説明

エアフィルタ用ろ材

【課題】プリーツ加工、通気性支持材との接合加工などの加工が施されても、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜の捕集性能が損なわれないエアフィルタ用ろ材を提供する。
【解決手段】少なくとも3層のPTFE多孔質膜を含む積層体2において、最外層PTFE多孔質膜4の圧力損失が、少なくとも1つの中間層PTFE多孔質膜5の圧力損失の1/2以下となるようにした。この積層体2の両最外層に通気性支持材3を接合してエアフィルタ用ろ材1とした。第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の圧力損失は2〜15mmH2Oであり、第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の圧力損失は10〜30mmH2Oであり、エアフィルタ用ろ材のPF値は17以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という。)多孔質膜を用いたエアフィルタ用ろ材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアフィルタ用ろ材としては、ガラス繊維にバインダーを加えて抄紙したものが多用されてきた。しかし、このろ材には、ろ材中の微小繊維による発塵、フッ酸などの薬品による劣化に伴う発塵などの問題があった。そこで、近年、クリーンで耐薬品性にも優れているPTFE多孔質膜が半導体製造などの分野においてエアフィルタ用ろ材として使用されている。PTFE多孔質膜は、シート状に成形したPTFEシートを延伸して多孔質化することにより、製造することができる(例えば、特許文献1および特許文献2等参照)。このように延伸して得られたPTFE多孔質膜のみでは剛性が不足しているため、PTFE多孔質膜はその片面に通気性支持材を接合して用いられることが多い。通気性支持材により補強して「こし」が補われたろ材は、連続したW字状に折り畳むひだ折り加工(以下、「プリーツ加工」という。)が施されて、ろ材ユニットとして利用される。
【0003】
一方、PTFE多孔質膜の積層体を製造する方法が種々提案されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。そして、このような積層体を用いたエアフィルタ用ろ材も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
特許文献5には、同一の圧力損失を有する5層のPTFE多孔質膜を積層し、その両側に通気性の支持材料を配置した捕集効率に優れたろ材が開示されている。このろ材において、通気性の支持材料は、PTFE多孔質膜の積層体と緩く一緒にプリーツされるが、当該積層体と接合されてはいない。

【特許文献1】特開平7−196831号公報
【特許文献2】特表平6−816802号公報
【特許文献3】特開昭57−131236号公報
【特許文献4】特開平3−179038号公報
【特許文献5】特表平9−504737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、PTFE多孔質膜の片面に通気性支持材を接合したろ材は、接合によりPTFE多孔質膜の一部の微孔が閉塞され、圧力損失が大きく増加する。一方、PTFE多孔質膜の積層体の両側に通気性の支持材料を配置したろ材は、積層体と支持材料とを接合しないので、圧力損失の増加を招くことはないが、積層体と支持材料とが一体化されていないために取り扱いが不便である。また、積層体と支持材料とが接合されていないので、プリーツ加工時に積層体と支持材料の動きにズレが生ずることがあり、積層体あるいは支持材料に不用意な折れが発生することもある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するべく、プリーツ加工、通気性支持材との接合加工などの加工が施されても、PTFE多孔質膜本来の捕集性能を発揮し得るようにPTFE多孔質膜の積層体を改良することにより、加工性、取り扱い性に優れたエアフィルタ用ろ材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、PTFE多孔質膜の積層体の最外層に配置される膜として、上記のような加工の影響を十分に緩和することができる多孔質膜を用いることとした。すなわち、本発明のエアフィルタ用ろ材は、少なくとも3層のPTFE多孔質膜の積層体を捕集層とし、この積層体が最外層に配置される第1のPTFE多孔質膜と最外層を除いた中間層の少なくとも1層に配置される第2のPTFE多孔質膜とを含み、第1のPTFE多孔質膜の圧力損失が第2のPTFE多孔質膜の圧力損失の1/2以下となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少なくとも3層のPTFE多孔質膜の積層体において、最外層に配置される膜として、エアフィルタ用ろ材として用いるための加工の影響を十分に緩和することができる膜を用いることにより、PTFE多孔質膜本来の捕集性能を発揮し得るエアフィルタ用ろ材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のエアフィルタ用ろ材において、最外層として配置される第1のPTFE多孔質膜は、通気性支持材との接合加工、プリーツ加工などの加工が、中間層としての第2のPTFE多孔質膜に及ぼす影響を緩和する役割を果たす。本発明のも、通気性支持材と最外層としての第1のPTFE多孔質膜との接合により圧力損失は増加するが、その増加の程度は上記従来品と比べて小さく、ろ材の捕集性能に大きな影響が及ばない範囲に止められる。また、最外層としての第1のPTFE多孔質膜がプリーツ加工時の物理的衝撃を引き受けるので、中間層としての第2のPTFE多孔質膜に作用する衝撃が緩和され、ろ材としての捕集性能への影響が少なくなる。
【0010】
本発明のエアフィルタ用ろ材は、上記PTFE多孔質膜の積層体の両最外層に、通気性支持材が接合されていることが好ましい。このように通気性支持材を接合すれば、取り扱いに便利であり、安定したプリーツ加工が可能となる。
【0011】
また、本発明のエアフィルタ用ろ材によれば、積層体に通気性支持材が接着剤などにより接合されている場合のみならず、積層体に通気性支持材が融着により接合している場合であっても、通気性支持材の接合による圧力損失の過度の上昇を防止することができる。すなわち、積層体の両最外層に適当な手段により接合した通気性支持材を含んでいても、エアフィルタ用ろ材の圧力損失を積層体の圧力損失の1.15倍以下(1〜1.15倍)とすることができる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のエアフィルタ用ろ材の一形態を示す断面図である。図1のエアフィルタ用ろ材1は、PTFE多孔質膜の積層体2の両最外層に通気性支持材3が接合された構造を有している。PTFE多孔質膜の積層体2には、最外層PTFE多孔質膜4と中間層PTFE多孔質膜5とが含まれている。最外層PTFE多孔質膜4は、通気性支持材3との接合やプリーツ加工による捕集性能への影響を緩和する。なお、PTFE多孔質膜の積層体2をそのままろ材として用いることもできる。
【0013】
PTFE多孔質膜は、PTFEファインパウダーと液状潤滑剤との混和物を押出および/または圧延によりシート状に成形し、この未焼成シートから液状潤滑剤を除去し、次いで延伸して多孔質化することにより得ることができる。さらに、延伸後にPTFEの融点以上の温度に加熱して焼成すれば、強度が向上する。上記PTFE多孔質膜の積層体2は、このような従来から公知のPTFE多孔質膜の製造方法のいずれかの段階でPTFE多孔質膜を積層化する工程を加えた方法により製造することができる。このような積層化工程を含むPTFE多孔質膜の製造方法を以下に例示する。
【0014】
1)PTFEファインパウダーと液状潤滑剤とを含む複数の層が積層された予備成形体を準備する。この予備成形体について、押出し、圧延、延伸などを順次行うことにより、PTFE多孔質膜の積層体を得る。
2)液状潤滑剤を含む複数の未焼成PTFEシートを積層する。この積層体について、従来の製造方法と同様に、圧延、延伸などを順次行うことにより、PTFE多孔質膜の積層体を得る。
3)複数の未焼成PTFE多孔質膜を圧着して積層する。
【0015】
PTFE多孔質膜の多孔構造に影響を与えるのは、用いる原料や、圧延、延伸の工程における諸条件である。PTFE多孔質膜の積層体においては、原料や工程における諸条件が層ごとに調整される。このような調整は、特に限定されないが、例えばPTFEファインパウダーの分子量、未焼成PTFEシートを形成する際の圧延条件、未焼成PTFE多孔質膜を形成する際の延伸条件などにより行われる。
【0016】
このようにして得られたPTFE多孔質膜の積層体において、層ごとに圧力損失を測定することは困難である。しかし、各層の圧力損失は、各層を、積層体の製造に適用した当該層の原料や、圧延、延伸などの工程における諸条件を適用して個別に製造することにより評価する(積層体を形成する第1および第2のPTFE多孔質膜を、該積層体と同一条件により膜ごとに製造し、その膜の状態で評価する)ことができる。
【0017】
最外層PTFE多孔質膜4および中間層PTFE多孔質膜5の圧力損失は、それぞれ後述する方法により測定でき、最外層PTFE多孔質膜4の圧力損失が2〜15mmH2O、中間層PTFE多孔質膜5の圧力損失が10〜30mmH2Oであることが好ましい。なお、最外層PTFE多孔質膜の圧力損失を中間層PTFE多孔質膜の圧力損失の10%〜50%の範囲内とするのが好ましいことが判明している。
【0018】
両最外層PTFE多孔質膜4の圧力損失は、中間層PTFE多孔質膜5の圧力損失の半分以下であれば、必ずしも同じである必要はない。また、積層体2におけるPTFE多孔質膜の積層数は、3層に限られず、4層、5層(図2参照)またはそれ以上でも構わない。中間層PTFE多孔質膜が2層以上存在するエアフィルタ用ろ材10の場合には、中間層PTFE多孔質膜5のうちの最大の圧力損失を有する膜に対して、最外層PTFE多孔質膜4の圧力損失が半分以下となればよい。
【0019】
中間層には、捕集性能を示すPF(Performance of Filter)値が20より大きい(好ましくは21〜40)PTFE多孔質膜が含まれていることが好ましい。ここで、PF値は下記式(1)により求められる数値である。
【0020】
PF値=−log(1−E/100)/L×100 (1)
【0021】
式(1)において、Lは圧力損失を表し、具体的には、有効面積100cm2の円形ホルダーにPTFE多孔質膜などのサンプルをセットして、風速5.3cm/秒で空気を透過させたときの圧力損失を圧力計(マノメータ)で測定した数値[mmH2O]である。また、Eは捕集効率を表し、具体的には、圧力損失測定と同じ装置にサンプルをセットして同じ流速の空気を透過させながら、粒子径0.1〜0.2μmの多分散ジオクチルフタレート(DOP)をエアロゾルとして、約108個/リットルになるように供給し、サンプル上流側および下流側の粒子濃度をパーティクルカウンター(LPC)で測定して得た数値から下記式(2)により求めた割合である。
【0022】
捕集効率(E)=(1−下流側粒子濃度/上流側粒子濃度)×100(2)
【0023】
通気性支持材3としては、PTFE多孔質膜より通気性に優れていればよく、不織布、織布、メッシュ、その他の多孔質材料が使用できる。材質、構造、形態が特に限定されるものではないが、強度、柔軟性、作業性の観点からは不織布が好ましい。また、接着が容易であることなどの理由から、芯成分が鞘成分より融点が高い芯/鞘構造を有する複合繊維からなる不織布がより好ましい。
【0024】
通気性支持材とPTFE多孔質膜積層体との接合は、接着剤などの接着部材を用いて行うことができ、また、通気性支持材の一部を加熱溶融させることにより融着する方法で行うこともできる。このような接合を従来のPTFE多孔質膜に適用すると、溶融した通気性支持材あるいは接着部材がPTFE多孔質膜の孔を閉口して通気性が低下し、PTFE多孔質膜本来の性能が損なわれる場合があった。しかし、上記PTFE多孔質膜積層体によれば、通気性低下の影響を緩和することができる。
【0025】
通気性低下の影響を緩和できるために、本発明によれば、通気性支持材がPTFE多孔質膜積層体の両最外層に接合されていても、PF値が17以上であるエアフィルタ用ろ材を得ることができる。
【0026】
また、エアフィルタ用ろ材においては、PTFE多孔質膜相互が接合されていることが好ましい。取り扱いに便利であり、安定したプリーツ加工が可能になるからである。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の実施例における圧力損失、捕集効率およびPF値は、上記に説明した方法により測定した。また、リーク性能は、以下に示す方法により測定した。
【0028】
(リーク性能)
まず、レシプロタイプのプリーツ加工機でサンプル(ろ材)をプリーツ状に加工し、プリーツ加工されたサンプルを捕集効率の上記測定法と同一の方法により、上流側の粒子濃度とサンプルを透過してきた下流側の粒子濃度をパーティクルカウンターで測定し、下記式(3)により粒子透過率を求めた。
【0029】
粒子透過率(P)=(下流側粒子透過率/上流側粒子透過率)×100(3)
【0030】
そして、0.1〜0.2μmの粒子径範囲における粒子透過率(P0.1)と0.2〜0.3μmの粒子径範囲における粒子透過率(P0.2)とをそれぞれ求め、下記式(4)の条件を満たす場合にリークが生じていると判断した。
【0031】
0.2/P0.1>0.1 (4)
なお、リーク性能は、各サンプルについて60カ所実施し、リーク頻度を求めることにより評価した。
【0032】
(実施例1)
PTFEファインパウダー(旭・ICIフロロポリマーズ社製フルオンCD−014;「PTFEファインパウダーA」)100重量部に対して液状潤滑剤(流動パラフィン)35重量部を均一に混合し、この混合物を20kg/cm2の条件で予備成形し、次いでこれをロッド状にペースト押出成形し、さらにこのロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ500μmの長尺シート(「圧延シートA」)を得た。
【0033】
また、別のPTFEファインパウダー(旭・ICIフロロポリマーズ社製フルオンCD−123;「PTFEファインパウダーB」)100重量部に対して液状潤滑剤(流動パラフィン)25重量部を均一に混合し、この混合物を20kg/cm2の条件で予備成形した。次いで、この予備成形体をロッド状にペースト押出成形し、さらにこのロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ300μmの長尺シート(「圧延シートB」)を得た。
【0034】
圧延シートBの両面に圧延シートAを1枚ずつ重ね合せた後、1対の金属圧延ロール間に通して圧延し一体化することにより、厚さ900μmのシート状成形体を得た。このシート状成形体から、トリクレンを用いた抽出法により液状潤滑剤を除去し、未焼成PTFE積層体を得た。この未焼成PTFE積層体を、ロール延伸法により290℃の延伸温度でシート長手方向に20倍延伸し、さらにテンター法により80℃の延伸温度でシート幅方向に30倍延伸し、未焼成PTFE多孔質膜を得た。この3層構造の未焼成PTFE多孔質膜を、寸法を固定した状態で400℃、20秒間熱処理し、厚さが約42μmの3層構造の焼成されたPTFE多孔質膜積層体からなるろ材(「ろ材1」)を得た。
【0035】
ろ材1の両面に、厚さ150μm、目付量30g/m2のポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエステル(PE)芯鞘不織布(ユニチカ社製エルベスTO303WDO、鞘部PEの融点:129℃)を一対のロールを用いた熱ラミネート方式(ロール温度140℃)により積層し、PTFE多孔質膜積層体を不織布により挟持した図1と同構造のろ材(「ろ材2」)を得た。
【0036】
また、ろ材1を構成する各層の特性を評価するために、圧延シートAを単独で1対の金属圧延ロール間に通して厚さ350μmのシート状成形体を得た。次にこのシート状成形体を、上記と同様の方法により、潤滑剤の除去、延伸、および熱処理を実施し、厚さが約16μmのPTFE多孔質膜(「外層膜A」)を得た。
【0037】
同様に、圧延シートBを単独で1対の金属圧延ロール間に通して厚さ200μmのシート状成形体を得た。このシート状成形体についても、上記と同様の方法により、潤滑剤の除去、延伸、および熱処理を実施し、厚さが約8μmのPTFE多孔質膜(「中間層膜A」)を得た。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同様にして得た中間層膜Aの両面に外層膜Aを重ね合わせ、さらに、その両面に実施例1で用いたのと同じPET/PE芯鞘不織布を熱ラミネート方式(ロール温度140℃)により積層し、PTFE複層多孔質膜を不織布により挟持したろ材(「ろ材3」)を得た。
【0039】
(実施例3)
PTFEファインパウダーA100重量部に対して液状潤滑剤(流動パラフィン)35重量部を均一に混合し、この混合物を20kg/cm2の条件で予備成形した。次いで、この予備成形体をロッド状にペースト押出成形し、さらにこのロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ350μmの長尺シート(「圧延シートC」)を得た。
【0040】
また、PTFEファインパウダーB100重量部に対して液状潤滑剤(流動パラフィン)25重量部を均一に混合し、この混合物を20kg/cm2の条件で予備成形した。次いでこの予備成形体をロッド状にペースト押出成形し、さらにこのロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ200μmの長尺シート(「圧延シートD」)を得た。
【0041】
圧延シートC、圧延シートDそれぞれから、トリクレンを用いた抽出法により液状潤滑剤を除去し、未焼成PTFEシートを得た。この未焼成PTFEシートを、ロール延伸法により290℃の延伸温度でシート長手方向に20倍延伸し、圧延シートCからPTFE延伸シートCを、圧延シートDからPTFE延伸シートDをそれぞれ作製した。次いで、PTFE延伸シートDの両面にPTFE延伸シートCを重ね合せ、テンター法により80℃の延伸温度でシート幅方向に30倍延伸し、未焼成PTFE多孔質膜を得た。この未焼成PTFE多孔質膜を400℃で20秒間寸法を固定して熱処理し、目的とする厚さが約39μmの3層構造の焼成されたPTFE多孔質膜積層体からなるろ材(「ろ材4」)を得た。
【0042】
ろ材4の両面に厚さ150μm、目付量30g/m2の上記PET/PE芯鞘不織布を熱ラミネート方式(ロール温度140℃)により積層し、PTFE多孔質膜積層体を不織布により挟持したろ材(「ろ材5」)を得た。
【0043】
また、ろ材4を構成する各層の特性を評価するために、PTFE延伸シートCを、上記と同様の方法によりテンター法による延伸および熱処理を行って厚さが約16μmのPTFE多孔質膜(「外層膜B」)を得た。同様にPTFE延伸シートDについても、延伸および熱処理を行って厚さが約8μmのPTFE多孔質膜(「中間層膜B」)を得た。
【0044】
(実施例4)
PTFEファインパウダーA100重量部に対して液状潤滑剤(流動パラフィン)35重量部を均一に混合し、この混合物を20kg/cm2の条件で予備成形した。次いでこの予備成形体をロッド状にペースト押出成形し、さらにこのロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ500μmの長尺シートを得た。この液状潤滑剤を含むシート状成形体を、ロール延伸法により50℃の延伸温度でシート長手方向に2倍延伸し、PTFE延伸シートを得た。
【0045】
このPTFE延伸シートを圧延シートAに代えて用いた点を除いては実施例1と同様にして、厚さが約29μmの3層構造の焼成されたPTFE多孔質膜積層体からなるろ材(「ろ材6」)を得た。さらに、このろ材6の両面に実施例1と同様にして不織布を熱ラミネート方式で積層してろ材(「ろ材7」)を得た。
【0046】
また、ろ材6を構成する各層の特性を評価するために、PTFE延伸シート単独で1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ230μmの長尺シートを得た。次いでこのシート状成形体を、ろ材6を得た方法と同様の方法により延伸などを行って厚さが約10μmのPTFE多孔質膜(「外層膜C」)を得た。なお、本実施例における中間層の評価には、実施例1と同様、中間層膜Aを使用した。
【0047】
(比較例1)
PTFEファインパウダーAに代えて、PTFEファインパウダー(ダイキン工業社製ポリフロンF−104U;「PTFEファインパウダーC」)を用いた点を除いては、実施例1と同様の条件により、厚さが約38μmの3層構造の焼成されたPTFE多孔質膜積層体からなるろ材(「ろ材8」)、および該ろ材8を不織布により挟持したろ材(「ろ材9」)を得た。
【0048】
また、ろ材8を構成する各層の特性を評価するために、PTFEファインパウダーCを用いて得た圧延シート単独で1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ350μmの長尺シートを得た。次いでこのシート状成形体を、ろ材8を得た方法と同様の方法により延伸などを行って厚さが約16μmのPTFE多孔質膜(「外層膜D」)を得た。なお、この例における中間層の評価には、実施例1と同様、中間層膜Aを使用した。
【0049】
(比較例2)
PTFEファインパウダーBに代えて、PTFEファインパウダーAを用い、実施例1における圧延シートBの製造と同様にして、厚さ300μmの長尺シート(「圧延シートE」)を得た。圧延シートEの両面に、圧延シートAを重ね合わせる点を除いては、実施例1と同様にして、厚さが約43μmの3層構造の焼成されたPTFE多孔質積層体からなるろ材(「ろ材10」)を得た。さらに、このろ材10の両面に、実施例1と同様にして、不織布を熱ラミネート方式で積層してろ材(「ろ材11」)を得た。
【0050】
ここで、圧延シートE単独で1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ320μmの長尺シートを得た。次いでこのシート状成形体を、実施例1の中間層膜Aを得た方法と同様の方法により延伸などを行って厚さが約10μmのPTFE多孔質膜(「中間層膜C」)を得た。なお、この例における外層の評価には、実施例1と同様、外層膜Aを使用した。
【0051】
(比較例3)
PTFEファインパウダーB100重量部に対して液状潤滑剤(流動パラフィン)25重量部を均一に混合し、この混合物を20kg/cm2の条件で予備成形した。この予備成形体をロッド状にペースト押出成形し、さらにこのロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通し、厚さ250μmの長尺シートを得た。このシート状成形体から、トリクレンを用いた抽出法により液状潤滑剤を除去し、未焼成PTFEシートを得た。この未焼成体PTFEシートを、ロール延伸法により290℃の延伸温度でシート長手方向に15倍延伸し、さらにテンター法により80℃の延伸温度でシート幅方向に30倍延伸し、未焼成PTFE多孔質膜を得た。この未焼成PTFE多孔質膜を、寸法を固定した状態で400℃、20秒間熱処理し、厚さが約13μmの焼成されたPTFE多孔質膜(「PTFE単層多孔質膜」)を得た。
【0052】
PTFE単層多孔質膜の両面に厚さ150μm、目付量30g/m2の上記PET/PE芯鞘不織布を熱ラミネート方式(ロール温度140℃)により積層し、PTFE多孔質膜を不織布により挟持したろ材(「ろ材12」)を得た。
【0053】
以上の実施例および比較例から得られたろ材、外層膜、中間層膜、PTFE単層多孔質膜の圧力損失および捕集効率を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
また、上記実施例および比較例から得られたろ材の圧力損失、捕集効率およびPF値を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
なお、実施例2(ろ材4)の「熱ラミネートでの圧損上昇率(%)」は、ろ材4の圧力損失と、実施例1で得られた中間層膜Aの両面に外層膜Aを重ね合わせた状態の圧力損失から算出した。
【0058】
表2に示したように、外層膜の圧力損失を中間層膜の圧力損失の半分以下としたろ材1〜7においては、通気性支持材として用いた不織布の熱ラミネートによる圧力損失の上昇が10%以下と小幅であり、その結果、各ろ材の圧力損失は、45mmH2O以下に止まった。また、ろ材1〜7は、捕集効率が99.9999%以上であり、PF値は、いずれも17以上となった。一方、ろ材9およびろ材G12は、不織布の熱ラミネートによる圧力損失の上昇が大きく(18%超)、圧力損失が過大となった。また、ろ材11は熱ラミネートによる圧力損失は小さいが捕集効率が低くエアフィルタ用としては不適なろ材となった。
【0059】
さらに、上記実施例および比較例から得られたろ材のリーク性能を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
表3に示したように、ろ材2,3,5および7は、ろ材9,11および12よりもリーク性能において優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のエアフィルタ用ろ材の例の断面図である。
【図2】本発明のエアフィルタ用ろ材の別の例の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1、10 エアフィルタ用ろ材
2 PTFE多孔質膜積層体
3 通気性支持材
4 最外層PTFE多孔質膜
5 中間層PTFE多孔質膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の積層体を捕集層とし、前記積層体が最外層に配置される第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と前記最外層を除いた中間層の少なくとも1層に配置される第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とを含み、前記第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の圧力損失が前記第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の圧力損失の1/2以下であり、前記第1のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の圧力損失は2〜15mmH2Oであり、前記第2のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の圧力損失は10〜30mmH2Oであり、前記積層体の両最外層に接合された通気性支持材を含み、PF値が17以上であることを特徴とするエアフィルタ用ろ材。
【請求項2】
前記中間層のPF値が20以上である請求項1に記載のエアフィルタ用ろ材。
【請求項3】
前記エアフィルタ用ろ材は、前記積層体の圧力損失の1.15倍以下の圧力損失を有する請求項2に記載のエアフィルタ用ろ材。
【請求項4】
前記通気性支持材が、芯成分が鞘成分よりも融点が高い芯/鞘構造を有する複合繊維からなる不織布である請求項1〜3のいずれかの項に記載のエアフィルタ用ろ材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−111697(P2007−111697A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332508(P2006−332508)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【分割の表示】特願平11−136882の分割
【原出願日】平成11年5月18日(1999.5.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】