説明

エスカレータ監視システム

【課題】カメラを用いて監視により、エスカレータを利用する乗客を正確に検知でき、その乗客の危険な挙動に対しては警告を発することで事故を未然に防ぐ。
【解決手段】エスカレータ11の全体を監視可能な場所に少なくとも2台のカメラ22a,22bを設置して、そのカメラ22a,22bにて撮影された各画像を画像処理装置24に転送する。画像処理装置24では、上記各画像から3次元の情報を取得し、その3次元情報を解析して、エスカレータ11を利用する乗客10の位置を撮影範囲の奥行き方向を含めて検知すると共に、エスカレータ11の運行情報に基づいて、その乗客10の挙動を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを用いてエスカレータを利用する乗客を監視するエスカレータ監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや駅構内などに設置されているエスカレータ(マンコンベアとも呼ばれる)は、通常、監視員のいない場所で自動運転されることが多い。このため、乗客が手摺りから外側に身を乗り出すなどして危険な状態にあっても見過ごしてしまう可能性がある。また、乗客が転倒した場合などでも、その連絡が監視員に入るまでに時間がかかり、対応に遅れが生じるといった問題がある。
【0003】
従来、このような問題を解決するために、エスカレータの近くにカメラを設置しておき、そのカメラにて撮影される画像を用いて乗客の乗り出しや逆進などの挙動を検知するエスカレータ監視システムが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
この種のエスカレータ監視システムでは、一般的に1台のカメラを用いた単眼画像処理による人物検知が基本となっている。すなわち、1台のカメラにて撮影された2次元の画像を解析処理して、エスカレータを利用する乗客を検知するといったものである。
【特許文献1】特開2000−34088号公報
【特許文献2】特開平5−319762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エスカレータは、エレベータなどと違って奥行きが非常に長い乗り物であるため、カメラを用いた監視に当たっては、その奥行きの情報が必要となる。しかしながら、従来のエスカレータ監視システムでは、上述したように1台のカメラを用いて監視しているため、そのカメラにて撮影された2次元の画像からは奥行きに関する詳細な情報を得ることは難しく、乗客の検知精度が非常に低いといった問題がある。
【0006】
すなわち、2次元の画像上では、エスカレータと乗客を平面でしか捕らえることができないため、例えばエスカレータの手摺りの近くに乗客がいた場合、カメラの撮影角度によっては、乗客が手摺りの外側に乗り出しているのか、手摺りの内側で正しく乗っているのかを正しく判別できないことがある。
【0007】
また、乗客が転倒などした場合にも、エスカレータの奥行き方向にその場所を正確に特定できないために、対応に遅れが生じるといった問題がある。
【0008】
さらに、混雑時に乗客と乗客が重なった状態(これをオクルージョンと呼ぶ)で撮影されていると、その撮影画像から個々の乗客を正確に検知することは難しく、事故があっても見過ごしてしまう可能性がある。
【0009】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、カメラを用いて監視により、エスカレータを利用する乗客を正確に検知でき、その乗客の危険な挙動に対しては警告を発することで事故を未然に防ぐことのできるエスカレータ監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るエスカレータ監視システムは、エスカレータ全体を監視可能な場所に設置された少なくとも2台のカメラと、この2台のカメラにて撮影された各画像から3次元の情報を取得する3次元情報取得手段と、この3次元情報取得手段によって得られた3次元情報を解析して、上記エスカレータを利用する乗客の位置を撮影範囲の奥行き方向を含めて検知する乗客検知手段とを具備したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るエスカレータ監視システムは、上記エスカレータの運行情報に基づいて、上記乗客検知手段によって検知された乗客の挙動を検知する挙動検知手段をさらに具備したことを特徴とする。
【0012】
上記挙動検知手段は、「乗り出し検知」を行うものである。すなわち、上記エスカレータの運行情報は、予め設定された乗出し危険領域に関する情報を含み、上記挙動検知手段は、上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記乗出し危険領域内で上記エスカレータに設けられた手摺りから外側に所定量以上乗り出している状態を検知することを特徴とする。
【0013】
上記挙動検知手段は、「追い越し検知」を行うものである。すなわち、上記エスカレータの運行情報は、上記エスカレータの運転方向に関する情報を含み、上記挙動検知手段は、上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータの運転方向に所定速度以上で移動しながら前方の乗客を追い越している状態を検知することを特徴とする。
【0014】
上記挙動検知手段は、「すり抜け検知」を行うものである。すなわち、上記エスカレータの運行情報は、上記エスカレータの運転方向に関する情報を含み、上記挙動検知手段は、上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータの運転方向に所定速度以上で移動しながら前方の乗客と乗客との間をすり抜けている状態を検知することを特徴とする。
【0015】
上記挙動検知手段は、「転倒検知」を行うものである。すなわち、上記エスカレータの運行情報は、上記エスカレータの運転方向に関する情報を含み、上記挙動検知手段は、上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータの運転方向に移動しているときの頭部高さの時間変動から転倒した状態を検知することを特徴とする。
【0016】
上記挙動検知手段は、「滞留検知」を行うものである。すなわち、上記エスカレータの運行情報は、予め設定された滞留危険領域に関する情報を含み、上記挙動検知手段は、上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータの滞留危険領域内で所定時間以上滞留している状態を検知することを特徴とする。
【0017】
上記挙動検知手段は、「滞留検知(滞留人数を含む)」を行うものである。すなわち、上記挙動検知手段は、上記エスカレータの滞留危険領域内で所定時間以上滞留している乗客の人数を検知することを特徴とする。
【0018】
上記挙動検知手段は、「いたずら検知」を行うものである。すなわち、上記エスカレータの運行情報は、予め設定されたいたずら注意領域に関する情報を含み、上記挙動検知手段は、上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータのいたずら注意領域内で所定時間以上停止している状態を検知することを特徴とする。
【0019】
上記挙動検知手段は、「いたずら検知(子供の判定を含む)」を行うものである。すなわち、上記挙動検知手段は、上記乗客検知手段によって検知された乗客の頭部高さが所定値以下の人物を対象として、上記エスカレータのいたずら注意領域内で所定時間以上停止している状態を検知することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るエスカレータ監視システムは、上記挙動検知手段によって検知された乗客の挙動に応じて警告処理を行う警告手段をさらに具備したことを特徴とする。この警告手段は、上記挙動検知手段によって検知された乗客の挙動に応じて警告レベルを変えて警告を行うことを含む。
【0021】
また、本発明に係るエスカレータ監視システムは、上記乗客検知手段によって検知された乗客の位置の時系列情報と上記エスカレータの運行情報とに基づいて当該乗客の移動速度、加速度、移動方向、移動動線、存在時間の情報を測定する情報測定手段と、この情報測定手段の測定結果に基づいて、乗降数、乗降時間、滞留時間、移動状態の少なくとも1つを検知する乗降状態検知手段とをさらに具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エスカレータを利用する乗客を正確に検知でき、その乗客の危険な挙動に対しては警告を発することで事故を未然に防ぐことできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施形態に係るエスカレータ監視システムの構成を示す図である。図中の11は監視対象とするエスカレータを示す。
【0025】
エスカレータ11は、複数のステップ12と、これらのステップ12の両側に設置された一対の欄干パネル13とを備える。各ステップ12は、例えばアルミダイガストから形成された階段状の乗り台であり、図示せぬトラスによって所定の傾斜角度を有して支持された状態で乗降口間を循環走行する。
【0026】
また、上記一対の欄干パネル13は、例えば透明のガラスやアクリルなどによって形成され、その欄干パネル13の周縁部には、ゴムなどで周りが覆われた手摺りベルト14が巻き付けられている。この手摺りベルト14は、上記各ステップ12と同期して移動する。
【0027】
さらに、エスカレータ11と交差する天井等の下端部には、三角部ガード板15が取り付けられている。この三角部ガード板15は、乗客10が手摺りベルト14から乗り出した場合に天井との隙間に挟まれる事故を防止するためにある。
【0028】
ここで、監視用のカメラとして、ステレオカメラユニット21がエスカレータ11全体を監視できる場所(例えばエスカレータ11の近傍の天井面)に設置されている。このステレオカメラユニット21には、2台のカメラ22a,22bが所定の間隔を有して配置されており、これらのカメラ22a,22bで撮影された各画像を伝送ケーブル23を介して画像処理装置24に順次転送するように構成されている。
【0029】
画像処理装置24は、本システムの主要構成部である。この画像処理装置24は、CPU、ROM、RAM等を備えた一般的なPC(パーソナルコンピュータ)あるいは画像処理ボードなどで構成される。この画像処理装置24は、上記カメラ22a,22bによって撮影された各画像を3次元で解析処理することにより、エスカレータ11を利用する乗客10の位置を撮影範囲の奥行き方向を含めて検知すると共に、その乗客10の挙動などを検知する機能を備える。
【0030】
制御装置25は、エスカレータ11の運転制御を行うものであり、画像処理装置24とは別のPCからなる。この制御装置25は、画像処理装置24から出力される各種信号を受けてスピーカ26や表示装置27を制御したり、エスカレータ11の駆動装置28を制御する。
【0031】
スピーカ26は、エスカレータ11の近くに設置されており、乗客10に対して何らかの警告を行う場合に用いられる。表示装置27は、監視室等に設置されており、撮影画像のモニタ表示や、警告レベルの表示などを行う。
【0032】
図2はエスカレータ監視システムに設けられた画像処理装置24の機能構成を示すブロック図である。
【0033】
本システムの画像処理装置24の構成を機能的に示すと、キャプチャ処理部31、3次元情報取得部32、乗客検知部33、挙動検知部36、警告部37、測定部38、乗降状態検知部39からなる。
【0034】
キャプチャ処理部31は、ステレオカメラユニット21に設けられた2台のカメラ22a,22bにて連続撮影された各画像をキャプチャする。なお、キャプチャされた各画像は、画像処理装置24内の図示せぬ画像メモリに時間情報と共に記憶される。
【0035】
3次元情報取得部32は、キャプチャ処理部31によってキャプチャされた各画像から撮影範囲の3次元情報(x,y,z)を取得する。
【0036】
乗客検知部33は、3次元情報取得部32によって得られた3次元情報を解析して、エスカレータ11を利用する乗客10の位置を撮影範囲の奥行き方向を含めて検知する。この乗客検知部33は、人物抽出部34と人物追跡部35を含む。人物抽出部34は、3次元情報取得部32によって得られた3次元情報(x,y,z)の分布状態を解析して、撮影画像の中からエスカレータ11を利用する乗客10を抽出する。人物追跡部35は、人物抽出部33によって抽出された乗客10を各画像間で追跡処理する。
【0037】
挙動検知部36は、エスカレータ11の運行情報に基づいて、乗客検知部33によって検知された乗客10の挙動を検知する。上記挙動としては、「乗り出し」、「追い越し」、「すり抜け」、「転倒」、「滞留」、「いたずら」などである。上記運行情報には、エスカレータ11の運転方向、運転速度などの他に、後述する乗出し危険領域、滞留危険領域、いたずら注意領域などに関する情報が含まれる。
【0038】
警告部37は、挙動検知部36によって判断された乗客10の挙動に応じて、音声あるいは表示による警告処理を行う。
【0039】
また、情報測定部38は、乗客検知部33によって検知された乗客10の位置の時系列情報とエスカレータ11の運行情報として得られる運転方向、運転速度に基づいて、乗客10の移動速度、加速度、移動方向、移動動線、存在時間を測定すると共に、これらの情報に基づいて乗降数、乗降時間、滞留時間、移動状態(停止/走行/歩行/逆走)の少なくとも1つを検知して制御装置25に出力する。
【0040】
以下に、このエスカレータ監視システムの動作について詳しく説明する。
【0041】
なお、後述する乗客検知を含め、領域判定や距離、高さなどの判定は、上述した2台のカメラ22a,22bを用いたステレオ画像処理によって各画像を3次元で解析処理することで行われる。
【0042】
(乗客検知)
まず、エスカレータ11を利用する一人の乗客10に着目して、本システムの画像処理装置24による「乗客検知」に関して説明する。
【0043】
図2に示したように、本システムに用いられている画像処理装置24は、2台のカメラ22a,22bによって連続撮影された各画像を順次キャップして、これらの画像から撮影範囲のx方向,y方向,z方向の3次元情報を取得する。そして、この3次元情報の分布状態を解析して、撮影画像の中から乗客10に相当する部分を抽出する。
【0044】
図3に3次元情報(x,y,z)の分布例を示す。図中の黒丸が撮影毎に得られる3次元情報の位置を示す。このような3次元情報の分布状態から人物形状に近い固まりが乗客10に相当する部分として抽出されることになる。
【0045】
続いて、画像処理装置24は、時系列に得られる各画像間で上記抽出された乗客10を追跡する。具体的には、図4に示すように、時間T0で撮影された画像から抽出された人物と時間T1で撮影された画像から抽出された人物とを3次元情報などの特徴量を用いてマッチング処理し、相関度の高い組み合わせを同一人物として特定し、その人物を追跡する。
【0046】
このような2台のカメラ22a,22bを用いたステレオ画像処理により、乗客10の位置を撮影範囲の奥行き方向を含めて正確に検知することができる。また、ここでは一人の乗客10に着目して説明したが、多数の乗客10がエスカレータ11を利用している状態であっても、上記ステレオ画像処理によって個々の乗客10の位置を正確に検知することが可能である。
【0047】
(各種情報の測定と乗降状態の検知)
次に、本システムの画像処理装置24による各種情報の測定と乗降状態の検知について説明する。
【0048】
図5に示すように、上記乗客検知処理によって得られた乗客10の位置の時系列情報(x0,y0,z0,t0)…(xn,yn,zn,tn)と、エスカレータ11の運行情報として得られる運転方向De、運転速度Veに基づいて、乗客10の移動速度、加速度、移動方向、移動動線、存在時間などの情報を測定することができる。なお、移動動線は、乗客10の位置の時系列情報を線で結ぶことによって得られる。図中のL1が移動動線を示す。
【0049】
また、これらの情報に基づいて、乗降数、乗降時間、滞留時間、移動状態(停止/走行/歩行/逆走)といった乗降動作に関する状態を以下のようにして検知することができる。
【0050】
(1)乗降数
乗降数とは、単位時間当たりに乗客10がエスカレータ11を乗降した数のことである。これは、時間t0〜tnの間に、エスカレータ11の乗り口と降り口を通過した人数をカウントすることで得られる。
【0051】
(2)乗降時間
乗降時間とは、図6に示すように、乗客10がエスカレータ11の乗り口から降り口までを通過した時間である。この場合、乗客10の移動動線L1とエスカレータ11の乗り口ラインL2が交差したときに、乗客10がエスカレータ11の乗り口を通過した判断される。また、乗客10の移動動線L1とエスカレータ11の降り口ラインL3が交差したときに、乗客10がエスカレータ11の降り口を通過したと判断される。
【0052】
乗客10が乗り口を通過した時間は、乗り口ラインL2を跨いだ時間である。図6の例では、時間taから時間tbの間で跨ぐので、時間tbが乗り口の通過時間として得られる。同様に、乗客10が降り口を通過した時間は、降り口ラインL3を跨いだ時間である。図6の例では、時間tcから時間tdの間で跨ぐので、時間tdが降り口の通過時間として得られる。これにより、乗降時間は「td−tb」から求められる。
【0053】
(3)滞留時間
滞留時間とは、乗客10が同じ場所で立ち止まっている時間のことである。この場合、乗客10の位置(x,y)の時間変動が少ない状態を滞留状態とみなす。よって、乗客10が止まり始めた時間t1、動き始めた時間t2とすると、滞留時間は「t2−t1」から求められる。
【0054】
(4)移動状態
移動状態とは、乗客10が移動している状態のことであり、停止/走行/歩行/逆走を含む。図6に示すように、時間tbから時間tdまでの移動時間と距離から乗客10の移動速度Vpを求める。この移動速度Vpがエスカレータ11の運転速度Veと同じであれば(Vp=Ve)、乗客10がエスカレータ11のステップ12上で立ち止まっている状態つまり停止状態であると判断する。
【0055】
一方、乗客10の移動速度Vpがエスカレータ11の運転速度Veより速く、歩行の基準値V0以内の範囲であれば(Ve<Vp≦V0)、乗客10がエスカレータ11のステップ12上を歩いている状態つまり歩行状態であると判断する。乗客10の移動速度Vpが上記歩行の基準値V0よりも速い場合には(V0<Vp)、乗客10がエスカレータ11のステップ12上を走っている状態つまり走行状態であると判断する。
【0056】
また、乗客10の移動方向がエスカレータ11の運転方向Deとは逆方向であった場合には、乗客10がエスカレータ11のステップ12上を逆方向に移動している状態つまり逆走状態であるとであると判断する。
【0057】
なお、以上は乗客10が一人に着目したものであるが、多数の乗客10がエスカレータ11を利用している状態であっても同様であり、上述したステレオ画像処理によって各乗客10を個別に検知することで、各乗客10に関する情報を得ることができる。
【0058】
さらに、各乗客10に関する情報を用いて、図7に示すように、エスカレータ11に乗って移動中の人数と、エスカレータ11の乗り口で待っている人数を検知することも可能である。
【0059】
(乗り出し検知)
次に、本システムの画像処理装置24による挙動検知の1つである「乗り出し検知」に関して説明する。
【0060】
「乗り出し検知」とは、乗客10がエスカレータ11の手摺りベルト14から外側に乗り出している状態を検知するものである。
【0061】
今、図8に示すように、手摺りベルト14から三角部ガード板15までの距離をa、乗客10の乗出し量をb、乗客10の位置から三角部ガード板15までの距離をcとすると、距離cと運転速度Veから乗客10がエスカレータ11の交差部に挟まれるまでの時間を算出できる。
【0062】
乗客10の乗り出しが検知された場合には、その旨を警告する。その際、距離a、乗出し量b、距離cとの関係から、以下のように警告レベルを変えるようにしても良い。
【0063】
b<a⇒注意
b≧a⇒警告
c≧停止可能距離⇒注意
c<停止可能距離⇒警告。
【0064】
また、3次元の形状から乗客10のどの部位が乗り出しているか、あるいは、荷物なのかを判別することができる。その際、以下のように警告レベルを変えるようにしても良い。
【0065】
乗出し部位が荷物⇒注意
乗出し部位が腕部/頭部⇒警告。
【0066】
また、乗客10の位置や移動速度などから、手摺りベルト14近辺の固まり形状の画像が乗客10の乗り出しによって生じているものか、ノイズが映り混んでいるのかを判別することができる。この場合、ノイズとしてエスカレータ11の裏に存在する人物10′が挙げられる。
【0067】
図9に示すように、単眼画像では、手摺りベルト14近辺の固まり形状が乗客10の乗り出しによるものか、エスカレータ11の裏に存在する人物10′の映り込みによるものかの区別がつかない。これに対し、本システムでは、各画像から得られる3次元情報(x,y,z)に基づいてエスカレータ11の裏側にいる人物10′であることを正確に検知できる。
【0068】
以下に、図10を参照して本システムの「乗り出し検知」の処理動作について、詳しく説明する。
【0069】
図10は本システムの画像処理装置24による「乗り出し検知」の処理動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、画像処理装置24に搭載された図示せぬCPUがROM等のメモリに記憶された所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0070】
まず、初期化処理として、ステレオカメラユニット21(カメラ22a,22b)とエスカレータ11との位置関係を画像処理装置24に設定しておくと共に、乗出し危険領域51に関する情報を画像処理装置24に設定しておく(ステップA11)。乗出し危険領域51は、図8に示すように、三角部ガード板15が取り付けられているエスカレータ11の交差部とその少し手前までの領域である。
【0071】
画像処理装置24は、カメラ22a,22bにて撮影された各画像の解析処理により、エスカレータ11を利用する乗客10を検知すると(ステップA12)、エスカレータ11の交差部から乗客10までの距離を求める(ステップA13)。その結果、エスカレータ11の交差部から乗客10までの距離が予め設定された閾値より長かった場合には(ステップA14のNo)、画像処理装置24は、乗客10が乗出し危険領域51に入っていないものと判断し、特に何もせず、そのまま監視を続ける。
【0072】
一方、エスカレータ11の交差部から乗客10までの距離が予め設定された閾値以下であった場合には(ステップA14のYes)、画像処理装置24は、乗客10が乗出し危険領域51内に入っているものと判断し、その乗出し危険領域51内での乗客10の乗出し量を求める(ステップA15)。その結果、乗出し量が予め設定された閾値以上であれば(ステップA16のYes)、画像処理装置24は、乗客10に注意を促すための警告処理を行う(ステップA17)。
【0073】
具体的には、画像処理装置24から制御装置25に対して警告信号を出力することにより、例えば「危険ですから、身を乗り出さないで下さい」といったようなメッセージをスピーカ26を通じて音声出力する。なお、警告方法としては、音声に限らず、例えば図示せぬ表示器をエスカレータ11の交差部近辺に設置しておき、その表示器に乗り出し注意のメッセージを表示することでも良い。
【0074】
また、交差部までの距離と乗出し量に応じて警告レベルを段階的に変えたり、エスカレータ11の運転を減速あるいは停止させるようにしても良い。
【0075】
なお、ここでは乗出し危険領域51内で乗客10が手摺りベルト14から所定量以上乗り出した場合に警告するものとして説明したが、乗出し危険領域51に関係なく、乗客10が手摺りベルト14から所定量以上乗り出した場合には警告を発するようにしても良い。
【0076】
また、乗客10を乗り出しを検知した場合に、その検知信号を制御装置25に出力して、エスカレータ11の運転速度を一時的に下げるか、あるいは、運転を停止させるようにしても良い。
【0077】
(追い越し/すり抜け検知)
次に、本システムの画像処理装置24による挙動検知の1つである「追い越し/すり抜け検知」について説明する。
【0078】
図11は追い越しの例を示す図である。図中のPa,Pb,Pcはエスカレータ11上にいる乗客を示す。追い越し検知は、これらの乗客Pa,Pb,Pcの並び順を時系列で監視することで行う。
【0079】
すなわち、エスカレータ11上の並び順が以下のように時間的に変化したものとする。このような並び順の変化をカメラ22a,22bから時系列で得られる撮影画像を解析することで、乗客Pcが時間T1で乗客Pbを追い抜き、時間T2で乗客Paを追い抜いたことを検知できる。
【0080】
時間T0:Pa−Pb−Pc
時間T1:Pa−Pc−Pb
時間T2:Pc−Pa−Pb。
【0081】
図12はすり抜けの例を示す図である。図中のPa,Pb,Pc,Pdはエスカレータ11上にいる乗客を示す。すり抜けについても、追い越しと同様に、これらの乗客の並び順を時系列で監視することで検知できる。
【0082】
すなわち、エスカレータ11上の並び順が以下のように時間的に変化したものとする。このような並び順の変化をカメラ22a,22bから時系列で得られる撮影画像を解析することで、乗客Pcが時間T2で乗客Pcが乗客Pa,Pdの間をすり抜けたことを検知できる。
【0083】
時間T0:(Pa,Pd)−Pb−Pc
時間T1:(Pa,Pd)−Pc−Pb
時間T2:Pc−(Pa,Pd)−Pb。
【0084】
なお、追い越し/すり抜けを判定する指標として、各乗客の並び順以外に移動動線を指標とすることでも良い。
【0085】
以下に、図13を参照して変システムの「追い越し検知」の処理動作について、詳しく説明する。
【0086】
図13は本システムの画像処理装置24による「追い越し検知」の処理動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、画像処理装置24に搭載された図示せぬCPUがROM等のメモリに記憶された所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0087】
まず、初期化処理として、ステレオカメラユニット21(カメラ22a,22b)とエスカレータ11との位置関係を画像処理装置24に設定しておくと共に、エスカレータ11の運転方向De、運転速度Veに関する情報を画像処理装置24に設定しておく(ステップB11)。
【0088】
画像処理装置24は、カメラ22a,22bにて撮影された各画像の解析処理により、エスカレータ11を利用する乗客10を検知すると(ステップB12)、その乗客10が立ち止まっているのか歩行しているのかを判定する(ステップB13)。
【0089】
この場合、複数の撮影画像から乗客10の移動速度を求め、その移動速度がエスカレータ11の運転速度Veと同じであれば、ステップ12上で立ち止まっているものと判定される。また、乗客10の移動速度がエスカレータ11の運転速度Veより速ければ、エスカレータ11の運転方向Deに歩行(あるいは走行)しているものと判定される。乗客10がステップ12上で立ち止まっているものと判定された場合には(ステップB14のNo)、画像処理装置24は、特に何もせず、そのまま監視を続ける。
【0090】
一方、乗客10が歩行(あるいは走行)しているものと判定された場合には(ステップB14のYes)、画像処理装置24は、エスカレータ11上に存在する他の乗客との相対位置を算出し、その相対位置から当該乗客10の並び順を求める(ステップB15)。そして、画像処理装置24は、当該乗客10の並び順を時系列で監視し、前方の乗客と入れ替わった場合に追い越しがあったものと判定し(ステップB16のYes)、その乗客10に注意を促すための警告処理を行う(ステップB17)。
【0091】
具体的には、画像処理装置24から制御装置25に対して警告信号を出力することにより、例えば「危険ですから、エスカレータを歩かないで下さい」といったようなメッセージをスピーカ26を通じて音声出力する。スピーカ26を通じて音声にて乗客10に注意を促す。なお、警告方法としては、音声に限らず、例えば図示せぬ表示器をエスカレータ11の交差部近辺に設置しておき、その表示器に乗り出し注意のメッセージを表示することでも良い。
【0092】
なお、ここでは追い越しを想定して説明したが、すり抜けの場合も同様に着目とする乗客の移動速度と並び順から判定することができる。ただし、図14のフローチャートに示すように、当該乗客が前方にいる乗客と乗客との間を追い越したことを条件として(ステップC11)、すり抜けと判定するものとする(ステップC12)。
【0093】
また、乗客10の追い越しやすり抜けを検知した場合に、その検知信号を制御装置25に出力して、エスカレータ11の運転速度を一時的に下げるか、あるいは、運転を停止させるようにしても良い。
【0094】
(転倒検知)
次に、本システムの画像処理装置24による挙動検知の1つである「転倒検知」に関して説明する。
【0095】
「転倒検知」は、乗客の頭部位置の高さ変動を監視することで行う。すなわち、図15に示すように、例えば短い時間であるT0〜T3において、乗客10の頭高さが1.75mから0.30mに変動した場合には転倒とみなす。
【0096】
また、時間の要素を加えて、検知開始時の乗客10頭高さが1.75mで、ある時間から頭高さが0.30mになり、一定時間頭高さ0.30mが所定時間以上継続した場合には転倒とみなすことでも良い。
【0097】
以下に、図16を参照して本システムの「転倒検知」の処理動作について、詳しく説明する。
【0098】
図16は本システムの画像処理装置24による転倒検知の処理動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、画像処理装置24に搭載された図示せぬCPUがROM等のメモリに記憶された所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0099】
まず、初期化処理として、ステレオカメラユニット21(カメラ22a,22b)とエスカレータ11との位置関係を画像処理装置24に設定しておくと共に、エスカレータ11の運転方向De、運転速度Veに関する情報を画像処理装置24に設定しておく(ステップD11)。
【0100】
画像処理装置24は、カメラ22a,22bにて撮影された各画像の解析処理により、エスカレータ11を利用する乗客10を検知すると(ステップD12)、エスカレータ11の運転方向De、運転速度Veに基づいて乗客10の頭部高さの時間変動を求める(ステップD13)。その結果、乗客10の頭部高さの時間変動が閾値以下であれば(ステップD14のNo)、画像処理装置24は、特に何もせず、そのまま監視を続ける。
【0101】
一方、乗客10の頭部高さの時間変動が閾値を超えた場合、つまり、大きく変動した場合には(ステップD14のYes)、画像処理装置24は、乗客10が転倒したものと判断して、周囲の人や監視員に注意を促すための警告処理を行う(ステップD15)。
【0102】
具体的には、画像処理装置24から制御装置25に対して警告信号を出力することにより、例えば「転倒した人がいます」といったようなメッセージをスピーカ26を通じて音声出力する。スピーカ26を通じて音声にて乗客10に注意を促す。なお、警告方法としては、音声に限らず、例えば図示せぬ表示器をエスカレータ11の交差部近辺に設置しておき、その表示器に乗り出し注意のメッセージを表示することでも良い。
【0103】
また、例えば「転倒した人がいます。安全のため運転を止めます」といったような警告メッセージを出力して、制御装置25を通じてエスカレータ11の運転を停止させることでも良い。
【0104】
(滞留検知)
次に、本システムの画像処理装置24による挙動検知の1つである「滞留検知」に関して説明する。
【0105】
「滞留検知」は、図17に示すように、エスカレータ11の乗降口付近での乗客10の動きを監視することで行う。すなわち、乗降口付近で乗客10が一定時間以上立ち止まっていた場合に滞留状態と判断する。その際、滞留人数が多く、乗降口を通り抜けられない場合には警告を行うものとする。
【0106】
以下に、図18を参照して本システムの「転倒検知」の処理動作について、詳しく説明する。
【0107】
図18は本システムの画像処理装置24による転倒検知の処理動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、画像処理装置24に搭載された図示せぬCPUがROM等のメモリに記憶された所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0108】
まず、初期化処理として、ステレオカメラユニット21(カメラ22a,22b)とエスカレータ11との位置関係を画像処理装置24に設定しておくと共に、エスカレータ11の乗降口付近を滞留危険領域52a,52bとして画像処理装置24に設定しておく(ステップE11)。
【0109】
画像処理装置24は、カメラ22a,22bにて撮影された各画像の解析処理により、エスカレータ11を利用する乗客10を検知すると(ステップE12)、その乗客10が滞留危険領域52aまたは52bにいるか否かを判断する(ステップE13)。その結果、乗客10が滞留危険領域52a,52bのどちらにもいない場合には(ステップE14のNo)、画像処理装置24は、特に何もせず、そのまま監視を続ける。
【0110】
一方、乗客10が滞留危険領域52aまたは52bにいた場合には(ステップE14のYes)、画像処理装置24は、乗客10の移動速度を求めて、そこで立ち止まっているのか否かを判断する(ステップE15)。その結果、乗客10の移動速度が所定速度よりも遅い場合には(ステップE16のYes)、画像処理装置24は、乗客10が立ち止まっているものと判断し、そこでの時間を監視する(ステップE17)。これにより、乗客10が所定時間以上立ち止まっている状態が検出された場合に(ステップE18のYes)、画像処理装置24は、乗客10が乗降口付近で滞留しているものと判断する。
【0111】
ここで、他の乗客10についても同様に滞留状態をチェックし(ステップE19)、もし、同じ場所での滞留人数が所定数以上いた場合には(ステップE20のYes)、画像処理装置24は、危険であると判断して、そこで立ち止まっている人たちに乗客10に注意を促すための警告処理を行う(ステップE21)。
【0112】
なお、上記ステップE20における所定数とは、人が容易に通り抜けられないくらいの人数であり、例えば1ステップに2人乗れるエスカレータ11であれば、2人以上が同じ場所に滞留していた場合に警告を発するものとする。
【0113】
具体的には、画像処理装置24から制御装置25に対して警告信号を出力することにより、例えば「乗降口で立ち止まっていると危険です」といったようなメッセージをスピーカ26を通じて音声出力する。スピーカ26を通じて音声にて乗客10に注意を促す。なお、警告方法としては、音声に限らず、例えば図示せぬ表示器をエスカレータ11の交差部近辺に設置しておき、その表示器に乗り出し注意のメッセージを表示することでも良い。
【0114】
なお、ここでは所定数以上が滞留危険領域(乗降口付近)で滞留している場合に警告を発するものとして説明したが、人数に関係なく、滞留危険領域(乗降口付近)で滞留している状態を検知した場合に警告を発するようにしても良いし、人数に応じて警告レベルを変えることでも良い。
【0115】
また、ここでは乗降口付近を滞留危険領域して設定したが、その他の場所も滞留危険領域として設定し、そこでの滞留を上記同様に検知して警告を発するように構成することも可能である。
【0116】
また、乗客10の滞留を検知した場合に、その検知信号を制御装置25に出力して、エスカレータ11の運転速度を一時的に下げるか、あるいは、運転を停止させるようにしても良い。
【0117】
(いたずら検知)
次に、本システムの画像処理装置24による挙動検知の1つである「いたずら検知」に関して説明する。
【0118】
「いたずら検知」は、エスカレータ11のインレット(手摺りベルトの入り込み口)付近でのいたずらを対象とする。また、検知対象とする人物を小さな子供とする。すなわち、図19に示すように、エスカレータ11のインレット付近の4箇所をいたずら注意領域53a,53b,53c,53dとして定め、そこに頭高さが閾値以下の乗客10が所定時間以上立ち止まっていた場合に子供がいたずらをしているものと判断し、警告を行うものとする。
【0119】
以下に、図20を参照して本システムの「いたずら検知」の処理動作について、詳しく説明する。
【0120】
図20は本システムの画像処理装置24による「いたずら検知」の処理動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートで示される処理は、画像処理装置24に搭載された図示せぬCPUがROM等のメモリに記憶された所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0121】
まず、初期化処理として、ステレオカメラユニット21(カメラ22a,22b)とエスカレータ11との位置関係を画像処理装置24に設定しておくと共に、エスカレータ11のインレット付近をいたずら注意領域53a,53b,53c,53dとして画像処理装置24に設定しておく(ステップF11)。
【0122】
画像処理装置24は、カメラ22a,22bにて撮影された各画像の解析処理により、エスカレータ11を利用する乗客10を検知すると(ステップF12)、その乗客10がいたずら注意領域53a,53b,53c,53dのいずれかにいるか否かを判断する(ステップF13)。その結果、乗客10がいたずら注意領域53a,53b,53c,53dのいずれにもいない場合には(ステップF14のNo)、画像処理装置24は、特に何もせず、そのまま監視を続ける。
【0123】
一方、乗客10がいたずら注意領域53a,53b,53c,53dのいずれかにいた場合には(ステップF14のYes)、画像処理装置24は、その乗客10の頭高さを求める(ステップF15)。その結果、乗客10の頭高さが所定値以下であれば(ステップF16のYes)、画像処理装置24は、続いて乗客10の移動速度を求めて、そこで立ち止まっているのか否かを判断する(ステップF17)。
【0124】
なお、上記ステップF16における所定値とは、例えば小学生以下の平均的な子供の身長を基準にして決められているものとする。
【0125】
乗客10の移動速度が所定速度よりも遅い場合には(ステップF17のYes)、画像処理装置24は、乗客10が立ち止まっているものと判断し、そこでの時間を監視する(ステップE17)。これにより、乗客10が所定時間以上立ち止まっている状態が検出された場合に(ステップF18のYes)、画像処理装置24は、子供がインレットの近辺でいたずらをしているものと判断する(ステップF19)。このようにして、乗客10がいたずらしている状態を検知すると、画像処理装置24は、その乗客10に注意を促すための警告処理を行う(ステップF21)。
【0126】
具体的には、画像処理装置24から制御装置25に対して警告信号を出力することにより、例えば「危険ですから、手摺りベルトの入り込み口には近寄らないで下さい」といったようなメッセージをスピーカ26を通じて音声出力する。スピーカ26を通じて音声にて乗客10に注意を促す。なお、警告方法としては、音声に限らず、例えば図示せぬ表示器をエスカレータ11の交差部近辺に設置しておき、その表示器に乗り出し注意のメッセージを表示することでも良い。
【0127】
なお、ここでは子供を対象にしていたずら検知を行うものとして説明したが、子供に関係なく、いたずら注意領域(インレット付近)で立ち止まっている状態を検知した場合に警告を発するようにしても良い。
【0128】
また、周囲に大人がいる場合には、いたずらとみなさいといったこともできる。周囲に大人の有無は、いたずら注意領域で立ち止まっている乗客10から所定距離以内に頭高さが所定値以上の他の乗客10を検知することで判断できる。ただし、たとえ大人が近くにいたとしても、インレット付近は危険であるため、大人の有無や子供のいかんに関係なく、インレット付近で立ち止まっている人がいれば、すぐに警告を発することが安全上好ましい。
【0129】
また、ここではインレット付近をいたずら注意領域として設定したが、その他の場所もいたずら注意領域として設定し、そこでのいたずらを上記同様に検知して警告を発するように構成することも可能である。
【0130】
また、乗客10がいたずら注意領域でいたずらしていることを検知した場合に、その検知信号を制御装置25に出力して運転を停止させるようにしても良い。
【0131】
以上のように本システムによれば、2台のカメラ22a,22bを用いてエスカレータ11を監視することで、カメラ22a,22bの設置場所に大きく影響されることなく、乗客10の位置を撮影範囲の奥行き方向を含めて正確に検知することができる。したがって、例えばエスカレータ11の手摺りベルト14の近くに乗客10がいた場合に、乗客10が手摺りベルト14の外側に乗り出しているのか、手摺りベルト14の内側で正しく乗っているのかを正しく判別して適切な対応を採ることができる。
【0132】
また、乗客10が転倒などした場合にも、エスカレータ11の奥行き方向にその場所を正確に特定して、適切に対応することができる。
【0133】
また、混雑の激しい環境つまりオクルージョンが発生する環境であっても、撮影画像から各乗客10の位置を正確に検知することができ、事故が発生した場合に詳細に検証することができる。
【0134】
また、エスカレータ11の運行情報と連携して乗客10の監視することで、「乗り出し」、「追い越し」、「すり抜け」、「転倒」、「滞留」、「いたずら」といった挙動をリアルタイムに検知でき、危険な挙動に対しては警告を発することで事故を未然に防ぐことができる。
【0135】
なお、上記実施形態では、2台のカメラ22a,22bを用いてエスカレータ11を監視する構成としたが、3台以上のカメラを用いてエスカレータ11を監視することでも良い。ただし、カメラ台数を増やすと、その分、設置設備が大かがりとなってコスト高となり、さらに、画像処理にも時間を要するため、上記実施形態のように2台のカメラ22a,22bにて監視することが好ましい。
【0136】
また、上記実施形態では、図1に示すように画像処理装置24と制御装置25を分けて構成したが、画像処理装置24の持つ機能を制御装置25に搭載することで、制御装置25だけで構成することも可能である。
【0137】
要するに、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るエスカレータ監視システムの構成を示す図である。
【図2】図2は同実施形態におけるエスカレータ監視システムに設けられた画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置によって得られる3次元情報(x,y,z)の分布例を示す図である。
【図4】図4は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による各画像間の人物追跡処理を説明するための図である。
【図5】図5は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による乗客の乗降動作に関連した各種情報を説明するための図である。
【図6】図6は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による乗客の乗降動作に関連した各種情報として、乗降時間の検知方法を説明するための図である。
【図7】図7は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による多数の乗客を検知する場合の一例を示す図である。
【図8】図8は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「乗り出し検知」について説明するための図である。
【図9】図9は従来の単眼画像による「乗り出し検知」の問題点を説明するための図である。
【図10】図10は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「乗り出し検知」の処理動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「追い越し検知」を説明するための図である。
【図12】図12は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「すり抜け検知」を説明するための図である。
【図13】図13は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「追い越し検知」の処理動作を示すフローチャートである。
【図14】図14は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「すり抜け検知」の処理動作を示すフローチャートである。
【図15】図15は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「転倒検知」を説明するための図である。
【図16】図16は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「転倒検知」の処理動作を示すフローチャートである。
【図17】図17は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「滞留検知」を説明するための図である。
【図18】図18は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「滞留検知」の処理動作を示すフローチャートである。
【図19】図19は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「いたずら検知」を説明するための図である。
【図20】図20は上記エスカレータ監視システムの画像処理装置による「いたずら検知」の処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0139】
11…エスカレータ、12…ステップ、13…欄干パネル、14…手摺りベルト、15…三角部ガード板、21…ステレオカメラユニット、22a,22b…カメラ、23…伝送ケーブル、24…画像処理装置、25…制御装置、26…スピーカ、27…表示装置、28…駆動装置、31…キャプチャ処理部、32…3次元情報取得部、33…乗客検知部、34…人物抽出部、35…人物追跡部、36…挙動検知部、37…警告部、38…情報測定部、39…乗降状態検知部、51…乗出し危険領域、52a,52b…滞留危険領域、53a,53b,53c,53d…いたずら注意領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータ全体を監視可能な場所に設置された少なくとも2台のカメラと、
この2台のカメラにて撮影された各画像から3次元の情報を取得する3次元情報取得手段と、
この3次元情報取得手段によって得られた3次元情報を解析して、上記エスカレータを利用する乗客の位置を撮影範囲の奥行き方向を含めて検知する乗客検知手段と
を具備したことを特徴とするエスカレータ監視システム。
【請求項2】
上記エスカレータの運行情報に基づいて、上記乗客検知手段によって検知された乗客の挙動を検知する挙動検知手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエスカレータ監視システム。
【請求項3】
上記エスカレータの運行情報は、予め設定された乗出し危険領域に関する情報を含み、
上記挙動検知手段は、
上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記乗出し危険領域内で上記エスカレータに設けられた手摺りから外側に所定量以上乗り出している状態を検知することを特徴とする請求項2記載のエスカレータ監視システム。
【請求項4】
上記エスカレータの運行情報は、上記エスカレータの運転方向に関する情報を含み、
上記挙動検知手段は、
上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータの運転方向に所定速度以上で移動しながら前方の乗客を追い越している状態を検知することを特徴とする請求項2記載のエスカレータ監視システム。
【請求項5】
上記エスカレータの運行情報は、上記エスカレータの運転方向に関する情報を含み、
上記挙動検知手段は、
上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータの運転方向に所定速度以上で移動しながら前方の乗客と乗客との間をすり抜けている状態を検知することを特徴とする請求項2記載のエスカレータ監視システム。
【請求項6】
上記エスカレータの運行情報は、上記エスカレータの運転方向に関する情報を含み、
上記挙動検知手段は、
上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータの運転方向に移動しているときの頭部高さの時間変動から転倒した状態を検知することを特徴とする請求項2記載のエスカレータ監視システム。
【請求項7】
上記エスカレータの運行情報は、予め設定された滞留危険領域に関する情報を含み、
上記挙動検知手段は、
上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータの滞留危険領域内で所定時間以上滞留している状態を検知することを特徴とする請求項2記載のエスカレータ監視システム。
【請求項8】
上記挙動検知手段は、
上記エスカレータの滞留危険領域内で所定時間以上滞留している乗客の人数を検知することを特徴とする請求項7記載のエスカレータ監視システム。
【請求項9】
上記エスカレータの運行情報は、予め設定されたいたずら注意領域に関する情報を含み、
上記挙動検知手段は、上記乗客検知手段によって検知された乗客が上記エスカレータのいたずら注意領域内で所定時間以上停止している状態を検知することを特徴とする請求項2記載のエスカレータ監視システム。
【請求項10】
上記挙動検知手段は、上記乗客検知手段によって検知された乗客の頭部高さが所定値以下の人物を対象として、上記エスカレータのいたずら注意領域内で所定時間以上停止している状態を検知することを特徴とする請求項9記載のエスカレータ監視システム。
【請求項11】
上記挙動検知手段によって検知された乗客の挙動に応じて警告処理を行う警告手段をさらに具備したことを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1つに記載のエスカレータ監視システム。
【請求項12】
上記警告手段は、上記挙動検知手段によって検知された乗客の挙動に応じて警告レベルを変えて警告を行うことを特徴とする請求項12記載のエスカレータ監視システム。
【請求項13】
上記乗客検知手段によって検知された乗客の位置の時系列情報と上記エスカレータの運行情報とに基づいて当該乗客の移動速度、加速度、移動方向、移動動線、存在時間の情報を測定する情報測定手段と、
この情報測定手段の測定結果に基づいて、乗降数、乗降時間、滞留時間、移動状態の少なくとも1つを検知する乗降状態検知手段と
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエスカレータ監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−64821(P2010−64821A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231140(P2008−231140)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】