説明

エキセナチド及び他のポリペプチド類の持続的送達

埋め込み可能なデバイス、処方物、及び埋め込み可能なデバイスからポリペプチドを放出する埋め込み可能なデバイスを製造する方法、並びにその使用方法である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2008年6月25日に提出された米国仮出願第61/075,625号明細書の優先権を主張し、そのすべての内容は、参照により本開示に含まれるものである。
【0002】
[背景技術]
例えばエキセナチド(exenatide)などの活性薬剤の徐放が有用であることが知られている。特に、長期の薬物送達が、一定の血中濃度を得る上で、また患者の服薬率を改善する上で、効果的であることが示されてきた。
【0003】
活性化合物の持続的な送達には、ヒドロゲル膜が用いられ得る。ヒドロゲル中の溶質拡散のメカニズムに関してはいくつかの理論が存在する。上述したヒドロゲルは、架橋ポリマー鎖の網目構造による間隙を複数有し、これによってより小さな分子がその構造を通って拡散することが可能である。間隙の大きさは、ヒドロゲルの化学組成、そしてその水和の程度に応じて変化する。しかしながら、これまでのヒドロゲルは、ヒトや動物の治療に有用な生理活性タンパク質を含む大きな巨大分子の送達にうまく適合したものではなかった。
【0004】
ヒトや動物の様々な病気や病態の治療に利用され得る生理活性ポリペプチド類の治療有効量の制御送達を提供する送達デバイスが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書中に記載するのは、例えばエキセナチドなどを含む生理活性ポリペプチド類を放出制御し、またこのようなポリペプチド類の放出制御に有用な埋め込み可能なデバイスを製造する、デバイス、方法及び剤である。また、本明細書中に記載するのは、特定の病気又は疾患を治療するのに有用なデバイス、方法及び剤である。
【0006】
本発明の一態様は、ポリペプチドを徐放する埋め込み可能なデバイスに関するもので、a)水和状態で平衡含水率の値が約20%〜約85%のヒドロゲルを形成し、更に、少なくとも約1000ダルトンの分子量の離型剤を含む、均一コポリマーマトリックスと、b)ポリペプチドを含み、均一コポリマーマトリックス内に実質的に収容される、固形処方物と、を含んで構成される。特定の態様では、離型剤が、非イオン性界面活性剤を含み、例えば、Brij35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(polyoxyetheylene(20)sorbitan trioleate)、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものである。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスが、乾燥状態において、約350mm以上、例えば約350mm〜約600mm、の外表面積を有する。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスが、水和状態において、約500mm以上、例えば約500mm〜約800mm、の外表面積を有する。特定の態様では、ポリペプチドが、例えばエキセナチドなどのGLP−1アナログを含む。特定の態様では、均一コポリマーが表2の処方物を用いて作製される。特定の態様では、固形処方物が、エキセナチド約98%及びステアリン酸約2%を含む。
【0007】
本発明の一態様は、ポリペプチドを被験体に徐放により送達する方法に関し、この方法は、埋め込み可能なデバイスを被験体の皮膚の下に挿入することを含み、埋め込み可能なデバイスは、少なくとも約1000ダルトンの分子量の離型剤を含む均一コポリマーマトリックスと、ポリペプチドを含む固形処方物と、を含み、固形処方物が、マトリックス内に実質的に収容される。このデバイスは、乾燥状態で又は水和状態で挿入することができる。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスは、少なくとも約2ヶ月の期間にわたりポリペプチドの徐放を提供する。特定の態様では、離型剤が、非イオン性界面活性剤を含み、例えば、Brij35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(polyoxyetheylene(20)sorbitan trioleate)、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスが、乾燥状態において、約350mm以上、例えば約350mm〜約600mm、の外表面積を有する。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスが、水和状態において、約500mm以上、例えば約500mm〜約800mm、の外表面積を有する。特定の態様では、ポリペプチドが、例えばエキセナチドなどのGLP−1アナログを含む。特定の態様では、均一コポリマーが表2の処方物を用いて作製される。特定の態様では、固形処方物が、エキセナチド約98%及びステアリン酸約2%を含む。特定の態様では、被験体が糖尿病であるか又は血糖コントロールが必要である。
【0008】
本発明の一態様は、糖尿病患者を治療する方法に関し、埋め込み可能なデバイスを糖尿病患者の皮膚の下に挿入することを含み、埋め込み可能なデバイスが、少なくとも約1000ダルトンの分子量の離型剤を含む均一コポリマーマトリックスと、GLP−1アナログ、エキセナチド、リラグルチド(liraglutide)及びこれらのアナログ、からなる群から選択されるポリペプチドを含む固形処方物と、を含み、固形処方物がコポリマーマトリックス内に実質的に収容される。特定の態様では、デバイスが、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月又は少なくとも約12ヶ月の期間にわたり、ポリペプチド有効量の毎日の放出を提供する。
【0009】
本発明の一態様は、血糖コントロールを必要とする被験体を治療する方法に関し、均一コポリマーマトリックスと、エキセナチド、リラグルチド及びこれらのアナログからなる群から選択されるポリペプチドを含みマトリックス内に実質的に収容される固形処方物と、を含んで構成される埋め込み可能なデバイスを、低血糖又は高血糖被験体の皮膚の下に挿入すること、並びにデバイスに、ポリペプチドの有効量を少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月又は少なくとも約12ヶ月の期間にわたり、毎日放出させること、を含む。特定の態様では、マトリックスが、少なくとも約1000の分子量を有する離型剤を含む。
【0010】
本発明の一態様は、埋め込み可能なデバイスを製造する方法に関し、埋め込み可能なデバイスが、治療用ポリペプチド剤を被験体に送達可能であり、埋め込み可能なデバイスからの治療用ポリペプチド剤の放出が、埋め込み可能なデバイスの成分又は成分の量を変えることにより調節可能であり、製造方法が、a)1又は2以上の重合性モノマー物質を混合すること、b)補形剤、湿潤剤、非イオン性界面活性剤、有機溶剤、アルコール、還元剤、酸化剤及び水性溶媒からなる群から選択される1又は2以上の物質を加えること、並びにc)混合物を、1又は2以上の重合性モノマー物質が1又は2以上の成分の存在下で重合して埋め込み可能なデバイスが形成される状態に供すること、を含む。特定の態様では、1又は2以上の重合性モノマー物質が、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選択される1又は2以上の化合物を含む。特定の態様では、混合物が、ベンゾインメチルエーテル、Perkadox 16及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される1以上の成分を更に含む。特定の態様では、治療用ポリペプチドの放出速度が調節可能である。特定の態様では、混合物が、重合工程に供される前に型内に配置される。特定の態様では、重合工程が、紫外線照射により開始される。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスの製造方法が、埋め込み可能なデバイスに所望の量の治療用ポリペプチド剤を装入又は装填すること、を更に含んで構成される。特定の態様では、治療用ポリペプチド剤が、例えばエキセナチドなどのGLP−1アナログを含む。特定の態様では、治療用ポリペプチド剤が、埋め込み可能なデバイス中に装入される前に湿潤剤と組み合わされて固形処方物を形成する。特定の態様では、固形処方物が、エキセナチド約98%及びステアリン酸約2%を含む。
【0011】
本発明の一態様は、HEMA約78.72%、EGDMA約0.40%、ビタミンE TDGS約0.79%、BME約0.24%、P−16約0.08%、水約9.89%及びイソプロピルアルコール約9.89%の混合物を用いて形成される埋め込み可能なデバイスに関する。
【0012】
本発明の一態様は、HEMA約78.72%、EGDMA約0.40%、ビタミンE TDGS約0.79%、BME約0.24%、P−16約0.08%及び水約19.78%の混合物を用いて形成される埋め込み可能なデバイスに関する。
【0013】
本発明の一態様は、HEMA約68.97%、EGDMA約0.35%、ビタミンE TDGS約0.69%、BME約0.21%、P−16約0.07%、水約14.85%及びイソプロピルアルコール約14.85%の混合物を用いて形成される埋め込み可能なデバイスに関する。
【0014】
本発明の一態様は、HEMA約68.97%、EGDMA約0.35%、ビタミンE TDGS約0.69%、BME約0.21%、P−16約0.07%及び約29.71%の混合物を用いて形成される埋め込み可能なデバイスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例7に記載される4つの処方物からのインビトロエキセナチド放出を示すグラフである。HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート、BME:ベンゾインメチルエーテル、P−16:Perkadox 16、IPA:イソプロピルアルコール。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の組成物と方法を記述する前に、これらは変化し得るため、これらが、記載される特定の分子、組成物、方法又は手順に限定されるものではないと理解されたい。更に、本記述に使用される用語は、特定のバージョン又は実施形態のみを記述することを目的としており、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明は添付クレームによってのみ限定されるということも理解されたい。本明細書中に使用する用語は、当業者に認識され、公知である意味を有する。しかしながら、便宜上及び完全を期して、特定の用語とその意味について以下に記載する。
【0017】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から明確に他が示されない限り、複数を含む。他に定義がない場合、本明細書中で用いられる全ての技術及び科学用語は、当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法及び材料と類似の又は等価の方法及び材料のいずれも、本明細書に記載される実施形態の実施又は試験に用いることができるが、好ましい方法、デバイス及び材料を以下に記載する。本明細書に記載の全ての刊行物は、本発明を支持する範囲で、参照により本明細書の一部を構成する。本明細書中のいかなる事項も、先行発明に基づき、本発明がそのような開示に先行する資格がないと認めているとの解釈をされるべきではない。
【0018】
本明細書中で使用する用語「約」は、使用されている数字のプラスマイナス10%の数値を意味する。例えば、約50%とは、40%〜60%の範囲内であることを意味する。
【0019】
「放出制御処方物」は、ポリペプチドや合成化合物などの薬物又は他の活性薬剤の所定の治療有効量が、長時間にわたり一貫して放出されるようにデザインされ、その結果として、所望の治療効果を得る上で必要となる治療の数を減らすことができる処方物を示す。本明細書に記載のように、制御処方物は、所望の効果を得る上で必要となる治療の数を減少させる。放出制御処方物は、被験体内で所望の薬物動態プロファイルを達成し、好ましくは、送達環境中に配置された実質的直後に、活性薬剤の放出が開始され、その後活性薬剤の放出が一貫して持続され、好ましくは、ゼロ次、実質的にゼロ次又はほぼゼロ次である。
【0020】
本明細書中で使用する用語「放出制御」は、活性薬剤の毒性量より低く治療に有益な血中濃度が、例えば、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月又はそれ以上(例えば、最長で約2年)の期間にわたって維持されるような速度で、投与処方物からの活性薬剤の所定の一貫した放出を含む。
【0021】
用語「患者」及び「被験体」は、ヒトを含むすべての動物を意味する。患者又は被験体の例には、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ及びブタが含まれる。
【0022】
本明細書中で使用する用語「製薬上許容される塩、エステル、アミド及びプロドラッグ」は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答等が無く、患者の組織に接触して使用するのに好適である、本発明の化合物の、カルボキシレート塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド及びプロドラッグを示す。これらの使用は、妥当なリスク対効果比に見合い、かつ意図する用途に有効である。可能であれば両性イオン型も使用できる。例えば、本明細書中に記載の化合物は、例えば、水、エタノールなどの製薬上許容される溶剤との溶媒和形態又は非溶媒和形態で存在してよい。一般に、本発明の目的において、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であると考えられる。
【0023】
用語「プロドラッグ」は、例えば、血液中の加水分解により、インビボで迅速に変形して、処方物の親化合物を生じる化合物を示す。参照することにより本明細書の一部を構成する、T.Higuchi及びV.Stella,“Pro−drugs as Novel Delivery Systems,”A.C.S.Symposium Seriesの14巻、及びBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987、中で検討が行われている。
【0024】
用語「塩」は、本発明の化合物の相対的に無毒の、無機及び有機酸付加塩を示す。これらの塩は、化合物の最終の単離と精製の間に現場製造できるか、又はその遊離塩基の形態の精製化合物を好適な有機又は無機酸と別々に反応させ、そうして得られた塩を単離することにより製造できる。代表的な塩には、酢酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシレート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸、ラクトビオン酸塩及びラウリルスルホン酸塩などがある。これらには、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の、アルカリ金属及びアルカリ土類金属に基づくカチオン、並びに無毒アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等が挙げられる(例えば、その全体について参照することにより本明細書の一部を構成する、S.M.Barge等,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977,66:1−19を参照)。
【0025】
本明細書中で使用する用語「活性薬剤」又は「薬物」は、送達されて臨床的に有用な結果を生じ得るあらゆる薬剤を包含する。本明細書に記載の目的において、活性薬剤又は薬物は、埋め込み可能なデバイスから送達されて所望の臨床効果を発揮し得るポリペプチドである。固体又は液体形状の活性薬剤は、水性系で十分な溶解性又は混和性を有することで、ヒドロゲル膜を通して送達環境へ放出され得る。活性薬剤には、合成及び天然のポリペプチド類及びそのアナログを含み、また、生理学的に又は薬理学的に活性であり(「生理活性ポリペプチド」)、動物において局部的又は全身的な効果を生じるポリペプチドを含むが、これらに限定されるものではない。ポリペプチド活性薬剤は、例えば、糖調節効果を有し得て、例えば、血糖値を下げ、グルコース調節を改善し、膵臓のグルカゴン放出を抑制し、胃内容排出を遅らせ、及び/又は動物若しくはヒトの食欲を減退させる。
【0026】
本明細書中で使用する用語「ポリペプチド」は、モノマーアミノ酸(「アミノ酸残基」)がペプチド又はジスルフィド結合を介して互いに結合したポリマーを示す。また、全長天然アミノ酸配列、天然配列のアナログ、又はその、例えば、長さで約8〜約500個のアミノ酸のフラグメントも示している。本発明のポリペプチド類は、天然のものでも合成のものでもよい。ポリペプチド配列には、例えばβアラニン、フェニルグリシン及びホモアルギニンなどの人工アミノ酸を含むことができる。本発明に使用されるポリペプチド類のすべてのアミノ酸は、D体又はL体いずれの光学異性体とすることもできる。ペプチド核酸(PNA)もまた、本発明の範囲に包含される。PNAは、例えば、N−(2−アミノエチル)グリシンユニットからなり、グリシンの窒素にメチレンカルボニルリンカーを介して有機塩基(A、G、C、T又はU)が結合するポリペプチド様無機骨格を有するDNA模倣体である(Nielsen,P.等,Bioconjug.Chem.,5:3−7,1994)。本発明の方法やデバイスに好適なポリペプチド活性薬剤には、例えば、長さで約3アミノ酸(aa)〜約200aa、長さで約8aa〜約150aa、長さで約15aa〜約100aa、長さで約25aa〜約75aa、長さで約30aa〜約50aa、又は長さで約39aa〜約50aaとすることができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、長さで約5aa〜約20aa、又は長さで約5aa〜約12aaである。他の実施形態では、ポリペプチドは、長さで約30aa〜約50aa、又は長さで約39aa〜約50aaである。好適のポリペプチド活性薬剤には、約500ダルトン〜約100,000ダルトンの範囲の分子量を有するものが含まれ、特に、約500ダルトン〜約50,000ダルトン、約500ダルトン〜約25,000ダルトン、及び約500ダルトン〜約10,000ダルトンの範囲の分子量を有するものが含まれ、また、約1,000ダルトン〜約8,000ダルトン、約1,000ダルトン〜約6,000ダルトン、約2,000〜約5,000ダルトン、又は約3,000ダルトン〜約5,000ダルトンの範囲の分子量を有するものが含まれる。
【0027】
「治療」は、患者が患っている場合に、虚弱又は疾患を予防(防止)又は治療するために、患者に対し、医薬の投与又は医療処置を行うことを示す。
【0028】
「治療有効量」は、病状に付随する症状を減じる、予防する又は改善するのに十分な量である。
【0029】
本明細書中には、ポリペプチド類及びそのアナログの送達に適した均一な多孔性ヒドロゲルによる埋め込み可能な送達デバイスと、そのデバイスを製造する方法が記載されている。このデバイスは、被験体に埋め込まれるとその被験体にポリペプチド活性薬剤の持続的な送達を提供する。
【0030】
ヒドロゲルは、水性環境中における分子の拡散を可能とする。ヒドロゲル内の水には、ポリマーマトリックスに結合した「Z」ウォータ、ポリマーマトリックスからの影響を部分的に受ける「Y」ウォータ、及びポリマーマトリックスからの影響を受けないバルク又は「X」ウォータを含む、3つのクラスがあると仮定されている。この理論は、ヒドロゲル膜を通しての親水性溶質の拡散は、溶質の分子の大きさやヒドロゲルの含水量に依存する、及び浸透はバルク水を介して起こる、という概念とともに拡張されている(Refojo,M.及びLeong,F.、J.Polymer Sci.:Polymer Symp.、66:227−237、1979、Kim,S.等、ACS Symp.Ser.、127:347−359、1980)。
【0031】
本明細書中に記載されるように、重合性材料による混合物中の特定の液体拡散エンハンサ(これは重合後も液体のままである)を包含することにより、均一に分散した孔であって、ヒドロゲルの架橋ポリマー鎖の網目構造を通る、より大きな分子の拡散を促進するようなサイズの孔を有するヒドロゲルが生成される。これら液体拡散エンハンサのこの他の特徴や利点は本明細書中に記載する。
【0032】
本発明は、ポリペプチド類が「ペグ化」されているときに特に有用となり得る。これは、このプロセスが、ポリエチレングリコール(PEG)部分によって元の分子量を大きく増加させるためである。本明細書で使用する「ペグ化」は、ポリペプチド活性薬剤にPEGを付加する手法を示す。この手法は、ポリペプチド類を免疫系に気づかれにくくし、その半減期を改善することで、ポリペプチド類を安定化させることが知られている。
【0033】
1又は2以上のポリペプチド活性薬剤は、生物学的に不活性なポリマーマトリックスで作られたカートリッジに包埋され又は実質的に収容されて、被験体に埋め込まれたときにポリペプチドを徐放するのに適した送達デバイスを形成する。このデバイスに使用されるカートリッジは、代表的には円柱形中空チューブであり、使用されるポリマーの種類に応じて、押出、射出成形、反応射出成形、圧縮成形又は回転成形により作られる。このような円柱形中空チューブは、1又は2の開放端を有してもよい。成形の後、その中空コア、又はカートリッジのリザーバ内に、ポリペプチド活性薬剤が導入される。追加の重合性液体材料をコア開口部に導入し、重合させてカートリッジをシールしてもよい。
【0034】
型を用いてカートリッジを作製するこれらの実施形態では、カートリッジを型から外す助けとするために、カートリッジのポリマーマトリックスに1又は2以上の離型剤を必要に応じて存在させる。代表的には、離型剤は、最終的にカートリッジを形成する重合性材料を型に導入する前にその重合性材料と組み合わせる。
【0035】
埋め込み前に、埋め込み可能な処方物を、所定の期間について必要に応じて水和又は「プライミング(priming)」することができる。プライミングにより、活性成分がヒドロゲルの壁に浸潤及び飽和し始め、また、場合によっては、インプラントをプライミングする時間に応じて埋め込みの前にヒドロゲルから浸出し始める。プライミングしたインプラントは、埋め込みと実質的に同時に活性成分を放出し始め、埋め込みの直後に薬物放出のピークを示すことができる。一方、プライミングをほとんど又はまったくしなかった場合、インプラントが水和されて活性成分が放出され始めるまでの期間は埋め込みによる活性成分の放出が実質的にないという結果になる。このようなプライミングの特徴は、使用される特定の処方物に依存する。
【0036】
親水性又は疎水性など、活性成分の種類に応じて、適切なコンディショニング及びプライミングメディアが選択される。親水性の活性成分には、水性のメディアが好ましく、疎水性の活性成分には、油性のメディアが好ましい。あるいは、特定のインプラント(埋め込み片)は埋め込み前のプライミングを必要としない。プライミングは活性薬剤の送達をその制御により改善するが、場合によっては、インプラントをプライミングする際に余分にかかる時間と煩わしさを正当化できるほどには、被験体への埋め込み前のプライミングが送達に影響しないこともある。
【0037】
本発明を実施するときに有用な水和液は、代表的には、活性化合物が放出されることになる環境をシミュレートした液体で例えば、体液、滅菌水、涙液、生理食塩水、リン酸緩衝液などである。水以外の液体が水和液として有用であるが、親水性膜が水和される程度は、その「含水率」と呼ぶ。
【0038】
薬物送達デバイスのプライミング及びコンディショニングには、リザーバを囲むポリマー内に薬物を装填し、そうしてインプラントが実際に使用される前に活性成分が損失することを防ぐことも含まれる。コンディショニング及びプライミング工程に用いられる条件は、活性薬剤、温度及びこれらの工程が行われるメディアに応じて決まる。コンディショニング又はプライミングの条件は、いくつかの場合で共通とすることができる。
【0039】
薬物送達デバイスの準備プロセスにおけるコンディショニング及びプライミング工程は、特定の薬物について所定の放出速度を得るために行われる。親水性薬物を含むインプラントのコンディショニング及びプライミング工程は、水性メディア中、例えば食塩水中、で行うことができる。疎水性薬物には、メディアとしては、例えばシクロデキストリンを含む血漿様メディアを用いることができる。コンディショニング及びプライミング工程は特定の3つのファクターを制御して行われ、すなわち、温度、メディア及び時間である。
【0040】
当業者であれば、薬物送達デバイスのコンディショニング及びプライミング工程が、デバイスを配置するメディアに影響されることは理解されよう。
【0041】
薬物送達デバイスのコンディショニング及びプライミングに用いられる温度は、広い温度範囲内で変化させることができるが、いくつかの実施形態では37℃を用いる。
【0042】
薬物送達デバイスのコンディショニング及びプライミングに用いられる時間は、特定のインプラント又は薬物に求める放出速度に応じて、約1時間から、約1〜約12時間、約2〜24時間、約1日、又は最長で数週間(例えば、6週間)の範囲で変化させることができる。
【0043】
当業者であれば、適切な又は必要なインプラントのコンディショニング及びプライミング工程が、インプラント内に含まれる薬物の放出速度を最適化することが理解できるであろう。したがって、薬物送達デバイスのコンディショニング及びプライミングを、より短い時間で行った場合、より長くコンディショニング及びプライミング工程を行った同様の薬物送達デバイスと比較して、例えば、薬物の放出速度はより小さくなる。しかしながら、プライミングを行わなかった場合に、長期間にわたって(例えば、28週間かそれ以上)有効な放出が起こることが予想外にわかり、より低い血清中の活性成分濃度によって改善効果があることもわかった。
【0044】
コンディショニング及びプライミング工程での温度もまた、放出速度に影響し得て、より低い温度では、より高い温度で処理した同様の薬物送達デバイスと比較して、薬物送達デバイスに含まれる薬物の放出速度はより小さくなる。同様に、例えば食塩水などの水溶液の場合にもその溶液の塩化ナトリウム量が、薬物送達デバイスの放出速度を決定する。すなわち、より低い塩化ナトリウム量では、コンディショニング及びプライミング工程をより高い塩化ナトリウム量で行った薬物送達デバイスと比較して、薬物の放出速度はより大きくなる。
【0045】
インプラントの位置を特定するために、放射線不透性材料を、リザーバ内に挿入することにより、またカートリッジをシールするために使用される端栓に形成して、送達デバイスに組み込むことができる。
【0046】
ヒドロゲルの製造方法の詳細は、例えば、米国特許第6,361,797号に記載されており、そのすべての内容は、参照により本開示に含まれるものである。マトリックスの作製に使用される反応混合物に利用され、モノマー、コモノマー、拡散エンハンサなどを含む材料は、好ましくは生物学的に適合性があり、また生物学的に不活性なものであって、例えば、動物又は人体に有意な影響を与えないものである。いくつかの実施形態での上記した材料は、USDAにより動物への使用について及び/又はFDAによりヒトへの使用について、すでに承認されている。しかしながら、このようにすでに法的な承認を受けていることが条件ではない。好適な材料の選択は、当技術分野における技術で十分に行えるものである。
【0047】
デバイスの均一多孔性ヒドロゲルの製造に有用な重合性材料には、様々な種類の親水性エチレン性不飽和化合物が含まれ、特に、親水性モノマーであって、アクリル酸(例えば、メタクリル酸)と、エステル化可能なヒドロキシル基及び少なくとも1つの別のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物のモノエステル、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸のモノアルキレン及びポリアルキレンポリオールなど、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート及びアクリレート、プロピレングリコールメタクリレート及びアクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレート及びアクリレート、グリシジルメタクリレート及びアクリレート並びにグリセリルメタクリレート及びアクリレートなど;2−アルケンアミド、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなど;N−アルキル及びN,N’−ジアルキル置換アクリルアミド及びメタクリルアミド、例えば、N−メチルメタクリルアミド、N,N’−ジメチルメタクリルアミドなど;N−ビニルピロリドン;アルキル−置換N−ビニルピロリドン、例えば、メチル置換N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム;アルキル−置換N−ビニルカプロラクタム、例えば、N−ビニル−2−メチルカプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチルカプロラクタムなど。他の好適なモノマーには、米国特許第4,303,066号に記載されるものが含まれる。望ましい実施形態では、コモノマーは上記親水性モノマーの少なくとも2つによる混合物である。また、コモノマーは、少なくとも1つの親水性モノマーと少なくとも1つの疎水性モノマーとによる混合物である。
【0048】
いくつかの実施形態では、親水性モノマーは2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)である。本発明において有用で好適なコモノマーには、HEMA及びN,N’−ジメチルアクリルアミド又はHEMA及びメタクリル酸が挙げられる。更に、他の適当なモノマー及びコモノマーについても、当技術で公知であるものの中から容易に選択可能である。
【0049】
重合性反応メディアに含むことができる有用な架橋剤には、例えば、ジ−、トリ−及びテトラ−エチレン性不飽和化合物など少なくとも2つの重合性エチレン部位を有するポリエチレン性不飽和化合物、特に、トリ−不飽和架橋剤及びジ−不飽和架橋化合物(含んでも含まなくてもよい)、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート及びジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート及びジアクリレート、及び次のポリオール、トリエタノールアミン、グリセロール、ペンタエリスリトール、1,1,1,−トリメチロールプロパン、のジ−、トリ−及びテトラ−アクリル酸又はメタクリル酸エステル;などが挙げられる。他の適当な架橋剤は、当業者により容易に選択され得る。
【0050】
拡散エンハンサは、重合性材料と混合することができる。混合は、反応メディア中で均一な分布及び分散が得られる方法(例えば、混合、回転など)で行われるが、しかしながら、拡散エンハンサ自体は重合しない。むしろ、重合反応後、これらの拡散エンハンサを含む孔が重合されたヒドロゲル材料内に形成される。したがって、拡散エンハンサは、重合反応の前後共に室温及び/又は体温で液体である。これらの化合物には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピル又はイソプロピルアルコール、アリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、アセトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリルイソプロピリデンエーテルジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド及び水が含まれる。本目的のために水溶性微粉化固体を用いることもできる。このような水溶性微粉化固体には、例えば、重合ヒドロゲル材料内に孔を残して溶解するあらゆる固体が含まれ、これには例えば、砂糖、重曹及び塩化ナトリウムが挙げられる。他の拡散エンハンサは、当業者により公知の性質によって、特に出発モノマーと混合できて水に溶解する化合物から、選択され得る。
【0051】
他で記載されている処方物とは異なり、本明細書に記載の拡散エンハンサは、回転成形の間に均一性を妨げず、したがってより均質なヒドロゲルの形成を可能にする。これらの利点は、本発明の製品を回転成形(spin or rotational casting)を用いて作製する場合に明らかである。
【0052】
1又は2以上の離型剤が、重合性反応メディアに必要に応じて含まれる。一般には、離型剤は、成形品を型から効果的に取り外すことを可能にする化合物である。本発明のデバイスについて、離形剤は代表的には、重合性材料を型に導入する前に、重合性反応メディアと組み合わされる。
【0053】
埋め込み可能なデバイスでの使用に適した離型剤は、患者に安全に導入でき、例えば製品の構造を弱めるなど成形品のポリマーと不利に反応したりせず、場合によってはポリマーカートリッジを滅菌により生じる悪影響から保護する。特定の理論に縛られるものではないが、より大きい分子量の離型剤は、より小さい分子量の離型剤よりも改良された離型特性を提供すると考えられる。離型剤はしたがって、約1000よりも大きな分子量(MW)を有することとできる。他の実施形態では、離型剤は、約1200よりも大きな、約1000〜約2000、又は約1200及び約1800の間の、分子量を有する。
【0054】
好適な離型剤には、非イオン性界面活性剤が含まれる。いくつかの実施形態では、例えば、離形剤はビタミンE TPGSである。ビタミンE TPGSは、D−α−トコフェロール(ビタミンE)ポリエチレングリコール1000スクシネートの略語である。非イオン性界面活性剤は、優れた離型特性を提供し、成形品に対し非反応性であると同時にインプラントに適した安全プロファイルを提供する。これらの離型剤は更に、抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤として作用することもでき、そのため、照射法を含む、フリーラジカルを生じ得る滅菌法による成形品の滅菌に伴う成形品への悪影響を防止又は減じることができる。特定の実施形態では、離形剤は所望のモノマー混合物に溶解する。成形プロセス時に、例えば、親水性モノマー材料、例えばHEMA、HPMA及びHBMAの組合せ、は、両親媒性離型剤、例えばビタミンE TPGS、と併用することができる。
【0055】
非イオン性界面活性剤は、当技術において公知であり、一般に、ポリエチレングリコール親水性尾部及び親油性頭部からなっていてよい。例えば、ビタミンE TPGSにおいて、親油性頭部はトコフェロールスクシネートであり、Triton X−100ではイソオクチルフェニル基である。非イオン性界面活性剤は、いくつかのパラメーター、例えば、ポリエチレングリコール尾部対親油性頭部のサイズに関係する親水−親油バランス(HLB);ミセルが生じる界面活性剤の濃度である臨界ミセル濃度(CMC);及び同様の特性を有する他の界面活性剤と比較した親水性及び親油性部分のサイズを示すMW;により特徴づけられる。更に、CMCは、界面活性剤の表面活性の指標であり、低いCMCは、より強い結合力ゆえに、より安定なミセルの指標である。以下の表1に、いくつかの界面活性剤とその物理特性をリストアップする。
【0056】
【表1】

【0057】
埋め込み可能なデバイスと組み合わせて使用する追加の離型剤として、限定を意図するものではないが、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(polyoxyetheylene(20)sorbitan trioleate)、ポリオキシエチレン(10)イソオクチルフェニルエーテル等、又はこれらの離型剤の組合せが挙げられる。
【0058】
特定の実施形態では、離型剤は、脂肪酸又は他の疎水性化合物の、ポリオキシエチレンエステルである。これらの化合物は、当技術において公知であり、ポリオキシエチレン尾部及び飽和又は不飽和疎水性頭部を含む。様々の実施形態の疎水性部分は、例えば、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、トコフェロール、ビタミンE等の任意の芳香族基含有部分又は多環式芳香族部分を含んでよく、かつイソプレノイド又は非イソプレノイドであってよい。これらの芳香族部分と結合する側鎖は、任意の長さであって良く、更に、任意の数の二重結合及び/又は置換基を含むことができる。例えば、非イオン性界面活性剤には、限定を意図するものではないが、任意のイソ型、ラセミ化合物又は化学修飾誘導体を含む天然又は市販のトコフェロール、例えばビタミン E TPGS、がある。トコフェロール類として、トコフェロール類の酸化生成物を挙げることができ、例えば、α−トコフェロール、トコフェロールキノン類、トコフェロールヒドロキノン類、エポキシトコフェロール類及びニトロトコフェロール類の酸化生成物などである。
【0059】
重合性混合物は、例えば、コモノマーを架橋剤及び拡散エンハンサと混合することで形成され、例えば重量で、約50%〜約95%、約60%〜約90%、又は約75%〜約85%、の重合性モノマーを混合物に含むことができる。一般に、架橋剤は、重量で混合物の約0.1%〜約5%、約0.5%〜約3%、及び約1%、の量が加えられる。拡散エンハンサは、一般に、混合物の重量で、約1%〜約50%、約5%〜約40%、約10%〜約30%、又は約20%の量で含まれる。
【0060】
重合性混合物は、重合してポリマー又はコポリマーマトリックスを生じることができる。重合反応は、バルクで又は不活性溶媒を用いて、行うことができる。好適な溶剤には、限定を意図するものではないが、水、有機溶剤、例えば水溶性低級脂肪族一価アルコール類及び多価アルコール類、例えばグリコール、グリセリン、ジオキサン等並びにこれらの混合物がある。
【0061】
重合性エチレン性不飽和化合物の触媒において有用な化合物には、ビニル重合においてよく使用されるタイプのフリーラジカル化合物及び/又は開始剤、例えば、有機過酸化物、過炭酸塩、過酸化水素及びアルカリ金属硫酸塩など、が含まれる。説明のための例としては、限定を意図するものではないが、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボネート、過酸化水素、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカルボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−sec−ブチルペルオキシジカルボネート、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、及び硫酸ナトリウムがある。一実施形態において、触媒は、例えば約20〜80℃などの適度な低温で効果的である(例えば、tert−ブチルペルオクトエート、過酸化ベンゾイル、及びジ(secブチル)ペルオキシジカルボネート)。
【0062】
慣用の酸化還元重合触媒を使用することができる。エチレン化合物の重合は、例えば、放射線、例えば、紫外線、X線、ガンマ線照射、マイクロ波又は他の公知の形態の放射線を使用して行うことができる。紫外線硬化用触媒の一例は、ベンゾインメチルエーテルである。触媒及び/又は開始剤及び/又は放射線は、重合反応を最適化する触媒有効量で用いられる。酸化還元開始の利点は、反応が例えば0℃〜50℃の低温で、適度な速度で起こること、及び水の存在下で起こることにある。当技術において、フリーラジカルを生じる還元剤−酸化剤ペアが多数知られている。例としては、重硫酸ナトリウムと過硫酸アンモニウム、及びチオ硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムなどがある。触媒及び/又は開始剤及び/又は放射線が、重合反応を最適化する触媒有効量で用いられる。
【0063】
重合反応は、埋め込み可能なデバイスを構成するために用いられるカートリッジを形成する型又は重合カラム内で行われることとすることができる。カートリッジは、当技術において知られる任意の方法を用いて、重合性混合物から作製可能であり、これは例えば、押出、射出成形、反応射出成形、圧縮成形又は回転成形である。
【0064】
カートリッジを形成するために、上記のように調製した単数若しくは複数のモノマー又は重合性材料を型又は重合カラムに導入する。本明細書中に記載する型及び重合カラムは、円筒形の内面を有するので、カラム内側の横断面は環状形状で、直径はほぼ等しくかつ滑らかである。様々な実施形態の型又は重合カラムは、例えば、限定はしないが、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンを含むプラスチック;金属;ガラス等のような任意の好適な材料から製造され得る。ある実施形態では、カラムは、カラムの重合域に電磁放射を到達させ得る材料から製造でき、特定の実施形態では、ガラス、例えばPyrex(商標)、を使用して、型又は重合カラムを製造する。
【0065】
いくつかの実施形態では、カートリッジは遠心鋳造又は回転成形で製造される。このうちいくつかの実施形態では、カラムの一端は閉じられ、他端は開口であって、重合カラム又は型がその長手方向軸周りの回転に適合した適当なサイズのカートリッジは重合カラム又は型を製造すること、モノマーをカラム又は型に導入すること、モノマーをカラム又は型の内面に沿って半径方向外側に移動させるのに十分な速度で、カラム又は型をその長手方向軸周りに回転させ、また地面と実質的に平行となるようにこれを維持して、モノマーをコアを有する円筒形形態とすること、モノマーを重合させてこれを同心の円筒形コアを有する固形成形品に加工すること、及び製品、すなわちリザーバカートリッジ、を回収すること、によりカートリッジを製造する。型又は重合カラムを回転させる速度は、製造するカートリッジのサイズ、使用する重合性材料の種類、及び離型剤の有効性に応じて、変えることができる。例えば、いくつかの実施形態では、回転速度は約1000rpm未満から6000rpm超であってよく、特定の実施形態では、約2150rpmであってよい。
【0066】
カートリッジ中の重合性材料を、必要に応じて硬化させることもできる。硬化は、使用される重合性材料の種類と製造されるカートリッジのサイズに応じて、当技術において知られる数多くの方法のうち任意のもので、また任意の期間で、行うことができる。例えば、重合性材料が所定の形状に達したときに、型又は重合カラムに紫外線を一定の期間、例えば約1〜10分間、照射し、重合性材料の重合を開始することができる。その後、カートリッジに熱硬化及び焼きなましを施すこともできる。いくつかの実施形態では、カートリッジは、約60分間約100℃までの温度で熱硬化させて、続いて約30分間約120℃までの温度で後硬化させ、また約130℃までの温度で、約30分間焼きなまし、続いて周囲温度(約25℃)まで徐々に冷却される。硬化カートリッジを、型又は重合カラムから取り出し、洗浄して余剰の離型剤の除去及び/又は孔形成剤の抽出を行い、研磨して滑らかで傷のない(unscored)表面とする。カートリッジの閉端を楕円様円筒プロファイルに成形及び研磨した後、滑らかで傷のない柱面を有する小さな円筒形状の目的物を得た。カートリッジの代表的な寸法は次の通りであり、内半径は0.98mm、外半径は1.3mm、長さは25mmである。
【0067】
埋め込み可能なデバイスの形成に円筒形カートリッジが用いられるいくつかの実施形態では、水和したカートリッジの長さは約5mm〜約60mmとすることができ、外径は約1.5mm〜約5mmとしてもよい。離型剤は任意のサイズのインプラントに用いることができるが、いくつかの実施形態では、離型剤はより大きな埋め込み可能なデバイスの製造で用いられる。非イオン性界面活性剤離型剤を用いて製造する水和カートリッジの長さは、例えば、約40〜約60mm、外径は、約3〜5mmとすることができる。いくつかの実施形態では、水和カートリッジの長さは45〜60mmであり、外径は約3.5〜4.8mmである。理論に縛られることを望むものではないが、非イオン性界面活性剤の離型剤は、カートリッジの製造の間使用される型内の表面張力を打ち消すことができ、カートリッジが型から容易に離れられるようにすることができる。より大きな動物はより大きな薬物送達デバイスの移植に耐えうるので、特定の実施形態では、より大きなカートリッジは、例えば、羊、乳牛、山羊、畜牛等のより大きな動物又は家畜に使用できる。
【0068】
インプラントの外表面積、例えば、ポリマーカートリッジ又は中空チューブの外表面領域は、変化させることができる。いくつかの実施形態では、ポリマーカートリッジの表面積は、約350mm〜約1500mmとすることができる。水和インプラント及びキセロゲル(例えば、非水和又は乾燥)インプラントは、異なる寸法を有し、したがって異なる表面積を有する。いくつかの実施形態では、離型剤は、より大きなインプラントデバイスの製造に用いられる。例えば、キセロゲル、非水和、又は乾燥インプラントは、約350mm以上の表面積を有することができる。あるいは、キセロゲル、非水和、又は乾燥インプラントは、約350mm〜約1500mm、又は約350mm〜約600mmの表面積を有することができる。例えば乾燥インプラントは、378mm〜660mmの表面積を有することができる。更に、水和インプラントは約500mm以上の表面積を有することができる。あるいは、水和インプラントは、約600mm〜約1500mm、又は約600mm〜約800mmの表面積を有することができる。本明細書中で使用する用語「水和インプラント」は、5%(wt)又はそれより高い含水率を有し、したがって柔らかく柔軟なインプラントを示す。本明細書中で使用する用語「乾燥インプラント」は、硬く柔軟性のないインプラントを示し、いくつかの実施形態では、含水率は5%(wt)未満であり、他の実施形態では1%(wt)未満である。
【0069】
埋め込み可能なデバイスは、当技術において知られる任意の好適な手段で、例えば、穿孔(皮下埋め込み術用)により、又は、例えば観血手術等の他の手段により、ヒト又は他の動物の皮下に挿入可能である(米国特許第5,266,325号、これは、デバイスの埋め込みに利用可能な方法及びデバイスの例を開示し、その内容は、参照により本開示に含まれるものである)。埋め込み可能なデバイスは、例えば穿孔により、ヒト又は動物に皮下挿入することができる。加えて、2以上のデバイスをヒト又は動物に同時に、例えば実質的に同時に、埋め込んで、複数のデバイスがインプラントとしてヒト又は動物内に存在するようにすることもできる。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのデバイスがヒト又は動物に埋め込まれる。あるいは、複数のデバイスを順次埋め込んで、どの時点においてもヒト又は動物内には1つのデバイスのみが存在するようにすることもできる。このようなデバイスは、10〜50mm又はこれ未満(例えば6〜9mm)の長さ、2〜5mm又はこれ未満(例えば1.5〜1.9mm)の外径により特徴付けられる。カートリッジの寸法は、特に、関係する医療用途に応じて、上述した範囲外に変化させることもできる。例えば羊、乳牛、山羊、畜牛等の動物、及び大きな動物は、一般により大きな寸法の埋め込み可能なデバイスの穿孔による埋め込みにも耐えることができる。
【0070】
本明細書中の記載から、例えば、25cmまで及びより長い、様々な長さの滑らかで傷のない円筒形状の目的物もまた製造が可能である。水和状態にあり又は無毒で生体適合性の材料で可塑化されたこのような目的物は、腟坐剤、手術用インプラント等用として、例えばリング状など、所望の形状に形成することができる。更に他のデバイスを、当業者に公知の技術を用いて製造することもできる。
【0071】
埋め込み可能なデバイスは、所定の量の1又は2以上のポリペプチド活性薬剤を、必要に応じて製薬上許容される担体と組み合わせて、上記の方法で得られたカートリッジのリザーバ又はコアに導入することにより製造される。
【0072】
埋め込み可能なデバイス中の活性薬剤としての使用に適したポリペプチド類には、限定を意図するものではないが、成長因子類、インターフェロン類、インターロイキン類、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM CSF)、神経成長因子類等がある。ポリペプチド類の他の例としては、エキセンディン類(例えば、エキセンディン4、エキセナチド及びリラグルチドが含まれる);アミリンアナログ類(例えば、プラムリンチド);副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CFR)及びCFRレセプター拮抗薬(例えば、アストレシンを含む);β−エンドルフィン類(例えば、β−リポトロピンを含む)及びγ−エンドルフィン;エンドスタチン類;ガラニン類;胃抑制性ペプチド;グレリン類(例えば、グレリン及びオベスタチン);グルカゴン;グルカゴン様ポリペプチド類を含むインクレチン類;膵臓ポリペプチド類;回腸又は大腸で産生されるポリペプチド類(例えば、PYY3−36を含む);アディポカイン類(例えば、オメンチンを含む);レプチン;オキシントモデュリン;脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)類;ソマトスタチンアナログ又は擬態、例えばオクトレオチドなど;エネルギー支出がよいポリペプチド類(例えば、メラノコルチン、α−MSH、及びPOMC(プロオピオメラノコルチン)及びCART(コカイン及びアンフェタミン調節トランスクリプト)経路を通ってシグナルを送るポリペプチド類を含む);並びにこれらのアナログ及びフラグメント、がある。
【0073】
適切なポリペプチド活性薬剤の更なる例としては、抗レトロウイルス活性を有するもの、例えば、エンフビルチド(RocheによりFuzeon(登録商標)として市販され、米国特許第5,464,933号に開示されており、そのすべての内容は、参照により本開示に含まれるものである。(Tyr−Thr−Ser−Leu−Ile−His−Ser−Leu−Ile−Glu−Glu−Ser−Gln−Asn−Gln−Gln−Glu−Lys−Asn−Glu−Gln−Glu−Leu−Leu−Glu−Leu−Asp−Lys−Trp−Ala−Ser−Leu−Trp−Asn−Trp−Phe;配列番号1))などのHIV融合阻害薬並びにそのアナログ及びフラグメントがある。埋め込み可能なデバイスでの使用に適していると考えられるポリペプチドにはまた、成長ホルモン及び成長ホルモン放出因子類(GHRF)、成長ホルモン放出ペプチド類(GHRP)、並びにそれらのアナログ及びフラグメントがある。成長ホルモン放出ペプチド類(GHRP)の例には、例えば、GHRP6、及びGHRP2(例えば、Pralmorelin(科研製薬株式会社により開発中)があり、これは米国特許第7,008,927号に開示されている。)がある。
【0074】
埋め込み可能なデバイスにおいて使用可能なポリペプチド類の他の例には、カルシトニン及びカルシトニン遺伝子関連ポリペプチド類、並びに副甲状腺ホルモン(PTH)(Ferteo(登録商標)としてEli Lilly and Co.より市販され、米国特許第6,770,623号に開示されており、そのすべての内容は、参照により本開示に含まれるものである。(Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly−Lys−His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg−Val−Glu−Trp−Leu−Arg−Lys−Lys−Leu−Gln−Asp−Val−His−Asn−Phe;配列番号2))、並びにこれらのアナログ及びフラグメントがある。
【0075】
更に、本明細書中に記載する装置及び方法に適したポリペプチド類の特定の例としては、American Peptide Company,Inc.のPeptide catalog 2006−2007、特に119,171,175,207,211,217,219,227,315,317及び329頁を参照されたい。なお、その内容は、参照により本開示に含まれるものである。また、次の米国特許及び公開特許出願も参照されたい。米国特許公開公報第20050287320号、第20070010656号、第20060293232号、第20060233747号、第20060148713号、第20060122106号、第20060035836号、第20060030528号、第20040002454号、第20030036504号、及び第20020141985号、並びに米国特許第7,271,238号、第7,259,136号、第7,220,721号、第7,153,825号、第7,118,737号、第7,115,569号、第7,105,489号、第7,101,853号、第7,056,887号、第7,008,927号、第6,969,480号、第6,942,264号、第6,872,700号、第6,770,623号、第6,602,694号、第6,579,851号、第6,417,164号、第6,143,718号、第6,087,334号、第5,686,411号、及び第5,464,933号。これらの米国特許及び公開特許出願のそれぞれのすべての内容は、その全体にわたり、参照により本開示に含まれるものである。
【0076】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド活性薬剤は、インクレチン模倣薬(mimetic)、例えば、エキセンディン(例えば、エキセンディン4、又はエキセナチド(米国特許第6,872,700号に開示されており、そのすべての内容は参照により本開示に含まれるものであり(His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser;配列番号3)、Byetta(登録商標)としてAmylin Pharmaceuticals,Inc.より市販されている)などのGLP−1アナログなど、又はそのフラグメント若しくはアナログである。例えば、いくつかの実施形態では、ポリペプチド活性薬剤は、GLP−1アナログのリラグルチド(Liraqlutide)(化学構造Arg(34)Lys(26)−(N−イプシロン−(ガンマ−Glu(N−アルファ−ヘキサデカノイル))−GLP−1(7−37)を有する)(例えば、WO2007/028394の開示)である。
【0077】
他の実施形態では、ポリペプチド活性薬剤は、アミリン模倣薬、例えばプラムリンチド(米国特許第5,686,411号に開示されており、そのすべての内容は参照により本開示に含まれるものであり(Lys−Cys−Asn−Thr−Ala−Thr−Cys−Ala−Thr−Gln−Arg−Leu−Ala−Asn−Phe−Leu−Val−His−Ser−Ser−Asn−Asn−Phe−Gly−Pro−Ile−Leu−Pro−Pro−Thr−Asn−Val−Gly−Ser−Asn−Thr−Tyr;配列番号4)注射剤型のプラムリンチドアセテートはSymlin(登録商標)としてAmylin Pharmaceuticals,Inc.より市販されている)、又はそのフラグメント又はアナログである。
【0078】
ポリペプチド活性薬剤は、遊離型又は製薬上許容される塩、例えば、酢酸塩、パモ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩又は塩酸塩、の形態で存在可能である。
【0079】
種々の実施形態では、ポリペプチド活性薬剤は1又は2以上の製薬上許容される担体と組み合わされて、溶液、エマルジョン、懸濁液等の埋め込み可能なデバイスでの使用に適したものとされる。ポリペプチド活性薬剤及び製薬上許容される担体を製剤化する方法は、当業者に公知であり、様々な薬理学的な参考文献を手引きとして参照することができる。例えば、RemingtonのPharmaceutical Sciences,Osol,A.,ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)を参照されたい。
【0080】
好適な製薬上許容される担体は、米国特許第6,361,797号に開示されているように、懸濁媒質、溶液、水溶液系、固形基質又はマトリックスの形態としてもよい。担体として有用な懸濁媒質及び溶液には、例えば、シリコーン油(特に医療グレードのもの)、トウモロコシ油、ヒマシ油、ラッカセイ油及びゴマ油等の油類;ヒマシ油及びエチレンオキシドの縮合物であり、ヒマシ油1モルあたり約30〜35モルのエチレンオキシドを含むもの;低分子量脂肪酸の液体グリセリルトリエステル類;低級アルカノール類;グリコール類;並びにポリアルキレングリコール類、がある。
【0081】
水溶液系には、例えば、滅菌水、食塩水、ブドウ糖、水又は食塩水中のブドウ糖などがある。水溶液系における電解質の存在は、その中でのポリペプチド活性薬剤の溶解度を小さくする傾向のある場合がある。
【0082】
固形基質又はマトリックスには、例えば、デンプン、ゼラチン、糖類(例えば、グルコース)天然ゴム類(例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)などがある。担体は、保存剤、安定化剤、湿潤剤及び乳化剤などの、補助剤又は追加の補形剤、希釈剤など、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などを含むもの、もまた含むことができる。補助剤や補形剤の他の例は、当業者に公知である。
【0083】
ポリペプチド活性薬剤は、固形基質又はマトリックス(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)である製薬上許容できる担体と組み合わせることができ、必要に応じて1又は2以上の追加の補形剤と組み合わせてポリペプチドを含む固形処方物を形成する。ポリペプチドが固形処方物中に含まれるこれらの実施形態では、ポリペプチドもまた固形、例えば粉体、である。固形のポリペプチドは、当技術で知られる方法を用いて得ることができ、これには、限定するものではないが、沈殿、結晶化、噴霧乾燥、風乾、凍結乾燥(真空凍結乾燥)、真空乾燥及び露天乾燥(open drying)がある。例えば、いくつかの実施形態では、固形ポリペプチドは、ポリペプチドの水溶液を真空凍結乾燥することにより準備される。粉体のポリペプチドは、顆粒の又は微粒子の形状とすることができる。ポリペプチドが非晶質構造を有しているか又は不均一で不明確な粒子サイズを有している場合、当技術において知られる任意の好適な方法を用いて更に処理を行うことで微粒子状、顆粒状の粉末を得ることとすることもでき、これには、限定するものではないが、固形ポリペプチドを粉砕すること(米国特許出願公報第2006/0067922号参照)又は固形ポリペプチドを噴霧乾燥して顆粒状の粉末を得ることが含まれる。
【0084】
いくつかの実施形態では、粉体ポリペプチドは、明確なサイズを有する粒子による(例えば、特定のサイズ範囲内の粒子)顆粒又は微粒子形状である。粒径を小さくする方法は当技術において公知であり、これには例えば、粉砕(例えば、ボールミル、ロッドミル、ハンマーミル、コロイドミル又は流体エネルギーミルを使用)がある。粒径は、当業者に公知の標準的な技術を用いて制御可能である。好適な粒径は、代表的には直径約500ミクロン以下である。ポリペプチド粒子は、約10ミクロン〜約500ミクロンの範囲の大きさとすることができる。上述の記載で特定した粒径は、例示であって、上述した粒径よりもわずかに、例えば、±20%、例えば、±10%又は±5%、変動した値の粒径も、用語「約」の使用により包含されることは理解されるであろう。
【0085】
埋め込み可能なデバイスは、デバイスのコア、例えばカートリッジに、必要に応じて1又は2以上の担体と組み合わせてポリペプチド処方物とした、1又は2以上のポリペプチド活性薬剤を導入し、その後、コアを部分的に充填することにより形成される。いくつかの実施形態では、コアを部分的に充填した後、テフロン(商標)テープなどの不活性物質の層を活性薬剤上に配置し、コア内の上記カバー上の空隙をシールしてカートリッジ内外への漏れを防止することができる。このシールは、カートリッジの作製に使用した重合性材料などの重合性材料で空隙を充填し、この重合性材料を重合してカートリッジの開口部をシールする栓を形成することにより形成することもできる。いくつかの実施形態では、栓の形成に用いられる重合性材料は、カートリッジの作製に使用される液体重合性材料とすることができ、最大水和時において、親水性カートリッジの平衡含水率値を超える平衡含水率値を有さないものとすることができる。他の実施形態において、重合性材料は、カートリッジの作製に用いられた液体重合性材料と同様の組成であるがより高い親水性を有するものとすることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド活性薬剤が充填されテフロン(商標)テープで覆われたコアを有するカートリッジ用の栓は、カートリッジの開口端をまず洗浄し適当なリーマで注意深くリーミングすることによりポリペプチド活性薬剤より上の内部表面積をわずかに増加させて作製することもできる。その後、リーミングを行った表面を、カートリッジの表面をわずかに膨張させるのに十分量の、例えばエタノールなどの、一価又は多価アルコールで洗浄する。細針シリンジを用いて、少量の液体重合性材料をカートリッジにコアの先端まで満たすように注入することもできる。その後、カートリッジを長手方向軸が地面と垂直となるように配置し、例えばラチェットを用いてカートリッジを約100rpm〜約200rpmなどの相対的に遅い速度で回転させ、カートリッジを紫外線に数分間、例えば5〜10分間曝露して、重合性材料を重合させることもできる。活性薬剤が紫外線に敏感な場合は、例えばアルミホイルなどの遮蔽物を用いて紫外線からの活性化合物を遮蔽することもできる。一般に、栓の硬化は、例えば周囲温度など、薬物に影響しない温度で行う必要がある。理論に縛られることは望まないが、カートリッジの開口端をリーミング及び洗浄することにより、重合性親水性材料の処理表面への浸透が促進される。
【0087】
充填されシールされたカートリッジは、カートリッジの製造に使用された材料と送達すべき活性薬剤とに応じて、当技術で公知の任意の滅菌技術により滅菌することができる。例えば、好適な滅菌技術としては、限定するものではないが、加熱滅菌、例えばコバルト60照射、ガンマ線照射又は電子ビームなどの放射線滅菌、エチレンオキシド滅菌などがある。特定の実施形態では、カートリッジに固定された剤は、滅菌の間、抗酸化剤又はフリーラジカル捕捉剤として働き、例えば照射による滅菌の間に形成されるフリーラジカルの悪影響を減じるか又は排除することができる。
【0088】
埋め込み可能なデバイスは、1又は2以上の上述した様々な種類のポリペプチド類の送達に容易に適応させることもできる。
【0089】
埋め込み可能なデバイスに採用されるポリペプチド活性薬剤の量は、所望の日用量だけでなく、用量レベルを維持すべき日数に応じて決められる。この量は、経験的に算出可能であるが、送達される実際の用量も、デバイスに採用された場合に材料及び担体との任意の相互作用の関数である。ポリペプチド組成物は、所望の効果に応じて異なる量で徐放組成物中に存在する。
【0090】
キセロゲルの埋め込み可能なデバイスのポリマーマトリックスは、埋め込み前に水和させてヒドロゲルとして、そのデバイスを水和状態で被験体に埋め込むことができる。あるいは、インプラントは、乾燥インプラントでの埋め込み時に自己水和させてもよく、したがってこの場合、埋め込み前にインプラントの水和は不要である。
【0091】
ヒドロゲルの作製には、ポリマーマトリックスを、典型的には水溶液又は水性メディア中に曝すことにより、水和させる必要がある。水性メディアに曝すと、キセロゲルは水性流体を吸収して、ヒドロゲルマトリックス中に相対的に均一に分散した孔を含むヒドロゲルとなる。好適には、ヒドロゲル中に形成した孔は、10オングトローム(1×10−9m)〜数ミクロンのサイズである。他の好適な範囲としては、50オングストローム〜0.1ミクロン及び0.1ミクロン〜1ミクロンが挙げられる。送達する分子が巨大分子である場合、孔の大きさは好適には50オングストローム超である。本明細書中に記載のように、孔は、拡散エンハンサを含む。
【0092】
ヒドロゲルの作製に使用される水和液は、典型的には、ポリペプチド活性薬剤が放出されることになる環境を模した液体であって、例えば、体液、滅菌水、涙液、生理食塩水、リン酸緩衝液などである。水和液としては、水以外の液体が有用であるが、親水性膜が水和された程度を「含水率」と呼ぶ。
【0093】
ヒドロゲルは水に接触しても溶解しないが、吸水は可能である。ヒドロゲルがその水和レベルの最大に達したときのヒドロゲルの含水率を「平衡含水率」(EWC)と呼ぶ。ヒドロゲルの含水率%(水和の任意の状態)は、米国特許第6,361,797号に記載のように測定される。
【0094】
本明細書中に記載するヒドロゲルは、約20%〜約90%、約35%〜約85%、又は望ましくは約50%〜約80%のEWC値を有することができる。有利なことに、本発明のヒドロゲルは、拡散エンハンサを含まない同等のヒドロゲルと比較して、大きなEWC値を有する。EWC値についてのこのような改良が放出速度の増大に対応する。
【0095】
ヒドロゲルには水で膨張する性質があり、したがって、ポリペプチド活性薬剤の通過を許容する架橋間の面積を増大させる。水和レベルを制御することで、これら活性薬剤のヒドロゲルマトリックスから例えば体内などの周辺環境への通過速度を制御することが可能である。本明細書中に記載されるように拡散エンハンサの使用により、ポリペプチド活性薬剤の通過が容易になる。より詳細には、ヒドロゲルの水和の間、拡散エンハンサは、ヒドロゲルから周辺環境中に浸出し、これにより孔を周辺環境からの水で満たすことができる。本明細書中に記載されるように拡散エンハンサの存在により、その非存在下で見られる孔よりも大きな孔の形成が可能になる。拡散エンハンサには、限定するものではないが、食塩水、等張水及びリン酸緩衝食塩水が挙げられる。この孔は、より広い空間を提供し、巨大分子活性薬剤の周辺環境への通過を可能にする。
【0096】
ヒドロゲルは、無害となるように、また一度水和すると残留モノマー又は抽出可能物を含まないように、選択することができる。さらに、ヒドロゲルは、低反応性により特徴付けられ、周辺組織になじむ(mimic)のに十分な柔軟性を有する。したがって、これらヒドロゲルは、動物、特に哺乳動物、さらには人体での使用によく適している。
【0097】
埋め込み時、デバイスは、ポリペプチド活性薬剤薬物の長期間にわたる徐放を提供する。この期間は、例えば、所望の投与計画に応じて1週間〜3年など、数日〜数年の範囲とすることができる。放出時間は、約1週間〜約18ヶ月又はそれ以上とすることができ、この時間係数は、選択した膜の放出速度、相互に連絡する孔構造、選択した活性化合物、活性化合物の液体メディア中での溶解度及び当業者に公知の他の考慮事項、に応じて可変であることが理解されよう。いくつかの実施形態では、埋め込み可能なデバイスは、ポリペプチド活性薬剤の少なくとも1ヶ月続く長期間にわたる徐放を提供する。他の実施形態では、ポリペプチドの徐放は、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月又は少なくとも6ヶ月の長期間にわたって提供される。さらに他の実施形態では、ポリペプチドの長期間の放出は、少なくとも1年続く。
【0098】
いくつかの実施形態では、上述した埋め込み可能なデバイスは、ポリペプチドを被験体に徐放で送達し、デバイスが、所定の期間にわたって、例えば、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、又は少なくとも約6ヶ月の期間にわたって、ポリペプチドの有効量を毎日放出する方法において使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、埋め込み可能なデバイスは、ポリペプチドをこれを必要としている被験体に徐放で送達する方法において使用することができ、この方法は、少なくとも約1000の分子量(MW)の離型剤を含む均一コポリマーマトリックスと、ポリペプチドを含み実質的にマトリックス内に収容される固形処方物と、を含んで構成される埋め込み可能なデバイスを、被験体の皮膚の下に挿入すること、及びデバイスが、少なくとも約2ヶ月にわたってポリペプチドの有効量を毎日放出すること、を含む。
【0099】
埋め込み可能なデバイスからの巨大分子組成物の放出プロファイルを測定する方法は、公知であり、拡散についてのフィックの第一法則の使用が挙げられる。例えば、米国特許第5,266,325号(その内容は参照により本開示に含まれるものである)を参照されたい。
【0100】
いくつかの実施形態では、埋め込み可能なデバイスは、1又は2以上のポリペプチドを動物に遅延/徐放又は即時/徐放することを提供する。「遅延/徐放(Delayed/sustained release)」は、送達環境中に配置された後、ポリペプチド活性薬剤の放出を遅延させ、その後ポリペプチドを持続的に(好ましくは0次オーダーで)放出(徐放)することと定義される。「即時/徐放(Immediate/sustained release)」は、ポリペプチド活性薬剤の放出開始が、送達環境に配置された直後又はすぐ後であり、その後ポリペプチドを徐放することと定義される。本発明の他の応用としては、工業、農業及び家庭内環境における送達制御が含まれる。
【0101】
本発明の埋め込み可能なデバイスは、ポリペプチド活性薬剤の徐放を提供するようにデザインされ、埋め込み可能なデバイスに採用された特定のポリペプチド活性薬剤に応じて、またポリペプチドが有効であることが知られた病気、疾患又は状態に応じて、ヒト及び動物の様々な状態や疾患を治療する方法において使用することができる。
【0102】
例えば、本発明のいくつかの実施形態では、ポリペプチド活性薬剤は、GLP−1アナログ(例えば、エキセナチド又はリラグルチド)であって、これは、糖調節作用であって、例えば、膵臓ベータ細胞からのブドウ糖依存性インスリン分泌の促進、血糖値の低下、血糖コントロールの改善、膵グルカゴン放出の抑制、胃排出の遅延若しくは緩徐化、及び/又は食欲の減退など、糖尿病の治療に関係するすべての効果を示す。
【0103】
したがって、上述した埋め込み可能なデバイスは、ヒト又は動物において糖尿病を治療する方法において使用することができる。いくつかの実施形態では、動物において糖尿病を治療する方法は、上述の埋め込み可能なデバイス中のGLP−1アナログを投与することを含み、この埋め込み可能なデバイスは、ヒト又は動物に長期間にわたるGLP−1アナログの治療有効量の徐放を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態では、埋め込み可能なデバイスは、ある種の糖尿病を患う被験体を治療する方法において使用することができ、この方法は、少なくとも約1000の分子量(MW)の離型剤を含む均一コポリマーマトリックスと、GLP−1アナログポリペプチド(例えば、エキセナチド、リラグルチド又はそのアナログ)を含み、マトリックス内に実質的に収容される固形処方物と、を含んで構成される埋め込み可能なデバイスを、糖尿病被験体の皮膚の下に挿入すること、及びデバイスがポリペプチドの有効量を、例えば、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、又は少なくとも約6ヶ月などの長期間にわたって、毎日放出するようにすること、を含む。
【0105】
いくつかの好ましい実施形態では、埋め込み可能なデバイスは、2型糖尿病を治療する方法においてポリペプチドを投与するために使用される。
【0106】
上述した埋め込み可能なデバイスは、GLP−1アナログの他の糖調節作用に関する他の方法、例えば、動物又はヒトにおいてブドウ糖依存性インスリン分泌を促進する方法、動物又はヒトにおいて血糖値を低下させる方法、動物又はヒトにおいて血糖コントロールを改善すること、動物又はヒトにおいて膵グルカゴン放出を抑制する方法、動物又はヒトにおいて胃排出を緩徐化する方法、動物又はヒトにおいて食欲を減退する方法、及び動物又はヒトにおいて肥満を治療する方法、においても使用することができる。したがって、埋め込み可能なデバイスは、例えば、ヒト又は動物において、高血糖を治療する方法、又はインスリン抵抗性を治療する方法、又はメタボリックシンドロームを治療する方法などにおいても使用でき、この方法は、ヒト又は動物に長期間にわたってポリペプチドの治療有効量の徐放を提供するヒドロゲルの埋め込み可能なデバイス内のポリペプチドを投与することを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、血糖コントロールが必要な被験体を治療する方法において埋め込み可能なデバイスの一つを使用することができ、この方法は、均一コポリマーマトリックスと、GLP−1アナログポリペプチド(例えば、エキセナチド、リラグルチド、及びそのアナログ)を含んで構成され、マトリックス内に実質的に収容される固形処方物と、を含んで構成される埋め込み可能なデバイスを、低血糖又は高血糖被験体の皮膚の下に挿入すること、及びデバイスが、長期間にわたって、例えば、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月の期間にわたって、ポリペプチドの有効量を毎日放出すること、を含む。
【0108】
例えば、エキセナチド又はリラグルチドなどのGLP−1アナログを上述の埋め込み可能なデバイスを用いて投与することにより糖尿病を治療する方法に係る実施形態(例えば、血糖値を低下させる方法、又は血糖コントロールを改善する方法)では、GLP−1アナログは、約10μg〜約100μg、好ましくは約10μg〜約50μg、の有効日用量で投与される(例えば、埋め込み可能なデバイスは、各日、約10μg〜約100μg、好ましくは一日あたり約10μg〜約50μgのGLP−1アナログの徐放を提供する)。
【0109】
上述の埋め込み可能なデバイスを用いてポリペプチドを投与することにより特定の状態又は疾患を治療する方法に係るこれらの実施形態では、同状態又は同疾患を治療するようにデザインされている1又は2以上の他の治療又は他の医薬と組み合わせて、ポリペプチドを投与することもできる。他の治療又は医薬は、一般的に使用される経路及び量で投与することができ、ポリペプチドと同時に又は順次投与することもできる。他の医薬又は治療は、ポリペプチドの投与前に投与されてもよい。
【0110】
他の治療又は医薬がポリペプチドと同時に投与されるこれらの実施形態では、他の治療又は医薬は、ポリペプチドと同じ経路を用いて又は別の投与経路を用いて、投与することができる(例えば、経口、吸入噴霧による又は経鼻、経膣、経直腸、舌下による非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、槽内注射又は注入、皮下注射(subcutanteous injection)、又は埋め込み)、又は局所経路の投与、が挙げられる)。他の治療又は医薬は、例えば、同じ埋め込み可能なデバイス内など、ポリペプチドとともに製剤化されてもよく、又は当技術において公知の任意の好適な用量単位処方物を用いて別々に製剤化されてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態は、エキセナチド又はリラグルチドなどのGLP−1アナログを、上述の埋め込み可能なデバイスを用いて投与することで、2型糖尿病を治療する方法(例えば、血糖値を低下させる方法、又は血糖コントロールを改善する方法)に関する。このうちいくつかの実施形態では、GLP−1アナログは、例えば、ピオグリタゾン、メトホルミン、スルホニル尿素誘導体(sufonylurea)及び/又はインスリンなどの糖尿病治療に用いられ、一般的に使用され臨床医に公知の経路及び量で投与される他の医薬と組み合わせて投与することができる。例えば、糖尿病を治療する方法(例えば、血糖コントロールを改善する方法)に関するいくつかの実施形態では、本発明のいくつかの持続送達埋め込み可能なデバイスのうちの一つを使用してGLP−1アナログエキセナチドを被験体に投与する一方で、(例えば、塩酸メトホルミンの500mg経口錠剤の形状で)メトホルミンの連日経口投与を同時に受ける。
【0112】
他の実施形態、例えば、上述した埋め込み可能なデバイスを用いて肥満を治療する方法に関する(例えば、プラムリンチドなどのアミリン模倣薬を投与することによる)実施形態では、インプラントを使用して投与されるポリペプチド(例えば、アミリン模倣薬)は、肥満を治療するためにデザインされた1又は2以上の他の薬剤とともに投与することもでき、例えば、シブトラミンの経口製剤(例えば、毎日投与される塩酸シブトラミン5、10、15mgカプセル)、レプチンの非経口製剤(例えば、注射製剤)、オーリスタットの経口製剤(例えば、Xenical(登録商標)としてHoffmann−La Roche Inc.より市販されているオーリスタットの120mgカプセル)、フェンテルミンの経口製剤、ブプロピオンの経口製剤(例えば、GlaxoSmithKleinにより市販されているWellbutrin SR)、又はリモナバント(rimonabant)の経口製剤(欧州のSanofi−AventisによりAcompliaという商品名で市販されている)が挙げられる。
【0113】
以下の実施例は、本発明を説明する目的で提供するもので、本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば、以下の実施例には特定の薬剤及び条件が概説されているが、本発明の精神及び範囲に含まれ得る変更が可能であることが理解されよう。
【実施例】
【0114】
(実施例1)
2−HEMA94.5%、プロピレングリコール5%及びジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)0.5%を含むモノマー混合物を調製した。2−HEMAは、減圧蒸留により予め精製したものである。得られた混合物に、ベンゾインメチルエーテル0.2%を加え、溶解させた。
【0115】
インプラントのカートリッジは、はじめに米国特許第5,266,325号に記載のように製造した。より詳細には、上記混合物を、窒素を10分間通気することにより脱酸素した。早期重合を防ぐため、混合物を遮光した。ポリプロピレンチューブ(65mm長及び直径(di)は2.5mm)の一端は、シリコーンシーラントで栓をし、チューブの他端は、少量の上記混合物を注入して作製した栓でシールした。この混合物はUVランプ下で5分間硬化させた。混合物で満たしたシリンジを用いて、シリコーン栓に針を通し、チューブの上端から約10mmの高さまで混合物を注入した。このチューブを旋盤コレット(lathe collet)に挿入し、約2200rpmで回転させた(回転軸は地面と平行)。チューブの回転によって生じた遠心力により、混合物を容易に外側に移動させて、所定の中空円筒状の液体配置(重合性液体混合物の中空チューブ)とした。その後、回転したチューブをUV光に7分間曝露し、「液体のチューブ」を重合させて固形の親水性チューブ(カートリッジ)とした。ポリプロピレンチューブ内のこのカートリッジを14時間65℃、その後更に40分間105℃、後硬化させ、116℃で40分間焼きなまし、その後22℃まで徐冷した。
【0116】
カートリッジをチューブから取り出し、欠陥品の点検をして、30mm長に切断した。これにより、繰り返し現れる親水性ユニットを特徴とする架橋された均一なHEMA94.5%/ポリプロピレングリコール5%/EDGMA0.5%ポリマーで作られた、正確な寸法のプラスチックカートリッジが得られた。このカートリッジの重量を記録した。
【0117】
このカートリッジは、ポリペプチド活性薬剤を密に詰めて20mm高とするのに有用である。詰められたカートリッジの重量も測定して、活性薬剤の重量を得る。カートリッジの空隙は、上述のモノマー混合物で充填する。活性薬剤を含むカートリッジの一部はアルミホイルで覆う。その後カートリッジを旋盤(lathe)に配置し、UVランプ下で5分間ゆっくり回転させて(カートリッジの回転軸は地面と平行)、混合物を重合させる。ポリマー栓の後硬化は、カートリッジを50℃に18時間維持することで行った。得られたものが埋め込み可能なデバイスである。
【0118】
(実施例2)
2−HEMA92.5%、メタクリル酸2%、5%のポリエチレングリコール200及びジメタクリル酸エチレングリコール0.5%を含むモノマー混合物を調製し、実施例1と同様に処理した。
【0119】
(実施例3)
2−HEMA74.5%、N,N’ージメチルアクリルアミド(N,N’−DMA)2%、イソプロピルアルコール5%及びジメタクリル酸エチレングリコール0.5%を含むモノマー混合物を調製し、実施例1と同様に処理した。
【0120】
(実施例4〜6)
表中に示す割合で2−HEMA及びプロピレングリコールを含むモノマー混合物を調製し、実施例1と同様に処理した(架橋剤及び触媒の濃度は一定である)。
【0121】
(実施例7)
表2の処方物を、まずHEMA、EGDMA、ビタミンE、BME及びP−16を表中に示した割合で混合して、調製した。その後、IPA及び/又は水の好適な量を加えた。
【0122】
【表2】

【0123】
得られた混合物の所定量を、ガラス型に分配し、紫外線光に曝露しながら水平回転成形工程に供した。得られた硬化ポリマーチューブを型から取り外し、チューブを更に真空オーブンで乾燥させた。薬物ペレットを単発式打錠機でエキセナチド98%及びステアリン酸2%の混合で調製した。薬物ペレットを、乾燥したポリマーチューブに装填し、両端はHEMA99.5%及びTMPTMA0.5%を含むモノマー混合物でシールした。
【0124】
このインプラントを、エキセナチド放出についてインビトロで試験し、その結果を図に示した。
【0125】
本発明は、特定の好ましい実施形態に関してかなり詳細に記載したが、他のバージョンも可能である。したがって、添付のクレームの精神及び範囲は、本明細書に含まれる記載及び好ましいバージョンに限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドを徐放する埋め込み可能なデバイスであって、
a)水和状態で平衡含水率の値が約20%〜約85%のヒドロゲルを形成し、
更に、少なくとも約1000ダルトンの分子量の離型剤を含む、
均一コポリマーマトリックスと、
b)ポリペプチドを含み、
前記均一コポリマーマトリックス内に実質的に収容される、
固形処方物と、
を含む埋め込み可能なデバイス。
【請求項2】
前記離型剤が、非イオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項3】
前記離型剤が、Brij35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(polyoxyetheylene(20)sorbitan trioleate)、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS、及びこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項4】
前記埋め込み可能なデバイスが、乾燥状態において、約350mm以上の外表面積を有する、請求項1に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項5】
前記埋め込み可能なデバイスが、乾燥状態において、約350mm〜約600mmの外表面積を有する、請求項4に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項6】
前記埋め込み可能なデバイスが、水和状態において、約500mm以上の外表面積を有する、請求項1に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項7】
前記埋め込み可能なデバイスが、水和状態において、約500mm〜約800mmの外表面積を有する、請求項6に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、GLP−1アナログを含む、請求項1に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項9】
前記GLP−1アナログが、エキセナチドである、請求項8に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項10】
前記均一コポリマーが、表2の処方物を用いて作製される、請求項1に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項11】
前記固形処方物が、エキセナチド約98%及びステアリン酸約2%を含む、請求項1に記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項12】
ポリペプチドを被験体に徐放により送達する方法であって、
埋め込み可能なデバイスを被験体の皮膚の下に挿入すること、を含み、
前記埋め込み可能なデバイスが、少なくとも約1000ダルトンの分子量の離型剤を含む均一コポリマーマトリックスと、ポリペプチドを含む固形処方物と、を含み、
前記固形処方物が、前記マトリックス内に実質的に収容される、
送達方法。
【請求項13】
前記埋め込み可能なデバイスが、乾燥状態で挿入される、請求項12に記載の送達方法。
【請求項14】
前記埋め込み可能なデバイスが、水和状態で挿入される、請求項12に記載の送達方法。
【請求項15】
前記埋め込み可能なデバイスが、少なくとも約2ヶ月の期間にわたり、前記ポリペプチドの徐放を提供する、請求項12に記載の送達方法。
【請求項16】
前記離型剤が、非イオン性界面活性剤を含む、請求項12に記載の送達方法。
【請求項17】
前記離型剤が、Brij35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(polyoxyetheylene(20)sorbitan trioleate)、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS、及びこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項16に記載の送達方法。
【請求項18】
前記埋め込み可能なデバイスが、乾燥状態において、約350mm以上の外表面積を有する、請求項12に記載の送達方法。
【請求項19】
前記埋め込み可能なデバイスが、乾燥状態において、約350mm〜約600mmの外表面積を有する、請求項18に記載の送達方法。
【請求項20】
前記埋め込み可能なデバイスが、水和状態において、約500mm以上の外表面積を有する、請求項12に記載の送達方法。
【請求項21】
前記埋め込み可能なデバイスが、水和状態において、約500mm〜約800mmの外表面積を有する、請求項20に記載の送達方法。
【請求項22】
前記ポリペプチドが、GLP−1アナログを含む、請求項12に記載の送達方法。
【請求項23】
前記GLP−1アナログが、エキセナチドである、請求項22に記載の送達方法。
【請求項24】
前記均一コポリマーが、表2の処方物を用いて作製される、請求項12に記載の送達方法。
【請求項25】
前記固形処方物が、エキセナチド約98%及びステアリン酸約2%を含む、請求項24に記載の送達方法。
【請求項26】
前記被験体が、糖尿病であるか又は血糖コントロールが必要である、請求項12に記載の送達方法。
【請求項27】
埋め込み可能なデバイスを製造する方法であって、
前記埋め込み可能なデバイスが、治療用ポリペプチド剤を被験体に送達可能であり、
前記埋め込み可能なデバイスからの前記治療用ポリペプチド剤の前記放出が、前記埋め込み可能なデバイスの成分又は前記成分の量を変えることにより調節可能であり、
前記製造方法が、
a)1又は2以上の重合性モノマー物質を混合すること、
b)補形剤、湿潤剤、非イオン性界面活性剤、有機溶剤、アルコール、還元剤、酸化剤及び水性溶媒からなる群より選択される1又は2以上の物質を加えること、並びに
c)前記混合物を、前記1又は2以上の重合性モノマー物質が前記1又は2以上の成分の存在下で重合して前記埋め込み可能なデバイスが形成される状態に供すること、
を含む製造方法。
【請求項28】
前記1又は2以上の重合性モノマー物質が、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選択される1又は2以上の化合物である、請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
前記混合物が、ベンゾインメチルエーテル、Perkadox 16、及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される1又は2以上の成分を更に含む、請求項27に記載の製造方法。
【請求項30】
前記治療用ポリペプチドの前記放出速度が調節可能である、請求項27に記載の製造方法。
【請求項31】
前記混合物が、重合工程に供される前に型内に配置される、請求項27に記載の製造方法。
【請求項32】
前記重合工程が、紫外線照射により開始される、請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
前記埋め込み可能なデバイスに、所望の量の治療用ポリペプチド剤を装入すること、を更に含む、請求項27に記載の製造方法。
【請求項34】
前記治療用ポリペプチド剤が、GLP−1アナログを含む、請求項33に記載の製造方法。
【請求項35】
前記GLP−1アナログが、エキセナチドを含む、請求項34に記載の製造方法。
【請求項36】
前記治療用ポリペプチド剤が、前記埋め込み可能なデバイスに装入される前に、湿潤剤と組み合わされて固形処方物を形成する、請求項27に記載の製造方法。
【請求項37】
前記固形処方物が、エキセナチド約98%及びステアリン酸約2%を含む、請求項27に記載の製造方法。
【請求項38】
前記混合物が、
a)HEMA約78.72%、EGDMA約0.40%、ビタミンE TDGS約0.79%、BME約0.24%、P−16約0.08%、水約9.89%及びイソプロピルアルコール約9.89%、
b)HEMA約78.72%、EGDMA約0.40%、ビタミンE TDGS約0.79%、BME約0.24%、P−16約0.08%及び水約19.78%、
c)HEMA約68.97%、EGDMA約0.35%、ビタミンE TDGS約0.69%、BME約0.21%、P−16約0.07%、水約14.85%及びイソプロピルアルコール約14.85%、並びに
d)HEMA約68.97%、EGDMA約0.35%、ビタミンE TDGS約0.69%、BME約0.21%、P−16約0.07%及び約29.71%、
からなる群より選択される混合物を含む、請求項27に記載の製造方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−526288(P2011−526288A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516610(P2011−516610)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048475
【国際公開番号】WO2009/158412
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(509297680)エンド ファーマスーティカルズ ソリューションズ インコーポレイテッド. (9)
【氏名又は名称原語表記】ENDO PHARMACEUTICALS SOLUTIONS INC.
【Fターム(参考)】