消費量を低減することが可能となる。また、クラッチ21Aの制御回数も減らすことができるので、乗員が耳障りとなることが少ない。更に、ラジエータファン23の起動回数も減らすことができるので、燃料の消費量の低減に寄与できる。
【0039】
上記実施形態では、コンデンサー22がラジエータと共用されており、コンデンサーファン23がラジエータファンと共用されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。コンデンサー22とラジエータとを別体で構成し、コンデンサーファン23とラジエータファンとを別体で構成することも当然に可能である。
【0040】
上記実施形態では、エアコン制御装置100が車両に備えられている場合の例を挙げて説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。建物等に備えられるエアコン装置の制御に適用することも当然に可能である。
【0041】
上記実施形態では、図1において、エアコン制御装置100が有する制御系統1の概略構成をブロック図で示した。制御系統1は、例えばコンピュータで構成することも当然に可能である。また、制御系統1をコンピュータに用いられるプログラムとすることも当然に可能である。係る場合には、制御系統1は、サーミスタ28により検出された温度が、予め設定された第1閾値温度に達した場合にコンプレッサ21の動作を停止し、第1閾値温度から当該第1閾値温度よりも高い第2閾値温度に達した場合にコンプレッサ21の動作を再開するコンプレッサ運転制御機能と、コンプレッサ21の動作を停止する停止状態とコンプレッサ21の動作再開後の動作状態との切替周期を演算する切替周期演算機能と、切替周期が予め設定されている判定周期よりも短いか否かを判定する切替周期判定機能と、切替周期が判定周期よりも短い場合に、第2閾値温度を予め設定された時間が経過するまで一時的に高くする閾値温度変更機能と、を備えるエアコン制御装置のためのプログラムとすることが可能である。
【0042】
上記実施形態では、温度や時間等について数値を挙げて説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、他の温度や時間等を設定することも当然に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、コンプレッサにより圧縮されて液化された冷媒が供給されるエバポレータと、当該エバポレータの下流側に配設されるサーミスタと、を備えたエアコン制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
11:コンプレッサ運転制御部
13:閾値温度変更部
14:切替周期判定部
15:切替周期演算部
21:コンプレッサ
26:エバポレータ
28:サーミスタ
100:エアコン制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサにより圧縮されて液化された冷媒が供給されるエバポレータと、前記エバポレータの下流側に配設されるサーミスタと、を備えたエアコン制御装置であって、
前記サーミスタにより検出された温度が、予め設定された第1閾値温度に達した場合に前記コンプレッサの動作を停止し、前記第1閾値温度から当該第1閾値温度よりも高い第2閾値温度に達した場合に前記コンプレッサの動作を再開するコンプレッサ運転制御部と、
前記コンプレッサの動作を停止する停止状態と前記コンプレッサの動作再開後の動作状態との切替周期を演算する切替周期演算部と、
前記切替周期が予め設定されている判定周期よりも短いか否かを判定する切替周期判定部と、
前記切替周期が前記判定周期よりも短い場合に、前記第2閾値温度を予め設定された時間が経過するまで一時的に高くする閾値温度変更部と、
を備えるエアコン制御装置。

【図1】
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【図2】
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