説明

エスカレータの移動手摺

【課題】エスカレータの移動手摺において、エスカレータの利用者が比較的低い身長であっても、確実に掴むことができるようにする。
【解決手段】移動手摺18は断面略C字状であり、欄干16上のガイドレール20を断面略C字状の開口部22でくわえ込むような状態で欄干16に取り付けられる。移動手摺18は、断面略C字状の背面28側に、利用者の手が引っ掛かる引掛り部30を有する。この構成により、エスカレータ10の利用者が比較的低い身長であっても、利用者が引掛り部30と移動手摺18の縁部24とを把持することができるので、移動手摺18を確実に掴むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータの移動手摺の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータの構成について、図1,2を用いて説明する。図1は、従来のエスカレータ全体の斜視図であり、図2は、従来の欄干上の移動手摺の斜視図である。
【0003】
エスカレータ110は、乗り口と降り口とからなる一対の乗降口112(図1には一方のみ示す)と、これらの乗降口112の間を無端状に連結されるとともに、駆動レール(図示せず)等に沿って循環走行する複数の踏段114と、循環走行する複数の踏段114と同期して欄干116の外周に沿ってスライドする無端状の移動手摺118とを備えている。エスカレータ110は、移動手摺118に手を掛けて、循環走行する踏段114に乗った利用者を、一方の乗降口112から他方の乗降口112へ移動させる。
【0004】
移動手摺118は、一般的に、布製のキャンバス材などを積層した積層体を樹脂または接着剤で固めて、この移動手摺118の表面をゴム材などでコーティングして形成される。移動手摺118は、断面略C字状であり、図2に示されるように、欄干116上に配置されたガイドレール120を断面略C字状の開口部でくわえ込むような状態で欄干116に取り付けられる。
【0005】
下記特許文献1には、欄干上部のガイドレールにスライド可能に取り付けられたエスカレータの移動手摺が記載されている。この移動手摺には、幅方向の両側の外表面から突出する凸部が多数設けられている。この特許文献1においては、移動手摺に掛けられた利用者の手が凸部の間に位置するので、利用者が移動手摺をしっかりと掴むことができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−114486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のエレベータの移動手摺は、上述のように断面略C字状であり、利用者の手が掛かる部分は、図2に示されるように、開口部上方の扁平形状の部分である。このため、利用者が移動手摺をしっかりと掴もうとすると、移動手摺の幅方向の両側を把持しなければならない。
【0008】
しかしながら、利用者が、身長が比較的低い人、例えば子供である場合、欄干上にある移動手摺に十分に手が届かない。このような場合、利用者は、移動手摺の扁平形状の部分に手を添えることしかできず、移動手摺の幅方向の両側を把持することができない。したがって、利用者は移動手摺をしっかりと掴むことができないという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、エスカレータの利用者が比較的低い身長であっても、確実に掴むことができるエスカレータの移動手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エスカレータに用いられる断面略C字状の移動手摺であって、欄干上に配置されたガイドレールを断面略C字状の開口部でくわえ込むような状態で欄干に取り付けられるエスカレータの移動手摺において、断面略C字状の背面側に、利用者の手が引っ掛かる引掛り部を有することを特徴とする。
【0011】
また、引掛り部は、移動手摺の長手方向に沿って延在するように形成されることができる。
【0012】
また、引掛り部は、前記背面から窪んで形成される凹部であることが好適である。
【0013】
また、凹部は、移動手摺を移動させる加圧ローラに当接する当接部を有することが好適である。
【0014】
また、前記背面は、移動手摺を移動させる加圧ローラに当接する当接部を有し、凹部は、前記当接部の領域を避けて設けられることが好適である。
【0015】
また、引掛り部は、前記背面から突出して形成される凸部であることが好適である。
【0016】
また、前記背面は、移動手摺を移動させる加圧ローラに当接する当接部を有し、凸部は、前記当接部の領域を避けて設けられることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエスカレータの移動手摺によれば、エスカレータの利用者が比較的低い身長であっても、確実に掴むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来のエスカレータ全体の斜視図である。
【図2】従来の欄干上の移動手摺の斜視図である。
【図3】本実施形態にエスカレータの移動手摺を示す斜視図である。
【図4】移動手摺の断面図である。
【図5】別の態様の移動手摺の断面図である。
【図6】別の態様の移動手摺の断面図である。
【図7】別の態様の移動手摺の断面図である。
【図8】別の態様の移動手摺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るエレベータの移動手摺の実施形態について、図3,4を用いて説明する。図3は、本実施形態にエスカレータの移動手摺を示す斜視図であり、図4は、移動手摺の断面図である。なお、以降の図中の矢印L、Wは、移動手摺の長手方向、幅方向をそれぞれ示す。
【0020】
エスカレータ10は、循環走行する複数の踏段(図示せず)の幅方向の両側に立設された欄干16と、欄干16上に設けられたガイドレール20とを備えている。ガイドレール20の外周には、踏段の循環走行と同期してスライドする移動手摺18が掛け渡されている。
【0021】
移動手摺18は、布製のキャンバス材などを積層した積層体を樹脂または接着剤で固めて、この移動手摺18の表面をゴム材などでコーティングして形成される。移動手摺18は、断面略C字状であり、これの開口部22は拡開可能である。また、開口部22を形成する断面略C字状の一対の開口端には縁部24が設けられる。
【0022】
移動手摺18をガイドレール20に取り付ける場合、開口部22を拡開して移動手摺18の内面26側に、ガイドレール20を挿入させる。移動手摺18をガイドレール20に取り付けた後は、拡開された開口部22が復元するので、ガイドレール20からの移動手摺18の脱落が防止される。
【0023】
ガイドレール20に取り付けられた移動手摺18は、欄干16の下部内の移動手摺帰路途中に設けられた駆動ローラ(図示せず)とこの駆動ローラの下側に転接するように配置された加圧ローラとの間に通される。すなわち、移動手摺18は、駆動及び加圧ローラ間に挟圧される。このとき、駆動ローラが移動手摺18の内面26に当接し、加圧ローラが内面26の反対側にある面に当接する。これらのローラの動作により移動手摺18が移動する。すなわち、駆動ローラの回転により、加圧ローラにより駆動ローラへ押し当てられる移動手摺18が循環移動する。
【0024】
本実施形態の移動手摺18は、断面略C字状の背面28側に、利用者の手が引っ掛かる引掛り部30を有する。この構成により、エスカレータ10の利用者が、例えば、比較的低い身長であり、移動手摺18の背面28の部分に手を添えることしかできず、移動手摺18の両端にある縁部24を把持することができない場合であっても、引掛り部30と踏段側の縁部24とを把持することができるので、移動手摺18を確実に掴むことができる。以下、引掛り部30の具体的な構成について説明する。
【0025】
引掛り部30は、移動手摺18の長手方向に沿って延在するように形成される。すなわち、引掛り部30は、移動手摺18と同様、無端状に形成される。これにより、利用者は、移動手摺18または踏段の位置に係わらず、引掛り部30を必ず使用することができる。なお、本実施形態においては、引掛り部30が移動手摺18の長手方向に沿って延在するように形成される場合について説明したが、この構成に限定されない。利用者が引掛り部30を不自由なく使用することができるのであれば、引掛り部30を移動手摺18の長手方向に間隔をあけて形成することができる。
【0026】
また、引掛り部30は、背面28から窪んで形成される凹部である。凹部は、これの内壁部32に利用者の指、すなわち親指以外の指を引っ掛けことができる程度の窪みである。この構成により、利用者が踏段側の内壁部32と縁部24とを把持することができる。
【0027】
また、引掛り部30は、加圧ローラに当接する当接部34を有する。上述したように、加圧ローラは内面26の反対側にある面に当接する。この面は、凹部の底面36に相当する。このため、幅方向における底面36の大きさは、加圧ローラの幅より大きくなるように形成される。このように、加圧ローラが凹部の底面36に当接することにより、加圧ローラとの当接により移動手摺18が汚れたとしても、利用者は、その汚れの領域、すなわち当接部34に触れることなく移動手摺18を把持することができるので、公衆衛生の向上を図ることができる。
【0028】
次に、別の態様の移動手摺18について、図5を用いて説明する。図5は、別の態様の移動手摺18の断面図である。なお、上記実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0029】
この態様の引掛り部38は、背面28から突出して形成される凸部である。この引掛り部38は、背面28に手を十分に添えることができない利用者に対応するため、背面28の踏段側に1列設けられる。凸部は、これの外壁部40に利用者の指、すなわち親指以外の指を引っ掛けことができる程度の突出である。この構成により、利用者が、踏段に対して反対側の外壁部40と、踏段側の縁部24とを把持することができる。
【0030】
また、この移動手摺18は、背面28に加圧ローラに当接する当接部34が設けられ、引掛り部38は、当接部34の領域を避けて設けられる。すなわち、引掛り部38は、当接部34より踏段側に設けられる。このように、当接部34が背面28に形成されることにより、加圧ローラとの当接により移動手摺18が汚れたとしても、利用者は、その汚れの領域、すなわち当接部34に触れることなく移動手摺18を把持することができるので、公衆衛生の向上を図ることができる。
【0031】
この実施形態においては、引掛り部38が、背面28の踏段側に1列設けられる場合について説明したが、この構成に限定されない。図6に示されるように、引掛り部38を、踏段に対して反対側にもう1列設けることができる。このように構成される移動手摺18においは、形状が左右対称であるため、踏段の両側にあるどちらのガイドレール20に対しても取り付けることができる。また、この移動手摺18は、2つの引掛り部38に挟まれた背面28に当接部34が設けられる。よって、上述のように、当接部34が汚れたとしても、利用者は、その当接部34に触れることなく移動手摺18を把持することができる。
【0032】
次に、別の態様の移動手摺18について、図7を用いて説明する。図7は、別の態様の移動手摺18の断面図である。なお、上記実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0033】
この態様の引掛り部42は、背面28から窪んで形成される凹部である。この引掛り部42は、背面28に手を十分に添えることができない利用者に対応するため、背面28の踏段側に1列設けられる。凹部は、これの内壁部32に利用者の指、すなわち親指以外の指を引っ掛けことができる程度の突出である。この構成により、利用者が、踏段側の内壁部32と、踏段側の縁部24とを把持することができる。
【0034】
また、この移動手摺18は、背面28に加圧ローラに当接する当接部34が設けられ、引掛り部42は、当接部34の領域を避けて設けられる。すなわち、引掛り部42は、当接部34より踏段側に設けられる。このように、当接部34が背面28に形成されることにより、加圧ローラとの当接により移動手摺18が汚れたとしても、利用者は、その汚れの領域、すなわち当接部34に触れることなく移動手摺18を把持することができるので、公衆衛生の向上を図ることができる。
【0035】
この実施形態においては、引掛り部42が、背面28の踏段側に1列設けられる場合について説明したが、この構成に限定されない。図8に示されるように、引掛り部42を、踏段に対して反対側にもう1列設けることができる。このように構成される移動手摺18においは、形状が左右対称であるため、踏段の両側にあるどちらのガイドレール20に対しても取り付けることができる。また、この移動手摺18は、2つの引掛り部42に挟まれた背面28に当接部34が設けられる。よって、上述のように、当接部34が汚れたとしても、利用者は、その当接部34に触れることなく移動手摺18を把持することができる。
【0036】
また、この実施形態においては、引掛り部42が当接部34の領域を避けて、背面28の踏段側に1列設けられる場合について説明したが、この構成に限定されない。利用者が、踏段側の内壁部32と、踏段側の縁部24とを把持することができるのであれば、引掛り部42が当接部34の領域、すなわち背面28の中央に1列設けられてもよい。なお、この場合、利用者は、当接部34に触れて移動手摺18を把持するので、従来の移動手摺と同様、当接部34の汚れが手についてしまうことになる。
【符号の説明】
【0037】
10,110 エスカレータ、16,116 欄干、18,118 移動手摺、20,120 ガイドレール、22 開口部、24、縁部、28 背面、30,38,42 引掛り部、32 内壁部、34 当接部、36 底面、40 外壁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータに用いられる断面略C字状の移動手摺であって、欄干上に配置されたガイドレールを断面略C字状の開口部でくわえ込むような状態で欄干に取り付けられるエスカレータの移動手摺において、
断面略C字状の背面側に、利用者の手が引っ掛かる引掛り部を有する、
ことを特徴とするエスカレータの移動手摺。
【請求項2】
請求項1に記載のエスカレータの移動手摺において、
引掛り部は、移動手摺の長手方向に沿って延在するように形成される、
ことを特徴とするエスカレータの移動手摺。
【請求項3】
請求項2に記載のエスカレータの移動手摺において、
引掛り部は、前記背面から窪んで形成される凹部である、
ことを特徴とするエスカレータの移動手摺。
【請求項4】
請求項3に記載のエスカレータの移動手摺において、
凹部は、移動手摺を移動させる加圧ローラに当接する当接部を有する、
ことを特徴とするエスカレータの移動手摺。
【請求項5】
請求項3に記載のエスカレータの移動手摺において、
前記背面は、移動手摺を移動させる加圧ローラに当接する当接部を有し、
凹部は、前記当接部の領域を避けて設けられる、
ことを特徴とするエスカレータの移動手摺。
【請求項6】
請求項2に記載のエスカレータの移動手摺において、
引掛り部は、前記背面から突出して形成される凸部である、
ことを特徴とするエスカレータの移動手摺。
【請求項7】
請求項6に記載のエスカレータの移動手摺において、
前記背面は、移動手摺を移動させる加圧ローラに当接する当接部を有し、
凸部は、前記当接部の領域を避けて設けられる、
ことを特徴とするエスカレータの移動手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−148566(P2011−148566A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9947(P2010−9947)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】