説明

エアゾール缶の製造方法及びエアゾール缶

【課題】エアゾール缶生産ラインの製造装置を利用して、簡単にヘアライン模様と鏡面とを適宜に混在させた模様を表現するエアゾール缶の製造方法の提供。
【解決手段】表面に、多数の凹凸状の引っ掻き傷よりなるヘアライン1aの加工を施し、その上に部分的に塗装を施して、部分的にヘアラインを隠すことにより、容器表面をヘアライン部と鏡面5a部とに分けることを特徴とするエアゾール缶の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール缶の製造方法及びエアゾール缶に関し、さらに詳しくはエアゾール缶の表面に、ヘアライン模様と鏡面とを適宜に表現することにより、質感と装飾効果を高めた部分ヘアライン製品のエアゾール缶の製造方法及びエアゾール缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール缶等の容器の表面に、エアゾール缶の表面全体に、細かいヘアライン模様をあしらった、ヘアライン模様を表現したエアゾール缶が市場に流出している。又、ヘアライン模様部分と一般的な印刷模様部分とを、縞模様に表現したエアゾール缶も市場に流出している。しかし、エアゾール缶表面全体に、ブラシで引っ掻き傷をつける公知のヘアライン模様のエアゾール缶は、
ヘアライン模様のみのデザイン缶であり、デザイン的には単調なものであった。そこで、
ヘアライン模様と他の模様との混合デザイン缶の創作が模索されていた。
【0003】
又、図6及び図7は、従来のエアゾール缶の製造方法を示す図面である。ヘアライン模様と一般的な印刷模様とを交互に印刷したエアゾール缶の印刷工程及びこれによって印刷されたエアゾール缶を示す図面である。
図6は、ヘアライン模様と網目模様で構成されたフイルムから製作された印刷版51を用いて、エアゾール缶52の表面にヘアライン模様55と網目模様56の印刷を施している状態を示す図面である。印刷版51からブランケット54に転写されたヘアライン模様55と網目模様56を含んだ任意の印刷パターンは、ブランケット胴53の回転に伴って、ブランケット54からエアゾール缶52の表面に転写される。
【0004】
印刷版51からブランケット54に転写されたヘアライン模様55及び網目模様56の印刷パターンは、ブランケット胴53からエアゾール缶52の表面に転写される。図7は、ヘアライン模様55及び網目模様56が印刷されたエアゾール缶52の斜視図を示す図面である。図7に示す従来例では、エアゾール缶52の上部と下部にのみ、ヘアライン模様55が印刷され、エアゾール缶52の中央部には、網目模様56が印刷されている。すなわち、ヘアライン模様55の印刷と網目模様56の印刷が交互に表現されている。このように、従来はエアゾール缶52の表面に、ヘアライン模様55と任意の模様を、適宜に配列して印刷されていた。このような従来の文献としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−58109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のエアゾール缶52の表面に、上部にヘアライン模様55、中央部に網目模様の模様56、下部にヘアライン模様55を交互に印刷によって表現する印刷方法と、研磨ブラシを取付けた回転体で、実際に容器表面に、無数に凹凸状の引っ掻き傷を付けるヘアライン模様55とを比較した場合、印刷によるヘアラインは、本来の質感のデザインが得られないという欠点があった。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、従来のエアゾール缶生産ラインの製造装置を利用して、簡単にヘアライン模様と鏡面とを適宜に混在させた模様を表現でき、又質感がありかつ装飾効果を高めたエアゾール缶の製造方法及びエアゾール缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、表面に、多数の凹凸状の引っ掻き傷よりなるヘアラインの加工を施し、その上に部分的に塗装を施して、部分的にヘアラインを隠すことにより、容器表面をヘアライン部と鏡面部とに分けることを特徴とするエアゾール缶の製造方法である。
【0008】
この課題を解決するため、請求項2記載の発明の解決手段は、容器の表面を、ヘアラインと塗装により形成した鏡面部を、交互に縞模様に形成することを特徴とするエアゾール缶の製造方法である。
【0009】
この課題を解決するため、請求項3記載の発明の解決手段は、容器表面のヘアラインを隠すための塗装を、パール塗装工程で行うことを特徴とするエアゾール缶の製造方法である。
【0010】
この課題を解決するため、請求項4記載の発明の解決手段は、パール塗装工程の前工程において、容器表面のヘアライン上にサイズニスを塗装するクリアコーティング工程を設けることを特徴とするエアゾール缶の製造方法である。
【0011】
この課題を解決するため、請求項5記載の発明の解決手段は、パール塗装工程の後工程において、ヘアラインと鏡面部とに分けられた容器の表面上に、印刷が施されることを特徴とするエアゾール缶の製造方法である。
【0012】
この課題を解決するため、請求項6記載の発明の解決手段は、上記製造方法により製造されたことを特徴とするエアゾール缶を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るエアゾール缶の製造方法及びエアゾール缶によれば、従来のエアゾール缶生産ラインの製造装置を利用して、簡単にヘアライン模様と鏡面とを適宜に混在させた模様を表現することができる効果を有する。又ヘアライン模様と鏡面とを適宜に混在させた質感がありかつ装飾効果を高めたエアゾール缶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る製造方法により、ヘアライン模様を形成した有底筒状の容器を示した正面図である。
【図2】本発明に係る製造方法において、有底筒状の容器に、パール塗装機を用いてヘアライン模様を適宜に隠して、縞模様を形成する状態を示した正面図である。
【図3】本発明に係る製造方法により製造された、ヘアライン模様と鏡面の上に印刷を施したエアゾール缶を示した正面図。
【図4】本発明に係る製造方法の製造工程を示す正面図。
【図5】本発明に係る製造方法の製造工程を示す正面図。
【図6】従来のヘアライン模様を印刷する工程を示す図面。
【図7】従来のヘアライン模様と印刷を混合したエアゾール缶を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例の一例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、容器表面全体にヘアライン1aの加工が施された、有底筒状の容器1を示した正面図である。ヘアライン1aの加工は、従来公知の製造装置を用いて行われる。例えば、インパクト加工された有底筒状の容器1をマンドレルで支持し、このマンドレルと平行に配置された研磨ブラシを、回転する有底筒状の容器1の外周面に当接して、有底筒状の容器1の表面に、凹凸状の細かいヘアラインの擦り傷をつけるものである(図示せず)。ヘアライン1aは、有底筒状の容器1のほぼ表面全体に形成されている。
【0017】
次に、図2はパール塗装工程である。容器表面に、凹凸状の細かい擦り傷であるヘアライン1aをつけた有底筒状の容器1に、適宜間隔ごとに一定幅の溝4を形成したパール塗装ローラ5を当接し、ヘアライン1aの上に鏡面5aを形成するものである。溝4の幅X1、X2、X3は、5〜25mmであり、好ましくは10〜20mmが適する。この塗装により、ヘアライン1aは、パール塗料で塗りつぶされるため、図2に示すように、ヘアライン1aは一定間隔ごとに形成される。そして、ヘアライン1aとパール塗装部5aによる所望する混合模様が形成される。図2において、Yはヘアライン1aが消される幅である。すなわち、ヘアライン1aを消し、パール塗装により鏡面5aを表現する部位の寸法である。パール塗装5aの幅Y1、Y2、Y3は、5〜25mmであり、好ましくは10〜20mmが適する。これにより、ヘアライン1aと鏡面5aが交互に形成される。なお、パール塗装工程の前工程において、ヘアライン1aには、表面にサイズニスがコーティングされ、ヘアライン1aとパール塗料5aの密着性を確保できる。
【0018】
パール塗装ローラ5は、ゴム等で製造されており2機備えられている。最初の塗装ローラ(図示せず)で、下地コートであるサイズコーティングが必須条件である(図5のクリアコーティング工程(g)参照)。このサイズコーティングにより、ヘアライン模様を鮮明にすると共に、印刷との密着を上げることができる。次に図2に示すように、パール塗装工程(h)において、溝4の幅X1、X2、X3とパール塗装の幅5aの幅Y1、Y2、Y3を有する溝4が形成された塗装ローラ5を用いて、パール塗装が行われる。そして、一定間隔ごとに、ヘアライン1aが隠されて鏡面5aが形成される。なお、パール塗装以外にシルバー塗装であってもよい。本発明では、溝4を加工したゴムローラを使用するため、塗装時の圧力で変形が生じ、塗装部分が重なりを生じるため、塗装幅は10mm以上は必要である。図3は、ヘアライン1aとパール塗装部5aが塗り分けられた後、次工程(図5の印刷工程(i))で、表面に印刷が施されたエアゾール缶2を示す図面である。実施例では岩石模様の印刷を表現している。他の実施例として、パール塗装を施さないで、ヘアライン1aの上に直接印刷が施されてもよい。
【0019】
図4及び図5は、本発明のエアゾール缶の製造工程を示している。その製造工程は、インパクトスラグ6を準備する試料準備工程(a)と、そのスラグ6にインパクト加工を施すインパクト加工工程(b)と、そのインパクト加工により得られた有底筒状の容器1の開口端を切りそろえるトリミング工程(c)である。次に、有底筒状の容器1の表面全体に、研磨ブラシを用いてヘアライン1aをつけるヘアライン加工工程(d)が入り、その後ヘアライン1aがつけられた有底筒状の容器1の表面の汚れ、油脂等を除去するため、外面および内面を洗浄し乾燥させる洗浄・乾燥工程(e)と、有底筒状の容器1の内面に内面塗料を塗装し乾燥させる内面塗装・乾燥工程(f)がある。
【0020】
さらに、図5に示す製造工程において、地刷機でサイズニスを塗装するクリアコーティング工程(g)を経て、パール塗装機により、下地のヘアライン1aを部分的に隠すパール塗装工程(h)を経る。その後、有底筒状の容器1の外面に印刷を施す印刷工程(i)と、その外面印刷された有底筒状の容器1の開口付近を、絞り金型でネッキング加工するネッキング加工工程(j)と、さらに、ネッキング加工されたエアゾール缶2の開口端に、カール加工するカール加工工程(k)を経て製品が造られる。
【0021】
前記試料準備工程(a)のスラグ6は、アルミニウム等の円形の金属板で形成される従来公知のものである。なお、インパクト成形を行う場合はアルミニウムを用いるのが好ましい。前記内面塗装・乾燥工程(e)では、熱硬化性樹脂が公知のスプレー塗装方法により塗装される。塗装の乾燥は、有機溶媒を蒸発させ、熱硬化性樹脂の乾燥を促し、硬化させるために行われる。内面塗膜としては、ポリアミドイミド系樹脂等が用いられる。外面印刷をする印刷工程(i)では、有底筒状の容器1の胴部の外面に、従来より公知の方法で印刷が施される。前記ネッキング加工するネッキング加工工程(j)は、ネッキング加工することにより、首部、肩部及び胴部を一体成形により、エアゾール缶2を製造する工程である。前記カール加工工程(k)は、首部の上端を、カール加工金型で外向きにカールさせてカール部を形成する工程である。最終的に、洗浄、乾燥工程を経て、エアゾール缶2の製品が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、質感と装飾効果を高めた部分的なヘアライン製品のエアゾール缶であり、内容物として、化粧品、毛髪製品、染毛剤、薬剤、接着剤、食品等を幅広く充填できる容器として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1a ヘアライン
2 エアゾール缶
5a 鏡面部
7 印刷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、多数の凹凸状の引っ掻き傷よりなるヘアラインの加工を施し、その上に部分的に塗装を施して、部分的にヘアラインを隠すことにより、容器表面をヘアライン部と鏡面部とに分けることを特徴とするエアゾール缶の製造方法。
【請求項2】
前記容器の表面を、ヘアラインと塗装により形成した鏡面部を、交互に縞模様に形成することを特徴とする請求項1記載のエアゾール缶の製造方法。
【請求項3】
前記容器の表面のヘアラインを隠すための塗装を、パール塗装工程で行うことを特徴とする請求項1記載のエアゾール缶の製造方法。
【請求項4】
前記パール塗装工程の前工程において、容器表面のヘアラインの上にサイズニスを塗装するクリアコーティング工程を設けることを特徴とする請求項1記載のエアゾール缶の製造方法。
【請求項5】
前記パール塗装工程の後工程において、ヘアラインと鏡面部とに分けられた容器表面上に、印刷が施されることを特徴とする請求項1記載のエアゾール缶の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5記載の製造方法により製造されたことを特徴とするエアゾール缶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−176385(P2012−176385A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41721(P2011−41721)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】