説明

エアバックファブリック用コーティング、コーティングされたエアバックファブリック及びその製造方法

エアバックファブリックは、仕上げ塗りを表面に有し、この仕上げ塗りは、約20μm以下の径を持つ複数の粒子を具備している。コーティングされたエアバックファブリックを製造する方法は、(a)エアバックファブリックを準備する工程と、(b)このエアバックファブリックの少なくとも1つの表面を、約20μm以下の径を持つ複数の粒子を具備したコーティング組成物と接触させる工程と、(c)工程(b)において処理されたファブリックを乾燥させて、仕上げ塗りをこのエアバック上につくる工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本出願は、エアバックファブリック用コーティング、このコーティングを組み込んだエアバックファブリック及びこのコーティングされたエアバックファブリックの製造方法を対象とする。
【0002】
本発明の概要
或る実施形態において、本発明は、表面上に仕上げ塗り(finish)を有したエアバックファブリックであって、この仕上げ塗りが約20μm以下の径を持つ複数の粒子を具備しているエアバックファブリックを提供する。
【0003】
或る方法の実施形態では、本発明は、コーティングされたエアバックファブリックの製造方法であって、(a)エアバックファブリックを準備する工程と、(b)このエアバックファブリックの少なくとも1つの表面を、約20μm以下の径を持つ複数の粒子を具備したコーティング組成物と接触させる工程と、(c)工程(b)において処理されたファブリックを乾燥させて、仕上げ塗りをこのエアバック上につくる工程とを含んだ方法を提供する。
【0004】
発明の詳細な説明
上で述べたように、本発明は、表面上に仕上げ塗りを有したエアバックファブリックであって、この仕上げ塗りが約20μm以下の径を持つ複数の粒子を具備しているエアバックファブリックを提供する。
【0005】
このエアバックファブリックは、任意の適切なファブリックであり得る。例えば、このエアバックファブリックは、合成繊維、好ましくは、ポリエステル又はポリアミド(例えば、ナイロン)を具備し得る。このエアバックファブリックのヤーンは、平織り又はジャカード織りなどの、任意の適切な構成で提供され得る。更に、このエアバックファブリックは、互いに縫い付けられて又は縫い合わされてこのエアバックを形成している複数の別個のファブリックピースから構成され得るか、又は、このファブリックは、ひと繋ぎ(one-piece)の織布エアバックであり得る。適切なひと繋ぎの織布エアバックは、米国特許第5,011,183号(Thorntonら);第6,220,309号(Sollars, Jr.);第6,595,244号(Sollars, Jr.)及び第7,069,961号(Sollars, Jr.)と、これらに併せて2006年6月23日に提出された同時継続米国特許出願第11/473,707号とに記載されたエアバックを含んでいるが、これらに限定されない。上述の特許及び特許出願の各々は、ひと繋ぎの織布エアバックに関連した教示について参照することにより、あたかも各々の引用文献の教示がそれら全体についてここで述べられているのと同じ程度に、ここに明確に組み込まれる。
【0006】
エアバックファブリック上の仕上げ塗りは、粒状物質(例えば複数の粒子)を具備している。仕上げ塗り中に含まれた粒子は、任意の適切な粒子であり得るが、好ましくは、約20μm以下、又は約10μm以下、又は約1μm以下(例えば、約500nm以下又は約300nm以下)の径を持つ粒子である。仕上げ塗りにおいての使用に適した粒子は、シリカ粒子(例えば、ヒュームドシリカ粒子、沈降シリカ粒子、アルミナ修飾されたコロイド状のシリカ粒子など)、アルミナ粒子(例えばヒュームドアルミナ粒子)及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。或る考えられる好ましい実施形態では、粒子は、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、ヒュームドアルミナ、アルミナ修飾シリカ、ジルコニア、チタニア、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、窒化チタン、窒化ケイ素及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの材料から構成されている。また、このような粒子は、電荷及び疎水性などの表面特性を変化させるべく、例えばグラフティングによって、表面修飾され得る。適切な市販の粒子は、以下のものを含むが、これらに限定されない:ペンシルヴァニア州ボワイエタウンのCabot Corporationから市販されているヒュームドアルミナの40重量%固体水性分散液であるCAB-O-SPERSE(登録商標) PG003ヒュームドアルミナ(この分散液は、4.2のpHと、約150nmのメジアン平均凝集粒径とを有している);ペンシルヴァニア州ボワイエタウンのCabot Corporationから市販されているヒュームドアルミナ粉末であるSPECTRAL(登録商標) 51ヒュームドアルミナ(この粉末は、55m2/gのBET表面積と、約150nmのメジアン平均凝集粒径とを有している);ペンシルヴァニア州ボワイエタウンのCabot Corporationから市販されているヒュームドアルミナの40重量%固体水性分散液であるCAB-O-SPERSE(登録商標) PG008ヒュームドアルミナ(この分散液は、4.2のpHと、約130nmのメジアン平均凝集粒径とを有している);ペンシルヴァニア州ボワイエタウンのCabot Corporationから市販されているヒュームドアルミナ粉末であるSPECTRAL(登録商標)81ヒュームドアルミナ(この粉末は、80m2/gのBET表面積と、約130nmのメジアン平均凝集粒径とを有している);ドイツのDegussaから市販されているヒュームドアルミナ粉末であるAEROXIDE ALU Cヒュームドアルミナ(この粉末は、100m2/gのBET表面積と、約13nmのメジアン平均一次粒径とを有している);Grace Davisonから市販されている40重量%の固体水性ゾルであるLUDOX CL-Pコロイド状アルミナ被覆シリカ(このゾルは、4のpHと、直径で22nmの平均粒径とを有している);Nalcoから市販されているアルミナイズシリカ粒子の30重量%固体水性コロイド状懸濁液(26%のシリカ及び4%のアルミナ)であるNALCO 1056アルミナイズシリカ;Grace Davison.から市販されている34重量%の固体水性コロイド状シリカゾルであるLUDOX TMAコロイド状シリカ(このゾルは、4.7のpHと、直径で22nmの平均粒径とを有している);Nalcoから市販されている二酸化チタンの10重量%固体水性分散液であるNALCO 88SN-126コロイド状二酸化チタン;ペンシルヴァニア州ボワイエタウンのCabot Corporationから市販されているヒュームドシリカの15重量%固体水性分散液であるCAB-O-SPERSE(登録商標)S3295ヒュームドシリカ(この分散液は、9.5のpHと、直径で約100nmの平均凝集一次粒径(average agglomerated primary particle)とを有している);ペンシルヴァニア州ボワイエタウンのCabot Corporationから市販されているヒュームドシリカの12重量%固体水性分散液であるCAB-O-SPERSE(登録商標)2012Aヒュームドシリカ(この分散液は、5のpHを有している);ペンシルヴァニア州ボワイエタウンのCabot Corporationから市販されているヒュームドシリカの30重量%固体水性分散液であるCAB-O-SPERSE(登録商標)PG001ヒュームドシリカ(この分散液は、10.2のpHと、直径で約180nmのメジアン凝集粒径とを有している);ペンシルヴァニア州ボワイエタウンのCabot Corporationから市販されているヒュームドシリカの20重量%固体水性分散液であるCAB-O-SPERSE(登録商標)PG002ヒュームドシリカ(この分散液は、9.2のpHと、直径で約150nmのメジアン凝集粒径とを有している);ペンシルヴァニア州ボワイエタウンのCabot Corporationから市販されているヒュームドシリカの20重量%固体水性分散液であるCAB-O-SPERSE(登録商標)PG022ヒュームドシリカ(この分散液は、3.8のpHと、直径で約150nmのメジアン凝集粒径とを有している);ドイツのDegussaから市販されている沈降シリカ粉末であるSIPERNAT 22LS沈降シリカ(この粉末は、175m2/gのBET表面積と約3μmのメジアン平均一次粒径とを有している);ドイツのDegussaから市販されている沈降シリカ粉末であるSIPERNAT 500LS沈降シリカ(この粉末は、450m2/gのBET表面積と約4.5μmのメジアン平均一次粒径とを有している);及びドイツのDegussaから市販されているヒュームドジルコニア粉末であるVP Zirconium Oxideヒュームドジルコニア(この粉末は、60m2/gのBET表面積を有している)。
【0007】
或る考えられる好ましい実施形態では、これら粒子は、約4乃至8のpHを持つ水性媒体などの水性媒体中に懸濁されたときに、正の表面電荷を有し得る。この実施形態における使用に適した粒子は、アルミナ修飾されたコロイド状のシリカ粒子、アルミナ粒子(例えば、ヒュームドアルミナ粒子)及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。或る考えられる実施形態では、これら粒子は、約5以上、又は約6以上、又は約7以上のモース硬度を有し得る。この実施形態における使用に適した粒子は、ヒュームドアルミナ粒子を含むが、これに限定されない。或る考えられる好ましい実施形態では、これら粒子は、一次粒子の凝集物を具備するか又はこれらからなる三次元分岐構造又は鎖状構造を有し得る。この実施形態における使用に適した粒子は、ヒュームドアルミナ粒子、ヒュームドシリカ粒子及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0008】
仕上げ塗り中に含まれる粒子は、粒子の疎水性を付与するか又は高めるべく、修飾され得る。例えば、ヒュームドシリカ粒子を具備した実施形態では、ヒュームドシリカ粒子は、ヒュームドシリカに疎水性を与えるべく、例えば、オルガノシランを用いて処理され得る。適切な市販の疎水性粒子は、AEROSIL(登録商標) R812、AEROSIL(登録商標) R816、AEROSIL(登録商標) R972、及びAEROSIL(登録商標) R7200などの、Degussaから市販されているAEROSIL(登録商標) Rシリーズのヒュームドシリカを含んでいるが、これらに限定されない。疎水性粒子がファブリック上の仕上げ塗りにおいて利用される場合、これら疎水性粒子は、塗布を補助すべく溶媒を含有した又は界面活性剤を含有したコーティング組成物を用いて塗布される。
【0009】
仕上げ塗りは、任意の適切な量の粒子を含み得る。典型的には、仕上げ塗り中に存在する粒子の量は、未処理のエアバックファブリックの重量に基づき、約0.05重量%以上であろう。或る考えられる好ましい実施形態では、仕上げ塗り中に存在する粒子の量は、未処理のエアバックファブリックの重量に基づき、0.07重量%以上(例えば、約0.1重量%以上)であろう。典型的には、仕上げ塗り中に存在する粒子の量は、未処理のエアバックファブリックに基づき、約1.5重量%以下(例えば、約1重量%以下又は0.5重量%以下)であろう。
【0010】
ファブリックの或る考えられる好ましい実施形態では、エアバックファブリックに適用される仕上げ塗りは、更に、バインダを具備し得る。仕上げ塗り中に含まれたバインダは、任意の適切なバインダであり得る。適切なバインダは、イソシアネートバインダ(例えば、ブロックトイソシアネートバインダ)、アクリルバインダ(例えば、非イオン性アクリルバインダ)、ポリウレタンバインダ(例えば、脂肪族ポリウレタンバインダ及びポリエーテル系ポリウレタンバインダ)、フルオロポリマーバインダ及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。或る考えられる好ましい実施形態では、バインダは、ブロックトイソシアネートバインダなどの架橋性バインダである。
【0011】
存在する場合、バインダは、エアバックファブリックに適用される仕上げ塗りの任意な適切な量を構成することができる。仕上げ塗りに存在する粒子の量(例えば、重量)の、仕上げ塗り中に存在するバインダ固形物の量(例えば、重量)に対する比は、典型的には、約1:1(粒子の重量:バインダ固形物の重量)より大きい。或る考えられる好ましい実施形態では、仕上げ塗りに存在する粒子の量(例えば、重量)の、仕上げ塗り中に存在するバインダ固形物の量(例えば、重量)に対する比は、約2:1より大きい、又は約3:1より大きい、又は約4:1より大きい、又は約5:1より大きい(例えば、約6:1より大きい、約7:1より大きい、又は約8:1より大きい)。
【0012】
本発明のエアバックファブリックは、好ましくは、コーティングされていない同様のファブリックと比較して、可撓性又は剛性の実質的な変化を少しも示さない。特には、このエアバックファブリックは、好ましくは、コーティングされていない同様のエアバックファブリックと比較して、同じ又は実質的に同じ可撓性又は剛性を示す。エアバックファブリックの可撓性又は剛性は、例えば、ASTM規格D4032−94に従って試験され得る。
【0013】
本発明のエアバックファブリックは、任意の適切な方法又はプロセスによって製造され得る。しかしながら、本発明は、複合体を製造するプロセスをも提供する。特には、このプロセスは、(a)エアバックファブリックを準備する工程と、(b)このエアバックファブリックの少なくとも1つの表面を、約20μm以下の径を持つ複数の粒子を具備したコーティング組成物と接触させる工程と、(c)工程(b)において処理されたファブリックを乾燥させて、仕上げ塗りをこのエアバック上につくる工程とを含んでいる。
【0014】
上述の方法における使用に適したエアバックファブリックは、本発明のエアバックファブリックにおける使用に適したものとして上で説明された材料を含むが、これらに限定されない。また、この方法において使用されるのに適したコーティング組成物は、粒子と、任意ではあるが本発明のエアバックファブリックにおける使用に適したものとして上で説明されたバインダとを含んだ組成物を含むが、これらに限定されない。典型的には、上述の方法における使用に適したコーティング組成物は、粒子と、任意にバインダとの水性分散液を含んでいる。
【0015】
エアバックファブリック(又はその任意の部分)の表面は、任意の適切な方法で、コーティング組成物と接触され得る。このエアバックファブリックは、従来のパディング、噴霧塗布(湿式又は乾式)、発泡、印刷、コーティング及び排気技術(exhaustion techniques)を使用して、コーティング組成物と接触させられ得る。例えば、このエアバックファブリックは、このファブリックがコーティング組成物中に浸漬され、次に過剰な液体を除去すべく1対のニップローラーの間を通されるパディング技術を使用して、コーティング組成物と接触させられる。このような実施形態では、ニップローラーは、任意の適切な圧力、例えば、約280kPa(40psi)に設定され得る。このエアバックファブリックの表面の任意の適切な部分が、コーティング組成物と接触させられ得る。例えば、このエアバックファブリックは、エアバックファブリックのうち最終的なエアバックの縫製部に相当する部分において処理され得る。
【0016】
コーティングされたエアバックファブリックは、任意の適切な技術を使用し、任意の適切な温度で乾燥させられ得る。例えば、このエアバックファブリックは、従来のテンターフレーム又はレンジ上にて、約160℃(320°F)の温度で、約5分間乾燥させられ得る。
【0017】
本発明に従うエアバックファブリックは、任意の適切なエアバックモジュールにおいて使用され得る。例えば、本発明に従うエアバックファブリックは、運転手側及び/又は搭乗者側の、正面エアバック、側面エアバック(例えば、サイドカーテンエアバック)などにおいて利用され得る。また、本発明に従うエアバックファブリックは、典型的には従来のエアバック上にある1つ以上のコーティング及び/又は仕上げ塗りを具備し得る。このようなコーティング及び/又は仕上げ塗りは、このエアバックファブリックから構成されたエアバックに、コーティングされていないファブリックから構成されたエアバックよりも長時間膨らんだ状態を保持することを可能にさせるシリコーンコーティングなどの、エアバックファブリックの多孔性を低下させるコーティング及び/又は仕上げ塗りを含むが、これらに限定されない。このようなコーティングの製造における使用に適した市販のシリコーンは、「X-32-2337」という製品名で日本のShin-Etsu Chemical Co., Ltdから販売されているシリコーン及び「6291」という製品名でWacker Chemieから販売されているシリコーンを含んでいるが、これらに限定されない。このようなコーティング及び/又は仕上げ塗りは、任意の適切な量でエアバックファブリック上に存在し得る。典型的には、このコーティング及び/又は仕上げ塗りは、約110g/m2以下の量でエアバック上に存在する。或る考えられる好ましい実施形態において、このコーティング及び/又は仕上げ塗りは、約95g/m2以下、約75g/m2以下、約55g/m2以下、約35g/m2以下、又は約25g/m2以下の量でエアバックファブリック上に存在する。
【0018】
上述の説明は、エアバックファブリック及びそれ用のコーティングに関連した実施形態に焦点を当てていたが、上で説明した仕上げ塗りは、他の織物材料に適用され得る。例えば、この仕上げ塗りは、天然又は合成繊維を含有した他のファブリックに適用され得る。従って、他の実施形態において、本発明は、仕上げ塗りを表面上に有したファブリックであって、この仕上げ塗りが約20μm以下の径を持つ複数の粒子を具備しているファブリックを提供する。このような実施形態の仕上げ塗り中の粒子は、上で説明した粒子の何れかであり得る。また、このような実施形態におけるファブリックに適用される仕上げ塗りは、バインダなどの、上で説明した追加の添加剤の何れかを含み得る。
【0019】
以下の例は、更に本発明を例示しているが、もちろん、その範囲を限定するように解釈されるべきでない。
【0020】

7つのサンプル(例1乃至6及び比較例)が、平織りエアバックファブリックを「パディング」プロセスを使用してコーティングすることによって製造された。このエアバックファブリックは、1インチ当たり41本のエンド(end)(1cm当たり16本のエンド)及び1インチ当たり41本のピック(pick)(1cm当たり16本のピック)であり、630デニールのナイロンヤーンを経糸及び緯糸に具備していた。上で述べたように、これらサンプルは、織物生地を浴に通し、次に圧搾ローラーに通すことによって液体コーティングが生地に適用される「パディング」プロセスを使用して処理された。特には、一切れのファブリックが、所望の化学薬品を含有した化学組成物を収容した浴内に浸漬された。別段述べない限り、全ての化学物質の百分率(%)は、調製された浴の総重量に基づく重量%であり、化学物質の百分率又は化学物質のグラムが与えられた場合、残部は水から構成される。さらに、化学物質の百分率は、この組成物が30%の活性成分を含有した際、この30%の組成物のうちのX%が使用されるというように、製造業者から受け取った化学物質に基づいていた。
【0021】
このファブリックが浴中での浸漬によって完全に濡れたあと、ファブリックが処理浴から取り出され、スクィーズローラーの間に約40psi(280kPa)の圧力にて通されて、ファブリックの処理前重量に基づき約35重量%の均一なピックアップ(pickup)を得た。次に、このファブリックは、緩みなく引っ張られ、所望の寸法を保持すべくフレームへとピン止めされた。このピンフレームは、この仕上げ塗りを乾燥させ且つ硬化させるべく、約300乃至320°F(約150乃至160℃)のDespatchオーブン内に、約5乃至8分間置かれた。オーブンから取り出されると、ファブリックは、ピンフレームから取り外され、試験に先立ち、室温にて少なくとも24時間平衡化(equilibrate)させられた。
【0022】
例1は、このファブリックを、約5gのCAB-O-SPERSE(登録商標) PG003(Cabot Corporationから市販されている150nmの粒径を持つヒュームドアルミナ分散液(40%固形物))と約995グラムの水とを含んだ浴中でコーティングすることによって製造された。例2は、このファブリックを、約5グラム(即ち0.5%)のCAB-O-SPERSE(登録商標)PG003と、0.5グラム(即ち0.05%)のMILLITEX(登録商標) Resin MRX(Milliken Chemicalから市販されているブロックトイソシアネート系架橋剤(35乃至45%の固形物を有する))と、994.5グラムの水とを含んだ浴中でコーティングすることによって製造された。例3は、このファブリックを、約5グラム(即ち0.5%)のCAB-O-SPERSE(登録商標) PG008(Cabot Corporationから市販されている130nmの粒径を持つヒュームドアルミナ分散液(40%固形物))と、0.5グラム(即ち0.05%)のMILLITEX(登録商標)Resin MRXと、994.5グラムの水とを含んだ浴中でコーティングすることによって製造された。例4は、このファブリックを、約5グラム(即ち0.5%)のLUDOX CL-P(Grace Davisonから市販されている、粒径が22nmのコロイド状アルミナ被覆シリカゾル(40%固形物))と、0.5グラム(即ち0.05%)のMILLITEX(登録商標)Resin MRXと、994.5グラムの水とを含んだ浴中でコーティングすることによって製造された。例5は、このファブリックを、約16.7グラム(即ち1.67%)のCAB-O-SPERSE(登録商標) 2012A(Cabot Corporationから市販されているヒュームドシリカ分散液(12%固形物))と、0.5グラム(即ち0.05%)のMILLITEX(登録商標)Resin MRXと、982.8グラムの水とを含んだ浴中でコーティングすることによって製造された。例6は、このファブリックを、約25グラム(即ち2.5%)のCAB-O-SPERSE(登録商標) PG008と、2.5グラム(即ち0.25%)のMILLITEX(登録商標)Resin MRXと、972.5グラムの水とを含んだ浴中でコーティングすることによって製造された。比較例1は、このファブリックを、約0.5グラム(即ち0.05%)のMILLITEX(登録商標)Resin MRXと、999.5グラムの水とを含んだ浴中でコーティングすることによって製造された。
【0023】
処理の後、これらサンプルの各々は、エッジコーム抵抗値(edgecomb resistance)及び剛性を測定すべく試験された。また、例1乃至3、例6、比較例並びに未処理エアバックファブリック(「対照」)が、エアバックファブリックのタング形引裂抵抗値(tongue tear resistance)を測定すべく試験された。エッジコーム抵抗値試験は、ASTM規格D6479−02に従って為された。この試験では、試験標本(典型的に50mmの幅及び300mmの長さ)の一方の端が、一定速度引き伸ばし(constant-rate-of-extension)(CRE)張力試験機の1つのつかみによって固定され、専用の固定具が、標本の反対側の端を貫通し、等間隔で一列に並んだ針穴に突き刺される。破断が生じるまでその標本に張力がかけられる。破断させるのに必要な力が、このファブリックのエッジコーム抵抗値と呼ばれる。
【0024】
タング形引裂抵抗値試験は、ASTM規格D2261−96に従って為された。この試験では、矩形の試験標本(典型的には、75mmの幅及び200mmの長さ)が、2つの舌状部をもつ標本をつくるべく、短辺の中心で切り込まれた。この標本の一方の舌状部がCRE張力試験機の上部のつかみにつかまれ、他方の舌状部が下部のつかみにつかまれる。裂け目を伝播させる力を適用するべく、これらつかみの間隔は連続的に増加させられる。発現させた力は、同時に記録される。
【0025】
剛性試験は、ASTM規格D4032−94に従う円形折り曲げ手順(circular bend procedure)を使用して為された。この試験では、プランジャーが、平らで折りたたまれたファブリックの見本をプラットフォーム内のオリフィスに押し込む。ファブリックをオリフィスに押し込むのに必要な最大の力が、このファブリックの剛性(曲げへの抵抗値)である。
【0026】
上で説明した試験の結果は、未処理のエアバックファブリック(対照)の結果と共に、図3において述べられている。図3からわかり得るように、本発明に従って処理されたサンプル(例1乃至5)は、各々、エッジコーム抵抗値について、比較例と比較して少なくとも約85%の増加と、未処理のエアバックファブリック(対照)と比較して少なくとも約120%の増加とを示した。更に、これら結果は、この処理が、未処理のエアバックファブリック(対照)と比較して、処理されたファブリックの剛性をさほど増加させないことをも示している。
【0027】
例6において製造されたファブリックと未処理のエアバックファブリック(対照)との表面の走査電子顕微鏡写真も得られた。未処理のエアバックファブリック(対照)の顕微鏡写真は、図1及び図1Aに示されている。例6において製造されたファブリックの表面の顕微鏡写真は、図2及び図2Aに示されている。これら顕微鏡写真の比較から明らかなように、粒子が、処理されたエアバックファブリック(即ち、例6において製造されたファブリック)の表面上に仕上げ塗りを形成している。
【0028】
ここで列挙された刊行物、特許出願及び特許を含んだ全ての参考文献は、あたかも、各々の参考文献が、参照することによりここに組み込まれるべく個別に及び詳細に示されており、且つ、ここでその全体が述べられているのと同程度に、参照することによりここに組み込まれる。
【0029】
発明の説明との関連で(特に特許請求の範囲との関連で)、用語「或る("a" and an")」及び「その(the)」並びに同様の指示物は、別段ここに示されない限り又は文脈上明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の双方を包含するように解釈されるべきである。用語「具備する(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、別段記載がない限り、制限のない用語(open-ended terms)(即ち、「これを含むが、これに限定されない」ことを意味する)として解釈されるべきである。ここでの値の範囲の記載は、別段ここに示されない限り、単に、その範囲内にある各々の別個の値を個別に言及するのを省略する方法として役立つように意図されたものであり、各々の別個の値は、あたかもそれが個別にここで挙げられているかのように、明細書に組み込まれている。ここで説明された全ての方法は、別段ここに示されない限り及び文脈上明らかに矛盾がない限り、任意の適切な順序で実行され得る。何れか及び全ての例、又は、ここで提供される例示的な言葉(例えば「such as」)の使用は、単に、本発明をより明らかにするように意図されているものであり、別段特許請求の範囲に記載されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の何れのことば(language)も、特許請求の範囲に何ら記載されていない事項が本発明の実施のために必須であることを示しているとして解釈されるべきではない。
【0030】
本発明の好ましい実施形態は、ここでは、本発明者が知る本発明を実施するための最良の形態を挙げて説明されている。好ましい実施形態の変形は、上述の説明を読むことで、当業者に明らかになるかもしれない。本発明者らは、当業者が適切な変形を採用することを予期し、本発明者らは、本発明がここで特に説明されたのとは別の方法で実施されるのを意図している。従って、本発明は、適用可能な法規によって許されているように、ここに添付されている特許請求の範囲に記載された主題の全ての変更及び等価物を含んでいる。更に、別段ここで示されていない限り及び文脈上明らかに矛盾しない限り、上で説明した事項の全ての可能な変形における如何なる組み合わせも、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】例において説明される未処理のエアバックファブリックの表面の走査電子顕微鏡写真(2020倍拡大図)。
【図1A】例において説明される未処理のエアバックファブリックの表面の走査電子顕微鏡写真(2020倍拡大図)。
【図2】例6において製造されたファブリックの表面の走査電子顕微鏡写真(2000倍拡大図)。
【図2A】例6において製造されたファブリックの表面の走査電子顕微鏡写真(2000倍拡大図)。
【図3】例1乃至6及び比較例で製造されたファブリック並びに参照のファブリックのエッジコーム抵抗値、タング形引裂抵抗値及び剛性を示したグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部の上に仕上げ塗りを有したエアバックファブリックであって、前記仕上げ塗りが、前記エアバックファブリックの重量に基づき、約0.05乃至約1.5重量%の、約20μm以下の径を持つ複数の粒子を具備しているエアバックファブリック。
【請求項2】
請求項1記載のエアバックファブリックであって、前記粒子は、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、窒化チタン、窒化珪素及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるエアバックファブリック。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエアバックファブリックであって、前記粒子は、ヒュームドアルミナ、ヒュームドシリカ、アルミナ修飾されたコロイド状のシリカ及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるエアバックファブリック。
【請求項4】
請求項3記載のエアバックファブリックであって、前記粒子はヒュームドアルミナを具備しているエアバックファブリック。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載のエアバックファブリックであって、前記粒子が約300nm以下の径を持っているエアバックファブリック。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載のエアバックファブリックであって、前記仕上げ塗りが、更に、バインダを具備しているエアバックファブリック。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項記載のエアバックファブリックであって、粒子の、前記仕上げ塗り中に存在するバインダに対する比が、前記粒子の重量及びバインダ固形物の重量に基づいて、約1:1以上であるエアバックファブリック。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項記載のエアバックファブリックであって、前記エアバックファブリックは多孔性を示し、前記エアバックファブリックは、前記表面の少なくとも一部の上に第2仕上げ塗りを具備しており、前記第2仕上げ塗りは、前記エアバックファブリックの前記多孔性を、コーティングされていないエアバックファブリックと比較して減少させているエアバックファブリック。
【請求項9】
請求項8記載のエアバックファブリックであって、前記第2仕上げ塗りが、シリコーン化合物を具備しているエアバックファブリック。
【請求項10】
請求項8又は9記載のエアバックファブリックであって、前記第2仕上げ塗りは、前記エアバックファブリック上に、約110g/m2以下の量で存在しているエアバックファブリック。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項記載のエアバックファブリックであって、ひと繋ぎの織布エアバックであるエアバックファブリック。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項記載のエアバックファブリックであって、前記エアバックファブリックは、少なくとも1つの縫製部を前記エアバックファブリックの第1及び第2のファブリック層間の接合位置に具備しており、前記仕上げ塗りが前記少なくとも1つの縫製部に適用されているエアバックファブリック。
【請求項13】
コーティングされたエアバックファブリックの製造方法であって、
(a)エアバックファブリックを準備する工程と、
(b)前記エアバックファブリックの1つの表面の少なくとも一部を、約20μm以下の径を持つ複数の粒子を具備したコーティング組成物と接触させる工程と、
(c)工程(b)において処理された前記ファブリックを乾燥させて、仕上げ塗りを前記エアバック上につくる工程と
を含んだ方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、前記仕上げ塗りが、前記エアバックファブリックの重量に基づいて、約0.05乃至約1.5重量%の前記粒子を具備している方法。
【請求項15】
請求項13又は請求項14記載の方法であって、前記粒子は、ヒュームドアルミナ、ヒュームドシリカ、アルミナ修飾されたコロイド状のシリカ及びこれらの組み合わせからなる群より選択される方法。
【請求項16】
請求項13乃至15の何れか1項記載の方法であって、工程(c)において製造された前記エアバックファブリックは多孔性を示し、
(d)第2コーティング組成物を前記エアバックファブリックの1つの表面の少なくとも一部に塗布する工程であって、前記第2コーティング組成物は、前記エアバックファブリックの前記表面の少なくとも一部の上に仕上げ塗りをつくり、前記仕上げ塗りは、工程(c)において製造されたエアバックファブリックと比較して、前記エアバックの多孔性を減少させる工程
を更に含んだ方法。
【請求項17】
請求項13乃至16の何れか1項記載の方法であって、工程(a)において製造される前記エアバックファブリックが、ひと繋ぎの織布エアバックである方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−518548(P2009−518548A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543527(P2008−543527)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/046191
【国際公開番号】WO2007/067467
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】