説明

エアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物およびエアバッグカバー

【課題】流動性、機械的強度に優れ、エアバッグカバーとして好適なポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】成分(A)が(イ):プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜100重量%であるプロピレン系重合体成分および(ロ):エチレンに基づく単量体単位の含有量が20〜80重量%、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が80〜20重量%であるエチレン−α−オレフィン共重合体成分(ロ)からなり、成分(B)がエチレンに基づく単量体単位の含有量が35〜75重量%、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が65〜25重量%であるエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム、及び成分(C)が鉱物油系軟化剤、更に架橋剤を0.01〜0.3重量部添加して成る前記エアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物およびエアバッグカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用エアバッグシステムのエアバッグカバーには、運転席用、助手席用等の各用途に適した剛性を有すること、ティアライン部(エアバッグ展開時にエアバッグカバーを開裂させるために設けられたエアバッグカバーの薄肉部)以外でエアバッグカバーが開裂しないように高い引張破断伸びを有すること、寒冷地での使用にも耐えるように高い低温衝撃強度を有すること、自動車の内装部品にふさわしい外観を有することなどが求められている。
【0003】
このようなエアバッグカバーとしては、プロピレン系樹脂とエチレン−プロピレン系−非共役ジエン共重合体ゴムとからなるポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー組成物からなる射出成形体が多く提案されている。例えば、特許文献1には、プロピレン−エチレンランダム共重合体とエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴムと低密度ポリエチレンとからなる熱可塑性エラストマー組成物からなる射出成形体が提案されている。また、特許文献2には、プロピレン−エチレン共重合体と、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体と、2種類のエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムとからなる熱可塑性エラストマー組成物からなる射出成形体が提案されている。さらに、特許文献3には、多段重合で製造されたプロピレン系樹脂とエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムとからなる熱可塑性エラストマー組成物からなる射出成形体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−27331号公報
【特許文献2】特開2000−72937号公報
【特許文献3】特開2008−45037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー組成物からなる射出成形体は、成形品の光沢が高い場合があり、外観において十分満足の行くものではなかった。
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、外観に優れると共にエアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物に求められる流動性、機械的強度に優れ、エアバッグカバーとして好適なポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記成分(A)−1、(B)および(C)を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるエアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物であって、成分(A)−1の100重量部あたり、成分(B)の含有量が60〜150重量部であり、成分(C)の含有量が0〜40重量部であり、成分(A)−1、(B)および(C)の合計量100重量部に対し、架橋剤の添加量が0.01〜0.3重量部である前記エアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物にかかるものである。
成分(A)−1:下記成分(イ)および(ロ)を含有し、成分(イ)の含有量が70〜90重量%、成分(ロ)の含有量が30〜10重量%であり(但し、成分(A)−1を100重量%とする。)、示差走査熱量計により測定される融解温度が155℃以上であるプロピレン系樹脂
成分(イ):プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜100重量%(但し、成分(イ)を100重量%とする。)であるプロピレン系重合体成分
成分(ロ):エチレンに基づく単量体単位の含有量が20〜80重量%であり、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が80〜20重量%である(但し、成分(ロ)を100重量%とする。)であるエチレン−α−オレフィン共重合体成分
成分(B):エチレンに基づく単量体単位の含有量が35〜75重量%、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が65〜25重量%であり(但し、エチレンに基づく単量体単位の含有量とα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量との合計を100重量%とする。)、ヨウ素価が0.1〜7であり、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)が20〜100であるエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム
成分(C):鉱物油系軟化剤
また、本発明は、成分(A)−1、成分(A)−2、(B)および(C)を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるエアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物であって、成分(A)−1および成分(A)−2の合計量100重量部あたり、成分(B)の含有量が60〜150重量部であり、成分(C)の含有量が0〜40重量部であり、成分(A)−1、(A)−2、(B)および(C)の合計量100重量部に対し、架橋剤の添加量が0.01〜0.3重量部である前記エアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物にかかるものである。
成分(A)−1:下記成分(イ)および(ロ)を含有し、成分(イ)の含有量が70〜90重量%、成分(ロ)の含有量が30〜10重量%であり(但し、成分(A)−1を100重量%とする。)、示差走査熱量計により測定される融解温度が155℃以上であるプロピレン系樹脂
成分(イ):プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜100重量%(但し、成分(イ)を100重量%とする。)であるプロピレン系重合体成分
成分(ロ):エチレンに基づく単量体単位の含有量が20〜80重量%であり、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が80〜20重量%である(但し、成分(ロ)を100重量%とする。)であるエチレン−α−オレフィン共重合体成分
成分(A)−2:プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜98重量%であるプロピレン系樹脂(但し、成分(A)−2を100重量%とする。)
成分(B):エチレンに基づく単量体単位の含有量が35〜75重量%、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が65〜25重量%であり(但し、エチレンに基づく単量体単位の含有量とα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量との合計を100重量%とする。)、ヨウ素価が0.1〜7であり、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)が20〜100であるエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム
成分(C):鉱物油系軟化剤
さらに、本発明は、前記熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られるエアバッグカバーにかかるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外観、流動性、機械的強度に優れるエアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。
さらに、成分(A)−1プロピレン系樹脂と、特定量の成分(A)−2プロピレン系樹脂とを併用することにより、得られる成形体を変形させた際の耐白化性に優れるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例において耐白化性を評価するための成形体を製造する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
成分(A)−1は、下記成分(イ)および(ロ)を含有するプロピレン系樹脂である。
成分(イ):プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜100重量%(但し、成分(イ)を100重量%とする。)であるプロピレン系重合体成分
成分(ロ):エチレンに基づく単量体単位の含有量が20〜80重量%(但し、成分(ロ)を100重量%とする。)であるエチレン−α−オレフィン共重合体成分
【0010】
成分(イ)のプロピレン系重合体成分は、プロピレンに基づく単量体単位(プロピレン単位)に加え、他の単量体に基づく単量体単位を有していてもよい。該他の単量体としては、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンをあげることができる。該α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテンなどがあげられる。好ましくは、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。これらは1種以上用いられる。
【0011】
成分(イ)のプロピレン単位の含有量は、成分(イ)を100重量%として、90〜100重量%であり、成形体の耐熱性および剛性の観点から、好ましくは95〜100重量%であり、より好ましくは98〜100重量%である。プロピレン単位の含有量は、赤外分光法により求めることができる。
【0012】
成分(イ)のプロピレン系重合体成分としては、プロピレン単独重合体成分、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分を例示することができる。好ましくは、プロピレン単独重合体成分、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとの共重合体成分である。
【0013】
成分(ロ)のエチレン−α−オレフィン共重合体成分は、エチレンに基づく単量体単位(エチレン単位)とα−オレフィンに基づく単量体単位(α−オレフィン単位)とを有する共重合体である。該α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンを例示することができる。好ましくは、炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。これらは1種以上用いられる。
【0014】
成分(ロ)のエチレン単位の含有量は、成分(ロ)を100重量%として、20重量%以上であり、成形体の低温衝撃強度の観点から、好ましくは22重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上である。また、エチレン単位の含有量は、80重量%以下であり、成形体の低温衝撃強度の観点から、好ましくは60重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下である。成分(ロ)のα−オレフィン単位の含有量は、成分(ロ)を100重量%として、成形体の低温衝撃強度の観点から、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは78重量%以下であり、更に好ましくは75重量%以下である。また、α−オレフィン単位の含有量は、成形体の低温衝撃強度の観点から、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは40重量%以上であり、更に好ましくは50重量%以上である。エチレン単位およびα−オレフィン単位の含有量は、赤外分光法により求めることができる。
【0015】
成分(ロ)のエチレン−α−オレフィン共重合体成分としては、エチレン−プロピレン共重合体成分、エチレン−1−ブテン共重合体成分、エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、エチレン−1−オクテン共重合体成分、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体成分、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体成分を例示することができる。好ましくは、炭素原子数3〜10のα−オレフィンとエチレンとの共重合体成分である。
【0016】
成分(A)−1における成分(イ)の含有量は70〜90重量%、成分(ロ)の含有量は30〜10重量%であり、成形体の外観および低温衝撃強度の観点から、好ましくは、成分(イ)の含有量は72〜88重量%、成分(ロ)の含有量は28〜12重量%であり、より好ましくは、成分(イ)の含有量は75〜85重量%、成分(ロ)の含有量は25〜15重量%である。但し、成分(A)−1を100重量%とする。
【0017】
成分(A)−1は、得られる成形体の外観、低温衝撃性の観点から、20℃のキシレンに可溶の成分の固有粘度(135℃、テトラリン)[ηcxs]が2〜10であり、さらに、[ηcxs]と20℃のキシレンに不溶の成分の固有粘度(135℃、テトラリン)[ηcxis]との比([ηcxs]/[ηcxis])が2〜10であるものが好ましく、該[ηcxs]/[ηcxis]が4〜8であるものがより好ましい。固有粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて、135℃のテトラリン中で還元粘度を測定し、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法に従って外挿法によって求められる。ここで、20℃のキシレン可溶部(CXS部)と、20℃のキシレン不溶部(CXIS部)とは、次の方法により得ることができる。成分(A)約5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解した後、キシレン溶液を室温まで徐冷し、20℃で4時間以上状態調整し、析出物と溶液とをろ別する。析出物をCXIS部として得、CXS部は、溶液から溶媒を除去して、溶液中に溶解している重合体を回収することにより得ることができる。
【0018】
成分(A)−1の融解温度は、射出成形時における成形体の離型性の観点から、好ましくは155℃以上であり、より好ましくは160℃以上ある。また、該融解温度は、通常175℃以下である。融解温度は、示差走査熱量計により測定される昇温時の示差走査熱量曲線において、ピーク温度が最も大きい吸熱ピークのピーク温度である。示差走査熱量計による示差走査熱量曲線の測定は、次の条件で行い、昇温操作での示差走査熱量曲線から融解温度を求める。
【0019】
<測定条件>
降温操作:220℃で融解させ、次に、220℃から−90℃まで5℃/分の降温速度で降温した。
昇温操作:降温の操作後、直ちに−90℃から200℃まで5℃/分で昇温する。
【0020】
成分(A)−1のメルトフローレート(230℃,21.18N)は、得られる成形体の外観および引張破断伸びの観点から、好ましくは10〜300g/10分であり、より好ましくは20〜200g/10分である。メルトフローレートは、JIS K7210に従って、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
【0021】
成分(A)−1のプロピレン系樹脂の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた多段重合法をあげることができる。該多段重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。また、市販の該当品を用いることも可能である。
【0022】
得られる成形体を変形させた際の耐白化性を高める観点から、成分(A)−1プロピレン系樹脂と共に下記成分(A)−2プロピレン系樹脂を併用することが好ましい。
成分(A)−2:プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜98重量%であるプロピレン系樹脂。
【0023】
成分(A)−2は、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜98重量%であるプロピレン系樹脂であり(但し、成分(A)−2を100重量%とする。)、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が過小であると得られる成形体を変形させた際の耐白化性が不十分となる。
成分(A)−2のプロピレン系樹脂は、プロピレンに基づく単量体単位に加え、他の単量体に基づく単量体単位を有する。該他の単量体としては、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンをあげることができる。該α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテンなどがあげられる。好ましくは、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。これらは1種以上用いられる。
【0024】
成分(A)−2のプロピレン系樹脂の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法をあげることができる。該重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。また、市販の該当品を用いることも可能である。
【0025】
成分(B)のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムは、125℃で測定されるムーニー粘度(ML1+4,125℃)が20〜100であり、好ましくは25〜80である。該ムーニー粘度が過小であると得られるエアバッグカバー成形体の離型性、または機械的強度が劣ることがあり、過大であると熱可塑性エラストマー組成物の溶融流動性が劣ることがある。該ムーニー粘度は、ASTM D−1646に従い測定される。
【0026】
成分(B)のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムのエチレンに基づく単量体単位の含有量は、35重量%以上であり、エアバッグカバー成形体の離型性、または機械的強度の観点から、好ましくは45重量%以上であり、より好ましくは55重量%以上である。また、エチレンに基づく単量体単位の含有量は、低温衝撃性の観点から、75重量%以下であり、好ましくは73重量%以下であり、より好ましくは70重量%以下である。
成分(B)のα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、65重量%以下であり、エアバッグカバー成形体の離型性、または機械的強度の観点から、好ましくは55重量%以下であり、より好ましくは45重量%以下である。また、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、25重量%以上であり、低温衝撃性の観点から、好ましくは27重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上である。
但し、エチレンに基づく単量体単位の含有量とα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量との合計を100重量%とする。エチレンに基づく単量体単位の含有量およびα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、赤外分光法により求めることができる。
【0027】
成分(B)に用いられるα−オレフィンとしては、入手容易性よりプロピレン、または1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが挙げられる。
【0028】
成分(B)に含まれる非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネンのような環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、1,3,7−オクタトリエン、1,4,9−デカトリエンのようなトリエンなどがあげられ、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンが好ましい。
成分(B)のヨウ素価が0.1〜7であり、好ましくは0.1〜5、さらに好ましくは1〜3になるように、成分(B)は非共役ジエンに基づく単量体単位を含有する。成分(B)中における該非共役ジエンの含有量が過少である場合、エアバッグカバー成形体の光沢が高い場合があり、過大である場合、得られるエアバッグカバー成形体の低温衝撃性が低下する場合がある。
【0029】
成分(B)のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムは、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に1種もしくは2種以上用いることができる。2種以上のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを用いる場合のヨウ素価は、熱可塑性エラストマー組成物中の成分(B)の配合量を100としたとき、それぞれのエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムの重量比に応じて算出される。例えば、熱可塑性エラストマー組成物中にヨウ素が0とヨウ素価が10の成分をそれぞれ50重量部配合した場合、該熱可塑性エラストマー組成物に用いられている成分(B)のヨウ素価は5とする。
【0030】
成分(B)のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムの製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等があげられる。また、市販の該当品を用いることも可能である。
【0031】
本発明に用いられる成分(C)は、鉱物油系軟化剤である。鉱物油系軟化剤としては、アロマ系鉱物油(aromatic mineral oil)、ナフテン系鉱物油(naphthenic mineral oil)、パラフィン系鉱物油(paraffinic mineral oil)などがあげられ、好ましくは、パラフィン系鉱物油である。
【0032】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)−1および成分(A)−2の合計量100重量部あたり、成分(B)の含有量が60〜150重量部であり、好ましくは80〜120重量部である。該成分(B)の配合量が過少であるとエアバッグカバー成形体の低温衝撃性が不十分となり、過大であると熱可塑性エラストマー組成物の溶融流動性、エアバッグカバー成形体の剛性が不十分となる。
【0033】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)−1および成分(A)−2の合計量100重量部あたり、成分(C)の含有量が0〜40重量部であり、好ましくは5〜30重量部である。該成分(C)の配合量が過少であると熱可塑性エラストマー組成物の溶融流動性が不十分となる場合があり、過大であるとエアバッグカバー成形体の低温衝撃性や剛性が不十分となる。
【0034】
成分(A)−2を用いる場合、得られる成形体を変形させた際の耐白化性を高める観点、および得られる成形体の外観を高める観点より、成分(A)−2の含有量は、70〜30重量部である(成分(A)−1と成分(A)−2の合計量を100重量部とする)。成分(A)−2の含有量が過小であると得られる成形体を変形させた際の耐白化性が不十分となり、成分(A)−2の含有量が過大であると得られる成形体の外観が低下する。
【0035】
本発明に用いられる架橋剤として、有機過酸化物が好適である。有機過酸化物として、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類、パーオキシジカーボネート類、およびパーオキシエステル類を例示することができる。具体的な有機過酸化物として、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,2,4−トリメチルペンチル−2−ハイドロパ−オキサイド、ジイソプロピルベンゾハイドロパーオキサイド、クメンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、およびp−クロロベンゾイルパーオキサイド;ならびに、これらの2以上の組合せを例示することができる。
【0036】
架橋剤の量は、成分(A)−1、(A)−2、(B)および(C)の合計量を100重量部として、0.01〜0.3重量部であり、好ましくは0.05〜0.25重量部である。該有機過酸化物の配合量が過小であると溶融流動性やエアバッグカバー成形体の外観、機械物性が十分でない場合があり、過大であると得られるエアバッグカバー成形体の低温衝撃性能が低下する場合がある。
【0037】
架橋剤と併せて、架橋助剤を配合することができる。架橋助剤としては、たとえばN,N‘m−フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド、p−キノンジオキシム、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン等のパーオキサイド架橋助剤、又は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性のビニルモノマーがあげられる。
【0038】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)−1と、成分(B)と、成分(C)と、任意成分として成分(A)−2との溶融混練を行った後、架橋剤を添加し動的に熱処理して得ることができる。成分(A)−1と、成分(B)と、成分(C)と、任意成分として成分(A)−2とを予め溶融混練を行い、冷却した後、更に溶融混練を行い、架橋剤を添加してもよいし、成分(A)−1と、成分(B)と、成分(C)と、任意成分として成分(A)−2との溶融混練中に架橋剤を添加してもよい。例えば、押出し機の上流側で成分(A)−1と、成分(B)と、成分(C)と、任意成分として成分(A)−2とを供給し、これらの供給位置よりも下流側で架橋剤を供給することが出来る。
【0039】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)−1と、成分(B)と、成分(C)と、任意成分として成分(A)−2との溶融混練を行った後、架橋剤を添加し動的に熱処理して得られるが、エアバッグカバー成形体の低温衝撃性能、外観を高める観点により、用いられる成分(A)−1および成分(A)−2の合計量を100重量部として、20〜80重量部の成分(A)−1および成分(A)−2を架橋剤の添加後に配合することが好ましい。例えば、押出し機の上流側で用いられる成分(A)−1および成分(A)−2の合計量を100重量部のうち20〜80重量部の成分(A)−1および成分(A)−2と、成分(B)および(C)の全量とを供給し、これらの供給位置よりも下流側で架橋剤を供給し、更に押出し機の下流側で残りの成分(A)−1および成分(A)−2の80〜20重量部を供給することができる。その際、架橋助剤は押出し機の上流側、または架橋剤と同じ位置いずれでも供給することができる。
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、得られる成形体を変形させた際の耐白化性、エアバッグカバー成形体の低温衝撃性能、外観を高める観点から、押出し機の上流側で30〜70重量部の成分(A)−1と、成分(B)および(C)の全量とを供給し、これらの供給位置よりも下流側で架橋剤を供給し、更に押出し機の下流側で70〜30重量部の成分(A)−2を供給して製造することが好ましい(成分(A)−1と成分(A)−2の合計量を100重量部とする。)。
【0041】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、射出成形での生産安定性を高める観点から離型性を付与するために、下記成分(D)を含有することが好ましい。
成分(D):炭素原子数5以上の脂肪酸、炭素原子数5以上の脂肪酸の金属塩、炭素原子数5以上の脂肪酸のアミド、および、炭素原子数5以上の脂肪酸のエステルからなる化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物
【0042】
成分(D)の炭素原子数5以上の脂肪酸としては、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リシノール酸を例示することができる。
【0043】
成分(D)の炭素原子数5以上の脂肪酸の金属塩としては、上記脂肪酸と、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ba、Pbなどの金属との塩を、具体的には、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などを例示することができる。
【0044】
成分(D)の炭素原子数5以上の脂肪酸のアミドとしては、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリルジエタノールアミドを例示することができる。なかでも、エルカ酸アミドが好ましい。
【0045】
成分(D)の炭素原子数5以上の脂肪酸のエステルとしては、脂肪族アルコール(ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、12ヒドロキシステアリルアルコールなど)、芳香族アルコール(ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、フタリルアルコールなど)、多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなど)などのアルコールと、上記脂肪酸とのエステルであり、具体的には、グリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、クエン酸ジステアレートを例示することができる。
【0046】
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じ、無機フィラー(タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン等)、有機フィラー(繊維、木粉、セルロースパウダー等)、滑剤(シリコーンオイル、シリコーンガム等)、酸化防止剤(フェノール系、イオウ系、燐系、ラクトン系、ビタミン系等)、耐候安定剤、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、アニリド系、ベンゾフェノン系等)、熱安定剤、光安定剤(ヒンダードアミン系、ベンゾエート系等)、顔料、造核剤、吸着剤(金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム等)、金属塩化物(塩化鉄、塩化カルシウム等)、ハイドロタルサイト、アルミン酸塩等)等を含有してもよい。
【0047】
成分(D)の含有量としては、射出成形での離型性と、成形品表面の外観とのバランスから、成分(A)−1、(A)−2、(B)および(C)の合計量100重量部あたり、好ましくは0.01〜1.5重量部であり、より好ましくは0.05〜1.0重量部である。
【0048】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A−1と、成分(A)−2と、成分(B)と成分(C)と架橋剤と、必要に応じて他の成分とを、公知の方法、例えば、二軸押出機、バンバリーミキサーなどにより溶融混練することにより得ることができる。
【0049】
上記熱可塑性エラストマー組成物は、公知の成形加工方法、好ましくは射出成形法により、本発明のエアバッグカバー成形体に加工される。
【0050】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグカバーは、運転席用エアバッグカバー、助手席用エアバッグカバー、サイドエアバッグカバー、ニーエアバッグカバー、カーテンエアバッグカバーに用いられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例によって、本発明をより詳細に説明する。
[I] 物性測定方法
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に従い、成分(A)および熱可塑性エラストマー組成物は230℃における2.16kg荷重でのMFRを測定した。
(2)固有粘度([ηcxs],[ηcxis]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用い、テトラリンを溶媒として135℃で測定した。
【0052】
(3)ムーニー粘度
ASTM D−1646に従い測定された。
(4)エチレン単位、プロピレン単位含有量
赤外吸収スペクトル(日本分光製 FT−IR5200型)による方法により求めた。
【0053】
(5)融解温度(単位:℃)
熱流束型示差走査熱量計(TAインストルメント社製 DSC Q100)により、下記測定条件で示差走査熱量曲線の測定を次の条件で行い、昇温操作での示差走査熱
量曲線から融解温度を求めた。
<測定条件>
降温操作:220℃で融解させ、次に、220℃から−90℃まで5℃/分の降温速度
で降温した。
昇温操作:降温の操作後、直ちに−90℃から200℃まで5℃/分で昇温した。
(6)射出成形体の製造方法
東芝機械社製射出成形機EC160NIIにて、サイドゲート平板金型を用い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃の条件で、得られた熱可塑性エラストマー組成物を縦90mm、横150mm、厚み2mmの射出成形体を得た。
(7)曲げ弾性率(FM)
JIS K7171に従い、上記条件で射出成形した厚さ2mmの試験片を用いて、スパン間30mm、曲げ速度1mm/分の条件下で測定した。
(8)低温耐衝撃性(IZOD)
JIS K6911に従い、上記条件で射出成形した試験片を用いて所定の温度で測定した。
NB=破壊されず
B=破壊される
(9)外観(光沢度測定)
上記条件で射出成形した試験片を用い、光沢度計(スガ試験機株式会社製 デジタル変角光沢計UGV−50P)により、入射角、反射角共に60°にて光沢度を測定した。
(10)耐白化性
[物性評価用射出成形体]
熱可塑性エラストマー組成物を、射出成形機(東芝機械社製 商品名EC160NII1
00−EN)により、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、0.5mm厚のティアライン部を有する箱状の成形体に成形した(図1参照)。得られた成形体のティアライン部を折り曲げ白化状態の目視観察を行い、下記の基準で判断を行った。
○・・・明確な白化が認められず
×・・・明確な白化が認められる
【0054】
[II]原料
(1)プロピレン系樹脂(A)−1および(A)−2
(PP−1):住友化学株式会社製 ノーブレンWPX5343
(MFR=60g/10分; 融解温度=163.5℃; [ηcxs]=5.3; [ηcxs]/[ηcxis]=4.5
成分(イ)の含有量=87重量%; 成分(ロ)の含有量=13重量%
成分(イ)のプロピレン単位含有量=100重量%
成分(ロ)のエチレン単位含有量=32重量%
成分(ロ)のプロピレン単位含有量=68重量%
(PP−2):住友化学株式会社社製 ノーブレンZ144CE4
(MFR=27g/10分; 融解温度=141℃; [ηcxs]=0.36; [ηcxs]/[ηcxis]=0.31
成分(イ)の含有量=100重量%; 成分(ロ)の含有量=0重量%
成分(イ)のプロピレン単位含有量=96重量%;
成分(イ)のエチレン単位含有量=4重量%;
【0055】
(2)エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム(B)
(EPDM−1):住友化学株式会社社製 エスプレン512P
エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボネン共重合体; ムーニー粘度(ML1+4,125℃)=60; エチレン単位含有量=69重量%; プロピレン単位含有量=31重量%; ヨウ素価=1.3
(EPDM−2):住友化学株式会社製 エスプレン512F
エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボネン共重合体; ムーニー粘度(ML1+4,125℃)=66; エチレン単位含有量=70重量%; プロピレン単位含有量=30重量%; ヨウ素価=11
【0056】
(3)鉱物油系軟化剤(C)
(オイル)パラフィン系鉱物油(出光興産(株)製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW-100)
【0057】
実施例1
成分(A)−1として(PP−1)100重量部と、成分(B)として(EPDM−1)100重量部、エルカ酸アミド(日本精化製 ニュートロンS)を0.1重量部と、酸化防止剤(住友化学株式会社製 スミライザーGA80)を0.2重量部と(チバスペシャリティ株式会社製 イルガフォス168)0.1重量部、架橋助剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート、精工化学株式会社製 商品名ハイクロスMS50)0.8重量部を配合し、二軸押出し機により、シリンダー温度200℃にて溶融混練を行い、さらに溶融混練中に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(有機過酸化物)をパラフィン系オイルで10%濃度に希釈したもの2.0重量部(有機過酸化物として0.2重量部)を添加して熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0058】
比較例1
有機過酸化物を添加しない以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0059】
比較例2
成分(A)−1として(PP−1)100重量部と、成分(B)として(EPDM−1)400重量部とした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0060】
実施例2
成分(A)−1として(PP−1)100重量部と、成分(B)として(EPDM−1)80重量部、成分(C)として(オイル)20重量部、エルカ酸アミド(日本精化製 ニュートロンS)を0.1重量部と、酸化防止剤(住友化学株式会社製 スミライザーGA80)を0.2重量部と酸化防止剤(チバスペシャリティ株式会社製 イルガフォス168)0.1重量部、架橋助剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート、精工化学株式会社製 商品名ハイクロスMS50)0.8重量部を配合し、二軸押出し機により、シリンダー温度200℃にて溶融混練を行い、さらに溶融混練中に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン(有機過酸化物)をパラフィン系オイルで10%濃度に希釈したもの2.0重量部(有機過酸化物として0.2重量部)を添加して熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0061】
比較例3
架橋剤として有機過酸化物をパラフィン系オイルで10%濃度に希釈したもの5.0重量部(有機過酸化物として0.5重量部)添加した以外は実施例2と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0062】
実施例3
成分(A)−1として(PP−1)100重量部と、成分(B)として(EPDM−1)40重量部、(EPDM−2)40重量部、成分(C)として(オイル)20重量部、エルカ酸アミド(日本精化製 ニュートロンS)を0.1重量部と、酸化防止剤(住友化学株式会社製 スミライザーGA80)を0.2重量部と酸化防止剤(チバスペシャリティ株式会社製 イルガフォス168)0.1重量部、架橋助剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート、精工化学株式会社製 商品名ハイクロスMS50)0.8重量部を配合し、二軸押出し機により、シリンダー温度200℃にて溶融混練を行い、さらに溶融混練中に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン(有機過酸化物)をパラフィン系オイルで10%濃度に希釈したもの2.0重量部(有機過酸化物として0.2重量部)を添加して熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0063】
比較例4
成分(B)として(EPDM−2)を用いた以外は、実施例2と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0064】
比較例5
成分(A)−1として(PP−1)100重量部と、成分(B)として(EPDM−1)25重量部、(EPDM−2)25重量部、成分(C)として(オイル)50重量部、エルカ酸アミド(日本精化製 ニュートロンS)を0.1重量部と、酸化防止剤(住友化学株式会社製 スミライザーGA80)を0.2重量部と酸化防止剤(チバスペシャリティ株式会社製 イルガフォス168)0.1重量部、架橋助剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート、精工化学株式会社製 商品名ハイクロスMS50)0.8重量部を配合し、二軸押出し機により、シリンダー温度200℃にて溶融混練を行い、さらに溶融混練中に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン(有機過酸化物)をパラフィン系オイルで10%濃度に希釈したもの2.0重量部(有機過酸化物として0.2重量部)を添加して熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0065】
比較例6
成分(A)−2として(PP−2)を用いた以外は、実施例2と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0066】
実施例4
成分(A)−1として(PP−1)60重量部と、成分(B)として(EPDM−1)80重量部、成分(C)として(オイル)20重量部、エルカ酸アミド(日本精化製 ニュートロンS)を0.1重量部と、酸化防止剤(住友化学株式会社製 スミライザーGA80)を0.2重量部と酸化防止剤(チバスペシャリティ株式会社製 イルガフォス168)0.1重量部、架橋助剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート、精工化学株式会社製 商品名ハイクロスMS50)0.8重量部を配合し、二軸押出し機により、シリンダー温度200℃にて溶融混練を行い、さらに溶融混練中に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン(有機過酸化物)をパラフィン系オイルで10%濃度に希釈したもの2.0重量部(有機過酸化物として0.2重量部)を添加し、さらに有機過酸化物の添加位置よりも二軸押出し機の下流側で成分成分(A)−1として((PP−1)40重量部を添加して熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0067】
実施例5
成分(A)−1として(PP−1)80重量部と、成分(B)として(EPDM−1)80重量部、成分(C)として(オイル)20重量部、エルカ酸アミド(日本精化製 ニュートロンS)を0.1重量部と、酸化防止剤(住友化学株式会社製 スミライザーGA80)を0.2重量部と酸化防止剤(チバスペシャリティ株式会社製 イルガフォス168)0.1重量部、架橋助剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート、精工化学株式会社製 商品名ハイクロスMS50)0.8重量部を配合し、二軸押出し機により、シリンダー温度200℃にて溶融混練を行い、さらに溶融混練中に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン(有機過酸化物)をパラフィン系オイルで10%濃度に希釈したもの2.0重量部(有機過酸化物として0.2重量部)を添加し、さらに有機過酸化物の添加位置よりも二軸押出し機の下流側で成分成分(A)−2として((PP−2)20重量部を添加して熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0068】
実施例6
成分(A)−1として(PP−1)60重量部と、成分(B)として(EPDM−1)80重量部、成分(C)として(オイル)20重量部、エルカ酸アミド(日本精化製 ニュートロンS)を0.1重量部と、酸化防止剤(住友化学株式会社製 スミライザーGA80)を0.2重量部と酸化防止剤(チバスペシャリティ株式会社製 イルガフォス168)0.1重量部、架橋助剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート、精工化学株式会社製 商品名ハイクロスMS50)0.8重量部を配合し、二軸押出し機により、シリンダー温度200℃にて溶融混練を行い、さらに溶融混練中に2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン(有機過酸化物)をパラフィン系オイルで10%濃度に希釈したもの2.0重量部(有機過酸化物として0.2重量部)を添加し、さらに有機過酸化物の添加位置よりも二軸押出し機の下流側で成分成分(A)−2として((PP−2)40重量部を添加して熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物の物性測定結果を表1に示す。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)−1、(B)および(C)を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるエアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物であって、成分(A)−1の100重量部あたり、成分(B)の含有量が60〜150重量部であり、成分(C)の含有量が0〜40重量部であり、成分(A)−1、(B)および(C)の合計量100重量部に対し、架橋剤の添加量が0.01〜0.3重量部である前記エアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A)−1:下記成分(イ)および(ロ)を含有し、成分(イ)の含有量が70〜90重量%、成分(ロ)の含有量が30〜10重量%であり(但し、成分(A)−1を100重量%とする。)、示差走査熱量計により測定される融解温度が155℃以上であるプロピレン系樹脂
成分(イ):プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜100重量%(但し、成分(イ)を100重量%とする。)であるプロピレン系重合体成分
成分(ロ):エチレンに基づく単量体単位の含有量が20〜80重量%であり、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が80〜20重量%である(但し、成分(ロ)を100重量%とする。)であるエチレン−α−オレフィン共重合体成分
成分(B):エチレンに基づく単量体単位の含有量が35〜75重量%、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が65〜25重量%であり(但し、エチレンに基づく単量体単位の含有量とα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量との合計を100重量%とする。)、ヨウ素価が0.1〜7であり、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)が20〜100であるエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム
成分(C):鉱物油系軟化剤
【請求項2】
成分(A)−1、成分(A)−2、(B)および(C)を、架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られるエアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物であって、成分(A)−1および成分(A)−2の合計量100重量部あたり、成分(B)の含有量が60〜150重量部であり、成分(C)の含有量が0〜40重量部であり、成分(A)−1、(A)−2、(B)および(C)の合計量100重量部に対し、架橋剤の添加量が0.01〜0.3重量部である前記エアバッグカバー用熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A)−1:下記成分(イ)および(ロ)を含有し、成分(イ)の含有量が70〜90重量%、成分(ロ)の含有量が30〜10重量%であり(但し、成分(A)−1を100重量%とする。)、示差走査熱量計により測定される融解温度が155℃以上であるプロピレン系樹脂
成分(イ):プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜100重量%(但し、成分(イ)を100重量%とする。)であるプロピレン系重合体成分
成分(ロ):エチレンに基づく単量体単位の含有量が20〜80重量%であり、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が80〜20重量%である(但し、成分(ロ)を100重量%とする。)であるエチレン−α−オレフィン共重合体成分
成分(A)−2:プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90〜98重量%であるプロピレン系樹脂(但し、成分(A)−2を100重量%とする。)
成分(B):エチレンに基づく単量体単位の含有量が35〜75重量%、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が65〜25重量%であり(但し、エチレンに基づく単量体単位の含有量とα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量との合計を100重量%とする。)、ヨウ素価が0.1〜7であり、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)が20〜100であるエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム
成分(C):鉱物油系軟化剤
【請求項3】
成分(A)−1が下記の要件を充足する請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
要件:20℃のキシレンに可溶の成分の固有粘度(135℃、テトラリン)[ηcxs]が2〜10であり、さらに、[ηcxs]と20℃のキシレンに不溶の成分の固有粘度(135℃、テトラリン)[ηcxis]との比([ηcxs]/[ηcxis])が2〜10である
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られるエアバッグカバー。
【請求項5】
成分(A)−1、成分(B)および成分(C)を溶融混練した後、架橋剤を添加し動的に熱処理して得られる請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項6】
成分(A)−1、成分(A)−2、成分(B)および成分(C)を溶融混練した後、架橋剤を添加し動的に熱処理して得られる請求項2に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項7】
用いられる成分(A)−1を100重量部として、20〜80重量部の成分(A)−1と、成分(B)および成分(C)の全量とを押出し機の上流側に供給し、これらの供給位置よりも下流側で架橋剤を供給し、押出し機の更に下流側で、残りの成分(A)−1の80〜20重量部を供給して動的に熱処理することを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性エラストマーの製造方法。
【請求項8】
用いられる成分(A)−1および成分(A)−2の合計量を100重量部として、20〜80重量部の成分(A)−1および成分(A)−2と、成分(B)および成分(C)の全量とを押出し機の上流側に供給し、これらの供給位置よりも下流側で架橋剤を供給し、押出し機の更に下流側で、残りの成分(A)−1および成分(A)−2の80〜20重量部を供給して動的に熱処理することを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性エラストマーの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−224837(P2012−224837A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−35876(P2012−35876)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】