説明

エアバッグ解体用脱臭装置および方法

【課題】解体作業時の煩雑性を解消するとともに、メンテナンスも容易なエアバッグ解体用脱臭装置を提供する。
【解決手段】 ファン11を備えた本体10と、塩基性ガスを吸着する活性炭と中性ガスを吸着する活性炭とを複合してペレット状に成形した臭気吸着フィルター20と、エアバッグ装置解体時に発生するガスの煙を除去する煙除去フィルター30と、本体10に収容されたる臭気吸着フィルター20と煙除去フィルター30とを固定するための本体カバー40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の装備品であるエアバッグの解体時に発生する臭気を脱臭する装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の解体作業において、その装備品であるエアバッグは、故意に作動させてから処理することが行われている。車両に装着した状態でエアバッグを強制的に作動させる方法では、エアバッグが作動するとエアバッグ内に封じ込められた多量のガスが車室内に充満して、その煙と臭気により次の工程へと即座に解体作業を進めることができないという問題がある。
【0003】
そのため、例えば、特許文献1では、エアバッグ装置を含む車両部品を覆って当該エアバッグ装置の周囲に略密閉空間を形成する筐体と、筐体内の気体を排気する排気装置とを有するエアバッグの処理装置が開示されている。また、特許文献2では、エアバックの解体時動によって発生したアルデヒド等の複合臭気を含む雰囲気を吸引し、ノズルにより洗浄水が噴霧された水壁フィルターを通過させることで、雰囲気中の臭い微粒子を粗い落とし、水壁フィルターを通過した雰囲気については、ノズルから噴霧した洗浄水の微粒子が浮遊している空間を通過させることで、臭い微粒子が洗浄水微粒子に接触付着して洗い落とされ、雰囲気中の臭い微粒子につき人的には臭いが感じられない程度に効率良く除去して排気させる自動車エアバッグ解体時発生臭気除去装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−341609号公報
【特許文献2】特開2005−342620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の装置はいずれも車内のガスを車両外へダクト等から排出する必要があるため、個々の車両ごとに取付け作業が必要となるなど、解体作業時の煩雑性が問題となる。
【0006】
また、車外に設置した脱臭装置で散水により臭気と煙とを水等に吸収させる装置では、臭気を吸収して劣化した水の処理が問題となる。劣化した水を排水するための排水装置を設置しなければならず、装置の運転・維持コストがかかる等、メンテナンス性に問題がある。それだけでなく、散水によってエアバッグ臭気を含むミストの一部が脱臭機外へ排出されてしまい、作業環境悪化を招くおそれもある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、解体作業時の煩雑性を解消するとともに、メンテナンスも容易なエアバッグ解体用脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係るエアバッグ解体用脱臭装置は、エアバッグ装置解体時に発生する臭気を脱臭するエアバッグ解体用脱臭装置であって、塩基性ガスを吸着する活性炭と中性ガスを吸着する活性炭とを複合してなるフィルターを備えることを特徴とする。
【0009】
これによれば、吸着材として活性炭フィルターを用いることで、自動車の車内に設置することができるほどに装置をコンパクトにすることができるので、車両ごとの取付けではなく、装置の運搬のみで済むので、解体作業時の煩雑性が解消されることとなる。また、車内への設置が可能となることで、密閉された空間での脱臭処理ができ、解体作業時に臭気が漏出して作業環境の悪化を招くこともない。さらに、装置のメンテナンスは、フィルターの交換だけで足りるので、メンテナンス性にも優れたエアバッグ解体用脱臭装置が実現可能となる。
【0010】
ここで、前記フィルターは、塩基性ガスを吸着する活性炭35重量%と、中性ガスを吸着する活性炭65重量%とで構成されるとするのが好ましい。
【0011】
また、本発明は、エアバッグ装置解体時に発生する臭気を脱臭するエアバッグ解体用脱臭方法であって、前記発生する臭気を、塩基性ガスを吸着する活性炭と中性ガスを吸着する活性炭とを複合してなるフィルターに通すことを特徴とするエアバッグ解体用脱臭方法として実現することもできる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明に係るエアバッグ解体用脱臭装置によれば、活性炭フィルターを吸着材として用いるので、車内へ設置可能な程度にまで装置を小型化することができ、車両ごとに取付け作業を繰り返すのではなく、装置を運搬するだけで足りるので、解体作業時の煩雑性を解消することができる。また、車内設置可能となるので、密閉された状態で脱臭処理をすることができ、解体作業時に臭気が漏れ出すことがなく、作業環境を悪化させることがない。さらに、活性炭フィルターを交換すれば吸着力が回復するので、メンテナンスも容易なエアバッグ解体用脱臭装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エアバッグ解体用脱臭装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るエアバッグ解体用脱臭装置について図を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るエアバッグ解体用脱臭装置の構成を示す図である。
【0016】
図1に示すように、エアバッグ解体用脱臭装置は、本体10、臭気吸着フィルター20、煙除去フィルター30及び本体カバー40から構成されている。
【0017】
本体10は、ファン11を備えており、臭気吸着フィルター20と煙除去フィルター30とを収容し、本体カバー40で両フィルターを固定することができる箱型となっている。
【0018】
臭気吸着フィルター20は、エアバッグ内に充填され、エアバッグ作動時に発生するガスの臭気成分等を吸着するフィルターである。エアバッグ作動時に発生するガスは、二酸化窒素、硫化水素、アンモニア、二酸化硫黄、塩素、一酸化炭素、一酸化窒素、塩化カルボニル、シアン化水素、塩化水素、ホルムアルデヒド等があり、一般的に、二酸化窒素、硫化水素、アンモニア、二酸化硫黄、塩素の臭気濃度が高く、毒性の面では一酸化炭素、一酸化窒素、塩化カルボニルの濃度が高い傾向にある。これらのガスの臭気成分等を吸着するために、臭気吸着フィルター20は、塩基性ガスを吸着する活性炭と中性ガスを吸着する活性炭とを複合してペレット状に成形した乾式の吸着材を使用するのが好ましい。この複合活性炭で構成した臭気吸着フィルター20によれば、塩基性ガス用活性炭が主にアンモニアの臭気成分を吸着し、中性ガス用活性炭がその他の臭気成分を吸着することができる。ここで、複合活性炭は、塩基性ガス用活性炭を35重量%、中性ガス用活性炭を65重量%の比率で構成することが好ましく、この比率で構成された臭気吸着フィルター20は優れた脱臭能力を発揮する。
【0019】
このように、本体10、臭気吸着フィルター20、煙除去フィルター30及び本体カバー40を備えたエアバッグ解体用脱臭装置は、簡易な構成で小型化されているから、自動車の車内に設置することができる。エアバッグ解体用脱臭装置を車内(例えば、後部座席の中央付近など)に設置して電源を供給し運転開始後、車内を密閉状態にした状態でエアバッグを作動させると、ファン11の回転により、エアバッグ作動時に発生するガスが装置内へと導かれる。エアバッグ作動時に生じるガスの白煙が煙除去フィルター30で除去された後、ガスの臭気成分が臭気吸着フィルター20で吸着される。処理されたガスは、クリーンエアーとしてファン11の後方から装置外へと排出される。なお、ファン11から排出されるエアーを車内で循環させるようにすると、より脱臭効率を高めることができる。
【0020】
以上のような手順で、エアバッグ解体用脱臭装置(寸法:縦420mm×横320mm×奥行250mm)により、エアバッグ作動時に発生するガスを処理(処理風量:約5m/分)したところ、発生時に750以上であった臭気濃度が、10分に満たない運転時間で、100以下にまで低減された。
【0021】
このように、本実施の形態に係るエアバッグ解体用脱臭装置によれば、乾式吸着材の活性炭をフィルターとして用いることで、装置を車内に設置できるほどに小型化することができる。そのため、装置の運搬だけでよく、車両ごとに取付け作業を行う必要がなくなり、解体作業時の煩雑性を解消することができる。また、車内に設置することができるので、密閉空間での脱臭処理が可能となり、解体作業時に臭気が漏出することによる作業環境悪化を招くこともない。さらに、メンテナンスはフィルターの交換のみでよいから、メンテナンス性にも優れたエアバッグ解体用脱臭装置を実現することができる。
【0022】
以上、本発明に係るエアバッグ解体用脱臭装置について、実施の形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0023】
例えば、上記実施の形態では、臭気吸着フィルターの吸着材として複合活性炭を用いたが、例えば、活性炭を含む紙と二酸化チタンとをハニカム形状にした吸着材を用いることとしてもよいし、ゼオライトや活性炭等を混合した粒状の吸着材を用いることとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係るエアバッグ解体用脱臭装置は、自動車用エアバッグの解体作業時に使用することができ、自動車解体工場等での利用が可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 本体
20 臭気吸着フィルター
30 煙除去フィルター
40 本体カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ装置解体時に発生する臭気を脱臭するエアバッグ解体用脱臭装置であって、
塩基性ガスを吸着する活性炭と中性ガスを吸着する活性炭とを複合してなるフィルターを備える
ことを特徴とするエアバッグ解体用脱臭装置。
【請求項2】
前記フィルターは、
塩基性ガスを吸着する活性炭35重量%と、
中性ガスを吸着する活性炭65重量%とで構成される
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ解体用脱臭装置。
【請求項3】
エアバッグ装置解体時に発生する臭気を脱臭するエアバッグ解体用脱臭方法であって、
前記発生する臭気を、塩基性ガスを吸着する活性炭と中性ガスを吸着する活性炭とを複合してなるフィルターに通す
ことを特徴とするエアバッグ解体用脱臭方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−45811(P2011−45811A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195057(P2009−195057)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000225027)特殊電極株式会社 (26)
【Fターム(参考)】