説明

エアゾール容器用のアクチュエータ

【課題】ステムからの連通路内に噴射後の残留物があってこれを掻き出して簡単に洗浄できるエアゾール容器用のアクチュエータを提供すること。
【解決手段】エアゾール容器11のステム15,15を囲んでアクチュエータ本体41を装着固定し、各ステムと連通する複数の独立した連通路42aが形成され一端部に噴射口が他端部に各ステムへの嵌合連結部が形成されたノズル本体42をアクチュエータ本体41に設ける。ノズル本体42の噴射口から連通路42aに、内溶液の流路を形成する流路部および噴射後の残留物を掻き出す掻き出し部を備えた掻き出し洗浄部材43を挿脱可能に装着しておき、この掻き出し洗浄部材43を連通路42aから引き出した掻き出し洗浄位置を保持手段44で保持するように構成する。ノズル本体42から掻き出し洗浄部材43を引き出して、連通路42a内の残留物を掻き出した上で、洗浄路として水を流して連通路42aを洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール容器用のアクチュエータに関し、ステムからの連通路内に噴射後の残留物があってこれを掻き出して簡単に洗浄できるようにしたもので、例えばクリーム状の染毛剤など2つの原液を噴射させるアクチュエータのつまりを防止できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器内に内溶液と噴射剤とを充填したエアゾール製品には種々のものがあり、そのひとつに複数の内溶液を混合することにより優れた効果を発揮するもの、例えば塗料、接着剤、染毛剤、医薬品などがある。
このような使用の際に混合しなければならないものの多くは、混合によって硬化や酸化などの化学反応を生じることからエアゾール製品とする場合には、エアゾールバルブ内で混合を生じさせると、硬化などによりエアゾールバルブを再使用できなくなる場合もあり、エアゾールバルブ内で混合させずアクチュエータを介して外部に分配して噴射させることが好ましい場合が多い。
【0003】
一方、内溶液によっては、噴射後の乾燥によってアクチュエータで目詰まりを生じるものがあり、その対策が必要となる。
このため、例えば特許文献1の二連エアゾール式液体噴出容器では、左右一対のエアゾール缶に連結部材を嵌合して連結状態とし、通路部材に垂下形成した第1嵌合筒をエアゾール缶のステムに嵌合させるとともに、起立させて第2嵌合筒を形成し、これら通路部材と連結部材の外面に主筒部材を着脱自在に嵌合させ、主筒部材にノズル付ヘッドと操作用のレバーを備えたキャップを取り付けて構成してある。そして、洗浄する場合には、主筒部材を連結部材から取り外すことで、主筒部材とともに、通路部材をステムから外し、通路部材に設けた摘み板で主筒部材から通路部材を引き出して通路内の残留物を洗浄するようにしている。
【0004】
また、特許文献2、3の2剤吐出容器では、並べて置かれた2つのエアゾール容器のステムに誘導路が形成されたノズルを嵌合し、ノズルを覆うカバーに操作用のレバーを設けるとともに、ノズルはカバーを取り付けた状態で着脱可能に構成してある。そして、洗浄する場合には、カバーを残してノズルを取り出して洗浄するとともに、別に用意したノズル洗浄器をノズルの誘導路に連結した後、ポンプ部で流体を吸入排出して洗浄することも行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−41510号公報
【特許文献2】特開2003−20083号公報
【特許文献3】特開平11−59746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1の通路部材を取り外して洗浄する構造では、細い通路内に詰まった残留物に水をかけても簡単に洗浄することができないという問題があるとともに、摘み板は設けられているものの、取り出す場合に残留物が手に付着するなどの問題がある。
また、特許文献2,3に開示されたポンプ部を備えたノズル洗浄器を用いる場合には、洗浄器をノズルとともに水などに漬け、ノズルと洗浄器との間を水が流通するようにポンプ部を伸縮させることを繰り返すが、この場合も細い通路内に詰まった残留物をポンプの水圧をかけても簡単に洗浄することができないという問題があるとともに、ノズル洗浄器を別に保管しておかなければならないという問題もある。
【0007】
また、洗浄する場合には、洗浄器をノズルとともに水などに漬ける必要があるため残留物が溶解する水に手を入れることになって手が汚れるとともに、洗浄完了までの工程がアクチュエータの分解、ノズルの引抜き、ノズルへのノズル洗浄器の連結、ノズルおよびノズル洗浄器の水への浸漬、再組立などと多く、手間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術における課題を解決するためなされたものであり、ステムからの連通路内に噴射後の残留物があってこれを掻き出して簡単に洗浄できるエアゾール容器用のアクチュエータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1記載のエアゾール容器用のアクチュエータは、エアゾール容器の複数のステムを囲んで装着固定されるアクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体に設けられ各ステムと連通する複数の独立した連通路が形成され一端部に噴射口が他端部に各ステムへの嵌合連結部が形成されたノズル本体と、このノズル本体の前記噴射口から前記連通路に挿脱可能に装着され内溶液の流路を形成する流路部および噴射後の残留物を掻き出す掻き出し部を備えた掻き出し洗浄部材と、この掻き出し洗浄部材を前記連通路から引き出した掻き出し洗浄位置で保持する保持手段とを備えてなることを特徴とするものである。
また、本発明の請求項2記載のエアゾール容器用のアクチュエータは、請求項1記載の構成に加え、前記ノズル本体を、前記アクチュエータ本体にヒンジ部を介して回動可能に連結し回動状態を掻き出し洗浄位置として洗浄可能に構成してなることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明の請求項3記載のエアゾール容器用のアクチュエータは、請求項1または2記載の構成に加え、前記掻き出し洗浄位置を保持する保持手段を、前記ノズル本体に設けられる係止アームと、この係止アームを掻き出し洗浄位置で係止する洗浄時係止部とで構成してなることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項4記載のエアゾール容器用のアクチュエータは、請求項3記載の構成に加え、前記掻き出し洗浄位置を保持する保持手段を、前記ノズル本体に設けられる係止アームと、前記係止アームを噴射位置で係止する噴射時係止部とを設けて構成してなることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明の請求項5記載のエアゾール容器用のアクチュエータは、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記掻き出し洗浄部材の下端部と中間部との少なくとも2箇所に、流路部と掻き出し部とを反転して形成し流路の確保と残留物の掻き出しとを両立させて構成してなることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項6記載のエアゾール容器用のアクチュエータは、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記掻き出し洗浄部材に、らせん状の突起部を形成して流路部および掻き出し部としてなることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、本発明の請求項7記載のエアゾール容器用のアクチュエータは、請求項1〜6のいずれかに記載の構成に加え、前記エアゾール容器が、開口部の口径を1インチとしたインチ缶に複数のステムが設けられて構成されてなることを特徴とするものである。
なお、ここで、残留物とは、エアゾール容器内に充填される液状の原液の残留物のみならず、ジェル状、フォーム状、クリーム状の原液による残留物をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1記載のエアゾール容器用のアクチュエータによれば、エアゾール容器の複数のステムを囲んで装着固定されるアクチュエータ本体と、このアクチュエータ本体に設けられ各ステムと連通する複数の独立した連通路が形成され一端部に噴射口が他端部に各ステムへの嵌合連結部が形成されたノズル本体と、このノズル本体の前記噴射口から前記連通路に挿脱可能に装着され内溶液の流路を形成する流路部および噴射後の残留物を掻き出す掻き出し部を備えた掻き出し洗浄部材と、この掻き出し洗浄部材を前記連通路から引き出した掻き出し洗浄位置で保持する保持手段とを備えてなるので、ノズル本体の噴射口から掻き出し洗浄部材を引き出して保持手段で掻き出し洗浄位置に保持することで、連通路内の残留物を掻き出し洗浄部材の掻き出し部で掻き出すことができ、掻き出した部分を洗浄路として水を流すことで、完全にふさがれた状態とは異なり、容易に洗浄することができる。一方、掻き出し洗浄部材を挿入した状態でも流路部によって流路を確保して円滑な噴射を維持することができる。
【0016】
また、本発明の請求項2記載のエアゾール容器用のアクチュエータによれば、前記ノズル本体を、前記アクチュエータ本体にヒンジ部を介して回動可能に連結し回動状態を掻き出し洗浄位置として洗浄可能に構成してなるので、洗浄時にアクチュエータ本体に対してノズル本体および掻き出し洗浄部材を回動させて掻き出し洗浄位置とすることで、エアゾール容器とは方向を変えた状態として一層容易に流水などで洗浄することができる。
【0017】
さらに、本発明の請求項3記載のエアゾール容器用のアクチュエータによれば、前記掻き出し洗浄位置を保持する保持手段を、前記ノズル本体に設けられる係止アームと、この係止アームを掻き出し洗浄位置で係止する洗浄時係止部とで構成してなるので、洗浄時に係止アームを洗浄時係止部に係止することで、掻き出し洗浄位置で掻き出し洗浄部材をノズル本体から完全に取り外すことなく保持することができ、掻き出し洗浄部材を洗浄にともなって流すなどでなくすこともなく、再組立も押し込むことで簡単にできる。
【0018】
また、本発明の請求項4記載のエアゾール容器用のアクチュエータによれば、前記掻き出し洗浄位置を保持する保持手段を、前記ノズル本体に設けられる係止アームと、前記係止アームを噴射位置で係止する噴射時係止部とを設けて構成してなるので、噴射時に係止アームを噴射時係止部に係止することで、噴射にともなって掻き出し洗浄部材が引き出されることなく保持でき、安定した状態で噴射させることができる。
【0019】
さらに、本発明の請求項5記載のエアゾール容器用のアクチュエータによれば、前記掻き出し前記洗浄部材の下端部と中間部との少なくとも2箇所に、流路部と掻き出し部とを反転して形成し流路の確保と残留物の掻き出しとを両立させて構成してなるので、流路部と掻き出し部を反転して形成することで、少なくとも2箇所の反転した位置の流路部で流路を確保して噴射させることができるとともに、一方の流路部の残量物を他方の掻き出し部で掻き出すことができる。
【0020】
また、本発明の請求項6記載のエアゾール容器用のアクチュエータによれば、前記掻き出し洗浄部材に、らせん状の突起部を形成して流路部および掻き出し部としてなるので、らせん状の突起部により流路の確保と残留物の掻き出しとを両立させることができる。
【0021】
さらに、本発明の請求項7記載のエアゾール容器用のアクチュエータによれば、前記エアゾール容器が、開口部の口径を1インチとしたインチ缶に複数のステムが設けられて構成されてなるので、インチ缶に2本など複数のステムを備えたエアゾール容器に設けたアクチュエータでも洗浄部材を用いて洗浄することで、流路の確保と残留物の掻き出しとを両立させことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータの一実施の形態にかかる噴射状態および掻き出し洗浄状態のそれぞれ外観斜視図である。
【図2】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータが適用されるエアゾール容器の一例の外観斜視図である。
【図3】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータの一実施の形態にかかる中央縦断面図(図4中のA−A´断面に相当)および図4中のB−B´断面図である。
【図4】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータの一実施の形態にかかる正面図、、平面図および側面図である。
【図5】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータの一実施の形態にかかるアクチュエータ本体の中央縦断面図、平面図、底面図および側断面図である。
【図6】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータの一実施の形態にかかるノズル本体の正面図、平面図および中央縦断面図である。
【図7】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータの一実施の形態にかかる掻き出し洗浄部材の中央縦面図、平面図およびB−B´断面図である。
【図8】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータのそれぞれ掻き出し洗浄部材の実施の形態にかかり、流路部および掻き出し部を説明する正面図、平面図、底面図および側面図である。
【図9】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータの一実施の形態にかかる掻き出し洗浄状態の正面図およびその工程を説明する部分断面図である。
【図10】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータのたの一実施の形態にかかる正面図、側面図および中央縦断面図である。
【図11】本発明のエアゾール容器用のアクチュエータの一実施の形態にかかる掻き出し洗浄状態の正面図および部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細を説明する。
本発明のエアゾール容器用のアクチュエータ1の一実施の形態では、エアゾール容器11の複数のステム、例えば2本のステム15,15に装着してそれぞれのステム15,15から混合することなく分配して噴射させることができるようにし、噴射後のアクチュエータ1内の残留物を簡単に洗浄できるようにするものである。
このエアゾール容器用のアクチュエータ1が適用されるエアゾール容器は、これまでの2つのエアゾール容器を並べて連結部材で連結したものの2本のステムに適用するのに替え、図2に示すように、エアゾール容器11として一般的に規格品的に用いられている口径1インチのビード部を備えたインチ缶に2組のエアゾールバルブを設けた1つのインチ缶の2つのステム15,15に適用する形態を例に説明する。
【0024】
このインチ缶に2組のエアゾールバルブのステム15,15を設けたエアゾール容器11では、図3に示すように、エアゾール容器11のビード部12に合成樹脂製の装着部材13を嵌合装着するようにし、この装着部材13に2組のバルブハウジング装着部14,14が形成しておく。そして、それぞれのバルブハウジング装着部14,14にステム15,15を備えたエアゾールバルブが装着される。
この装着部材13は、略円筒状の外形とされた装着部本体13aを備え、その中間部外周につば部13bが形成されてエアゾール容器11のビード部12上面に当接させることができるようにしてある。そして、つば部13bの中間部下方にはビード部12の内周に係合させる係合突部が形成された係合片が円周等間隔に8個設けられ、各係合片の上端部と装着部本体13aとの間が放射方向の放射リブで支持され、装着部本体13aとの間に形成された緩衝空間によって弾性変形可能としてある。これにより、装着部材13をエアゾール容器11のビード部12に上方から押し込むことでビード部12に嵌合装着することができる。
【0025】
こうしてエアゾール容器11のビード部12に嵌合装着される装着部材13の装着部本体13aには、上下方向に平行な小円筒状のバルブハウジング装着部14,14が装着部材13の中心軸を挟む両側に設けられるとともに、装着部本体13aの上部に突き出した2つの平側壁面を平行とし、その両端の半円壁面とで略長円形状に形成された先端突出部13c内にバルブハウジング装着部14,14の上端部が配置されている。
このバルブハウジング装着部14,14の中間部内周には、係合爪が形成してあり、エアゾールバルブのバルブハウジング16,16の中間部外周に形成した係合段部を係合して固定できるようにしてある。
【0026】
各バルブハウジング16には、中間上部にそれぞれバルブ室16aが形成されて下端部に形成したチューブ装着部16bにディップチューブ17が連結される。さらに、ディップチューブ17の外側に噴射剤の加圧力で容積を変えることができる内袋18が取り付けてある。
【0027】
また、各バルブ室16aに装着されるエアゾールバルブは、ステム15がステムボディ15aとステム突出部15bとで一体に構成され、ステム突出部15bの中心部に噴射路15cが形成されるとともに、噴射路15dのステムボディ15aの上面に対応する位置にバルブ室16aと連通するオリフィス15dが側方に開口してある。そして、ステム15および一体のステムボディ15aがバルブ室16aの底部に装着したスプリング15eによって上方に付勢されている。
また、各ステム15は、弁として開閉される環状のステムガスケット15fの中心孔を貫通し、ステム15が定常位置である上端に付勢された状態では、ステム15の側方に開口したオリフィス15dを塞いでバルブ室16aと噴射路15cとの連通を遮断し、ステム15が押し下げられた時にステムガスケット15f自身がたわむことで、オリフィス15dを開いてバルブ室16aとステム15の噴射路15cとを連通させることができるようになっている。
【0028】
この弁として開閉されるステムガスケット15fは、周囲がバルブハウジング16の上面および装着部材13の先端突出部13cの上面とに跨るように配置され、バルブハウジング16の上面および装着部材13の先端突出部13cの上面にそれぞれ形成した2重同心上の環状の突起部によるシールポイントによりステムガスケット15fを上部から押えた時に面圧を高めてシールできるようにしてある。なお、ここでは、2本のステム15,15に対応して一体のステムガスケット15fが用いられ、略長円形状の先端突出部13cの上面形状に対応して形成したものを使用している。
【0029】
このような装着部材13およびバルブハウジング16,16の外側を覆って金属板製の被覆体19が設けられ、例えばアルミ製とされ、2本のステム15,15を貫通させて突出させるとともに、ステムガスケット15fを押えて下端外周をエアゾール容器11のビード部12の外側にクリンプして固定するようにしている。
したがって、この被覆体19は、最上部が装着部材16の先端突出部13cの略長円柱形状の外側を覆う形状とされ、その下方に小径円筒部とこれに連続する大径円筒部とクリンプ部とが形成された形状に形成してあり、被覆体19をビード部12に固定する場合には、ビード部12の上面と装着部材13のつば部13bとの間にシールガスケット20を配置してクリンプすることで、エアゾール容器11をシール性を高めて密封する。
【0030】
また、この複数液分配用のエアゾール装置1には、充填作業を円滑に行うとともに、噴射流量を調整するため、バルブハウジング16のバルブ室16aの下方にそれぞれ下部バルブ室16dが形成されてポペットバルブ21が装着してある。これにより、内溶液の充填の際には、ポペットバルブ21を押し下げた位置として周囲を流路とし、短時間に内溶液を充填できるようにする一方、充填後の使用状態では、ポペットバルブ21を内溶液で押し上げた位置に保持することで、中心部の流路で噴射流量を規制できるようにしてある。
したがって、このポペットバルブ21を装着する場合には、ステム15のオリフィス15dで噴射流量を規制する必要がなく、内溶液の充填に支障のない大きな孔としておくことができる。
【0031】
さらに、このエアゾール容器11では、被覆体19で2本のステム15,15に対応する1つのステムガスケット15fを押えているが、これまでの1本のステムに対応するステムガスケットに比べその面積が先端突出部13cの面積に対応して大きくなりエアゾール容器11の内圧が加わる受圧面積も大きくなる。
そこで、ステムガスケット15fを押えるとともに、被覆体19の変形を防止する合成樹脂製の補強カバー部材30が設けてあり、装着部材13の先端突出部13cの外側を覆うようにしてある。この合成樹脂製の補強カバー部材30の剛性によってステムガスケット15fを押えるとともに、被覆体19の変形を防止している。
【0032】
このようなインチ缶に2つのステム15,15を備えたエアゾール容器11に設けるエアゾール容器用のアクチュエータ1は、エアゾール容器11の2つのステム15,15を囲んで装着固定されるアクチュエータ本体41と、このアクチュエータ本体41に設けられ各ステム15,15と連通する2つの独立した連通路が形成され一端部に噴射口が他端部に各ステムへの嵌合連結部が形成されたノズル本体42と、このノズル本体42の噴射口から連通路に挿脱可能に装着され内溶液の流路を形成する流路部および噴射後の残留物を掻き出す掻き出し部を備えた掻き出し洗浄部材43と、この掻き出し洗浄部材43を連通路から引き出した掻き出し洗浄位置で保持する保持手段44とを備えている。
そして、ノズル本体42の噴射口から掻き出し洗浄部材43を引き出して保持手段44で掻き出し洗浄位置に保持することで、連通路内の残留物を掻き出すことができ、掻き出した部分を洗浄路として水を流すことで、完全にふさがれた状態とは異なり、容易に洗浄することができる。
一方、掻き出し洗浄部材43を挿入した状態でも流路部によって流路を確保して円滑な噴射を維持することができる。
【0033】
このアクチュエータ1のアクチュエータ本体41は、エアゾール容器11のカバーを構成して上部がドーム状に形成され、その下部にエアゾール容器11の缶胴の上端に当てる円筒状の外胴部41aが垂下して形成されるとともに、その内側に中胴部41bが垂下して形成されて2重円筒状としてある。そして、中胴部41bの内周に突き出して形成した嵌合爪41cでビード部12に嵌合されてエアゾール容器11のステム15,15を囲むようにアクチュエータ本体41が装着固定される。
このアクチュエータ本体41のドーム状には、2重円筒状の外胴部41aおよび中胴部41bの内側に、装着部材13の先端突出部13cの略長円形状の外周に対応した形状の内胴部41dが垂下して形成され、内胴部41dの下端部が被覆体19の外周と接するようになっている。そして、内胴部41dの操作側(図5(a)の右側)が低い天板部41eとされて中胴部41bおよび外胴部41aの上端が塞がれ、操作側と反対側は垂下する平行側壁部が形成されて下方に開口した回動支持部41fが形成してある。
【0034】
このアクチュエータ本体41の内側に装着されるノズル本体42は、横断面形状が略長円形状とされ、内側にステム15,15に連通する2本の円筒状の連通路42a,42aが設けられて上端部が噴射口42b,42bとされる一方、下端部がステム15,15との嵌合連結部42c,42cとなっている。そして、ノズル本体42の操作側には、操作レバー42dが外側に突き出すように形成されて天板部41eの上方に配置され、反対側には、アクチュエータ本体41の回動支持部41fに支持される水平な回動軸部42eが突き出して形成してある。
また、このノズル本体42には、長径の両外側に掻き出し洗浄部材43の挿脱をガイドするガイド溝42fが形成してあり、ガイド溝42fの上部に洗浄時係止部となるストッパ42gが形成され、下部に噴射時係止部となる係止孔42hが形成してある。
【0035】
このノズル本体42には、残留物を掻き出して洗浄するための掻き出し洗浄部材43が噴射口42b,42bから挿脱可能に装着される。この掻き出し洗浄部材43は、天面部に噴射孔43aが形成されるとともに、噴射孔43aの上部仕切り部からノズル本体42の連通路42a,42aに挿脱される掻き出し棒部43bが2本垂下して形成してある。そして、これら2本の掻き出し棒部43bが連通路42a,42aの端に位置するように配置され、各掻き出し棒部43b,43bには、下端部と中間部に水平に突き出した円板状の掻き出し板43cが設けてある。さらに、下端部の掻き出し板43cには、掻き出し棒部43bと反対の中央に切り欠き溝が形成されて流路部43dとされ、残部が掻き出し部43eとされる。一方、中間部の掻き出し板43cには、下端部と反転させて掻き出し棒部43bと反対側の中央部の両側に2つの切り欠き溝が形成されて流路部43dとされ、残部が掻き出し部43eとしてある。
これにより、中間部の掻き出し板43cの上下の部分および各掻き出し板43cの切り欠き溝の流路部43dが噴射時の内溶液の流路となるとともに、流路に残留する残留物は掻き出し板43cの掻き出し部43eで掻き出すことで中間部の流路部に残留する残留物を下端部の掻き出し部で掻き出すことができる。
また、この掻き出し洗浄部材43によれば、洗浄時の流路が確保できるとともに、掻き出し棒部43bの引き抜いた部分も洗浄時の流路なり、上端の噴射孔43aから下端部まで連続する洗浄時の流路が確保できる。
【0036】
この掻き出し洗浄部材43には、ノズル本体42から引き出した掻き出し洗浄位置で保持するための保持手段44が設けてあり、掻き出し洗浄部材43の天面部の両側に保持アーム44a,44aが下方に突き出して一体に形成されて合成樹脂の弾性で両側から挟んで押し縮めたり、放すことで広がるように戻すことができるようになっている。そして、これら保持アーム44a,44aには、下端部内側にL字状に段差部44b、44bが形成されるとともに、下端に外側に突き出す係止突起44c,44cが形成してある。
これにより、掻き出し洗浄部材43をノズル本体42に挿入した噴射時には、保持アーム44a,44aの係止突起44c,44cをノズル本体42のガイド溝42f,42fの下部の係止孔42h、42hに挿入して係止することでその噴射状態を保持することができ、保持アーム44a,44aを両側から挟んで押し縮めて、係止状態を開放して引き抜くことができる。
一方、掻き出し洗浄部材43をノズル本体42から引き抜いた洗浄時には、掻き出し洗浄部材43の段差部44b、44bをノズル本体42のガイド溝42f,42fの上部のストッパ42g、42gに当てることで、これ以上引き抜くことができない掻き出し洗浄位置に保持できる。
【0037】
また、掻き出し洗浄部材43に形成する流路部および掻き出し部の形状は、図8に示すように、種々の形態があり、同図(b)では、掻き出し洗浄部材43の掻き出し棒部43bを左右に分割して2本とし、中間部と下端部にそれぞれ掻き出し板43cを設けてある。そして、下端部の掻き出し板43cでは中央部に切り欠き溝の流路部43dが形成され、流路部43d以外の残部が掻き出し部43eとなり、中間部では中央部を挟む両側に2つの切り欠き溝を形成して流路部43dが形成され、流路部43d以外の残部が掻き出し部43eとしてある。
このような掻き出し洗浄部材43によっても流路部43dと掻き出し部43eを反転して形成することで、反転した位置の流路部43dで流路を確保して噴射させることができるとともに、一方の流路部43dの残量物を他方の掻き出し部43eで掻き出すことができる。
【0038】
また、掻き出し洗浄部材43に形成する流路部および掻き出し部の形状は、図8(c)に示すように、掻き出し洗浄部材43の掻き出し棒部43bを掻き出し板43cの中心部に配置し、中間部と下端部にそれぞれ掻き出し板43cを設けるようにする。そして、下端部の掻き出し板43cでは、対角位置の両側に切り欠き溝の流路部43dが形成され、流路部43d以外の残部が掻き出し部43eとなり、中間部では下端部と直交する対角位置の両側に2つの切り欠き溝を形成して流路部43dが形成され、流路部43d以外の残部が掻き出し部43eとしてある。
このような掻き出し洗浄部材43によっても流路部43dと掻き出し部43eを反転して形成することで、反転した位置の流路部43dで流路を確保して噴射させることができるとともに、一方の流路部43dの残量物を他方の掻き出し部43eで掻き出すことができる。
【0039】
また、掻き出し洗浄部材43に形成する流路部および掻き出し部の形状は、図8(d)に示すように、掻き出し洗浄部材43の掻き出し棒部43bを中心部に配置し、その周囲に螺旋状の掻き出し板43cを設け、螺旋部の間を流路部43dとし、螺旋部自体を掻き出し部43eとするようにしている。
このような掻き出し洗浄部材43によっても螺旋状の掻き出し板43cの間によって流路を確保して噴射させることができるとともに、残量物を掻き出し板43cで掻き出すことができる。
【0040】
このようなエアゾール容器用のアクチュエータ1では、次のようにして組み立て、噴射および残留物の洗浄を行う。
このアクチュエータ1の組み立ては、ノズル本体42に掻き出し洗浄部材43を噴射口42b,42bから連通路42a,42aに挿入し、保持手段44の保持アーム44a,44aの係止突起44c,44cを係止孔42h,42hに入れて係止し、アクチュエータ本体41の回動支持部41fにノズル本体42の回動軸部42eを装着して回動可能に連結し、噴射状態を保持する。
この状態で、アクチュエータ本体41をエアゾール容器11の2つステム15,15を囲むように配置し、ビード部12の外周に嵌合爪41cを嵌合することで、アクチュエータ1が装着される。
【0041】
このアクチュエータ1による内溶液の噴射は、エアゾール容器11にアクチュエータ1を装着状態としたまま、操作レバー42dを押し下げることで2つのステム15,15を押し、内溶液をそれぞれのステム15,15の噴射路15c,15c、ノズル本体42の連通路42a,42a、噴射口42b,42bおよび掻き出し洗浄部材43の流路部43d,43d、噴射孔43a,43aを介して混合することなく分配状態で噴射させることができる。
【0042】
噴射後のアクチュエータ1の洗浄は、まず、掻き出し洗浄部材43をノズル本体42から引き出して残留物を掻き出すため、保持手段44の保持アーム44a,44aを両側から押し込むようにした後、係止突起44c,44cを係止孔42h,42hに位置させて引き上げ、係止状態を開放する。
そして、掻き出し洗浄部材43を引き上げて掻き出し板43c,43cで残留物を掻き出すようにし、保持アーム44a,44aの段差部44b,44bをノズル本体42のストッパ42g,42gに当てた引き上げ上端の掻き出し洗浄位置に保持する。
この後、ノズル本体42を回動軸部42eを中心に回動させてエアゾール容器11に対してノズル本体42をほぼ90度傾けた状態とする。
このようなノズル本体42を回動させた状態で、ステム15,15への嵌合連結部側から流水でノズル本体42の連通路42a,42aを洗浄するとともに、掻き出し洗浄部材43の引き抜いた部分も流水で洗浄する。
このような掻き出し洗浄部材43で残留物を掻き出すことで、ノズル本体42の連通路42a,42aには、洗浄路が形成され、これまでの連通路に完全に残留物が詰まった状態では、流水が弾かれるなどで連通路内に入っていかない場合が多いが、このアクチュエータ1では、残留物を掻き出すことで形成した洗浄路に流水を導くことができ、簡単に洗浄することが可能となる。
【0043】
また、このアクチュエータ1によれば、掻き出し洗浄部材43を保持手段44で掻き出し洗浄位置に保持することで、洗浄の際の流水によって流失してしまうこともなく、次の洗浄のために別に保管する必要もなく、そのままノズル本体42に押し込むことで組み立てておくことができ、取り扱いも容易である。
【0044】
なお、保持手段44として掻き出し洗浄部材43の両側に保持アーム44a,44aを設け、段差部44b,44bと係止突起44c,44cでノズル本体42に保持するようにしたが、これに限らず他の構成とすることもできる。
保持手段44を、例えば図10に示すように、掻き出し洗浄部材43の一方側であるノズル本体42の操作レバー42d側の中央に1本の保持アーム44aを設け、上端に操作部44dを突出すように一体に形成して、下端部に係止突起44cを内側に突出すように設けておく。そして、ノズル本体42には、係止突起44cが移動する上下方向の係止溝44eを形成して構成してある。
これにより、係止溝44eの上端に保持アーム44aの係止突起44cを係止することでこれ以上引き上げることができず、掻き出し洗浄位置に保持することができるようにしてある。
このような保持手段44によっても掻き出し洗浄部材43を保持手段44で掻き出し洗浄位置に保持することができ、洗浄の際の流水によって流失してしまうこともなく、次の洗浄のために別に保管する必要もなく、そのままノズル本体42に押し込むことで組み立てておくことができ、取り扱いも容易である。
【0045】
なお、このエアゾール容器用のアクチュエータが使用されるエアゾール容器の2つの内袋に充填される内溶液としては、主剤と添加剤など予め混合しておくと硬化や酸化などの化学反応を生じて好ましくないフォーム状などの剤型のエアゾール製品の主剤と添加剤などを挙げることができ、例えばホットシェービングクリーム、毛髪染料、接着剤、塗料、医薬品などのエアゾール製品に適しており、特に乾燥などによって詰まり易いクリーム状の内溶液に好適である。
【符号の説明】
【0046】
1 エアゾール容器用のアクチュエータ
11 エアゾール容器(インチ缶)
12 ビード部
13 装着部材
13a 装着部本体
13b つば部
13c 先端突出部
14 バルブハウジング装着部
15 ステム
15a ステムボディ
15b ステム突出部
15c 噴射路
15d オリフィス
15e スプリング
15f ステムガスケット
16 バルブハウジング
16a バルブ室
16b チューブ装着部
16c シールポイント
16d 下部バルブ室
17 ディップチューブ
18 内袋
19 被覆体
20 シールガスケット
21 ポペットバルブ
30 補強カバー部材
41 アクチュエータ本体
41a 外胴部
41b 中胴部
41c 嵌合爪
41d 内胴部
41e 天板部
41f 回動支持部
42 ノズル本体
42a 連通路
42b 噴射口
42c 嵌合連結部
42d 操作レバー
42e 回動軸部
42f ガイド溝
42g ストッパ
42h 係止孔
43 掻き出し洗浄部材
43a 噴射孔
43b 掻き出し棒部
43c 掻き出し板
43d 流路部
43e 掻き出し部
44 保持手段
44a 保持アーム
44b 段差部
44c 係止突起
44d 操作部
44e 係止溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の複数のステムを囲んで装着固定されるアクチュエータ本体と、
このアクチュエータ本体に設けられ各ステムと連通する複数の独立した連通路が形成され一端部に噴射口が他端部に各ステムへの嵌合連結部が形成されたノズル本体と、
このノズル本体の前記噴射口から前記連通路に挿脱可能に装着され内溶液の流路を形成する流路部および噴射後の残留物を掻き出す掻き出し部を備えた掻き出し洗浄部材と、
この掻き出し洗浄部材を前記連通路から引き出した掻き出し洗浄位置で保持する保持手段とを備えてなることを特徴とするエアゾール容器用のアクチュエータ。
【請求項2】
前記ノズル本体を、前記アクチュエータ本体にヒンジ部を介して回動可能に連結し回動状態を掻き出し洗浄位置として洗浄可能に構成してなることを特徴とする請求項1記載のエアゾール容器用のアクチュエータ。
【請求項3】
前記掻き出し洗浄位置を保持する保持手段を、前記ノズル本体に設けられる係止アームと、この係止アームを掻き出し洗浄位置で係止する洗浄時係止部とで構成してなることを特徴とする請求項1または2記載のエアゾール容器用のアクチュエータ。
【請求項4】
前記掻き出し洗浄位置を保持する保持手段を、前記ノズル本体に設けられる係止アームと、前記係止アームを噴射位置で係止する噴射時係止部とを設けて構成してなることを特徴とする請求項3記載のエアゾール容器用のアクチュエータ。
【請求項5】
前記掻き出し洗浄部材の下端部と中間部との少なくとも2箇所に、流路部と掻き出し部とを反転して形成し流路の確保と残留物の掻き出しとを両立させて構成してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエアゾール容器用のアクチュエータ。
【請求項6】
前記掻き出し洗浄部材に、らせん状の突起部を形成して流路部および掻き出し部としてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエアゾール容器用のアクチュエータ。
【請求項7】
前記エアゾール容器が、開口部の口径を1インチとしたインチ缶に複数のステムが設けられて構成されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエアゾール容器用のアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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