説明

エアゾール組成物

【課題】造膜性に優れ、かつ耐熱性に優れると共に油膜強度下における潤滑性能に優れ、環境にやさしいエアゾール組成物を提供すること。
【解決手段】基油(A成分)と、増稠剤(B成分)と、フッ素系希釈剤(C成分)と、噴射剤(D成分)とからなるエアゾール組成物において、前記基油が、粘度(40℃での動粘度)75〜1200mm/秒のパーフルオロポリエーテル油であり、前記増稠剤が、平均一次粒径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)であり、前記噴射剤が、炭酸ガス、窒素ガス又は亜酸化窒素ガスから選ばれる不活性圧縮ガスであり、該噴射剤を、組成物全量中に0.2〜8重量%の割合で使用することを特徴とするグリース用エアゾール組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール組成物に関し、詳しくは優れた耐熱性と潤滑特性があり、ゴム、樹脂に悪影響を及ぼすことなく、塗布性に優れ、環境影響の少ないエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、事務機器、自動車、産業用機械、その他分解作業が難しい機器においては、その潤滑箇所にオイルやグリースを塗布していた。
【0003】
しかし、かかる機器のメンテナンスをする際には、その都度分解し、オイルやグリースの塗布が必要であった。
【0004】
メンテナンスを行うには、分解と組立作業が必要になり、そのための技術習得や作業に時間がかかってしまい、作業者への負担が大きくなっている。
【0005】
また、近年製品に樹脂、ゴムが多用されており、石油系のエアゾールなどは樹脂、ゴムとの相性を確認する必要がある。
【0006】
この対策として、特許文献1では、フッ素系潤滑剤をエアゾール化して相性の問題を解決している。
【特許文献1】特許2638102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、塩素−フッ素系ガスからなるフロンガスを好ましい噴射剤として使用している。しかし、このフロンガスはオゾン層の破壊を起こす要因となるので、規制対象となっており、現在は実際には使用できない。
【0008】
また、特許文献1には、加圧空気、加圧不活性ガス(窒素ガス)の使用も可能である旨の記載があるが、その噴射剤の使用量は10〜99.93重量%である。
【0009】
しかし、10重量%を越えると、噴射剤の割合が多くなってしまい、エアゾール缶に含まれる潤滑成分の量が少なくなってしまい、噴射後の必要な潤滑成分を確保できないために、造膜性に劣る問題がある。
【0010】
更に、特許文献1には、最適な基油粘度について記載がない。特許文献1の実施例では、デムナムS−65、S−20(いずれも商品名)を用いている。これらの動粘度はデムナムS−65が58−72mm/秒、S−20が20−30mm/秒である。
【0011】
しかし、かかる低粘度の基油を用いた場合には、耐熱性、油膜強度下における潤滑性能が大きな課題となる。
【0012】
また、特許文献1には、増稠剤粒径について記載がない。エアゾール組成物中に、平均一次粒径が10μmを越える増稠剤を用いた場合には、エアゾール内での小経路での詰まり等が発生し、均一なグリース膜を形成することができず造膜性に劣る欠点がある。
【0013】
そこで、本発明の課題は、造膜性に優れ、かつ耐熱性に優れると共に油膜強度下における潤滑性能に優れ、環境にやさしいエアゾール組成物を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の課題は以下の記載によって明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0016】
(請求項1)
基油(A成分)と、増稠剤(B成分)と、フッ素系希釈剤(C成分)と、噴射剤(D成分)とからなるエアゾール組成物において、
前記基油が、粘度(40℃での動粘度)75〜1200mm/秒のパーフルオロポリエーテル油であり、
前記増稠剤が、平均一次粒径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)であり、
前記噴射剤が、炭酸ガス、窒素ガス又は亜酸化窒素ガスから選ばれる不活性圧縮ガスであり、該噴射剤を、組成物全量中に0.2〜8重量%の割合で使用することを特徴とするグリース用エアゾール組成物。
【0017】
(請求項2)
前記増稠剤を、組成物全量中に0.01〜10重量%の割合で添加することを特徴とする請求項1記載のグリース用エアゾール組成物。
【0018】
(請求項3)
前記フッ素系希釈剤が、ハイドロフルオロエーテル又はテトラフルオロペンタンであり、組成物量全量中に50〜96重量%の割合で添加することを特徴とする請求項1又は2記載のグリース用エアゾール組成物。
【0019】
(請求項4)
メンテナンス用グリースとして使用する請求項1〜3の何れかに記載のグリース用エアゾール組成物。
【0020】
(請求項5)
基油(A成分)と、フッ素系希釈剤(C成分)と、噴射剤(D成分)とからなるエアゾール組成物において、
前記基油が、粘度(40℃での動粘度)75〜1200mm/秒のパーフルオロポリエーテル油であり、
前記噴射剤が、炭酸ガス、窒素ガス又は亜酸化窒素ガスから選ばれる不活性圧縮ガスであり、該噴射剤を、組成物全量中に0.2〜8重量%の割合で使用することを特徴とするオイル用エアゾール組成物。
【0021】
(請求項6)
前記フッ素系希釈剤が、ハイドロフルオロエーテル又はテトラフルオロペンタンであり、組成物量全量中に50〜96重量%の割合で添加することを特徴とする請求5記載のオイル用エアゾール組成物。
【0022】
(請求項7)
メンテナンス用オイルとして使用する請求項5又は6記載のオイル用エアゾール組成物。
【発明の効果】
【0023】
本発明のエアゾール組成物によれば、基油粘度が適正な粘度に制御されているので、耐熱性に優れ、油膜強度を維持した状態で潤滑性能にも優れ、十分な油膜を形成する。
【0024】
また、増稠剤の粒径を制御したので、均一な膜を形成でき、固形粒子によるエアゾール詰まりなどの不具合発生も軽減され、造膜性に優れる。
【0025】
更に、環境影響へ配慮し、フッ素系潤滑剤と相性の良いフッ素系希釈剤を使用することにより霧化状態が良好である。
【0026】
また、本発明のエアゾール組成物に用いる不活性圧縮ガス(D成分)は、主成分であるA成分、B成分、C成分と相溶性がないことから、塗布時に主成分の直進性を得ることができ、潤滑箇所に的確に塗布することができる。更に、D成分を0.2〜8重量%の割合で使用するので、噴射後の必要な潤滑成分を十分確保できるために、造膜性に優れる。
【0027】
更に、エアゾール組成物中に、平均一次粒径が10μm以下の増稠剤を用いたので、エアゾール内での小経路での詰まり等が発生せず、均一なグリース膜を形成することができ、造膜性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
本発明のグリース用エアゾール組成物は、基油(A成分)と、増稠剤(B成分)と、フッ素系希釈剤(C成分)と、噴射剤(D成分)とからなる。
【0030】
<A成分>
本発明において、A成分のパーフルオロポリエーテル油は、下記一般式(I)〜(IV)で表されるパーフルオロポリエーテル油から選択使用できる。
【0031】
一般式(I) Rf(CFCFO)(CFO)Rf
上記式中、Rfはパーフルオロ低級アルキル基(例えば、CF、Cなど)であり、CFCFO基及びCFO基は主鎖中にランダムに結合されている。
【0032】
一般式(II) RfO[CF(CF)CFO](CFCFO)(CFO)Rf
上記式中、Rfはパーフルオロ低級アルキル基(例えば、CF、Cなど)であり、CF(CF)CFO基、CFCFO基及びCFO基は主鎖中にランダムに結合されている。
【0033】
一般式(III)RfO[CF(CF)CFO](CFCFO)Rf
上記式中、Rfはパーフルオロ低級アルキル基(例えば、CF、Cなど)であり、CF(CF)CFO基及びCFCFO基は主鎖中にランダムに結合されている。
【0034】
一般式(IV) F(CFCFO)
【0035】
上記一般式(I)〜(IV)において、m、n、a、 b、 c、p、q、s はいずれも整数であり、以下に示す動粘度が得られるように、適宜決められる。
【0036】
本発明に用いられるパーフルオロポリエーテル油は、40℃における動粘度が75〜1200mm/秒であり、好ましくは100〜800mm/秒である。動粘度の測定法は、JIS K2283 キャノン−フェンスケ粘度計の規定に準ずる。
【0037】
動粘度が75mm/秒未満の場合は、蒸発損失の増加や油膜強度の低下など、寿命の低下や摩耗、焼き付きの原因となる可能性がある。一方1200mm/秒を越えると、粘性抵抗の増加など消費動力やトルクが大きくなる不具合が生じる可能性があり、更にエアゾール化するのが難しくなる。
【0038】
本発明に用いられるパーフルオロポリエーテル油の組成物に対する混合割合は、2〜40重量%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜30重量%の範囲である。2重量%未満であると、十分な潤滑膜が形成されない。一方、40重量%を越えると、組成物の粘度増加により塗布させるのが難しい。
【0039】
<B成分>
B成分の増稠剤としては、平均一次粒径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が用いられる。
【0040】
B成分のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、テトラフルオロエチレンの乳化重合、懸濁重合、溶液重合などの方法によって、数平均分子量Mnを約1,000〜1,000,000程度としたポリテトラエチレンを製造し、それを熱分解、電子線照射分解、物理的粉砕などの方法によって低分子量化処理し、数平均分子量Mnを約1,000〜500,000程度とした粉末状のものが用いられる。
【0041】
また、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)の重合法や低分子量化処理は、上記のポリテトラフルオロエチレンと同様にして行われ、数平均分子量Mnを約1,000〜50,000程度としたものが選ばれる。
【0042】
得られた粉末状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)は、平均一次粒径10μm以下のものが用いられる。
【0043】
本発明において、「平均一次粒径」とは、電子顕微鏡で観察される粒子(100個以上)の粒径の算術平均である。平均一次粒径は、凝集していない最小単位の形でのポリテトラフルオロエチレン等の粒子の平均粒子径であり、その粒子の凝集により形成される二次凝集体の粒子径を意味するものではない。
【0044】
平均一次粒径が10μmを越える場合には、エアゾール内での小経路での詰まり等が発生して均一なグリース膜を形成することができない。これに対して本発明では、粒径を管理することにより、エアゾール内での小経路での詰まり等を発生することなく、均一なグリース膜を形成することができる。
【0045】
B成分のエアゾール組成物に対する配合割合は、0.01〜10重量%であり、好ましくは0.01〜8重量%である。0.01重量%未満では、フッ素樹脂の増稠効果が発揮されず、基油の保持能力の向上が期待されない。一方、10重量%を越えると、組成物が硬くなり、エアゾール化が難しくなる。
【0046】
<C成分>
C成分のフッ素系希釈剤としては、ハイドロフルオロエーテル又はテトラフルオロペンタンを使用する。
【0047】
これらフッ素系希釈剤は、オゾン層破壊係数が0で、環境に易しい希釈剤である。
【0048】
エアゾールは基油と希釈剤の相溶性が重要であり、フッ素系潤滑剤の場合、アルコールや石油系の希釈剤では基油と分離してしまいエアゾール化が困難である。
【0049】
また、エアゾールは噴霧した際の霧化状態が重要であり、ハイドロフルオロエーテル又はテトラフルオロペンタンを使用することにより、フッ素潤滑剤との相性も良く霧化状態も非常に良好である。
【0050】
フッ素系希釈剤は、組成物量全量中に50〜96重量%を占める割合で添加することが好ましい。
【0051】
<D成分>
D成分である噴射剤としては、炭酸ガス、窒素ガス又は亜酸化窒素ガスから選ばれる不活性圧縮ガスが用いられる。
【0052】
本発明に用いる不活性ガスは、A成分、B分、C成分と相溶性がないため、塗布時に主成分の微細化が起こりにくく、直進性を得ることができる。
【0053】
従来のように、不活性圧縮ガス以外のフロンガスに代表される液化ガスを使用した場合、噴射時に主成分が拡散してしまい、広範囲に塗布されてしまう。そのため、必要な箇所への的確な塗布ができない。
【0054】
本発明の噴射剤は、組成物全量中に0.2〜8重量%を占める割合で使用することが重要である。好ましくは0.3〜5重量%の範囲である。0.2重量%未満では、噴射ガス量の不足により、全量の塗布や均一な塗布ができない。一方、8重量%を越えると、噴射剤の割合が多くなってしまい、エアゾール缶に含まれる潤滑成分の量が少なくなってしまい、噴射後の必要な潤滑成分を確保できず、造膜性に劣る。
【0055】
<製法>
本発明のグリース用エアゾール組成物は、A成分、B成分、及びC成分の混合物(必要によりその他の添加剤を添加してもよい)に、D成分である不活性圧縮ガス(噴射剤)を混合・添加することによって製造できる。
【0056】
本発明のエアゾール組成物中に添加できるその他の添加剤としては、酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、極圧剤、油性剤、固体潤滑剤等の従来潤滑剤に添加されている添加剤が挙げられる。
【0057】
酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、アルキルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェノチアジン、アルキル化−α−ナフチルアミン、アルキル化フェノチアジン等が挙げられる。
【0058】
防錆剤としては、例えば脂肪酸、脂肪酸アミン、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸アミン塩、酸化パラフィン、ポリオキシアルキルエーテル等が挙げられる。
【0059】
腐食防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、チアジアゾール等が挙げられる。
【0060】
極圧剤としては、例えばリン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等のリン系化合物、スルフィド類、ジスルフィド類等の硫黄化合物、ジアルキルジチオリン酸塩、ジアルキルジチオカルバミン酸金属塩等が挙げられる。
【0061】
油性剤としては、例えば脂肪酸またはそのエステル、高級アルコールや多価アルコールまたはそのエステル、脂肪族アミン、脂肪族モノグリセライド等が挙げられる。
【0062】
また、固体潤滑剤としては、例えば二硫化モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、窒化シラン、シリカ等が挙げられる。
【0063】
上記のようにして得られた本発明のエアゾール組成物は、メンテナンス用途に使用されることが好ましく、そのため例えば形態性も重要である。容量は50〜350mlが望ましい。
【0064】
また本発明のエアゾール組成物は、フッ素系グリースとしてメンテナンス用途に使用されるのみならず、増稠剤(成分B)を用いないフッ素系オイルとしてメンテナンス用途等に使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のエアゾール組成物は、以下に述べるようなメンテナンス用途に使用する場合に良好な性能を発揮する。例えば、メンテナンス(再給脂)するために、分解作業が必要な細部のOリング、オイルシール、Vリング、Dリング、Xリング、パッキン等のシール材摺動部や、分解作業が難しく摺動部近傍に樹脂、ゴムを使用している定着ロールの加熱ヒータ部、定着ロール部などの事務機器摺動部、定期的なメンテナンスが必要な潤滑箇所を要し、かつ部位もしくは近傍に樹脂材やゴム材を使用されているギヤ、バルブ、コック、電気接点、転がり軸受、すべり軸受等の潤滑箇所に使用できる。
【0066】
その他、パソコン等の情報機器、カメラ、時計等の精密機器、耐薬品性が要求される半導体、液晶製造装置、耐熱性が要求される工業炉、食品炉、樹脂加工機械、製紙機械、木工機械などにも適用可能である。
【実施例】
【0067】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0068】
<A成分(基油)>
A−1 Rf(CFCFO)(CFO)Rf
粘度:(40℃)85mm/秒
A−2 Rf[CF(CF)CFO](CFO)Rf
粘度:(40℃)400mm/秒
A−3 RfO[CF(CF)CFO]Rf
粘度:(40℃)1300mm/秒
A−4 RfO[CF(CF)CFO]Rf
粘度:(40℃)1200mm/秒
A−5 RfO[CF(CF)CFO]Rf
粘度:(40℃)15mm/秒
A−6 F(CFCFO)
粘度:(40℃)65mm/秒
Rfはパーフルオロ低級アルキル基
【0069】
<B成分(増稠剤)>
B−1 乳化重合法ポリテトラフルオロエチレン
(分子量約10万〜20万、平均一次粒径0.2μm)
B−2 懸濁重合法ポリテトラフルオロエチレン
(分子量約1万〜10万、平均一次粒径8μm)
B−3 懸濁重合法ポリテトラフルオロエチレン
(分子量約1万〜10万、平均一次粒径15μm)
B−4 溶液重合法テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
(分子量約5万〜15万、平均一次粒径0.2μm)
【0070】
<C成分(フッ素系希釈剤)>
C−1 ハイドロフルオロエーテル
(住友スリーエム社製「ノベックHFE−7100」)
*オゾン層破壊係数=0.0
C−2 テトラフルオロペンタン
(三井・デュポンフロロケミカル社製「バートレルXF」)
*オゾン層破壊係数=0.0
C−3 ハイドロクロロフルオロカーボン
(旭硝子社製「アサヒクリンAK−225」)
*オゾン層破壊係数=0.025〜0.033
【0071】
<D成分(噴射剤)>
D−1 炭酸ガス(不活性圧縮ガス)
D−2 窒素ガス(不活性圧縮ガス)
D−3 フロンガス(ダイキン社製「R−134a」)
【0072】
実施例1−7及び比較例1−11
上記A成分、B成分、C成分、D成分を表1のように組み合わせてエアゾール化し、このグリース用エアゾール組成物の性質を以下の各種試験方法で評価した。結果を表2に示す。
【0073】
実施例8及び比較例12−17
上記A成分、C成分、D成分を表3のように組み合わせてエアゾール化し、このオイル用エアゾール組成物の性質を以下の各種試験方法で評価した。結果を表4に示す。
【0074】
<耐熱性>
直径50mmのアルミ皿に5秒間噴霧、10分静置した後200℃の恒温槽へ入れ24時間後の蒸発損失率(重量%)を測定した。
【0075】
<摩耗試験>
試験機器:SRV試験機
試験片:
ボール :直径10mm(100Cr6)
ディスク:直径25mm(100Cr6)
振動数:50Hz
荷重:50N
温度:室温
時間:60分
【0076】
以上の条件で試験後、摩耗深さを測定した。摩耗深さの測定値は、ディスク側摩耗痕を直接接触式表面粗さ計で5箇所測定し、5点のうちの最大摩耗深さ(μm)を採用した。
【0077】
<対ゴム・樹脂試験>
温度:70℃
時間:70時間
試験片:
ゴム:25×25×2mm
樹脂:25×100×2mm
【0078】
評価方法:
ゴム:ゴム片に5秒間噴霧し、規定温度の恒温層へ入れ、規定時間後に取り出し、体積変化率(%)を測定した。
樹脂:各樹脂に5%応力をかけて5秒間噴霧し、規定温度の恒温槽へ入れ、規定時間後に取り出し、割れ、クラックを目視で観察した。割れ、クラックが発生していた場合は×、発生していない場合は○とした。
【0079】
<環境影響>
オゾン層破壊成分を組成物中に含有しないものを○とし、含有するものを×とした。
【0080】
<霧化状態>
エアゾールを噴霧した際のミストが細かく均一な霧状である場合を○、ところどころに粒が混ざって不均一である場合を×とした。
【0081】
<造膜性>
300×300mmの鋼板にエアゾール缶を十分振り、15cm離れたところから10秒間噴霧し、塗布後の鋼板への付着具合を目視で確認した。均一に塗布されている場合を○、まだら模様等の不均一になっている場合を×とした。
【0082】
<噴射安定性>
造膜性試験と同様の試験を5回/日、5日間実施し、噴射が安定しているかを確認する。全て均一に塗布されている場合は○、不均一な場合があるときは×とした。
【0083】
<スプレーパターン>
造膜試験と同様の試験方法で、鋼板に付着した主成分の直径(cm)を確認した。
【0084】
直径が小さければ、塗布時に主成分の直進性を得ることができ、潤滑箇所に的確に塗布することができることがわかる。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A成分)と、増稠剤(B成分)と、フッ素系希釈剤(C成分)と、噴射剤(D成分)とからなるエアゾール組成物において、
前記基油が、粘度(40℃での動粘度)75〜1200mm/秒のパーフルオロポリエーテル油であり、
前記増稠剤が、平均一次粒径10μm以下のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)であり、
前記噴射剤が、炭酸ガス、窒素ガス又は亜酸化窒素ガスから選ばれる不活性圧縮ガスであり、該噴射剤を、組成物全量中に0.2〜8重量%の割合で使用することを特徴とするグリース用エアゾール組成物。
【請求項2】
前記増稠剤を、組成物全量中に0.01〜10重量%の割合で添加することを特徴とする請求項1記載のグリース用エアゾール組成物。
【請求項3】
前記フッ素系希釈剤が、ハイドロフルオロエーテル又はテトラフルオロペンタンであり、組成物量全量中に50〜96重量%の割合で添加することを特徴とする請求項1又は2記載のグリース用エアゾール組成物。
【請求項4】
メンテナンス用グリースとして使用する請求項1〜3の何れかに記載のグリース用エアゾール組成物。
【請求項5】
基油(A成分)と、フッ素系希釈剤(C成分)と、噴射剤(D成分)とからなるエアゾール組成物において、
前記基油が、粘度(40℃での動粘度)75〜1200mm/秒のパーフルオロポリエーテル油であり、
前記噴射剤が、炭酸ガス、窒素ガス又は亜酸化窒素ガスから選ばれる不活性圧縮ガスであり、該噴射剤を、組成物全量中に0.2〜8重量%の割合で使用することを特徴とするオイル用エアゾール組成物。
【請求項6】
前記フッ素系希釈剤が、ハイドロフルオロエーテル又はテトラフルオロペンタンであり、組成物量全量中に50〜96重量%の割合で添加することを特徴とする請求5記載のオイル用エアゾール組成物。
【請求項7】
メンテナンス用オイルとして使用する請求項5又は6記載のオイル用エアゾール組成物。

【公開番号】特開2009−62464(P2009−62464A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232078(P2007−232078)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000102670)NOKクリューバー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】