説明

エアゾール運搬用の装置及び方法

【課題】エアゾール運搬用の装置及び方法の提供。
【解決手段】本発明は、空気流量測定用の圧力装置;呼吸周期中の所定時にエアゾール粒子を提供するためのエアゾール発生用装置;呼吸周期中に所定容量中のエアゾール粒子濃度を測定するための検知器付マウスピース;及び、時定数に対して肺換気データを提供するためのコンピュータデバイスを含むことを特徴とする肺換気量測定用装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール運搬用の装置及び方法に関する。上記装置及び方法は、吸入比容積における肺換気の測定による肺機能障害時のエアゾール吸入容量の決定に使用する。
【背景技術】
【0002】
肺は、肺胞により酸素を血中に運搬して二酸化炭素を血中から除去して呼気する多量交換器の特徴を有すると考えられる。血液/ガス界面におけるガス状物質交換に関する肺の効率は、両肺の換気に依存する部分がある。「換気」という用語は酸素の豊富な空気の体外から肺内への移動又は交換を指し、肺内で酸素の相対的に乏しい空気と呼吸の過程で混合される。患者の肺の換気機能は、肺気道の抵抗及びコンプライアンスの測定により決定及び観察可能である。
【0003】
肺の異なる領域における抵抗及びコンプライアンスは、肺換気量の分布に影響を及ぼす。「抵抗」という用語は、呼吸通路内の閉塞又は狭小により肺内外のガス通過又は流動にかかる空気抵抗を指す。抵抗の測定単位はHO/(リットル/秒)である。「コンプライアンス」という用語は、呼吸性周期中における肺拡張及び収縮時の肺の可撓性又は弾力を指す。コンプライアンスの測定単位はリットル/(cm−HO)である。抵抗とコンプライアンスとを掛けると時間の単位(例えば秒)が残り、これを「時定数」と呼ぶ。これにより、患者の肺換気機能を単一の値(すなわち時定数)で表現可能である。
【0004】
肺活量測定は呼吸器疾患の診断及び観察に使用する一技術である。肺活量測定においては、患者は可能な限り深く吸入した後に、肺から空気が完全に排出されるまで呼気する。この際患者には多大な集中力と努力が要求され、従って、肺活量測定値の記録は測定日の患者の気分と呼吸程度に大きく依存すると想像される。肺活量測定は患者が吸入及び/又は呼気した空気流量のみを測定する。肺活量測定は抵抗又はコンプライアンスを測定せず、また、肺機能又は肺換気の決定において時定数の計算に依存しない。更に、肺活量測定は小気道の測定には感度が比較的低いため、喘息及び気腫等の肺小気道領域の呼吸器疾患の診断における使用が制限される。従って、肺活量測定は、呼吸器疾患のうち最も一般的な疾患の観察及び診断に対して感度が比較的低い。
【0005】
Lampotangらによる特許文献1は、圧力センサ付侵襲性気管内管を使用した圧力又は流量の変化の測定による個々の肺の類別方法を記載する。時定数は、抵抗及びコンプライアンスの測定値から計算する。しかし、この方法は肺小気道における対流運搬を正確に評価しないことが知られており、このために著しい測定誤差が生じる可能性がある。従って、抵抗値及びコンプライアンス値の正確性は疑わしく、更にはこの方法による時定数計算値も疑わしい。これに加え、この侵襲法の使用により要求される気管内管及びその結果生じる患者の不快感は無視できない。
【特許文献1】米国特許第6,135,105号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その結果、測定日の患者の呼吸能力に依存しない、又は、患者への侵襲性装置(例えば気管内管)の挿入を必要としない、患者の呼吸器疾患の正確な診断及び的確な観察用の装置及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、空気流量測定用の圧力装置;呼吸周期中の所定時にエアゾール粒子を放出するためのエアゾールジェネレーター;呼吸周期中に所定容量中のエアゾール粒子濃度を測定するための検知器付マウスピース;時定数に対して肺換気データを提供するためのコンピュータデバイス;並びに、コンピュータデバイス、マウスピース、エアゾールジェネレーター及び圧力装置を連結するためのマルチポート連結装置を含むことを特徴とする肺換気量測定用装置に関する。
【0008】
本発明の別の態様は、肺換気量測定方法に関する。上記方法は以下:多数回の呼吸性周期中の圧力データ測定及び空気流量計算、取り込み容積の提供、呼吸周期中の所定時におけるエアゾールボーラス提供、エアゾール粒子濃度測定、並びに、取り込み容積及びエアゾール濃度測定値からの時定数計算:を含む。
【0009】
更に、本発明の別の態様は、肺内に吸入された空気の比容積を決定し、次に、疾患又は損傷により狭小又は閉塞した肺内の特定の枝を通る空気量を決定することによる肺上部領域の閉塞位置の決定に関する。上記方法は以下:a)呼吸周期中の圧力データ測定及び空気流量計算;b)取り込み容積の提供;c)呼吸周期中の所定時におけるエアゾールボーラス提供;d)エアゾール粒子濃度測定、並びに、取り込み容積及びエアゾール濃度測定値からの時定数計算;f)取り込み容積を変化させたb〜dの段階の繰り返しの実施、並びに;g)少なくとも二つの取り込み値から計算した時定数の比較を含む。
【0010】
また、本発明の別の態様は、以下:時間、容積及び無次元容積の少なくとも一種の離散値に対するエアゾール吸入及び呼気濃度の測定;吸入時の本質的混合、呼気時の本質的混合、吸入時の肺の有効容積及び呼気時の肺の有効容積の初期値の予測;予測した初期値の最小化;取り込み容積の測定;吸入エアゾール濃度測定値に対する吸入エアゾール濃度の予測、並びに、K(V)及びK(t)の少なくとも一つの予測;吸入エアゾール濃度予測値に対する呼気粒子濃度の予測、及び、所定容積中において粒子が肺から排出される確率の予測:を含むことを特徴とするエアゾール粒子濃度測定方法である。
【0011】
本発明の別の態様は、呼吸停止時間、並びに、呼吸停止時間が呼気粒子濃度に及ぼす影響の決定を含み、粒子濃度は取り込みエアゾール容積に対する吸入粒子濃度の割合で記載する。
【0012】
本発明の更に別の態様は、所定の呼吸時に、又は、エアゾールを吸入した呼吸の次の呼吸で呼気された吸入粒子の総量又は総量の割合の決定を含む。本発明のまた更に別の態様は、エアゾール発生に使用する認識用材料を含む。
【0013】
本発明の更なる別の態様は、一回の呼吸で吸入されて次の呼吸で呼気されたエアゾールの保持量の決定を喘息の診断指標として含む。
【0014】
本発明の更に別の態様は、所定の呼吸時に、又は、エアゾールを吸入した呼吸の次の呼吸時に呼気された吸入粒子の総量又は総量の割合の決定手段を含む。本発明のまた更に別の態様は、エアゾール発生に使用する認識用材料についての手段を含む。
【0015】
本発明は、本発明の詳細な記載及び付随の図面の参照により更に理解されるであろう。
【0016】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の典型的な実施形態を図解する。
【0017】
図2は、容積データ及び濃度データの典型を図解する。
【0018】
図3aは、非作動位置における典型的な容積ドリフト(drift)制御用マウスピースの破断図である。
【0019】
図3bは、作動位置における図3aの容積ドリフト制御用マウスピースの破断図である。
【0020】
図3cは、患者使用時の図3aの容積ドリフト制御用マウスピースの破断図である。
【0021】
図4aは、典型的な三方弁の二つの部分の上端図である。
【0022】
図4bは、典型的な三方弁の二つの部分の正面図である。
【0023】
図4cは、「充填モード」における典型的な三方弁を示す。
【0024】
図4dは、「運搬モード」における典型的な三方弁を示す。
【0025】
図5は、肺換気予測に使用する典型的なフローチャートを示す。
【0026】
図6は、肺換気測定に使用する典型的なフローチャートを示す。
【0027】
図7は、取り込み容積提供に使用する典型的なフローチャートを示す。
【0028】
図8は、取り込み容積提供に使用する別の典型的なフローチャートを示す。
【0029】
図9は、容積データ及び濃度データの別の典型を図解する。
【0030】
本発明は、患者肺内へのエアゾール運搬用装置に関する。上記患者肺内へのエアゾール運搬用装置は、肺内に吸入された空気の比容積に関連する肺換気量を測定する。吸入された空気は、肺内で疾患又は損傷により狭小又は閉塞している可能性のある枝を含む特定の枝を通過する。装置は、圧力装置、検知器、エアゾールジェネレーター、マルチポート連結装置及びコンピュータデバイスを含む。エアゾールジェネレーターは、呼吸周期中の所定時にエアゾール粒子ボーラスを放出する。コンピュータデバイスにより、時定数に対する肺換気量についての情報を得る。多数回の呼吸性周期における肺内外のエアゾール粒子移動時の時定数測定にエアゾール粒子を使用する。「呼吸周期」という用語を、本発明のマウスピースによる患者の呼吸開始時から試験終了までの期間と定義する。一回の「呼吸性周期」を吸入/呼気周期一回と定義する。従って、呼吸周期は患者の多数回の呼吸性周期を含む。
【0031】
本発明の装置及び方法により、測定日の患者の健康状態又は患者の呼吸能に関係なく慢性呼吸疾患を医師及び患者が効果的に観察又は治療可能となる。患者の呼吸器疾患の診断及び観察に使用する一般技術である肺活量測定と異なり、換気試験データを得るために患者は深く吸入及び呼気する必要がない。代わりに、患者は正常呼吸性周期で装置のマウスピース中に呼吸するのみである。更に本発明の方法は、熟練技術者を要さずに患者により実施可能である。
【0032】
本発明の装置及び方法の提供する重要な一利点として、肺上部領域(例えば気管支枝)の閉塞又は狭小位置を特定及び観察可能である。本発明の装置及び方法により、患者の閉塞又は炎症部分に関する詳細な情報を得る。医師はこの閉塞部分の経過を観察可能であり、第二の閉塞部分が出現するか否かについても決定可能である。その結果、本発明の装置及び方法により、医師は患者の呼吸状態について特定の情報を得る。
【0033】
本発明の装置及び方法により得る別の重要な利点は、有効薬(例えば気管支拡張剤)を含むエアゾールボーラスの閉塞又は炎症部分への局所的運搬である。本発明により一患者において閉塞部分を特定した後、呼吸性周期の最適時に有効薬が空気中に放出される。この際、エアゾール剤を濃縮して閉塞部分と接触可能な空気流量とする。
【0034】
時定数測定は重要な診断ツールであろう。時定数が比較的大きい場合には、肺の閉塞又は狭小の存在が示唆され、ある種の呼吸器疾患又は肺機能の損傷を示す。医学的感覚において、「閉塞」という用語は気管支炎又は肺気腫に見られる損傷等の損傷を指し、「狭小」という用語は喘息に見られる損傷等の損傷を指す。肺小気道に通じる個々の通路についての時定数がほぼ等しい場合を「均等換気」と呼び、健康体の特徴として明確に認識される。対照的に、時定数が不均衡で長い場合は閉塞及び狭小の存在を示す可能性があり、これを「不均等換気」と呼ぶ。
【0035】
局所的な時定数に差が観察される場合、対流換気率の局所的な差が示唆される。更に、時定数データから閉塞の重度についての情報を取得可能である。例えば、健康体と比較して気道閉塞患者は気管支からエアゾール粒子がなくなるのが比較的遅いであろう。エアゾール粒子の肺からの排出時間が長い場合、肺疾患領域が重症であると示す可能性がある。
【0036】
本発明の装置及び方法により、小気道についての時定数を正確かつ直接に測定する。この情報は肺活量測定からは取得不可能であり、医師はこの情報により呼吸器疾患又は肺機能障害をより正確に診断及び観察可能である。
【0037】
本発明の装置は、呼吸周期中に時間又は容積に対してエアゾールボーラスに由来するエアゾール粒子の濃度を測定する。任意の流動について、時間測定又は容積測定は肺内への粒子取り込みの測定に相当すると考えることができる。エアゾール粒子は肺から吸入及び呼気される空気と共に流動し、装置は濃度、及び、粒子が肺の出入りに要する運搬時間又は容積を記録する。エアゾール粒子は本質的に微小マーカーとして機能し、時間又は容積に対するその濃度の測定により患者についての必要な換気データを得る。このマーカーの提供方法の一つは、呼吸周期中のある所定時(特に吸入段階)におけるエアゾール粒子の「適用量」又は「ボーラス」の放出である。呼気中の時定数を数学的関数としてプロットし、呼吸器疾患の診断及び観察に使用可能である。肺呼気中の時点(すなわち時定数)に対する粒子濃度を測定し、測定日の個々の患者におけるエアゾール粒子についての特定の分布を提供する。その後、時定数データを保存又は送信して前後の試験におけるデータと比較可能である。
【0038】
本出願人らの構想によれば、例えば喘息患者が、医師による本発明の装置を使用した初期診断の後で、自宅で本装置又は本装置の変形形態を使用可能である。その後毎日、毎週又は毎月、患者は喘息を自己診断可能である。その後、この試験で収集したデータを保存可能である、及び/又は、医師に(例えばインターネットで)送信可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の典型的な一実施形態を図1の概略図中に示す。図1中の矢印は、装置の各構成要素中で空気が流動可能な方向を示す。図1の破線は静圧ラインを示し、細線は電子付着を示す。装置は、検知器103a、圧力装置107、エアゾールジェネレーター106及びコンピュータデバイス109を連結するマルチポート連結装置105aを含む。患者は、検知器103aに連結したマウスピース(図示せず)を通して呼吸する。当然のことながら、図1中に示す構成要素間の配置又は位置は、本発明の実施に使用可能な少数の配置の一つであるのみである。
【0040】
マルチポート連結装置105aの使用により、エアゾールジェネレーター106で発生したエアゾールボーラスを空気中に放出して患者へ運搬可能である。あるいは、エアゾールボーラスはエアゾールジェネレーター106によっても空気中に放出可能である。
【0041】
エアゾールジェネレーター106は呼吸周期の所定時にエアゾールボーラスを放出可能である。好ましくは、エアゾールボーラスは患者の空気吸入中に空気と混合される。エアゾールジェネレーター106は通常技術者に既知の任意のエアゾール発生システムであってよく、粒子径0.05ミクロン〜1ミクロン、好ましくは0.1ミクロン〜0.8ミクロン、より好ましくは0.1ミクロン〜0.6ミクロンのエアゾールを発生する。例えば、エアゾールジェネレーターは、一種以上のエアゾール化用物質の入った加圧チャンバー、並びに、選択したオリフィス直径及び形のノズルを含んでよい。
【0042】
エアゾール粒子は、粒子が患者の肺に吸入及び呼気される際に粒子径が比較的一定のままであるような、患者体内において凝集傾向のない任意の比較的不活性な材料を含んでよい。一実施形態において、エアゾール粒子は、一種以上の合成若しくは天然油、又は、天然油及び合成油の混合物を含む。合成油は一種以上の脂肪酸、一般的には脂肪酸混合物を含んでよい。エアゾールは天然油を含むことが最も好ましい。天然油の典型的な例としては、トウモロコシ油、キャノーラ油及び木の実由来の油が含まれる。中性油(例えばMIGLYOL)も使用可能である。また、上記装置で電子的に認識可能な通常技術者に既知の任意の標識手段で使用材料を標識することよって、未認定材料の装置によるエアゾール化を予防可能である。例としてバーコード、磁気ストリップ又はEPROM等の識別手段が挙げられるが、これらに制限されない。上記識別はコード化されているため通常の手段では解読不可能であろう。
【0043】
一実施形態において、エアゾールジェネレーター106をマルチポート連結装置105aに連結し、エアゾールボーラスがマルチポート連結装置105aのチャンバー内へ放出されるようにする。
【0044】
別の実施形態において、エアゾールジェネレーター106を本発明の装置のチャンバーに接続する。いずれの場合においても、呼吸周期の所定時にエアゾールボーラスを空気中に放出するように本発明の装置を設計する。
【0045】
検知器103aを使用して、患者の吸入及び呼気時に、空気中の所定容積のエアゾール粒子濃度を測定する。所定容積中の粒子濃度を測定可能な通常技術者に既知の任意種の検知器103aを使用可能である。例として光度計、光電池、比濁計又はフォトダイオード等の光計測装置が挙げられるが、これらに制限されない。
【0046】
図1中に示す一実施形態において、圧力装置107はフィルタ107a、呼吸気流計107b及び圧力変換器107cを含む。呼吸気流計107bと圧力計測装置107の他の構成要素の併用により、本発明の装置を通る空気流量を測定する。呼吸気流計107bは、空気が微細メッシュ状遮蔽物を通過する際のこの遮蔽物内外の圧力差を測定する。呼吸気流計107bに連結した圧力変換器107cにより圧力差測定値を電子信号に変換する。コンピュータデバイス109内のインターフェイス109aにより電子信号をデジタル化可能である。コンピュータデバイス109により時間に対する圧力差データを積分し、多数回の呼吸性周期及び呼吸周期における空気流量を取得可能である。空気流量データを保存し、後に分析可能である。コンピュータデバイス109により、生データ、すなわち装置の各構成要素から直接取得したデータ、及び、生データのアルゴリズム処理により作成したデータの収集、保存、処理及び表示が可能である。
【0047】
収集した容積データは、所定の呼吸性周期又は呼吸周期で患者が肺で吸入及び呼気した空気量を指す。本発明の装置により、任意回数の呼吸性周期における空気流量を平均化可能である。その結果、本発明の装置及び方法により、任意の所定時間又は任意の所定日の患者の呼吸状態に関わらず換気データを取得可能である。
【0048】
例えば、装置は、測定日に呼吸が非常に困難な喘息患者から重要な換気データを取得可能である(肺活量測定では不可能である)。一回の呼吸性周期に依存する肺活量測定では、患者の知る情報、すなわち呼吸が困難であるという情報しか医師は取得できない。更に、本発明の装置及び方法は、肺活量測定のように強制的に又は指示されて呼吸する必要がないため子供が通常通り呼吸できるという理由から、小児科患者の換気データ収集により好適である。
【0049】
呼吸周期中の特定時におけるエアゾールボーラスの放出、及び、その後のエアゾール粒子濃度の経時測定により、医師は患者の上部呼吸器官についての情報を取得する。容積データの収集により、本発明の装置及び方法で、エアゾールボーラスを空気中に放出するのに適切な時点を決定可能である。本発明の好ましい方法において、呼吸性周期の吸入段階の特定時にエアゾールボーラスが空気中に放出される。これにより、喘息又は肺気腫に起因する閉塞が一般的に見られる気管支又は肺上気道中において、エアゾール粒子がより良好に分散可能となる。喘息及び肺気腫等の呼吸器疾患は肺上部気管支に影響を及ぼすため、この特徴は重要である。
【0050】
エアゾールが移動して閉塞又は狭小部をちょうど通過して再び出る際のエアゾール粒子の時定数及び任意の所定の呼吸中に保持されるエアゾール量の測定により、非常に高感度で肺換気量を測定する。従って本発明の装置により、肺活量測定等の他の既知技術は比較的感度の低い呼吸器官中の疾患位置に関する正確かつ信頼性の高い情報を医師は取得する。
【0051】
図2中に示す容積及びエアゾール粒子濃度のデータのグラフにより、本発明の装置及び方法でデータを収集/分析する典型を記載する。図2は、所定の吸入及び呼気、すなわちエアゾールボーラスが空気中に放出される呼吸性周期におけるエアゾール粒子濃度及び容積のデータを示す。エアゾール粒子濃度を時間に対してプロットし、破線で図示する。時間T1は、呼吸性周期中にエアゾールボーラスが空気中に放出される時間に相当する。エアゾールボーラスのピーク容積408は時間T2で生じる。患者が吸入及び呼気した空気の容積を実線で示す。容積データ402の正の傾きで上昇する部分は、呼吸性周期の吸入段階を示す。また、容積データ405の負の傾きで下降する部分は、呼吸性周期の呼気段階を示す。図2は、任意の容積単位、時間単位及び濃度単位で座標軸を記載する。
【0052】
本発明の装置及び方法を使用して、特定の取り込み容積Vを測定可能である。取り込み容積は、エアゾールボーラスの空気中への放出後に吸入された空気容積として定義する。Vの測定において、装置は、特定の容積基準点の確立を必要とする。この基準点は吸入容積V及び総吸入容積Vである。エアゾールボーラスの容積を測定可能であるため、吸入容積の測定に使用可能な同等に妥当な基準点がいくつかある。吸入容積はエアゾールボーラスが放出される際の容積であり、下記三通りの方法のうち少なくとも一方法で定義可能である:(1)信号の取得又は受信により弁が開きエアゾールが吸入空気中に流入する際の容積;(2)バックグラウンド値よりも粒子濃度が所定量上昇する際の容積;又は、(3)特定期間に特定割合で粒子濃度が上昇する際の容積。
【0053】
図2中に示すように、Vはエアゾールボーラス408の中間点である。Vを下記三通りの方法のうち一方法で定義する:(1)吸入された粒子濃度の値の中心;(2)エアゾールボーラスの開始容積と終了容積との中間容積([V+V]/2);又は、(3)粒子がピーク濃度に達した際の容積。Vを次に定義する:(1)信号の取得若しくは受信により弁が閉じてエアゾールの空気中への流入が停止する際の容積;又は、(2)エアゾール濃度がバックグラウンド値以下に減少する際の容積。Vは中間容積であると定義するのが好ましい。また取り込み容積Vは、吸入平均総容積Vとボーラス吸入容積Vとの差としても表現可能である(すなわちV=V−V)。
【0054】
例えば成人喘息患者において一般的に吸入容積の最後の50cm〜400cmのみ、より一般的には吸入容積の50cm〜200cmのみから医師は重要な換気データを取得する。子供についてのこの値は一般的に吸入容積の最後の25cm〜200cmのみ、より一般的には吸入容積の25cm〜150cmのみである。幼児についてのこの値は一般的に吸入容積の最後の10cm〜100cmのみ、より一般的には吸入容積の10cm〜50cmのみである。「成人」という用語は12歳に達した人と定義する。「子供」という用語は2〜12歳の人と定義する。「幼児」という用語は新生児から2歳児と定義する。
【0055】
患者が装置のマウスピースを通して吸入及び呼気する際のエアゾールボーラスが放出される前に吸入平均総容積を決定可能である。圧力変換器でデジタル化した電圧を積分し、総空気容積と無関係に吸入容積及び呼気容積を取得する。上記方法は、エアゾールボーラスが空気中に放出される前の任意回数の呼吸性周期における平均吸入容積の計算を含む。平均吸入容積をデータ保存装置109に保存可能である。以前に記録した容積移動平均の標準偏差が選択範囲内である場合、平均吸入容積を決定する。平均吸入容積の決定後、コンピュータデバイス109からマルチポート連結装置105に信号が送られてエアゾールが空気中に放出される。あるいは、エアゾールジェネレーターによりエアゾールを空気中に直接放出可能である。
【0056】
コンピュータデバイス109により圧力データを時間に対して積分する。この際に電子ノイズ又は電圧オフセットが生じると誤差が発生し、補正を要する。この誤差を一般に「ゼロ信号ドリフト」又は「容積ドリフト」と呼び、システムを通過する空気が存在しない場合においても容積/時間の記録データに正/負の差が生じる。この誤差因子が顕著であって補正しない場合、装置は容積ドリフトを呼吸周期中の空気流動として処理する可能性がある。従って、この容積ドリフトにより容積測定中に誤差が生じ、エアゾールボーラスの空気中への放出時機が不適当となる可能性がある。
【0057】
一実施形態において、装置は容積ドリフトを補正する手段を含む。例えば、装置は呼吸気流計107bからの圧力流動信号にデジタル的に加算又は減算してノイズによる誤差を完全に相殺し、最終的にゼロ容積ドリフトを維持可能である。
【0058】
図3a及び図3bは、容積ドリフトを制御する典型的な手段を容積ドリフト制御スイッチ201a及び201bとして示す破断図である。非作動状態の容積ドリフト制御スイッチ及び作動状態の容積ドリフト制御スイッチ201bの破断図を図3a及び図3b中にそれぞれ示す。
【0059】
本発明の装置はセンサスイッチ203を更に含んでよい。センサスイッチ203をコンピュータデバイス109に連結し、試験開始又はデータ収集開始時についてコンピュータデバイス109と通信させる。一実施形態において、センサスイッチ203a及び203bを容積ドリフト制御スイッチ201a及び201bに取り付け可能である。例えば、センサスイッチ203aが作動していない又は開いている場合、圧力変換器107cからの信号は積分されず、容積ドリフトは補正されないままである。しかし、センサスイッチ203bが作動している又は閉じている場合、圧力変換器107cからの信号が積分されて容積データが計算され、容積ドリフトが補正される。一実施形態において、センサスイッチは、スイッチが閉じている間閉じた状態のままであるようなトグル又はボタンスイッチを含んでよい。
【0060】
別の典型的な実施形態において、図3a及び3b中に示すように、センサスイッチ201はマウスピース202の格納式カバー205である。図3a及び3bにおいて、格納式カバー205は両端の開いた空洞管であり、押されて格納されるとマウスピース202が露出可能である。患者の口内にマウスピース202が挿入されている間、唇により格納式カバー205が押される。図3cは容積ドリフト制御スイッチ200の例を示し、患者101が口内にマウスピース202を挿入して格納式カバー205を押し、センサスイッチ203が作動する。センサスイッチ203が閉じて格納式カバー205により回路204が完成すると、センサスイッチ203が作動する。その後、回路204により聴覚又は視覚センサ指標信号が可聴又は可視指標を提供可能となり、センサスイッチ203が作動して試験開始可能となる。マウスピースを口から外すと、コイル又はバネ206により格納式カバー205が元の状態に復帰可能である。
【0061】
また別の典型的な実施形態において、センサスイッチは、ゼロ流動信号を平均化する信号の停止時機を決定するための近接センサを更に含む。近接センサは電磁波源、又は、受信機と対になった任意の波長の発信機で最小限構成され、このセンサの使用により使用者とエアゾール分散装置との接近を決定可能である。電磁波源はマウスピースに連結していて、使用者の体から反射した電磁波を同じくマウスピースに連結した受信機に送信するであろう。受信機はエミッターの角度に対して90度未満の角度に位置するであろう。受信機が信号を受信すると、コンピュータデバイス109による流動測定用圧力信号の平均化が停止するであろう。好ましい一実施形態において、平均圧力値は平均ゼロ圧力値として前の5秒間について決定し、受信機が信号を受信する前の最後の秒は計数しない。また、値のプログラムにより回数の平均化時間をより延長又は短縮可能である。受信機が電磁波の放出を受ける間中生じる圧力変化は流動によるものと考慮され、また、この変化を積分してエアゾール分散装置使用者が吸入又は呼気した容積を決定可能である。好ましい一実施形態において、エアゾール分散装置を意図通りに使用する場合、受信機及び発信機を互いに近接して、かつ、使用者の顔に近接して配置可能である。
【0062】
更に別の典型的な実施形態において、図4a中に示すようにマルチポート連結装置105は三方弁である。三方弁105aは、検知器103を備えたマウスピース、圧力装置107及びコンピュータデバイス109に連結する。三方弁は、図4b中に示すような少なくとも二つの部分で構成される。
【0063】
図4c中に示すように、患者の呼吸流中にエアゾールボーラス注入を要すると決定されると、弁システムが運搬モードになる。このモードにおいて、三方弁が始動してピストンチャンバー4内部へのガス流入が停止し、弁3が開いて大気と通じることによりピストンチャンバー4内部の圧力が除去される。圧力が除去されると、ピストン5に対して自由にスライドするスライド部9に対してバネ8が動き、ピストン5が押し戻される。バネ8及びスライド部内部の二つのチャンバー(A及びB)の大きさは、エアゾールを充填した保持チャンバーAを患者の呼吸流中に配置可能な大きさとする。患者の呼吸が継続する間中、エアゾールの適用量又はボーラスが患者の肺に運搬される。
【0064】
図4c中に示す「運搬モード」において、弁9は、多量の高圧ガスに対する不測の露出から患者を保護する働きをする。このガスを制御しなければ、患者の肺に障害を与える可能性がある。高圧ガスに対して弁3を閉じるまで保持チャンバーAは呼吸流中に移動不可能であるため、この配置は二重の保護機構を有することになる。また、弁3の非作動時又は圧力調整器2の非作動時には、患者の呼吸時に保持チャンバーがシステムの加圧部分に接続されない。
【0065】
図4d中に示す「充填モード」において、三方弁は圧力調整器2を備えたガス源1(例えば規制対象の二酸化炭素)からなり、この圧力調整器を通ってガスが三方弁3に流入するとこの弁が電子的に始動して、ガスがピストンチャンバー4内に流入可能となる。ピストンチャンバー4内にガスが流入する際、ピストン5の移動によりエアゾールネブライザー6内にガスが通過可能となる。ネブライザー6内にガスが流入するとエアゾールが発生する。発生したエアゾールは三方弁のスライド区画9中の保持チャンバーA内に流入し、オーバーフローした場合には大気と通じたフィルタ7により回収される。図4c中に示すように、フィルタを保持チャンバーAの上流側又は保持チャンバーAの下流側(図示せず)のいずれかに配置すると、発生したエアゾールが保持チャンバーAを通ってフィルタ7へ移動可能となる。充填モードにおいて、弁のスライド区画はピストン5によりバネ8に押しつけられる。これによりエアゾールが保持チャンバーA内に流入可能となり、充填チャンバーAの充填時、大気に通じる補助チャンバーBを通して患者は呼吸可能となる。
【0066】
以下記載の方法を本発明の装置と共に使用して、患者の肺換気能を決定可能である。今後、これらの方法を「エアゾールボーラス分散」試験と呼ぶ。
【0067】
図5は、患者の肺換気量測定に使用する典型的なフローチャートである。容積ドリフト制御スイッチ201が作動する(段階501)。呼吸性周期中に圧力データを測定する(段階502)。口内へのマウスピース配置後に圧力データを容積データに変換し(段階503)、コンピュータデバイス109のデータ保存装置109bに保存する。段階504において吸入容積を選択し、既知の取り込み容積(V)から総吸入容積を得る。Vに基づいて、呼吸周期中、好ましくは吸入中に段階505においてエアゾールボーラスの放出時を決定する。光電池105a等の検知器105を使用して、多数回の呼吸性周期中のエアゾール濃度を測定する(段階507)。呼吸性周期中の粒子濃度から時定数を計算する(段階508)。その後、粒子濃度を保存して、コンピュータデバイス109により肺換気関数として表示する(段階509)。
【0068】
図6は、本発明の装置による第二の肺換気量測定に使用する代表的なフローチャートである。容積ドリフト制御スイッチ201が作動して容積ドリフトの制御が開始する(段階601)。圧力データを吸入及び呼気中に測定する(段階602)。コンピュータデバイス109のデータ保存装置109b内に保存した圧力データから吸入容積及び呼気容積を計算する(段階603)。具体的には、段階604において吸入容積を調べてVを決定する。Vに基づいて、吸入中におけるエアゾールボーラス注入時を決定する(段階605)。光電池105a等の光計測装置で多数回の呼吸性周期中に空気中の粒子を検出する。その後、データをデータ保存区画109bに保存する(段階606)。保存した光データをコンピュータ109で分析し、各呼吸性周期の吸入中の粒子濃度を決定する(段階607)。その後、段階607で測定した各吸入中の粒子濃度から、所定の呼吸性周期の各呼気における粒子濃度(すなわち時定数)を予測する(段階608)。その後、予測した粒子濃度を保存して、コンピュータデバイス109により肺換気量予測値として表示する(段階609)。後に予測値と比較するために、各呼気における粒子濃度も測定して計算する。呼気中の時定数の分布予測値(すなわち、吸入中の粒子濃度からの予測値)と呼気中の時定数の分布測定値との比較により肺換気量を決定する(段階610)。粒子濃度の予測データ及び測定データ(すなわち時定数)を保存して、コンピュータデバイス109により肺換気量予測値として表示する(段階611)。粒子濃度/時定数の予測値と測定値との任意の差異に基づいて医師は診断可能である。
【0069】
図7は、取り込み容積(V)の自動制御に使用する典型的なフローチャートである。容積ドリフト制御スイッチ201が作動して容積ドリフトの制御が開始する(段階701)。段階702における吸入及び呼気中に圧力データを測定する。データ保存装置109bに保存した圧力データから吸入容積及び呼気容積を計算する(段階703)。吸入容積データから、所定回数の呼吸性周期についての吸入容積の移動平均値を決定する(段階704)。吸入容積のこの移動平均に基づいてVを決定する(段階705)。
【0070】
図8は、取り込み容積(V)の自動制御に使用する別の典型的なフローチャートである。容積ドリフト制御スイッチ201が作動して容積ドリフトの制御が開始する(段階801)。圧力データを吸入及び呼気中に測定する(段階802)。データ保存装置109bに保存した圧力データから吸入容積及び呼気容積を計算する(段階803)。吸入容積データから所定回数の呼吸性周期についての吸入容積の移動平均値を決定する(段階804)。移動平均の標準偏差を計算する(段階805)。吸入容積の移動平均値の標準偏差の所定割合内に設定することによりVを決定する。
【0071】
システム関数fに関する数学的モデルにより、所定の呼吸周期中の吸入粒子濃度保存データから呼気された粒子濃度(Cout)を決定する。Coutの吸入濃度Cinへの依存は直線的であると仮定されるため、システム関数は数学的にデルタ関数又はインパルス関数に相当する吸入濃度による呼気濃度である。
【0072】
tがデルタ関数濃度が肺内に吸入されてからの時間であり、かつ、Qが空気吸入及び呼気速度である場合、V=Qtは吸入された空気容積であり、上限取り込み容積V=Qtである。t≧tである場合、V−V=Qt−Vは呼気された空気量である。全ての粒子が呼気される場合(沈着がない)、取り込み容積Vに対するシステム関数f(V;V)は次式(1)を満たす。
【0073】
【数1】

【0074】
概して、下記関係がある場合にcin(V)はデルタ関数ではなく容積Vよりも大きい。
【0075】
【数2】

【0076】
このように増大するため、異なる時点(又はV)に吸入された粒子は異なる取り込み容積を有するであろう。Vp0が中途に吸入された粒子の取り込み容積(次式上)である場合、吸入された他の粒子の取り込み容積VはVに対して次式下(2)を満たす。
【0077】
【数3】

【0078】
概してcout(V)のcin(V)への一次従属性を、システム関数f(V;V(V’))及びcin(V’)を使用して次式(3)と表現可能である。
【0079】
【数4】

【0080】
等式(3)は、肺内の混合のみをモデル化する。
【0081】
しかし、装置、口及び喉頭からなる前肺においても混合が生じる。この混合は吸入中でも呼気中でも生じる。装置によりV≦V≦Vについて測定した粒子濃度をcin(V)とする。流動は一方向であるため、前肺内の混合は次式上(Nauman及びBuffham)に関する線形及び並進不変法として次式下(4)のようにモデル化する。
【0082】
【数5】

【0083】
(式中、K(V)は前肺内の混合についてのシステム関数である)。K(V)の正確なモデル化は困難である。前肺内の混合は肺内の混合より小さいため、合理的には、次式中(5)を満たす場合のV及び次式上のモーメントの予測に着目する(式中、Vは前肺の有効混合容積に相当し、次式下は差異に相当する)。
【0084】
【数6】

【0085】
まず、装置で測定した濃度cin(V)を等式(4)により処理し、その後、得られた濃度(次式左)を等式(3)で変換して肺から出る粒子濃度(次式右)を決定する。
【0086】
【数7】

【0087】
上述したように、呼気中の前肺においても混合が生じる。合理的には、次式(6)からの呼気濃度cout(V)のモデル予測値の計算に等式(4)を使用する。
【0088】
【数8】

【0089】
システム関数のモデルは、Weibel考案のヒト肺の24代(generation)ネットワークモデルに基づく。条件付き確率S(V;Vp)(i=1,2,...,24)及び確率α(V)を考慮して関数f(V;V)を次式(7)のように書き直す。
【0090】
【数9】

【0091】
(式中、S(V;V)dVは、i−1代(i=I,2,...,24)端「付近」で呼気が開始した際に粒子が(V,V+dV)において肺から出る確率であり、α(V)はi−1代の端「付近」に位置する粒子分画である)。i−1代の端付近については後に説明する。従って、次式(8)となる。
【0092】
【数10】

【0093】
更に、S(V;V)のVへの依存は次式(9)である。
(V;V)=S(V−V) (9)
【0094】
等式(7)に等式(9)を代入し、等式(3)を次式(10)のように書き変え可能である。
【0095】
【数11】

【0096】
α(V)及びS(V−V)の構築は両方とも次の仮定に基づく。
(1)吸入中及び呼気中両方の各i−1代(i=1,2,...,24)についての運搬時間tは確率変数であり、この確率変数は統計的に独立している。
(2)単位T(T:時間)の滞在時間分布における次元パラメータは、次式右が代iについて予測される時間である場合に次式左に比例する。
【0097】
【数12】

【0098】
肺内における大規模な混合を、次の離散のベルヌーイ超関数によりモデル化可能である。予測される時間(次式左)、第一の粒子がi−1代を出る時間及び分布の変化(次式右)によりこれを決定する。
【0099】
【数13】

【0100】
はi−1代の容積である。V値については下記Weibelの表を参照。より大規模な問題の検討には、幾何学的スケール係数gを導入して各代の容積がgVであることを明らかに示す。従ってパラメータはt、α、g及びpであり、α、g及びpは仮定条件(2)を満たす無次元定数である。滞在時間は下記の二通りある。
【0101】
【数14】

【0102】
上記条件を満たすため、(i−1代(i=1,2,...,24)についての)この時間に対する確率f(t)は次式(11)である。
【0103】
【数15】

【0104】
全ての粒子が肺内に同時に入ると仮定し、等式(11)から得る分布を使用して、空気Vが更に吸入された後の肺の各代の粒子分布を決定する。変数を吸入開始からの時間tから吸入空気容積V=Qtに変更するのが有用である。また、吸入空気Vに対する各代から既に出た粒子分画の累積分布計算による決定も有用である。これにより、吸入終了時の各代の粒子割合決定についての計算は容易である。
【0105】
例えば、0代を出た粒子分画を吸入空気(V≧0)に対してI(V)とする。その後、等式(9)及びi=1から次式(12)を得る。
【0106】
【数16】

【0107】
変域I(V)において重要な点は次式であり、gVは0代の容積である。
【0108】
【数17】

【0109】
確率変数t及びtが独立であると仮定して、代1を出た粒子分画I(V)をVに対して計算する。初めに、変域は下記四つの臨界値を有する。
【0110】
【数18】

【0111】
次式上(チルダについては説明する)の定義は次式下両者である。
【0112】
【数19】

【0113】
次式上の変域中のV11+V22及びV21+V12の平均値が次式下両者の中間であることに着目する。
【0114】
【数20】

【0115】
この中間点に次式確率を付与して肺内で対応する粒子が移動した二つの類似する通過のグループ化により、合理的に単純化する。
【0116】
【数21】

【0117】
これにより得る関数をI(V)とし、次式(13)を得る。
【0118】
【数22】

【0119】
関数I(V)(i=1,2,...,24)はi−1代を出た粒子分画をVに対して示し、この計算を、等式(11)中の分布である確率変数tの独立性によって、及び、Iの定義と同様に次式確率(k=0,1...,i)を有する全ての通過のグループ化によって実施する。
【0120】
【数23】

【0121】
粒子がi−1代を出る際のVの平均値が次式上であることが示されるであろう。この式において次式下が成り立つ。
【0122】
【数24】

【0123】
次式左が成り立ち、この通過は次式右の確率を有する。
【0124】
【数25】

【0125】
従って、Iの定義は次式である。
【0126】
【数26】

【0127】
通過のグループ化により、I(V)が2からi+1まで飛ぶ回数が、正確性の許容範囲内におけるロスを考慮して相当減少する。最後に、I(V)は全てのV≧0について1と定義され、システム内に直接入る全ての粒子に対応する。V=Vp0とすると、I(Vp0)が吸入終了時の粒子分布に相当することが強調されるであろう。
【0128】
幸運にも、次式(14)によりI(Vp0)についての表現を更に単純化可能である。
【0129】
【数27】

【0130】
次式上等式の使用により、等式(14)中の連続変数Vp0を整数変数kから変更する(次式中)(式中、次式下が成り立つ)。
【0131】
【数28】

【0132】
次式上とし、r、r及びΔVをa、g、p及び次式中についての相当値と入れ替えることにより、次式下(15)を得る。
【0133】
【数29】

【0134】
の表記を変更し、Vp0に加えてパラメータg及びpに対する依存を示す。等式(14)の近似により、αに対する依存がなくなったことに着目する。I(V)の定義は変わらない。
【0135】
により代i−I(i−1=1,2,...,23)を出た粒子分画を得たことから、吸入終了時の代i−I中の粒子分画はq=Ii−1−Iである。代23より後の粒子分画はq25=I24から得る。
【0136】
粒子がどのように肺から出るかの計算は、まず、代i−Iの深い部分及び代iの浅い部分にある全ての粒子がi−1代の端に位置すると仮定する。これは、i=1,2,...,23についてのαの定義である。α24は、代23の深い部分及びこれより後の部分にある全ての粒子を含む。これにより、0代の浅い部分にある粒子以外の肺内の全粒子(有用な値Vp0について無視可能であるべきである)が説明される。陽関数表示の式(すなわち、等式(15)中で次式上とする)は次式下である。
【0137】
【数30】

【0138】
条件付き確率S(V;V)の構築はα(V)に類似する。これから次式(17)を得る。
【0139】
【数31】

【0140】
V及びVに対するSの依存が式V−Vの形式であることに着目する。g及びpの意味は吸入について使用した場合の意味と同様である。g値は、呼気時の肺の容積についての幾何学的スケール係数であり、pは変化因子である。吸入時の対応する因子を、g及びpと示す。
【0141】
理論的理由から、及び、実験データからのパラメータ予測にとって、確率変数yの第一及び第二のモーメント並びに分布S(y,g,p)が重要である可能性がある。このモーメントは次式(18)である。
【0142】
【数32】

【0143】
肺内の混合についてのシステム関数を次式で表現可能である(等式(7)参照)。
【0144】
【数33】

【0145】
これは、階数1(f(V;V,rg,p,rg,p)=f(V;V,g,p,g,p))の因子rについての合理的なパラメータ値範囲におけるfのシミュレーションにより実証可能である。r=(g−1とすると次式(19)を得る。
【0146】
【数34】

【0147】
上記モデルは、肺からの呼気濃度はp及びpに加えて相対的な有効容積g/gについての情報しか含まないことを示す。
【0148】
容積V(等式(5)参照)の前肺内の混合を考慮して、等式(2)は次式上(20)となり、次式下を満たす。
【0149】
【数35】

【0150】
従って、等式(10)は次式(21)となる。
【0151】
【数36】

【0152】
等式(6)に等式(21)を代入し、装置の測定による呼気粒子濃度のモデル予測を次式(22)として得る。
【0153】
【数37】

【0154】
等式(22)中の積分は次式がゼロでない間隔について実施する。
【0155】
【数38】

【0156】
予測されるパラメータが次式を含むことは等式(22)から明らかである。
【0157】
【数39】

【0158】
p0は肺内への平均取り込み容積であり、Vp0+Vは吸入終了時に装置で測定した総空気容積である。従って、Vを決定又は予測するとVp0が分かるであろう。
【0159】
次式は、離散値V(i=1,2,...,n)において装置で測定した実際の呼気濃度を示す。
【0160】
【数40】

【0161】
測定ノイズ及びモデルが不適当であること等に起因して、測定出力とモデル予測値との間の関係は次式(23)である。
【0162】
【数41】

【0163】
この段階において、最小二乗法基準によるパラメータ予測が合理的である。次式(24)を最小化する。
【0164】
【数42】

【0165】
モデル予測cout(V,...)の第一の二つのモーメントの計算が有用である(次式)。
【0166】
【数43】

【0167】
等式(22)によりE(V)を直接計算して次式(25)を得る。
【0168】
【数44】

【0169】
変数Vは、装置を通過する次式(分布cin(V)の中心:原点として機能する)の空気容積に関連することを想起する。
【0170】
【数45】

【0171】
等式(25)となる際、次の近似を使用した。
【0172】
【数46】

【0173】
等式(25)中の重要な項は次式である。
【0174】
【数47】

【0175】
これは、肺内への取り込み容積がVp0である際に典型的な粒子が肺から出る更なる容積に相当するVp0で近似される。上記モデルは、吸入中に生じる本質的混合(パラメータpにより数量化)及び肺の相対的な有効容積(次式)によりこの値が増大することを示す。
【0176】
【数48】

【0177】
E(V−E(V))の直接の計算により次式上(26)を得る(式中、次式下左は等式(5)で定義され、次式下右は分布Cin(V)の変数である)。
【0178】
【数49】

【0179】
関数B(p)及びB(p)はA(p)に類似する次式の微分を有する。
【0180】
【数50】

【0181】
次式上左のサンプル平均値及び次式上右の変数は次式下として定義する。
【0182】
【数51】

【0183】
従って、等式(25)及び(26)中で次式中の近似を使用して次式下(簡潔化のためp=pと仮定)について解くことにより、次式上についての初期予測を得る。
【0184】
【数52】

【0185】
等式(24)中で定義される次式の最小化計算法においてこれらを開始値とする。
【0186】
【数53】

【0187】
本発明の方法の例として、図9中に示すように、ピーク濃度の半分における容積差の決定により呼気容積に対する呼気エアゾール濃度を解析可能であるが、この例は限定的ではない。この際、呼気容積を取り込み容積で割る。呼気濃度グラフの傾きが増大する側でピーク濃度の半分に到達した際の容積点を、容積軸に対応させて初期容積値Vとする。呼気濃度グラフの傾きが減少する側における最大値の半分の濃度点を、容積軸に対応させて最終容積値Vとする。従って分散度はV−Vである。各容積値を取り込み容積で割ると、ボーラスが肺のガス交換領域に入り込まない場合のV−Vの予測値は取り込み容積とほぼ同等となる。その結果V−Vがより小さな取り込み容積についての先の差異から統計的有意に変化する場合、この際の取り込み容積が治療用エアゾールの導入容積として好適であると考えられるであろう。装置は呼気容積Vに対するエアゾール濃度coutを出力する。これらの二つの変数は、次式(27)の三つのパラメータにより関連付けられる。
【0188】
【数54】

【0189】
式中、三つのパラメータは次のようである。
及びp=吸入及び呼気時それぞれの本質的混合
g=相対的な有効容積(すなわち、吸入時の肺の有効容積gで割った呼気時の肺の有効容積g
【0190】
上記等式(27)から得る値と様々なパラメータ値についての実際のデータとの比較により、これら三つのパラメータを決定する。この際、所定の取り込み容積Vp0において決定を実施する。
【0191】
等式(27)は下記方法で得る:
a.cout(V,p,g,p)と装置による実際のデータとの比較;
b.cin(V)=(装置で測定した吸入時の総容積に対する粒子濃度)(式中、V≦V≦Vである);及び、
c.次式(Kを決定する)。
【0192】
【数55】

【0193】
Kの決定に使用可能な式の一つとしては次式がある(式中、Vは前肺の有効容積であり、δは前肺内の混合の標準偏差である)。
【0194】
【数56】

【0195】
また、coutは次式で近似される。
【0196】
【数57】

【0197】
更に、上記Weibelの表は下記により得る。
【0198】
【表1】

【0199】
上記微分は一定流量における時間に対するエアゾール濃度について実施したが、時間と容積を入れ替え可能であることに着目すべきである。従って、上記微分において時間の代わりに容積及び無次元容積(すなわち平均吸入容積で割った吸入容積)を使用可能である。この概念を例証するため、本発明の別の要素の時間変域微分を以下に示す。
【0200】
エアゾールボーラスを吸入する患者について得た応答曲線の分析時、応答曲線の非対称性は背景技術の数学的処理方法では説明されなかった。この不均等換気は病気の患者だけでなく健康体にも関係がある。従って、本発明の方法について、病気の患者及び健康体両方における混合を処理するための、不均等換気についての項を概して含む数学的モデルを設計した。
【0201】
上記観察により、混合の程度を変更可能な仮説混合チャンバーで開始するモデル公式を得る。背景技術の方法のモデルは、応答曲線の呼気グラフはGuassian形であると単純化して仮定した。しかし、本発明では応答曲線は非Guassian形(すなわち非対称)であると考える。この非対称応答曲線の外観はガンマ分布に著しく類似する。この分布は撹拌反応槽内の混合のモデル化に通常使用される。この反応槽のシステムを適切にモデル化すると、排出濃度についての次式(28)の表現となる。
【0202】
【数58】

【0203】
等式(28)は一般的に「連続タンクモデル」と呼ばれ、pは連続した反応器の数である。p=1である場合、この分布は指数関数的であり、単一の撹拌タンク型反応器については標準分布であると予測される。pが無限に近づくと全ての粒子の排出時間が等しくなるため、プラグ流れ状態に近づく。最終的には、応答が次第に急勾配となって正規分布に近づく。これにより、「連続タンク」モデルと他の背景技術の分散モデルとを比較可能となる。この比較により、対流混合の貢献と分散による混合との関連付けに使用される重要な無次元数(ペクレ数NPe)を得る。pが大きい場合にはNPe=2p、pが小さい場合にはNpe=2(p−1)である。
【0204】
等式(28)のガンマ分布モデルの別の重要な特徴は、肺胞管に取り込まれないエアゾールボーラス分画を説明するための迂回ループを加える可能性があるという点である。また、閉塞により局所的に増大した時定数の影響をモデル化する別の項を導入可能である。この場合、上気道は肺内の全面的な換気にほとんど寄与しないと仮定する。従って、上気道中の残留エアゾールは全て基本的に肺の換気区画(すなわち下気道及び肺胞)を迂回する。これは並列の換気を説明する。迂回ループを有する場合のガンマ分布は等式(28)で示され、次式(29)を満たす。
【0205】
【数59】

【0206】
直立による患者の様々なストレス又は通路内の抵抗及び静電容量の異なる積のいずれかに起因して異なる肺領域の開口部容積が異なるため、吸入中の異なる時点で肺胞が開いて満たされる。閉塞により時定数が局所的に増加すると、閉塞した気道に入り込んで肺胞に到達可能なエアゾール量が減少する。従って、呼気中、このエアゾールは肺胞の作用により混合されないままである。また、エアゾールは時定数がより大きな領域からも流入し、このエアゾールは標準より排出速度が遅く、より長時間かけて排出される。
【0207】
混合チャンバーに流入する分画を記載するパラメータを次式で定義する。
【0208】
【数60】

【0209】
従って、撹拌反応器内の混合を次式(30)により記載可能である。
【0210】
【数61】

【0211】
しかし、次式上であるため、等式(30)は次式下(31)のように書き変え可能である。
【0212】
【数62】

【0213】
等式(30)は、迂回を有する場合の混合区画の排出齢分布である。減少時間を次式中と定義し、かつ、次式下に着目すると、単位インパルスについてのΓ混合区画の排出齢分布は減少時間θについての次式下(32)から得る。
【0214】
【数63】

【0215】
等式(31)のラプラス変換により、混合区画のみについて次式(33)の伝達関数を得る。
【0216】
【数64】

【0217】
迂回の流れと混合区画の流れとが合流して本出願人らの有する排出流れが形成される位置において次式(34)の物質収支を実施する。
=Q+Q(34)
【0218】
等式(34)全体をQで割ってβを置き換えて書き換えることにより、次式(35)を得る。
=Cβ+(1−β)C(35)
【0219】
等式(35)をラプラス変換して全体をC(s)で割ることにより、次式(36)を得る。
【0220】
【数65】

【0221】
上記等式中の等式(32)を置き換える際、複合式の出力から次式(37)を得る。
【0222】
【数66】

【0223】
ここで、C(s)についてデルタ関数式入力信号を仮定すると、等式(34)中に示す関数の逆変換により、インパルス式入力信号について予測したモデルから出力濃度C(θ)についての時間変域における完全な系統的定義を得る。この際、δ(θ)=(ディラックのデルタ関数)であり、かつ、C(θ)は次式(38)より得る。
【0224】
【数67】

【0225】
等式(38)中の第一項は、βにより説明される混合チャンバー中に流入する空気量についてのインパルス式入力信号の混合を記載する。第二項は純粋に、混合チャンバーを迂回する空気量についての迂回項である。迂回した空気は、入力インパルスが与えられると直ちに検出される。
【0226】
モーメントによる方法で集めたデータからモデルパラメータp及びβを容易に決定可能である。しかし、理想的なインパルスについてのp及びβを上記方法で計算する場合、上記方法ではp及びβの正確な値を予測不可能である。従って、本発明は、差を二乗した合計の最小化により決定した適合度による曲線の当てはめ法により、このパラメータ予測関数を実施する。
【0227】
換気パラメータpは、完全な(すなわち均等な)混合について最小値1である。迂回がない(β=1)場合において、及び、p=1である特定の場合において、等式(37)は指数分布となる。換気の増大又は均質混合の減少による影響のモデル化におけるp値は大きい。pが無限に近づくと混合は生じず、出力分布が入力分布と等しくなる。これは完全換気の場合である。p値の増大によりピーク濃度時間も後に導かれ、上限θ=1/βに近づく。実際、pは連続した反応器の数であるため、連続した反応槽の数が増加するとシステムの所定容積についての混合の完全性が減少する。
【0228】
混合区画に流入する分画(β、迂回パラメータにより決定)を非均等換気の尺度とする。換気区画に流入しない分画は換気を受けないと根本的に仮定する。すなわち、上気道は一回換気量と残気量の間において換気に対する寄与が比較的小さいという仮定に基づき、上気道を通って取り込まれるエアゾール分画のみが換気を受けると仮定する。気道閉塞により時定数が局所的に増大し、閉塞の少ない通路に沿って肺胞が更に補充される。これに起因して、吸入されたボーラス中のエアゾールが補充された気道を横断し、換気区画を迂回して流れる空気量がより多くなる。言いかえると、より大きなエアゾール分画が気積に取り込まれずに気道中に残留する。ボーラスが健康体に深くまで吸入されない場合にも類似の状況が生じる。取り込みの減少により気積に取り込まれるエアゾール分画が減少し、β値が減少する。βの減少により、後に下限値θ=1においてピーク濃度となる。恐らくは取り込みの減少により、混合が増加すると、ピーク濃度が相殺されてピークの移動全体が無視できる可能性がある。
【0229】
従って、気道閉塞又は狭小を有する患者において、(1)エアゾールが閉塞した気道を通過する際、p又はβの値が変化するであろう;及び、(2)p又はβが変化する際の容積は閉塞の位置であり、この容積となる時点で治療用エアゾールを注入すべきである。健康体において、エアゾールボーラスの吸入容積に関わらず、エアゾールが肺のガス交換領域中に吸入されない場合、及び、等式(37)を無次元容積について解する場合、p及びβの値は比較的変動が小さいことが望ましい。
【0230】
更に、上述の方法の例として、一回目の呼吸時にのみボーラスを吸入する場合に多数回の呼吸の容積から喘息診断を実施してよいが、この例は限定的ではない。喘息に関連する気道が存在する際の容積よりも多量のエアゾールボーラスが取り込まれる場合、エアゾールの捕獲が見られるであろう。ボーラス吸入後の次の呼気中におけるエアゾールの存在により、この捕獲現象は実証されるであろう。従って、本発明の方法の使用により、対象呼吸周期の吸入時において、及び、先の吸入中のエアゾール導入後においてエアゾールを導入しない際の呼気中のエアゾールの存在に基づいて喘息の診断を実施可能である。最初に捕獲の発生が見られる時点における最小の取り込み容積は、喘息症状緩和のために導入するべき治療用エアゾールの容積を示す。
【0231】
本発明の装置により医薬用有効薬剤を運搬可能である。好ましい実施形態において、有効薬剤はエアゾールジェネレーター内に入れてエアゾールと共に放出する。呼吸周期の所定時に有効薬剤をエアゾールと共に放出することにより、本発明の装置及び方法で決定した肺の閉塞又は炎症領域に有効薬剤を確実に運搬する。エアゾールボーラスの取り込み容積についての理解により、有効薬剤の閉塞部位への運搬に必要な情報を得る。
【0232】
当然のことながら、他の実施形態を利用可能であり、また、本発明の範囲内であれば構造上の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明の典型的な実施形態を図解する。
【図2】容積データ及び濃度データの典型を図解する。
【図3a】非作動位置における典型的な容積ドリフト制御用マウスピースの破断図である。
【図3b】作動位置における図3aの容積ドリフト制御用マウスピースの破断図である。
【図3c】患者使用時の図3aの容積ドリフト制御用マウスピースの破断図である。
【図4a】典型的な三方弁の二つの部分の上端図である。
【図4b】典型的な三方弁の二つの部分の正面図である。
【図4c】「充填モード」における典型的な三方弁を示す。
【図4d】「運搬モード」における典型的な三方弁を示す。
【図5】肺換気予測に使用する典型的なフローチャートを示す。
【図6】肺換気測定に使用する典型的なフローチャートを示す。
【図7】取り込み容積提供に使用する典型的なフローチャートを示す。
【図8】取り込み容積提供に使用する別の典型的なフローチャートを示す。
【図9】容積データ及び濃度データの別の典型を図解する。
【符号の説明】
【0234】
100、装置
101、患者
103a、検知器
105a、マルチポート連結装置
106、エアゾールジェネレーター
107、圧力装置
107a、フィルタ
107b、呼吸気流計
107c、圧力変換器
109、コンピュータデバイス
109a、インターフェイス
109b、データ保存装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流量測定用の圧力装置;
呼吸周期中の所定時にエアゾール粒子を放出するためのエアゾールジェネレーター;
呼吸周期中に所定容量中のエアゾール粒子濃度を測定するための検知器;及び、
時定数に対して肺換気データを提供するためのコンピュータデバイスを含む
ことを特徴とする肺換気量測定用装置。
【請求項2】
コンピュータデバイス及びエアゾールジェネレーターが相互作用可能とするために形成された連結装置を更に含む
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
エアゾール粒子の平均粒子径が0.05ミクロン〜1ミクロンである
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
エアゾール粒子の平均粒子径が0.1ミクロン〜0.8ミクロンである
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
エアゾール粒子の平均粒子径が0.1ミクロン〜0.6ミクロンである
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
圧力装置はフィルタ、呼吸気流計及び圧力変換器を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
連結装置は三方弁である
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項8】
コンピュータデバイスは容積ドリフトを制御する手段を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
容積ドリフトを制御する手段は容積ドリフト制御スイッチに接続されている
ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
容積ドリフト制御スイッチはマウスピースに接続されている
ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
マウスピースはセンサスイッチを更に含む
ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
センサスイッチは近接センサを更に含む
ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
エアゾールは、一種以上の天然油、一種以上の合成油、又は、一種以上の天然油及び合成油の混合物を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
エアゾールは、トウモロコシ油、キャノーラ油、MIGOYL又はこれらの混合を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
圧力データ測定手段;
エアゾール粒子濃度測定手段;
呼吸周期中の所定時におけるエアゾールボーラス提供手段;並びに、
コンピュータデータが時定数関数を含む場合には、データの収集、コンピュータ計算、保存及び表示手段を含む
ことを特徴とする肺換気量測定用装置。
【請求項16】
コンピュータデータのための手段は、呼吸周期中におけるエアゾールボーラスを空気中に注入するのに適切な時点の決定を含む
ことを特徴とする請求項15に記載の肺換気量測定用装置。
【請求項17】
多数回の呼吸性周期中の圧力データ測定及び空気流量計算;
取り込み容積の計算;
呼吸周期中の所定時におけるエアゾールボーラス提供;
エアゾール粒子濃度測定;並びに、
エアゾール濃度測定値からの時定数分布計算を含む
ことを特徴とする肺換気量測定方法。
【請求項18】
呼吸性疾患であると診断された患者に由来する時定数分布と、健康体について予測した時定数分布との比較を更に含む
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
空気流量計算は、呼吸性周期中の圧力データの時間に対する積分、及び、容積データの保存を含む
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
エアゾール粒子濃度は、エアゾールボーラスの空気中への放出の次の呼吸性周期の所定時に測定する
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
エアゾール粒子濃度は、呼吸性周期の呼気段階の所定時に測定する
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
時定数分布の計算は、時間、容積及び無次元容積に対する粒子濃度の分析を含む
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項23】
a.呼吸周期中の圧力データ測定及び空気流量計算段階;
b.取り込み容積の提供段階;
c.呼吸周期中の所定時におけるエアゾールボーラス提供段階;
d.エアゾール粒子濃度測定、並びに、取り込み容積及びエアゾール濃度測定値からの時定数計算段階;
f.取り込み容積を変化させたb〜dの段階の繰り返しの実施段階;並びに
g.少なくとも二つの所定取り込み値から計算した時定数の比較段階を含む
ことを特徴とする肺上部領域の閉塞位置の決定方法。
【請求項24】
成人における所定取り込み容積が50cm〜400cmである
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
子供における所定取り込み容積が25cm〜200cmである
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
幼児における所定取り込み容積が10cm〜50cmである
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項27】
エアゾールボーラスを呼吸性周期中の吸入段階の所定時に提供する
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項28】
時間、容積及び無次元容積の少なくとも一種の離散値に対するエアゾール吸入及び呼気濃度の測定;
吸入時の本質的混合、呼気時の本質的混合、吸入時の肺の有効容積及び呼気時の肺の有効容積の初期値の予測;
予測した初期値の最小化;
取り込み容積の決定;
吸入エアゾール濃度測定値に対する吸入エアゾール濃度の予測、並びに、K(V)及びK(t)の少なくとも一つの予測;並びに、
吸入エアゾール濃度予測値に対する呼気粒子濃度の予測、及び、所定容積中において粒子が肺から排出される確率の予測を含む
ことを特徴とするエアゾール粒子濃度予測方法。
【請求項29】
吸入及び呼気エアゾール濃度の測定は時間、容積及び無次元容積の少なくとも一種の離散値を使用して実施する
ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
初期値の予測は最小二乗法基準により実施する
ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項31】
呼吸停止時間、並びに、呼吸停止時間が呼気粒子濃度に及ぼす影響の決定を更に含み、粒子濃度は取り込みエアゾール容積に対する吸入濃度の割合で記載する
ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項32】
エアゾールを吸入した呼吸時に、又は、その次の呼吸時に呼気された吸入粒子の総量又は総量の割合の決定を更に含む
ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項33】
エアゾール粒子は、一種以上の天然油、一種以上の合成油、又は、一種以上の天然油及び合成油の混合物から選択される
ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項34】
一回の呼吸で吸入されて次の呼吸で呼気されたエアゾールの保持量の決定を喘息の診断指標として更に含む
ことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項35】
エアゾールを吸入した呼吸時に、又は、その次の呼吸時に呼気された吸入粒子の総量又は総量の割合の決定を更に含む
ことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項36】
エアゾール粒子は、一種以上の天然油、一種以上の合成油、又は、一種以上の天然油及び合成油の混合物から選択される
ことを特徴とする請求項15に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図4d】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2007−503912(P2007−503912A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525330(P2006−525330)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/024240
【国際公開番号】WO2005/020787
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506071760)レスピラトリー マネージメント テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】