説明

エアゾール剤組成物

【課題】局所麻酔薬を含有し、経時的に沈殿物を生じることなく、良好な噴射性状が保持された冷却用シャーベット状泡沫を形成するエアゾール剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)リドカイン又はプロカイン、(b)非イオン界面活性剤、(c)炭素原子数10〜22の直鎖モノカルボン酸、(d)乳酸又は強酸、及び(e)水及び炭素原子数1〜3の低級アルコールからなる混合溶媒を含有する原液、並びに(f)ジメチルエーテルを含有する噴射剤からなり、該原液のpHが5以下であることを特徴とするエアゾール剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール剤組成物に関し、さらに詳しくは、リドカイン又はプロカインを含有し、良好な噴射性を保持しつつ冷却効果の高いシャーベット状泡沫を形成するエアゾール剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リドカイン又はプロカインは、局所麻酔薬(local anesthetic)であり、抹消神経において直接的かつ可逆的に神経伝達を遮断してその支配領域の痛覚・運動・自律神経機能を停止させる薬剤である(非特許文献1参照)。皮膚の神経を麻痺させて痒みの伝達を抑制する作用があるため、鎮痒剤の有効成分として配合されている(非特許文献2参照)。
【0003】
また、冷却性の強いシャーベット状の泡沫により、鎮痒効果を高めたエアゾール剤も公開されている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
そこで、リドカイン等の局所麻酔薬を配合し、冷却効果の高いシャーベット状泡沫を形成するエアゾール剤とすれば、極めてすぐれた鎮痒剤を得ることが期待できる。
【0005】
実際上、局所麻酔薬を配合し、さらに直鎖モノカルボン酸を配合した、噴射性が良好で冷却効果の高いシャーベット状泡沫を形成するエアゾール剤についての報告はない。
【0006】
【特許文献1】特許第2903708号公報
【特許文献2】特開平11−060471号公報
【非特許文献1】「最新医学大辞典」医歯薬出版株式会社、1987年発行
【非特許文献2】日本大衆薬情報研究会「大衆薬事典2004-'05」株式会社じほう
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、局所麻酔薬(リドカイン又はプロカイン)を配合し、噴射時にシャーベット状の泡沫を形成するエアゾール剤の開発を行ってきた。そして、エアゾール剤用原液及び噴射剤を耐圧容器に充填し、経時的な変化を調べたところ、沈殿物が生じ、噴射孔の目詰まり等噴射性状の悪化を招来するに至った。通常のエアゾール剤と異なり、シャーベット状の泡沫を形成するエアゾール剤においては、特に噴射性状を良好に保持することが重要であり、それゆえ、目詰まりの要因となる沈殿物の生成を抑制することは重要な課題である。
【0008】
すなわち、本発明は、リドカイン又はプロカインを含有し、経時的に沈殿物を生じることなく、良好な噴射性状が保持された冷却用シャーベット状泡沫を形成するエアゾール剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、リドカインを含む原液に乳酸又は塩酸を添加し、該原液のpHを5以下としてエアゾール剤を調製することにより、経時的な沈殿物の生成を抑制し、良好な噴射性状を確保しうることを見出した。
【0010】
かかる知見に基づき完成した本発明の態様は、(a)リドカイン又はプロカイン、(b)非イオン界面活性剤、(c)炭素原子数10〜22の直鎖モノカルボン酸、(d)乳酸又は強酸、及び(e)水及び炭素原子数1〜3の低級アルコールからなる混合溶媒を含有する原液、並びに(f)ジメチルエーテルを含有する噴射剤からなり、該原液のpHが5以下であることを特徴とするエアゾール剤組成物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、リドカイン又はプロカインを含有し、良好な噴射性を有するエアゾール剤組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
リドカイン及びプロカインは局所麻酔薬である。これらは塩の形態で配合してもよい。塩としては、例えば、塩酸塩が挙げられる。
各局所麻酔薬の配合(含有)量は、鎮痒効果の増強という点から、リドカインでは、原液中0.1〜5質量%であり、0.2〜3質量%が好ましい。プロカインでは、原液中0.05〜5質量%であり、0.1〜3質量%が好ましい。これらは単独で配合した場合の配合量であるが、各々の配合量を適宜に調整し、2種を組み合わせて配合してもよい。
【0013】
非イオン界面活性剤は、噴射時にシャーベット状の泡沫を形成するために必要な成分である。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油が挙げられる。これらのうち、好ましいのは、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレートであり、特に好ましいのは、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートである。これら非イオン界面活性剤は、単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非イオン界面活性剤の配合(含有)量は、通常、原液中0.1〜15質量%であり、0.5〜10質量%が好ましい。非イオン界面活性剤の配合(含有)量が組成物中0.1質量%未満であると、噴射物がシャーベット状になりにくくなり、持続的な冷感が弱くなるため、好ましくない。一方、15質量%を超えると、非イオン界面活性剤が溶解しにくくなり、製造が困難になるため、好ましくない。
【0014】
炭素原子数10〜22の直鎖モノカルボン酸は、噴射時にシャーベット状の泡沫を形成するために必要な成分である。例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びベヘニン酸が挙げられ、中でもステアリン酸が特に好ましい。
直鎖モノカルボン酸の配合(含有)量は、通常、原液中0.1〜14質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。直鎖モノカルボン酸の配合(含有)量が原液中0.1質量%未満であると噴射物がシャーベット状になりにくくなり、持続的な冷感が弱くなるため、好ましくない。一方、14質量%を超えると直鎖モノカルボン酸が溶解しにくくなり、製造が困難になるため、好ましくない。
【0015】
水及び炭素原子数1〜3の低級アルコールからなる混合溶媒における水と炭素原子数1〜3の低級アルコールの配合比は10:90〜90:10であり、該混合溶媒の原液中における配合(含有)量は40〜99質量%である。
炭素原子数1〜3の低級アルコールは、炭素原子数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルコールである。メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられるが、好ましいのは、エタノール又はイソプロパノールであり、特に好ましいのは、エタノールである。
【0016】
本発明においては、原液のpHを5以下に調整するための酸が必須である。酸としては、乳酸又は塩酸等の強酸が挙げられるが、例えば、リドカインの塩酸塩を配合した場合のように、薬物の塩の形態で配合し、結果的に酸が含有される場合も本発明の酸の配合に含まれる。酸として好ましいのは、乳酸である。塩酸等の強酸を配合した場合、耐圧容器の材質がアルミニウム、ブリキ、鉄などの金属である場合には腐食の原因となり、容器の内壁にプラスチックコーティング等を施す必要があるが、乳酸であればこのような問題は生じないからである。もっとも、ガラス容器や金属缶の中にポリエチレン等の袋が収納されている容器を用い、さらに、ステンレスバルブや原液との接触面が樹脂でできているバルブを用いれば、塩酸等の強酸を用いても腐食の問題は生じない。
ただし、乳酸以外の弱酸であるクエン酸、リンゴ酸、リン酸、酒石酸及びグルコン酸では原液のpHが5以下であっても経時的に沈殿を生じるので、塩酸等の強酸や乳酸を配合することなしに、これらの弱酸だけを配合する場合は本発明から除かれる。
【0017】
上述のように、本発明のエアゾール剤組成物の原液のpHは5以下であり、好ましくは2〜5である。pHが5を超えると経時的に沈殿物を生じ、噴射口の目詰まり等噴射性状の悪化を招来するので好ましくないからである。pHが2未満であると経時的な沈殿は生じないので噴射性状に影響はないが、皮膚に塗布した場合、皮膚に刺激が発生する可能性があるため好ましくない。
【0018】
ジメチルエーテルは噴射剤であり、噴射剤として、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン等からなる液化石油ガス(LPG)を添加してもよい。
ジメチルエーテルを含有する噴射剤の配合(含有)量は、原液の1質量部に対して、1〜4質量部であり、1〜3質量部が好ましい。噴射剤の配合(含有)量が原液の1質量部に対して1質量部未満になると噴射剤量が少なすぎて持続的な冷感が減少するので好ましくない。4質量部を超えると噴射したエアゾールが霧状になり、持続的な冷却効果が得られないので好ましくない。
【0019】
本発明のエアゾール剤組成物は、例えば、噴射剤以外の成分を加温、混合、攪拌して溶解又は均一に分散させて原液を調製した後、この原液を噴射剤と共に耐圧容器に充填することによってエアゾール剤として提供される。
【0020】
前記成分以外に噴射時にシャーベット状の泡沫の形成を促進させるための成分として次のような成分を原液中に任意に配合することができる。
【0021】
炭素原子数12以上の高級アルコールは、噴射時にシャーベット状の泡沫を形成させるための任意配合成分である。具体的には、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコールが挙げられ、ステアリルアルコール又はセタノールが好ましい。これら高級アルコールは1種を用いるのみでなく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高級アルコールの配合(含有)量は、通常、原液中0.1〜14質量%であり、0.3〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がさらに好ましい。
【0022】
アニオン性界面活性剤は、噴射時にシャーベット状の泡沫を形成させるための任意配合成分である。アニオン性界面活性剤としては、アミノ酸系アニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、カリ石鹸が挙げられる。組成物の皮膚に対する刺激性の観点から、アミノ酸系アニオン性界面活性剤としては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウムが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸・リン酸塩としては、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウムが好ましい。
アニオン性界面活性剤の配合量は、原液中0.005〜3質量%であり、0.01〜1質量%が好ましい。
【0023】
さらに、本発明のエアゾール剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、鎮痒剤(クロタミトン、イクタモール、モクタモール、チモール酸等)、抗真菌剤(トルナフテート、硝酸ミコナゾール、塩酸テルビナフィン、塩酸ブテナフィン、ビフォナゾール、塩酸ネチコナゾール、塩酸ラノコナゾール等)、消炎鎮痛剤(インドメタシン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、ケトプロフェン、ジクロフェナック、ピロキシカム、イブプロフェン、メフェナム酸等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イソチペンジル等)、殺菌剤(ヨウ化カリウム、アクリノール、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム等)、抗化膿性疾患剤(塩酸テトラサイクリン、フラジオマイシン、カナマイシン等)、清涼化剤(メントール、カンフル、ハッカ油等)、抗ヘルペス剤(アシクロビル等)等を配合してもよい。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0025】
実施例1
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.38g
リドカイン 0.76g
乳酸 0.6g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 15.0g
セイセイスイ 17.59g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
原液の各成分を加温、混合、攪拌して、溶解又は均一に分散させて原液を調製した。原液をエアゾール容器に充填し、バルブを装着して噴射剤を充填した。噴射用のスパウトを装着しpH=5.0のエアゾール剤とした。
【0026】
実施例2
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.35g
リドカイン 0.70g
塩化ベンザルコニウム 0.02g
グリチルレチン酸ジカリウム 0.18g
L−メントール 0.35g
乳酸 0.8g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.7g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.8g
ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム 0.1g
ステアリン酸 1.0g
エタノール 14.0g
セイセイスイ 15.0g
(噴射剤)
ジメチルエーテル 65.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=4.7のエアゾール剤を製造した。
【0027】
実施例3
(原液)
リドカイン 0.4g
乳酸 1.2g
ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル 0.8g
ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル 0.8g
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(15)グリセリル 0.38g
ステアリン酸 0.8g
セタノール 0.5g
イソプロパノール 17.0g
セイセイスイ 18.12g
(噴射剤)
LPG 5.0g
ジメチルエーテル 55.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=4.1のエアゾール剤を製造した。
【0028】
実施例4
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.38g
リドカイン 0.76g
乳酸 5.0g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 14.0g
セイセイスイ 14.19g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=3.3のエアゾール剤を製造した。
【0029】
実施例5
(原液)
塩酸リドカイン 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 16.0g
セイセイスイ 17.52g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=4.1のエアゾール剤を製造した。
【0030】
実施例6
(原液)
塩酸プロカイン 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 16.0g
セイセイスイ 17.57g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
原液の各成分を加温、混合、攪拌して、溶解又は均一に分散させて原液を調製した。原液をエアゾール容器に充填し、バルブを装着して噴射剤を充填した。噴射用のスパウトを装着しpH=3.9のエアゾール剤とした。
【0031】
実施例7
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.35g
塩酸リドカイン 0.70g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.70g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.80g
ステアリン酸 0.88g
エタノール 15.0g
セイセイスイ 15.57g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 63.0g
原液の各成分を加温、混合、攪拌して、溶解又は均一に分散させて原液を調製した。ポリエチレンの袋が収納されているアルミニウム缶のポリエチレン袋の中に原液を充填し、ステンレスバルブを装着して噴射剤を充填した。噴射用のスパウトを装着しpH=4.8のエアゾール剤とした。
【0032】
比較例1
(原液)
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
ジイソプロパノールアミン 0.02g
エタノール 16.0g
セイセイスイ 18.31g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=6.2のエアゾール剤を製造した。
【0033】
比較例2
(原液)
リドカイン 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 16.0g
セイセイスイ 17.57g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=7.4のエアゾール剤を製造した。
【0034】
比較例3
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.38g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
ジイソプロパノールアミン 0.1g
エタノール 16.0g
セイセイスイ 17.85g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=5.6のエアゾール剤を製造した。
【0035】
比較例4
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.38g
リドカイン 0.76g
乳酸 0.4g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 16.0g
セイセイスイ 16.79g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=5.4のエアゾール剤を製造した。
【0036】
比較例5
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.38g
リドカイン 0.76g
クエン酸 2.0g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 15.0g
セイセイスイ 16.17g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=3.4のエアゾール剤を製造した。
【0037】
比較例6
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.38g
リドカイン 0.76g
dl−リンゴ酸 2.0g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 15.0g
セイセイスイ 16.17g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=3.6のエアゾール剤を製造した。
【0038】
比較例7
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.38g
リドカイン 0.76g
リン酸 1.0g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 15.0g
セイセイスイ 17.17g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=3.0のエアゾール剤を製造した。
【0039】
比較例8
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.38g
リドカイン 0.76g
酒石酸 1.0g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 15.0g
セイセイスイ 17.17g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=3.8のエアゾール剤を製造した。
【0040】
比較例9
(原液)
塩酸テルビナフィン 0.38g
リドカイン 0.76g
50%グルコン酸 4.0g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 14.0g
セイセイスイ 15.17g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
上記成分について、実施例1に準拠し、pH=4.3のエアゾール剤を製造した。
【0041】
比較例10
(原液)
塩酸プロカイン 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート 0.76g
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート 1.95g
ステアリン酸 0.96g
エタノール 16.0g
セイセイスイ 16.97g
ジイソプロパノールアミン 0.6g
(噴射剤)
液化石油ガス 2.0g
ジメチルエーテル 60.0g
原液の各成分を加温、混合、攪拌して、溶解又は均一に分散させて原液を調製した。原液をエアゾール容器に充填し、バルブを装着して噴射剤を充填した。噴射用のスパウトを装着しpH=7.8のエアゾール剤とした。
【0042】
試験例1
実施例1、4〜6、並びに比較例1〜10で調製した原液をガラス製耐圧瓶に充填し、バルブを装着して噴射剤を充填した。各サンプルを5℃で保存し、1カ月後の性状を観察した。結果を下表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
実験例1、4〜6では直後の噴射性状でシャーベット状を呈し、5℃で1カ月間保存してもガラス耐圧瓶内の製剤は無色澄明であった。
【0045】
比較例1は局所麻酔薬であるリドカインを配合していないエアゾール剤であり、pHが5超であっても製造直後の噴射性状でシャーベット状を呈し、5℃で1カ月間保存してもガラス耐圧瓶内の製剤の性状は無色澄明であった。
【0046】
比較例2はリドカインを配合し、pHを5超としたエアゾール剤であり、直後の噴射性状はシャーベット状であるが、5℃で1カ月間保存したときにガラス耐圧瓶内には沈殿物が発生した。
【0047】
比較例3は塩酸テルビナフィンを配合し、リドカインを配合していないエアゾール剤であり、pHが5超であっても製造直後の噴射性状でシャーベット状を呈し、5℃で1カ月間保存してもガラス耐圧瓶内の製剤の性状は無色澄明であった。これにより、沈殿の生成はリドカインの配合によることがわかった。
【0048】
比較例4は乳酸が配合されているが原液のpHが5以下にならず、ガラス耐圧瓶内には沈殿物が発生した。
【0049】
比較例5〜9は乳酸以外の弱酸を配合しており原液のpHは5以下であるが、ガラス耐圧瓶内には沈殿物が発生した。これにより、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、酒石酸、グルコン酸では原液のpHを5以下に調整しても沈殿の生成を抑制できないことが確認された。
【0050】
比較例10は塩酸プロカインを配合し、pHを5超としたエアゾール剤であり、直後の噴射性状はシャーベット状であるが、5℃で1カ月間保存したときにガラス耐圧瓶内には沈殿物が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により、リドカイン又はプロカインを含有し、さらに噴射時にシャーベット状の泡沫を形成するため、極めて優れた鎮痒効果を発揮するエアゾール剤を提供することが期待される。さらにテルビナフィン等の抗真菌薬を配合することにより、治療効果の増強された抗真菌エアゾール剤を提供することも期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(e)成分を含有する原液、並びに(f)成分を含有する噴射剤からなり、原液のpHが5以下であることを特徴とするエアゾール剤組成物。
(a)リドカイン又はプロカイン
(b)非イオン界面活性剤
(c)炭素原子数10〜22の直鎖モノカルボン酸
(d)乳酸又は強酸
(e)水及び炭素原子数1〜3の低級アルコールからなる混合溶媒
(f)ジメチルエーテル
【請求項2】
(a)成分が原液中0.01〜5質量%、(b)成分が原液中0.1〜15質量%、(c)成分が原液中0.1〜14質量%及び(e)成分の水と炭素原子数1〜3の低級アルコールの配合比が10:90〜90:10であり、(e)成分が原液中40〜99質量%であって、(a)〜(e)成分を含有する原液の1質量部に対して(f)成分を含有する噴射剤が1〜4質量部である請求項1記載のエアゾール剤組成物。
【請求項3】
(b)成分の非イオン界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンヒマシ油の少なくとも1種である請求項1又は2記載のエアゾール剤組成物。
【請求項4】
(b)成分の非イオン界面活性剤がポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート及びポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートの少なくとも1種である請求項1又は2記載のエアゾール剤組成物。
【請求項5】
(c)成分の炭素原子数10〜22の直鎖モノカルボン酸がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びベヘニン酸の少なくとも1種である請求項1又は2記載のエアゾール剤組成物。

【公開番号】特開2006−328059(P2006−328059A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122874(P2006−122874)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】