説明

エキス抽出液の製造方法

【課題】残渣の混入が少なく、エキス固形分濃度の高いエキス抽出液を、容易に効率よく低コストで得られるエキス抽出液の製造方法を提供すること。
【解決手段】乾燥した被抽出物を1以上の溶媒透過性の容器内に封入し、該容器を溶媒に浸漬させてエキス固形分を溶媒抽出することを含むエキス抽出液の製造方法であって、該容器の容積が、封入される被抽出物の溶媒による膨潤体積よりも小さいことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被抽出物(例えば植物組織)からエキス成分を抽出するエキス抽出液の製造方法に関し、特に残渣の混入が少なく、固形分濃度の高いエキス抽出液を効率よく低コストで得られる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物組織からエキス成分を抽出する場合は、植物組織を、抽出タンクにそのまま投入し、水やアルコールなどの溶媒を用いて、必要により、攪拌、加温しながらエキス成分を抽出している(特許文献1)。ここで使用される植物組織原料は、一般に保存性、つまり腐敗などの問題を考慮して、予め乾燥させたものが使用されている。また、乾燥させた植物組織は細胞が破壊されているので有用成分の抽出効率を向上させることができる。
【0003】
しかし、乾燥した植物組織は、乾燥前の植物の含水率が高いために非常に吸液性が高く、抽出に用いる溶媒を多量に吸収して膨潤する。このため、比較的少量の抽出溶媒を用いた抽出では、エキス抽出液の回収量が減り、エキス抽出液から溶媒を除去した後の残渣であるエキス固形分抽出量が少なく、エキス成分の抽出率が悪くなるといった問題がある。
【0004】
高いエキス成分の抽出量を得るためには、乾燥した植物組織の重量に対して20倍量程度の多量の抽出溶媒が必要になる。しかしその場合には、多量の抽出溶媒のためにエキス抽出液中のエキス固形分濃度が低下し、エキス成分を濃縮する際に、濃縮のためのエネルギーコストが高くなる他、濃縮効率が悪くなるといった問題が生じる。
【0005】
また、抽出工程の後、植物組織や残渣の分離が必要であり、コストが高くなる。一般には、抽出タンク内へろ過板等が設置されるが、装置が複雑になる他、抽出タンクの洗浄に手間が掛かり、コストが高くなるといった問題がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3841458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、残渣の混入が少なく、エキス固形分濃度の高いエキス抽出液を、容易に効率よく低コストで得られるエキス抽出液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、乾燥した被抽出物を、該被抽出物の膨潤体積よりも小さい容器に封入して抽出すると、少量の抽出溶媒を用いた場合でも高いエキス抽出率が得られ、エキス固形分濃度の高いエキス抽出液を製造することに成功した。また、被抽出物を複数の容器に小分けして抽出した場合に特に高いエキス抽出率が得られることを見出した。
本発明者はこれらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)乾燥した被抽出物を1以上の溶媒透過性の容器内に封入し、該容器を溶媒に浸漬させてエキス固形分を溶媒抽出することを含むエキス抽出液の製造方法であって、該容器の容積が、封入される被抽出物の溶媒による膨潤体積よりも小さいことを特徴とする方法。
(2)容器の容積が、封入される被抽出物の膨潤体積の0.6〜0.9倍である、(1)記載の方法。
(3)被抽出物が植物組織である、(1)または(2)記載の方法。
(4)植物組織が薬用人参カルスである、(3)記載の方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法により得られるエキス抽出液を濃縮することを特徴とする、エキス固形分濃縮物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的少量の抽出溶媒を用いて、エキス固形分濃度の高いエキス抽出液を得ることができるので、エキス抽出液の濃縮に要するコストや労力を軽減することができ、容易に効率良く低コストで得られるエキス抽出液の製造方法を提供することができる。また、残渣の混入の少ないエキス抽出液が得られるため、抽出後の工程を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、乾燥した被抽出物を1以上の溶媒透過性の容器内に封入し、該容器を溶媒に浸漬させてエキス固形分を溶媒抽出することを含むエキス抽出液の製造方法であって、該容器の容積が、封入される被抽出物の溶媒による膨潤体積よりも小さいことを特徴とする方法を提供するものである。
【0012】
本発明における被抽出物としては、溶媒に膨潤する限り特に限定されないが、植物組織又は動物系材料が挙げられる。高い膨潤性の観点より、植物組織が好ましく、植物組織としては、例えば、生薬類(蒼朮、厚朴、陳皮、甘草、生姜、大棗、香附子、縮砂、芍薬、当帰、川キュウ、地黄、茯苓、桂皮、杜仲、人参、延胡索、茴香、良姜、阿片等)、コーヒー類、茶類、果実類、穀物類もしくは焙煎穀物類(麦等)、香辛料類、ビーンズ類、ナッツ類、ハーブ類、海草類等を挙げることができる。
中でも、乾燥させた生薬が好ましく、より好ましくは薬用人参(高麗人参、田七人参、チクセツ人参、アメリカ人参、三七人参、シベリア人参等)の乾燥物、特に好ましくは高麗人参の乾燥物である。また、植物組織は、ファーメンター等の培養装置により組織培養されたカルスを好ましく用いることができる。
最も好ましい被抽出物は、組織培養された高麗人参カルスの乾燥物である。
【0013】
本発明における乾燥した被抽出物は、天日、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、送風乾燥等により乾燥させたものであり、天日または熱風乾燥させたものが好ましい。例えば薬用人参は、薬用人参そのものまたは組織培養により得られたカルスを天日または熱風乾燥、好ましくは30〜90℃、より好ましくは50〜85℃の温度下で緩徐に乾燥させる。乾燥温度が90℃を超える高温下で乾燥を行うと、薬用人参特有の香りが失われたり、含有される有効成分が分解するおそれもあり、乾燥温度が30℃未満の低温下で乾燥を行うと、長時間を要するので乾燥中に腐敗してしまうおそれがある。
本発明における乾燥した被抽出物とは、含水率が1〜15重量%であり、2〜10重量%が好ましい。
例えば乾燥後の薬用人参(カルスを含む)の含水率は、乾燥コストや保存性の観点から2〜9重量%、特に3〜6重量%が好ましい。
【0014】
また、被抽出物は、そのまま用いることができるが、被抽出物の溶媒による膨潤性を損なわない範囲で、適当な大きさに細分化処理(切断、粉砕等)したものを用いることもできる。これにより、エキス成分の抽出率を向上させることができる。例えば、被抽出物として薬用人参カルスを用いる場合、そのままあるいは粉砕器や石臼などで粉砕した後、ふるい等で分画して得られる平均粒径500〜20000μm、好ましくは1000〜10000μmのカルスを好ましく用いることができる。
また、披抽出物の大きさによって抽出されるエキス成分が異なる場合は、目的のエキス成分に応じて被抽出物の大きさを選択すればよい。
【0015】
本発明における溶媒透過性の容器とは、溶媒透過性を有しかつ被抽出物を封入し得るものであり、形状は特に限定されない。被抽出物を容器内に封入することによって、残渣の混入を防ぐとともに、被抽出物の溶媒で膨潤する力を抑圧するので、容易に効率よくエキス成分を抽出することができる。溶媒透過性の容器としては、溶媒透過性の袋、ケージ、筒等が挙げられ、溶媒透過性の袋が好ましく使用できる。
また、本発明では、1以上の溶媒透過性の容器を使用する。容器の数を増やし、被抽出物を複数の容器に小分けして抽出すると、エキス成分の抽出率が高くなり、効率的な抽出が可能となり好ましい。
【0016】
また、溶媒透過性の容器の素材としては、溶媒を透過する機能を発揮し得る限り特に限定されないが、布、メッシュクロスは、良好な溶媒透過性が得られるため好ましい。ここで、メッシュクロスとしては、ナイロンメッシュクロス、ポリエステルメッシュクロス、ポリエチレンメッシュクロス、ポリプロピレンメッシュクロス、テフロン(登録商標)メッシュクロス、金属製メッシュクロス(例えばステンレスメッシュクロス)を好ましく挙げることができる。
この中でも特に、単層のナイロンメッシュクロスは、溶媒の透過性、耐薬品性に優れ、好ましい。
【0017】
また、溶媒透過性の容器の目開きは、特に限定されないが、効率的に抽出する観点から、被抽出物の残渣が目開きから漏れない程度に粗いものが好ましく、通常5〜5000μmであり、好ましくは10〜1000μmである。
【0018】
また、溶媒透過性の容器へ、被抽出物を、被抽出物が溶媒を吸収し、膨潤したときに容器がはち切れない程度の量を封入することが好ましい。従って、溶媒透過性の容器の容積は、被抽出物の溶媒で膨潤する力を抑圧し、効率よくエキス成分を抽出する観点から、通常封入される被抽出物の膨潤体積よりも小さく、通常封入される被抽出物の膨潤体積の0.35〜0.98倍であり、0.6〜0.9倍であることが好ましい。
【0019】
具体的に、容器の容積は以下のように決定することができる。
例えば、被抽出物(乾燥植物組織10g)の膨潤体積が100mLの場合には、60〜90mLの容器、乾燥植物組織100kgからエキス成分を抽出する場合には、膨潤体積が1000Lになることから、その0.6〜0.9倍の容積、つまり600〜900Lの容積の容器を用いればよい。
【0020】
また、被抽出物の膨潤体積は、以下の方法を用いて測定することができる。
例えば、200mLのメスシリンダー内の被抽出物(乾燥植物組織10g)に対し、十分な量の抽出溶媒を加えて攪拌し、十分に膨潤させた後、メスシリンダーを静置して沈降した植物組織のメスシリンダーの目盛を読み取り、植物組織が抽出溶媒中で占める見掛け容積を測定する。
本発明においては、効率よくエキス成分を抽出する観点から、被抽出物が膨潤によって膨潤前の体積の1.2〜4倍、好ましくは 1.4〜3倍となることが好ましい。具体的には、薬用人参の場合、膨潤によって膨潤前の体積の1.6〜2.5倍であることが好ましい。
【0021】
また、本発明における溶媒としては、被抽出物によっても異なるが、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、アセトンまたはそれらの混合物が挙げられ、水またはエタノールを好ましく用いることができる。具体的には、薬用人参の場合、水または水/エタノール1:1の混合物が好ましい。
【0022】
また、抽出条件は、被抽出物の種類若しくは量に応じて適宜決定することができる。抽出は、加温する方が抽出効率はよく、抽出温度は、30〜95℃、好ましくは60〜85℃で実施することができる。抽出時間は、温度によって異なるが、15〜360分、好ましくは30〜90分で実施することができる。被抽出物に対する抽出溶媒の比は、被抽出物の重量に対して5〜30倍量、好ましくは8〜15倍量の抽出溶媒にて実施することができる。
好ましい抽出条件の一例は、被抽出物として乾燥植物組織の重量に対し、抽出溶媒として10倍量の水を加え、80℃まで加温して1時間の抽出操作を行うことが好ましい。
【0023】
また、抽出操作は、任意の回数で実施することができ、抽出操作を複数回実施する場合には、同一の抽出条件(抽出温度、抽出時間等)で抽出操作を複数回実施することもでき、抽出条件を変更して実施することもできる。
また、被抽出物を封入した容器を抽出溶媒中に静置させた状態で抽出してもよいが、該容器を用いて抽出溶媒を攪拌してもよい。ただし、容器が破れない程度で攪拌する必要がある。または、抽出溶媒をポンプで循環させてもよい。
抽出操作後は、残渣の混入が少ないため、特にろ過工程を必要とせずに、エキス抽出液を得ることができる。
【0024】
本発明の方法により得られるエキス抽出液は、溶媒透過性の容器の容積を、封入される被抽出物の膨潤体積よりも小さくしたため、被抽出物の溶媒で膨潤する力が抑圧され、抽出溶媒添加量に対するエキス抽出液回収量は高い。このため、エキス固形分濃度を向上させたい場合は、抽出溶媒添加量を少なくすることが可能となり、少量の抽出溶媒で効率的な抽出を行うことが可能である。その結果、濃縮のためのエネルギーコストを低く抑えることができる。
また、得られたエキス抽出液を適当なろ材を用いて予めろ過してから濃縮してもよいが、残渣の混入が少ないので、そのまま濃縮することもでき、抽出後の工程を簡略化することができる。これによって低コストでエキスを提供することができる。
【0025】
本発明の別の態様として、上述したエキス抽出液を濃縮することを特徴とするエキス固形分濃縮物の製造方法を提供する。
本発明における抽出物を濃縮する方法としては、加熱濃縮、減圧濃縮、噴霧濃縮、真空濃縮、冷凍濃縮等が挙げられ、真空濃縮、噴霧濃縮が好ましい。
最も好ましい濃縮方法は真空濃縮であり、例えば、遠心式薄膜真空蒸発装置に抽出液を連続供給し、真空下で蒸発温度70〜85℃にて濃縮を行うことが好ましい。
また、本発明におけるエキス固形分濃縮物とは、本発明により得られるエキス抽出液を上述の濃縮方法によって濃縮し、固形分濃度40〜80%となるように調製したものである。
本発明の方法により製造されるエキス固形分濃縮物は、そのままで、または適当な担体、添加物とともに製剤化処理、加工処理、殺菌処理等を行うことによって、医薬製剤、化粧品、食品等とすることができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0027】
実施例1
被抽出物として高麗人参カルスの乾燥品(乾燥品10gの膨潤体積が90mL、含水率3.5%、平均粒径3000μm)7.5gを、目開き180μmのナイロンメッシュ製の袋に充填して封をした。ここで、袋の容積は、48mL(7.5gの高麗人参カルスの乾燥品の膨潤体積の0.71倍)である。
この充填物を300mLのガラス製ビーカーに入れ、ここに抽出溶媒として精製水80gを加え、80℃の恒温水槽にビーカーを浸して60分間抽出操作を行った。
抽出後、エキス抽出液を室温まで冷却し、冷却したエキス抽出液の重量を測定した(エキス抽出液回収量)。
さらに、ろ紙でろ過したエキス抽出液10gを秤量瓶にとり、105℃の恒温器内で水分を蒸発乾固させ、乾固物の重量を測定することにより、エキス抽出液中のエキス固形分濃度および高麗人参カルスの乾燥品7.5gから得られるエキス固形分抽出量を求めた。また、高麗人参カルスの乾燥品7.5gに対するエキス固形分抽出量からエキス固形分抽出率を求めた。
【0028】
実施例2
実施例1で用いた高麗人参カルスの乾燥品7.5gを、目開き180μmのナイロンメッシュ製の袋に3.75gずつ2袋に充填して封をした。袋の容積は、24mL(3.75gの高麗人参カルスの乾燥品の膨潤体積の0.71倍)である。それ以外は実施例1と同様にして行った。
【0029】
実施例3
実施例1で用いた高麗人参カルスの乾燥品7.5gを、目開き180μmのナイロンメッシュ製の袋に2.5gずつ3袋に充填して封をした。袋の容積は、16mL(2.5gの高麗人参カルスの乾燥品の膨潤体積の0.71倍)である。それ以外は、実施例1と同様にして行った。
【0030】
実施例4
高麗人参カルスの乾燥品(乾燥品10gの膨潤体積が95mL、含水率4%、平均粒径3000μm)75kgを、目開き180μmのナイロンメッシュ製の袋に、4.2kgずつ18袋に充填し封をした。1袋の容積は、35Lであり、高麗人参カルスの乾燥品の膨潤体積の0.88倍である〔35000÷(4200÷10×95)=0.88〕。
これを1200Lのステンレス製の抽出タンクに入れ、ここに精製水800kgを加え、80℃に加温して60分間抽出操作を行った。このとき、抽出溶媒を循環ポンプによりタンク下部からタンク上部まで循環させた。
抽出後、エキス抽出液を室温まで冷却し、冷却したエキス抽出液の重量を測定した。
さらに、ろ紙によりろ過したエキス抽出液10gを秤量瓶にとり、105℃の恒温器中で水分を蒸発乾固させ、乾固物の重量を測定することにより、エキス抽出液中のエキス固形分濃度および高麗人参カルスの乾燥品75kgから得られるエキス固形分抽出量を求めた。また、高麗人参カルスの乾燥品75kgに対するエキス固形分抽出量からエキス固形分抽出率を求めた。
【0031】
比較例1〜3
実施例1で用いた高麗人参カルスの乾燥品7.5gを袋に入れず、そのまま300mLのビーカーに入れ、ここに精製水を比較例1では80g、比較例2では120g、比較例3では160g加える以外は実施例1と同様にして行った。
なお、エキス抽出液は、ステンレス製メッシュでカルスを濾して回収した。
【0032】
表1に、実施例1〜4および比較例1〜3の結果を示す。
実施例1〜4では、エキス抽出液は褐色の透明な液体として得られた。また、実施例1〜4では、抽出溶媒添加量に対するエキス抽出液回収量は高かった。このため、さらに効率的な抽出を行いたい場合は、抽出溶媒添加量を少なくすることが可能であり、これによって、エキス固形分濃度を向上させ濃縮効率を高めることができ、少量の抽出溶媒で効率的な抽出を行うことが可能である。
また、実施例1〜3では、同じ抽出溶媒添加量が80gである比較例1よりもエキス固形分抽出量が高く、袋の数を増すほどエキス固形分抽出量が高かった。このため比較例2、3のように、抽出溶媒添加量を増やさずに、高いエキス固形分抽出量が得られ、効率的な抽出を行うことができた。また、実施例4は、実生産機スケールで実施したものであるが、実施例4においても、実施例1〜3と同様に高いエキス固形分抽出量が得られた。
【0033】
これに対し、比較例1〜3では、エキス抽出液は褐色のやや濁りのある液体であり、夾雑物(細胞のカス)が含まれていた。
また、比較例1では、大半の水(抽出溶媒)が被抽出物である乾燥植物組織に吸収され、回収できたエキス抽出液量は少なくなった他、エキス固形分抽出量も少なくなった。
比較例2、3では、抽出溶媒添加量を増やすことによって、比較例1よりもエキス固形分抽出量は増加したが、エキス抽出液中のエキス固形分濃度が低くなった。
比較例1〜3では、乾燥植物組織による抽出溶媒の吸収が高く、抽出溶媒添加量に対するエキス抽出液回収量は低いため、実施例1〜4のように抽出溶媒添加量を少なくし、エキス固形分濃度を向上させることはできない。従って、抽出には多量の抽出溶媒を要することにより、回収されたエキス抽出液の濃縮に多大な手間を要するとともにエネルギーコストが高くなるほか、濃縮するための装置の運転コストが高くなるため、好ましくなかった。
【0034】
また、実施例1〜4では、抽出後の植物組織は抽出容器から袋ごと取り出せばよく、容器の洗浄が容易であるのに対して、比較例では抽出容器の壁面に付着した植物組織を、水等を用いて洗い流す操作や、洗い流された植物組織を廃棄のために濾す操作が必要となり、容器の洗浄に手間が掛かり好ましくなかった。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、残渣の混入が少なく、エキス固形分濃度の高いエキス抽出液を、容易に効率よく低コストで得られるエキス抽出液が製造でき、高麗人参等のエキス抽出液を効率的に製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥した被抽出物を1以上の溶媒透過性の容器内に封入し、該容器を溶媒に浸漬させてエキス固形分を溶媒抽出することを含むエキス抽出液の製造方法であって、該容器の容積が、封入される被抽出物の溶媒による膨潤体積よりも小さいことを特徴とする方法。
【請求項2】
容器の容積が、封入される被抽出物の膨潤体積の0.6〜0.9倍である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
被抽出物が植物組織である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
植物組織が薬用人参カルスである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得られるエキス抽出液を濃縮することを特徴とする、エキス固形分濃縮物の製造方法。

【公開番号】特開2010−83810(P2010−83810A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255274(P2008−255274)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】