エアバッグ装置
【課題】膨張完了時のエアバッグが、歩行者受止時の車外側方向への横ずれを抑制して、フロントピラーの前面を的確に覆い可能なエアバッグ装置の提供。
【解決手段】エアバッグ装置M1は、車両Vのフロントピラー1の前面1a側を覆い可能なエアバッグ35を備える。エアバッグ35は、膨張本体部36と支持膨張部37とを備える。膨張本体部36は、エアバッグ35の膨張完了時に、フロントピラー1の前面1aを覆う。支持膨張部37は、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なるとともに、膨張本体部36を支持可能に、エアバッグ35の膨張完了時に、ドアミラー21における使用位置UPのミラー本体23の上面23cに対し、下面37c側を当接支持させるように配設される。
【解決手段】エアバッグ装置M1は、車両Vのフロントピラー1の前面1a側を覆い可能なエアバッグ35を備える。エアバッグ35は、膨張本体部36と支持膨張部37とを備える。膨張本体部36は、エアバッグ35の膨張完了時に、フロントピラー1の前面1aを覆う。支持膨張部37は、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なるとともに、膨張本体部36を支持可能に、エアバッグ35の膨張完了時に、ドアミラー21における使用位置UPのミラー本体23の上面23cに対し、下面37c側を当接支持させるように配設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントピラーの前面側を覆い可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の歩行者との衝突時に、歩行者が車両のフロントピラーに直接当たらないように、フロントピラーの前面側を覆うように、エアバッグを膨張させて配置させる種々のエアバッグ装置がある。
【0003】
その内の一つのエアバッグ装置では、折り畳まれたエアバッグが、フロントピラーの前面側の凹溝内に、樹脂製ガーニッシュに覆われて収納されていた。そして、フロントピラー内に搭載されたインフレーターが作動して、インフレーターから膨張用ガスが供給されれば、エアバッグが、樹脂製ガーニッシュを押し開いて、フロントピラーの前面側を覆うように、展開膨張していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他のエアバッグ装置では、フードパネルの後端の下方におけるカウルに、折り畳んだエアバッグを収納し、作動時、フードパネルの後端とカウルとの隙間から、エアバッグを突出させて、フロントピラーの前面側に、膨張したエアバッグを配置させるものもあった(例えば、特許文献2,3参照)。
【特許文献1】特開平7−108903号公報
【特許文献2】特開2002−36986号公報
【特許文献3】特開2008−22210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時における歩行者受け止め時の車外側方向への横ずれ防止に関し、改善の余地があった。
【0006】
すなわち、特許文献1のエアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグを横ずれを抑制して支持する構造の開示乃至示唆が無く、特許文献2に記載のエアバッグ装置では、エアバッグの横揺れ防止を図っている手段が、エアバッグを収納していたフードパネルの下方側に配置されたステイであって、エアバッグの下端側に配置されており、エアバッグの上端側との距離が大きく離れて、エアバッグの上端側の車外側方向への横ずれを的確に防止できず、全体の横ずれを的確に抑制する点に関し、改善の余地があった。
【0007】
さらに、特許文献3に記載のエアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグが、フロントピラーとサイドウインドとを覆い可能に断面を屈曲させているものの、車外側方向への横ずれ防止対策に関しては、何ら講じられていなかった。
【0008】
なお、エアバッグが、フロントピラーの前面側から車外側にずれれば、サイドウインド側に落ちて、エアバッグで覆う必要のあったフロントピラーの前面側を、大きく露出させてしまう。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張完了時のエアバッグが、歩行者の受け止め時の車外側方向への横ずれを抑制して、フロントピラーの前面を的確に覆い可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るエアバッグ装置は、車両のフロントピラーの前面側を覆い可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置であって、
車両が、フロントピラーの後側に隣接して配設されて、フロントピラーの後方に位置するサイドウインドを有し、かつ、サイドウインドの前側の下隅付近に位置するドアミラーを有したフロントドアを備え、
ドアミラーが、フロントドアに取り付けられる取付ベースと、先端をサイドウインドに接近させた収納位置と先端を車外側に突出させた使用位置とに配置可能に、元部側を取付ベースに回動可能に支持させて、配設されるミラー本体と、を備えて構成され、
エアバッグが、
フロントピラーの下方におけるドアミラーの前側付近に、折り畳まれて収納されるとともに、
膨張完了時に、フロントピラーの前面を覆う膨張本体部と、
膨張本体部から車外側に延びるように膨張本体部に連なるとともに、膨張本体部を支持可能に、使用位置のミラー本体の上面に対し、下面側を当接支持させるように配設される支持膨張部と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るエアバッグ装置では、作動時、フロントピラーの下方におけるドアミラーの前側付近に折り畳まれて収納されていたエアバッグが、展開膨張して、フロントピラーの前面を覆うこととなる。その際、エアバッグでは、膨張本体部が、フロントピラーの前面を覆い、膨張本体部から車外側に延びるように膨張本体部に連なって配設された支持膨張部が、ミラー本体の上面に当接支持されることとなる。この時、ミラー本体は、車両が走行中であって使用位置にあり、先端を車外側に延ばしていることから、支持膨張部の下面に当接させて支持膨張部を支持する上面が、車外側に長く延びており、支持膨張部に作用する車外側方向への押圧力に対し、車外側に広く延びるエリアによって、十分な反力を確保して対抗することができる。そのため、例えば、歩行者が、膨張本体部に対して、フロントガラス側から車外側に押すように干渉しても、支持膨張部が、ミラー本体における車外側に長く延びた上面に支持されて、移動せず、膨張本体部を支持して、膨張本体部の車外側への移動を、的確に抑制できることとなる。
【0012】
さらに付言すると、この支持膨張部は、ミラー本体の車外側に延びる上面で支持される下面を備えて、エアバッグの収納部位であるフロントピラーの下方におけるドアミラーの前側付近から離れた部位に、すなわち、膨張本体部の下端(前端)から離れた上方側部位(先端側部位)に、配設されることとなって、膨張本体部は、車外側方向への横ずれを、膨張本体部の下端近傍でなく、膨張本体部の下端から離れた先端側(後端側)で、換言すれば、ずれ移動に対抗し易い膨張本体部の下端から離れた部位、すなわち、支持膨張部のミラー本体の上面に支持される部位により、的確に抑えることができる。
【0013】
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグが、歩行者の受け止め時の車外側方向への横ずれを抑制して、フロントピラーの前面を的確に覆うことができ、歩行者をフロントピラーから好適に保護することができる。
【0014】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、エアバッグは、ドアミラーの前側付近のフロントドアに、折り畳んで収納してもよいし、ドアミラーの前側付近におけるフロントドアの前方に位置する車両のボディの部位に、折り畳んで収納してもよい。ちなみに、エアバッグをフロントドアに収納する場合には、収納スペースを確保し易いドアミラーの取付ベースのエリアに収納することが望ましい。また、エアバッグを車両のボディの部位に収納する場合には、限られた容積のフロンドドア内に収納する場合に比べて、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターの配置自由度が高くなって、容易に、インフレーターを安定して配設固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、図1〜4に示すように、車両Vの左右のフロントピラー1の後側に隣接して配設される各フロントドア13に搭載されている。そして、左右の各フロントピラー1は、鋼板等からなるアウタパネル2、インナパネル3、及び、アウタパネル2とインナパネル3との間に配置されるリインホースメント4を備えて構成されており、車両Vの構造体としての高い剛性を具備して、配設されている(図4参照)。なお、図1の符号6で示す部材は、窓枠ゴムであり、符号7で示す部材は、フロントガラスであり、図1の符号8で示す部材は、フードパネル、図1の符号9で示す部材は、フロントバンパである。
【0016】
なお、本明細書の前後・上下・左右の方向は、車両Vの直進時における車両Vの前後・上下・左右の各方向に対応するものである。
【0017】
また、各実施形態では、車両Vの左側のフロントピラー1の前面1a側を覆うエアバッグを備えたエアバッグ装置について説明するが、右側のフロントピラー1の前面1a側を覆うエアバッグを備えた各エアバッグ装置は、左側の各エアバッグ装置と左右対称形としているだけであり、右側のフロントピラー1側の各エアバッグ装置に関しては、説明を省略する。
【0018】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1が搭載されるフロントドア13は、フロントピラー1の後方に位置するサイドウインド14を備えて構成され、フロントドア13におけるベルトライン(サイドウインド14の下縁)16のフロントピラー1近傍の部位に、エアバッグ35を、展開膨張可能に収納保持して、配設させている。換言すれば、エアバッグ35は、フロントドア13のサイドウインド14を構成するドアガラス15の周囲の窓枠部17の下縁部17aの前端17b付近に配置され、ドアミラー21の取付ベース22付近(詳しくは、取付ベース22におけるミラー本体23を回動可能に支持する軸支部位22aの前方側)の取付エリア25に、配設されている(図4参照)。
【0019】
ドアミラー21は、フロントドア13の窓枠部17における下縁部17aの前端17b付近に取り付けられる取付ベース22と、取付ベース22の上面側に回動可能に取り付けられるミラー本体23と、を備えて構成されている。ミラー本体23は、元部23b側から延びる先端23a側をサイドウインド14に接近させた収納位置HPと、元部23b側から延びる先端23aを車外側Oに突出させた使用位置UPとに配置可能に、元部23b側を取付ベース22の軸支部位22aに回動可能に支持させて、配設されている。ミラー本体23は、使用位置UPに配置された際には、上面23cを車外側Oに長く延ばす状態となり、サイドウインド14と内側面23dとの間に、正面視で三角状の隙間Hを開けることとなる(図6参照)。
【0020】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、可撓性を有した袋状のエアバッグ35と、エアバッグ35に膨張用ガスを供給するインフレーター31と、折り畳んだエアバッグ35を突出可能に覆うエアバッグカバー28と、リテーナ32と、を備えて構成されている。
【0021】
エアバッグカバー28は、エアバッグ35の膨張時に押されて車外側Oに開く扉部29を備え、扉部29の周囲には、エアバッグ35の押圧力により破断して、扉部29を開かせるための薄肉の破断予定部28aが形成されている(図4参照)。この扉部29は、下縁29b側を、フロントドア13の板金製のパネル部19における取付エリア25の部位に、連結支持させており、開き時、上縁29a側を車外側Oの下方側に回転させるように、開くこととなる。なお、パネル部19は、フロントドア13のアウタパネル18から連なるように、配設されている。
【0022】
インフレーター31は、図4に示すように、膨張用ガスを吐出する複数のガス吐出口31bを有した円柱状の本体31aと、フロントドア13のパネル部19の取付エリア25に取付固定されるフランジ部31cと、を備えて構成されている。フランジ部31cには、リテーナ32から延びる複数のボルト32aを貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。そして、このインフレーター31は、所定のエアバッグ作動回路からの作動信号を入力させて、膨張用ガスをガス吐出口31bから吐出させて、エアバッグ35に供給することとなる。なお、エアバッグ作動回路は、車両Vのフロントバンパ9に配置されて歩行者との衝突を検知可能なセンサSE(図1参照)からの信号を入力した際、インフレーター31を作動させることとなる。
【0023】
リテーナ32は、略四角環状の板金製として、四隅付近に、車内側Iに延びるボルト32aを備えている。リテーナ32は、各ボルト32aを、エアバッグ35の取付孔39、取付エリア25の図示しない貫通孔、及び、インフレーター31のフランジ部31cの図示しない貫通孔、を貫通させて、各ボルト32aに締結することにより、エアバッグ35とインフレーター31と取付エリア25に取付固定している。
【0024】
エアバッグ35は、図1,5,6に示すように、ポリエステルやポリアミド等の織布から袋状に形成されて、膨張完了時に、フロントピラー1の前面1aを覆う膨張本体部36と、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なる支持膨張部37と、を備えて構成されている。膨張本体部36の下端36b側の車内側Iには、インフレーター31の本体31aを挿入可能な円形の開口38が形成されるとともに、開口38の周囲には、リテーナ32の各ボルト32aを挿通可能な取付孔39が形成されている。
【0025】
支持膨張部37は、車両Vへの搭載状態で膨張を完了させた際、膨張本体部36の上端36a側における車外側Oの下縁36ab付近から車外側Oに延びるように、配設されている。膨張完了時の支持膨張部37は、膨張本体部36を支持可能に、使用位置UPのミラー本体23の上面23cに対し、下面37cを当接支持させるように配設されている。さらに詳しく述べれば、支持膨張部37は、膨張本体部36に近い側の車内側Iの内側部37aと、車外側Oの外側部37bと、を備えて、ミラー本体23の上面23cに当接支持される部位を、外側部37bとし、内側部37aを、サイドウインド14のドアガラス15とミラー本体23との間の隙間Hに嵌合させるように、設定されている。
【0026】
そして、この第1実施形態のエアバッグ装置M1では、車両Vに搭載された後、エアバッグ作動回路からの信号によって、インフレーター31が作動されれば、インフレーター31のガス吐出口31bから膨張用ガスが吐出され、エアバッグ35が、膨張用ガスによって膨張し、図1,6に示すように、エアバッグカバー28の扉部29を押し開いて、収納部位26側のフロントピラー1の下端1b側から上端1c側に向かいつつ展開膨張し、フロントピラー1の前面1aを覆うこととなる。その際、エアバッグ35は、膨張本体部36が、フロントピラー1の前面1aを覆い、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なって配設された支持膨張部37が、ミラー本体23の上面23cに当接支持されることとなる。この時、ミラー本体23は、車両Vが走行中であって使用位置UPにあり、先端23aを車外側Oに延ばしていることから、支持膨張部37の下面37cに当接させて支持膨張部37を支持する上面23cが、車外側Oに長く延びており、支持膨張部37に作用する車外側O方向への押圧力Fに対し、車外側Oに広く延びるエリアによって、十分な反力を確保して対抗することができる。そのため、例えば、歩行者Wが、膨張本体部36に対して、フロントガラス7側から車外側Oに押すように干渉しても、支持膨張部37が、ミラー本体23における車外側Oに長く延びた上面23cに支持されて、移動せず、膨張本体部36を支持して、膨張本体部36の車外側Oへの移動を、的確に抑制できることとなる。
【0027】
さらに付言すると、この支持膨張部37は、ミラー本体23の車外側Oに延びる上面23cで支持される下面37cを備えて、エアバッグ35の収納部位26であるフロントピラー1の下方におけるドアミラー21の前側付近の取付エリア25から離れた部位に、すなわち、膨張本体部36の下端(前端)36bから離れた上方側部位(先端側部位)の上端36a側に、配設されることとなって、膨張本体部36は、車外側O方向への横ずれを、膨張本体部36の下端36b近傍でなく、膨張本体部36の下端36bから離れた先端(上端若しくは後端)36a側で、換言すれば、ずれ移動に対抗し易い膨張本体部36の下端36bから離れた部位、すなわち、支持膨張部37のミラー本体23の上面23cに支持される部位(下面)37cにより、的確に抑えることができる。
【0028】
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、膨張完了時のエアバッグ35が、歩行者Wの受け止め時の車外側O方向への横ずれを抑制して、フロントピラー1の前面1aを的確に覆うことができ、歩行者Wをフロントピラー1から好適に保護することができる。
【0029】
さらに、第1実施形態では、膨張完了時の支持膨張部37が、内側部37aを、サイドウインド14のドアガラス15とミラー本体23の内側面23dとの間の隙間Hに、上方から嵌め込むように、設定されており(図6参照)、水平方向に沿うような車外側O方向や車内側I方向に、膨張本体部36が横ずれしようとしても、内側部37aが、ミラー本体23の内側面23dやドアガラス15に位置規制されて、移動を抑制される。そのため、車外側Oや車内側Iへの膨張本体部36の横ずれが、一層、的確に防止できることとなる。
【0030】
なお、第1実施形態では、エアバッグ35が、ドアミラー21の前側付近のフロントドア13の収納部位26に、折り畳んで収納されているが、図7〜12に示す第2実施形態のエアバッグ装置M2のように、エアバッグ35Aは、ドアミラー21の前側付近におけるフロントドア13Aの前方に位置して、フロントドア13Aと別体とした車両VのボディBDの部位に、折り畳んで収納してもよい。
【0031】
この第2実施形態のエアバッグ装置M2では、エアバッグ35Aやインフレーター31の収納部位26Aが、フロントドア13Aの窓枠部17の前方側におけるフロントピラー1の下部付近の車外側Oのパネル部19Aに、配設されている。このパネル部19Aは、フロントピラー1のアウタパネル2から連なるように配設されて、窓枠部17の前方側におけるパネル部19Aの部位をエアバッグ装置M2の取付エリア25Aとしている。
【0032】
第2実施形態のエアバッグ装置M2は、可撓性を有した袋状のエアバッグ35Aと、エアバッグ35Aに膨張用ガスを供給するインフレーター31と、折り畳んだエアバッグ35を突出可能に覆うエアバッグカバー28Aと、リテーナ32と、を備えて構成されている。なお、インフレーター31とリテーナ32とは、第1実施形態と同じものであり、説明を省略する。
【0033】
エアバッグカバー28Aは、エアバッグ35Aの膨張時に押されて、全体を扉部29Aとして、車外側Oに開かせる構成であって、下縁29b側を、パネル部19Aの取付エリア25Aの部位に、連結支持させて、開き時、上縁29a側を車外側Oの下方側に回転させるように、開くこととなる。
【0034】
第2実施形態のエアバッグ35Aは、第1実施形態のエアバッグ35と略同様としているが、収納部位26Aを、ベルトライン16の上方側としていることから、第1実施形態のエアバッグ35と相違して、インフレーター31の本体31aを挿入させる開口38とその周囲のリテーナ32の各ボルト32aを挿通させる取付孔39とを、前端側の下方側にずらして配設している点が、相違している(図11参照)。エアバッグ35Aの他の構成は、第1実施形態のエアバッグ35と同様であり、図1,11,12に示すように、フロントピラー1の前面1aを覆う膨張本体部36と、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なる支持膨張部37と、を備えて構成されている。そして、支持膨張部37も、第1実施形態と同様に、車両Vへの搭載状態で膨張を完了させた際、膨張本体部36の上端36a側における車外側Oの下縁36ab付近から車外側Oに延びるように、配設され、膨張本体部36を支持可能に、使用位置UPのミラー本体23の上面23cに対し、下面37cを当接支持させるように配設されている。さらに、この支持膨張部37も、膨張本体部36に近い側の車内側Iの内側部37aと、車外側Oの外側部37bと、を備えて、ミラー本体23の上面23cに当接支持される部位を、外側部37bとし、内側部37aを、サイドウインド14のドアガラス15とミラー本体23との間の隙間Hに嵌合させるように、設定されている。
【0035】
そして、この第2実施形態のエアバッグ装置M2でも、車両Vに搭載された後、エアバッグ作動回路からの信号によって、インフレーター31が作動されれば、インフレーター31のガス吐出口31bから膨張用ガスが吐出され、図1,11,12に示すように、エアバッグ35Aが、膨張用ガスによって膨張し、エアバッグカバー28A(扉部29A)を押し開いて、収納部位26A側のフロントピラー1の下端1b側から上端1c側に向かいつつ展開膨張し、膨張本体部36が、フロントピラー1の前面1aを覆い、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なって配設された支持膨張部37が、ミラー本体23の上面23cに当接支持されることとなって、第1実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0036】
なお、第2実施形態の場合には、エアバッグ35Aが車両VのボディBDの部位に収納されており、エアバッグ35に膨張用ガスを供給するインフレーター31の配置自由度が高く、容易に、インフレーター31を安定して配設固定することができる。
【0037】
ちなみに、第1実施形態では、エアバッグ35をフロントドア13に収納しているが、エアバッグ装置M1の取付エリア25が、ドアミラー21の取付ベース22のエリア(詳しくは、取付ベース22の軸支部位22aの前方側)としており、この部位は、エアバッグ装置M1の収納スペースを確保し易いエリアであって、フロントドア13の他の搭載部品の搭載スペースに影響を与えることなく、円滑に、エアバッグ装置M1を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の斜視図であり、膨張完了状態のエアバッグを二点鎖線で示す。
【図2】第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の側面図である。
【図3】第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の平面図である。
【図4】第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す概略横断面図である。
【図5】第1実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグの単体での膨張完了状態を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時における膨張したエアバッグのドアミラー付近での左右方向に沿った概略縦断面図である。
【図7】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の斜視図であり、膨張完了状態のエアバッグを二点鎖線で示す。
【図8】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の側面図である。
【図9】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の平面図である。
【図10】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す概略横断面図である。
【図11】第2実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグの単体での膨
【図12】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時における膨張したエアバッグのドアミラー付近での左右方向に沿った概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…フロントピラー、
1a…(フロントピラーの)前面、
13,13A…フロントドア、
14…サイドウインド、
21…ドアミラー、
22…取付ベース、
23…ミラー本体、
23a…(ミラー本体の)先端、
23b…(ミラー本体の)元部、
23c…(ミラー本体の)上面、
25,25A…取付エリア、
26,26A…収納部位、
35,35A…エアバッグ、
36…膨張本体部、
37…支持膨張部、
37c…下面、
V…車両、
M1,M2…エアバッグ装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントピラーの前面側を覆い可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の歩行者との衝突時に、歩行者が車両のフロントピラーに直接当たらないように、フロントピラーの前面側を覆うように、エアバッグを膨張させて配置させる種々のエアバッグ装置がある。
【0003】
その内の一つのエアバッグ装置では、折り畳まれたエアバッグが、フロントピラーの前面側の凹溝内に、樹脂製ガーニッシュに覆われて収納されていた。そして、フロントピラー内に搭載されたインフレーターが作動して、インフレーターから膨張用ガスが供給されれば、エアバッグが、樹脂製ガーニッシュを押し開いて、フロントピラーの前面側を覆うように、展開膨張していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他のエアバッグ装置では、フードパネルの後端の下方におけるカウルに、折り畳んだエアバッグを収納し、作動時、フードパネルの後端とカウルとの隙間から、エアバッグを突出させて、フロントピラーの前面側に、膨張したエアバッグを配置させるものもあった(例えば、特許文献2,3参照)。
【特許文献1】特開平7−108903号公報
【特許文献2】特開2002−36986号公報
【特許文献3】特開2008−22210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のエアバッグ装置では、エアバッグの膨張完了時における歩行者受け止め時の車外側方向への横ずれ防止に関し、改善の余地があった。
【0006】
すなわち、特許文献1のエアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグを横ずれを抑制して支持する構造の開示乃至示唆が無く、特許文献2に記載のエアバッグ装置では、エアバッグの横揺れ防止を図っている手段が、エアバッグを収納していたフードパネルの下方側に配置されたステイであって、エアバッグの下端側に配置されており、エアバッグの上端側との距離が大きく離れて、エアバッグの上端側の車外側方向への横ずれを的確に防止できず、全体の横ずれを的確に抑制する点に関し、改善の余地があった。
【0007】
さらに、特許文献3に記載のエアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグが、フロントピラーとサイドウインドとを覆い可能に断面を屈曲させているものの、車外側方向への横ずれ防止対策に関しては、何ら講じられていなかった。
【0008】
なお、エアバッグが、フロントピラーの前面側から車外側にずれれば、サイドウインド側に落ちて、エアバッグで覆う必要のあったフロントピラーの前面側を、大きく露出させてしまう。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張完了時のエアバッグが、歩行者の受け止め時の車外側方向への横ずれを抑制して、フロントピラーの前面を的確に覆い可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るエアバッグ装置は、車両のフロントピラーの前面側を覆い可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置であって、
車両が、フロントピラーの後側に隣接して配設されて、フロントピラーの後方に位置するサイドウインドを有し、かつ、サイドウインドの前側の下隅付近に位置するドアミラーを有したフロントドアを備え、
ドアミラーが、フロントドアに取り付けられる取付ベースと、先端をサイドウインドに接近させた収納位置と先端を車外側に突出させた使用位置とに配置可能に、元部側を取付ベースに回動可能に支持させて、配設されるミラー本体と、を備えて構成され、
エアバッグが、
フロントピラーの下方におけるドアミラーの前側付近に、折り畳まれて収納されるとともに、
膨張完了時に、フロントピラーの前面を覆う膨張本体部と、
膨張本体部から車外側に延びるように膨張本体部に連なるとともに、膨張本体部を支持可能に、使用位置のミラー本体の上面に対し、下面側を当接支持させるように配設される支持膨張部と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るエアバッグ装置では、作動時、フロントピラーの下方におけるドアミラーの前側付近に折り畳まれて収納されていたエアバッグが、展開膨張して、フロントピラーの前面を覆うこととなる。その際、エアバッグでは、膨張本体部が、フロントピラーの前面を覆い、膨張本体部から車外側に延びるように膨張本体部に連なって配設された支持膨張部が、ミラー本体の上面に当接支持されることとなる。この時、ミラー本体は、車両が走行中であって使用位置にあり、先端を車外側に延ばしていることから、支持膨張部の下面に当接させて支持膨張部を支持する上面が、車外側に長く延びており、支持膨張部に作用する車外側方向への押圧力に対し、車外側に広く延びるエリアによって、十分な反力を確保して対抗することができる。そのため、例えば、歩行者が、膨張本体部に対して、フロントガラス側から車外側に押すように干渉しても、支持膨張部が、ミラー本体における車外側に長く延びた上面に支持されて、移動せず、膨張本体部を支持して、膨張本体部の車外側への移動を、的確に抑制できることとなる。
【0012】
さらに付言すると、この支持膨張部は、ミラー本体の車外側に延びる上面で支持される下面を備えて、エアバッグの収納部位であるフロントピラーの下方におけるドアミラーの前側付近から離れた部位に、すなわち、膨張本体部の下端(前端)から離れた上方側部位(先端側部位)に、配設されることとなって、膨張本体部は、車外側方向への横ずれを、膨張本体部の下端近傍でなく、膨張本体部の下端から離れた先端側(後端側)で、換言すれば、ずれ移動に対抗し易い膨張本体部の下端から離れた部位、すなわち、支持膨張部のミラー本体の上面に支持される部位により、的確に抑えることができる。
【0013】
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグが、歩行者の受け止め時の車外側方向への横ずれを抑制して、フロントピラーの前面を的確に覆うことができ、歩行者をフロントピラーから好適に保護することができる。
【0014】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、エアバッグは、ドアミラーの前側付近のフロントドアに、折り畳んで収納してもよいし、ドアミラーの前側付近におけるフロントドアの前方に位置する車両のボディの部位に、折り畳んで収納してもよい。ちなみに、エアバッグをフロントドアに収納する場合には、収納スペースを確保し易いドアミラーの取付ベースのエリアに収納することが望ましい。また、エアバッグを車両のボディの部位に収納する場合には、限られた容積のフロンドドア内に収納する場合に比べて、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターの配置自由度が高くなって、容易に、インフレーターを安定して配設固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、図1〜4に示すように、車両Vの左右のフロントピラー1の後側に隣接して配設される各フロントドア13に搭載されている。そして、左右の各フロントピラー1は、鋼板等からなるアウタパネル2、インナパネル3、及び、アウタパネル2とインナパネル3との間に配置されるリインホースメント4を備えて構成されており、車両Vの構造体としての高い剛性を具備して、配設されている(図4参照)。なお、図1の符号6で示す部材は、窓枠ゴムであり、符号7で示す部材は、フロントガラスであり、図1の符号8で示す部材は、フードパネル、図1の符号9で示す部材は、フロントバンパである。
【0016】
なお、本明細書の前後・上下・左右の方向は、車両Vの直進時における車両Vの前後・上下・左右の各方向に対応するものである。
【0017】
また、各実施形態では、車両Vの左側のフロントピラー1の前面1a側を覆うエアバッグを備えたエアバッグ装置について説明するが、右側のフロントピラー1の前面1a側を覆うエアバッグを備えた各エアバッグ装置は、左側の各エアバッグ装置と左右対称形としているだけであり、右側のフロントピラー1側の各エアバッグ装置に関しては、説明を省略する。
【0018】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1が搭載されるフロントドア13は、フロントピラー1の後方に位置するサイドウインド14を備えて構成され、フロントドア13におけるベルトライン(サイドウインド14の下縁)16のフロントピラー1近傍の部位に、エアバッグ35を、展開膨張可能に収納保持して、配設させている。換言すれば、エアバッグ35は、フロントドア13のサイドウインド14を構成するドアガラス15の周囲の窓枠部17の下縁部17aの前端17b付近に配置され、ドアミラー21の取付ベース22付近(詳しくは、取付ベース22におけるミラー本体23を回動可能に支持する軸支部位22aの前方側)の取付エリア25に、配設されている(図4参照)。
【0019】
ドアミラー21は、フロントドア13の窓枠部17における下縁部17aの前端17b付近に取り付けられる取付ベース22と、取付ベース22の上面側に回動可能に取り付けられるミラー本体23と、を備えて構成されている。ミラー本体23は、元部23b側から延びる先端23a側をサイドウインド14に接近させた収納位置HPと、元部23b側から延びる先端23aを車外側Oに突出させた使用位置UPとに配置可能に、元部23b側を取付ベース22の軸支部位22aに回動可能に支持させて、配設されている。ミラー本体23は、使用位置UPに配置された際には、上面23cを車外側Oに長く延ばす状態となり、サイドウインド14と内側面23dとの間に、正面視で三角状の隙間Hを開けることとなる(図6参照)。
【0020】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、可撓性を有した袋状のエアバッグ35と、エアバッグ35に膨張用ガスを供給するインフレーター31と、折り畳んだエアバッグ35を突出可能に覆うエアバッグカバー28と、リテーナ32と、を備えて構成されている。
【0021】
エアバッグカバー28は、エアバッグ35の膨張時に押されて車外側Oに開く扉部29を備え、扉部29の周囲には、エアバッグ35の押圧力により破断して、扉部29を開かせるための薄肉の破断予定部28aが形成されている(図4参照)。この扉部29は、下縁29b側を、フロントドア13の板金製のパネル部19における取付エリア25の部位に、連結支持させており、開き時、上縁29a側を車外側Oの下方側に回転させるように、開くこととなる。なお、パネル部19は、フロントドア13のアウタパネル18から連なるように、配設されている。
【0022】
インフレーター31は、図4に示すように、膨張用ガスを吐出する複数のガス吐出口31bを有した円柱状の本体31aと、フロントドア13のパネル部19の取付エリア25に取付固定されるフランジ部31cと、を備えて構成されている。フランジ部31cには、リテーナ32から延びる複数のボルト32aを貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。そして、このインフレーター31は、所定のエアバッグ作動回路からの作動信号を入力させて、膨張用ガスをガス吐出口31bから吐出させて、エアバッグ35に供給することとなる。なお、エアバッグ作動回路は、車両Vのフロントバンパ9に配置されて歩行者との衝突を検知可能なセンサSE(図1参照)からの信号を入力した際、インフレーター31を作動させることとなる。
【0023】
リテーナ32は、略四角環状の板金製として、四隅付近に、車内側Iに延びるボルト32aを備えている。リテーナ32は、各ボルト32aを、エアバッグ35の取付孔39、取付エリア25の図示しない貫通孔、及び、インフレーター31のフランジ部31cの図示しない貫通孔、を貫通させて、各ボルト32aに締結することにより、エアバッグ35とインフレーター31と取付エリア25に取付固定している。
【0024】
エアバッグ35は、図1,5,6に示すように、ポリエステルやポリアミド等の織布から袋状に形成されて、膨張完了時に、フロントピラー1の前面1aを覆う膨張本体部36と、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なる支持膨張部37と、を備えて構成されている。膨張本体部36の下端36b側の車内側Iには、インフレーター31の本体31aを挿入可能な円形の開口38が形成されるとともに、開口38の周囲には、リテーナ32の各ボルト32aを挿通可能な取付孔39が形成されている。
【0025】
支持膨張部37は、車両Vへの搭載状態で膨張を完了させた際、膨張本体部36の上端36a側における車外側Oの下縁36ab付近から車外側Oに延びるように、配設されている。膨張完了時の支持膨張部37は、膨張本体部36を支持可能に、使用位置UPのミラー本体23の上面23cに対し、下面37cを当接支持させるように配設されている。さらに詳しく述べれば、支持膨張部37は、膨張本体部36に近い側の車内側Iの内側部37aと、車外側Oの外側部37bと、を備えて、ミラー本体23の上面23cに当接支持される部位を、外側部37bとし、内側部37aを、サイドウインド14のドアガラス15とミラー本体23との間の隙間Hに嵌合させるように、設定されている。
【0026】
そして、この第1実施形態のエアバッグ装置M1では、車両Vに搭載された後、エアバッグ作動回路からの信号によって、インフレーター31が作動されれば、インフレーター31のガス吐出口31bから膨張用ガスが吐出され、エアバッグ35が、膨張用ガスによって膨張し、図1,6に示すように、エアバッグカバー28の扉部29を押し開いて、収納部位26側のフロントピラー1の下端1b側から上端1c側に向かいつつ展開膨張し、フロントピラー1の前面1aを覆うこととなる。その際、エアバッグ35は、膨張本体部36が、フロントピラー1の前面1aを覆い、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なって配設された支持膨張部37が、ミラー本体23の上面23cに当接支持されることとなる。この時、ミラー本体23は、車両Vが走行中であって使用位置UPにあり、先端23aを車外側Oに延ばしていることから、支持膨張部37の下面37cに当接させて支持膨張部37を支持する上面23cが、車外側Oに長く延びており、支持膨張部37に作用する車外側O方向への押圧力Fに対し、車外側Oに広く延びるエリアによって、十分な反力を確保して対抗することができる。そのため、例えば、歩行者Wが、膨張本体部36に対して、フロントガラス7側から車外側Oに押すように干渉しても、支持膨張部37が、ミラー本体23における車外側Oに長く延びた上面23cに支持されて、移動せず、膨張本体部36を支持して、膨張本体部36の車外側Oへの移動を、的確に抑制できることとなる。
【0027】
さらに付言すると、この支持膨張部37は、ミラー本体23の車外側Oに延びる上面23cで支持される下面37cを備えて、エアバッグ35の収納部位26であるフロントピラー1の下方におけるドアミラー21の前側付近の取付エリア25から離れた部位に、すなわち、膨張本体部36の下端(前端)36bから離れた上方側部位(先端側部位)の上端36a側に、配設されることとなって、膨張本体部36は、車外側O方向への横ずれを、膨張本体部36の下端36b近傍でなく、膨張本体部36の下端36bから離れた先端(上端若しくは後端)36a側で、換言すれば、ずれ移動に対抗し易い膨張本体部36の下端36bから離れた部位、すなわち、支持膨張部37のミラー本体23の上面23cに支持される部位(下面)37cにより、的確に抑えることができる。
【0028】
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、膨張完了時のエアバッグ35が、歩行者Wの受け止め時の車外側O方向への横ずれを抑制して、フロントピラー1の前面1aを的確に覆うことができ、歩行者Wをフロントピラー1から好適に保護することができる。
【0029】
さらに、第1実施形態では、膨張完了時の支持膨張部37が、内側部37aを、サイドウインド14のドアガラス15とミラー本体23の内側面23dとの間の隙間Hに、上方から嵌め込むように、設定されており(図6参照)、水平方向に沿うような車外側O方向や車内側I方向に、膨張本体部36が横ずれしようとしても、内側部37aが、ミラー本体23の内側面23dやドアガラス15に位置規制されて、移動を抑制される。そのため、車外側Oや車内側Iへの膨張本体部36の横ずれが、一層、的確に防止できることとなる。
【0030】
なお、第1実施形態では、エアバッグ35が、ドアミラー21の前側付近のフロントドア13の収納部位26に、折り畳んで収納されているが、図7〜12に示す第2実施形態のエアバッグ装置M2のように、エアバッグ35Aは、ドアミラー21の前側付近におけるフロントドア13Aの前方に位置して、フロントドア13Aと別体とした車両VのボディBDの部位に、折り畳んで収納してもよい。
【0031】
この第2実施形態のエアバッグ装置M2では、エアバッグ35Aやインフレーター31の収納部位26Aが、フロントドア13Aの窓枠部17の前方側におけるフロントピラー1の下部付近の車外側Oのパネル部19Aに、配設されている。このパネル部19Aは、フロントピラー1のアウタパネル2から連なるように配設されて、窓枠部17の前方側におけるパネル部19Aの部位をエアバッグ装置M2の取付エリア25Aとしている。
【0032】
第2実施形態のエアバッグ装置M2は、可撓性を有した袋状のエアバッグ35Aと、エアバッグ35Aに膨張用ガスを供給するインフレーター31と、折り畳んだエアバッグ35を突出可能に覆うエアバッグカバー28Aと、リテーナ32と、を備えて構成されている。なお、インフレーター31とリテーナ32とは、第1実施形態と同じものであり、説明を省略する。
【0033】
エアバッグカバー28Aは、エアバッグ35Aの膨張時に押されて、全体を扉部29Aとして、車外側Oに開かせる構成であって、下縁29b側を、パネル部19Aの取付エリア25Aの部位に、連結支持させて、開き時、上縁29a側を車外側Oの下方側に回転させるように、開くこととなる。
【0034】
第2実施形態のエアバッグ35Aは、第1実施形態のエアバッグ35と略同様としているが、収納部位26Aを、ベルトライン16の上方側としていることから、第1実施形態のエアバッグ35と相違して、インフレーター31の本体31aを挿入させる開口38とその周囲のリテーナ32の各ボルト32aを挿通させる取付孔39とを、前端側の下方側にずらして配設している点が、相違している(図11参照)。エアバッグ35Aの他の構成は、第1実施形態のエアバッグ35と同様であり、図1,11,12に示すように、フロントピラー1の前面1aを覆う膨張本体部36と、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なる支持膨張部37と、を備えて構成されている。そして、支持膨張部37も、第1実施形態と同様に、車両Vへの搭載状態で膨張を完了させた際、膨張本体部36の上端36a側における車外側Oの下縁36ab付近から車外側Oに延びるように、配設され、膨張本体部36を支持可能に、使用位置UPのミラー本体23の上面23cに対し、下面37cを当接支持させるように配設されている。さらに、この支持膨張部37も、膨張本体部36に近い側の車内側Iの内側部37aと、車外側Oの外側部37bと、を備えて、ミラー本体23の上面23cに当接支持される部位を、外側部37bとし、内側部37aを、サイドウインド14のドアガラス15とミラー本体23との間の隙間Hに嵌合させるように、設定されている。
【0035】
そして、この第2実施形態のエアバッグ装置M2でも、車両Vに搭載された後、エアバッグ作動回路からの信号によって、インフレーター31が作動されれば、インフレーター31のガス吐出口31bから膨張用ガスが吐出され、図1,11,12に示すように、エアバッグ35Aが、膨張用ガスによって膨張し、エアバッグカバー28A(扉部29A)を押し開いて、収納部位26A側のフロントピラー1の下端1b側から上端1c側に向かいつつ展開膨張し、膨張本体部36が、フロントピラー1の前面1aを覆い、膨張本体部36から車外側Oに延びるように膨張本体部36に連なって配設された支持膨張部37が、ミラー本体23の上面23cに当接支持されることとなって、第1実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0036】
なお、第2実施形態の場合には、エアバッグ35Aが車両VのボディBDの部位に収納されており、エアバッグ35に膨張用ガスを供給するインフレーター31の配置自由度が高く、容易に、インフレーター31を安定して配設固定することができる。
【0037】
ちなみに、第1実施形態では、エアバッグ35をフロントドア13に収納しているが、エアバッグ装置M1の取付エリア25が、ドアミラー21の取付ベース22のエリア(詳しくは、取付ベース22の軸支部位22aの前方側)としており、この部位は、エアバッグ装置M1の収納スペースを確保し易いエリアであって、フロントドア13の他の搭載部品の搭載スペースに影響を与えることなく、円滑に、エアバッグ装置M1を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の斜視図であり、膨張完了状態のエアバッグを二点鎖線で示す。
【図2】第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の側面図である。
【図3】第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の平面図である。
【図4】第1実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す概略横断面図である。
【図5】第1実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグの単体での膨張完了状態を示す斜視図である。
【図6】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時における膨張したエアバッグのドアミラー付近での左右方向に沿った概略縦断面図である。
【図7】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の斜視図であり、膨張完了状態のエアバッグを二点鎖線で示す。
【図8】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の側面図である。
【図9】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す車両の平面図である。
【図10】第2実施形態のエアバッグ装置の搭載状態を示す概略横断面図である。
【図11】第2実施形態のエアバッグ装置に使用するエアバッグの単体での膨
【図12】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時における膨張したエアバッグのドアミラー付近での左右方向に沿った概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…フロントピラー、
1a…(フロントピラーの)前面、
13,13A…フロントドア、
14…サイドウインド、
21…ドアミラー、
22…取付ベース、
23…ミラー本体、
23a…(ミラー本体の)先端、
23b…(ミラー本体の)元部、
23c…(ミラー本体の)上面、
25,25A…取付エリア、
26,26A…収納部位、
35,35A…エアバッグ、
36…膨張本体部、
37…支持膨張部、
37c…下面、
V…車両、
M1,M2…エアバッグ装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントピラーの前面側を覆い可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置であって、
前記車両が、前記フロントピラーの後側に隣接して配設されて、前記フロントピラーの後方に位置するサイドウインドを有し、かつ、該サイドウインドの前側の下隅付近に位置するドアミラーを有したフロントドアを備え、
前記ドアミラーが、前記フロントドアに取り付けられる取付ベースと、先端を前記サイドウインドに接近させた収納位置と先端を車外側に突出させた使用位置とに配置可能に、元部側を前記取付ベースに回動可能に支持させて、配設されるミラー本体と、を備えて構成され、
前記エアバッグが、
前記フロントピラーの下方における前記ドアミラーの前側付近に、折り畳まれて収納されるとともに、
膨張完了時に、前記フロントピラーの前面を覆う膨張本体部と、
該膨張本体部から車外側に延びるように前記膨張本体部に連なるとともに、前記膨張本体部を支持可能に、使用位置の前記ミラー本体の上面に対し、下面側を当接支持させるように配設される支持膨張部と、
を備えて構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグが、前記ドアミラーの前側付近の前記フロントドアに、折り畳まれて収納されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグが、前記ドアミラーの前側付近における前記フロントドアの前方に位置する車両のボディの部位に、折り畳まれて収納されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項1】
車両のフロントピラーの前面側を覆い可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置であって、
前記車両が、前記フロントピラーの後側に隣接して配設されて、前記フロントピラーの後方に位置するサイドウインドを有し、かつ、該サイドウインドの前側の下隅付近に位置するドアミラーを有したフロントドアを備え、
前記ドアミラーが、前記フロントドアに取り付けられる取付ベースと、先端を前記サイドウインドに接近させた収納位置と先端を車外側に突出させた使用位置とに配置可能に、元部側を前記取付ベースに回動可能に支持させて、配設されるミラー本体と、を備えて構成され、
前記エアバッグが、
前記フロントピラーの下方における前記ドアミラーの前側付近に、折り畳まれて収納されるとともに、
膨張完了時に、前記フロントピラーの前面を覆う膨張本体部と、
該膨張本体部から車外側に延びるように前記膨張本体部に連なるとともに、前記膨張本体部を支持可能に、使用位置の前記ミラー本体の上面に対し、下面側を当接支持させるように配設される支持膨張部と、
を備えて構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグが、前記ドアミラーの前側付近の前記フロントドアに、折り畳まれて収納されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグが、前記ドアミラーの前側付近における前記フロントドアの前方に位置する車両のボディの部位に、折り畳まれて収納されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−137773(P2010−137773A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317299(P2008−317299)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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